説明

コネクター固定具

【課題】コネクターが取り付け孔から落下するのを、コネクターや取り付け孔を変更せずに防止する。そして、その際、ガタなどを生じないようにする。
【解決手段】コネクター10のハウジング11に間隔を置いて並列に設けた一対の突部12間に挿入され、突部12の間隔を保つスペーサー部21と、前記スペーサー部21をハウジング11に装着する係止部22とからなる固定具20を使用する。この固定具20は、スペーサー部21がハウジング11の突部12間に挿入され、突部12の間隔を保って撓みを防止し、取り付け孔13と係合する突部12の撓みによる係合量の低下でコネクター10が落下するのを防止する。このように、突部12の間隔を保持して抜け落ちを防止するため、コネクター10や取り付け孔13の変更は必要なく、取り付け孔13とハウジング11間に隙間を形成する必要もないためガタを生じることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、取り付け孔からの抜け落ちを防止するコネクター固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パネルに直接取り付けられるコネクターとして、例えば、図2の本実施形態で述べるパネルマウント用のコネクター10がある。このコネクター10は、図2に示すように、ハウジング11に間隔を置いて並列に設けた一対の突部12を、前記ハウジング11を嵌入する取り付け孔13の対向するエッジ14に係合させて取り付ける。すると、押されたコネクター10の突部はエッジ14に圧迫されて図3の矢印のように撓むことになる。
【0003】
ところが、このように取り付けられたコネクター10では、コネクター10にプラグ15を差し込むと、突部12の撓む量に対して、例えば、取り付け孔13が大きめであったり、取り付けが不十分で撓み量に対する余裕度が十分でなかったり、突部12の弾性が劣化したりして、突部12とエッジ14との係合が少なくなっていると、コネクター10が外れてパネルPの内側Bに落ち込むことになる。
【0004】
このような問題を解決する一つの方法として、例えば、図7の特許文献1のように、パネルPに固定具1で止める方法が考えられる。この方法は、プラグ15を固定する点で本願と違っているが、固定方法としての考え方は同じである。
【0005】
すなわち、この方法では、図7に示すように、固定具1は、引っ掛け部2と係止部(文献では湾曲部)3とからなっている。前記引っ掛け部2は、フック状をしており、フックは外向きに折曲してある。また、係止部3は、プラグ15の両側面を弾性でもって把持するように折り曲げてある。
【0006】
そのため、この固定具1では、まず、引っ掛け部2を図7の破線のように、隙間4から挿入したのち、プラグ15をコネクター10に差し込みながら、係止部3を矢印のように下方に回して取り付けると、プラグ15をパネルPに固定できる。
【0007】
したがって、このような考え方をコネクター10に置き換えて適用すれば、パネルPからの抜け落ちを防止できる。
【特許文献1】特開2004−356079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のように、パネルに固定具で止める方法では、図2のように、ハウジング11の上部にロック用(プラグ)の係合部16があると、前記係合部16が邪魔をして固定具1を取り付けられない問題がある。そのため、このような固定具1を使用するためには、コネクター10の形状を変更する必要がある。
【0009】
また、上記のように、固定具1で止める方法では、パネルPとコネクター10の間に引っ掛け部2を挿通するための隙間4を形成する必要がある。そのため、図2のものでは、取り付け孔13の形状を変更しなければならず、しかも、図3のように、ハウジング11を嵌入して取り付け孔13に支持させているので、前記のように隙間4があるとガタを生じる問題もある。
【0010】
そこで、この発明の課題は、コネクターや取り付け孔を変更せず、かつ、ガタを生じることなく、取り付け孔からの抜け落ちを防止できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明では、ハウジングに間隔を置いて並列に設けた一対の突部間に挿入されて、突部間の間隔を保つスペーサー部を有する構成のコネクター固定具を採用したのである。
