説明

コケ緑化基材、コケ緑化基材ユニット及びコケ緑化用基板

【課題】上を人が歩くことができ、コケの生育障害物がなく、水の滞留がなく、風雨に強く、施工が容易なコケ緑化基材、コケ緑化基材ユニット及びコケ緑化用基板を提供することである。
【解決手段】少なくとも排水材、保水材及びコケからなるコケ緑化基材において、該保水材上に該コケが活着し、かつ該保水材より該排水材とは反対方向(上部)に突き出た突起物があり、該突起物は、(1)複数個が連結され、(2)該保水材の表面より0.5〜5cmの高さがあり、かつ(3)該突起物の上から50kgf/200cm(24.5kPa)の荷重をかけた時の平均変形率が0〜60%であることを特徴とするコケ緑化基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の断熱、遮熱効果やヒートアイランド防止効果があり、その上を人が歩くことができるコケ緑化基材、コケ緑化基材ユニット及びコケ緑化用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
夏場の大都市においては、都心の温度が郊外と比べ4〜6℃も高くなる、いわゆるヒートアイランド現象が問題視されており、例えば東京都では2001年の東京における自然の保護と回復に関する条例によって、敷地面積1000平方メートル以上の民間施設と、250平方メートル以上の公共施設の敷地における新築・増改築を行う場合、その敷地内への緑化が義務付けられた。また、2004年の都市緑地保全法の改正により市町村が指定した区域での大規模ビル開発等の際に一定割合の緑化を義務づける内容が盛り込まれた。2003年の東京都の調査では、緑化しない屋上の温度が約55℃になったのに対し、緑化している区域では約30℃、屋内温度も、緑化した方が1〜3℃低かったという結果が出ている。
【0003】
屋上緑化には、樹木の蒸散作用等によって周囲の気温を下げることのほか、断熱効果が高く省エネにつながる、騒音が低減される、建物の膨張・収縮による劣化を防ぐ、そしてビルに潤いを与え、訪れる人の憩いのスペースとしても活用できる等、いろいろなメリットがある。
【0004】
ビルの屋上、道路の中央分離帯等を緑化するのに、植物の一種であるセダムや芝が多用されている。この種の植物は土壌と肥料を必要とし、また、刈り込みや適切な水やりなどのメンテナンスを必要とするだけでなく、過度な湿度に弱いという欠点がある。
【0005】
建造物において、緑化を行うのであれば、緑化が可能な部位は、屋上か壁面に限られる。これらの箇所に樹木や芝生等の土壌を必要とする植物を適用する場合、まず問題となるのがその重量であり、土壌の重量を建造物が支えることができない場合には、それらを用いて緑化を行うことは困難である。また、壁面に緑化を施す場合においては植栽枡を設ける等、複雑な機構を必要とするものとなる。また、灌漑設備が必要である場合も多く、設備が複雑となるとともにメンテナンスが必要である。植物自体も定期的な手入れを行う必要もあり、壁面等は非常に手間がかかる作業となる。
【0006】
これらの解決方法として、コケを用いて緑化を行う提案が近年なされてきている。コケを用いることで、従来用いられてきた例えば樹木や芝生、セダム等の多肉植物等とは異なり、ほとんど土壌を必要とすることなく生育させて構造物の屋上や壁面等を緑地とすることができる。また、コケは保水性が高く、保持した水分や、その水分の蒸散により、建造物の温度を下げてヒートアイランド現象の軽減を好適に図ることができる。
【0007】
またコケは乾燥状態が続いても仮死状態となるだけで枯死することがなく、降雨等により再度水が与えられると再生することから潅水する必要がなく、従って潅水にかかわる設備も必要としない。さらには、光合成の効率も樹木や芝生と大差ないものであるから、炭酸ガスの固定化にも高いレベルで貢献できるものである。
【0008】
これらのコケの特性を活用し、緑化に用いるべく種々の発明が提案されている。
【0009】
例えば、保水性ロックウールを培地とし、表面に種苔を播いて、表面を不織布により覆った後に、のりを含んだ水を散水して、該不織布を繊維状に分解し、水分が蒸発することにより、分解された該不織布と該水に含まれていた該のりにより該種苔を固定させて苔植物を育成する苔マット(特許文献1参照)は、トレーに砂を敷き詰めて培地にしたもの(特開平10−191774号公報)より軽量で取り扱い易いが、コケは化学物質に弱い性質を持っているのでのりによりコケの育成が阻害されやすい、のりで固定してもコケは生体であるから経時での効果は期待できない、製造方法が複雑である、その上を人が歩くことができない等の問題がある。
