説明

コモンモードノイズフィルタ

【課題】本発明は、高周波帯域での使用が可能なコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明のコモンモードノイズフィルタは、非磁性材料で構成された複数の非磁性体層11a〜11cと、前記複数の非磁性体層11a〜11cに設けられた第1のコイル12、第2のコイル13と、前記複数の非磁性体層11a〜11cの上方、下方の少なくとも一方に設けられた磁性体層14a〜14dと、前記第1、第2のコイル12,13の中心部分において前記非磁性体層11a〜11cを貫通し、かつ前記上方の磁性体層14c,14dと下方の磁性体層14a,14bに接する磁性部15とを備え、上面視にて前記磁性部15が露出するような切欠部16を有する金属層17を前記磁性体層14a〜14dに形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用されるコモンモードノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコモンモードノイズフィルタは、図6に示すように、非磁性材料で構成された複数の非磁性体層1a〜1cと、前記複数の非磁性体層1a〜1cに設けられた第1のコイル2、第2のコイル3と、前記複数の非磁性体層1a〜1cの下方、上方に設けられた磁性体層4a,4bと、前記第1、第2のコイル2,3の中心部分において前記非磁性体層1a〜1cを貫通し、かつ前記上方の磁性体層4bと下方の磁性体層4aに接する磁性部5と、前記磁性体層4a,4bに前記磁性体層4a,4bの略全面に形成された方形状の金属層6とを備えていた。
【0003】
そして、第1のコイル2、第2のコイル3のそれぞれで発生した磁束が磁性部5の内部を貫くようにし、この磁束が第1のコイル2および第2のコイル3の周囲を周回するようにして、第1のコイル2と第2のコイル3との間の結合を強め、コモンモードノイズを除去できるようにしていた。さらに、金属層6をグランドに接続し、第1、第2のコイル2,3と金属層6との間で発生する浮遊容量によって高周波のコモンモードノイズをグランドにバイパスさせて、高周波領域のコモンモードノイズの減衰特性も向上させるようにしていた。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−194170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のコモンモードノイズフィルタは、金属層6が第1、第2のコイル2,3と対向しているため、第1、第2のコイル2,3で発生した磁束が金属層6に妨げられて周回しなくなり、これにより、第1のコイル2と第2のコイル3との間の結合が弱まるため、コモンモードノイズの減衰特性が劣化するという課題を有していた。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、コモンモードノイズの減衰特性が劣化するのを防止できるコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0009】
本発明の請求項1に記載の発明は、非磁性材料で構成された複数の非磁性体層と、前記複数の非磁性体層に設けられた第1のコイル、第2のコイルと、前記複数の非磁性体層の上方、下方に設けられた磁性体層と、前記第1、第2のコイルの中心部分において前記非磁性体層を貫通し、かつ前記上方の磁性体層と下方の磁性体層に接する磁性部とを備え、上面視にて前記磁性部が露出するような切欠部を有する金属層を前記磁性体層に形成したもので、この構成によれば、第1、第2のコイルで発生し磁性部の内部を貫く磁束が、切欠部によって金属層に邪魔されることはないため、磁束の回りこみがよくなり、これにより、多くの磁束を第1、第2のコイルの周囲を周回させることができるため、第1のコイルと第2のコイルとの間の結合を強めることができ、これにより、コモンモードノイズの減衰特性が劣化するのを防止できるという作用効果が得られるものである。
【0010】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、上面視にて第1、第2のコイルの一部が露出するように切欠部を金属層に形成したもので、この構成によれば、第1、第2のコイルで発生し磁性部の内部を貫く磁束を、切欠部および第1、第2のコイルの一部を周回させることができるため、第1のコイルと第2のコイルとの間の結合をより強めることができ、これにより、コモンモードノイズの減衰特性が劣化するのを確実に防止できるという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明のコモンモードノイズフィルタは、上面視にて磁性部が露出するような切欠部を有する金属層を磁性体層に形成しているため、第1、第2のコイルで発生し磁性部の内部を貫く磁束を、切欠部によって金属層に邪魔されることなく、周回させることができ、これにより、第1のコイルと第2のコイルとの間の結合を強めることができるため、コモンモードノイズの減衰特性が劣化するのを防止できるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図2】同コモンモードノイズフィルタの斜視図
【図3】同コモンモードノイズフィルタの主要部の上面図
【図4】同コモンモードノイズフィルタの等価回路図
【図5】同コモンモードノイズフィルタの他の例の主要部の上面図
【図6】従来のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタについて、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図、図2は同コモンモードノイズフィルタの斜視図である。
【0015】
