説明

コレステロール輸送の調整方法

【課題】細胞による脂質およびコレステロールの取り込みおよび代謝の方向を変え得る薬学的組成物。
【解決手段】コレステロールレベルを調節する必要がある患者においてコレステロールレベルを調節するための薬学的組成物であって、SR−BIの活性を改変する化合物をスクリーニングする方法によって得られる化合物を含み、この方法は、その活性を改変する化合物を、非ヒト動物、単離された細胞または単離された組織に投与する工程、および高密度リポタンパク質に結合または複合体化したコレステリルエステルもしくは脂質の、SR−BI媒介結合またはSR−BI媒介輸送を測定する工程を包含する、薬学的組成物、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、一般に、SR-BIスカベンジャーレセプターを介するコレステロール輸送調整の領域に関する。
【0002】
合衆国政府は、国立衛生研究所−国立心臓、肺および血液研究所からの認可HL41484、HI-52212、およびHL20948の結果として、本発明に特定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
循環系を通じる脂質の細胞内輸送は、これらの疎水性分子の、リポタンパク質と呼ばれる水溶性キャリア中へのパッケージング、およびレセプター介在経路による適切な組織へのこれらリポタンパク質の制御された標的化を必要とする。最も良く特徴付けられたリポタンパク質レセプターはLDLレセプターであり、これは、アポリポタンパク質B-100(apoB-100)およびE(apoE)に結合し、これらは、ヒト血漿(plasma)中の主要なコレステリル-エステルトランスポーターである低密度リポタンパク質(LDL)、肝臓により合成されるトリグリセリド-リッチなキャリアである極低密度リポタンパク質(VLDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)、および異化されたカイロミクロン(食餌トリグリセリド-リッチキャリア)の構成成分である。
【0004】
LDLレセプター遺伝子ファミリーのすべてのメンバーは、同じ基礎構造モチーフからなる。約40アミノ酸のリガンド結合性(補体型)システイン-リッチ反復は、2〜11の反復を含むクラスター(リガンド-結合性ドメイン)中に配置される。リガンド結合性ドメインには、常に、EGF-前駆体相同ドメインが続く。これらのドメインでは、2つのEGF様反復が、YWTDモチーフを含むスペーサー領域によって、第3のEGF-反復から分離されている。LRPおよびgp330では、EGF-前駆体相同ドメインには、別のリガンド結合性ドメインまたはスペーサー領域のいずれかが続く。EGF-前駆体相同ドメインは、原形質膜に先行し、O-連結糖ドメイン(LDLレセプターおよびVLDLレセプター中)、または1つ(C.elegansおよびgp330中)または6つのEGF-反復(LRP中)のいずれかにより、単一膜スパンセグメントから分離される。細胞質テイルは、被覆されたピット中のレセプターのクラスター化に必要な1〜3の「NPXY」インターナリゼーション信号を含む。分泌経路の後の画分において、LRPは、第8番目のEGF-前駆体相同ドメイン内で切断される。この2つのサブユニットLRP-515およびLRP-85(括弧内に示される)は、きつくかつ非共有結合的に結合したままである。ビテロゲニンレセプターおよびgp330の部分アミノ酸配列のみが入手可能である。
【0005】
LDLレセプター、および結合そしてある場合にはエンドサイトーシス、接着、またはシグナリングを仲介する大部分の他の哺乳類細胞表面レセプターは、2つの共通のリガンド結合性特徴:高い親和性および狭い特異性を示す。しかし、2つの付加的なリポタンパク質レセプターが同定され、それらは高い親和性および広い特異性により特徴付けられる:マクロファージスカベンジャーレセプターI型およびII型。
【0006】
スカベンジャーレセプターは、アセチル化LDL(AcLDL)および酸化LDL(OxLDL)のような、化学的に改変されたリポタンパク質のエンドサイトーシスを仲介し、そしてアテローム硬化症の病因に関連している(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。マクロファージスカベンジャーレセプターは、マレイン酸化BSA(M-BSA)および特定のポリヌクレオチドおよびポリサッカライドのような、広範な種類のポリアニオン、ならびに通常でないリガンド交差競合による阻害を含む、複雑な結合特性を示す(非特許文献4、非特許文献1)。幾人かの研究者は、哺乳類マクロファージ上で発現されるこのようなレセプターの少なくとも3つの異なるクラスが存在し得ることを示唆しており、これはAcLDLまたはOxLDLのいずれか、またはこれらリガンドの両方を認識するレセプターを含む(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。
【0007】
精製されかつクローン化された最初のマクロファージスカベンジャーレセプターは、哺乳類I型およびII型レセプターであった。これらは、その細胞外ドメインがα-らせんの超コイル(coiled-coil)、コラーゲン状構造、および球状構造を含むと予想されている三量体統合膜糖タンパク質である(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献1)。I型およびII型レセプターにより共有されるコラーゲン状ドメインは、ポリアニオン性リガンドの結合を明らかに仲介する(非特許文献10;非特許文献1)。I型およびII型分子は、単一遺伝子の代替スプライシングの産物であり、以後、クラスAスカベンジャーレセプター(SR-AIおよびSR-AII)と称する。AcLDLおよびOxLDLの両方に結合するクラスAレセプター(非特許文献4)は、宿主防御および細胞接着、ならびにアテローム発生に関連すると提案されている(非特許文献4;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献1)。
【0008】
I型およびII型マクロファージスカベンジャーレセプターの予想された四次構造のモデルに基づけば、両者は、6つのドメインを含み、そのうち最初の5つ:N-末端細胞質領域、膜貫通領域、スペーサー、α-らせんコイル、およびコラーゲン様ドメイン、は同一である。I型レセプターのC-末端の第6番目のドメインは、8残基のスペーサーから構成され、102アミノ酸のシステイン-リッチなドメイン(SRCR)が続き、その一方II型レセプターの第6番目のドメインは、短いオリゴペプチドに過ぎない。
【0009】
マウスマクロファージcDNAライブラリーおよびCOS細胞発現クローニング技術を用いて、Endemann、Stantonおよび同僚(非特許文献14;非特許文献15)は、OxLDLを結合し得る2つの別のタンパク質をコードするcDNAのクローニングを報告した。これらタンパク質に対するOxLDLの結合は、AcLDLにより阻害されなかった。これらタンパク質は、FcgRII-B2(Fcレセプター)(非特許文献15)およびCD36(非特許文献14)である。トランスフェクトされたCOS細胞におけるOxLDLのFcgRII-B2に対する結合の意義は明瞭ではない。何故なら、マクロファージ中のFcgRII-B2は、明らかに、OxLDL結合に対して有意に寄与しないからである(非特許文献15)。しかし、CD36は、マクロファージによるOxLDL結合において定量的に有意な役割を演じ得る(非特許文献14)。結合性酸化LDLに加えて、CD36は、トロンボスポンディン(非特許文献16)、コラーゲン(非特許文献17)、長鎖脂肪酸(非特許文献18)およびPlasmodium falciparum感染赤血球(非特許文献19)に結合する。CD36は、脂肪組織を含む種々の組織において、およびマクロファージ、上皮細胞、単球、内皮細胞、血小板、および広範囲の培養株において発現される(非特許文献18;およびレビューのために非特許文献20を参照のこと)。CD36の生理学的機能は知られていないが、そのコラーゲン結合特性に起因して接着分子として供され得る。それはまた、長鎖脂肪酸トランスポーター(非特許文献18)および信号伝達分子(非特許文献21;非特許文献22)であると提案されており、そして老化好中球に対するマクロファージ上のレセプターとして供し得る(非特許文献23)。
【0010】
改変されたリポタンパク質スカベンジャーレセプター活性もまた、内皮細胞中で観察されている(非特許文献6;非特許文献7;非特許文献2;非特許文献24)。少なくとも内皮細胞活性のいくつかは、クラスAスカベンジャーレセプターにより明らかに仲介されない(非特許文献25;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献26)、それらは、しばしば、マクロファージにより発現される(非特許文献27;非特許文献1)。インビボおよびインビトロ研究は、クラスAスカベンジャーレセプターおよびCD36の両者とは異なる、内皮細胞およびマクロファージ中で発現されるスカベンジャーレセプター遺伝子が存在し得ることを示唆する(非特許文献28;非特許文献26;非特許文献5;非特許文献29;非特許文献6;および以下を参照のこと)。Via Dresselおよび同僚(非特許文献30、および非特許文献31、は、15-86kDの比較的小さな膜結合タンパク質によるスカベンジャーレセプター様結合を検出した。さらに、LDLレセプター関連タンパク質(LRP)が、リポタンパク質レムナント粒子および広範な種類の他の高分子を結合することが示された。LRPをコードするmRNAおよびLRPタンパク質の両方が、多くの組織および細胞型(非特許文献32;非特許文献33)、主に肝臓、脳および胎盤で見出されている。LRPの予想されるタンパク質配列は、LDLレセプターにおいても見出される一連の別々のドメインまたは構造的モチーフからなる。
【0011】
Kreigerらにより、PCT/US95/07721「クラスBIおよびCIスカベンジャーレセプター」Massachusetts Institute of Technology(「Kriegerら」)に記載されるように、改変されたリポタンパク質およびその他のリガンドに高い親和性を有する2つの異なるスカベンジャーレセプター型タンパク質が、単離、特徴付けおよびクローン化されている。I型およびII型マクロファージスカベンジャーレセプターとは異なる、SR-BIのハムスターおよびマウス相同体であるAcLDLおよびLDL結合性スカベンジャーレセプターが、単離および特徴付けられている。さらに、Var-261と称される、チャイニーズハムスター卵巣細胞改変体からクローン化されたレセプターをコードするDNAが、単離およびクローン化されている。高いリガンド親和性および広い特異性を有する非哺乳類AcLDL結合性スカベンジャーレセプターdSR-CIが、Drosophila melanogasterから単離された。
【0012】
Kreigerらにより、SR-BIレセプターが、ステロイド生成組織および肝臓で主に発現され、そしてHDL-輸送およびコレステロールの取り込みを仲介するようであることが報告された。競合結合研究は、SR-BIが、LDL、改変LDL、負に荷電したリン脂質、およびHDLを結合することを示す。直接結合研究は、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞の改変体)で発現したSR-BIが、HDLアポタンパク質の細胞性分解なしにHDLを結合し、そして脂質がレセプターを発現する細胞内に蓄積することを示す。これらの研究は、SR-BIが、HDLを介して、末梢組織から肝臓およびステロイド生成組織中への輸送において重要な役割を演じ得、しかも肝臓または他の組織における増加または減少した発現が、SR-BIを発現する細胞によるコレステロールの取り込みを調節し、それによって泡沫細胞におけるレベルおよびアテローム生成に関連する部位における沈着を減少することにおいて有用であり得ることを示す。
【0013】
アテローム硬化症は、西側工業国における主要な死因である。進行するアテローム硬化症のリスクは、LDLコレステロールの血漿レベルに直接関連し、そしてHDLコレステロールレベルに逆に関連する。20年以上前に、LDL代謝におけるLDLレセプターの主要な役割が、Goldsteinらにより解明された。非特許文献34。対照的に、HDL代謝に関連する細胞機構はなお良く規定されていない。HDLは、非特許文献35により記載されるように、逆コレステロール輸送として知られるプロセスである、肝臓外組織から肝臓へのコレステロール輸送に関連し、そして非特許文献36に記載されるように、ホルモン合成のために、ステロイド生成組織へのコレステリルエステルの輸送を仲介することが一般に受け入れられている。HDLコレステロールが標的細胞に送達される機構は、LDLのそれとは異なる。LDLのレセプター仲介代謝は完全に記載され、そして完全粒子の細胞性取り込みおよび分解を含む。対照的に、レセプター仲介HDL代謝は同様に理解されていない。LDLとは異なり、HDLのタンパク質成分は、コレステロールを細胞に輸送するプロセスでは分解されない。多くの研究者による多くの試みに拘わらず、HDLから細胞へのコレステロールの送達に関与する細胞表面タンパク質は、SR-BIが、HDLレセプターであったことの発見前は、同定されていなかった。
