説明

コラーゲンペプチド高含有キャンディ様構造物

【課題】簡単に摂取できるキャンディとしての手軽さを有しており、糖質を含まない、真に新しいキャンディ様構造物、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】固形分中に、平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド85〜100重量%を含有することを特徴とするキャンディ様構造物。水分値が12〜18重量%である請求項1に記載のキャンディ様構造物。前記平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチドが、平均分子量が相違した複数種類のコラーゲンペプチドを組み合わせてなるものでもよい。前記キャンディ様構造物は、平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド粉末を水と混練した後、得られた混練物を濃縮し、次いで固化させて製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なコラーゲンペプチドを含有するキャンディ様構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にキャンディとは、砂糖、水飴、乳製品等を主原料として煮詰め、冷却後、これに酸味料、香料、油脂、香料、色素等の副原料を添加し、成型して製造された砂糖菓子である。キャンディは、簡易に色やフレーバーを調節でき、携帯しやすく手軽に糖分摂取や気分転換を行うことができるため、古くから広く親しまれており、種類も非常に多岐にわたっている。水分含有量の少ないものはハードキャンディと称され、例としてドロップ等が挙げられる。水分含有量が比較的多いものはソフトキャンディと称され、キャラメルやヌガー等が挙げられる。
【0003】
近年では、砂糖や水飴を使わず、低カロリーで虫歯になりにくい等の特徴を有する糖アルコールを主原料としたキャンディも数多く市場に広がっている。主に使用される糖アルコールとしては、エリスリトール、マルチトール、トレハロース等が挙げられる。しかし、糖アルコールを使用したキャンディは、糖アルコール自体の吸湿性が高いため、べたつきや型抜きの悪さ、硬度の低さによる崩れやすさ等、いわゆる品質安定性に問題がある。
これらの問題点を解決するため、表面にマルチトール結晶を付着/晶出させることで安定性を高めたマルチトールハードキャンディ(特許文献1参照。)や多糖類を含有することで保形性を高めたエリスリトールハードキャンディ(特許文献2参照。)等が提案されている。その他にも、エリスリトール、トレハロース等の糖アルコールを主原料とし、物性を向上させるため様々な工夫のされたキャンディは数多く発明されている(例えば、特許文献3、4参照。)しかしながら、糖アルコールを使用する限りは甘味の不自然さや保形性の問題は完全には排除できず、また、糖アルコールを多量に摂取した際に、緩下作用(お腹が緩くなる)が生じる可能性がある等の問題も有している。
【0004】
一方、ごく近年では、消費者の健康意識の高まりから、例えばビール業界のように、キャンディ業界においても、糖質そのものの含有量を抑えた糖質オフ(糖質が少ない)を目的としたキャンディに対する需要は高いと推察される。
例えば、特許文献5には、低カロリー性、低う蝕性、保存性等の様々な要素をそろえたハードキャンディとして、糖類と還元ポリデキストロースを混合したキャンディが記載されている。また、特許文献6には、手軽さ及び機能性の期待できるソフトキャンディとして、機能性ペプチド及び糖類を混合したキャンディが記載されている。
これらの還元ポリデキストロースやペプチドのような素材を含有したキャンディは、近年のキャンディに求められている低カロリー性や低う蝕性を備え、糖アルコールにあるようなデメリットは少ないものである。しかしながら、糖質の全てを別の素材で置き換えたものではないため、糖質オフのキャンディに対する消費者のニーズを満たすものではない。
【0005】
以上のように、キャンディとしての摂取の手軽さという利点を有しながら、糖類や糖アルコール等の糖質を含まずに構成されたようなキャンディ又はキャンディ様菓子は知られておらず、糖質に替わる新規素材の検討及び技術開発が期待されている。
【0006】
