説明

コネクタ

【課題】 低接続圧、半田レス、かつ多数回脱着を可能にして安定した接続を実現できるコネクタを提供すること。
【解決手段】 一対の突出部15を形成した弾性体11と、前記突出部15及び前記突出部15間を覆うフィルム21とを有し、該フィルム21には前記突出部15に対応した位置に導体部31が配設されており、前記突出部15には複数の溝部17が形成されており、前記フィルム21は前記溝部17に対応して形成した切り欠き部23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続対象物及び相手接続対象物を相互に接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子製品では、小型化が進む中で内部における実装基板の高密度化の要求が高まっている。このような状況においては、基板へ実装される各電子部品への小型化の要求が高く、限られたスペースの中にコネクタをいかに小型、多芯数、狭ピッチとすることができるかが要件となっている。
【0003】
部品同士を固定し、同時に電気的接続を実現させる手段としては、主要なものに、導電粒子や半田を接続媒体として基板間へ挟み込む方法が知られている。
【0004】
従来技術1におけるコネクタとしては、樹脂フィルムに導電薄膜を形成した球体を埋め込んでいる電気接続用コネクタがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
従来技術2におけるコネクタとしては、絶縁シートの両面へ粘着剤を配し、導電性繊維を縫い込む構造となっている電機接続部材がある(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
従来技術3におけるコネクタとしては、粘着性によってコンタクトがインシュレータに貼り付いている粘着性コンタクトを用いるコネクタがある(例えば、特許文献3を参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平5−74512号公報
【特許文献2】特開2002−56907号公報
【特許文献3】特開2005−38700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、樹脂フィルムに導電薄膜を形成した球体を埋め込む構造であり、球体を一つずつ樹脂フィルムへ挿入するため、量産性に劣りかつコンタクトの多芯数対応への展開が困難であるという問題がある。
【0009】
また、特許文献2は、絶縁シートの両面へ粘着剤を配し、導電性繊維を縫い込む構造であり、縫い込み段階でミスをすると導電性繊維だけではなく、縫い込み孔の空いた絶縁シートを破棄する必要があるため、再試行性に劣るという問題がある。
【0010】
また、特許文献3では、コンタクトが粘着性によってインシュレータに貼り付いているため、接続対象となる基板の端子への追従性を弱めてしまい、さらに粘着性面へ直接薄膜を形成しているため繰り返し嵌合性に劣るという問題がある。
【0011】
それ故に、本発明の課題は、低接続圧、半田レス、かつ多数回の脱着を可能にして安定した接続を実現できるコネクタを提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の課題は、限られたスペースの中に小型、多芯数、狭ピッチで配置できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、接続対象物及び相手接続対象物間を接続するコネクタにおいて、前記接続対象物及び前記相手接続対象物の接触部に対応する部分に一対の突出部を形成した弾性体と、前記突出部及び前記突出部間を覆うフィルムとを有し、該フィルムには前記突出部に対応した位置に導体部が配設されており、前記突出部には複数の溝部が形成されており、前記フィルムは前記溝部に対応して形成した切り欠き部を有するコネクタであることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコネクタによれば、導体部が設けられているフィルムを弾性体に保持することにより変形能力をもたせ、さらに接続対象物及び相手側接続対象物の接触部に対応するように配列することによって、接続対象物及び相手側接続対象物の接触部の配列に合わせた配置が可能となり、限られたスペースの中に小型、多芯数、狭ピッチで配置することができる。
【0015】
