説明

コルゲートフィン型熱交換器

【課題】高い伝熱促進を実現しつつ凝縮水の高い排水性を確保した熱交換器を提供する。
【解決手段】コルゲートフィン40の水平面42に、波の頂部を連ねた頂部線43や波の底部を連ねた底部線44と第2の熱交換流体の主要な流れとのなす角αが鋭角の範囲の角度として予め定められた一定角となるように、頂部線43および底部線44が複数回に亘って屈曲するように、さらに、頂部線43の屈曲点43aや底部線44の屈曲点44aを連ねた屈曲線が第2の熱交換流体の主要な流れに一致するように、複数の波を形成すると共に、扁平チューブ30との接合部近傍の底部線44の両端部に複数の貫通孔45を形成する。複数の波により熱交換流体の二次流れを生じさせて高い伝熱促進を実現し、複数の貫通孔45により、接合部近傍において前縁効果による高い伝熱性能を得ると共に凝縮水の高い排出性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲートフィン型熱交換器に関し、詳しくは、扁平な中空管として形成されて第1の熱交換媒流体の流路をなす複数の扁平チューブを扁平面が向かい合うように且つ第1の熱交換流体が鉛直方向に流れるように並べて配置すると共に各扁平チューブ間に第2の熱交換流体が水平方向に流れるようにコルゲートフィンを各扁平チューブに接合してなるコルゲートフィン型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱交換器としては、空気流入方向に対して斜め方向に傾斜した多数のルーバが形成されたルーバーフィンを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この熱交換器では、ルーバーフィンのフィン山高さが2.5mm〜6.0mmとすることにより、通水特性と熱効率とを向上させることができる、とされている。
【0003】
また、オフセットフィンを備えるものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。この熱交換器では、オフセットフィンのフィンピッチを2mm程度とすることにより、オフセットフィンの性能を向上させることができる、とされている。
【0004】
さらに、フィン付きの熱交換器において、フィンに、連続する複数の波を、波の山部や谷部の連続する線が空気の主要な流れに対して10度から60度の範囲の一定の鋭角となるように、且つ、波の山部や谷部が複数回に亘って屈曲するように形成したものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この熱交換器では、空気の主要な流れに対して傾いた複数の波をフィンに形成することにより、波の表面に空気の二次流れを生じさせ、これにより、熱交換効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−196383号公報
【特許文献2】特開平5−196383号公報
【特許文献3】国際公開WO2008/090872
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のルーバーフィンやオフセットフィンは、空気の流れが比較的低い低流速において比較的高い伝熱促進が図られているが、切り起こしや切断面があるためにゴミや埃、霜などがフィンに付着して目詰まりが生じやすくなる。ゴミや埃、霜などによる目詰まりは、空気の流れを阻害するため、熱交換器の性能を低下させてしまう。特に、フィンピッチが短くなると、ゴミや埃、霜などによる目詰まりは顕著になり、熱交換器の性能は著しく低下してしまう。
【0007】
一方、フィンに複数の波を形成して空気の二次流れを生じさせるものは、有効な空気の二次流れを生じさせるために、ルーバーフィンやオフセットフィンに比して空気の流れが実質的に広いピッチの流路を流れるため、ゴミや埃,霜などの目詰まりは生じにくいという長所を有するものの、フィンに貫通孔が形成されていないため、凝縮水が生じる場合には、凝縮水の排水性能が低くいものとなる。
【0008】
本発明のコルゲートフィン型熱交換器は、高い伝熱促進を実現しつつ凝縮水の高い排水性を確保した熱交換器を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコルゲートフィン型熱交換器は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0010】
本発明のコルゲートフィン型熱交換器は、
扁平な中空管として形成されて第1の熱交換媒流体の流路をなす複数の扁平チューブを扁平面が向かい合うように且つ前記第1の熱交換流体が鉛直方向に流れるように並べて配置すると共に各扁平チューブ間に第2の熱交換流体が水平方向に流れるようにコルゲートフィンを各扁平チューブに接合してなるコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記コルゲートフィンには、滑らかに連続する複数の波が、該波の頂部を連ねた頂部線と前記第2の熱交換流体の主要な流れとのなす角が一定の鋭角となり、前記頂部線が少なくとも一回屈曲するように、且つ、前記頂部線の屈曲点を連ねた屈曲線が前記主流に一致するように形成されており、更に、前記扁平チューブとの接合部近傍に複数の貫通孔が形成されている、
ことを特徴とする。
【0011】
この本発明のコルゲートフィン型熱交換器では、コルゲートフィンに、滑らかに連続する複数の波が、波の頂部を連ねた頂部線と第2の熱交換流体の主要な流れとのなす角が一定の鋭角となり、頂部線が少なくとも一回屈曲するように、且つ、頂部線の屈曲点を連ねた屈曲線が第2の熱交換流体の主要な流れに一致するように形成されているから、波の表面に有効な第2の熱交換流体の二次流れを生じさせることができる。この結果、高い伝熱促進を実現することができる。また、コルゲートフィンの扁平チューブとの接合部近傍に複数の貫通孔が形成されているから、前縁効果による高い伝熱性能を得ることができると共に、フィン上に第2の熱交換流体に含まれる水分が凝縮しても、凝縮水を排出することができる。即ち、高い排水性を確保することができる。コルゲートフィンにおける第2の熱交換流体の主要な流れの流速は、扁平チューブ近傍では小さく(遅く)、中央部では大きく(早く)なる。したがって、中央部では第2の熱交換流体の主要な流れに対して複数の波の表面に有効な二次流れを生じさせることができ、扁平チューブ近傍では複数の貫通孔による高い排水性を生じさせることができる。ここで、第1の熱交換流体としては、ハイドロフルオロカーボンなどの冷媒や水,オイルなどの種々の気体や液体を用いることができる。また、第2の熱交換流体としては、空気や内燃機関からの排ガス,燃料電池からのオフガスなどの種々の気体を用いることができる。「波の頂部」は、波の凸部と凹部との繰り返しにおける凸部の頂を意味しており、「頂部線と第2の熱交換流体の主要な流れとのなす角が一定の鋭角」とは、第2の熱交換流体の流入口においても「なす角」が一定の鋭角となるだけでなく第2の熱交換流体が流入口から流入した以降においても「なす角」が一定の鋭角となること、即ち、同一の角度の保持することを意味している。