説明

コンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材、その製造方法およびコンクリートもしくはモルタル構造物

【課題】コンクリート、モルタルのひび割れを防ぎ、靭性に優れ長期間にわたり、コンクリート、モルタルに対する強度の著しい向上効果・補強効果を維持できるコンクリート又はモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を提供する。
【解決手段】無機系材料をマトリックスとする撚糸状の炭素繊維束からなり、束長さが5〜50mmの線材であり、炭素繊維束からなる撚糸に無機系マトリックス又はそのプリカーサーを含浸させ、該撚糸に張力を付与しながら加熱炉内で連続的に加熱してマトリックス又はそのプリカーサーによって炭素繊維束を結束させた後、5〜50mmの長さに切断するコンクリート又はモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の製造方法、また、これを補強材料に使用したコンクリート又はモルタル構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材、その製造方法およびコンクリートもしくはモルタル構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、その優れた圧縮強度、耐火性、耐久性、施工性などの特長を生かして、鉄鋼と並び、建築、土木分野の主要材料、主要構造部材として、広く使われている。
【0003】
しかし、コンクリートは、圧縮強度に比べて、引張強度や曲げ強度が約1/4〜1/10と小さく、また破壊ひずみも約0.02%と極端に小さい脆い材料であり、靭性が低くひび割れしやすいなどの欠点を持つ材料である。
【0004】
この欠点を改善するため、従来技術として、建築・土木構造物で、大きな曲げ強度、せん断強度、変形特性が求められる部位のコンクリートに、鋼繊維や、ビニロン繊維もしくはポリプロピレン繊維などの有機繊維、または、アラミド繊維やガラス繊維などを用いた繊維強化プラスチック線材(以下、FRP線材という)を混入して使用する技術が提案されてきており(特許文献1〜4)、トンネルライニング、法面保護、道路舗装などで使われている。
【0005】
一般に、鋼繊維を使用する場合は、コンクリート中の鋼繊維は、コンクリートがアルカリ性のため錆びないとされている。
【0006】
しかし、コンクリート中の水酸化カルシウムが空気中の炭酸ガスと反応し、アルカリ性を失ってコンクリートが中性化するとコンクリートの防錆能力が失われ、さらに鋼繊維が酸素と反応すると鋼繊維が錆びる。また、予期しない荷重や乾燥収縮などによるひび割れが発生すると、ひび割れを中心に、鋼繊維に沿って錆びが進展し、コンクリートの劣化が進む。また、海水の作用を受ける沿岸部のコンクリート部材では、コンクリート内部に浸透した海水中の硫酸マグネシウムがセメント成分と反応し、膨張を生じるとともに、コンクリートの微細組織を弛緩させコンクリートを劣化させる。また、塩素イオンは、コンクリート内部に浸透することにより鋼繊維の発錆を促進し、コンクリートの腐食膨張ひび割れとともに、鋼繊維の強度を低下させ補強効果が低減するという問題もあり、実用面では解決すべき問題が多かった。
【0007】
一方、これまで知られてきている有機繊維は、錆びの発生は防げるが、有機繊維自体の強度・弾性率が低く伸びが大きいという特性のため、コンクリートに荷重が作用したとき、十分に荷重を負担できず、靭性補強効果はあるものの十分な強度を達成する補強効果が得られないという問題があった。
【0008】
また、アラミド繊維やガラス繊維からなるFRP線材は、長期間にわたりコンクリート中に存在すると、コンクリート中のアルカリ成分が、FRP線材の切断端面あるいは樹脂層を通過して強化繊維に浸透することにより、強化繊維が劣化し、強度補強効果が低下することとなり、長期間の耐久性が求められるコンクリート構造物には使用できないという問題があった。
【0009】
また、主にコンクリート補強で用いられる鉄筋の代替として、FRP製のケーブル状物や棒状物を用いてコンクリートを補強することも提案されている(特許文献5〜8)。
【0010】
しかし、それらの補強手法は、構造物の骨格として筋を入れるという技術思想が主なものであり、コンクリート材料自体の脆性や靭性の改善、向上を図るというものではない。
【0011】
一方、近年の技術進展に伴い、例えば、放射性廃棄物処分施設や海洋構造物の分野などでは、従来技術では対応できないような極めて高い耐久性が要求されるようになり、そのような高耐久性を材料的に実現できるコンクリートまたはモルタルが要求されるようになってきた。
【0012】
これらの施設や構造物では、耐久性の低さに基づくような破壊や変形は寸分違わず許されるべきものではなく、半永久的にそれら施設、構造物を完璧に維持・保全できることが要求されるのである。
【0013】
例えば、放射性廃棄物処分施設では、地下100〜1000mに坑道を掘削し、その中心に放射性廃棄物を埋設することなどが計画されている。この場合、放射性廃棄物から漏洩する核種が人間の生活圏内に到達するまでに十分な時間がかかるように、人工バリア材で遮蔽が施されるものである。特に、廃棄物の周辺では、地下水の流れを遮断し、かつ物質が拡散のみで移動する環境、いわゆる「拡散場」を造り出すことにより、核種の移行を遅延することが検討されている。そのための材料としては、天然材料で耐久性があり、透水係数が極めて小さく、さらに水と接触することで膨潤して、多少の変形にも追従して低い透水性を発現するベントナイトの使用が最も有力視されている。
【0014】