また、本発明のコネクタによれば、弾性体を接続対象物及び相手側接続対象物の接触部のピッチあるいは配線幅に合わせた溝部によって弾性体の変形能力を向上させることができ、接続対象物及び相手側接続対象物の接触部の歪や反り、または導電部の微小な高さの違いに対して導体部のレベルでの接続安定性を実現できる。
【0016】
また、本発明のコネクタによれば、接続対象物及び相手側接続対象物の接触部とは、フィルムに設けた導体部により面接触となるため、従来のコネクタよりもはるかに低接触力で、しかも接続の安定性を実現できる。
【0017】
また、本発明のコネクタによれば、フィルムの導体部の間のフィルムをレーザーやプレスなどの方法でカットすることにより、導体部のレベルでの接続の安定性を向上させるこができる。
【0018】
また、本発明のコネクタによれば、接続対象物及び相手側接続対象物の接触部との接続に半田を使用しないため、配列ミスなどによる多数回の脱着が可能となる。
【0019】
さらに、本発明のコネクタによれば、低接触力かつ面接触を実現することにより、接続対象物及び相手側接続対象物の接触部を傷付けることなく接続することができることから、多数回の繰り返し嵌合性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のコネクタは、接続対象物及び相手接続対象物間を接続するコネクタにおいて、前記接続対象物及び前記相手接続対象物の接触部に対応する部分に一対の突出部を形成した弾性体と、前記突出部及び前記突出部間を覆うフィルムとを有し、該フィルムには前記突出部に対応した位置に導体部が配設されており、前記突出部には複数の溝部が形成されており、前記フィルムは前記溝部に対応して形成した切り欠き部を有することにより実現した。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明に係るコネクタの実施例1を示している。図2は、コネクタを分解した状態を示している。
【0022】
図1及び図2を参照して、コネクタ1は、弾性体11と、この弾性体11に保持されている絶縁性のフィルム21と、フィルム21に配設されている導電性の導体部31とを有している。
【0023】
弾性体11は、略長板形状を呈しており、導体部31が配設されているフィルム21を保持する保持面13と、保持面13に対向している平坦な基面14とを有している。
【0024】
弾性体11には、長手方向を直交する幅方向の両側のそれぞれから突出している一対の突出部15が形成されている。突出部15は、基面14を延在されている平坦な突出基面14aと、保持面13から突出基面14の辺側へ向かって略円弧状に形成されている曲面15aと、曲面15aから突出基面14aに対して直交する方向で曲面15a及び突出基面14a間を接続している側面15bとを有している。
【0025】
フィルム21は、弾性体11の保持面13全体を覆うように弾性体11に保持されている。複数の導体部31は、フィルム21の表面でフィルム21の長手方向に間隔をもち、かつフィルム21の長手方向を直交する幅方向において帯状のパターンとして配列されている。即ち、導体部31は、保持面13上にフィルム21を介して、一対の突出部15及び一対の突出部15間に対応して位置するような配線パターンとなっている。
【0026】
一方側の突出部15上の導体部31は、配線基板としての接続対象物(図示せず)に接触する。また、もう一方側の突出部15は、配線基板としての相手接続対象物(図示せず)に接触する。即ち、接続対象物及び相手接続対象物間は、導体部31を介して相互に接続される。
【0027】
弾性体11は、成型などの方法を用いて成型することができる。導体部31は、フィルム21上に金属薄膜をパターンニングすることによって得られる。この際、導体部31は、一対の突出部15及び一対の突出部15間に対応した位置に配設される。
【0028】
金属薄膜をフィルム21上に設けるには、メッキやスパッタ、もしくはエッチングなどの微細加工技術を用いることで、数ミクロン単位で積層できる。さらに、導体部31は、フィルム21の長手方向において0.5mm以下の間隔をもって配列することができるので、狭ピッチ化が可能である。なお、フィルム21としては、FPC(フレキシブル・プリンテッド・サーキット)を採用することもできる。
【0029】
弾性体11の保持面13には、フィルム21が追従するように貼り付け固定される。弾性体11の材料としては、主にシリコン系の耐熱性を有するゴムが望ましい。なお、弾性体11の材料としてはゲル材料としたものもある。
【0030】