「頂部線が少なくとも一回屈曲する」とは、波の頂部の連なりが一回以上屈曲していること、複数回に亘って屈曲する場合にはジグザグと屈曲していることを意味している。「頂部線の屈曲点を連ねた屈曲線」とは、複数の波の頂部の連なりの屈曲点を連続的に連ねた線、即ち、n個の屈曲点を有する第1波、n個の屈曲点を有する第2波、n個の屈曲点を有する第3波・・・とn個の屈曲点を有する複数の波があるときに、第1波の1番目の屈曲点,第2波の1番目の屈曲点,第3波の1番目の屈曲点・・・を連ねた線や、第1波のm番目の屈曲点,第2波のm番目の屈曲点,第3波のm番目の屈曲点・・・を連ねた線などを意味している。波の底部を連ねた底部線は、波が凸部と凹部とを繰り返すものであることを考慮すると、隣接する頂部線の間に頂部線と同様に現われるものになる。即ち、本発明のコルゲートフィンは、少なくとも一回屈曲する頂部線と少なくとも一回屈曲する底部線とが交互に繰り返し現われるものとなる。なお、扁平チューブやコルゲートフィンは、第1の熱交換流体や第2の熱交換流体によって腐食しない金属材料、例えば、アルミニウムや銅,ステンレスやこれらの合金などの金属材料により形成するのが好適である。
【0012】
こうした本発明のコルゲートフィン型熱交換器において、前記複数の貫通孔は、前記コルゲートフィンに形成された波の底部に形成されている、ものとすることもできる。こうすれば、凝縮水は表面張力により波の底部に集まるから、凝縮水の排水性を向上させることができる。
【0013】
この波の底部に貫通孔が形成されている態様の本発明のコルゲートフィン型熱交換器において、前記コルゲートフィンには、前記複数の波を前記第2の熱交換流体の流入側から見ると前記接合部近傍では前記頂部線の屈曲がV字またはW字となるよう前記複数の波が形成されている、ものとすることもできる。複数の波を第2の熱交換流体の流入側から見ると接合部近傍では頂部線の屈曲がV字またはW字となるとは、左側の扁平チューブとの接合部近傍では、頂部線はV字の左の斜めの線(W字としたときには最も左の斜めの線)、即ち、下流になるにしたがって左側の接合部に近接するように現われ、右側の扁平チューブとの接合部近傍では、頂部線はV字の右の斜めの線(W字としたときには最も右の斜めの線)、即ち、下流になるにしたがって右側の接合部に近接するように現われることを意味している。前述したように、波の底部を連ねた底部線は頂部線と同様に現われるから、接合部近傍では底部線の屈曲もV字またはW字となって現われる。したがって、左側の扁平チューブとの接合部近傍の貫通孔は、第2の熱交換流体の流入側から見ると、底部線の形状としてのV字の左の斜めの線(W字としたときには最も左の斜めの線)における左上部位、即ち、左側の底部線の最下流部位に形成され、右側の扁平チューブとの接合部近傍の貫通孔は、第2の熱交換流体の流入側から見ると、底部線の形状としてのV字の右の斜めの線(W字としたときには最も右の斜めの線)における右上部位、即ち、右側の底部線の最下流部位に形成されることになる。底部線近傍の第2の熱交換流体の二次流れには底部線に沿って下流側に流れる成分が存在するから、凝縮水は第2の熱交換流体の二次流れにより底部線に沿って貫通孔に導かれることになる。したがって、第2の熱交換流体の流入側から見ると接合部近傍では頂部線の屈曲がV字またはW字となるよう複数の波を形成することにより、凝縮水の排水性を向上させることができる。
【0014】
また、波の底部に貫通孔が形成されている態様の本発明のコルゲートフィン型熱交換器において、前記複数の貫通孔は、前記頂部線に対して平行な切り込み又は前記頂部線に対して直交する切り込みを開くことにより形成されている、ものとすることもできる。前述したように、底部線は頂部線と同様に現われるから、複数の貫通孔は、底部線に対して平行な切り込みを開くことにより形成されていたり、底部線に対して直交する切り込みを開くことにより形成されていたりすることになる。複数の貫通孔を底部線に対して平行な切り込みを開くことにより形成するものとすれば、貫通孔の形状は底部線に沿って口を開くものとなるから、第2の熱交換流体の二次流れを乱すことなく凝縮水の流れに沿って凝縮水を貫通孔に導き、貫通孔から下方に排出することができる。一方、複数の貫通孔を底部線に対して直交する切り込みを開くことにより形成するものとすれば、貫通孔の形状は底部線に対して直交する方向に口を開くものとなるから、凝縮水を第2の熱交換流体の二次流れによって貫通孔に押し流して排出することができる。これらの結果、凝縮水の排水性を更に向上させることができる。
【0015】
この複数の貫通孔が頂部線に対して平行な切り込み又は頂部線に対して直交する切り込みを開くことにより形成されている態様の本発明のコルゲートフィン型熱交換器において、前記複数の貫通孔は、前記切り込みに対して前記第2の熱交換流体の流入側を下方に開くことにより及び/又は流出側を上方に開くことにより形成されているものとすることもできる。底部線近傍の第2の熱交換流体の二次流れには、上流側の凸部からの下降流の成分が存在するから、第2の熱交換流体の流入側を下方に開くこと又は第2の熱交換流体の流出側を上方に開くことにより、凝縮水を貫通孔に押し流すことができる。この結果、凝縮水の排水性を更に向上させることができる。
【0016】
また、本発明のコルゲートフィン型熱交換器において、前記複数の貫通孔は、下向きに凸となるように形成されている、ものとすることもできる。こうすれば、凝縮水は貫通孔に導かれるから、凝縮水の排水性を向上させることができる。
【0017】
この複数の貫通孔が下向きに凸となるように形成されている態様の本発明のコルゲートフィン型熱交換器において、前記複数の貫通孔は、1つ又は連絡する複数の切り込みを下方に切り起こすことにより形成されている、ものとすることもできる。こうれうば、容易に複数の貫通孔を形成することができる。この場合、前記複数の貫通孔は、切り起こしによる端部が前記扁平チューブ壁面側に近接するよう形成されいる、ものとすることもできる。こうすれば、凝縮水は端部によって扁平チューブ壁面側に導かれるから、凝縮水の排水性を向上させることができる。
【0018】
また、複数の貫通孔が下向きに凸となるように形成されている態様の本発明のコルゲートフィン型熱交換器において、前記複数の貫通孔は、下側に折り曲げられたルーバー形状に形成されている、ものとすることもできる。こうすれば、扁平チューブ近傍において、ルーバーフィンと同様に、高い伝熱促進を得ることができると共に、高い排水性を得ることができる。この場合、前記コルゲートフィンは、略全幅に亘る複数のルーバーが形成されてなるルーバーフィンに対して両端部のルーバー形状については維持して中央部のルーバー形状については解除した形状に加工することにより形成されている、ものとすることもできる。この場合、コルゲートフィンは、略全幅に亘る複数のルーバーが形成されてなるルーバーフィンを直接加工するものとしてもよい。
【0019】