【非特許文献1】KriegerおよびHerz、Annu. Rev. Biochem. 1994 63、601-637
【非特許文献2】BrownおよびGoldstein、Annu. Rev.Biochem. 1983 52、223-261
【非特許文献3】Steinbergら、N. Engl. J. Med. 1989 320、915-924
【非特許文献4】Freemanら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1991 88、4931-4935
【非特許文献5】Sparrowら、J.Biol. Chem. 1989 264、2599-2604
【非特許文献6】Araiら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 1989 159、1375-1382
【非特許文献7】Nagelkerkeら、J. Biol. Chem. 1983 258、12221-12227
【非特許文献8】Kodamaら、Nature 1990 343、531-535;
【非特許文献9】Rohrerら、Nature 1990 343、570-572
【非特許文献10】Actonら、J.Biol. Chem. 1993 268、3530-3537
【非特許文献11】Doiら、J. Biol. Chem. 1993 268、2126-2133
【非特許文献12】Krieger、Trends Biochem. Sci. 1992 17、141-146
【非特許文献13】Fraserら、Nature 1993 364、343-346
【非特許文献14】Endemannら、J.Biol. Chem. 1993 268、11811-11816
【非特許文献15】Stantonら、J. Biol. Chem. 1992 267,22446-22451
【非特許文献16】Aschら、J. Clin. Invest. 1987 79、1054-1061
【非特許文献17】Tandonら、J. Biol. Chem. 1989 264、7576-7583
【非特許文献18】Abumradら、J. Biol. Chem. 1993 268、17665-17668
【非特許文献19】Oquendoら、Cell 1989 58、95-101
【非特許文献20】Greenwaltら、Blood 1992 80、1105-1115
【非特許文献21】Ockenhouseら、J.Clin. Invest. 1989 84、468-475
【非特許文献22】Huangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1991 88、7844-7848
【非特許文献23】Savillら、Chest 1991 99、7(補稿)
【非特許文献24】Goldsteinら、Proc.Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1979 76、333-337
【非特許文献25】Bickelら、J.Clin. Invest. 1992 90、1450-1457
【非特許文献26】Viaら、The Faseb J. 1992 6、A371
【非特許文献27】Naitoら、Am. J. Pathol. 1991 139、1411-1423
【非特許文献28】Haberlandら、J.Clin. Inves. 1986 77、681-689
【非特許文献29】Horiuchiら、J. Biol.Chem. 1985 259、53-56
【非特許文献30】Ottnadら、Biochem J. 1992 281、745-751
【非特許文献31】Schnitzerら、J. Biol. Chem. 1992 267、24544-24553
【非特許文献32】Herzら、EMBO J. 1988 7:4119-4127
【非特許文献33】Moestrupら、Cell Tissue Res. 1992 269:375-382
【非特許文献34】Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease、Scriverら(Mcgraw-Hill、NY 1995)、1981-2030頁
【非特許文献35】Pietersら、Biochim.Biophys. Acta(1994) 1225、125
【非特許文献36】AndersonおよびDietschy、J.Biol. Chem.(1981) 256、7362
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、SR-BIにより仲介される結合および脂質の動きを刺激または阻害し、そして細胞による脂質およびコレステロールの取り込みおよび代謝の方向を変え得る薬物を設計するための方法および試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要旨
コレステロール輸送の調節方法が記載され、この方法は、SR-BI HDLレセプターの発現または機能の調節に基づく。
【0016】
実施例は、エストロゲンが、LDLレセプターの強いアップレギュレーション条件下で、SR-BIを劇的にダウンレギュレートすることを示す。実施例はまた、エストロゲンで処置された動物からのラット副腎膜、およびその他の非胎盤ステロイド生成組織におけるSR-BIのアップレギュレーションを示したが、肺、肝臓および皮膚を含むその他の非胎盤ステロイド非生成組織では示さなかった。実施例はまた、組換えアデノウイルス感染後、肝SR-BIを一過性に過剰発現するマウスにおける、HDL代謝に対するSR-BI発現のインビボ効果も示す。肝組織中のSR-BIの過剰発現は、コレステロール血中レベルにおける劇的な減少を引き起こした。これらの結果は、SR-BIレベルの調整が、直接的または間接的に、血中コレステロールのレベルを調整するために用いられ得ることを示す。
【0017】
さらに、本発明は以下を提供する:
項目1.SR-BIの活性を改変する化合物をスクリーニングする方法であって、
化合物を動物に投与する工程、および
コレステロールレベル、ステロイドホルモンの産生、胆汁酸レベル、および脂質、リポタンパク質、コレステロール、ステロイドホルモン、胆汁酸、およびビタミンDの化学的組成の改変からなる群から選択される少なくとも1つのパラメーターを測定する工程、を包含する、方法。
項目2.前記化合物が、組織特異的プロモーターおよび組織内でSR-BIの過剰発現を生じるプロモーターからなる群から選択される調節分子の制御下でSR-BIをコードするヌクレオチド分子を導入することにより形成される動物に投与される、項目1に記載の方法。
項目3.前記動物が、ApoEが欠損している動物、LDLレセプターが欠損している動物、改変されたレベルのリポタンパク質リパーゼを有する動物、改変されたレベルの肝リパーゼを有する動物、ApoA1またはA2が欠損している動物、LRPの発現が遺伝的に欠損している動物、および家族性高コレステロール血症を有する動物からなる群から選択される、項目2に記載の方法。
項目4.細胞中へのまたは細胞からのコレステロール輸送を改変する方法であって、SR-BIの発現または活性を阻害する工程を包含する方法。
項目5.肝臓、ステロイド生成組織、胃腸管中の上皮細胞、毛細胆管、胆管、またはその他の身体画分中へのコレステロール輸送が改変される、項目4に記載の方法。
項目6.ステロイド生成組織中へのコレステロール輸送が、SR-BI発現を阻害または刺激するホルモンの投与により阻害または刺激される、項目5に記載の方法。
項目7.前記ホルモンが、エストロゲン様活性を有する、項目6に記載の方法。
項目8.前記胆管中へのコレステロール輸送が、SR-BIによるコレステロールの輸送を阻害する化合物を投与することにより阻害される、項目5に記載の方法。
項目9.コレステロール輸送が、調節核酸配列に結合し、そしてそれ故SR-BIの発現を阻害または刺激する化合物を投与することにより阻害または刺激される、項目4に記載の方法。
項目10.コレステロール輸送が、SR-BIに結合し、そしてコレステロールのレセプターへの結合を阻害する化合物を投与することにより阻害される、項目4に記載の方法。
項目11.SR-BIの発現を誘導し、コレステロール輸送を増加する化合物を投与する工程を包含する、項目4に記載の方法。
項目12.前記化合物が、SR-BIをコードするウイルスベクターである、項目11に記載の方法。
項目13.前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターである、項目12に記載の方法。
項目14.項目4〜13の方法のいずれか1つで使用するための化合物の製造方法。
項目15.項目4〜13の方法のいずれか1つで使用するための薬学的組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、SR-BIにより仲介される結合および脂質の動きを刺激または阻害し、そして細胞による脂質およびコレステロールの取り込みおよび代謝の方向を変え得る薬物を設計するための方法および試薬が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の詳細な説明
先の研究では、ウェスタンブロッティングを用いて、ラットにおけるエストロゲン処置に際し、肝臓におけるSR-BIタンパク質のレベルが劇的に低下し、そしてLDLレセプターレベルが増加することを示した。本明細書で用いるステロイド生成組織は、副腎、卵巣および精巣を含む非胎盤ステロイド生成組織をいう。肝臓および非肝臓ステロイド生成組織は、先に、HDLからの選択的コレステロール取り込みの部位であることが示された。蛍光により標識されたHDLは、脂質取り込みのマーカーとして用いられ、そしてエストロゲンおよびコントロール処理動物中に注入された。コントロール動物では、肝臓組織に顕著な蛍光が存在し、それはエストロゲン処理動物では全く存在しなかった。エストロゲンが、経時的にヒトにおいてHDLのレベルの増加を引き起こし、そしてアテローム硬化症のリスクを減少することが示され、そしてSR-BIのレベルにおける変化がエストロゲン投与に従う証拠を与えられれば、エストロゲンの投与によって(エストロゲンはまた副作用を有するので、これは好ましくはないが)、肝臓中のSR-BI発現を阻害し、それによってアテローム硬化症のリスクを減少し得る。阻害は、より好ましくは、SR-BIの発現、SR-BIの翻訳、SR-BIの結合、またはSR-BIによって仲介される細胞性プロセッシングを阻害する試薬の使用により達成される。阻害は、直接的または間接的、競合的または不可逆的であり得る。
【0020】
I.コレステロールのSR-BIによる輸送のインヒビター
直接的インヒビターには、ヌクレオチド分子、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、およびSR-BI遺伝子(この遺伝子のタンパク質コード領域かまたはこの遺伝子の調節領域のいずれか)に結合する三重鎖形成オリゴヌクレオチド;SR-BIタンパク質に結合する小さな有機分子;可溶性SR-BIタンパク質、または細胞結合SR-BIの基質に競合的に結合するそのフラグメント;ならびにSR-BIへのHDLの結合をブロックする化合物が含まれる。
【0021】
好ましい実施態様において、これらの化合物は、まず、アッセイ(例えば、下記のアッセイ)を使用してスクリーニングされ、次いで、標準的なトランスジェニック動物技術を使用して、SR-BI遺伝子をノックアウトするかまたは過剰発現するように作製されたトランスジェニック動物において試験される。ホモ接合ノックアウトは致死性であり得るので、ラット、マウスまたはハムスターを用いる胚幹細胞技術のような技術またはレトロウイルスベクターもしくはアデノウイルスベクターの使用は、いくつかのSR-BIを発現する動物の作製に好まれる。
【0022】
SR-BIをコードするcDNAはクローン化され、そしてKriegerらにおいて報告されている。SR-BIをコードするcDNAは、509アミノ酸の推定タンパク質配列を生じる。これは、以前に同定されたCD36ファミリーの3つのメンバーの推定タンパク質配列と約30%同一である。クローン化したハムスターSR-BIcDNAは、約2.9kb長である。5'非翻訳領域、コード領域、および3'非翻訳領域の部分の配列を、配列番号1に示す。その推定タンパク質配列は、計算分子量が57kDの509アミノ酸である(配列番号2)。マウスcDNAを配列番号3に示し、そしてその推定アミノ酸配列を配列番号4に示す。
【0023】