廃棄物処分施設においては、このようなベントナイト等による遮蔽構造の内部に廃棄物格納用の構造物を構築することを要するが、その際、強度を受け持つ構造材料および空間を埋める充填材料としてセメント系材料が使用されることになるのが通常であると考えられる。
【0015】
そして、このセメント系材料にも、力学性能、長期耐久性能および核種や地下水等に対する物質遮断性などが要求され、また、その要求期間が極めて長いので(施設の耐久性に関する耐用年数が数万年に及ぶ可能性もあるのである)、鉄筋を補強材料とした場合には、鉄筋が腐食によって消失する可能性もあることから、鉄筋コンクリートまたはモルタルの使用は困難と考えられている。
【0016】
同様に海洋構造物を構成するためのコンクリートまたはモルタルにおいても、鉄筋の腐食による耐久性劣化の問題があり、鉄筋コンクリートまたはモルタルを適用するのが困難なことが多い。
【0017】
他方、無筋のセメント系材料を、さまざまな荷重を受けることが避けられない構造材料や充填材料として使用した場合には、何らかの原因で生じたひび割れが発生すると、その進行を抑制する補強材がないため、結果として施設全体の遮蔽性能に影響を与えかねないものである。すなわち、引張り力に対してほとんど抵抗できない無筋のセメント系材料を充填材とした場合には、各種荷重により低拡散層に過大なひび割れが発生する可能性があり、これが核種の選択的移行経路となった場合には、性能評価上は大きなダメージになると考えられる。
【0018】
このような背景下、既に、廃棄物処分施設材料として、金属繊維または有機質繊維を含むセメント系材料を使用することが提案されている(特許文献9)。
【0019】
また、放射性廃棄物の格納フレーム、各種バリア構造体または外殻構造体として、炭素繊維補強セメント系材料で構成することが提案されている(特許文献10)。
【0020】
しかしながら、鉄筋に代えて繊維を補強材とした補強セメント系材料を、上記廃棄処分施設等の部材に用いる場合には、有機繊維では溶解した場合に核種の分散係数に影響を与えることが予想される。
【0021】
したがって、そのような影響のない無機系の補強材の使用が検討されるべきこととなるが、高耐久性(例えば、4万年にも及ぶ長期耐久性である)に加えて、施工性に優れることも必要となる。
【0022】
無機繊維としては、特許文献9および特許文献10に提案されている炭素繊維が適するものと考えられるが、これらの提案においては、炭素繊維が樹脂を含浸、硬化した複合材料でなく炭素繊維そのものであるため、コンクリートに練り混ぜ時に骨材に削られ折損し、十分な長さを維持できなくなるため、また表面凹凸がなく、コンクリートとの定着力が低いため、曲げ靭性の改善に寄与するところが少なく、ひび割れ発生に対する抑制効果が十分ではないという問題がある。
【0023】
また、材料の練り混ぜ時に炭素繊維が破断しやすいという問題があり、所望するレベルの強度向上効果が思うように発現できないという問題があった。
【特許文献1】特開2003−183062号公報
【特許文献2】特開2003−2707号公報
【特許文献3】特開2001322845号公報
【特許文献4】特開平8−243602号公報
【特許文献5】特開2003−328284号公報
【特許文献6】特開平11−116303号公報
【特許文献7】特開平10−119139号公報
【特許文献8】特開平5−321178号公報
【特許文献9】特開2002−243895号公報
【特許文献10】特開2001−201596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、コンクリートもしくはモルタルからなる構造物の補強において、コンクリート、モルタルのひび割れを防ぎ、靭性に優れ、長期間にわたり、コンクリート、モルタルに対する強度の著しい向上効果・補強効果を維持することのできるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材とその製造方法、およびコンクリートもしくはモルタル構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述した点に鑑み、本発明のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材は、以下の(1)の構成からなるものである。
(1)無機系材料をマトリックスとする撚糸状の炭素繊維束からなり、該束長さが5〜50mmの線材であることを特徴とするコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
【0026】
また、かかる本発明のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材において、好ましい具体的態様として、以下の(2)〜(8)のいずれかの構成からなるものである。
(2)前記撚糸状の炭素繊維束が、複数本の炭素繊維束の合撚糸であることを特徴とする上記(1)のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
(3)前記撚糸状の炭素繊維束が、1メートル当たり50〜120回の撚りを有することを特徴とする上記(1)または(2)のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
(4)前記炭素繊維束が、その表面に凸凹を有し該凹凸の間隔が3〜25mmであることを特徴とする上記(1)、(2)または(3)のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