本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタは、図1、図2に示すように、非磁性材料で構成された第1〜第3の非磁性体層11a〜11cと、前記第1〜第3の非磁性体層11a〜11cで構成された非磁性体10に設けられた第1のコイル12、第2のコイル13と、前記第1〜第3の非磁性体層11a〜11cの下方に設けられた第1、第2の磁性体層14a,14bと、上方に設けられた第3、第4の磁性体層14c,14dと、前記第1、第2のコイル12,13の中心部分において前記第1〜第3の非磁性体層11a〜11cを貫通し、かつ前記下方の磁性体層14a,14bと上方の磁性体層14c,14dに接する磁性部15とを備えている。そして、上面視にて前記磁性部15が露出するような切欠部16を有する金属層17を、下方の第1の磁性体層14aと第2の磁性体層14bとの間、上方の第3の磁性体層14cと第4の磁性体層14dとの間にそれぞれ形成している。
【0016】
上記構成において、前記第1〜第3の非磁性体層11a〜11cは、下から順に積層され、Cu−Znフェライトからなる非磁性材料により形成され、非磁性体10を構成している。そして、第1のコイル12、第2のコイル13は、非磁性体10に形成されている。
【0017】
また、前記第1のコイル12は、第1の非磁性体層11aの上面に形成された第1の渦巻き状導体18aと、第1の非磁性体層11aの下面(第2の磁性体層14bの上面)に形成された第1の引出導体19aとで構成されている。なお、第1の渦巻き状導体18aと第1の引出導体19aとは、第1の非磁性体層11aに形成されたビア電極20aを介して接続している。
【0018】
そして、前記第2のコイル13は、第2の非磁性体層11bの上面に形成された第2の渦巻き状導体18bと、第3の非磁性体層11cの上面に形成された第2の引出導体19bとで構成されている。なお、第2の渦巻き状導体18bと第2の引出導体19bとは、第3の非磁性体層11cに形成されたビア電極20bを介して接続している。ここで、第1の渦巻き状導体18a、第2の渦巻き状導体18bは、上記のような渦巻き状ではなく、螺旋状であってもよい。
【0019】
さらに、第1の渦巻き状導体18aと第2の渦巻き状導体18bは第2の非磁性体層11bを介して、上面視にて略対向するように設けられている。
【0020】
なお、前記第1、第2の渦巻き状導体18a,18b、第1、第2の引出導体19a,19bは、銀などの導電材料をめっきまたは印刷することにより形成する。さらに、ビア電極20a,20bは、第1の非磁性体層11a、第3の非磁性体層11cの所定箇所に、レーザ、パンチングなどで孔あけ加工をし、この孔に銀を充填して形成する。
【0021】
また、前記第1〜第4の磁性体層14a〜14dは、Ni−Znフェライト等の磁性材料により構成され、第1、第2の磁性体層14a,14bは、第1〜第3の非磁性体層11a〜11c(非磁性体10)の下方、第3、第4の磁性体層14c,14dは第1〜第3の非磁性体層11a〜11c(非磁性体10)の上方にそれぞれ形成されている。なお、第1〜第3の非磁性体層11a〜11c、第1〜第4の磁性体層14a〜14dの枚数は、図1に示された枚数と異なる枚数でもよい。
【0022】
さらに、前記磁性部15は、第1、第2のコイル12,13の中心部分において、第1〜第3の非磁性体層11a〜11cそれぞれを貫通するように設けられている。また、磁性部15は、第1〜第3の非磁性体層11a〜11cそれぞれの所定箇所に、レーザ、パンチングなどで孔あけ加工をし、この孔にNi−Znフェライト等の磁性材料を充填して形成する。このとき、この磁性部15は、上面視にて第1、第2のコイル12,13の中心部分、すなわち、第1、第2の渦巻き状導体18a,18bにおける最も内側に位置する導体よりも内側に形成され、かつ第1、第2の渦巻き状導体18a,18b、第1、第2の引出導体19a,19bと接触しないように設けられている。さらに、この3つの磁性部15は、その大きさが略同一で上面視にて同じ位置に配置されている。
【0023】
さらにまた、前記金属層17は、銀、銅等の導電材料をめっきまたは印刷することにより、あるいは金属板、金属箔を貼り付けることによりシート状に形成され、第1の磁性体層14aと第2の磁性体層14bとの間、第3の磁性体層14cと第4の磁性体層14dとの間の2箇所に配置されている。そして、この金属層17は、その一部である2つの引出部17aのみが第1〜第4の磁性体層14a〜14dの側面に露出している。
【0024】
さらに、金属層17の中央部には、金属層17を貫通する切欠部16が設けられている。このとき、金属層17の切欠部16に相当する箇所にレジストを設けてめっきする、あるいは、スクリーン印刷するか、予め金属板、金属箔に切削、レーザ照射して貫通孔を設けるようにして切欠部16を有する金属層17を形成する。この切欠部16により、磁性材料で構成された3つの磁性部15が、磁性材料で構成された第2、第3の磁性体層14b,14cだけでなく第1、第4の磁性体層14a,14dとも連続する。なお、切欠部16は、上下に位置する2つの金属層17の両方ではなく、片方のみに形成するようにしてもよい。
【0025】
そして、上記した構成により、コモンモードノイズフィルタの本体部21が形成される。また、この本体部21の両端面には、本体部21の焼成後において、第1〜第4の外部電極22〜25が設けられ、この第1〜第4の外部電極22〜25はそれぞれ第1、第2のコイル12,13の両端部(第1の渦巻き状導体18a、第1の引出導体19a、第2の渦巻き状導体18b、第2の引出導体19bそれぞれの一端部)と接続されている。さらに、本体部21の両側面には、金属層17の引出部17aと接続された第5、第6の外部電極26,27が形成されている。そして、前記第1〜第6の外部電極22〜27は、本体部21の端面に銀を印刷することにより形成され、またこれらの表面にめっきによってニッケルめっき層を形成するとともに、このニッケルめっき層の表面にめっきによってすずやはんだ等の低融点金属めっき層を形成する。なお、図2では、第1〜第4の外部電極22〜25を本体部21の両端面、第5、第6の外部電極26,27を本体部21の両側面の計4面に形成しているが、第1〜第6の外部電極22〜27全てを本体部21の両側面の2面に形成してもよい。