本明細書中で使用する場合、特に他言しなければ、用語「SR-BI」とは、それぞれ配列番号1と2および配列番号3と4に示されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列、ならびにその縮重改変体および他の種(特に、ヒト)に由来する等価物、ならびに上記の結合活性によって特徴付けられるレセプターとしてのタンパク質の機能的な活性を顕著に変化させない、ヌクレオチドまたはアミノ酸のいずれかの付加、欠失、および置換を有する機能的に等価な改変体をいう。
【0024】
II.SR-BIコレステロール輸送の調節方法
SR-BIタンパク質および関連するSR-Bタンパク質は、HDL脂質代謝およびコレステロール輸送において重要な役割を演じ得ることが、現在示されている。SR-BIは、ステロイド生成組織および肝臓へのコレステロール送達を担っているようであり、そしてHDL粒子から肝臓細胞を通じて毛細胆管(ここで、コレステロールは腸に出ていく)へコレステロールを実際に移す。データによって、SR-BIはまた腸粘膜に発現されるが、その位置および量は発生の段階に相関するようであることが示される。コレステロールの取り込みが増加され得る細胞においてSR-BIの発現を増加させて、HDLを、貯蔵細胞(例えば、HDLがアテローム発生においてある役割を演じ得る泡沫細胞)からコレステロールを取り除くための手段として自由に働かせることは有用である。
【0025】
上記のように、SR-BIタンパク質および抗体ならびにそのDNAは、SR-BIの活性および/または発現を調整する薬物のスクリーニングにおいて使用され得る。これらの薬物は、アテローム性硬化症、脂肪細胞による脂肪の取り込み、およびいくつかのタイプの内分泌障害の処置または予防に有用であるはずである。
【0026】
ヌクレオチド分子
下記の配列表に示されるヌクレオチド配列に好ましい使用は、スカベンジャーレセプタータンパク質によるリガンドの結合もしくはエンドサイトーシス、またはSR-BIタンパク質の発現もしくは翻訳を変化させる薬物のスクリーニング用である。
【0027】
好ましいサイズのハイブリダイゼーションプローブは、長さが10ヌクレオチドから100,000ヌクレオチドまでである。10ヌクレオチド未満では、ハイブリダイズした系は安定でなく、そして20℃を超えると変性し始める。100,000ヌクレオチドを超えると、ハイブリダイゼーション(再生)は、テキストMOLECULAR GENETICS, Stent, G.S.およびR. Calender, 213〜219頁 (1971)により詳細に記載されるように、よりずっと緩徐で不完全なプロセスになることが見い出される。理想的には、プローブは、20〜10,000ヌクレオチドであるべきである。より小さなヌクレオチド配列(20〜100)は、自動化有機合成技術による生成に向いている。100〜10,000ヌクレオチドの配列は、適切な制限エンドヌクレアーゼ処理から得られ得る。比較的大きな化学発光部分でのより小さなプローブの標識は、いくつかの場合には、ハイブリダイゼーションプロセスに干渉し得る。
【0028】
レセプター機能または発現の程度を改変するかまたは変化させる薬物についてのスクリーニング
レセプタータンパク質は、これらレセプターに対する結合をターンオンまたはターンオフするか、さもなければ調節する化合物の標的として有用である。以下に記載されるアッセイは、これにより化合物が特定化合物(例えば、放射性標識した改変HDLおよびLDLまたはポリイオン)の結合に対する阻害効果について試験され得る、ルーチンの方法を明らかに提供する。次いで、レセプターと選択的に結合することを阻害するようにみえる化合物のインビトロ研究は、動物試験によって確認される。分子は、進化的に非常に高度に保存されるので、研究動物(例えば、マウス)において研究を行ない、ヒトにおける効果を予測することが可能である。
【0029】
結合阻害に基づく研究は、レセプター結合の変化の間接的効果を予言するに役立つ。例えば、SR-BIレセプターへのコレステロール−HDL結合の阻害は、細胞によるコレステロール取り込みの減少を導き、したがってSR-BIレセプターを発現する細胞によるコレステロール輸送を阻害する。細胞へのコレステロール−HDL結合の増加は、血流からの脂質の除去を増加させ、これによって血流内での脂質沈着を減少させる。刺激物質を使用してマクロファージのコレステロール取り込みを増強し、そしてこのことによって、M-CSF(Schaubら、1994 Arterioscler.Thromb. 14(1), 70-76;Inabaら、1993 J.Clin.Invest.92(2), 750-757)を使用してアテローム発生を処置する研究が行なわれてきた。
【0030】
以下のアッセイは、SR-BIの発現、濃度、またはコレステロールの輸送を変化させるための方法において効果的な化合物をスクリーニングするために使用され得る。
【0031】
SR-BI結合または発現の変化についてのアッセイ
マウス組織のノーザンブロット分析は、SR-BIが、副腎、卵巣、肝臓、精巣、および脂肪において最も豊富に発現され、そしていくつかの他の組織においてより低レベルで存在することを示す。SR-BI mRNA発現は、3T3-L1細胞の脂肪細胞への分化に際して誘導される。SR-BIおよびCD36の両方は、約5μgタンパク質/mlの範囲の見かけの解離定数を有して、アセチル化LDLに対する高親和性結合を示す。CD36およびSR-BIのリガンド結合特異性(競合アッセイにより測定される)は、類似しているが同一ではない:両者は修飾されたタンパク質(アセチル化LDL、マレイル化BSA)を結合するが、クラスAレセプターのリガンドである広範な一連の他のポリアニオン(例えば、フコイジン、ポリインシン酸、ポリグアノシン酸)は結合しない。SR-BIは、HDLの細胞性分解を伴わない、高親和性および飽和可能なHDLの結合を示す。HDLはAcLDLのCD36への結合を阻害する。このことは、これがSR-BIと同様にHDLを結合することを示唆する。天然LDL(これは、アセチル化LDLの、クラスAレセプターまたはCD36のいずれへの結合についても競合しない)は、SR-BIへの結合について競合する。
【0032】
125I-AcLDL結合、取り込み、および分解アッセイ。
37℃におけるスカベンジャーレセプター活性を、Krieger, Cell 33, 413-422, 1983;およびFreemanら, 1991に記載のように、リガンド結合、取り込み、および分解アッセイにより測定する。結合および取り込みについての値は、組み合わされ、そして5時間のインキュベーション後に観察される結合+取り込みとして示され、そして1mg細胞タンパク質当たり5時間当たりの125I-AcLDLタンパク質のngとして表される。分解活性は、1mgの細胞タンパク質当たり5時間に分解される125I-AcLDLタンパク質のngとして表される。特異的な、高親和性値は、過剰の非標識競合リガンドの存在下(1回の測定)および非存在下(2連の測定)において得られる結果の間の差を示す。細胞表面4℃結合は、示されるような方法Aまたは方法Bのいずれかを使用してアッセイされる。方法Aにおいては、細胞を、氷上で15分間事前に冷却し、10%(v/v)ウシ胎児血清を補充した氷冷培地B中の125I-AcLDL(75〜200μg/mlの非標識M-BSAを含むかまたは含まない)を再供給し、そして2時間4℃で振とう機上でインキュベートする。次いで、細胞を迅速に2mg/mlBSAを含有するTris洗浄緩衝液(50 mM Tris-HCl、0.15 M NaCl(pH 7.4))で3回洗浄し、BSAを含まないTris洗浄緩衝液での2回の5分間の洗浄および2回の迅速な洗浄を続ける。細胞を1mlの0.1N NaOH中で20分間室温で振とう機上で可溶化し、30μlをタンパク質測定のために取り出し、そして残りの中の放射能をLKBガンマカウンターを使用して測定する。方法Bは方法Aとは、細胞を45分間事前に冷却し、培地がウシ胎児血清ではなく10mM HEPESおよび5%(v/v)ヒトリポタンパク質欠損血清を含有し、そして硫酸デキストランでの処理により遊離される細胞会合放射能をKrieger,1983;Freemanら, 1991に記載のように測定する点で異なる。
【0033】
ノーザンブロット分析
異なるマウス組織から、またはBaldiniら、1992 Proc. Natl.Acad. Sci. U.S.A. 89, 5049-5052に記載のように、脂肪細胞への分化の開始の0、2、4、6、または8日後に3T3-L1細胞から調製される0.5μgのポリ(A)+RNAを、ホルムアルデヒド/アガロースゲル(1.0%)上で分画し、次いでBiotransTMナイロン膜にブロットしそして固定する。ブロットを、32P標識されたプローブ(2×106dpm/ml、ランダムプライム標識システム)とハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件(それぞれ、42℃および50℃)を、Charronら、1989 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86, 2535-2539により記載されるように実施する。SR-BI mRNA分析のためのプローブは、cDNAコード領域由来の0.6kb BamHIフラグメントであった。マウス細胞質ゾルhsp70遺伝子(HuntおよびCalderwood, 1990 Gene 87,199-204)のコード領域を、等しいmRNAロードのためのコントロールプローブとして使用する。
【0034】
組織中のSR-BIタンパク質は、SR-BIに対するポリクローナル抗体を用いるブロッティングにより検出される。
【0035】
HDL結合研究
SR-BIおよびCD36へのHDLおよびVLDLの結合は、LDLおよび改変LDLについて記載されるように実施される。
【0036】
SR-BIへ結合しているHDLが分解またはリサイクルされるかどうか、およびHDLに結合している脂質が細胞中に移されるかどうかを決定するために実施される研究は、トランスフェクトされたまたはトランスフェクトされていない細胞の培養物に単一の濃度(10μgタンパク質/ml)で添加される、蛍光脂質標識HDL、3Hコレステリルエステル標識HDL、および125I-HDLを使用して実施される。細胞に会合しているHDLは経時的に測定される。定常状態は約30分から1時間のうちに達成される。蛍光リガンドDiI、または3H-コレステロールエステルが、細胞による脂質(例えば、コレステロールまたはコレステロールエステル)取り込みのマーカーとして使用される。漸増濃度のDiIは、脂質がHDLからレセプターへ移されつつあり、次いで細胞によりインターナライズされつつあることを示す。次いで、DiI枯渇HDLは遊離され、そして別のHDL分子により置換される。
【0037】
SR-BIへのHDL結合
競合結合研究は、HDLおよびVLDL(400μg/ml)が125I-AcLDLのSR-BIへの結合を競合的に阻害することを実証する。125I-HDLのSR-BIを発現する細胞への直接結合もまた測定される。
【0038】
SR-BIの組織分布
SR-BIの生理学的機能を調査するために、マウス組織において(コントロール動物およびエストロゲン処置動物の両方において)、SR-BIの組織分布を、下記の実施例に記載のように決定した。各々のレーンに、以下の種々のマウス組織から調製されるポリ(A)+RNA 0.5μgをロードする:腎臓、肝臓、副腎、卵巣、脳、精巣、脂肪、横隔膜、心臓、肺、脾臓、または他の組織。ブロットを、SR-BIのコード領域の750塩基対フラグメントとハイブリダイズさせる。SR-BImRNAは副腎、卵巣、および肝臓において最も豊富に発現され、供給源に依存して脂肪において中程度または高度に発現され、そして他の組織においてはより低レベルで発現される。SR-BIの細胞質領域に対するポリクローナル抗体を使用するブロットは、非常に高いレベルのタンパク質が、マウスおよびラットにおいて肝臓、副腎組織、および卵巣において存在するが、非常に低いレベルまたは検出不可能なレベルのみが白色脂肪または褐色脂肪のいずれか、筋肉、または種々の他の組織に存在することを実証する。ラット組織におけるバンドは、約82kDにおいて存在した。マウス組織において、肝臓およびステロイド生成組織において観察される82 kD形態は、SR-BIトランスフェクト培養細胞において観察されるサイズと同一のサイズである。
【0039】
有用な活性について化合物を試験するためのアッセイは、レセプタータンパク質(好ましくは、上記の細胞のようなトランスフェクトされた細胞の表面上で発現される)との相互作用にのみ基づき得るが、表示がリポタンパク質の結合の阻害または増加である場合、溶液中のまたは不活性基材上に固定化されたタンパク質もまた利用され得る。
【0040】