ところで、近年、健康成分・美容成分が好まれていることは周知の事実であるが、その中でも、皮膚機能の向上を始め様々な生理活性を持つ「コラーゲン」が一際注目を浴びている。コラーゲンは、生体内において、皮膚、血管、内臓、骨組織等に広く分布しており、動物組織における主要な構成タンパク質である。近年では、化粧品をはじめ、飲料、ゼリー、タブレット等、様々な形態の健康食品が展開され、機能性食品素材として研究・開発が各社で進められている。また、コラーゲンの溶解性、消化、吸収性等を向上させるためにコラーゲンやゼラチンを加水分解して得た低分子コラーゲン(以下、コラーゲンペプチド)についても幅広く研究されており、コラーゲンペプチドについての機能性や利用技術も多数報告されている。
【0007】
しかしながら、コラーゲンやコラーゲンペプチドの摂取を主目的とする食品では、これらの成分の配合量を多くすることが必然的に求められるが、多量になるほど、コラーゲンやコラーゲンペプチドの持つ粘性が非常に高くなり、口に含んだ際口腔内にコラーゲンやコラーゲンペプチドがまとわりつきやすくなってしまうという問題や、食品の製造自体が不可能になってしまうという問題、コラーゲンやコラーゲンペプチドの持つ独特の獣臭(以下、コラーゲン臭)が食品の風味を損なってしまうといった問題が発生する。
【0008】
例えば、コラーゲンペプチドを高配合した食品の例としては、コラーゲンペプチド含有顆粒に関するもの(特許文献7参照。)やコラーゲンペプチド含有タブレットに関するもの(特許文献8参照。)が挙げられる。しかし、これらの顆粒やタブレットも上述したような問題により、コラーゲンペプチドの配合量は40〜70%程度に留まっており、食品としてコラーゲンペプチドを更に高配合したようなものは技術的にも未だ存在していない。また、大半のものは、製造の利便性から顆粒やタブレットの形態を取ることが多く、摂取した際にどうしてもコラーゲンペプチド粉末の口残り、ざらつきが気になるものとなっている。
【0009】
また、コラーゲン及びコラーゲンペプチドを利用した他の例として、低分子コラーゲンペプチド組成物に関するもの(特許文献9参照。)、コラーゲンタンパク質を固定化して作製したコラーゲンビーズに関するもの(特許文献10参照。)等も存在している。これらは食用としても利用できるものであるが、キャンディのように舐めたり噛んだりできる手軽な物性のものではなく、嗜好性にあわせて酸味料やフレーバーを手軽に調整できるようなものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−254906号公報
【特許文献2】特許第3100186号公報
【特許文献3】特開2005−237303号公報
【特許文献4】特許第4171554号公報
【特許文献5】特許第3199531号公報
【特許文献6】特許第3821298号公報
【特許文献7】特開2008−247809号公報
【特許文献8】特許第4360986号公報
【特許文献9】特開2006−151847号公報
【特許文献10】特許第3098337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、簡単に摂取できるキャンディとしての手軽さを有しており、糖質を含まない、真に新しいキャンディ様構造物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明において、キャンディ様構造物とは、砂糖や水飴等の糖質を煮詰めた後、冷却・固化して得られるソフトキャンディ又はハードキャンディと同様の外観を有し、かつソフトキャンディ又はハードキャンディと同様の食感を有する、キャンディ様の食品又は菓子をいう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記のような状況を鑑み、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド粉末を水と混練した後、得られた混練物から水分を蒸発させ、水分値を12〜18重量%程度まで低下させることで、キャンディのように舐める/噛むのに適した硬度をもつキャンディ様構造物ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の要旨は、
(1)固形分中に、平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド85〜100重量%を含有することを特徴とするキャンディ様構造物、
(2)水分値が12〜18重量%である前記(1)に記載のキャンディ様構造物、
(3)前記平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチドが、平均分子量が相違した複数種類のコラーゲンペプチドを組み合わせてなるものである、前記(1)又は(2)に記載のキャンディ様構造物、