(5)前記線材を構成する撚糸状の炭素繊維束が、多数本のフィラメントを集束した、幅/厚みの比が20以上の扁平状の炭素繊維束を撚り加工したものであることを特徴とする上記(1)、(2)、(3)または(4)のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
(6)前記線材の断面積が、0.15〜3平方ミリメートルの範囲内にあることを特徴とする上記(1)、(2)、(3)、(4)または(5)のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
(7)前記無機系のマトリックス材料が、炭素であることを特徴とする上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)または(6)のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
(8)前記無機系のマトリックス材料が、ガラスまたは石膏の無機系酸化物、あるいはセラミックスであることを特徴とする上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)または(6)のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
【0027】
また、上述した目的を達成する本発明のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の製造方法は、以下の(9)の構成からなるものである。
(9)炭素繊維束からなる撚糸に無機系マトリックスまたはそのプリカーサーを含浸させ、前記撚糸に張力を付与しながら、加熱炉内で連続的に加熱して、マトリックスまたはそのプリカーサーによって炭素繊維束を結束させた後、5〜50mmの長さに切断することを特徴とするコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の製造方法。
(10)炭素繊維束からなる撚糸に無機系マトリックスのプリカーサーを含浸させ、前記撚糸に張力を付与しながら加熱炉内の加熱によって炭素繊維束を結束させるとともに無機系マトリックスを生成させ、しかる後、該炭素繊維束を5〜50mmの長さに切断することを特徴とする上記(9)記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の製造方法。
(11)炭素繊維束からなる撚糸に無機系マトリックスのプリカーサーを含浸させ、前記撚糸に張力を付与しながら加熱炉内の加熱によって炭素繊維束を結束させた後、該炭素繊維束を5〜50mmの長さに切断し、しかる後、該切断された炭素繊維束を加熱炉内にて加熱処理して無機系マトリックスを生成させることを特徴とする上記(9)記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の製造方法。
(12)生成させる無機系マトリックスが炭素であることを特徴とする上記(10)または(11)記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の製造方法。
【0028】
また、上述した目的を達成する本発明のコンクリートもしくはモルタル構造物は、以下の(13)または(14)の構成からなる。
(13)無機系の材料をマトリックス材料とする撚糸状の炭素繊維束からなり、該束長さが5〜50mmの無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル中に使用してなることを特徴とするコンクリートもしくはモルタル構造物。
(14)上記(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)または(8)のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル中に使用してなることを特徴とするコンクリートもしくはモルタル構造物。
【0029】
また、かかる本発明のコンクリートもしくはモルタル構造物において、具体的に、より好ましくは、以下の(15)〜(17)のいずれかからなるものである。
(15)コンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル混練物中に、体積割合で0.2〜5%の混入率で使用してなることを特徴とする上記(13)または(14)のコンクリートもしくはモルタル構造物。
(16)放射性廃棄物の処分施設を構成する材料として用いられることを特徴とする上記(13)、(14)または(15)記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
(17)海洋構造物を構成する材料として用いられることを特徴とする上記(13)、(14)または(15)記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
【発明の効果】
【0030】
請求項1〜8にかかる本発明によれば、コンクリートもしくはモルタルからなる構造物の補強において、コンクリート、モルタルのひび割れを防ぎ、靭性に優れ、長期間にわたり、コンクリート、モルタルに対する強度の著しい向上効果・補強効果を維持することのできるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を提供することができる。
【0031】
請求項9〜12にかかる発明によれば、コンクリートもしくはモルタルからなる構造物の補強において、コンクリート、モルタルのひび割れを防ぎ、靭性に優れ、長期間にわたり、コンクリート、モルタルに対する強度の著しい向上効果・補強効果を維持することのできるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の製造方法を提供することができる。
【0032】
