説明

コネクタ

【課題】コストアップ及び大型化を招くことなく、しかも、強度低下などの不具合なくインピーダンスの整合性を高めて高周波性能を向上させることが可能なコネクタを提供すること。
【解決手段】キャビティ22を有するハウジング21と、キャビティ22内へ挿入されて収容される同軸端子31のアウター端子50とを備えたコネクタ11であって、アウター端子50は、導電性材料から成形されたアウター端子本体51と、アウター端子本体51の外周に一体成形された樹脂製の係止ブロック52とを有し、ハウジング21には、キャビティ22内に挿入された同軸端子31のアウター端子50の係止ブロック52を係止するランス24が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングに端子が挿入されて装着されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタとしては、樹脂製のハウジングに形成されたキャビティ内に金属製の端子が挿入されたものが一般的である。そして、このキャビティに挿入された端子は、ハウジングに形成されたランスが端子に形成された係止部に係止することにより、ハウジングに対して抜け止めされている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−243359号公報
【特許文献2】特開2005−174830号公報
【特許文献3】特開2008−159383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造のコネクタでは、ハウジングのランスが係止可能な係止部を端子に形成する必要があるが、この係止部は、キャビティへ所定位置まで挿入された状態でランスが確実に係止する形状としなければならず、このため、端子の形成用の金型の複雑化によるコストアップを招き、さらには、端子自体の大型化を招いてしまう。また、端子に大きな孔や切欠きなどの係止部を形成すると、端子の強度低下を招いてしまう。
【0005】
特に、同軸ケーブルの端部に設けられる端子では、インナー端子の周囲をアウター端子で覆ってシールド性を得ているが、アウター端子に大きな孔や切欠きなどの係止部を形成すると、全周におけるシールドが不十分となり、インピーダンスの不整合が生じ、高周波コネクタとして良好な性能を確保することが困難となってしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストアップ及び大型化を招くことなく、しかも、強度低下などの不具合なくインピーダンスの整合性を高めて高周波性能を向上させることが可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) キャビティを有するハウジングと、前記キャビティ内へ挿入されて収容される端子とを備えたコネクタであって、
前記端子は、導電性材料から成形された端子本体と、該端子本体の外周に一体成形された樹脂製の係止ブロックとを有し、
前記ハウジングには、前記キャビティ内に挿入された前記端子の前記係止ブロックを係止するランスが形成されていること。
(2) 上記(1)の構成のコネクタにおいて、前記端子本体には、前記係止ブロックの形成箇所に、窪み部が形成されていること。
(3) 上記(1)または(2)の構成のコネクタにおいて、前記端子は、前記端子本体が筒状に形成されて同軸ケーブルの外部導体と導通されたアウター端子からなること。
【0008】
上記(1)の構成のコネクタでは、端子本体の外周に一体成形された係止ブロックにハウジングのランスを係止させてハウジングのキャビティ内に端子を収容保持する構造であるので、端子自体にランスが係止される大きな孔や切欠きを形成する必要がなくされる。これにより、金型の複雑化によるコストアップ、大型化及び強度低下を抑えることができる。また、端子がアウター端子である場合、大きな孔や切欠きを形成することによるシールド性の低下を抑え、インピーダンスの整合性を高めて高周波性能を向上させることができる。
上記(2)の構成のコネクタでは、端子本体に形成された窪み部に係止ブロックを食い込ませて確実に一体化させることができる。
上記(3)の構成のコネクタでは、ハウジングのランスを係止させる大きな孔や切欠きを、アウター端子を構成する筒状の端子本体に形成する必要がないので、筒状の端子本体によって全周にわたって良好にシールドすることができ、また、インピーダンスの整合性を高めて高周波性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コストアップ及び大型化を招くことなく、しかも、強度低下などの不具合なくインピーダンスの整合性を高めて高周波性能を向上させることが可能なコネクタを提供できる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係るコネクタを断面視した斜視図である。