(4)固形分中に、酸味料0.1〜8重量%及び香料0.1〜2重量%を含有する前記(1)〜(3)いずれかに記載のキャンディ様構造物、
(5)平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド粉末を水と混練した後、得られた混練物を濃縮し、次いで固化させることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれかに記載のキャンディ様構造物の製造方法、
にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明のキャンディ様構造物は、簡単に摂取できるキャンディとしての手軽さを有しており、しかも糖質を含まず、口腔内へのまとわりつきがなく、優れた機能性を持つコラーゲンペプチドを高比率で配合した、真に新しいキャンディ様構造物である。
【0015】
本発明のキャンディ様構造物は、キャンディという「舐める」ことに特化した摂取形態をとることで、コラーゲンやコラーゲンペプチドに関して従来問題とされてきた口腔内へのコラーゲンやコラーゲンペプチドのまとわりつきを防止し、また、水と混錬した後に水分値を低下させているため、コラーゲンやコラーゲンペプチドを含有したタブレットに見られる摂取時のざらつきや後残りを全く感じさせない構造物となっている。
また、本発明のキャンディ様構造物は、その水分値を12〜18重量%まで低下させることで、ハードキャンディ又はソフトキャンディと同様の形状、食感を有するものとし易く、また、キャンディとして通常使用される酸味料やフレーバーを使用することにより、コラーゲン臭の消臭をより十分にすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のキャンディ様構造物は、固形分中に、平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド85〜100重量%を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明では、前記のような平均分子量を有するコラーゲンペプチドを用いる点に一つの特徴がある。
【0018】
本発明において、コラーゲンペプチドの平均分子量は20,000以下であれば、後述のようにコラーゲンペプチドと水との混練物から水分を蒸発させることで、キャンディ様構造物を得ることができる。本発明では、前記コラーゲンペプチドの平均分子量を調整することで、得られるキャンディ様構造物の物性を調整することができる。例えば、コラーゲンペプチドの平均分子量が小さいほど、サクい食感を持つキャンディ様構造物としやすく、コラーゲンペプチドの平均分子量が大きいほどハードキャンディに近い物性のキャンディ様構造物としやすい。
【0019】
本発明では、前記コラーゲンペプチドは、分子量が相違したペプチドを混合していることが好ましい。例えば、コラーゲンペプチドとして、分子量10,000以下のコラーゲンペプチドのみを使用した場合、キャンディ様構造物とはなるものの、コラーゲンペプチドの固化が不十分で、ハードキャンディのような硬い食感が出し難くなる傾向がある。一方、コラーゲンペプチドとして、分子量10,000〜20,000のコラーゲンペプチドのみを使用した場合、キャンディ構造体とはなるものの、濃縮時に非常に高い粘度となるうえ、成型後に非常に硬い食感となる傾向がある。以上の理由から、本発明においては、均質な分子量のコラーゲンペプチドを使用することでもキャンディ様構造物は得られるが、成型しやすく、かつ得られるキャンディ様構造物の食感を良好にできる観点から、相違した平均分子量を有する複数種類のコラーゲンペプチドを組み合わせて所望の平均分子量に調整することが好ましい。この場合、複数種類のコラーゲンペプチドを組み合わせた後のコラーゲンペプチド混合物の平均分子量が20,000以下となるように調整しておけばよい。
【0020】
例えば、平均分子量10,000以下のコラーゲンペプチドと平均分子量10,000以上のコラーゲンペプチドを用意しておき、平均分子量10,000以下のコラーゲンペプチドと、平均分子量10,000以上のコラーゲンペプチドとを、20:80〜80:20の比率、好ましくは30:70〜70:30の比率で混合することが望ましい。