【0010】
上部を開口した凹部状多孔質セラミックレンガの受皿と受皿の底にネットを有するコケ苔育成基盤(特許文献2参照)は、コケの成長阻害がなくシンプルな構造であるが、風雨で飛散の恐れがあり、その上を人が歩くことができない等の問題がある。
【0011】
2つの繊維集合体の間にコケを挟み、積層体を結合する人工芝葉状体が前記積層体を貫くように植設された緑化用蘚苔類植物担持体(特許文献3参照)は、繊維集合体の間にコケを挟み積層体は結合されているのでコケの成長阻害が大きい、表面に出るのはコケではなく人工芝葉状体であり、コケは繊維集合体の間で生育し表面には出ないので、コケの色や形による安らぎ感がない、その上を人が歩くことができない等の問題がある。
【0012】
コケは圧力に弱く、人が踏んだりすると茎が折れてしまうため、コケシートの設置場所は限られて、屋上の有効利用の障害となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許4370150号明細書
【特許文献2】特許4218053号明細書
【特許文献3】特許4159406号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、上を人が歩くことができ、コケの生育障害物がなく、水の滞留がなく、風雨に強く、施工が容易なコケ緑化基材、コケ緑化基材ユニット及びコケ緑化用基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0016】
1.少なくとも排水材、保水材及びコケからなるコケ緑化基材において、該保水材上に該コケが活着し、かつ該保水材より該排水材とは反対方向(上部)に突き出た突起物があり、該突起物は、(1)複数個が連結され、(2)該保水材の表面より0.5〜5cmの高さがあり、かつ(3)該突起物の上から50kgf/200cm(24.5kPa)の荷重をかけた時の平均変形率が0〜60%であることを特徴とするコケ緑化基材。
【0017】
2.前記突起物の上から50kgf/200cm(24.5kPa)の荷重をかけた時の変形率が0〜80%であることを特徴とする前記1に記載のコケ緑化基材。
【0018】
3.前記突起物1個の上から見た時の断面積が4cm以下であることを特徴とする前記1または2に記載のコケ緑化基材。
【0019】
4.前記突起物が1m当たり100個以上であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のコケ緑化基材。
【0020】
5.前記1〜3のいずれか1項に記載のコケ緑化基材が連結物を有し、該連結物により複数のコケ緑化基材を連結させたことを特徴とするコケ緑化基材ユニット。
【0021】
6.少なくとも排水材及び保水材からなるコケ緑化用基板において、該保水材より該排水材とは反対方向(上部)に突き出た突起物があり、該突起物は、(1)複数個が連結され、(2)該保水材の表面より0.5〜5cmの高さがあり、かつ(3)該突起物の上から50kgf/200cm(24.5kPa)の荷重をかけた時の変形率が0〜80%であることを特徴とするコケ緑化用基板。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、上を人が歩くことができ、コケの生育障害物がなく、水の滞留がなく、風雨に強く、施工が容易なコケ緑化基材、コケ緑化基材ユニット及びコケ緑化用基板を提供することができた。人が往来するところでも苔シートを設置できるため、屋上スペースの有効利用ができ、人が苔シートの上を芝生のように歩いたり、寝転んだりできるため、緑化による癒し効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のコケ緑化基材及びコケ緑化用基板を示す概略図である。