【0012】
このような構成を採用することにより、固定具のスペーサー部が、ハウジングの突部間に挿入されると、挿入されたスペーサー部は、突部間の間隔を保って撓みを防止する。そのため、コネクターの突部はエッジに圧迫されても撓むことはなく、例えば、コネクターにプラグを差し込んだ際に、取り付け孔が大きめで係合が少なかったり、取り付けが不十分で撓み量に対する余裕度が十分でなかったり、突部の弾性が劣化して突部とエッジとの係合が少なくなっていても、簡単にコネクターが外れてパネルの内側に落ち込むことはない。このように、ハウジングの突部の間隔を保持することで、抜け落ちを防止するため、コネクターや取り付け孔の変更は必要なく、しかも、取り付け孔とハウジングの間に隙間を形成する必要もないためガタを生じることはない。
【0013】
このとき、上記一対の突部がハウジングの両側に設けられたものとして、両側の突部に挿入されるスペーサー部をハウジングを跨いで接続し、ハウジングに装着するようにした構成を採用することができる。
【0014】
このような構成を採用することにより、スペーサー部を連結したので、両側の突部への装着を連携して行って、両側の突部の間隔を保って撓みを防止する。
【0015】
また、このとき、上記一対の突部がハウジングの取り付け孔への嵌入端から他方の端部に向けて形成され、形成された突部の間を溝状とし、その溝に係合する突起を形成した係止部を設けて、外れ止めとした構成を採用することができる。
【0016】
このような構成を採用することにより、固定具は、スペーサー部と係止部の突起の二点で溝に係合して外れないようにできる。また、前記突起は溝に係合させることで、スペーサー部を挿入する際のガイドとしても使用できる。
【0017】
また、このとき、上記スペーサー部が、断面をコの字形とし、前記コの字の開口側をハウジング側にして、上記突部間あるいは突部の間に形成された溝に挿入し、前記突部または溝をコの字の対向する面で支持して押し広げるようにした構成を採用することができる。
【0018】
このような構成を採用することにより、スペーサー部は、突部間あるいは突部間に形成された溝に挿入すると、挿入された突部または溝をコの字の対向する面で支持して押し広げて撓みを防ぐ。そのため、面が接する突部または溝全体の撓みを効果的に防止できる。
【0019】
また、このとき、ハウジングに設けられた突起に係合するストッパー部を形成した構成を採用することができる。
【0020】
このような構成を採用することにより、ストッパー部をハウジングに設けられた突起に係合させることで、前記突起を利用して固定具を固定できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、上記のように構成したことにより、コネクターのパネルからの抜け落ちを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、この形態の固定具20は、スペーサー部21と係止部22で構成された金具で、図2のパネルマウント用のナイロンコネクター10に装着する。
【0023】
スペーサー部21は、図1のように、左右に設けられており、各スペーサー部21は、挿入部23と連結部24とからなっている。
すなわち、図1のものでは、挿入部23は、垂直なプレートの先端を内側に折り曲げて、断面をコの字形としたもので、コの字の開口25が内側になるように形成してある。そのため、コの字の対向する上下の面23a、bが、それぞれ、後述するハウジング11の溝(突部12の間隔)33の内側に接して支持するようにしてある。また、その際、挿入部23の前後端23c、dを内側へ折り曲げて、端部の幅を縮小してある。こうすることで、前記突部12の溝(突部の間)への導入や溝からの取り外しが容易にできるようにしてある。
また、連結部24は、前記挿入部23を係止部22に接続するためのもので、ここでは、プレート状となっている。
【0024】
一方、係止部22は、この形態の場合、コの字の開口26を伏せた形状をしており、その開口26の端部に、それぞれスペーサー部21を設けた形状となっている。
すなわち、図1のように、コの字の開口26に対して前方に90°クロスした方向にスペーサー部21を形成した形状となっている。