あるいは、アッセイは、レセプタータンパク質をコードする遺伝子配列(好ましくは、レセプタータンパク質の発現を指向させる調節配列)との相互作用に基づき得る。例えば、調節配列、および/またはタンパク質コード配列に結合するアンチセンスは、標準的なオリゴヌクレオチド合成化学を使用して合成され得る。アンチセンスは、標準的な方法論(リポソームまたはマイクロスフェア中の被包;分解に対して耐性である修飾ヌクレオチドまたはエンドヌクレアーゼに対する耐性を増加させる置換基の導入(例えば、ホスホロチオデートおよびメチル化))を使用して薬学的使用のために安定化され得、次いで、最初にレセプターを発現するトランスフェクトされたまたは天然の細胞において、次いでインビボにおいて実験室動物において、レセプター活性の変化についてスクリーニングする。代表的には、アンチセンスは発現を阻害する。しかし、合成を「オフにする」配列をブロックする配列もまた標的化され得る。
【0041】
研究のためのレセプタータンパク質は、上記の実施例に記載のように、天然の細胞またはレセプターを発現するように遺伝子操作された細胞のいずれかから単離され得る。好ましい実施態様において、細胞はインタクトな遺伝子を使用して操作された。
【0042】
レセプターまたはレセプターコード配列結合分子のランダム生成
所定の機能(触媒またはリガンド結合)を有する分子は、「インビトロ遺伝物質(invitro genetics)」(Szostak, TIBS 19:89, 1992)と呼ばれているものにおけるランダム分子の複雑な混合物から選択され得る。当業者は、ランダムかつ規定の配列を保有する分子の大きなプールを合成し、そしてその複雑な混合物、例えば、100μgの100ヌクレオチドRNA中の約1015の個々の配列を、いくらかの選択および富化プロセスに供する。例えば、カラム上のリガンドに結合された分子のアフィニティークロマトグラフィーおよびPCR増幅の反復サイクルにより、EllingtonおよびSzostak(1990)は、1010RNA分子中の1つが所定のリガンドに結合するように折り畳まれると判断した。このようなリガンド結合挙動を有するDNA分子が単離されている(EllingtonおよびSzostak、1992;Bockら、1992)。
【0043】
コンピューター支援薬物設計
コンピューターモデリング技術は、選択された分子の三次元原子構造の可視化およびその分子と相互作用する新規化合物の合理的設計を可能にする。三次元構築物は、典型的には、選択された分子のX線結晶解析またはNMR画像からのデータに依存する。分子動力学は、力場データを必要とする。コンピューターグラフィックシステムは、新規化合物が標的分子にどのように結合するかを予測することを可能にし、そして結合特異性を完全にするように化合物および標的分子の構造を試験的に操作することを可能にする。分子−化合物相互作用が、その一方または両方において小さな変化が生じたときにどのようになるかを予測するためには、分子力学ソフトウェアおよび計算強化コンピューターが必要である。これらは通常、分子設計プログラムと使用者との間で、使用者に役立つメニュー起動性のインターフェースに連結されている。
【0044】
分子モデリングシステムの例は、CHARMmおよびQUANTAプログラム(Polygen Corporation, Waltham, MA)である。CHARMmは、エネルギー最小化および分子動力学の機能を実行する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリング、および分析を実行する。QUANTAは、互いに対する分子の相互作用的な構築、改変、可視化、およびその挙動の解析を可能にする。
【0045】
多くの文献が、特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピューターモデリングを総説している。例えば、以下の文献が挙げられる:Rotivinenら、1988 Acta Pharmaceutica Fennica 97, 159-166;Ripka、New Scientist 54-57 (1988年6月16日);McKinalyおよびRossmann、1989 Annu. Rev.Pharmacol. Toxiciol. 29, 111-122;PerryおよびDavies、QSAR: Quantitative Structure-Activity Relationships in Drug Design、189〜193頁 (Alan R. Liss,Inc. 1989);LewisおよびDean,1989 Proc. R. Soc. Lond. 236, 125-140および141-162;および、核酸成分のためのモデルレセプターに関して、Askewら、1989J. Am. Chem. Soc. 111, 1082-1090。化学物質をスクリーニングおよびグラフィック表示する他のコンピュータープログラムは、BioDesign,Inc, Pasadena, CA., Allelix, Inc, Mississauga, Ontario, CanadaおよびHypercube,Inc., Cambridge, Ontario, のような会社から入手可能である。これらは、主に、特定のタンパク質に特異的な薬物への適用のために設計されるが、DNAまたはRNAの領域が同定されれば、その領域に対して特異的な薬物の設計に適合され得る。
【0046】
結合、および従ってコレステロール輸送を変化させ得る化合物の設計および生成に関して上述しているが、当業者は、インヒビターまたはアクチベーターである化合物について、既知の化合物(天然産物または合成化学物質を含む)および生物学的活性物質(タンパク質を含む)のライブラリーもまたスクリーニングし得た。
【0047】
核酸レギュレーターの生成
レセプター遺伝子の5'調節配列を含む核酸分子は、インビボにおける遺伝子発現を調節または阻害するために用いられ得る。ベクター(プラスミドベクターおよび真核生物ウイルスベクターの両方を含む)は、当業者の選択および判断に依存して、特定の組換え5'隣接領域遺伝子構築物を細胞で発現させるために用いられ得る(例えば、Sambrookら、Chapter16を参照のこと)。さらに、インビボにおける核酸配列の導入を可能にする多くのウイルスベクターおよび非ウイルスベクターが開発中である(例えば、Mulligan,1993 Science, 260, 926-932;米国特許第4,980,286号;米国特許第4,868,116号を参照のこと;本願明細書中に参考として援用)。例えば、哺乳動物に静脈内注射され得るカチオン性リポソーム中に核酸がカプセル化された送達系が、成体マウスの多数の組織(内皮および骨髄を含む)の細胞中にDNAを導入するために用いられている(例えば、Zhuら、1993Science 261, 209-211を参照のこと;本願明細書中に参考として援用)。
【0048】
レセプター遺伝子の5'隣接配列もまた、レセプターの発現を阻害するために用いられ得る。例えば、レセプター遺伝子の5'隣接領域の全部または一部のアンチセンスRNAが、インビボにおいてレセプターの発現を阻害するために用いられ得る。細胞で発現される選択されたDNA配列のアンチセンスRNAを生成するために用いられ得る発現ベクター(例えば、レトロウイルスまたはアデノウイルス発現ベクター)は、既に当該分野において存在する(例えば、米国特許第4,868,116号;米国特許第4,980,286号を参照のこと)。従って、レセプター遺伝子の5'隣接領域の配列の全部または一部を含むDNAが適当な発現ベクターに挿入され、これにより、細胞への継代の際に、挿入されたDNAの転写は、細胞において通常見出されるレセプタータンパク質遺伝子のmRNA転写物に相補的であるアンチセンスRNAを生じ得る。挿入されたDNAのこのアンチセンスRNA転写物は、次いで、細胞において見出される正常mRNA転写物と塩基対合し、そしてそれによりmRNAが翻訳されることを妨げ得る。むろん、アンチセンスRNAがmRNA上に存在する相補配列を含むことを確実にするように、レセプタータンパク質遺伝子の転写開始部位の下流に存在する5'隣接領域の配列を選択することが必要である。
【0049】
アンチセンスRNAは、インビトロでもまた生成され得、そして次いで細胞中に挿入され得る。オリゴヌクレオチドは、自動合成装置(例えば、Model 8700自動合成装置(Milligen-Biosearch, Burlington, MA)またはABI Model 380B) で合成され得る。さらに、アンチセンスデオキシオリゴヌクレオチドが、遺伝子転写およびウイルス複製を阻害するのに有効であることが示されている(例えば、Zamecnikら、1978 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75, 280-284;Zamecnikら、1986 Proc. Natl.Acad. Sci., 83, 4143-4146;Wickstromら、1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 1028-1032;Crooke、1993 FASEB J. 7, 533-539を参照のこと)。さらに、近年の研究により、アンチセンスオリゴヌクレオチドによる遺伝子の発現の阻害の改善は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが修飾ヌクレオチドを含む場合可能であることが示された(例えば、Offenspergerら、1993 EMBO J. 12, 1257-1262(アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドによるアヒルB型肝炎ウイルス複製および遺伝子発現のインビボ阻害);Rosenbergら、PCTWO 93/01286(スルフルチオエートオリゴヌクレオチドの合成);Agrawalら、1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 7079-7083(ヒト免疫不全1型ウイルスの複製を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオシドホスホルアミデートおよびホスホロチオエートの合成);Sarinら、1989 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 7448-7794(アンチセンスメチルホスホネートオリゴヌクレオチドの合成);Shawら、1991 Nucleic Acids Res 19, 747-750(3'末端ホスホロアミデート修飾を含む3'エキソヌクレアーゼ耐性オリゴヌクレオチドの合成)を参照のこと;本願明細書中に参考として援用)。
【0050】
レセプタータンパク質遺伝子の5'隣接領域の配列はまた、三重らせん(トリプレックス)遺伝子治療において用いられ得る。DNAの鎖の一方にある遺伝子プロモーター配列に相補的なオリゴヌクレオチドは、プロモーターおよび調節配列に結合して、遺伝子の転写をブロックする局所的な三重核酸らせんを形成することが示されている(例えば、1989 Maherら、Science 245, 725-730;Orsonら、1991 Nucl. Acids Res. 19,3435-3441;Postalら、1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 8227-8231;Cooneyら、1988Science 241, 456-459;Youngら、1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88,10023-10026;Duval-Valentinら、1992 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 504-508;1992 Blumeら、Nucl. Acids Res. 20,1777-1784;1992 Grigorievら、J. Biol. Chem.,267,3389-3395を参照のこと)。
【0051】
理論的計算および経験的知見の両方が報告されており、これらは、遺伝子発現を阻害するオリゴヌクレオチド指向三重らせん形成において使用される、オリゴヌクレオチドの設計に関する指針を提供する。例えば、オリゴヌクレオチドは、標的配列特異性を確実にするためには、一般に、14ヌクレオチド長より大きくすべきである(例えば、Maherら、(1989);Grigorievら、(1992)を参照のこと)。また、多くの細胞は、50ヌクレオチド長未満のオリゴヌクレオチドを貪欲に取り込む(例えば、Orsonら、(1991);Holtら、1988 Mol. Cell. Biol. 8, 963-973;Wickstromら、1988 Proc. Natl. Acad. Sci.USA 85, 1028-1032を参照のこと)。細胞内分解に対する感受性を低くするために、例えば3'エキソヌクレアーゼにより、遊離アミンが、配列結合特異性を損失させることなく、オリゴヌクレオチドの3'末端ヒドロキシル基に対して導入され得る(Orsonら、1991)。さらに、オリゴヌクレオチド中に存在し得る任意のシトシンがメチル化される場合、およびまた挿入剤(例えば、アクリジン誘導体)が5'末端ホスフェートに共有結合される場合(例えば、ペンタメチレン架橋を介して);また配列特異性を損失させることなく、より安定なトリプレックスが形成される(Maherら、(1989);Grigorievら、(1992))。