本発明のコルゲートフィン型熱交換器において、前記コルゲートフィンは、オフセットフィンに対して両端部のオフセット形状については維持して中央部のオフセット形状については解除した形状に加工することにより形成されている、ものとすることもできる。こうすれば、扁平チューブ近傍において、オフセットフィンと同様に、高い伝熱促進を得ることができると共に、高い排水性を得ることができる。この場合、コルゲートフィンは、オフセットフィンを直接加工するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】2つの扁平チューブ30の間にコルゲートフィン40が配置されている様子の外観を拡大して示す拡大外観図である。
【図3】コルゲートフィン40の水平面を2つの扁平チューブ30の断面と共に示す平面図である。
【図4】図2および図3のA−A断面を図中のAの矢印方向から見たA−A断面図である。
【図5】図2および図3のB−B断面を図中のBの矢印方向から見たB−B断面図である。
【図6】図2および図3のC−C断面を図中のCの矢印方向から見たC−C断面図である。
【図7】図2および図3のD−D断面を図中のDの矢印方向から見たD−D断面図である。
【図8】コルゲートフィン40の水平面42に空気を流したときに波の表面近傍に生じる空気の二次流れと温度による等高線の一例を示す説明図である。
【図9】扁平チューブ30の間に空気を流したときのコルゲートフィン40の水平面42における空気の主要な流れにおける流速の分布を矢印の大きさで示した模式図である。
【図10】波の表面近傍に生じた空気の二次流れと貫通孔45との関係を説明する説明図である。
【図11】変形例のコルゲートフィン40Bの一例を示す説明図である。
【図12】変形例のコルゲートフィン40Cの一例を示す説明図である。
【図13】本発明の第2実施例のコルゲートフィン型熱交換器120に用いるコルゲートフィン140の一部の構成の概略を示す構成図である。
【図14】図13のコルゲートフィン140におけるE−E断面を図中Eの矢印方向から見た断面図である。
【図15】本発明の第3実施例のコルゲートフィン型熱交換器220に用いるコルゲートフィン240の一部の構成の概略を示す構成図である。
【図16】第3実施例のコルゲートフィン240を形成する途中におけるルーバーフィン状中間部材の一部の構成の概略を示す構成図である。
【図17】変形例のコルゲートフィン240Cの一例を示す説明図である。
【図18】本発明の第4実施例のコルゲートフィン型熱交換器320に用いるコルゲートフィン340の一部の構成の概略を示す構成図である。
【図19】第4実施例のコルゲートフィン340を形成する途中におけるオフセットフィン状中間部材340Bの一部の構成の概略を示す構成図である。
【図20】変形例のコルゲートフィン440の構成の概略を示す構成図である。
【図21】変形例のコルゲートフィン540の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明の第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20の構成の概略を示す構成図であり、図2は扁平チューブ30の間にコルゲートフィン40が配置されている様子の外観を拡大して示す拡大外観図であり、図3はコルゲートフィン40の水平面42を両側の扁平チューブ30の断面と共に示す平面図である。また、図4〜図7は、図2および図3のコルゲートフィン40におけるA−A断面,B−B断面,C−C断面,D−D断面を図中のA〜Dの矢印方向から見た断面図である。
【0023】
第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20は、各種の空気調和装置や冷凍装置などの冷凍サイクルに用いられる熱交換器として、或いは、内燃機関からの排ガスや燃料電池からのオフガスから熱エネルギを回収する熱回収装置などのエネルギ変換装置に用いられる熱交換器として用いられ、図1に示すように、扁平な中空管として形成されて第1の熱交換流体としてのハイドロフルオロカーボンや水,オイルなどの熱交換媒体の流路をなす複数の扁平チューブ30と、第1の熱交換流体を全体として迂流させるための3つの隔壁28a,28b,28cと、各扁平チューブ30の間や扁平チューブ30と3つの隔壁28a,28b,28cとの間,扁平チューブ30と側壁29a,29bとの間に各々配置されて第2の熱交換流体としての空気や排ガスなどの熱交換媒体の流路において熱交換による伝熱促進を行なう複数のコルゲートフィン40と、これらからなる熱交換部の上部に配置されて第1の熱交換流体の流入口23と流出口24とが形成された上部ヘッダー22と、熱交換部の下部に配置された下部ヘッダー26とを備える。第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20の扁平チューブ30や隔壁28a,28b,28c,側壁29a,29b,コルゲートフィン40,上部ヘッダー22,下部ヘッダー26は、第1の熱交換流体や第2の熱交換流体に対して耐腐食性を有すると共に熱伝導率の高い金属材料、例えば、第2の熱交換流体として空気が用いられるときにはアルミニウムや銅,ステンレス、第2の熱交換流体として内燃機関からの排ガスや燃料電池からの排ガスが用いられるときにはステンレスなどにより形成されている。以下の説明では、コルゲートフィン型熱交換器20としては、空気調和装置に用いられる熱交換器であり、扁平チューブ30や隔壁28a,28b,28c,側壁29a,29b,コルゲートフィン40,上部ヘッダー22,下部ヘッダー26の各部材についてはアルミニウムにより形成され、大きさとしては、扁平チューブ30の間隔が5mm〜10mm、コルゲートフィン40の水平面42の間隔(垂直面48の高さ)が1mm〜2mm程度であり、第1の熱交換流体としてハイドロフルオロカーボンを用い、第2の熱交換流体として空気を用いるもの、を具体例として用いる。
【0024】
上部ヘッダー22の内側には、隔壁28a,28cと整合する位置に隔壁28a,28cが延在するように仕切壁25a,25bが形成されており、下部ヘッダー26の内側には、隔壁28bと整合する位置に隔壁28bが延在するように仕切壁27が形成されている。したがって、第1の熱交換流体(例えばハイドロフルオロカーボン)は、図中矢印で示すように、流入口23から上部ヘッダー22の内側に流れ込み、隔壁28aより右側の3つの扁平チューブ30の内側を鉛直上方から鉛直下方に流れ、下部ヘッダー26内で仕切壁27により隔壁28a,28bの間の3つの扁平チューブ30に供給され、3つの扁平チューブ30の内側を鉛直下方から鉛直上方に流れて上部ヘッダー22の仕切壁25a,25bの間の空間に流れ込み、隔壁28b,28cの3つの扁平チューブ30の内側を鉛直上方から鉛直下方に流れて仕切壁28bの右側の空間に至り、隔壁28cより左側の3つの扁平チューブ30の内側を鉛直下方から鉛直上方に流れて上部ヘッダー22の仕切壁25bの左側の空間に入り、その後、流出口24から排出される。なお、第2の熱交換流体(空気)は、図1では表面から裏面に向けて、図2では斜め左下から斜め右上に向けて、図3では下から上に向けて、複数の扁平チューブ30の間を抜けるように流れる。
【0025】