また、弾性体11とフィルム21との貼り付け方法は、接着剤あるいはカップリング剤を塗布することによって可能である。なお、弾性体11とフィルム21との貼り付けは、熱溶着を行うことによっても実現できる。フィルム21としては、ポリイミド樹脂、アラミド樹脂などの樹脂の一種を採用する。
【0031】
図3は、図1に示したコネクタ1の応用例を示している。図4は、図3に示したコネクタの一部を断面して拡大した状態を示している。なお、図1乃至図3に示したコネクタ1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0032】
図3及び図4を参照して、コネクタ111は、弾性体11の突出部15に複数の溝部17が形成されている。弾性体13には、突出部15間に溝部17が曲面15a,側面15b及び曲面15aの近傍の保持面13の一部に、かつ導体部31に対向する部分を除く突出部15に形成されている。即ち、溝部17は、突出部15間に位置している。
【0033】
弾性体11には、導体部31の長手方向におけるピッチに合わせた溝部17を形成することによって、これらの溝部17が弾性体11の幅方向である圧縮方向へ変形したときの弾性体11の逃げ部分となり、一定の荷重状態において変形能力を向上させる役目を果たす。
【0034】
フィルム21には、弾性体13の保持面13へ保持するときに重ならないように弾性体13に溝部17を形成する。弾性体13は突出部15が溝部17によって凹凸形状となっていることから高い変形能力が得られる。なお、溝部17は、溝形状を変えることにより容易に変形能力を変えることができる。
【0035】
図5は、コネクタの応用例を示している。図6は、図5に示したコネクタの一部を断面し拡大して示している。なお、図1乃至図4において説明したコネクタ11,111と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0036】
図5及び図6を参照して、コネクタ211は、図3及び図4に示したコネクタ111の溝部17に対向しているフィルム21を切り欠くことによって切り欠き部23が形成されている。
【0037】
フィルム21には、切り欠き部23を形成することによって、導体部31間の弾性体11の変形量に独立性を持たすことで、接続対象物または相手接続対象物の歪や反り、または導体部31の微小な高さの違いに対して導体部31のレベルでの接続安定性を得ることが可能である。
【0038】
たとえば、接続対象物及び相手接続対象物の接触部の芯数が20芯×4列接続の場合には、100芯のコネクタ211を5分割しインシュレータ81へ挿入する手法も可能である。
【0039】
図7は、実施例3に示したコネクタ211を一列に設置するフレームとしてのインシュレータ51を示している。インシュレータ51には、長手方向に直列して並べられている二つの保持穴52が形成されている。インシュレータ51には、図8に示すように、コネクタ211を保持穴52に挿入することによって保持する。
【0040】
コネクタ211は、接続対象物及び相手接続対象物の配置及び接触部の芯数に合わせてインシュレータ51に保持穴52を形成し、その保持穴52へコネクタ211を挿入して保持することで、簡易的なコネクタ構造体を形成することができるため、汎用性が高く量産性に優れたコネクタ211となる。
【0041】
図9は、図5に示したコネクタ211を2列に配列して設置するインシュレータ61を示している。インシュレータ61には、二つの保持穴62が二列に並列した状態に形成されている。
【0042】
コネクタ211は、接続対象物及び相手接続対象物の配置及び接触部の芯数に合わせてインシュレータ61に保持穴62を形成し、その保持穴62へコネクタ211を挿入して保持することで、図10に示した簡易的なコネクタ構造体を形成することができるため、汎用性が高く量産性に優れたコネクタ211となる。
【0043】
図11は、図5に示したコネクタ211を四列に配列して設置するインシュレータ71を示している。インシュレータ71には、四つの保持穴72が四角板状のインシュレータ71の四つの辺のそれぞれに沿って形成されている。
【0044】
コネクタ211は、接続対象物及び相手接続対象物の配置及び接触部の芯数に合わせてインシュレータ71に保持穴72を形成し、その保持穴72へコネクタ211を挿入して保持することで、図12に示した簡易的なコネクタ構造体を形成することができるため、汎用性が高く量産性に優れたコネクタ211となる。
【0045】
図13は、コネクタ211を複数列に配列して設置するインシュレータ(GRID接続用)81を示している。インシュレータ81には、複数の保持穴82が四角板状のインシュレータ81に整列して形成されている。