請求項13〜17にかかる本発明によれば、コンクリート、モルタルのひび割れを防ぎ、靭性に優れ、長期間にわたり、コンクリート、モルタルに対する強度の著しい向上効果・補強効果を維持することができるコンクリートもしくはモルタル構造物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、更に詳しく本発明のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材について説明する。
【0034】
本発明にかかるコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材は、無機マトリックスが含浸され、炭素繊維を一体結束化した撚糸状の炭素繊維束からなるものであり、該束長さが5〜50mmの線材であるものである。
【0035】
撚糸状は、図4に示したような単一の繊維束(単一糸)に撚りを施したものでもよく、あるいは、図5に示したように二本もしくはそれ以上の複数本の繊維束を合撚した合撚糸状であってもよい。図4、図5において、1は無機マトリックス・炭素繊維複合線材、2は炭素繊維フィラメント、3は無機系マトリックスで、Lは、隣り合う凸部頂点間の間隔である。
【0036】
該撚糸状は、該繊維束が単一の繊維束(単一糸)に撚りを施したもの、あるいは二本もしくはそれ以上の複数本の繊維束を合撚した合撚糸状のもののいずれであっても、撚り数は繊維束1メートル当たり50〜120回の撚りをかけられているものであることが好ましい。合撚糸の場合は、合糸の前に、下撚りを掛ける場合も、掛けない場合も含まれるが、いずれの場合も合撚時の上撚りの数が50〜120回/mであることが好ましい。この場合、該撚り数は上撚り数である。
【0037】
本発明において、該繊維束は、繊維束表面に凸凹を有し、その間隔が3〜25mmであることが好ましい。
【0038】
また、本発明にかかる線材を構成する繊維束(撚糸)が、多数本のフィラメントが集束されている幅/厚みの比が20以上の扁平状の炭素繊維束を撚り加工した撚糸であることが好ましい。
【0039】
すなわち、幅/厚みの比が20以上である炭素繊維束に、1メートル当たり50〜120回の撚り加工を施すことにより、多数本のフィラメントが集束した炭素繊維束がねじれて、炭素繊維束の表面が凹凸状を呈した状態になる。なお、炭素繊維束の厚みは、JCFS003に規定されたマイクロメータによる方法に基づいて測定するものである。
【0040】
本発明のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材は、撚り加工した炭素繊維束に含浸させた無機系マトリックスまたはそのプリカーサ溶液を、加熱炉などの雰囲気下で炭素繊維束を結束させることによって、該凹凸の形態が、該補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の表面に維持され、間隔が3〜25mmの凸凹形態を有する無機マトリックス・炭素繊維複合線材を得ることができる。
【0041】
また、同様に撚り加工した炭素繊維束に、炭素または無機系マトリックスのプリカーサを含浸させ、高温雰囲気下で、無機系マトリックスを生成させ、炭素繊維束を結束させることによっても、同様の無機系炭素繊維強化複合線材を得ることができる。
【0042】
このような凹凸形状が、本発明にかかる補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の表面に存在すると、特に、モルタルやコンクリートと混ぜた場合、線材とモルタル、コンクリートとの締結が可能になるという点で好ましく、中でも間隔が3〜25mmである凸凹形態を有するものの場合には、補強効果として利用できる締結力を得ることができ、より好ましいものである。
【0043】
また、本発明の補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を構成する撚糸状の繊維束は、多数本のフィラメントが集束された炭素繊維束であり、その繊度は好ましくは150〜11000テックス、より好ましくは150〜1800テックス程度で、撚糸は1本の炭素繊維束や多数本の炭素繊維束を単に引き揃えた状態で撚りが加えられてよいし、また予め下撚り(S撚りまたはZ撚り)をかけた複数本の撚糸をねじりトルクがバランスするように下糸とは逆方向(Z撚りまたはS撚り)になるように撚りをかけるか、または同じ方向(S撚りまたはZ撚り)に撚りを掛けた合撚糸であってもよい。
【0044】
具体的には、幅/厚みの比が20以上である炭素繊維束に、1メートル当たり50〜120回の撚りを施し、本発明にかかる補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の表面に3〜25mmの間隔で凸凹をつけておくと、本発明の複合線材をコンクリート等に混入した場合、該複合線材表面の凹凸にコンクリート等が入り込み、線材とコンクリート等との強固な締結がなされることになる。
【0045】
従って、コンクリート等に引張力がかかった場合に線材が引張力を負担し、コンクリート等の強度を向上させるとともに、線材によりコンクリートのひび割れの進展が阻止されることになり、コンクリートの靭性および強度が大幅に向上する。また、線材は錆びることがないので鋼繊維のように線材自体の強度低下がなく、耐久性が飛躍的に向上する。
【0046】
炭素繊維束の撚り数が1メートル当たり50回未満、あるいは凹凸の間隔が25mmよりも大きいものになると、長さ当たりの線材とコンクリート等の上述した締結箇所が少なくなる方向であり、コンクリート等に引張力がかかった場合、線材がコンクリートから抜けやすくなり、線材による引張力の負担が小さくなり好ましくない。
