説明

コネクタ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コネクタハウジングに端子の抜け防止用のリヤホルダを一体化したコネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】図6〜図8は実開昭61−119285号公報に記載された従来のコネクタ(第1従来例)を示す。
【0003】このコネクタは、コネクタハウジング1に列設された端子収容室2に後方から端子3を挿入すると、端子収容室2の内壁に設けたランス4が端子3の頭部3aに係合して、端子3を抜け止めできるようになっている。
【0004】コネクタハウジング1の外周壁(上壁)1aには凹所5が形成され、その凹所5の底部には、端子収容室2に臨む開口5aが形成され、凹所5の外側には、端子3を二重係止するためのリヤホルダ6が配置されている。リヤホルダ6は両側部が可撓バンド7に支持され、開口5aからリヤホルダ6の下面の係止突起8を端子収容室2の内部に挿入できるようになっている。
【0005】係止突起8は、端子収容室2に挿入された端子3の頭部3aの後端に係合するもので、係止突起8の前面側には、不完全挿入位置にある端子3の頭部3aの後端角部に摺接することで端子3を前進させる傾斜面9が形成されている。また、凹所5の内側壁とリヤホルダ6の前後壁には、凹所5内にリヤホルダ6が挿入された際に、リヤホルダ6をその位置に保持する係合部10、11が設けられている。
【0006】このコネクタでは、図8に示すように、端子3が不完全挿入位置にある状態でリヤホルダ6の係止突起8を開口5aに挿入すると、係止突起8の前側の傾斜面9が端子3の頭部3aの後端角部に衝合する。従って、そのままリヤホルダ6を凹所5内に押し入れることで、傾斜面9の作用により端子3を前方の正規係止位置まで押し込むことができる。押し込んだ後は、係合部10、11の作用でリヤホルダ6がその位置に保持されるので、リヤホルダ6によって端子3の抜けを防止することができる。
【0007】図9〜図11は実開昭61−103878号公報に記載された別の従来のコネクタ(第2従来例)を示す。
【0008】このコネクタも、コネクタハウジング21の端子収容室2の内部に本係止のためのランス24が設けられ、外周壁21aに開口25が設けられ、開口25の外側にリヤホルダ26の係止突起28が配置されている。この場合のリヤホルダ26は板状体からなり、前端縁がヒンジ27でコネクタハウジング21に一体化されている。また、係止突起28の前側には傾斜面29が設けられ、リヤホルダ26の後端面とコネクタハウジング21の外周壁21aには、リヤホルダ26のロック用の係合部30、31が設けられている。
【0009】このコネクタの場合、図10に示すように、端子3が不完全挿入状態にあるときに、リヤホルダ26をヒンジ27を支点にして回動させると、係止突起28が開口25から端子収容室2内に進入し、係止突起28の傾斜面29が端子3の頭部3aの後端角部に衝合し、傾斜面29の作用で端子3を前方に押し込む。
【0010】押し込んだ後は、図11に示すように、係合部30、31の作用でリヤホルダ26がその位置に保持されるので、リヤホルダ6によって端子3の抜けが防止される。
【0011】図12、図13は実開平4−42070号公報に記載された、さらに別の従来のコネクタ(第3従来例)を示す。
【0012】このコネクタでは、コネクタハウジング41の外周壁41aに端子収容室2に臨む開口45が設けられ、開口45の外側にリヤホルダ46の係止突起48が配置されている。この場合のリヤホルダ26は板状体からなり、両側部に配した屈曲自在の紐状弾性体47により、コネクタハウジング41に一体化されている。紐状弾性体47は片側に2本ずつ略平行に配されており、リヤホルダ46を平行リンクの原理で平行な姿勢のまま、前後方向および上下方向に移動可能に支持している。係止突起48の前端には係止片49が突設され、開口45内に係止突起48を挿入した状態で、リヤホルダ46を前方に移動した際、係止片49が開口45の縁に係合してリヤホルダ46の抜け止めを果たす。