コルゲートフィン40は、水平面42と垂直面48とが交互につづら折り状(蛇腹状)に形成され、垂直面48が扁平チューブ30にろう付けなどにより接合されている。コルゲートフィン40の水平面42には、複数回に亘って屈曲する複数の波が形成されている。複数の波は、図3に示すように、波の頂部を連ねた頂部線43や波の底部を連ねた底部線44と第2の熱交換流体(空気)の主要な流れとのなす角αが鋭角の範囲の角度として予め定められた一定角(第1実施例では30度)となるように、頂部線43および底部線44が複数回に亘って屈曲するように、さらに、頂部線43の屈曲点43aや底部線44の屈曲点44aを連ねた屈曲線(図3中の一点鎖線)が第2の熱交換流体(空気)の主要な流れに一致するように、形成されている。ここで、波の頂部は、波の凸部と凹部との繰り返しにおける凸部の頂を意味している。頂部線43や底部線44と第2の熱交換流体(空気)の主要な流れとのなす角αは、第2の熱交換流体の流入口だけでなく、コルゲートフィン40の全体に亘って一定であり、その角度は、10度ないし60度が好ましく、15度ないし45度が更に好ましく、25度ないし35度(第1実施例では30度)がより理想的である。頂部線43や底部線44が複数回に亘って屈曲するとは、波の頂部の連なりや底部の連なりが図3の頂部線43や底部線44のようにジグザグと屈曲していることを意味している。頂部線43の屈曲点や底部線44の屈曲点を連ねた屈曲線は、図3では一点鎖線に示すように、n個の屈曲点を有する第1波、n個の屈曲点を有する第2波、n個の屈曲点を有する第3波・・・とn個の屈曲点を有する複数の波があるときに、第1波の1番目の屈曲点,第2波の1番目の屈曲点,第3波の1番目の屈曲点・・・を連ねた線や、第1波のm番目の屈曲点,第2波のm番目の屈曲点,第3波のm番目の屈曲点・・・を連ねた線などを意味している。そして、この屈曲線が第2の熱交換流体の主要な流れに一致しているように複数の波が形成されているのである。
【0026】
図8は、コルゲートフィン40の水平面42に空気(第2の熱交換流体)を流したときに波の表面近傍に生じる空気の二次流れと温度による等高線の一例である。 図中、複数の矢印が二次流れを示し、連続する曲線が温度による等高線を示す。図示するように、コルゲートフィン40の水平面42に形成された波の凸部と凹部との繰り返しに対して空気(第2の熱交換流体)を流すと、波の表面近傍には凸部と凹部とにより空気の強い二次流れが発生し、表面付近で大きな温度勾配が発生する。即ち、この二次流れが生じることにより、温度勾配が生じ、伝熱を促進するのである。第1実施例では、頂部線43や底部線44と空気(第2の熱交換流体)の主要な流れとのなす角αを30度としたのは、この二次流れを有効に生じさせるためである。このなす角αは、小さすぎると空気の流れに有効な二次流れを生じさせることができず、大きすぎると空気が波の凸部や凹部に沿って流れることができずに剥離や局所的な増速が発生して通風抵抗が増大する。そして、設計値として適切な空気流量とすることにより、波の凸部や凹部による二次流れを有効に発生させることができる。なお、第1実施例では、なす角αは30度で一定としたが、このなす角αは一定である必要はなく、波の凸部と凹部とが曲線となるよう変化させるものとしても構わない。
【0027】
図9は、扁平チューブ30の間に空気を流したときのコルゲートフィン40の水平面42における空気の主要な流れにおける流速の分布を矢印の大きさで示した模式図である。図示するように、空気は、両側の扁平チューブ30からの剪断力や摩擦力の影響を受けない中央部では流速が大きく、剪断力や摩擦力の影響を受ける両側の扁平チューブ30近傍(コルゲートフィン40との接合部近傍)では流速が小さくなる。空気の二次流れは空気の主要な流れの流速に影響されるから、第1実施例では、扁平チューブ30の間の中央部で有効な二次流れが生じるようにその間隔を設計するものとした。これにより、扁平チューブ30の間の中央部において高い伝熱促進を図ることができる。
【0028】
また、コルゲートフィン40の複数の波の各底部線44の扁平チューブ30近傍となる両端部(コルゲートフィン40との接合部近傍)には、図3,図4,図6に示すように、底部線44上に頂部線43や底部線44に平行に複数の貫通孔45が形成されている。この貫通孔45は、底部線44上に頂部線43や底部線44に平行な切り込みを入れ、この切り込みに対して第2の熱交換流体(空気)の流れの上流側を下側に開口することによって形成されている。図9を用いて説明したように、扁平チューブ30との接合部近傍の第2の熱交換流体(空気)の流速は小さく(遅く)なるから、複数の波によってある程度の二次流れが生じるものの、中央部に比して二次流れによる高い伝熱促進は図られないが、複数の貫通孔45が形成されていることから、その前縁効果により、高い伝熱性能を得ることができる。また、複数の貫通孔45を有するため、コルゲートフィン40の水平面42に凝縮水が生じても、凝縮水をその自重により下方に排出することができる。図3に示すように、コルゲートフィン40に形成されている複数の波は、第2の熱交換流体(空気)の流入側から見ると、扁平チューブ30との接合部近傍では、頂部線43や底部線44の屈曲はV字やW字となるように形成されている。即ち、頂部線43や底部線44は、左側の扁平チューブ30との接合部近傍では、V字の左の斜めの線(W字としたときには最も左の斜めの線)、即ち、下流側になるにしたがって左側の扁平チューブ30に近接するように形成されており、右側の扁平チューブ30との接合部近傍では、V字の右の斜めの線(W字としたときには最も右の斜めの線)、即ち、下流側になるにしたがって右側の扁平チューブ30に近接するように形成されている。このため、図3中の左側の扁平チューブ30との接合部近傍の貫通孔45は、第2の熱交換流体(空気)の流入側から見ると、底部線44の形状としてのV字の左の斜めの線(W字としたときには最も左の斜めの線)における左上部位、即ち、最も左側の底部線44の最下流部位に形成され、右側の扁平チューブ30との接合部近傍の貫通孔45は、第2の熱交換流体(空気)の流入側から見ると、底部線44の形状としてのV字の右の斜めの線(W字としたときには最も右の斜めの線)における右上部位、即ち、最も右側の底部線44の最下流部位に形成されることになる。図8を用いて説明したように、底部線44近傍の第2の熱交換流体(空気)の二次流れには底部線44に沿って下流側に流れる成分が存在するから、コルゲートフィン40の水平面42に生じ得る凝縮水は、第2の熱交換流体(空気)の二次流れにより底部線44に沿って貫通孔45に導かれることになる。しかも、貫通孔45は、底部線44上の切り込みに対して第2の熱交換流体(空気)の流れの上流側を下側に開口することによって形成されているから、図10に示すように、波の表面近傍に生じた第2の熱交換流体(空気)の二次流れ(小さい複数の矢印)は、コルゲートフィン40の水平面42に生じ得る凝縮水を貫通孔45に押し流す作用を生じることになり、凝縮水の水平面42から下方への排出を促進している。
【0029】