【0047】
特に、撚数が50回未満では線材表面の凹凸構造が小さくなり、線材とコンクリート等の締結力が小さくなり、補強効果も小さくなるので用途により好ましくない。
【0048】
また、撚り数が1メートル当たり120回よりも大きくなるか、あるいは凹凸の間隔が3mmより小さいと、上述した締結箇所が多くなり引張を十分に負担することができる点では好ましいものの、線材の軸方向に対する繊維の配向角度が大きくなり、線材の引張強度が低下する方向になるので、用途によっては好ましくない場合があり、また含浸させる際、撚り数に比例して繊維の拘束が強くなり、フィラメント間に隙間を形成することができず、含浸が悪くなる方向であり、十分な強度を有する線材が得られないことがあり、さらに、その場合、ミキサーなどでコンクリート等と線材を練り混ぜる際に、線材の含浸不良部で線材が割れたり、折れたりする可能性があるので、やはり好ましくない。
【0049】
なお、本発明でいう凹凸の間隔とは、表面同一線上での線材の凹部と凸部の直径の差が0.1mm以上の隣接する凸部と凸部、または凹部と凹部の間隔であり、100個の間隔を測定しその平均である。間隔の測定は、読み取り顕微鏡を使用し、図4および図5に示す線材の隣り合う凸部頂点間の距離Lを測定するものである。
【0050】
また、本発明による線材は、5〜50mm長さにカットしてある。線材の長さが5mm未満では、線材とコンクリート等との締結力が小さく、引張力が付加された場合、線材が母材のコンクリート等から抜け、線材の強度が十分に発現できないので好ましくない。
【0051】
また、線材の長さが50mmよりも大きいものでは、ワーカビリティへの影響が過大となり、線材をコンクリート等に均一に混ぜるのが難しくなるという不都合がある。また、コンクリート等への締結力は線材の長さが長いほど大きいが、必要以上に長いと、練混ぜ中に線材が折損し、結局、線材長が不均一となり強度のばらつきが大きくなるので望ましくない。
【0052】
本発明に使用する撚糸からなる繊維束は、好ましくは、多数本のフィラメントを集束した、幅/厚みの比が20以上である炭素繊維束を撚り加工した撚糸である。
【0053】
炭素繊維束の幅/厚み比が20未満では撚り加工時、幅方向に送られる中央と両端のフィラメントの撚り中央での糸長差が小さく、撚り線表面の凹凸が小さくなる。そのため線材に加工したときに、線材の凹部と凸部の厚み差(凹部と凸部の直径の差)が0.1mm以下と小さくなり、コンクリート等と本発明によるCFRP線材の締結力が小さくなり線材強度を十分に発現することができない場合がある。
【0054】
本発明によるコンクリート等の補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材に使用する強化繊維は、コンクリート等の外力による変形を抑えるため、高強度、高弾性率であることが重要であり、さらに、耐食性、特に耐アルカリ性に優れていることが重要であり、炭素繊維が最も好ましいものであり、本発明の炭素繊維を使用することにより長期間の使用に耐え得るコンクリートもしくはモルタル構造物が得られるのである。
【0055】
本発明の無機マトリックス・炭素繊維複合線材に使用される無機マトリックスの例としては、微粒子としたセメント、ナノシリカ等の無機系接着剤、水ガラス、軽焼マグネシア、石膏あるいはこれらのプリカーサからなる化合物などを、単独あるいは混合して溶液状とするか、困難な場合、固体のまま微粒化して水、アルコール系などの溶媒に分散させ、これらを炭素繊維束に含浸し溶媒を飛ばすあるいはガラス化などの処置を行うことによって、製造される。また、セラミック系プリカーサや、炭素プリカーサを含浸させて、後セラミックスや、炭素に変換することも好適である。
【0056】
処理剤が固体の場合には、良好な含浸性を確保するため、分散させる粒子の径は炭素繊維の単糸径より同等以下、すなわち10μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下が適当である。
【0057】
無機マトリックスの一例として、好ましいセメントマトリックスの例としては、超微粒子セメントを2次凝集を篩い分け、解砕等を行い原料として使用し、適当なセメント分散剤と併用して含浸剤として用いるものなどがある。
【0058】
また、無機マトリックスの一例として、好ましい無機系接着剤の例としては、水酸化アルミニウムからなる耐火パテ、有機溶媒にナノシリカを分散させ、その後溶媒を飛散させることによるシリカ化合物が挙げられる。
【0059】
また、無機マトリックスの一例として、好ましい水ガラスの使用例としては、まず水ガラスで含浸、硬化させ、セメントの混練に耐えられるように外側に耐水、耐アルカリコーティングを施す方法によるものが挙げられる。
【0060】
また、無機マトリックスの一例として、好ましい軽焼マグネシアの例としては、微粒子化した軽焼マグネシアをナフタレンスルフォン酸系やポリカルボン酸系分散剤を使用した水分散系を含浸剤として用いるものがある。
【0061】
また、無機マトリックスの一例として、好ましい石膏の例としては、微粉化した石膏を水に分散させたものを含浸させ、後水を加熱固化させる方法によるものが挙げられる。
【0062】
また、無機マトリックスの一例として、好ましいセラミック系プリカーサーの例としては、加熱してシリカ構造を与えるポリオルガノシロキサン、Si−Ti−CO系セラミックプリカーサー等が挙げられる。
【0063】
また、無機マトリックスの一例として、炭素マトリックスの場合、プリカーサとして一般的に使用される樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂を使用でき、これら樹脂を含浸させ硬化処理した後、400℃以上の嫌気性雰囲気で加熱処理して炭素/炭素コンポジットからなる炭素繊維複合線材を得ることができる。