【図2】本発明のコケ緑化基材の製造工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも排水材、保水材及びコケからなるコケ緑化基材において、該保水材上に該コケが活着し、かつ該保水材より該排水材とは反対方向(上部)に突き出た突起物があり、該突起物は、(1)複数個が連結され、(2)該保水材の表面より0.5〜5cmの高さがあり、かつ(3)該突起物の上から50kgf/200cm(24.5kPa)の荷重をかけた時の平均変形率が0〜60%であることを特徴とするコケ緑化基材により、上を人が歩くことができ、コケの生育障害物がなく、水の滞留がなく、風雨に強く、施工が容易なコケ緑化基材が得られることを見出し、本発明に至った次第である。
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
(コケ緑化基材及びコケ緑化用基板)
図1は本発明のコケ緑化基材及びコケ緑化用基板を示す概略図である。
【0027】
図1の上図は、排水材3、保水材2及びコケ4からなるコケ緑化基材10であり、保水材2上にコケ4が活着し、かつ保水材2より排水材3とは反対方向(上部)に突き出た突起物1−1があり、突起物1−1は、複数個が連結され、保水材2の表面より0.5〜5cmの高さがあり、かつ突起物1−1の上から50kgf/200cm(24.5kPa)の荷重をかけた時の平均変形率が0〜60%である。コケ緑化基材10を横から見た図である。
【0028】
図1の下図は、上記コケ緑化基材10からコケ4を除いたもので、上から見た図である。
【0029】
(コケ)
本発明でいうコケとは、蘚類、苔類、角苔類を合わせた蘚苔類をいう。
【0030】
蘚類は全て茎と葉がはっきりと区別できる形状、茎葉体を持つ。苔類は一般的には茎葉体を持つものが多いが、葉状体を持つものもあるので、外見で見分けるのは困難である。角苔類は全て茎と葉の区別がなく、全体が平べったい葉のような形状、葉状体を持つ。葉状体を持つ角苔類や苔類は形がよくないのが多いので、屋上緑化等の美観を必要とする場合は、蘚類が多く用いられる。
【0031】
具体的には、チャミズゴケ、ヒョウタンゴケ、オオミズゴケ、スナゴケ、ホソウリゴケ、トカチスナゴケ、サメジマタスキ、オオタマチナイトゴケ、ニワツノゴケ、フデゴケ、コスギゴケ、トヤマシノブゴケ、オオツボミゴケ、ヤクシマゴケ、ミスジャバネゴケ、ギンゴケ、ハマキゴケ、ミズゴケ、ハイゴケが挙げられる。
【0032】
コケは群生することでその群生体の中に保水力ができる。群生体の生育密度が高いほど保水力が増す。またスナゴケやスギゴケ等好日性の苔は日焼けや蒸れを防ぐために、乾燥するとすぐにしぼむ能力がある。苔は根から水分を吸収せず、葉の表面から直接水分を吸収するので、土や根元に水やりしても、空中の湿度が乾燥していると水分不足ということになる。
【0033】
スナゴケ(砂苔、ギボウシゴケ科、蘚類)は、体は長さ3cmまで太くずんぐりしている。茎は直立、葉は密につく。自重の約20倍もの水を保つことができ、大気の乾燥に対し、体内の水分を蒸散して生命を守る。このようなスナゴケの保水性と蒸散効果が屋上緑化に適している。スナゴケは一般的な苔(コケ)と異なり日当たりの良いところを好み、乾燥に強く、肥料は不要で、培地の土は不要で砂、石、ガラス、コンクリートといった無機質でも育つ。また、気温の変化にも強く環境適応力が優れており、比較的簡単に育てることができる。
【0034】
ハイゴケ(ハイゴケ科、蘚類)は、マット状に生育する黄緑色のコケで茎は長さ10cm以上となり、多数の枝を羽状に出す。日当たりが多少あるところに生育する。乾燥にも強いが、半日陰で育て水を与える方がいい。スナゴケと同様扱いやすいコケである。
【0035】
スギゴケ(スギゴケ科、蘚類)は、蘚類の代表格であり、日当たりを好み色も鮮やかで明るく目に優しい。スギゴケには、ウマスギゴケとオオスギゴケが扱われており、コケ庭では石組みとも良く合い、最も良く使われる主要なコケである。スギゴケは、空気中の水蒸気からの水分と自力の光合成による栄養補給によって、生育に必要な要素のほとんどをまかなっており、ほとんど手入れの必要がない。ただし、気温の変化には弱く、育て方は難しい。
【0036】
ホソバシラガゴケ(シラガゴケ科、蘚類)は、樹木の根元、切り株、朽ち木上などにマルク盛り上がった群落を形成する苔(コケ)で、密なクッション状の群落を形成することと、その美しい色が特徴である。和名の由来は白っぽく見える状況を白髪の翁に例えたもので、降雨時には色がやや濃い緑になるが、通常は白い部分が混じって、緑色と白色のロマンスグレーのようなイメージになる。ホソバシラガゴケは、京都西芳寺(別名:苔寺)の苔庭でも有名である。茎の高さは、2〜3センチ程度だが、コロニーの厚みが増してくるとそれ以上になることもあり、たくさんの葉が重なり合うように密に付き、乾くと白色が強くなる。