以上説明した第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20によれば、コルゲートフィン40の水平面42に、波の頂部を連ねた頂部線43や波の底部を連ねた底部線44と第2の熱交換流体の主要な流れとのなす角αが鋭角の範囲の角度として予め定められた一定角となるように、頂部線43および底部線44が複数回に亘って屈曲するように、さらに、頂部線43の屈曲点43aや底部線44の屈曲点44aを連ねた屈曲線が第2の熱交換流体の主要な流れに一致するように、複数の波を形成することにより、波の表面近傍に第2の熱交換流体の二次流れを生じさせ、これにより、高い伝熱促進を実現することができる。また、コルゲートフィン40の水平面42に生じる凝縮水はその表面張力により波の凹部に集まるから、コルゲートフィン40に複数の波を形成することにより、凝縮水の流路を形成することができる。更に、コルゲートフィン40の扁平チューブ30との接合部近傍の底部線44の両端部に複数の貫通孔45を形成することにより、接合部近傍において前縁効果による高い伝熱性能を得ることができると共に、コルゲートフィン40の水平面42に生じ得る凝縮水の高い排出性を確保することができる。これらの結果、高い伝熱促進を実現しつつ凝縮水の高い排出性を確保した熱交換器を提供することができる。
【0030】
しかも、複数の波は、第2の熱交換流体(空気)の流入側から見ると、両側の扁平チューブ30近傍(接合部近傍)では、頂部線43や底部線44の屈曲がV字やW字となるように形成され、複数の貫通孔45を底部線44の最下流部位に形成されるようにすることにより、コルゲートフィン40の水平面42に生じ得る凝縮水の排水性を更に高くすることができる。また、複数の貫通孔45は、底部線44上の頂部線43や底部線44に平行な切り込みに対して第2の熱交換流体の流れの上流側を下側に開口することによって形成されているから、波の表面近傍における第2の熱交換流体の二次流れによって凝縮水を貫通孔45から押し流す作用を生じさせ、コルゲートフィン40の水平面42に生じ得る凝縮水の排水性を更に高くすることができる。
【0031】
第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20では、複数の貫通孔45を、底部線44上の頂部線43や底部線44に平行な切り込みに対して第2の熱交換流体の流れの上流側を下側に開口することによって形成するものとしたが、複数の貫通孔45を、底部線44上の切り込みに対して第2の熱交換流体の流れの下流側を上側に開口することによって形成するものとしてもよい。また、複数の貫通孔45を、底部線44上の切り込みに対して第2の熱交換流体の流れの上流側を下側に開口すると共に下流側を上側に開口することによって形成するものとしてもよい。また、複数の貫通孔45は、必ずしも底部線44上に形成する必要はなく、底部線44から若干ずれた位置に頂部線43や底部線44に平行に切り込みを入れ、この切り込みに対して第2の熱交換流体の流れの上流側を下側に開口したり、下流側を上側に開口したりして形成するものとしてもよい。
【0032】
第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20では、複数の貫通孔45を、底部線44上の切り込みにより形成するものとしたが、図11の変形例のコルゲートフィン40Bに示すように、複数の貫通孔45Bを、底部線44B上に頂部線43Bや底部線44Bに対して略垂直な切り込みにより形成するものとしてもよい。この場合、凝縮水は、第2の熱交換流体の二次流れによって貫通孔45Bに押し流されることになる。この場合も、複数の貫通孔45Bは、底部線44Bに垂直な切り込みに対して第2の熱交換流体の流れの上流側を下側に開口したり、下流側を上側に開口したりして形成すればよい。
【0033】
第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20では、コルゲートフィン40の水平面42に、複数の波を、第2の熱交換流体(空気)の流入側から見ると、扁平チューブ30との接合部近傍では、頂部線43や底部線44の屈曲がV字やW字となるように形成するものとしたが、図12の変形例のコルゲートフィン40Cに示すように、第2の熱交換流体(空気)の流入側から見ると、扁平チューブ30との接合部近傍では、頂部線43Cや底部線44Cの屈曲がΛ字やM字となるように形成するものとしても構わない。この場合も、複数の貫通孔45Cは、底部線44Cに沿った(平行な)切り込みにより形成するものとしてもよいし、底部線44Bに対して略垂直な切り込みにより形成するものとしてもよい。また、第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20では、コルゲートフィン40の水平面42に、複数の波を、頂部線43や底部線44が複数回に亘って屈曲するように形成したが、頂部線43や底部線44は一回だけ屈曲するものや二回だけ屈曲するものなど、少なくとも一回屈曲するものであればよい。
【実施例2】
【0034】
図13は本発明の第2実施例のコルゲートフィン型熱交換器120に用いるコルゲートフィン140の一部の構成の概略を示す構成図であり、図14は図13のコルゲートフィン140におけるE−E断面を図中Eの矢印方向から見た断面図である。第2実施例のコルゲートフィン型熱交換器120は、コルゲートフィン40の形状を除いて図1に示す第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同一の構成をしている。即ち、第2実施例のコルゲートフィン型熱交換器120は、図1に示す第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同一の上部ヘッダー22、下部ヘッダー26、隔壁28a,28b,28c,側壁29a,29b,複数の扁平チューブ30とを備え、コルゲートフィン40に代えて、各扁平チューブ30の間や扁平チューブ30と3つの隔壁28a,28b,28cとの間,扁平チューブ30と側壁29a,29bとの間に各々配置されて第2の熱交換流体としての空気や排ガスなどの熱交換媒体の流路において熱交換による伝熱促進を行なう複数のコルゲートフィン140(図13参照)を備え、第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同様に、各種の空気調和装置や冷凍装置などの冷凍サイクルに用いられる熱交換器として、或いは、内燃機関からの排ガスや燃料電池からのオフガスから熱エネルギを回収する熱回収装置などのエネルギ変換装置に用いられる熱交換器として用いられる。第2実施例のコルゲートフィン型熱交換器120でも、第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同様に、以下の説明では、空気調和装置に用いられる熱交換器であり、扁平チューブ30や隔壁28a,28b,28c,側壁29a,29b,コルゲートフィン140,上部ヘッダー22,下部ヘッダー26の各部材についてはアルミニウムにより形成され、大きさとしては、扁平チューブ30の間隔が5mm〜10mm、コルゲートフィン140の水平面142の間隔(垂直面148の高さ)が1mm〜2mm程度であり、第1の熱交換流体としてハイドロフルオロカーボンを用い、第2の熱交換流体として空気を用いるもの、を具体例として用いる。
【0035】