【0013】このコネクタの場合は、図13(a)に示すように端子3を挿入したら、同図(b)に示すようにリヤホルダ46を前方および下方に移動して、係止突起48を開口45内に挿入する。そして、リヤホルダ46を更に前方にスライドさせると、不完全挿入状態にある端子3が、係止片49に押されて正規係止位置に移動し、係止片49が開口45の縁部に係合する。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図6〜図8R>8、図9〜図11に示した各従来例は、いずれも係止突起8、28に設けた傾斜面9、29の摺動作用で端子3を押し込む形式であるが、傾斜面9、29を端子3の頭部3aの後端角部に当てた場合、樹脂製のリヤホルダ6、26に端子3が食い込むことがあり、実際には端子3を正規の位置に移動できなくなることがあった。
【0015】また、図12、図13に示した従来例は、平行リンク状に配した紐状弾性体47でリヤホルダ46を支持しているので、開口45内に係止突起48を挿入した状態では、リヤホルダ46をあまり前進させることができず、端子3がより後方の不完全挿入位置にある場合には、端子3を係止片49で拾うことができず、端子49を確実に正規係止位置まで押し込むことができないことがあった。
【0016】また、いずれの従来例も、リヤホルダ6、26、46を、コネクタハウジング1、21、41の外周壁1a、21a、41aの外側に設けているので、リヤホルダ6、26、46やそれを支持する部材に、他の部材をぶつけるおそれがあった。
【0017】本発明は、上記事情を考慮し、不完全挿入位置にある端子をリヤホルダで確実に正規係止位置まで押し込むことができ、しかもリヤホルダに他の部材をぶつけるおそれのないコネクタを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、コネクタハウジングの外周壁に形成され端子収容室に臨む開口と、該開口内であって前記外周壁の下側に配置され、端子収容室内に挿入されることにより、端子収容室内に後方から挿入された端子の係合部と係合して、端子の後方への抜けを阻止するリヤホルダと、前記リヤホルダの前縁および後縁を前記開口の前縁および後縁に連結する前側および後側可撓バンドとを有し、前記リヤホルダを前側可撓バンドの前端を支点に回動可能に保持し且つそのときのリヤホルダの姿勢を一定に保ち、前記外周壁の下側で湾曲された湾曲バネ部を前記後側可撓バンドに設けたことを特徴とする。
【0019】請求項2の発明は、請求項1記載のコネクタであって、前記リヤホルダを端子収容室内の所定位置に押し込んだとき、その位置にリヤホルダを保持する係合部を設けたことを特徴とする。
【0020】請求項3の発明は、請求項1又は2記載のコネクタであって、前記前側可撓バンドに湾曲バネ部を設けたことを特徴とする。
【0021】
【作用】請求項1の発明では、前側および後側の2枚の可撓バンドによってリヤホルダが支持され、後側可撓バンドに湾曲バネ部が設けられているので、前側可撓バンドの前端を支点にリヤホルダが回動変位するとき、後側可撓バンドがリヤホルダの姿勢を一定に保つ。従って、上からリヤホルダを押すと、リヤホルダが平行な姿勢で回動して斜め前方へ移動し、リヤホルダが前進することにより、端子が不完全挿入位置にある場合、端子を前方の正規係止位置へ押し込む。また、リヤホルダは、コネクタハウジングの外周壁に形成した開口の内部であって外周壁の下側に配置されているので、コネクタハウジングの外側に突出しない。さらに、湾曲バネ部は、外周壁の下側に形成されているのでコネクタハウジングの外側に突出しない。
【0022】請求項2の発明では、リヤホルダで端子を押し込んだ状態でリヤホルダが保持されるので、リヤホルダにより端子が抜け止めされる。
【0023】請求項3の発明では、リヤホルダを上から押すと、前側可撓バンドと後側可撓バンドの湾曲バネ部の働きによって、リヤホルダが一定の姿勢で回動しながら斜めに前進し、不完全挿入位置にある端子を正規係止位置に押し込む。
【0024】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0025】図1は実施例のコネクタの初期状態の斜視図、図2は本係止前の状態を示す断面図、図3は本係止する途中の状態を示す断面図、図4は本係止後の状態を示す断面図である。