【0052】
オリゴヌクレオチドを産生または合成する方法は、当該分野で周知である。このような方法は、標準的な酵素消化後のヌクレオチドフラグメント単離(例えば、Sambrookら、Chapter 5および6を参照のこと)から純粋な合成方法(例えば、MilligenまたはBeckman System 1Plus DNA合成装置を用いるシアノエチルホスホルアミダイト法(Ikutaら、Ann. Rev. Biochem. 1984 53,323-356 (ホスホトリエステル法およびホスファイトトリエステル法);Narangら、Methods Enzymol. 65,610-620 (1980)(ホスホトリエステル法)もまた参照のこと)までの範囲であり得る。従って、本明細書中に記載のレセプタータンパク質遺伝子の5'隣接領域のDNA配列は、遺伝子の発現を阻害するためにレセプタータンパク質遺伝子の5'隣接領域内で特異的に三重らせんを形成することにおいて用いられるオリゴヌクレオチド(少なくとも15の連続したヌクレオチドから本質的になるDNA配列を含む。塩基修飾または挿入剤誘導体を有するかまたは有さない)を設計および構築するために用いられ得る。
【0053】
いくつかの場合では、発現操作のための方法および試薬のスクリーニングを容易にするために、エンハンサーまたは多コピーの調節配列を発現系に挿入することが有利であり得る。
【0054】
レセプタータンパク質フラグメントの調製
レセプターのコレステロール-HDLへの結合をブロックするために有効な化合物はまた、レセプタータンパク質のフラグメントからなり得、組換え発現されて酵素消化により切断されるか、または全長レセプタータンパク質より短いペプチドをコードする配列から発現される。これらは、典型的には、可溶性タンパク質、すなわち、膜貫通領域および細胞質領域を含まないタンパク質である。一方、レセプタータンパク質への結合を阻害するかまたは結合について競合することが上記アッセイにおいて決定された、より小さな部分もまた、用いられ得る。適当なレセプタータンパク質フラグメントを作製し、結合について試験し、そして次いで利用することは日常的なことである。可能性のある免疫応答を最小にするために、好ましいフラグメントはヒト起源である。ペプチドは、5〜8アミノ酸長程度の長さであり得、そして標準的な技術で容易に調製される。それらはまた、インビボにおける半減期を増大させるように、アミノ酸の化学的修飾によるか、またはキャリア分子または不活性基質への付着により改変され得る。レセプター結合をブロックする他のペプチドフラグメントを用いた研究に基づくと、IC50(結合を50%阻害するのに必要とされるペプチドの投与量)は、そのペプチドに依存して、約50μM〜約300μMの範囲である。これらの範囲は、細胞付着および食作用を変化させるためにインビボにおいて用いられるRGD含有ペプチド(例えば、Ruoslaghtiらの米国特許第4,792,525号に記載)との比較に基づくと、インビボにおけるペプチド投与の有効濃度の範囲において十分に範囲内にある。
【0055】
ペプチドはまた、キャリアタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン)にそのN末端システインにより、標準的な手順(例えば、市販のImjectキット(Pierce Chemicalsから))により結合体化され得るか、または融合タンパク質として発現され得、これは、増大した効力を有し得る。上述のように、ペプチドは、レセプタータンパク質のタンパク質分解性切断により、または好ましくは合成手段により調製され得る。これらの方法は、当業者に公知である。一例は固相合成であり、これは、J.Merrifield, 1964 J. Am. Chem. Soc. 85, 2149により記載され、米国特許第4,792,525号において用いられ、そして米国特許第4,244,946号において記載されている。この方法では、保護化αアミノ酸が適切な樹脂にカップリングされて、ペプチドのC末端から開始するペプチドの合成を開始させる。他の合成方法は、米国特許第4,305,872号および同第4,316,891号に記載されている。これらの方法が用いられて、本明細書中に記載のレセプタータンパク質に対して同一の配列を有するペプチド、またはアミノ酸の置換物または付加物を合成し得る。これらは、上述のようにして活性についてスクリーニングされ得る。
【0056】
ペプチドはまた、薬学的に受容可能な酸付加塩または塩基付加塩として投与され得、これらの塩は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、およびリン酸)および有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、およびフマル酸)との反応によるか、または無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム)および有機塩基(モノ−、ジ−、トリアルキルおよびアリールアミンならびに置換エタノールアミン)との反応により形成される。
【0057】
シクロプロピルアミノ酸または同様の様式で誘導体化されたアミノ酸を含有するペプチドもまた用いられ得る。これらのペプチドは、それらの本来の活性を保持するが、インビボにおいて増大した半減期を有する。アミノ酸を修飾することについて知られる方法、およびそれらの使用は、当業者に公知であり、例えば、Stammerの米国特許第4,629,784号に記載されている。
【0058】
ペプチドは、約1μg/kg体重以上の量で非経口投与されたとき、一般に活性である。ほとんどの炎症障害の処置のための他のタンパク質からの推定に基づくと、投薬量範囲は、0.1〜70mg/kg体重の範囲である。この投薬量は、部分的には、1つのペプチドが投与されるかまたはそれ以上のペプチドが投与されるかに依存する。
【0059】
薬学的組成物
レセプタータンパク質結合を変化させる化合物は、薬学的に受容可能なビヒクル中で好ましく投与される。適切な薬学的ビヒクルは、当業者に公知である。非経口投与について、化合物は、通常、滅菌水または生理食塩水中に溶解または懸濁される。経腸投与について、化合物は、錠剤、液体、またはカプセル形態において、不活性なキャリア中に取り込まれる。適切なキャリアは、デンプンまたは糖であり得、そして潤滑剤、香料(flavoring)、結合剤、および同じ性質の他の物質を包含する。化合物はまた、溶液、クリーム、ゲル、またはポリマー性物質(例えば、PluronicTM、BASF)の局所塗布により、局所的に投与され得る。
【0060】
あるいは、化合物はリポソームまたは微粒子(あるいは、微小粒子)中で投与され得る。患者への投与のためのリポソームおよび微粒子を調製する方法は、当業者に公知である。米国特許第4,789,734号には、リポソーム中に生物学的物質をカプセル化する方法が記載されている。基本的に、物質は水溶液中に溶解され、適切なリン脂質および脂質が(必要であれば界面活性剤とともに)添加され、そして物質は、必要な場合には、透析または超音波処理される。公知の方法の1つの総説は、G.Gregoriadisによる、第14章、「リポソーム」、Drug Carriers in Biology and Medicine、287-341頁(Academic Press、1979)である。ポリマーまたはタンパク質で形成された微粒子は、当業者に周知であり、そして胃腸管を介して直接血流に通過するように改変され得る。あるいは、化合物は、微粒子または微粒子の複合物に取り込まれ得る。この微粒子または微粒子の複合物は、日〜月の範囲の期間にわたる遅延放出のために移植される。例えば、米国特許第4,906,474号、同第4,925,673号および同第3,625,214号を参照のこと。
【0061】
スクリーニングのためのトランスジェニック動物の作製
SR-BIの発現、翻訳、または機能を所望の様式で変化させ得る化合物を試験するために、SR-BIをコードするcDNAおよびその発現を調節する調節配列の知見を用いて、トランスジェニック動物(特に、齧歯動物)を作製することが可能である。アデノウイルスベクターでの感染後の動物における一過性の過剰発現についてのこの手順は、以下の実施例に記載する。
【0062】
有用な動物として、基本的に2つの型がある:一方は、機能的なSR-BIを発現しない動物であり、これはSR-BIのインヒビターとの組み合わせにおいて、脂質、コレステロール、リポタンパク質またはその成分のレベルを制御するためにより良好に作用し得る薬物を試験するために有用である。そして他方は、SRBIをすでに発現している組織または低いレベルのみが天然で発現される組織のいずれかにおいて、SR-BIを過剰発現する動物である。
【0063】
第1の群の動物は、SR-BI遺伝子の「ノックアウト」を生じる技術を用いて、好ましくは作製されるが、この好ましい場合において、ノックアウトは不完全であり、特定の組織においてのみであるかまたは減少された量になるかのいずれかである。これらの動物は、好ましくは、SR-BI遺伝子に対する相補的なヌクレオチ配列を含むが、機能的なSR-BIはコードしない構築物を用いて、および最も好ましくは胚幹細胞とともに用いてキメラを作製して、作製される。欠損遺伝子についてヘテロ接合体である動物はまた、SR-BIの産生を欠損する動物と正常なホモ接合体とを交配することにより得ることができる。
【0064】
第2の群の動物は、好ましくは、組織特異的プロモーター(これらの多くは、利用可能であり、および文献に記載されている)、または非調節プロモーターもしくは天然のプロモーターと比較して発現が増加するように改変されるプロモーターを含む構築物を用いて作製され得る。SR-BI遺伝子の調節配列は、SR-BIをコードするcDNAを用いる適切なライブラリーのスクリーニングに基づく標準的な技術を用いて得ることができる。これらの動物は、最も好ましくは標準的なマイクロインジェクション技術を用いて作製される。
【0065】
これらの操作は、以下に記載のように、マイクロインジェクションまたは当業者に公知の他の技術(例えば、エレクトロポレーション)を用いる、cDNAまたはゲノムDNAの胚への挿入により行われる。DNAは、SR-BIをコードする遺伝子を不活性化すること、またはSR-BIをコードする遺伝子を異なる組織において過剰発現もしくは発現することを意図する目的に基づいて選択される。
【0066】
SR-BIコード遺伝子は欠損SR-BIのDNA(例えば、抗生物質マーカーをコード配列内に含む配列)との相同組換えにより改変され得、次いでこれは選択目的のために使用され得る。
【0067】
動物供給源
トランスジェニック実験に適切な動物は、標準的な市販の供給源から得ることができる。これらは、マウスおよびラットのような遺伝子操作手順の試験のための動物、ならびにブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギのようなより大きい動物、および当業者に公知の技術を用いて遺伝子操作された他の動物を包含する。これらの技術は、マウスおよびラットの操作に主に基づいて以下に簡単に要約する。
【0068】
マイクロインジェクション手順
胚を操作するための手順およびDNAのマイクロインジェクションについての手順は、Hoganら、Manipulating the mouse embryo、Cold Sprong Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor, NY(1986)に詳細に記載されており、その教示は、本明細書中に援用される。これらの技術は、他の動物種の胚に容易に適用可能であり、そして成功率は低いが、当業者に日常的な実施であると考えられている。
【0069】
トランスジェニック動物
雌性動物を、マウスを用いる標準的な技術から適合された方法論を用いて、すなわち、妊娠中雄性血清性腺刺激ホルモン(PMSG;Sigma)注射の48時間後、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG;Sigma)を注射することによって過排卵を誘導する。hCG注射後直ぐに雌を雄とともに置く。hCGの約1日後、交尾された雌を屠殺し、そして胚を切除した卵管から取り出し、そして0.5%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma)を有するDulbeccoのリン酸緩衝化生理食塩水中に置く。周囲の卵丘細胞をヒアルロニダーゼ(1mg/ml)を用いて取り出す。次いで、前核胚を洗浄し、注射の時まで、5%CO2、95%空気にて、加湿雰囲気を有する37.5℃インキュベーターにおいて、0.5%BSAを含有するEarleの平衡化塩溶液(EBSS)中に置く。