なお、本発明では、平均分子量が3,000以下のコラーゲンペプチドを用いる場合に、その混合比率を大きくすると、ペプチドの苦味が出てしまいキャンディとして好ましくなく、また、平均分子量が20,000を超えるコラーゲンペプチドを用いる場合に、その混合比率を大きくすると、製造時に非常に高い粘度となり、本発明のキャンディ様組成物とはなり難くなる。
【0021】
本明細書において、前記コラーゲンペプチドの平均分子量は、重量平均分子量を示す。コラーゲンペプチドの分子量に関する情報は、粘度測定や、HPLC及びゲルろ過法等の定量方法によって得られ、すでに公知の手法を使用することが可能である。
【0022】
本発明に用いられるコラーゲンペプチドは、コラーゲンあるいはゼラチン等の変性コラーゲンを酸やアルカリあるいは酵素等で加水分解させることで得られる。コラーゲンは、食品用のものであればよく、例えば、豚、牛、鳥、魚等多様な動物から抽出されたものが挙げられる。コラーゲンペプチドを作製する際に用いられる酵素としては、コラーゲンを部分加水分解できるものであればよく、例えば、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、フィチン等のシステインプロテアーゼ、ペプシン等のアスパラギン酸プロテアーゼ、及びこれらの酵素を混合した酵素群等が挙げられるが、特に限定されるものではない。このような加水分解は、水又は各種バッファー等の緩衝液中で行われることが好ましい。本発明では、コラーゲンペプチドとして、前記の加水分解された水溶液をそのまま使用してもよいし、乾燥処理等で粉末化したものを用いてもよい。
また、上記に示すコラーゲンペプチドは、すでに市販されている食品用のものを使用してもよい。市販品のコラーゲンペプチドの例としては、「Hydrolysed Collagen ODP」(商品名、ヴァイスハルト社製)等が挙げられる。
【0023】
なお、コラーゲンやゼラチンは、室温下では水不溶性であり、消化性や吸収性が悪く、健康食品の機能性に関して疑問視されることもあるが、本発明で使用する平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチドは、水溶解性や体内への吸収性においてコラーゲンやゼラチンよりも優れており、様々な生理活性機能を高める効果を奏することが知られている。
一方、分子量の大きいコラーゲンやゼラチン、又は平均分子量20,000を超えるコラーゲンペプチドを使用してキャンディ化を試みると、上述したように製造時に非常に高い粘度となり、実施が不可能となった。また、前記特許文献10(特許第3098337号公報)で示されている可溶化コラーゲンとタンニンとからなるコラーゲンビーズの製造に関して、可溶化コラーゲンやゼラチン等の分子量の大きいものを用いた場合はコラーゲンビーズの製造は可能であったが、平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチドを用いて同様に行ってもコラーゲンペプチドが固化せず、製造が不可能であった。
【0024】
本発明のキャンディ様構造物は、固形分中に、前記コラーゲンペプチドを85〜100重量%を含有する。このように、本発明では、優れた機能性を持つ一種類の素材のみを使用したキャンディ様構造物の提供を最大の目的とし、コラーゲンペプチドのみで構成されたプレーンタイプのキャンディ様構造物とすることも可能であるが、キャンディのように嗜好性に富んだ菓子とするために、必要に応じて、酸味料、香料等の任意成分を添加することが望ましい。ただし、上記に挙げたような任意成分を添加するほど、相対的にコラーゲンペプチドの含有量が少なくなり、目的からは遠ざかる(つまり、商品の価値を失う)ため、コラーゲンペプチドの含有量は固形分として85重量%を下回らない範囲に留めておくことが必要である。
【0025】
前記の任意成分の例として、酸味料としては、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、乳酸等が挙げられる。
また、香料としては、食品用の香料であればよく、特に限定はない。
酸味料、香料を併用することで、得られる構造物をキャンディ様の風味とし、コラーゲン臭を消臭することができるので好ましい。
キャンディ様構造物の固形分中には、酸味料0.1〜8重量%及び香料0.1〜2重量%を含有することが好ましい。
【0026】
また、他の任意成分としては、高甘味度甘味料(アスパルテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビオシド、レバウディオ、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等)、着色料、ビタミン類、ミネラル類やアミノ酸類等の機能性素材、油脂、乳化剤等も使用することができる。