【0026】このコネクタ60は、コネクタハウジング61に列設された端子収容室62に後方から端子73を挿入すると、端子収容室62の内壁に設けた係合段部64に端子73の下面のランス73bが係合して、端子73を抜け止めできるようになっている。
【0027】コネクタハウジング61の上壁は、前側上壁63aと、それより一段高い位置に設定された後側上壁63bとで構成され、前側上壁63aと後側上壁63bとの間は開口65として開放されている。そして、この開口65の輪郭内に、端子73を二重係止するためのリヤホルダ66が配置されている。リヤホルダ66は断面矩形の角柱状のものであり、コネクタハウジング61の左右方向に長手方向を沿わせて配置され、前縁および後縁が、それぞれ前側可撓バンド67および後側可撓バンド68を介して、開口65の前縁および後縁に一体的に連結されている。コネクタハウジング61は樹脂成形品であり、リヤホルダ66や可撓バンド67、68も樹脂により一体成形されている。
【0028】可撓バンド67、68は、薄いシート状に成形された部分であり、前側可撓バンド67は平板状に形成され、後側可撓バンド68は、後側上壁63bの下側で後方に膨出するように湾曲され、全体が良好な弾性を有した湾曲バネ部として構成されている。そして、この湾曲バネ部として形成された後側可撓バンド68があることにより、リヤホルダ66を前側可撓バンド67の前端を支点に回動可能に保持し、且つそのときのリヤホルダ66の姿勢を一定に保つことができるようになっている。
【0029】また、リヤホルダ66の後端面には、係止突起(係合部)70が設けられている。この係止突起70は、端子収容室62を仕切る縦壁71に設けた係止溝(係合部)72と係合することにより、リヤホルダ66を本係止位置に保持するものである。
【0030】次に作用を説明する。
【0031】このコネクタ60では、図2に示すように端子73が不完全挿入状態にあるとき、図3に示すようにリヤホルダ66を、上から力Fを加えて押し下げると、前側可撓バンド67の前後方向長さの半径の円弧を描いて、前側可撓バンド67の前端を支点にして、リヤホルダ66が回動する。
【0032】その際、後側可撓バンド68は、湾曲バネ状に形成されているから、リヤホルダ66を適当な力で後側に引っ張り、それにより、リヤホルダ66の姿勢を一定の平行な状態に保つ機能を果たす。従って、上からリヤホルダ66を押すことにより、リヤホルダ66が平行な姿勢で回動して斜め前方へ移動する。そして、リヤホルダ66が前進することにより、不完全挿入位置にある端子73の頭部73aの後端(リヤホルダ66の係合する端子73の係合部)にリヤホルダ66の前端が衝合し、端子73を前方の正規係止位置へ確実に押し込む。
【0033】端子73が正規位置に押し込まれると、端子73の下面に設けたランス73bが、端子収容室62の係止段部64に本係止される。同時に、リヤホルダ66の後端面に設けた係止突起70が、コネクタハウジング61の縦壁71に設けた係止溝72に係合し、リヤホルダ66がロックされる。従って、リヤホルダ66により端子73が抜け止めされ、ランス73bによる係止とリヤホルダ66による係止の二重係止が行われる。
【0034】また、このコネクタ60によれば、開口65の内部にリヤホルダ66を設けているので、リヤホルダ66が外側に突出せず、従って、サブアッセンブリ状態での取回し時に、リヤホルダ66に他の部材を引っ掛けるようなことがない。
【0035】なお、上記実施例では、後側可撓バンド68のみを湾曲バネ状に形成した場合を示したが、図5に示すように、コネクタハウジング61Bに設けた前側可撓バンド67Bを湾曲バネ状に形成してもよい。その場合は、リヤホルダ66を上から押すと、前側可撓バンド67Bと後側可撓バンド68の湾曲バネの働きによって、リヤホルダ66が一定の姿勢で回動しながら斜めに前進し、不完全挿入位置にある端子73を正規係止位置に押し込むことになる。
【0036】また、上記各実施例のように、可撓バンド67B、68の全体を湾曲バネ状に形成せずに、可撓バンド67、67B、68の一部に湾曲バネ部を形成してもよい。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明によれば、リヤホルダを上から押すことにより、リヤホルダ自体が前進するので、不完全挿入位置にある端子を確実に前に押し込むことができる。また、コネクタハウジングの外周壁に形成した開口の内部であって外周壁の下側にリヤホルダを配置しているので、リヤホルダが外側に突出しない。さらに、湾曲バネ部は、外周壁の下側に形成されているのでコネクタハウジングの外側に突出しない。従って、サブアッセンブリ状態での取回し時に、リヤホルダおよび湾曲バネ部を引っ掛けるおそれがなくなる。