【0070】
ドナー雌と同時にランダムに循環した成体雌を精管切除した雄と交尾させて、擬妊娠を誘導する。胚を移す時に、レシピエント雌を麻酔し、そして体壁を通して直接卵管の上を切開することにより、卵管を曝露する。卵巣嚢を開き、そして移される胚を卵管漏斗に挿入する。移した後、切開を縫合針により閉じる。
【0071】
胚幹(ES)細胞法
ES細胞へのcDNAの導入
ES細胞を培養する方法、続いてトランスジェニック動物を産生する方法
種々の方法(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム/DNA沈降、および直接注入)により、DNAをES細胞に導入する方法は、Terato carcinomas and embryonic stem cells, a practical approach、E.J. Robertson編(IRL Press1987)詳細に記載されており、その教示は本明細書中に援用される。トランスジーン含有ES細胞の所望のクローンの選択は、いくつかの手段の1つにより達成される。配列特異的遺伝子組み込みを包含する場合、SR-BI遺伝子との組換えのための核酸配列またはその発現を制御する配列は、ネオマイシン耐性のようなマーカーをコードする遺伝子と同時沈殿される。トランスフェクションは、Lovell-Badge、Terato carcinomas and embryonic stem cells, a practical approach、E.J. Robertson編(IRL Press1987)またはPotterら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 81, 7161(1984)に詳細に記載されるいくつかの方法の1つにより行われる。リン酸カルシウム/DNA沈降、直接注入、およびエレクトロポレーションは、好ましい方法である。これらの手順において、多くのES細胞(例えば、0.5×106)が組織培養ディシュに播種され、そして線状化核酸配列の混合物および最終容量100μl中で50mgリポフェクチンの存在下にて沈殿された1mgのpSV2neoDNA(Southern and Berg、J.Mol.Appl.Gen. 1:327-341(1982))を用いてトランスフェクトされる。細胞を、G418のような抗生物質(200μg/mlと500μg/mlとの間)を補充したDMEM中に10%胎児ウシ血清を含有する選択培地を用いて、培養する。G418に耐性な細胞のコロニーをクローニングリングを用いて単離し、そして拡張する。薬物耐性コロニーからDNAを抽出し、そしてプローブとして核酸配列を用いるサザンブロッティング実験を使用して所望の核酸配列を保持するクローンを同定する。いくつかの実験において、PCR法が、目的のクローンを同定するために使用される。
【0072】
ES細胞に導入されるDNA分子はまた、Capecchi(1989)に記載されるように、相同組換えのプロセスを介して染色体中に組み込まれ得る。直接注入により高効率の組み込みが生じる。所望のクローンは、注入されたES細胞のプールから調製されたDNAのPCRにより同定される。プール内のポジティブ細胞は、細胞クローニングに続いてPCRにより同定される(ZimmerおよびGruss、Nature、338、150-153(1989))。エレクトロポレーションによるDNA導入は、あまり効率的ではなく、そして選択工程を必要とする。組換え事象のポジティブ選択(すなわち、neo耐性)および二重ポジティブ-ネガティブ選択(すなわち、neo耐性およびガンシクロビル耐性)のための方法は、およびその後のPCRによる所望のクローンの同定は、Joynerら、Nature、338、153-156(1989)およびCapecchi(1989)に記載されており、その教示は本明細書中に援用される。
【0073】
胚の回収およびES細胞注入
雄と交配させた、自然な周期の雌または過排卵の雌を使用して、ES細胞の注入のための胚を採集した。適切齢の胚を交配成功後に回収する。胚を、交配させた雌の子宮角からフラッシュし、そしてES細胞を注入するために、10%ウシ血清を含むダルベッコ改変必須培地に置く。約10〜20個のES細胞を、内径が約20μmのガラスマイクロニードルを使用して胚盤胞中に注入する。
【0074】
偽妊娠雌への胚の移入
ランダムな周期の成体雌を精管切除した雄とペアリングさせる。ES細胞を含む胚盤胞の移植に必要とするときに、交配後2.5〜3.5日(マウスについて;より大きな動物についてはより後)となるように、レシピエント雌を交配させる。胚の移入時、レシピエント雌を麻酔する。卵管および卵巣の真上の体壁を切開することによって卵巣を露出させ、そして子宮を引き出す。子宮角にニードルで穴を開け、これを通して胚盤胞を移入する。移入後、卵巣および子宮を体内に押し戻し、そして切開部を縫合により閉塞する。さらに移入すべき場合は、この手順を反対側で繰り返す。
【0075】
トランスジェニック動物の同定
サンプル(1〜2cmのマウス尾)を若齢動物から採取する。より大きな動物では、血液または他の組織を使用し得る。相同組換え実験においてキメラについて試験するため、すなわち、標的付けられたES細胞の動物に対する寄与を調べるために、マウスにおいては、毛色が使用されているが、より大きな動物では、血液が検査され得る。DNAを調製し、サザンブロットおよびPCRの両方で分析して、トランスジェニック創始(F0)動物およびそれらの子孫(F1およびF2)を検出する。
【0076】
一旦、トランスジェニック動物が同定されると、系統が、従来の繁殖法によって確立され、そしてヒトへの移植のために標準的な技術を用いて組織の採取用および移植用ドナーとして使用される。
【0077】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによって、さらに理解される。
【実施例】
【0078】
実施例1:SR-BIにより媒介されるHDL脂質の取り込み
mSR-BIとの相互作用の後のHDLの脂質およびアポタンパク質成分の運命を、標識HDL(ここで、タンパク質(125I)、または脂質([3H]コレステリルオレエートもしくはDiI(蛍光脂質))のいずれかが標識された)の細胞会合の時間経過を調べることにより比較した。
【0079】
SR-BIによる標識HDLの取り込み
方法
0日目に、ldlA細胞およびldlA[mSR-BI]細胞を、0.25mg/mlG418の存在または非存在下のそれぞれで、5%ウシ胎児血清(A-FBS)を補充した100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および2mMグルタミン(培地A)を含むHamF-12培地を含む、6ウェルディッシュ(250,000細胞/ウェル)にプレーティングした。アッセイを、2日目に行った。
【0080】
HDLおよびLDLを、帯状(zonal)遠心分離によりヒト血漿から調製した(Chungら、Methods of Enzymology, J.P.SegrestおよびJ.J.Alberts編(Academic Press, Inc. Orlando,FL 1986)、第128巻、181-209頁)。SDS-PAGEは、HDLにおける唯一の主要なタンパク質が、apoAIおよびapoAIIであることを示した(AI:AIIの質量比は少なくとも3:1であった)。apoEは、検出可能でないか、または微量で存在するかのいずれかであった。いくつかの実験については、「Lipoprotein Analysis:A Practical Approach」、C.A.ConverseおよびE.R.Skinner編(Oxford University Press, 1992)に本質的に記載されるHiTrapヘパリンカラム(Pharmacia)を用いて、apoEを取り除いた。HDLにおけるコレステロール:タンパク質の質量比を、1:4であると推定した。HDLを、以下のようにヨードビーズ(iodobead)法(Pierce)によりヨウ素化した:2mgのHDLを含む0.2mlリン酸緩衝化生理食塩水(Ca2+、Mg2+を含まない)を、2つのヨードビーズおよび1mCi125I-NaIを含む0.25mlの0.3Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に添加した。室温で5分後、反応物を、25μlの飽和 L-チロシン(水中)でクエンチングし、そして0.15M NaCl、0.3mM EDTA、pH7.4に対して大量に透析した。比放射能(specific activity)は、60〜360cpm/ngタンパク質の範囲であった。[3H]コレステリルエステル標識HDLは、AlanTall(Columbia University, JammetおよびTall, J.Biol.Chem. 260, 6687, (1985))から提供された。
【0081】
DiI(D-282, 1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドカルボシアニンペルクロレート)を、Molecular Probes(Eugene, OR)から入手した。DiI-HDLを、Pitasら、Arterioclerosis 1, 177 (1981)によりDil-LDLについて既に記載されたように本質的に調製した。リポタンパク質および細胞のタンパク質含量を、Lowry J.Biol.Chem. 193, 265 (1951)の方法により決定した。
【0082】
125I-HDL細胞会合の濃度依存(ng会合した125I-HDLタンパク質/1.5時間/mg細胞タンパク質)を決定するために、非標識HDL(40倍過剰)の存在または非存在下で、0.5%(w/v)の脂肪酸を含まないウシ血清アルブミン(FAF-BSA)(培地B)を含む培地A中の125I-HDL(250cpm/ngタンパク質)を、細胞に再度与え(refed)、そして5%CO2加湿インキュベーター中で37℃で1.5時間インキュベートした。次いで、細胞を冷やし、2mg/mlBSAを含む氷冷Tris洗浄緩衝液(50mM Tris-HCl、0.15M NaCl、pH7.4)2mlで2回、BSAを含まないTris洗浄緩衝液で1回迅速に洗浄し、そして放射能およびタンパク質を測定した。比値(specific value)を、過剰な非標識HDLの存在下(単一の測定、非比放射能(nonspecific activity))および非存在下(2連の測定、総放射能)で得られた結果の間の差異に基づいて算出された。125I-HDLの細胞会合の時間経過。細胞を、測定される20μgタンパク質/mlの125I-HDL(220cpm/ngタンパク質)と共に37℃でインキュベートし、そして比細胞会合(ngドラフト(draft)会合した125I-HDLタンパク質/mg細胞タンパク質)を上記のように測定した。次いで、125I-HDL分解の時間経過を測定した。細胞を、10μgタンパク質/mlの125I-HDL(64cpm/ngタンパク質)と共にインキュベートし、そして酸可溶性産物に対する比細胞内分解(細胞タンパク質mg当たりの分解125I-HDLのng)を測定した。
【0083】
mSR-BIによるHDL脂質の選択的取り込みのキネティクスを決定するために、本発明者らは、0日目にトランスフェクトされていない細胞およびSR-BI発現細胞をプレーティングし、そして2日目に、それらを、125I-HDL(10μgタンパク質/ml、64cpm/ngタンパク質)、[3H]-コレステリルオレエート標識HDL(約8.8μgタンパク質/ml、15cpm/ngコレステリルエステル)、またはDiI標識HDL(10μgタンパク質/ml)と共に37℃でインキュベートし、そして細胞会合標識を定量した。[3H]-コレステリルオレエートを、室温で30分間イソプロピルアルコールで抽出し、そして放射能を、ScintiverseII(Fisher)シンチレーション混合物において測定した。DiIを、細胞をDMSOに溶解し、そしてHitachiモデルF-4500蛍光分光度計において、550nm励起、565nm発光で蛍光を測定し、そしてDMSOに溶解したDiI-HDLの調製標準に対して比較することにより抽出した。
【0084】
標識HDLからのSR-BI媒介輸送[3H]コレステリルエステルが、交換よりむしろこの脂質の正味輸送を示すかどうか決定するために、非標識HDL(20μgタンパク質/ml、5時間)の存在または非存在下のインキュベーション後の細胞のコレステロール含量を比較した。プレーティング後の2日目に、細胞を、非標識HDL(20μgタンパク質/ml)の存在または非存在下で培地Bにおいて37℃で5時間インキュベートし、上記のように洗浄し、そして脂質を、ヘキサン/イソプロパノール(3:2、3ml、30分)で2回抽出した。抽出物をプールし、1mlの水で逆に抽出し(back extract)、そしてロータリーエバポレーションにより乾燥した。総(遊離およびエステル化)コレステロール質量(6連の平均)を、酵素アッセイ(Sigma Diagnostics, St.Louis, MO.)を用いて決定した。サンプルのタンパク質含量を、複製培養物の分析により評価した。HDLの非存在下でインキュベートした細胞の総コレステロールの値(μg/ml細胞タンパク質+SEM)は、20.5+0.3(ldlA)および23.0+0.4(ldlA[mSR-BI])であった。