第2実施例のコルゲートフィン140も、第1実施例のコルゲートフィン40と同様に、水平面142と垂直面148とが交互につづら折り状(蛇腹状)に形成され、垂直面148が扁平チューブ30にろう付けなどにより接合されており、水平面142には、複数回に亘って屈曲する複数の波が形成されている。複数の波も、第1実施例と同様に、図13に示すように、波の頂部を連ねた頂部線143や波の底部を連ねた底部線144と第2の熱交換流体(空気)の主要な流れとのなす角αが鋭角の範囲の角度として予め定められた一定角(第1実施例では30度)となるように、頂部線143および底部線144が複数回に亘って屈曲するように、さらに、頂部線143の屈曲点や底部線144の屈曲点を連ねた屈曲線が第2の熱交換流体(空気)の主要な流れに一致するように、形成されている。この複数の波による作用・効果については第1実施例で詳述した。
【0036】
第2実施例のコルゲートフィン140の水平面142の扁平チューブ30との接合部近傍にも複数の貫通孔145が形成されており、この複数の貫通孔145は、一辺が扁平チューブ30に平行な三角形における他の2辺となるよう切り込みを入れ、これを下に凸となるように切り起こし、さらに、切り起こしの端部が凝縮水を扁平チューブ30や垂直面148側にガイドするように折り曲げられることによって形成されている。上述したように、扁平チューブ30との接合部近傍の第2の熱交換流体(空気)の流速は小さく(遅く)なるから、複数の波によってある程度の二次流れが生じるものの、中央部に比して二次流れによる高い伝熱促進は図られないが、複数の貫通孔145が形成されていることから、その前縁効果により、高い伝熱性能を得ることができる。また、複数の貫通孔145は、下に凸となるよう切り起こしにより形成されているから、コルゲートフィン140の水平面142に凝縮水が生じても、凝縮水を収集し、その自重により下方に排出することができる。更に、複数の貫通孔145の切り起こしによる端部が扁平チューブ30や垂直面148に折り曲げられているから、凝縮水を扁平チューブ30や垂直面148に導くことができ、凝縮水の排水性を更に高めることができる。
【0037】
以上説明した第2実施例のコルゲートフィン型熱交換器120によれば、コルゲートフィン140の水平面142に、第1実施例と同様の複数の波を形成したことにより、波の表面近傍に第2の熱交換流体の二次流れを生じさせ、これにより、高い伝熱促進を実現することができる。また、コルゲートフィン140の扁平チューブ30との接合部近傍に下に凸となるよう切り起こしにより複数の貫通孔145を形成することにより、接合部近傍において前縁効果による高い伝熱性能を得ることができると共に、コルゲートフィン140の水平面142に生じ得る凝縮水の高い排出性を確保することができる。これらの結果、高い伝熱促進を実現しつつ凝縮水の高い排出性を確保した熱交換器を提供することができる。
【0038】
第2実施例のコルゲートフィン型熱交換器120では、複数の貫通孔145を、扁平チューブ30との接合部近傍に、一辺が扁平チューブ30に平行な三角形における他の2辺となるよう切り込みを入れ、これを下に凸となるように切り起こし、さらに、切り起こしの端部が凝縮水を扁平チューブ30や垂直面148側にガイドするように折り曲げることによって形成したが、複数の貫通孔145を、一辺が扁平チューブ30に平行ではない三角形における任意の2辺に切り込みを入れ、これを下に凸となるように切り起こすことによって形成するものとしてもよい。この場合、切り起こしの端部は、扁平チューブ30や垂直面148側に折り曲げられているものとしてもよいし、扁平チューブ30や垂直面148側とは異なる側に折り曲げられているものとしても構わない。また、切り込みは三角形における2辺に限定されるものではなく、4角形の3辺や5角形の4辺としても構わない。
【実施例3】
【0039】
図15は本発明の第3実施例のコルゲートフィン型熱交換器220に用いるコルゲートフィン240の一部の構成の概略を示す構成図であり、図16は第3実施例のコルゲートフィン240を形成する途中におけるルーバーフィン状中間部材240Bの一部の構成の概略を示す構成図である。第3実施例のコルゲートフィン型熱交換器220は、コルゲートフィン40の形状を除いて図1に示す第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同一の構成をしている。即ち、第3実施例のコルゲートフィン型熱交換器220は、図1に示す第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同一の上部ヘッダー22、下部ヘッダー26、隔壁28a,28b,28c,側壁29a,29b,複数の扁平チューブ30とを備え、コルゲートフィン40に代えて、各扁平チューブ30の間や扁平チューブ30と3つの隔壁28a,28b,28cとの間,扁平チューブ30と側壁29a,29bとの間に各々配置されて第2の熱交換流体としての空気や排ガスなどの熱交換媒体の流路において熱交換による伝熱促進を行なう複数のコルゲートフィン240(図15参照)を備え、第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同様に、各種の空気調和装置や冷凍装置などの冷凍サイクルに用いられる熱交換器として、或いは、内燃機関からの排ガスや燃料電池からのオフガスから熱エネルギを回収する熱回収装置などのエネルギ変換装置に用いられる熱交換器として用いられる。第3実施例のコルゲートフィン型熱交換器220でも、第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同様に、以下の説明では、空気調和装置に用いられる熱交換器であり、扁平チューブ30や隔壁28a,28b,28c,側壁29a,29b,コルゲートフィン140,上部ヘッダー22,下部ヘッダー26の各部材についてはアルミニウムにより形成され、大きさとしては、扁平チューブ30の間隔が5mm〜10mm、コルゲートフィン240の水平面242の間隔(垂直面248の高さ)が1mm〜2mm程度であり、第1の熱交換流体としてハイドロフルオロカーボンを用い、第2の熱交換流体として空気を用いるもの、を具体例として用いる。
【0040】
第3実施例のコルゲートフィン240は、水平面242と垂直面248とが交互につづら折り状(蛇腹状)に形成され、垂直面248が扁平チューブ30にろう付けなどにより接合されており、下向きに複数のルーバー250Bが形成されたルーバーフィン状中間部材240B(図16参照)に対してルーバー250Bの端部近傍(扁平チューブ30との接合部近傍)ではルーバー形状が維持されると共にその他の部分(両側の扁平チューブ30の間の中央部)ではルーバー形状が解除された形状となるように、且つ、水平面242全体に第1実施例と同様の複数の波が形成された形状となるように、プレス加工などにより形成されている。このため、扁平チューブ30との接合部近傍(水平面242の両側近傍)には、ルーバー形状が維持された複数の貫通孔245が形成されると共にルーバー250Bにより一対をなす両サイドの貫通孔254の間にはルーバー250Bを形成した際の切り込み線250が形成されている。複数の貫通孔245は、下向きのルーバー形状が維持されるから、扁平チューブ30との接合部近傍の第2の熱交換流体の流れにより、凝縮水が貫通孔245に押し流されることにより、排水性を向上させている。なお、切り込み線250は、コルゲートフィン240の第2の熱交換流体(空気)の流れる方向の伝熱については妨げるものとなるが、第2の熱交換流体(空気)の流れる方向と直交する方向の伝熱については何ら妨げるものとはならないから、第3実施例のコルゲートフィン型熱交換器220の性能を低下させるものとはならない。