また、係止部22は、コの字の開口26の寸法を、後述するコネクター10のハウジング11の幅に合わせて形成することにより、ハウジング11を跨いで装着できるようにしてある。
さらに、係止部22には、コの字形の折り曲げ部分に、それぞれ、突起27が形成されている。前記突起27は、例えば、スリットを上下に設け、形成された細い帯状の部分を内側に折り曲げたもので、後述のように、ハウジング11の突部の溝33に係合して係止部22が外れるのを防止する。また、装着の際には、前記ハウジング11の突部12の溝33に係合させることで、ガイドとしても使用できる。
加えて、係止部22には、固定具20の移動を止めるストッパー部29が設けられている。前記ストッパー部29は、この形態では、図1のように、係止部22のスペーサー部21を接続するコの字の水平部分に形成されている。
すなわち、前記水平部分の中央部分を打ち抜いて、凸形の内側にコの字形の係合部30を設けたもので、後述のように、前記係合部30をハウジング11の突起28に嵌めることで固定具20の移動を止める。このとき、前記係合部30の先は、図1のように、若干反らすことで、持ち上げ易くして、突起28との係合の解除を容易にできるようにしてある。なお、ストッパー部29は、ハウジング11の突起28を利用するので、装着するハウジング11の形状によって形や形成箇所は異なる。
【0025】
なお、図1の符合31、32で示す折曲部分は、固定具20を指で掴むためのもので、装着時の作業性を向上させるためと、安全を図るためのものである。また、符合40は、開孔で軽量化を図るためのものである。
【0026】
この形態は、上記のように構成され、この固定具は、図2のようなパネルマウント用のナイロンコネクター10に装着される。
【0027】
前記コネクター10は、図2のように、取り付け孔13へ筐体の内側B(外側Aとする)から嵌入するタイプのもので、この形態の場合、取り付け孔13は、図2のように、両側に係合用の孔を設けた十字型となっている。そのため、ハウジング11の両側面には、一対の突部12が設けられている。この突部12は、間隔を置いて並列に設けたもので、取り付け孔13への嵌入端から他方の端部に向けて形成されている。その結果、間隔を置いて形成された一対の突部12は溝33を形成する。
一方、このように溝33を形成する一対の突部12の外形形状は、返し34を備えた略楔形となっており、前記返し34部分には、図3のように、段を設けて嵌入した取り付け孔13の対向するエッジ14と係合するようになっている。このため、前記返し34は、抜け止めとして作用すると同時に、段によってハウジング11を水平に支持するのである。
また、コネクター10のハウジング11の上部には、プラグ15の爪を嵌めるためのロック用の係合部16が設けられている。
この他、前記ハウジング11には、突起28が設けられており、この突起28を利用して先述したように、ハウジング11に装着した固定具20の移動を止める。
【0028】
このようなコネクター10は、図2のように、取り付け孔13に嵌入する。すると、図3のように、両側の突部12が取り付け孔13の上下のエッジ14に係合し、圧迫されて撓む。
【0029】
この状態で、コネクター10の後方から固定具20を嵌める。
すなわち、固定具20のスペーサー部21をハウジング11の突部12の溝33に嵌入して前方へスライドさせる。
【0030】
その際、スペーサー部21は、挿入部23の先端23aを内側へ折り曲げて幅を縮小してあるため、圧迫された溝33への導入も容易にできる。また、圧迫された溝33に導入された挿入部23は、コの字の対向する上下の面23a、bが、溝33の上下の内面に接する。そのため、挿入部23を挿入するにつれて、溝33を上下に押し広げる。
その結果、挿入したスペーサー部21が、図4のように、取り付け孔13のエッジ14の位置に達すると、図4の矢印のように、スペーサー部21のコの字の上下の面23a、bが溝33を押し広げ、エッジ14の圧迫による撓みを改善する(除く)。
このとき、固定具20の折曲部32は、コネクター10のハウジング11のロック用係合部16に当たり、同時に、ストッパー部29が、コネクター10のハウジング11の突起28に嵌り、後方への移動を止める。ここで、固定具20の係止部22の突起27は、図5のように、ハウジング11の突部12の溝33に嵌り、固定具20のスライドをガイドする。また、装着後は固定具20が上下方向に外れないように保持する。
