説明

コンクリートブロック台及び同コンクリートブロック台を用いた精密機械装置用の架台

【課題】 加速器施設や半導体工場などの精密機械装置を支持するコンクリートブロック台を提供する。
【解決手段】 コンクリートブロック台の内部に冷却媒体を循環させるための配管が埋め込まれており、当該配管に冷却媒体を循環させることによって、コンクリートブロック台の見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げる構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加速器施設や半導体工場などの精密機械装置を支持するコンクリートブロック台及び同コンクリートブロック台を用いた精密機械装置用の架台の技術分野に属し、更に云うと、コンクリートブロック台の見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げることができ、周辺温度(雰囲気温度)に影響を受けることなく精密機械装置を常に精度良く支持することができる、コンクリートブロック台及び同コンクリートブロック台を用いた精密機械装置用の架台に関する。
【背景技術】
【0002】
加速器施設や半導体工場などの精密機械装置は常に精度良く支持されていることが重要である。
【0003】
例えば、直線加速器施設の加速管は、支持精度が狂わないように、安定した岩盤に設置された鋼製ブロック台や石製ブロック台に支持されていることが一般的であるが、加速管の内部を流れるビームの方向制御を行うマグネット部は、更に高い精度で支持されていることが重要である。
【0004】
しかし、鋼製ブロック台は雰囲気温度に影響を受けて熱膨張し、マグネット部を精度良く支持できない問題点がある。また、加速管の支持手段として要求される剛性や振動特性を満たさない問題点がある。一方、石製ブロック台は熱膨張の影響が小さく、マグネット部を精度良く支持でき、しかも支持手段として要求される剛性や振動特性を満たすが、コストが嵩む問題点がある。
【0005】
ところで、コンクリートブロック台は上記石製ブロック台と略同程度の剛性や振動特性を有し、且つ非常に安価に製造できる利点を有するが、雰囲気温度に影響を受けて熱膨張し、最も重要視される支持精度を確保することができない可能性がある。また、見かけの熱膨張係数を下げて、膨張量を抑えることができる構成とされたコンクリートブロック台や同コンクリートブロック台を用いた架台は見聞することができない。
【0006】
なお、コンクリートの打設時に配管を埋め込み、同配管に冷却水を循環させつつ養生して硬化させることで、コンクリート養生時の発熱を抑え、先行コンクリートとの温度差によって生じる温度ひび割れを防止する技術(特許文献1、2)や、コンクリート内に埋め込まれた配管に水を循環させ、同コンクリートに蓄えられた熱を採取する技術(特許文献3、4)が公知であるが、技術分野が異なる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−141128号公報
【特許文献2】特開平11−141129号公報
【特許文献3】特開2001−141380号公報
【特許文献4】特開2002−115984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、コンクリートブロック台の内部に冷却媒体を循環させるための配管を埋め込み、同配管に冷却媒体を循環させることによって、コンクリートブロック台の見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げることができる構成とし、雰囲気温度に影響を受けることなく精密機械装置を常に精度良く支持することができ、安価に製造できるコンクリートブロック台を提供することである。
【0009】
本発明の次の目的は、全部又は任意のコンクリートブロック台を、上記見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げることができるコンクリートブロック台で構成し、精密機械装置用の架台として好適に用いることができる、精密機械装置用の架台を提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、コンクリートブロック台で架台を構成することで、安価に構築できる、精密機械装置用の架台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るコンクリートブロック台は、
精密機械装置を支持するコンクリートブロック台であって、
コンクリートブロック台の内部に冷却媒体を循環させるための配管が埋め込まれており、当該配管に冷却媒体を循環させることによって、コンクリートブロック台の見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げる構成とされていることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載したコンクリートブロック台において、