【0027】
前記任意成分の全含有量は、本発明のキャンディ様組成物の固形分中15重量%以下の範囲内であればよい。
【0028】
なお、本発明のキャンディ様組成物は、前記のように、糖類、糖アルコール等の糖質を使用せずに、キャンディ様の食感を奏することができるものであるため、キャンディに使用されるような糖類、糖アルコール等の糖質は実質的に含有する必要はない。したがって、キャンディ様組成物の固形分中における糖質の含有量としては、0重量%であるか、風味付け等の観点から含有される場合でも0.5重量%以下のものである。
【0029】
前記の構成を有する本発明のキャンディ様構造物は、公知のハードキャンディの製造方法に準じて製造すればよい。例えば、平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド粉末を水と混練した後、得られた混練物を濃縮し、次いで固化させることでキャンディ様構造物を製造することができる。
【0030】
具体的には、まず、上記に示した平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド粉末と水を混練する。前記コラーゲンペプチド粉末と混合する水分量は特に限定はないが、均一な混練を行うことができ、効率よく濃縮を行うことができる観点から、コラーゲンペプチド100重量部に対して20〜40重量部程度が好ましい。
【0031】
前記混練に使用する混練機としては、キャンディの製造に使用されるものであればよく、特に限定はない。
【0032】
次いで、均質な混練物にした後、該混練物から水分を蒸発させて濃縮する。水分を蒸発させる手段としては、直火もしくは湯煎を利用したり、送風乾燥、熱風乾燥、真空減圧乾燥、遠赤外線加熱乾燥等の乾燥手段を用いることができる。例えば、加熱を伴う乾燥手段を用いる場合、50〜160℃付近まで混練物を加熱するようにすればよい。特に、本発明では100℃を超えるような高温は必要ではなく、例えば、混練物の表面から蒸発・乾燥を起こすように、70℃程度の湯煎で濃縮を行ってもよい。
また、前記のように水分を蒸発させて濃縮する時間についても、水分の蒸発手段により一概に限定できないが、例えば、加熱を伴う乾燥手段を用いる場合、70℃程度の湯煎では、前記混練物の焦げ付きを抑える観点から、30〜40分間程度であればよい。
【0033】
前記のようにして混練物の水分値を、20〜15重量%まで濃縮した後、得られる濃縮物に必要に応じて、酸味料、甘味料、香料等を添加混合したり、その濃縮物をキャンディ状に成型することができる。成型方法としては、スタンピング法が望ましい。
また、成型前に引き飴工程など所望の処理を行って、水分値を低減してもよい。
【0034】
次に、前記のように成型した濃縮物を固化させることで、キャンディ様構造物を得ることができる。固化手段としては、冷却したり、前記の濃縮と同様に水分を蒸発させてもよい。
【0035】
得られるキャンディ様構造物の水分値は、12〜18重量%である。水分値が12重量%未満ではコラーゲンペプチドがパサパサとなり、構造物の状態とはなりにくくなる傾向があり、前記水分量が18重量%を超えると柔らかくなりすぎて、構造物の状態とはなりにくくなる。
また、本発明では、前記キャンディ様構造物の水分値を調整することで、食感をソフトキャンディ様又はハードキャンディ様にかえることができる。
例えば、ハードキャンディとしての食感とする場合には、前記水分値は、13〜15重量%の範囲に調整することが望ましく、ソフトキャンディとしての食感とする場合には、前記水分値は、16〜17重量%の範囲に調整することが望ましい。
一般に、ハードキャンディの水分値は6重量%以下であり、ソフトキャンディの水分値は6〜20重量%、グミキャンディの水分値は10〜20重量%である。本発明のキャンディ様構造物は、水分値のみを見るとソフトキャンディやグミキャンディのそれと近いが、キャンディ様構造物中の水分はコラーゲンペプチドに内在する結合水として存在しており、例えば、水分値が13〜15重量%であっても、ハードキャンディ様の食感も示すことができる。なお、水分値は、減圧乾燥法で測定することができる。
【0036】
また、得られたキャンディ様構造物は、キャンディと同様の後処理を施したり、他の菓子類と組み合わせることもできる。
【0037】