【0038】請求項2の発明によれば、端子を正規の係止位置に押し込んだ状態でリヤホルダが保持されるので、リヤホルダによって端子の抜け止めが行われる。従って、通常は端子収容室の内壁と端子との間に本係止のための係止手段を設けるので、本係止手段による係止とリヤホルダによる係止の二重係止が行われる。
【0039】請求項3の発明によれば、前側可撓バンドと後側可撓バンドの両方に湾曲バネ部を設けたので、両方の湾曲バネ部の働きにより、リヤホルダの動きを制御することができ、適正にリヤホルダによって不完全挿入位置にある端子を押し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の初期状態の外観斜視図である。
【図2】本発明の一実施例の本係止前の状態を示す要部断面図である。
【図3】本発明の一実施例の本係止する途中の状態を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施例の本係止後の状態を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施例の要部断面図である。
【図6】第1従来例の外観図である。
【図7】第1従来例の端子組付け前の状態を示す断面図である。
【図8】第1従来例の本係止前の状態を示す断面図である。
【図9】第2従来例の外観図である。
【図10】第2従来例の本係止前の状態を示す断面図である。
【図11】第2従来例の本係止状態を示す断面図である。
【図12】第3従来例の外観図である。
【図13】第3従来例の動作を示す断面図である。
【符号の説明】
61 コネクタハウジング
62 端子収容室
63a 前側上壁(外周壁)
63b 後側上壁(外周壁)
65 開口
66 リヤホルダ
67 前側可撓バンド
68 後側可撓バンド
70 係止突起(係合部)
72 係止溝(係合部)
73 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コネクタハウジングの外周壁に形成され端子収容室に臨む開口と、該開口内であって前記外周壁の下側に配置され、端子収容室内に挿入されることにより、端子収容室内に後方から挿入された端子の係合部と係合して、端子の後方への抜けを阻止するリヤホルダと、前記リヤホルダの前縁および後縁を前記開口の前縁および後縁に連結する前側および後側可撓バンドとを有し、前記リヤホルダを前側可撓バンドの前端を支点に回動可能に保持し且つそのときのリヤホルダの姿勢を一定に保ち、前記外周壁の下側で湾曲された湾曲バネ部を前記後側可撓バンドに設けたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】 請求項1記載のコネクタであって、前記リヤホルダを端子収容室内の所定位置に押し込んだとき、その位置にリヤホルダを保持する係合部を設けたことを特徴とするコネクタ。
【請求項3】 請求項1又は2記載のコネクタであって、前記前側可撓バンドに湾曲バネ部を設けたことを特徴とするコネクタ。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【特許番号】特許第3098934号(P3098934)
【登録日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【発行日】平成12年10月16日(2000.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−139275
【出願日】平成7年6月6日(1995.6.6)
【公開番号】特開平8−330014
【公開日】平成8年12月13日(1996.12.13)
【審査請求日】平成10年7月17日(1998.7.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【参考文献】
【文献】実開 平4−54157(JP,U)