【0064】
これらは対応するプリカーサを炭素繊維撚り線材に十分に含浸させ、加熱によって無機系マトリックスを生成させて無機マトリックス・炭素繊維複合線材を得る。
【0065】
本発明の無機マトリックス・炭素繊維複合線材における炭素繊維の体積含有率、つまり炭素繊維束とマトリックスとの体積割合は、マトリックス比率が大きすぎると、コンクリート等中で線材に応力が作用した際に、炭素繊維束の表面に付着したマトリックスから破壊が始まるので好ましくなく、また、マトリックス量が少なすぎると線材強度が低くなり、ミキサーで練りまぜたときに線材が折れたりするので好ましくなく、本発明者らの各種知見によれば、炭素繊維束の比率は、全体に対して20〜90体積%程度とするのが好ましく、より好ましくは35〜80体積%程度とすることである。すなわち、マトリックスの量は、80〜10体積%程度とするのが好ましく、より好ましくは、65〜20体積%程度とすることである。
【0066】
本発明による無機マトリックス・炭素繊維複合線材は、多数本(例えば12000本)の炭素繊維フィラメントからなる撚りをかけた炭素繊維束に無機マトリックスまたはプリカーサを含浸させ、張力を付与しながら加熱炉内で連続的に加熱し、炭素繊維束を結束処理した後、線材長さ5〜50mmに切断加工して得ることができ、必要ならば、更に加熱してマトリックスを形成することにより得ることができる。その際に、撚糸に張力を付与することにより、余分な溶液、空隙をしぼり出すことができ、炭素繊維体積含有率が上述した範囲にある高い高強度、高弾性率の線材を製造できるものである。
【0067】
より具体的には、切断の時期に応じて、以下の(a)のプロセスか、あるいは(b)のプロセスで製造することができる。
(a)炭素繊維束からなる撚糸に無機系マトリックスのプリカーサーを含浸させ、該撚糸に張力を付与しながら加熱炉内の加熱によって炭素繊維束を結束させるとともに無機系マトリックスを生成させ、しかる後、炭素繊維束を5〜50mmの長さに切断して本発明の複合線材を製造するプロセス。
(b)炭素繊維束からなる撚糸に無機系マトリックスのプリカーサーを含浸させ、該撚糸に張力を付与しながら加熱炉内の加熱によって炭素繊維束を結束させた後、該炭素繊維束を5〜50mmの長さに切断し、しかる後、該切断された炭素繊維束を加熱炉内にて加熱処理して無機系マトリックスを生成させてコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を製造するプロセス。
【0068】
なおまた、加熱炉内でガイド等に非接触な状態で連続的に賦型することにより、表面にコンクリート等との締結に適した凹凸形態を有する線材を複雑な装置を使用することなく、安価に製造することが可能である。
【0069】
本発明による複合線材は、その断面積は0.15〜3平方ミリメートルであることが好ましく、より好ましくは0.6〜1.6平方ミリメートルである。あまりに線材が細いと、表面凹凸が小さくなるので、コンクリートとの十分な締結効果が得られないばかりか、セメント、砂、砂利、水とのミキシングの際、線材が折れてしまうことも多くあり、締結効果の小さい短い線材が多くなることとなり、機械的性質の安定したコンクリート等構造物を得ることが難しくなる。
【0070】
また、線材の断面積が3平方ミリメートルよりも大きなものになると、同一線材量で比較した場合コンクリート等中に分散する線材の本数が少なくなる。その結果、コンクリートに負荷がかかった場合、1本の線材が負担する荷重は、線材とコンクリート等との締結力であるので、線材の本数が少ないほど強度補強効果は小さくなり、また、コンクリート等中における線材と線材の間隔も大きくなるので、線材によるひび割れの抑止効果が小さくなり好ましくない。
【0071】
一方、線材量を多くすれば、強度補強効果も向上し、また、線材と線材の間隔も狭くなりひび割れ抑止に対する十分な効果は得られるが、材料費が上がり高価な構造物となるばかりか、コンクリート成型時のプロセス性が劣る問題がある。
【0072】
本発明のコンクリート等構造物は、本発明の無機マトリックス・炭素繊維複合線材を0.2〜5体積%程度とセメント、砂、砂利、混和材に水を加えて数分間練り込んで得られるものである。線材の混入率が、0.2体積%未満では補強効果が小さく、5体積%よりも大きいと高価な構造物になるので、より効果的な補強効果が得られる範囲として、0.2〜5体積%が好ましいのである。
【0073】
本発明の無機マトリックス・炭素繊維複合線材を、コンクリートもしくはモルタル中に使用してコンクリートもしくはモルタル構造物を製造することにより、本発明のコンクリートもしくはモルタル構造物が製造できる。
【0074】
該コンクリートもしくはモルタル構造物は、極めて優れた高耐久性を示すものであり、前述した放射性廃棄物の処分施設を構成する材料として、あるいは海洋構造物を構成する材料として好適に用いられるものである。
【実施例】
【0075】
以下、実施例に基づいて本発明のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材について説明をする。
【0076】
各物性値は、以下に記載する測定法によるものである。
(1)繊維束表面の凹凸の間隔:
読み取り顕微鏡を使用し、図4および図5に示す線材の隣り合う凸部頂点間の距離Lを測定する。100個の間隔を測定して平均値を用いた。
(2)表面同一線上での線材の凹部と凸部の各直径とその差:
凹凸差の測定は、読みとり顕微鏡を使用して凹部と凸部の頂点に基準線を合わせて、その差を読みとりその2倍を直径差とする。
(3)炭素繊維束の幅/厚みの比:
厚みは、JCFS003に規定されたマイクロメーターによる方法に準じて測定し、幅はノギスを用いて測定した。測定は各5回行いその平均値を使用した。
(4)スランプ
JISA1101に準じて、円錐台の容器にコンクリートを入れ、上下を逆にした後容器を垂直方向に取り除き、コンクリート塊の直径を測定する。
(5)曲げ強度、圧縮強度、曲げ靭性係数
JIS R5201(1997)に準じて評価した。
実施例1〜4、比較例1、2
表1の材料を用いて表2の配合の繊維補強コンクリートを練り混ぜた。使用した繊維は下記の3種であり、配合量はいずれも1.5体積%である。繊維は練り始めから90秒後に投入し、繊維投入後更に90秒練混ぜた。表2の配合においてSPは高性能AE減水剤(エヌ・エムビー株式会社製の商品名SP8HUのポリカルボン酸系高性能AE減水剤)である。
比較例1
チョップド炭素繊維束:
ピッチ系炭素繊維(カット長10mm、繊維の引張強さ1.8GPa、引張弾性率190GPaのものを使用した。
比較例2
炭素繊維複合樹脂線材:
1束12000本のフィラメントからなる炭素繊維束(引張強度:4900MPa、引張弾性率:230GPa)に、1メートル当たり100回の撚りをかけた撚糸に張力をかけ、樹脂の中をくぐらせてエポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂と硬化剤の芳香族アミンを各100部、22部を混合したもの)を含浸し、スクイズガイドを通して過剰な樹脂を除き、横長加熱炉の中を連続的に通して、150℃で2分間加熱硬化後、長さ30mmに切断した、繊維体積含有率80%、断面積が0.7平方ミリメートルの炭素繊維強化複合線材である。
実施例1
無機マトリックス・炭素繊維複合線材:
上記(2)のエポキシ樹脂をフェノール樹脂に置き換えた炭素繊維複合樹脂線材を窒素雰囲気下、700℃で1時間加熱焼成して、マトリックスを炭素に転換せしめた無機マトリックス・炭素繊維複合線材である。
実施例2
無機マトリックス・炭素繊維複合線材(1):
上記の1束12000本のフィラメントからなる炭素繊維束に、1メートル当たり100回の撚りをかけた撚糸に張力をかけ、微粉末の軽焼マグネシアと水ガラス(珪酸ソーダ3号)を3:7の割合で混合したスラリーの中をくぐらせて付着させた。室温にて2日間空気中で養生し、長さ30mmに切断した、繊維体積含有率60%、断面積が0.8平方ミリメートルの炭素繊維強化マグネシアである。
実施例3
無機マトリックス・炭素繊維複合線材(2):
上記の1束12000本のフィラメントからなる炭素繊維束に、1メートル当たり100回の撚りをかけた。しかる後に撚糸に張力をかけ、溶媒に溶けたポリオルガノシロキサンを主成分とするヒートレスガラス(株式会社日興製の商品名HEATLESS GLASS)の中をくぐらせ、室温空気中にて脱溶媒によりガラスを析出させるという工程を繰り返すゾル−ゲル法により、炭素繊維強化ガラスとした後、長さ30mmに切断した。繊維体積含有率は70%、断面積は0.7平方ミリメートルであった。
実施例4
無機マトリックス・炭素繊維複合線材(3):
上記の1束12000本のフィラメンからなる炭素繊維束に、1メートル当たり100回の撚りをかけた撚糸に張力をかけ、スラリー状の無機接着剤であるS−208A(朝日化学工業株式会社製の商品名スミセラム)の中をくぐらせて付着させた。しかる後に300℃で30分加熱硬化後、長さ30mmに切断した、繊維体積含有率40%、断面積が1.2平方ミリメートルの炭素繊維強化セラミックスである。
【0077】
得られた混練物のフレッシュ性状(スランプ、空気量)と硬化後の力学的特性を試験した。その結果を表4に示した。養生は50℃の促進水中養生を6日間実施した。また、各特性の測定は、以下に準じた。
【0078】
スランプ:JIS A1101
空気量:JIS A1128
圧縮強度:JIS A1108
ヤング係数:JSCE G502
曲げ強度:JIS A1106
曲げ靱性係数:JSCE−G 552
表4の結果からわかるように、本発明による無機マトリックス・炭素繊維複合線材配合のコンクリートは、高いスランプ値を有してワーカビリテイが良好であり、かつ炭素繊維複合樹脂線材配合のものに匹敵する強度特性を有している。
【0079】
また、表4の曲げ靭性係数は、これが大きいほど曲げ荷重に対するエネルギー吸収程度が大きいことを表すが、無機マトリックス・炭素繊維複合線材配合のコンクリートはこの曲げ靭性係数が高く、非常に良好な曲げ靭性を示すことがわかる。
【0080】
図3は、この無機マトリックス・炭素繊維複合線材配合のコンクリートのたわみ−荷重曲線(n数=3)を示したものである。
【0081】
また、図1は比較例1で得られた試験結果として、たわみ−荷重曲線(n数=2)を示したものであり、図2は比較例2で得られた試験結果として、たわみ−荷重曲線(n数=3)を示したものである。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、比較例1で得られた試験結果として荷重−たわみ曲線を示したものである。
【図2】図2は、比較例2で得られた試験結果として荷重−たわみ曲線を示したものである。
【図3】図3は、実施例1で得られた試験結果として荷重−たわみ曲線を示したものである。
【図4】本発明の線材に使用される撚糸状の繊維束として、単一の繊維束(単一糸)に撚りを施したものの形態例をモデル的に示した概略モデル斜視図である。
【図5】図5は、本発明の線材に使用される撚糸状の繊維束として、二本の繊維束を合撚したものの形態例をモデル的に示した概略モデル斜視図である。
【符号の説明】
【0087】
1:無機マトリックス・炭素繊維複合線材
2:炭素繊維フィラメント