【0037】
ヒノキゴケ(ヒノキゴケ科、蘚類)は、非常に繊細な感じでウグイス色の羽毛感のあるコケで、新葉が展開したときが最も美しい。直射日光と乾燥を嫌う。
【0038】
シノブゴケ(シノブゴケ科、蘚類)は、茎は5〜10cmに達して密に羽状に分枝し、平らな尾状となり黄緑色の大きなマットをつくる。
【0039】
カモジゴケ(シッポゴケ科、蘚類)は、濃い緑が一年中変わることがなく表面も均一なので半日陰地に最適。細長く伸びた葉が同じ方向にやや曲がり、葉先が棒状に細長く伸び動物の尻尾のような感じになる。
【0040】
用いられるコケの種類は、設置場所によって選定することができる。コケには大きく分けて、好日性、半日陰性、日陰性のものがあり、それぞれ生育に太陽光が必要なもの、太陽光があまり必要でないもの、太陽光が不要なものがある。例えば、設置方向の関係で太陽光が当たらない場所や、当たりにくい場所には、日陰性、半日陰性のコケを用いるとよい。例えば、スナゴケ、ハイスナゴケ、ハイゴケ等は、太陽光が当たるところで用いるとよく、シッポゴケ、カモジゴケ、トヤマシノブゴケ、ヒノキゴケ等は、日陰で用いるのがよい。
【0041】
本発明では、日当たりのよいところ、日当たりが多少あるところで生育するものが好ましく、例えば、スナゴケまたはハイゴケが好ましい。
【0042】
(排水材)
排水材は、コケ基材の大雨時の水没防止や、夏場の滞留した水分の温度上昇によるコケ死滅の防止が目的である。嵩上げされた立体的構造の繊維や発泡スチロール、発泡ポリプロピレン、硬質塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ABS等の硬質の熱可塑性樹脂等が好ましい。例えば0.5〜5cm程度の厚さに成形される。また木毛繊維、ヤシ繊維も好ましい。形状は、板状、線状、棒状、螺旋状にカールさせた状態、凹凸状が好ましい。
【0043】
(保水材)
苔は根から水分を吸収せず、葉の表面から直接水分を吸収するので、保水材は乾燥時に葉に水分を供給することができ、またコケの培地になる。保水材の保水量は湿潤時(水を安定保持時)を500g/m以上保水できる材料が好ましく、750〜30000g/mがより好ましい。30000g/m以下の保水量であれば、コケ緑化基材が重くならず、屋上に使用するときに好ましい。
【0044】
材料としては、繊維が好ましく、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、セルロース、ポリウレタン、芳香族ナイロン、ポリベンズイミダゾール、ノボロイド等の合成繊維やそれらの複合繊維、アセテート等の半合成繊維、キュプラ、レーヨン等の再生繊維、絹、綿、羊毛等の天然繊維、またはそれらの混合繊維等からなる織布や不織布等のシート状のもの、繊維ウェッブ状のものを組み合わせて用いることができる。さらにフェルト、スポンジ、パルプ類、ロックウールも好ましい。
【0045】
また、植物繊維、熱可塑性樹脂製糸条(例えば、モスネット協会製作、商標:モスフラット)、布(織布、不織布繊維)、保水性骨材、保水性発泡体、合成繊維綿マット、繊維ボード、繊維球状体等が用いられ、これらを単独あるいは組み合わせて使用できる。
【0046】
保水材はシート状が好ましく、排水材とは縫製や編み込み、挟み込み等により、1体化することが好ましい。厚さは十分な保水性があればよく特に制限はないが、0.3〜10cmの範囲が好ましい。
【0047】
また、コケが定着し易いように、綿や不織布等の繊維材で保水性骨材を包んで用いるようにすることができる。
【0048】
なお、保水性骨材としては、パミス(大江化学社製商品)、ゼオライト、珪藻土、軽石、パーライト等の多孔性骨材を、粒状のまま、あるいはセメントや接着剤で固めて使用することができる。
【0049】
(突起物)
本発明は、保水材より排水材とは反対方向(上部)に突き出た突起物があり、突起物は、(1)複数個が連結され、(2)該保水材の表面より0.5〜5cmの高さがあり、かつ(3)該突起物の上から50kgf/200cm(24.5kPa)の荷重をかけた時の平均変形率が0〜60%であることが特徴である。