【0041】
こうした第3実施例のコルゲートフィン型熱交換器220でも、コルゲートフィン240の水平面242に、第1実施例と同様の複数の波を有するから、波の表面近傍に第2の熱交換流体の二次流れを生じさせ、これにより、高い伝熱促進を実現することができる。また、コルゲートフィン240の扁平チューブ30との接合部近傍には下向きのルーバー形状を維持した複数の貫通孔245が形成されているから、接合部近傍において前縁効果による高い伝熱性能を得ることができると共に、コルゲートフィン240の水平面242に生じ得る凝縮水の高い排出性を確保することができる。これらの結果、高い伝熱促進を実現しつつ凝縮水の高い排出性を確保した熱交換器を提供することができる。
【0042】
第3実施例のコルゲートフィン型熱交換器220では、ルーバーフィン状中間部材240Bに対してルーバー250Bの端部近傍ではルーバー形状が維持されると共にその他の部分ではルーバー形状が解除された形状となるようにコルゲートフィン240を形成したことにより切り込み線250を有するものとしたが、切り込み線250を有しないものとしてもよい。また、図17の変形例のコルゲートフィン240Cに示すように、扁平チューブ30との接合部近傍に形成する複数の貫通孔245Cを下に凸のルーバー形状として形成するものとしてもよい。
【実施例4】
【0043】
図18は本発明の第4実施例のコルゲートフィン型熱交換器320に用いるコルゲートフィン340の一部の構成の概略を示す構成図であり、図19は第4実施例のコルゲートフィン340を形成する途中におけるオフセットフィン状中間部材340Bの一部の構成の概略を示す構成図である。第4実施例のコルゲートフィン型熱交換器320は、コルゲートフィン40の形状を除いて図1に示す第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同一の構成をしている。即ち、第4実施例のコルゲートフィン型熱交換器320は、図1に示す第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同一の上部ヘッダー22、下部ヘッダー26、隔壁28a,28b,28c,側壁29a,29b,複数の扁平チューブ30とを備え、コルゲートフィン40に代えて、各扁平チューブ30の間や扁平チューブ30と3つの隔壁28a,28b,28cとの間,扁平チューブ30と側壁29a,29bとの間に各々配置されて第2の熱交換流体としての空気や排ガスなどの熱交換媒体の流路において熱交換による伝熱促進を行なう複数のコルゲートフィン340(図18参照)を備え、第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同様に、各種の空気調和装置や冷凍装置などの冷凍サイクルに用いられる熱交換器として、或いは、内燃機関からの排ガスや燃料電池からのオフガスから熱エネルギを回収する熱回収装置などのエネルギ変換装置に用いられる熱交換器として用いられる。第3実施例のコルゲートフィン型熱交換器320でも、第1実施例のコルゲートフィン型熱交換器20と同様に、以下の説明では、空気調和装置に用いられる熱交換器であり、扁平チューブ30や隔壁28a,28b,28c,側壁29a,29b,コルゲートフィン140,上部ヘッダー22,下部ヘッダー26の各部材についてはアルミニウムにより形成され、大きさとしては、扁平チューブ30の間隔が5mm〜10mm、コルゲートフィン340の水平面242の間隔(垂直面348の高さ)が1mm〜2mm程度であり、第1の熱交換流体としてハイドロフルオロカーボンを用い、第2の熱交換流体として空気を用いるもの、を具体例として用いる。
【0044】
第4実施例のコルゲートフィン340は、水平面342と垂直面348とが交互につづら折り状(蛇腹状)に形成され、垂直面348が扁平チューブ30にろう付けなどにより接合されており、図19に例示するオフセットフィン状中間部材340Bに対して扁平チューブ30との接合部近傍ではオフセット形状が維持されると共にその他の部分(両側の扁平チューブ30の間の中央部)ではオフセット形状が解除された形状となるように、且つ、水平面342全体に第1実施例と同様の複数の波が形成された形状となるように、プレス加工などにより形成されている。このため、扁平チューブ30との接合部近傍(水平面342の両側近傍)には、オフセット形状が維持されたことによる複数の貫通孔345が形成されると共にオフセットフィン状中間部材340Bによるオフセット形状により一対をなす両サイドの貫通孔354の間にはオフセットを形成した際の切り込み線350が形成されている。複数の貫通孔345は、オフセット形状が維持されるから、第2の熱交換流体の上流側にも下流側にも形成されることになる。このため、扁平チューブ30との接合部近傍の第2の熱交換流体の流れにより、凝縮水が貫通孔345に押し流され、これにより、コルゲートフィン340における排水性を向上させている。なお、切り込み線350は、上述したように、コルゲートフィン340の第2の熱交換流体(空気)の流れる方向の伝熱については妨げるものとなるが、第2の熱交換流体(空気)の流れる方向と直交する方向の伝熱については何ら妨げるものとはならないから、第4実施例のコルゲートフィン型熱交換器320の性能を低下させるものとはならない。
【0045】
こうした第4実施例のコルゲートフィン型熱交換器320でも、コルゲートフィン340の水平面342に、第1実施例と同様の複数の波を有するから、波の表面近傍に第2の熱交換流体の二次流れを生じさせ、これにより、高い伝熱促進を実現することができる。また、コルゲートフィン340の扁平チューブ30との接合部近傍にはオフセット形状を維持した複数の貫通孔345が形成されているから、接合部近傍において前縁効果による高い伝熱性能を得ることができると共に、コルゲートフィン340の水平面342に生じ得る凝縮水の高い排出性を確保することができる。これらの結果、高い伝熱促進を実現しつつ凝縮水の高い排出性を確保した熱交換器を提供することができる。
【0046】
第4実施例のコルゲートフィン型熱交換器320では、オフセットフィン状中間部材340Bに対して扁平チューブ30との接合部近傍ではオフセット形状が維持されると共にその他の部分ではオフセット形状が解除された形状となるようにコルゲートフィン340を形成したことにより切り込み線350を有するものとしたが、切り込み線350を有しないものとしてもよい。
【0047】