配管はコンクリートブロック台の外周部に沿ってスパイラル状に埋め込まれていることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載したコンクリートブロック台において、
冷却媒体には、恒温に管理された又はコンクリートブロック台の周辺温度より温度変化の小さい冷却水が用いられることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載したコンクリートブロック台において、
配管は利用可能な冷却水を循環させるための配管と接続されており、コンクリートブロック台の冷却媒体として恒温に管理された前記利用可能な冷却水を循環させることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1に記載したコンクリートブロック台において、
コンクリートブロック台の見かけの熱膨張係数を、石や岩盤の熱膨張係数以下に下げることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載した発明に係る精密機械装置用の架台は、
精密機械装置を支持する複数のコンクリートブロック台が所定の位置に設置されていること、
全部又は任意のコンクリートブロック台の内部に冷却媒体を循環させるための配管が埋め込まれており、当該配管に冷却媒体を循環させることによって、前記コンクリートブロック台の見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げる構成とされていることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項6に記載した精密機械装置用の架台において、
複数のコンクリートブロック台は、直線加速器施設の加速管の支持手段として略一定の間隔で岩盤に設置されていること、
加速管のマグネット部を支持するコンクリートブロック台の内部に冷却水を循環させるための配管が埋め込まれており、この配管は加速管用の冷却水を循環させるための配管と接続され、コンクリートブロック台の冷却媒体として恒温に管理された前記加速管用の冷却水を循環させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るコンクリートブロック台は、見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げることができる構成とされているので、雰囲気温度に影響を受けることなく精密機械装置を常に精度良く支持することができる。しかも、コンクリートブロック台は、石製ブロック台に比べて安価に製造できる。
【0019】
本発明に係る精密機械装置用の架台は、全部又は任意のコンクリートブロック台が上記見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げることができるコンクリートブロック台で構成されているので、精密機械装置用の架台として好適に用いることができる。しかも、コンクリートブロック台で架台を構成しているので、安価に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
先ず、請求項1〜5に記載した発明に係るコンクリートブロック台の実施形態を、図1及び図2に基づいて説明する。本発明に係るコンクリートブロック台1は、例えば図2に示すような直線加速器施設の加速管2(特に、マグネット部3)の支持手段として好適に用いられる。
【0021】
コンクリートブロック台1は、通例のコンクリートブロック台と同様に、水平に整地された剛強な床(図2では岩盤4)の上面に設置されるコンクリート成形品であるが、その内に冷却媒体5を循環させるための配管6が埋め込まれている。
【0022】
冷却媒体5は、通例の冷却媒体として用いられる流体であれば良いが、精密機械装置を高精度に支持する必要がある場合は、恒温に管理された又は雰囲気温度より温度変化(温度の変動幅)の小さい冷却水が用いられる(請求項3記載の発明)。配管6より内側のコンクリートの熱膨張は、配管6内を流れる流体の温度変動が支配的となり、結果としてコンクリートブロック台1全体としての熱膨張の低減につながる。
【0023】
配管6は、冷却媒体5とコンクリートブロック台1との熱交換を阻害しない材料(例えば、アルミニウムや鉄などの金属類、但しこれに限らない。)で構成されており、図1に示すようにコンクリートブロック台1の外周部に沿ってスパイラル状に埋め込まれている(請求項2記載の発明)。具体的には、前記配管6はコンクリートブロック台1の見かけの熱膨張係数が石や岩盤の熱膨張係数(約0.5〜0.8×10−5/℃)以下と成るように、例えば半径Rが250mmで高さHが680mmのコンクリートブロック台1には、外周部から30mm程度内方の位置に高さ方向のピッチTが160mmのスパイラル状に埋め込まれる(請求項5記載の発明)。配管6はコンクリートブロック台1の外周部に沿って配置されているので、雰囲気温度による熱がコンクリートブロック台1の外周面から伝わろうとしても、その熱は内部に伝わらずに冷却されるので、見かけの熱膨張係数を下げることができる。そのため、雰囲気温度に影響を受けずに精密機械装置(マグネット部3)を常に精度良く支持することができる。