【0050】
突起物は、人がコケ基材を踏んでもコケに踏圧がかかることを防止し、風雨時にもコケ飛散を防止することができ、コケの活着を助ける効果がある。
【0051】
突起物は、人がコケ基材を踏んでも倒れないよう各突起物を連結する。
【0052】
人の踏圧等、荷重をかけた時の突起物の硬さは、50kgf/200cm(24.5kPa)の荷重をかけた時の平均変形率が0〜60%である。
【0053】
本発明は複数の突起物群の平均変形率が0〜60%であり、60%を超えて変形すると、コケに圧力がかかり好ましくない。また、突起物1つの変形率は0〜80%が好ましい。この性能であれば、人が乗ったり踏んだりしても、コケの生育に影響がない。
【0054】
ここで変形とは、突起物がつぶれたり、倒れたりして変化することをいい、本発明で言う変形率とは、突起物の保水材表面からの高さの変化をいう。例えば、10cm×20cm板で50kgの荷重をかけた時の変形率50%とは、高さ5cmの突起物が倒れたり、つぶれたりして保水材表面からの高さが2.5cmになったことを言う。平均変形率は10個の突起物の変形率の平均である。
【0055】
高さとしては、保水材の表面から0.5〜5cmが好ましい。0.5cm以上でコケに踏圧がかかることを防止する効果があり、5cm以下ではコケの育成に支障がない。
【0056】
幅は、0.1〜2cmが好ましい。0.1cm以上でコケに踏圧がかかることを防止する効果があり、2cm以下ではコケの育成に支障がない。
【0057】
個数は、人が乗った時、人の足裏に複数個当たることが好ましく、100個/m以上が好ましい。
【0058】
形状は特に限定されないが、断面が円、楕円、正方形、長方形、ひし形、四角形、正三角形、三角形、多角形、円柱状、角柱状、中空のチューブ状等が挙げられる。上から見た時の径は、あまり大きいとコケの育成に支障があるため、上から見た断面積は4cm以下が好ましい。
【0059】
材質は特に制限はないが、コストと性能から、汎用プラスチック類(ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等)が好ましい。
【0060】
また、樹脂またはゴムを用いてもよい。熱可塑性材料としては、熱可塑性エラストマーが好適に用いられ、熱硬化性材料としては、ゴムまたはゴム発泡体が好適に用いられる。合成樹脂、天然樹脂、再生樹脂、合成ゴム、天然ゴムまたは再生ゴムのいずれを用いてもよい。
【0061】
(連結物)
コケ緑化基材を複数連結して屋上に施工する時に容易に物理的に連結できる形状であればよく、連結物部分は凹凸があるものが好ましい。連結することにより、ユニットとしての耐風性等の強度が増加する。
【0062】
本発明においては、上述のような排水材及び保水材からなるコケ緑化用基板の保水材の床にコケを入れて育てると、コケの上部には何も存在しないので、コケの成長点にストレスを全く与えない。そのため均一に成長してしかも早く成長する。保水材は透水性もよく、排水材があることから水の滞留がないため、夏場の水温上昇によるコケの死滅もない。突起物はコケの間にあるので、成長を阻害することなく、成長につれて群生を形成しやすく、コケの動きをネットが防止する。そのため、成長後は風による飛散も少なくなる。基板内に均一に成長したコケは見た目にも美しいコケの緑を、その上を歩いて鑑賞でき、なおかつ、敷設するだけで緑化を図ることができる。
【0063】
また、本発明において、コケが成長したコケ緑化基材はコケが乾燥した状態でもコケは死滅しないため、重ねてダンボール箱にも納まるため、在庫しやすく、しかも乾燥状態でも軽く、持ち運びにも便利な形状で構成できる。
【0064】
本発明のコケ緑化基材を敷設して屋上緑化するには、コケの中でも乾燥に強くて、日向性のスナゴケが最適であるので、そのスナゴケをコケ緑化用基板で育成して、10〜15mmに成長した基盤を、屋上やテラスに敷設するだけで緑化できる。万一コケの成長に問題が生じても容易にコケ緑化基材ごと取り替えることができて、小ロット、大ロットにも対応が可能である。また、コケが均一に成長するため、美しく鑑賞用としても利用される可能性がある。スナゴケは水分が全くない状態でも仮死状態で生命を維持するため、散水装置がなくても死滅することがなく、根がないので、防根シートの必要性もない。また、土や砂を使用しないので草が成長せず、草取りの必要性もない。他の芝、セダム、草木の緑化に比べると、大変メンテナンスのかからない緑化を提供できる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