【0046】
コネクタ211は、接続対象物及び相手接続対象物の配置及び接触部の芯数に合わせてインシュレータ81に複数の保持穴82を形成し、これらの保持穴82へコネクタ811を挿入して保持することで、図14に示した簡易的なコネクタ構造体を形成することができるため、汎用性が高く量産性に優れたコネクタ211となる。
【0047】
なお、図14では、保持穴82の一部にコネクタ211が保持されている状態を示しているが、全部の保持穴82にコネクタ211が保持することが可能である。
【0048】
図15は、LGA(ランド・グリッド・アレイ)もしくはBGA(ボール・グリッド・アレイ)チップ用のコネクタであり、下部にコネクタ211を実装したコネクタ構造体311を備えている。コネクタ構造体311は、接続対象物としての基板312に実装されている。コネクタ構造体311上には、相手接続対象物322が位置している。コネクタ211はバネ323によって押え込まれている。
【0049】
図16は、図12に示したコネクタ211が設けられているインシュレータ71の中央部分のスペース部分に接着剤411を塗布もしくは粘着性をもつ両面テープを貼り付けることによって、図15に示した相手接続対象物の接触を保持する形態例を示している。
【0050】
図15及び図16によって説明した接続対象物及び相手側接続対象物との接続には、半田を使用しないため配列ミスなどにより多数回の脱着が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のコネクタは、ICチップあるいは可撓性印刷配線基板などと配線基板、サブキャリアなどを接続するために用いる電気接続用のコネクタとしての用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明に係るコネクタの実施例1を示す斜視図である。
【図2】図1に示したコネクタを分解して示した斜視図である。
【図3】図1に示したコネクタの応用例を示す斜視図である。
【図4】図3に示したコネクタの一部を拡大し断面して示した斜視図である。
【図5】図3に示したコネクタの応用例を示す斜視図である。
【図6】図5に示したコネクタの一部を拡大し断面して示した斜視図である。
【図7】図5に示したコネクタを保持するインシュレータを示す斜視図である。
【図8】図5に示したコネクタを図7に示したインシュレータに保持した状態を示す斜視図である。
【図9】図5に示したコネクタを保持するインシュレータの応用例を示す斜視図である。
【図10】図5に示したコネクタを図9に示したインシュレータに保持した状態を示す斜視図である。
【図11】図5に示したコネクタを保持するインシュレータの応用例を示す斜視図である。
【図12】図5に示したコネクタを図11に示したインシュレータに保持した状態を示す斜視図である。
【図13】図5に示したコネクタを保持するインシュレータの応用例を示す斜視図である。
【図14】図5に示したコネクタを図13に示したインシュレータに保持した状態を示す斜視図である。
【図15】図5に示したコネクタを図13に示したインシュレータに保持した状態で、構造体とした応用例を示す斜視図である。
【図16】図5に示したコネクタを図12に示したインシュレータに保持した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
111,211 コネクタ
11 弾性体
15 突出部
17 溝部
21 フィルム
23 切り欠き部
31 導体部
51,61,71,81 インシュレータ
52,62,72,82 保持穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物及び相手接続対象物間を接続するコネクタにおいて、前記接続対象物及び前記相手接続対象物の接触部に対応する部分に一対の突出部を形成した弾性体と、前記突出部及び前記突出部間を覆うフィルムとを有し、該フィルムには前記突出部に対応した位置に導体部が配設されており、前記突出部には複数の溝部が形成されており、前記フィルムは前記溝部に対応して形成した切り欠き部を有することを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−310140(P2006−310140A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132391(P2005−132391)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)