【図2】本実施形態に係るコネクタを構成する同軸端子を断面視した斜視図である。
【図3】同軸端子を構成するインナー端子の斜視図である。
【図4】本実施形態に係るコネクタを構成する同軸端子の斜視図である。
【図5】本実施形態に係るコネクタを構成する同軸端子の係止ブロックの成形前における斜視図である。
【図6】同軸端子の製造工程を示す図であって、図6(a)はインナー端子の成形工程を説明する斜視図、図6(b)はアウター端子の成形工程を説明する斜視図である。
【図7】インナー端子の成形工程を説明する金型及びインナー端子の斜視図である。
【図8】アウター端子の成形工程を説明する金型及びアウター端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本実施形態に係るコネクタを断面視した斜視図、図2は本実施形態に係るコネクタを構成する同軸端子を断面視した斜視図、図3は同軸端子を構成するインナー端子の斜視図、図4は本実施形態に係るコネクタを構成する同軸端子の斜視図、図5は本実施形態に係るコネクタを構成する同軸端子の係止ブロックの成形前における斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るコネクタ11は、同軸ケーブル1の端末に設けられる同軸コネクタである。
【0015】
このコネクタ11は、ハウジング21と、このハウジング21内に組み込まれた同軸端子31とを備えている。
【0016】
図2に示すように、同軸端子31は、インナー端子40と、アウター端子(端子)50とを備えており、それぞれ同軸ケーブル1に接続されている。
【0017】
この同軸端子31が接続される同軸ケーブル1は、芯線2と、芯線2の周囲に押出し被覆された絶縁層3と、絶縁層3の周囲に設けられた外部導体4と、外部導体4の周囲に被覆された外被5とを有している。
【0018】
図3に示すように、インナー端子40は、長方形形状の導電性材料である銅などの金属板からなる矩形片を、長手方向を中心軸として細筒状にプレス加工することにより形成されたインナー端子本体41を備えており、同軸ケーブル1の端部で露出された芯線2に加締められて接続されている。
【0019】
また、インナー端子40のインナー端子本体41には、合成樹脂によって成形された絶縁体42が一体的に設けられている。この絶縁体42は、断面円形に形成されたもので、その両端にフランジ部43を形成することにより、軸方向の中間部に、周方向へわたって凹んだ溝部44が形成されている。
【0020】
図4に示すように、アウター端子50は、円筒状に形成されたアウター端子本体(端子本体)51を有するもので、同軸ケーブル1の端部で露出された外部導体4の部分に巻き付けられて同軸ケーブル1の端部で露出された外部導体4の部分を覆うように同軸ケーブル1の端部に加締められて接続されている。
【0021】
このアウター端子50のアウター端子本体51は、長方形形状の導電性材料である銅などの金属板からなる矩形片を、長手方向を中心軸として細筒状にプレス加工することにより形成されている。
【0022】
また、アウター端子本体51には、合成樹脂によって成形された係止ブロック52が一体的に設けられている。この係止ブロック52は、断面略円形に形成されたもので、周囲の一部には、外周側へ突出する係止凸部53が形成されている。この係止ブロック52は、軸方向における成形位置が、インナー端子40の絶縁体42と同一位置とされており、これにより、絶縁体42の外周側に係止ブロック52が設けられている。
【0023】
図5に示すように、アウター端子50のアウター端子本体51には、係止ブロック52の係止位置に、周方向へ間隔をあけて複数(3個)の窪み部54が形成されており、係止ブロック52は、これらの窪み部54の形成位置におけるアウター端子50の外周に成形されている。アウター端子本体51の内周面には、窪み部54を形成することにより内周側に突出された突出部54aを有しており、これらの突出部54aは、インナー端子40の絶縁体42に形成された溝部44内に配置されている(図2参照)。これにより、アウター端子本体51とインナー端子40の絶縁体42とが互いに係合され、よって、インナー端子40とアウター端子50とが固定されている。
【0024】