3:マトリックス樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機系材料をマトリックスとして有する撚糸状の炭素繊維束からなり、該束長さが5〜50mmの線材であることを特徴とするコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
【請求項2】
前記撚糸状の炭素繊維束が、複数本の炭素繊維束の合撚糸状であることを特徴とする請求項1記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
【請求項3】
前記撚糸状の炭素繊維束が、1メートル当たり50〜120回の撚りを有することを特徴とする請求項1または2記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
【請求項4】
前記炭素繊維束が、その表面に凸凹を有し該凹凸の間隔が3〜25mmであることを特徴とする請求項1、2または3記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
【請求項5】
前記線材を構成する撚糸状の炭素繊維束が、多数本のフィラメントを集束した、幅/厚みの比が20以上の扁平状の炭素繊維束を撚り加工したものであることを特徴とする請求項1、2、3または4記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
【請求項6】
前記線材の断面積が、0.15〜3平方ミリメートルの範囲内にあることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
【請求項7】
前記無機系のマトリックス材料が、炭素であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
【請求項8】
前記無機系のマトリックス材料が、ガラスまたは石膏の無機系酸化物、あるいはセラミックスであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材。
【請求項9】
炭素繊維束からなる撚糸に無機系マトリックスまたは無機系マトリックスのプリカーサーを含浸させ、前記撚糸に張力を付与しながら、加熱炉内で連続的に加熱して、前記無機系マトリックスまたは無機系マトリックスのプリカーサーによって炭素繊維束を結束させた後、5〜50mmの長さに切断することを特徴とするコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の製造方法。
【請求項10】
炭素繊維束からなる撚糸に無機系マトリックスのプリカーサーを含浸させ、前記撚糸に張力を付与しながら加熱炉内の加熱によって炭素繊維束を結束させるとともに無機系マトリックスを生成させ、しかる後、該炭素繊維束を5〜50mmの長さに切断することを特徴とする請求項9記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の製造方法。
【請求項11】
炭素繊維束からなる撚糸に無機系マトリックスのプリカーサーを含浸させ、前記撚糸に張力を付与しながら加熱炉内の加熱によって炭素繊維束を結束させた後、該炭素繊維束を5〜50mmの長さに切断し、しかる後、該切断された炭素繊維束を加熱炉内にて加熱処理して無機系マトリックスを生成させることを特徴とする請求項9記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の製造方法。
【請求項12】
生成させる無機系マトリックスが炭素であることを特徴とする請求項10または11記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材の製造方法。
【請求項13】
無機系の材料をマトリックス材料とする撚糸状の炭素繊維束からなり、該束長さが5〜50mmの無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル中に使用してなることを特徴とするコンクリートもしくはモルタル構造物。
【請求項14】
請求項2、3、4、5、6、7または8記載のコンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル中に使用してなることを特徴とするコンクリートもしくはモルタル構造物。
【請求項15】
コンクリートもしくはモルタル補強用無機マトリックス・炭素繊維複合線材を補強材料として、コンクリートもしくはモルタル混練物中に、体積割合で0.2〜5%の混入率で使用してなることを特徴とする請求項13または14記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
【請求項16】
放射性廃棄物の処分施設を構成する材料として用いられることを特徴とする請求項13、14または15記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。
【請求項17】
海洋構造物を構成する材料として用いられることを特徴とする請求項13、14または15記載のコンクリートもしくはモルタル構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−37680(P2008−37680A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212035(P2006−212035)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(592103718)山宗化学株式会社 (5)
【出願人】(000105899)サカイ・コンポジット株式会社 (11)
【Fターム(参考)】