実施例
図2(A)のように突起物基材1をポリエチレンで作製した。突起物1−1は下部で連結され、突起物基材1は連結部1−2を有する。突起物1−1は直径0.6cmの円柱状で高さ5cm、2000個/mとした。
【0067】
次に、図2(B)のように突起物基材1の上に、排水材4として厚さ2cmの積水化成社製発泡スチロール、さらにその上に保水材3として厚さ1cmのユニチカ社製ポリエステルスパンボンド不織布を刺して固定し、本発明のコケ緑化用基板を作製した。突起物1−1は保水材3の上から、2cm出ている。
【0068】
コケ緑化用基板の保水材3の上にスナゴケ2の種コケを蒔いて散水し、活着させ育成して、コケ緑化基材10を得た。
【0069】
突起物1−1に10cm×20cm当たり50kgの加重を掛けて突起物の変形率を測定したところ20%であった。
【0070】
建物の屋上に複数のコケ緑化基材10を並べて、屋上全面を緑化した。コケ緑化基材10は適度な大きさであり、連結部があるので全面を緑化の施工は容易であった。1年間観察した結果、雨水のみで育成ができ、灌水、施肥が不要であった。風雨でもコケの飛散がなく、屋上部に水の滞留がなく、風雨に強いことが分かった。コケの成長方向に障害物がないことから生育も良好で、茎は直立し緑色の葉は密で、景観的にも憩いのスペースとして優れていた。気温35℃の昼間に、日射が当たるコンクリート表面が60℃時、コケ緑化基材下のコンクリートは30℃であり、遮熱効果が確認された。さらに最も良かったのはその上を人が歩くことができた。
【符号の説明】
【0071】
1 突起物基材
1−1 突起物
1−2 連結部
2 保水材
3 排水材
4 コケ
10 コケ緑化基材
20 コケ緑化用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも排水材、保水材及びコケからなるコケ緑化基材において、該保水材上に該コケが活着し、かつ該保水材より該排水材とは反対方向(上部)に突き出た突起物があり、該突起物は、(1)複数個が連結され、(2)該保水材の表面より0.5〜5cmの高さがあり、かつ(3)該突起物の上から50kgf/200cm(24.5kPa)の荷重をかけた時の平均変形率が0〜60%であることを特徴とするコケ緑化基材。
【請求項2】
前記突起物の上から50kgf/200cm(24.5kPa)の荷重をかけた時の変形率が0〜80%であることを特徴とする請求項1に記載のコケ緑化基材。
【請求項3】
前記突起物1個の上から見た時の断面積が4cm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のコケ緑化基材。
【請求項4】
前記突起物が1m当たり100個以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコケ緑化基材。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のコケ緑化基材が連結物を有し、該連結物により複数のコケ緑化基材を連結させたことを特徴とするコケ緑化基材ユニット。
【請求項6】
少なくとも排水材及び保水材からなるコケ緑化用基板において、該保水材より該排水材とは反対方向(上部)に突き出た突起物があり、該突起物は、(1)複数個が連結され、(2)該保水材の表面より0.5〜5cmの高さがあり、かつ(3)該突起物の上から50kgf/200cm(24.5kPa)の荷重をかけた時の変形率が0〜80%であることを特徴とするコケ緑化用基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−191879(P2012−191879A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57424(P2011−57424)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(303000394)コニカミノルタビジネスエキスパート株式会社 (8)
【Fターム(参考)】