以上のようにして本発明のキャンディ様構造物を製造できる。なお、上記の製造方法は一例であり、本発明のキャンディ様構造物の製造方法を限定するものではない。
【実施例】
【0038】
次に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例の記載中、特に断らない限り「%」は重量%を、「部」は重量部を表す。
【0039】
(実施例1〜3)
平均分子量の異なる二種類のコラーゲンペプチド粉末を下記表1の配合となるように混合し、コラーゲンペプチド100部に対して水30部を加えて混錬後、水分値が20%になるまで湯煎70℃にて濃縮を行った。その後、得られた濃縮物に表1記載の他成分も添加混合し、引き飴工程により水分値を表1に示す規定値まで低下させた。その後、定法により成型を行い固化させて、単重1.2gのキャンディ様構造物1〜3を得た。
実施例1〜3のキャンディ様構造物は、いずれもキャンディとして適度な硬さを有しており、また、舐めて楽しむだけでなく、通常のキャンディ同様、噛み砕いて食すことも可能であるものであった。噛んだところ、まるでハードキャンディのような食感を有していた。また、一粒あたり、コラーゲンペプチドをおよそ1,000mg配合しており、コラーゲンを摂取する目的で食したとしても、口残り、ざらつき等の口腔内へのまとわりつきはなく、また、コラーゲン臭もほとんどなく、まったくストレスのないものであった。
【0040】
【表1】

【0041】
(実施例4)
引き飴工程による水分値を変えた以外は、実施例1と同様にしてキャンディ様構造物を得て、キャンディ様構造物の食感の変化について調べた。
キャンディ様構造物の水分値を13〜15重量%に調整した場合、ハードキャンディ様の食感を強く奏していた。
キャンディ様構造物の水分値を16〜17重量%に調整した場合、ソフトキャンディ様の食感を強く奏していた。
なお、水分値が15重量%と16重量%との間のキャンディ様構造物は、ハードキャンディ及びソフトキャンディのいずれの食感も感じられる新たな食感を奏するものであった。
なお、得られたキャンディ様構造物は実施例1のキャンディ様構造物と同様に、口残り、ざらつき等の口腔内へのまとわりつきはなく、コラーゲン臭もほとんどないものであった。
【0042】
(実施例5)
コラーゲンペプチド以外の成分を使用しない以外は、実施例1と同様にして、コラーゲンペプチドの固形分含有量が100%のキャンディ様構造物を作製した。得られたキャンディ様構造物は、キャンディとして適度な硬さを有しており、通常のキャンディ同様、噛み砕いて食すことも可能であるものであった。噛んだところ、まるでハードキャンディのような食感を有していた。また、コラーゲン臭は若干したものの、口残り、ざらつき等の口腔内へのまとわりつきはなく、食する場合のストレスは感じにくいものであった。
【0043】
(比較例1)
コラーゲンペプチドの代わりに平均分子量が100,000程度のゼラチンを用いて、水と混練し、実施例1と同様にキャンディ様構造物を作製しようとしたが、濃縮時に非常に高い粘度となり、製造が不可能であった。
【0044】
(比較例2)
実施例1で使用したコラーゲンペプチドを使用して、特許文献10に示されているコラーゲンビーズの製造を試みたが、低分子であるため、コラーゲンペプチドの拡散が起こり、示されているようなコラーゲンビーズは形成されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分中に、平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド85〜100重量%を含有することを特徴とするキャンディ様構造物。
【請求項2】
水分値が12〜18重量%である請求項1に記載のキャンディ様構造物。
【請求項3】
前記平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチドが、平均分子量が相違した複数種類のコラーゲンペプチドを組み合わせてなるものである、請求項1又は2に記載のキャンディ様構造物。
【請求項4】
固形分中に、酸味料0.1〜8重量%及び香料0.1〜2重量%を含有する請求項1〜3いずれかに記載のキャンディ様構造物。
【請求項5】
平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド粉末を水と混練した後、得られた混練物を濃縮し、次いで固化させることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のキャンディ様構造物の製造方法。