【0085】
結果
125I-HDLは、高い親和性(kD約30μgのタンパク質/ml)および飽和性でSR-BI発現細胞と特異的に会合した。コントロール細胞は、実質的にほとんど125I-HDL会合を示さなかった。会合は非常に迅速であり、1時間未満で定常状態に達した。この高い親和性および飽和結合にもかかわらず、HDLの125I-標識タンパク質成分は、SR-BI発現細胞との相互作用後に分解されなかった。
【0086】
HDLのタンパク質成分の会合のキネティックスは、脂質のものと非常に異なる。125I-HDLの総標識の小さな画分(0.5%未満)のみが、5時間でトランスフェクト細胞に結合した。細胞会合125I-HDLは、1時間未満で定常状態に達した(10μgHDLタンパク質/mlで約200ngタンパク質/mg細胞タンパク質)。対照的に、HDLの脂質標識成分([3H]コレステリルオレエートまたはDiI)の細胞会合は、インキュベーションを通して連続的に増加した。細胞への[3H]コレステロールエステルおよびDiI輸送のキネティックスは類似していた。インキュベーション培地に添加されたHDLにおける総標識脂質の約18%は、5時間のインキュベーションの終わりにはトランスフェクト細胞と特異的に会合した。非トランスフェクト細胞は、脂質またはタンパク質の会合をほとんど示さなかった。従って、mSR-BI発現細胞へのHDL成分である、脂質の選択的な輸送は存在したが、タンパク質では存在しなかった。
【0087】
標識HDLからの[3H]コレステリルエステルの輸送が、交換よりむしろこの脂質の正味輸送を示したが否か決定するために、非標識HDLの存在または非存在下でのインキュベーション(20μgタンパク質/ml、5時間)後、細胞のコレステロール成分を比較した。トランスフェクト細胞において、HDLとのインキュベーションは、総細胞コレステロール(遊離およびエステル化)において20%の増加(4.6μgコレステロール/mg細胞タンパク質)をもたらした。この増加は、インキュベーション培地に添加されたHDL-コレステロールの約21%の輸送に対応し、そして[3H]コレステリルオレエート-HDlまたはDiI-HDLのいずれかから輸送された標識脂質の量に匹敵する。対照的に、非トランスフェクト細胞のコレステロール含量において統計学的に有意なHDL-依存増加は存在しなかった(0.2μg未満のコレステロール/mg細胞タンパク質)。これらの結果は、1)mSR-BIがHDLコレステリルエステルの正味量輸送を媒介した、2)この輸送は、マウス副腎細胞株(Y1-BS1)について依然に報告されたものと量的に類似した、および3)これらの条件下で、HDLにおける蛍光または放射標識脂質は、総コレステロール輸送についての適切なレポーターとして作用することを示唆する。
【0088】
蛍光標識脂質の取り込み
mSR-BIにより媒介される選択的な脂質送達の細胞経路を調べ始めるために、古典的なLDLレセプター経路を介して送達される蛍光脂質(DiI)の最初の分布を、mSR-BI経路の分布と比較した。
【0089】
方法
0日目に、LDLレセプターポジティブ野生型CHO、mSR-BIトランスフェクトldlA[mSR-BI]、およびレセプターネガティブldlA細胞を、製造者の説明書通りにポリ-D-リジン(MW 300,000を超える、Sigma)でコーティングされたカバーガラス上の5%FBSを含む培地Aにプレーティングした。Actonら、J.Biol.Chem.269, 21003 (1994)により記載された(この教示は本明細書中に援用される)、ハムスターSR-BI cDNA由来の600bpプローブを、マウス3T3-L1脂肪細胞cDNAライブラリーをスクリーニングするために使用した。完全なコーディング領域を含むクローンを単離し、そしてこの領域を両鎖に対して配列決定した;この配列は、ハムスター配列に対して89%推定アミノ酸同一性および96%推定アミノ酸類似性、ならびにヒト配列であるCLA1に対して79%推定アミノ酸同一性および91%推定アミノ酸類似性を有していた(CalvoおよびVega,J.Biol.Chem. 268,18929 (1993)(この教示は本明細書中に援用される)。発現ベクターpmSR-BI-77を、このクローンから作製し、そして以前に記載された方法を用いて、LDLレセプターネガティブ変異体CHO細胞株であるldlAにトランスフェクトして、安定なレセプターポジティブトランスフェクタントを作製した。DiI標識アセチル化LDLとのインキュベーションの後のフローサイトメトリーを用いて、本明細書中で使用する細胞のサブ集団であるldlA[mSR-BI](コロニー15)を単離した。
【0090】
1日目に、この単層に、5%新生ウシリポフェクチン欠乏血清を含む培地Aを再び与えた。3日目に、サブコンフルエント細胞に、10μgタンパク質/ml DiI-LDL(A)または1μgタンパク質/mlのDiI-HDL(BおよびC)のいずれかを含む同様の培地を再び与え、そして37℃で1時間インキュベートした。次いで、カバーガラスを、リン酸緩衝化生理食塩水で1回洗浄し、そしてDiIの分布を、ローダミンフィルターパッケージを有するNikon蛍光顕微鏡を用いて写真を用いてすぐに記録した。
【0091】
結果
LDLレセプター-ポジティブ野生型CHO細胞を、37℃で1時間、DiI-LDL(10μgタンパク質/ml)とのインキュベーションした後、古典的なLDLレセプターを介する取り込みは、標識の点状パターンをもたらした。これは、被覆ピットからのレセプター媒介エンドサイトーシスおよびエンドソームおよびリソソームへのビヒクルに典型的であった。LDLレセプターネガティブldlA細胞のDiI-LDLによる標識は本質的には存在しなかった。ldlA[mSR-BI]細胞のDiI-HDL(1μgタンパク質/ml)標識は、点状蛍光よりむしろ劇的に異なり、トランスフェクト細胞の全表面であると思われるものにわたって拡散性の染色が存在し、特に細胞-細胞界面で蛍光が見られた。さらに、核に近接した領域で明るい、明らかに内部の蛍光の集中がしばしば存在した。インキュベーションの24時間後でさえ、mSR-BIトランスフェクタントにおけるDiI蛍光パターンは、LDLレセプター経路に見られる点状パターンに似ていなかったが、このパターンは異なり、そして原形質膜から離れた色素の後の再分布を潜在的に示した。非トランスフェクトldlA細胞は、DiI-HDLから著しいレベルの色素を蓄積しなかった。最初の分布(1時間未満またはそれに等しい)ならびにDiI(正に荷電した脂質)の後の蓄積部位は、コレステリルエステル(中性脂質)のものとは異なり得ることに留意することは重要である。確かに、非標識HDLとのインキュベーションの48時間後に、トランスフェクト細胞に輸送された中性脂質は、オイルレッドOで染色した、小さな良好に規定された細胞質粒子に明らかに蓄積することが観察された。同様に、Reavenら、J.LipidRes. 36, 1602 (1995)は、細胞の標識HDlとの9時間のインキュベーションの後、卵巣顆粒細胞における細胞質脂肪滴への、蛍光コレステリルエステル誘導体の蓄積を報告している。ひとまとめにして考えると、これらの結果は、mSR-BIがHDLからの脂質輸送を媒介する経路は、古典的なLDLレセプター媒介エンドサイトーシス経路とは異なることを示し、そしてHDL脂質は、最初に、リポタンパク質から原形質膜へ直接輸送され得ることを示唆している。
【0092】
実施例2:SR-BIの組織分布
インビボ代謝研究は、肝臓およびステロイド産生組織(副腎および卵巣)が、HDL-コレステリルエステルの選択的な取り込みに関連する主要な組織であることを確立している。Glassら、Proc.Natl. Acad. Sci. USA 80, 5435 (1983), J.Biol.Chem. 260, 744 (1985)、Khooら、J.LipidRes.36, 593 (1995)、Steinら、Biochim.Biophys.Acta 752, 98 (1983)、Nestlerら、Endocrinology117, 502 (1985)。これらの組織の多くのリガンドブロッティング研究は、58kD〜140kDの大きさの範囲の種々のHDL結合タンパク質を明らかにし、これらのいずれもが、選択的な脂質取り込みを媒介することを直接示さなかった。
【0093】
方法
mSR-BIの大きさおよびその組織分布を決定するために、ウサギ抗mSR-BIポリクローナル抗体を、キーホールリンペットヘモシアニンに結合した16アミノ酸ペプチド(付加的N末端システインを加えたmSR-BIの推定タンパク質由来の残基495〜509)の免疫化により調製した。これを、抗mSR-BI495抗血清と呼ぶ。抗血清を、培養細胞およびマウス組織のイムノブロット分析に使用した。
【0094】
ldlAおよびldlA[mSR-BI]細胞由来の後核(post-nuclear)細胞抽出物、ならびにマウス組織由来の膜(後核100,000×gペレット)単離し、減少させ、そして6.5%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(50μgタンパク質/レーン)により分離し、ニトロセルロースに移行させ、そして一次抗-mSR-BI495抗ペプチド抗体(ウサギIgG画分、1:5000希釈)でプローブし、そして西洋ワサビペルオキシダーゼ標識二次抗体およびECLキット(5分曝露、Amersham)を用いて発色させた。PonceauS染色は、ゲルローディングおよび移行についてのコントロールとして使用した。
【0095】
結果
抗体は、トランスフェクト細胞において(ldlA[mSR-BI])約82kDタンパク質を認識し、これは非トランスフェクト細胞(ldlA)において存在しなかった。mSR-BIポリペプチドの予想質量は57kDであり、これはmSR-BIが、著しい翻訳同時および/または翻訳後修飾をうけたことを示唆している。
【0096】
mSR-BIは、3つの組織(肝臓ならびにステロイド産生性の卵巣および副腎)において最も高度に発現していた。mSR-BIタンパク質は、精巣、心臓、および乳腺において著しく少なく検出され、そして他の組織(脳、腎臓、脾臓、筋肉、子宮、腸、精巣上体脂肪、肺、および胎盤を含む)において、発現は本質的に観察されなかった。従って、選択的なコレステリルエステル輸送をインビボで示す正確にそれらの組織において、SR-BIは非常に大量に発現している。
【0097】
マウス脂肪組織および培養脂肪細胞における実質的な徴候は、ハムスターSR-BIcDNAプローブを用いた以前のノザンブロッティング研究において観察されている。ここで報告されたイムノブロット結果とのこの相関関係の欠如は、翻訳調節またはタンパク質安定性における組織特異的な差異、またはハムスターcDNAプローブと、脂肪において高度に発現する、関連するが異なる遺伝子のmRNAとのクロスハイブリダイゼーションによるものであり得る。
実施例3:SR-BIの発現についてのエストロゲン処理ラット組織の分析
方法
エストロゲン処理ラットの組織を、17-α-エチレニルエストラジオール(エストロゲン)でのラットの処理の後、上記のようにSR-BIの発現についてスクリーニングした。ラットを、ポリエチレングリコール中の5mg/kgの17-α-エチレニルエストラジオールの皮下注射、またはポリエチレングリコール単独(擬似注射)で、連続5日間処理した。
【0098】
結果
エストロゲン処理動物または擬似処理動物のラット組織におけるSR-BIの発現を比較するイムノブロットは、コントロールと比較して、エストロゲンで処理した動物由来の副腎膜においてSR-BIのアップレギュレーションを示す。微量シグナルを示す組織(肺ならびに精巣および皮膚を含む)においてSR-BIレベルは変化しない。エストロゲン処置動物および擬似処理動物由来の肝臓組織、ならびにエストロゲン処理動物よび擬似処理動物由来の副腎組織を用いた、SR-BIポジティブコントロールおよびネガティブコントロールを比較するより長い曝露は同様の結果を示す。
【0099】
SR-BIおよびLDLレセプターの発現を比較するイムノブロットは、SR-BI発現は、LDLレセプターの強力なアップレギュレーションの条件下で劇的にダウンレギュレートされた。
実施例4:エストロゲン処理動物における脂質取り込みの分析
方法
インビボでのHDL脂質取り込みの分析のために、ラットを、左頸静脈にDiI-HDL(800μgタンパク質/kg)の注射の前にネンブタールまたはメタファンで麻酔した。1時間より後に、麻酔動物を、酸素処理HBSSで灌流した。スクロース浸潤組織の凍結切片(12μ厚)を調製した。組織切片を調べ、そして適切なフィルターパッケージを有するZeiss顕微鏡写真IIIで写真撮影した。