上述した各実施例やその変形例では、水平面と垂直面とを繰り返してつづら折り状にコルゲートフィンを形成したが、図20の変形例のコルゲートフィン440に示すように、水平面442と屈曲接合部448と傾斜面446と屈曲接合部448とをこの順に繰り返して得られる形状にコルゲートフィン440を形成するものとしてもよいし、図21の変形例のコルゲートフィン540に示すように、左下傾斜面542と屈曲接合部548と右下傾斜面546と屈曲接合部548とをこの順に繰り返して得られる形状にコルゲートフィン540を形成するものとしてもよい。これらの場合、水平面442や傾斜面446,左下傾斜面542,右下傾斜面546については、各実施例やその変形例と同様に、複数の波を形成すると共にコルゲートフィンの両側における扁平チューブ30との接合部近傍に複数の貫通孔を形成すればよい。なお、傾斜面446や左下傾斜面542,右下傾斜面546については、下側となる扁平チューブ30との接合部近傍にのみに複数の貫通孔を形成するものとしても構わない。
【0048】
上述した各実施例やその変形例では、上部ヘッダー22、下部ヘッダー26、隔壁28a,28b,28c,側壁29a,29b,複数の扁平チューブ30と、複数のコルゲートフィン40,40B,40C,140,240,240C,340,440,540とを備えるものとしたが、隔壁28a,28b,28cや側壁29a,29bについてはこれらを扁平チューブ30に置き換え、上部ヘッダー22および下部ヘッダー26内の仕切壁25a,25b,27については扁平チューブ30の間に配置するものとしてもよい。こうすれば、隔壁28a,28b,28cや側壁29a,29bについても扁平チューブ30として用いることができるから、熱交換効率が高く小型のものとすることができる。
【0049】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、熱交換器の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
20,120,220,320 コルゲートフィン型熱交換器、22 上部ヘッダー、23 流入口、24 流出口、25a,25b 仕切壁、26 下部ヘッダー、27 仕切壁、28a,28b,28c 隔壁、29a,29b 側壁、30 扁平チューブ、40,40B,40C,140,240,240C,340,440,540 コルゲートフィン、42,142,242,242C,342,442 水平面、43,43B,43C,143,243,343 頂部線、44,44B,44C,144,244,344 底部線、45,45B,45C,145,245,245C,345 貫通孔、48,48B,48C,148,248,348 垂直面、240B ルーバーフィン状中間部材、250B ルーバー、340B オフセット状中間部材、446 傾斜面、448,548 屈曲接合部、542 左下傾斜面、546 右下傾斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な中空管として形成されて第1の熱交換媒流体の流路をなす複数の扁平チューブを扁平面が向かい合うように且つ前記第1の熱交換流体が鉛直方向に流れるように並べて配置すると共に各扁平チューブ間に第2の熱交換流体が水平方向に流れるようにコルゲートフィンを各扁平チューブに接合してなるコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記コルゲートフィンには、滑らかに連続する複数の波が、該波の頂部を連ねた頂部線と前記第2の熱交換流体の主要な流れとのなす角が一定の鋭角となり、前記頂部線が少なくとも一回屈曲するように、且つ、前記頂部線の屈曲点を連ねた屈曲線が前記主流に一致するように形成されており、更に、前記扁平チューブとの接合部近傍に複数の貫通孔が形成されている、
ことを特徴とするコルゲートフィン型熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載のコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記複数の貫通孔は、前記コルゲートフィンに形成された波の底部に形成されている、
コルゲートフィン型熱交換器。
【請求項3】
請求項2記載のコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記コルゲートフィンには、前記複数の波を前記第2の熱交換流体の流入側から見ると前記接合部近傍では前記頂部線の屈曲がV字またはW字となるよう前記複数の波が形成されている、
コルゲートフィン型熱交換器。
【請求項4】
請求項2または3記載のコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記複数の貫通孔は、前記頂部線に対して平行な切り込み又は前記頂部線に対して直交する切り込みを開くことにより形成されている、
コルゲートフィン型熱交換器。
【請求項5】
請求項4記載のコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記複数の貫通孔は、前記切り込みに対して前記第2の熱交換流体の流入側を下方に開くことにより及び/又は流出側を上方に開くことにより形成されている、
コルゲートフィン型熱交換器。
【請求項6】
請求項1記載のコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記複数の貫通孔は、下向きに凸となるように形成されている、
コルゲートフィン型熱交換器。
【請求項7】
請求項6記載のコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記複数の貫通孔は、1つ又は連絡する複数の切り込みを下方に切り起こすことにより形成されている、
コルゲートフィン型熱交換器。
【請求項8】
請求項7記載のコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記複数の貫通孔は、切り起こしによる端部が前記扁平チューブ壁面側に近接するよう形成されいる、
コルゲートフィン型熱交換器。
【請求項9】
請求項6記載のコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記複数の貫通孔は、下側に折り曲げられたルーバー形状に形成されている、
コルゲートフィン型熱交換器。
【請求項10】
請求項9記載のコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記コルゲートフィンは、略全幅に亘る複数のルーバーが形成されてなるルーバーフィンに対して両端部のルーバー形状については維持して中央部のルーバー形状については解除した形状に加工することにより形成されている、
コルゲートフィン型熱交換器。
【請求項11】
請求項1記載のコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記コルゲートフィンは、オフセットフィンに対して両端部のオフセット形状については維持して中央部のオフセット形状については解除した形状に加工することにより形成されている、
コルゲートフィン型熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−36625(P2013−36625A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170308(P2011−170308)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)