【0026】
ここで、金属層17の切欠部16は、図3に示すように、上面視にて磁性部15が露出するように形成されている。また、切欠部16を除いた金属層17は上面視にて第2の渦巻き状導体18b(第1、第2のコイル12,13)の全面を覆っている。なお、図3では、説明を簡単にするために、第2の渦巻き状導体18b、第2の非磁性体層11b、金属層17、切欠部16、磁性部15のみを示し、第2の渦巻き状導体18bのうち金属層17で覆われた部分を破線で表す。
【0027】
図4は、本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの等価回路図である。
【0028】
図4からも明らかなように、第1のコイル12と第2のコイル13との間の結合を強め、コモンモードノイズを除去できるようにするとともに、第5、第6の外部電極26,27をグランドに接続し、第1、第2のコイル12,13と金属層17との間で発生する浮遊容量C0によって高周波のコモンモードノイズをグランドにバイパスさせて、高周波領域のコモンモードノイズの減衰特性の向上を図るようにしている。なお、差動信号はコモンモードノイズより周波数が低いため、減衰されることはほとんどない。
【0029】
上記したように本発明の一実施の形態においては、上面視にて磁性部15が露出するような切欠部16を有する金属層17を、第1の磁性体層14aと第2の磁性体層14bとの間、上方の第3の磁性体層14cと第4の磁性体層14dとの間にそれぞれ形成しているため、第1、第2のコイル12,13で発生し磁性部15の内部を貫く磁束は切欠部16によって金属層17に邪魔されることなく、第1の磁性体層14aや第4の磁性体層14dまで広がり、これにより、磁束は大きく回りこむことになるため、多くの磁束を第1、第2のコイル12,13の周囲を周回させることができる。この結果、第1のコイル12と第2のコイル13との間の結合を強めることができるため、コモンモードノイズの減衰特性が劣化するのを防止できるという効果が得られるものである。
【0030】
また、この構成であっても、第1、第2のコイル12,13と金属層17とを対向させることができるため、第1、第2のコイル12,13と金属層17との間で発生する浮遊容量によって高周波のコモンモードノイズをグランドにバイパスさせて、高周波領域のコモンモードノイズの減衰特性を向上させることも可能である。
【0031】
なお、本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、金属層17が上面視にて第1、第2のコイル12,13の全面を覆っているものについて説明したが、図5に示すように、金属層17が上面視にて第1、第2のコイル12,13の一部のみを覆うように構成してもよい。
【0032】
この構成により、第1、第2のコイル12,13で発生し磁性部15の内部を貫く磁束が周りこめるスペースを増やすことができるため、第1のコイル12と第2のコイル13との間の結合をより強めることができ、これにより、コモンモードノイズの減衰特性が劣化するのを防止できる。
【0033】
特に、図5のように、金属層17が上面視にて第1、第2のコイル12,13の外周部のみを覆うようにすれば、磁性部15の内部を貫いた磁束が、上下方向に向かって広がるように周回するため、多くの磁束を第1、第2のコイル12,13の周囲を周回させることができ、これにより、コモンモードノイズの減衰特性が劣化するのを確実に防止できる。なお、図5では、説明を簡単にするために、第2の渦巻き状導体18b、第2の非磁性体層11b、金属層17、切欠部16、磁性部15のみを示し、第2の渦巻き状導体18bの金属層17で覆われた部分は破線で表している。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係るコモンモードノイズフィルタは、コモンモードノイズの減衰特性が劣化するのを防止できるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器のノイズ対策として使用されるコモンモードノイズフィルタ等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0035】
10 非磁性体
11a〜11c 非磁性体層
12 第1のコイル
13 第2のコイル
14a〜14d 磁性体層
15 磁性部
16 切欠部
17 金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性材料で構成された複数の非磁性体層と、前記複数の非磁性体層が積層されて形成された非磁性体に設けられた第1のコイル、第2のコイルと、前記複数の非磁性体層の上方、下方の少なくとも一方に設けられた磁性体層と、前記第1、第2のコイルの中心部分において前記非磁性体層を貫通し、かつ前記上方の磁性体層と下方の磁性体層に接する磁性部とを備え、上面視にて前記磁性部が露出するような切欠部を有する金属層を前記磁性体層に形成したコモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
上面視にて第1、第2のコイルの一部が露出するように切欠部を金属層に形成した請求項1記載のコモンモードノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−109326(P2012−109326A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255500(P2010−255500)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】