【0031】
このように、固定具20は、ハウジング11にロック用の係合部16があっても、また、ハウジング11と取り付け孔13との間に隙間4がなくても装着できる。したがって、コネクター10や取り付け孔13の形状を変更しなくても装着できるし、ガタを生じることもない。また、固定具20は、係止部22の突起27とストッパー部29により、上下及び前後の移動を止めて、強固に装着できる。その状態を図6に示す。
【0032】
このようにして固定具20が装着されたコネクター10は、固定具20によりエッジ14の圧迫による撓みが除かれているので、図6のように、プラグ15を差し込んでも、簡単にコネクター10が外れてパネルPの内側Bへ落ち込むことはない。
また、そのため、取り付け孔13が大きめで係合が少なかったり、取り付けが不十分で撓み量に対する余裕度が十分でなかったり、突部12の弾性が劣化して突部12とエッジ14との係合が少なくなってもパネルPの内側Bへ落ち込むことはなく、落ち込みを防止できる。
【0033】
ちなみに、装着した固定具20を取り外す場合は、固定具20のストッパー部29の係合部30を持ち上げ、突起28との係合を解除したのち、後方へ引き抜けばよい。その際、スペーサー部21の挿入部23の後端23dが溝33からの脱出をガイドするので、取り外しも容易にできる。
【0034】
なお、この発明の固定具20は、撓みの防止や装着に、積極的に弾性を利用したものでない。そのため、金属でも樹脂でも作成可能である。
また、実施形態では、固定具20をハウジング11の上部(ロック用の係合部16が在る)側から装着するようにしたが、これに限定されるものではない。底部から溝33までの寸法が上部から溝33までの寸法と同じであれば、底部側に装着しても(突起28もある)作用効果は同じである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態の斜視図
【図2】実施形態の装着状態を示す分解斜視図
【図3】実施形態の作用説明図
【図4】実施形態の作用説明図
【図5】実施形態の断面図
【図6】実施形態の使用状態の斜視図
【図7】従来例の作用説明図
【符号の説明】
【0036】
10 コネクター
11 ハウジング
12 突部
13 取り付け孔
14 エッジ
16 係合部
20 固定具
21 スペーサー部
22 係止部
23 挿入部
24 連結部
25 開口
26 開口
27 突起
28 突起
29 ストッパー部
30 係合部
31 折曲部
32 折曲部
33 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに間隔を置いて並列に設けた一対の突部を、前記ハウジングを嵌入する取り付け孔の対向するエッジに係合させて取り付ける抜け止用のコネクターの固定具であって、
前記並列に設けた一対の突部間に挿入されて、突部間の間隔を保つスペーサー部を有するコネクター固定具。
【請求項2】
上記一対の突部がハウジングの両側に設けられたものとして、両側の突部に挿入されるスペーサー部をハウジングを跨いで接続し、ハウジングに装着するようにした請求項1に記載のコネクター固定具。
【請求項3】
上記一対の突部がハウジングの取り付け孔への嵌入端から他方の端部に向けて形成され、形成された突部の間を溝状とし、その溝に係合する突起を形成した係止部を設けて、外れ止めとした請求項1または2に記載のコネクター固定具。
【請求項4】
上記スペーサー部が、断面をコの字形とし、前記コの字の開口側をハウジング側にして、上記突部間あるいは突部の間に形成された溝に挿入し、前記突部または溝をコの字の対向する面で支持して押し広げるようにした請求項1乃至3のいずれかに記載のコネクター固定具。
【請求項5】
上記ハウジングに設けられた突起に係合するストッパー部を形成した請求項1乃至4のいずれかに記載のコネクター固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−153308(P2010−153308A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332750(P2008−332750)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)