【0100】
結果
上記のようにDIで蛍光標識したHDLを、処理動物およぼコントロール動物に注射した場合、明らかなHDLレセプターを有する擬似注射ラットは、それらの肝細胞へのHDL脂質の可視的な取り込みを有したが、エストロゲン処理動物は、肝細胞において類似の取り込みを有さなかった。脂質の副腎組織への取り込みはまた、エストロゲン処理動物において劇的に増大した。
【0101】
実施例5:SR-BIを一過性に過剰発現する動物における血中コレステロールレベルの減少
HDLおよび胆汁コレステロール代謝に対するマウスSR-BI(mSR-BI)のインビボ効果を、静脈内注入による組換え複製欠損アデノウイルス(Ad.mSR-BI)感染のために肝臓mSR-BIを一過性に過剰発現するC57BL/6マウスにおいて研究した。Ad.mSR-BIウイルスにおいて、mSR-BIcDNAは、サイトメガロウイルス(CMV)即時型エンハンサー/プロモーターの制御下にある。コントロールは、cDNAトランスジーンを欠く複製欠損アデノウイルスに感染したマウスを含んでいた(Ad.ΔE1は、免疫蛍光顕微鏡観察およびイムノブロットによって決定されるように、適度なレベルのSR-BI発現を示した)。感染の3日後、mSR-BI発現は、Ad.mSR-BI処置動物の肝臓において、劇的に増加した。mSR-BIタンパク質の量は、感染後の時間とともに減少したが、感染の21日後、コントロールのmSR-BIタンパク質の量を実質的に超えるレベルが、決まって観察された。mSR-BI発現の増加のほとんどは、肝細胞の頂端面に局在するようである。特に強い限局性強度により、毛細胆管における高発現が示唆された。洞様毛細血管の染色もまた観察された。
【0102】
血漿コレステロールレベルに対する肝臓SR-BI過剰発現の効果を表1に示す。コントロールアデノウイルスの注入は、総コレステロールに対してほとんどまたはまったく効果を有さなかった。対照的に、Ad.SR-BIの注入は、3日目までに、コントロールレベルの約14%までの血漿コレステロールの劇的な減少を生じた。7日目までに、コレステロールレベルは、注入前レベルを超えて増加し、そして21日目までにベースラインに戻った。apoAI(HDLの主要なタンパク質成分)の血漿レベルは、3日目に観察された初期の減少において、総コレステロールレベルを反映した(表1);対照的に、より後の時点で、apoAIレベルは増加したが、21日目まで注入前レベルに回復しなかった。
【0103】
【表1】

上記表中に示される数値は、2〜8マウス/時点についての平均である。
【0104】
血漿の高速圧液体クロマトグラフィー(FPLC)分析を行い、異なるクラスのリポタンパク質に対する肝臓SR-BI過剰発現の効果を詳細に測定した。図1Aおよび1B(処置前)は、正常C57BL/6マウスのリポタンパク質プロフィール(ほとんどのコレステロールがHDL画分に含まれており、そしてVLDL画分およびIDL/LDL画分は低いかまたは検出不可能であった)を示す。コントロールAd.ΔE1ウイルスの注入は、血漿総コレステロールレベルおよびapoAIレベルの変化がない(表1)ことと一致して、早い時点(図1A、処置前〜3日目)または遅い時点(図1C、7日目〜21日目)のリポタンパク質プロフィールに対して実質的にまったく効果を有さなかった。SR-BI注入マウスの血漿リポタンパク質は、注入前にはコントロールマウスと同じであったが、3日目にHDLコレステロールの大きな減少を示した。(図1B)。このことは、肝臓におけるSR-BI過剰発現が、血漿HDLコレステロールの取り込みの増加を引き起こし、したがって循環しているHDLレベルを低下させることを示唆する。このことは、3日目の低い血漿総コレステロールレベル(表1)と一致する。遅い時点で、SR-BIレベルは徐々に減少し、そしてHDLコレステロールは徐々に増加した(図1D)。並行して、7日目および10日目に、VLDLおよびIDL/LDLコレステロールの両方の増加が観察された。このことは、肝臓によるVLDL分泌の増加またはLDLレセプターのダウンレギュレーションのいずれかを示唆する。これらの変化は、SR-BIにより取り込まれるHDL由来コレステロールを通じての、肝臓によるコレステロール取り込み増加の結果として生じ得る。VLDLおよびIDL/LDLレベルは、21日目までにベースラインレベルに減少したが、HDLコレステロールはベースライン未満のままであった。このことは、SR-BIが、なお活性であり得ることを示唆する。
【0105】
HDL粒子の運命を検査するために、HDLクリアランス研究を行った。マウスにコントロールウイルスAd.ΔE1またはAd.SR-BIのいずれかを注入した。ウイルス注入の5日後(この時、トランスジーン発現レベルは最大である)、マウスに125I標識HDL(タンパク質部分(主としてapoAI)が標識される)を注入した。血漿サンプルを種々の時点で入手し、そして血漿中に残っている125Iの量を測定した。図2は、SR-BIを過剰発現するマウス(三角)が、非注入マウス(黒塗り四角)またはコントロールウイルス注入マウス(白抜き四角)のいずれもより速いHDL代謝回転速度を有したことを示す。このことは、HDL粒子自体が、HDL由来コレステロールのSR-BI媒介性取り込みの後に分解され得ることを示唆する。
【0106】
LDLコレステロールとは異なり、HDL由来コレステロールは、胆汁中に優先的に排出されると考えられる。したがって、SR-BI過剰発現マウスから排出された胆汁を、コレステロール、胆汁酸塩、およびリン脂質の含有量について分析した。コントロールウイルス(Ad.ΔE1)またはAd.SR-BIの注入の4日後、マウスを麻酔し、胆管にカニューレを挿入し、そして約1時間胆汁を回収して少なくとも0.1mlの胆汁を入手した。表2は、SR-BIマウスからの胆汁は、コントロールマウスより約2倍多い遊離コレステロールを含んでいたが、胆汁酸塩およびリン脂質には変化がなかったことを示す。このことは、HDLコレステロールの肝臓取り込み増加の1つの結果が、胆汁中へのコレステロール排出の増加であることを証明する。
【0107】
【表2】

各群n=8〜13
a:ウイルスなしおよびAd.ΔE1コントロールの両方と比較してp<<0.0005
【0108】
肝細胞へのHDL−コレステロール移入の間接マーカーとして、マウスにDiI-HDL(これは、蛍光性脂質(DiI)で標識されている)を注入した。これらの粒子は、細胞培養において、コレステロールエステルの移入速度に匹敵する速度でDiIを移入することが以前に示されている。ウイルス注入の5日後、マウスに40μgのDiI-HDLを注射した。2時間後、マウスを麻酔し、灌流し、そして肝臓組織を摘出した。SR-BI過剰発現マウス由来の肝臓の新鮮な凍結切片は、抗SR-BI抗体で強く染色され、そして蛍光顕微鏡下で精査すると、高いDiI含有量であった。対照的に、コントロールマウスは低いDiI含有量であった。さらに、数匹のマウスにおいて、胆汁へのDiIの移入を測定した。コントロールマウス(n=7)由来の胆汁は、0.11から0.19(相対単位)までの範囲の蛍光強度を有した。対照的に、この実験において2匹のSR-BI過剰発現マウス由来の胆汁は、1.13および0.93の蛍光強度を有した。
【0109】
まとめると、これらのデータは、肝臓SR-BI過剰発現は、肝臓へのHDL由来の脂質の取り込みを増加させること、および次いでいくつかのコレステロールが胆汁中に排出され得ることを示す。これらのデータは、さらに、SR-BIの阻害が、HDLコレステロールの血中濃度を増加させるはずであることを示唆する。このことは、胆嚢へのコレステロール分泌を減少させ、したがって胆石形成を阻害する機構を提供すると期待される。
【0110】
本明細書中に記載される方法および材料の改変および変形は、当業者に明らかであり、そして以下の請求の範囲によって包含されると意図される。本明細書中に引用される参考文献の教示は、本明細書中に具体的に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1a】図1A〜Dは、コントロール(Ad.ΔE1)(図1Aおよび1C)およびトランスジェニックマウス(Ad.SR-BI)(図1Bおよび1D)のリポタンパク質プロフィール、およびゼロから3日までの(図1Aおよび1B)、および7日から21日までの(図1Cおよび1D)経過にわたるコレステロールレベル(マイクログラム/画分)を示す、血漿の高速圧力液体クロマトグラフィー(FPLC)分析のグラフである。
【図1b】図1A〜Dは、コントロール(Ad.ΔE1)(図1Aおよび1C)およびトランスジェニックマウス(Ad.SR-BI)(図1Bおよび1D)のリポタンパク質プロフィール、およびゼロから3日までの(図1Aおよび1B)、および7日から21日までの(図1Cおよび1D)経過にわたるコレステロールレベル(マイクログラム/画分)を示す、血漿の高速圧力液体クロマトグラフィー(FPLC)分析のグラフである。
【図1c】図1A〜Dは、コントロール(Ad.ΔE1)(図1Aおよび1C)およびトランスジェニックマウス(Ad.SR-BI)(図1Bおよび1D)のリポタンパク質プロフィール、およびゼロから3日までの(図1Aおよび1B)、および7日から21日までの(図1Cおよび1D)経過にわたるコレステロールレベル(マイクログラム/画分)を示す、血漿の高速圧力液体クロマトグラフィー(FPLC)分析のグラフである。
【図1d】図1A〜Dは、コントロール(Ad.ΔE1)(図1Aおよび1C)およびトランスジェニックマウス(Ad.SR-BI)(図1Bおよび1D)のリポタンパク質プロフィール、およびゼロから3日までの(図1Aおよび1B)、および7日から21日までの(図1Cおよび1D)経過にわたるコレステロールレベル(マイクログラム/画分)を示す、血漿の高速圧力液体クロマトグラフィー(FPLC)分析のグラフである。
【図2】図2は、非処置の、正常マウス(黒塗り四角)、コントロール(Ad.ΔE1)(白抜き四角)およびトランスジェニックマウス(Ad.SR-BI)(黒塗り三角)におけるHDL代謝回転の経時変化のグラフである。
【0112】
[配列表]
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステロールレベルを調節する必要がある患者においてコレステロールレベルを調節するための薬学的組成物であって、
SR−BIの活性を改変する化合物をスクリーニングする方法によって得られる化合物
を含み、該方法は、
該化合物を、非ヒト動物、単離された細胞または単離された組織に投与する工程、および
高密度リポタンパク質に結合または複合体化したコレステリルエステルもしくは脂質の、SR−BI媒介結合またはSR−BI媒介輸送を測定する工程、
を包含する、薬学的組成物。
【請求項2】
肝臓、ステロイド生成組織、胃腸管中の上皮細胞、毛細胆管または胆管中への、高密度リポタンパク質に結合または複合体化したコレステリルエステルもしくは脂質の、SR−BI媒介輸送が改変される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記ステロイド生成組織中への、高密度リポタンパク質に結合または複合体化したコレステリルエステルもしくは脂質の、SR−BI媒介輸送が改変される、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記胆管中への、高密度リポタンパク質に結合または複合体化したコレステリルエステルもしくは脂質の、SR−BI媒介輸送が改変される、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
高密度リポタンパク質に結合または複合体化したコレステリルエステルもしくは脂質の、SR−BI媒介輸送が改変される、請求項1に記載の薬学的組成物。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−312638(P2006−312638A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171960(P2006−171960)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【分割の表示】特願平9−519147の分割
【原出願日】平成8年11月15日(1996.11.15)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【出願人】(593171363)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルベニア (9)
【出願人】(591217403)ボード オブ リージェンツ, ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム (49)
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】