上記構造の同軸端子31を収容するハウジング21は、合成樹脂から成形されたもので、前後に貫通するキャビティ22が形成されている。このキャビティ22には、ハウジング21の後端21a側の端子挿入口22aから同軸端子31が挿入されて収容される。
【0025】
ハウジング21は、その軸方向の中間部に段部23が形成されており、この段部23を境に、先端21b側は、キャビティ22の内径が小さくされている。
【0026】
また、キャビティ22を形成する上部には、ハウジング21の軸方向における段部23よりも後端21a側に、ランス24が形成されている。このランス24は、ハウジング21の後端21a側が連結されてハウジング21の先端21b側へ延在されており、その先端近傍には、キャビティ22の内部側へ突出する爪部25が形成されている。
【0027】
上記のコネクタ11において、ハウジング21へ同軸端子31を収容するには、ハウジング21の後端21a側の端子挿入口22aから、キャビティ22内へ同軸端子31を挿し込む。
【0028】
このとき、同軸端子31は、アウター端子50の係止ブロック52に形成された係止凸部53を、ハウジング21のランス24側へ向けた状態でキャビティ22へ挿入する。
【0029】
このように、キャビティ22へ同軸端子31を挿入すると、同軸端子31の係止ブロック52の係止凸部53がランス24の爪部25に接触して摺動し、爪部25がハウジング21の外周側へ押し出されてランス24が弾性変形する。
【0030】
そして、同軸端子31の係止ブロック52がハウジング21の段部23に当接すると、弾性変形していたランス24が復元し、同軸端子31の係止ブロック52の後端側に爪部25が入り込んで係止する。これにより、同軸端子31は、キャビティ22からの抜け出しが防止された状態でキャビティ22内に収容される。
【0031】
このように、上記実施形態に係るコネクタによれば、アウター端子本体51の外周に一体成形された係止ブロック52にハウジング21のランス24を係止させてハウジング21のキャビティ22内にアウター端子50を有する同軸端子31を収容保持する構造であるので、アウター端子本体51自体にランス24が係止される大きな孔や切欠きを形成する必要がなくされる。これにより、金型の複雑化によるコストアップ、大型化及び強度低下を抑えることができる。
【0032】
また、ハウジング21のランス24を係止させる大きな孔や切欠きを、アウター端子50を構成する筒状のアウター端子本体51に形成する必要がないので、筒状のアウター端子本体51によって全周にわたって良好にシールドすることができ、また、インピーダンスの整合性を高めて高周波性能を向上させることができる。
【0033】
しかも、アウター端子本体51に形成された窪み部54に係止ブロック52を食い込ませて確実に一体化させることができる。また、窪み部54を形成することにより、アウター端子本体51の内周側に突出する突出部54aがインナー端子40の絶縁体42に形成された溝部44内に配置される。これにより、別個の固定構造を備えることなく、アウター端子本体51とインナー端子40の絶縁体42とを互いに係合させてインナー端子40とアウター端子50とを確実に固定させることができる。
【0034】
次に、同軸端子31を製造する場合について説明する。
【0035】
図6は同軸端子の製造工程を示す図であって、図6(a)はインナー端子の成形工程を説明する斜視図、図6(b)はアウター端子の成形工程を説明する斜視図であり、図7はインナー端子の成形工程を説明する金型及びインナー端子の斜視図、図8はアウター端子の成形工程を説明する金型及びアウター端子の斜視図である。
【0036】
(インナー端子の成形)
図6(a)に示すように、インナー端子40のインナー端子本体41は、キャリア101に連結された連鎖端子の状態で供給される端子板部102をプレス成形型によりプレス加工して断面略U字状に成形される。キャリア101には、コネクタ組立時に使用されるロボットアーム等の運搬機器の凸部(図示しない)を嵌め込むための嵌合孔103が長手方向に並設されている。インナー端子本体41の成形時には、運搬機器の凸部が嵌合孔103に嵌合した状態で、連鎖端子の全体を移動可能にしている。
【0037】
断面略U字状のインナー端子本体41に、同軸ケーブル1の芯線2を挿し込んで配置させ、プレス成形型により加締め、芯線2にインナー端子本体41を接続させる。
【0038】
次に、図7に示すように、絶縁体42を成形するために、インナー端子本体41の上下から半円穴104が形成された上型106及び下型107を突き合わせ、これらの上型106及び下型107の半円穴104から形成された射出空間内に溶融状態の樹脂材料(絶縁材料)を注入する。
【0039】
樹脂材料が硬化したら、上型106を上昇させ、さらに、下型107を下降させて型外しを行う。これにより、フープ成形によってインナー端子本体41に絶縁体42が設けられたインナー端子40が成形され、また、同時に、このインナー端子40が同軸ケーブル1の芯線2に圧着されて接続される。
【0040】
(アウター端子の成形)
図6(b)に示すように、アウター端子50のアウター端子本体51は、キャリア111に連結された連鎖端子の状態で供給される端子板部112をプレス成形型によりプレス加工して断面略U字状に成形される。キャリア111には、コネクタ組立時に使用されるロボットアーム等の運搬機器の凸部(図示しない)を嵌め込むための嵌合孔113が長手方向に並設されている。アウター端子本体51の成形時には、運搬機器の凸部が嵌合孔113に嵌合した状態で、連鎖端子の全体を移動可能にしている。
【0041】
断面略U字状のアウター端子本体51に、同軸ケーブル1の端部に接続されたインナー端子40及び同軸ケーブル1の端部を挿し込んで配置させる。なお、同軸ケーブル1は、その端部において外部導体4を露出させておく。
【0042】
インナー端子40及び同軸ケーブル1の端部を断面略U字状のアウター端子本体51に挿し込んで配置させたら、プレス成形型により加締め、同軸ケーブル1の端部及びインナー端子40の周囲にアウター端子本体51を巻き付けるように筒状に成形して装着する。また、このプレス加工によってアウター端子本体51における係止ブロック52の成形位置に、周方向へ間隔をあけて複数の窪み部54を形成する。この窪み部54を形成する際には、アウター端子本体51の表裏に貫通する孔が形成されない程度にプレスする。この窪み部54を形成することによりアウター端子本体51の内周面に突出される突出部54aは、インナー端子40の絶縁体42に形成された溝部44内に配置される。これにより、アウター端子本体51とインナー端子40の絶縁体42とが互いに係合され、よって、インナー端子40とアウター端子50とが確実に固定される。
【0043】
次に、係止ブロック52を成形するために、図8に示すように、アウター端子本体51の上下から半円穴114が形成された上型116及び下型117を突き合わせ、これらの上型116及び下型117の半円穴114から形成された射出空間内に溶融状態の樹脂材料(絶縁材料)を注入する。なお、上型116の半円穴114には、係止ブロック52の係止凸部53を形成する凹部が形成されている。
【0044】
樹脂材料が硬化したら、上型116を上昇させ、さらに、下型117を下降させて型外しを行う。これにより、フープ成形によってアウター端子本体51に係止ブロック52が設けられたアウター端子50が成形され、また、同時に、このアウター端子50が同軸ケーブル1の端部に圧着されて接続される。
【0045】
上記のように、インナー端子40及びアウター端子50を順に成形することにより、ハウジング21のキャビティ22に収容してコネクタ11を構成する同軸端子31が得られる。
【0046】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0047】
1 同軸ケーブル
4 外部導体
11 コネクタ
21 ハウジング
22 キャビティ
24 ランス
50 アウター端子(端子)
51 アウター端子本体(端子本体)
52 係止ブロック
54 窪み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを有するハウジングと、前記キャビティ内へ挿入されて収容される端子とを備えたコネクタであって、
前記端子は、導電性材料から成形された端子本体と、該端子本体の外周に一体成形された樹脂製の係止ブロックとを有し、
前記ハウジングには、前記キャビティ内に挿入された前記端子の前記係止ブロックを係止するランスが形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記端子本体には、前記係止ブロックの形成箇所に、窪み部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子は、前記端子本体が筒状に形成されて同軸ケーブルの外部導体と導通されたアウター端子からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−221660(P2012−221660A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84594(P2011−84594)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】