【0024】
ちなみに、図2に示すように、コンクリートブロック台1を直線加速器施設のマグネット部3の支持手段として用いた場合は、同コンクリートブロック台1の配管6を、精密機械装置である加速管用の冷却水を循環させるための配管7と接続し、コンクリートブロック台1の冷却媒体5として恒温に管理されている前記加速管用の冷却水を循環させると、合理的である(請求項4記載の発明)。
【0025】
上記コンクリートブロック台1は、見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げることができる構成とされているので、雰囲気温度に影響を受けることなく精密機械装置を常に精度良く支持することができる。しかも、コンクリートブロック台1は、石製ブロック台に比べて安価に製造できる。
【0026】
次に、請求項6、7に記載した発明に係る上記コンクリートブロック台1を用いた精密機械装置用の架台の実施形態を説明する。
図2に例示する架台8は、直線加速器施設の加速管用の架台として構成されている。具体的には、加速管2を支持する複数のコンクリートブロック台9…が略一定の間隔で岩盤4に設置されており、マグネット部3の支持手段として用いられる(図示例では4個おきの)コンクリートブロック台9が上記構成のコンクリートブロック台1で構成されている。前記コンクリートブロック台1(9)の配管6は加速管用の冷却水を循環させるための配管7と接続されており、同コンクリートブロック台1(9)の配管6内に、恒温に管理された加速管用の冷却水を循環させることによって、マグネット部3を支持するコンクリートブロック台1(9)の見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げる構成とされている(請求項6及び7記載の発明)。
【0027】
上記架台8は雰囲気温度に影響を受けずにマグネット部3を常に精度良く支持することができるので、加速管2の内部を流れるビームの方向制御に悪影響を与えることがなく、直線加速器施設の加速管用の架台として好適に用いることができる。しかも、コンクリートブロック台9(1)で架台を構成しているので、安価に構築することができる。
【0028】
上記実施形態の配管6はスパイラル状に埋め込まれているが、コンクリートブロック台1の外周部に沿って埋め込まれていれば良く、特に配置は限定されない。また、配管6は図2に示すように加速管用の冷却水を循環させるための配管7と接続されているが、支持する精密機械装置によって異なることは勿論のことである。
【0029】
上記実施形態の架台8は直線加速器施設の加速管用の架台として構成されているが、何ら限定されず、精密機械装置の種類にかかわらず、精密機械装置用の架台として好適に用いることができ、安価に構築することができることに変わりない。
【0030】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るコンクリートブロック台の構造図である。
【図2】本発明に係る精密機械装置用の架台の実施形態を示した概略図である。
【符号の説明】
【0032】
1 コンクリートブロック台
2 直線加速器施設の加速管
3 マグネット部
4 岩盤
5 冷却媒体
6 配管
7 精密機械装置の冷却水を循環させるための配管
8 架台
9 コンクリートブロック台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精密機械装置を支持するコンクリートブロック台であって、
コンクリートブロック台の内部に冷却媒体を循環させるための配管が埋め込まれており、当該配管に冷却媒体を循環させることによって、コンクリートブロック台の見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げる構成とされていることを特徴とする、コンクリートブロック台。
【請求項2】
配管はコンクリートブロック台の外周部に沿ってスパイラル状に埋め込まれていることを特徴とする、請求項1に記載したコンクリートブロック台。
【請求項3】
冷却媒体には、恒温に管理された又はコンクリートブロック台の周辺温度より温度変化の小さい冷却水が用いられることを特徴とする、請求項1に記載したコンクリートブロック台。
【請求項4】
配管は利用可能な冷却水を循環させるための配管と接続されており、コンクリートブロック台の冷却媒体として恒温に管理された前記利用可能な冷却水を循環させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載したコンクリートブロック台。
【請求項5】
コンクリートブロック台の見かけの熱膨張係数を、石や岩盤の熱膨張係数以下に下げることを特徴とする、請求項1に記載したコンクリートブロック台。
【請求項6】
精密機械装置を支持する複数のコンクリートブロック台が所定の位置に設置されていること、
全部又は任意のコンクリートブロック台の内部に冷却媒体を循環させるための配管が埋め込まれており、当該配管に冷却媒体を循環させることによって、前記コンクリートブロック台の見かけの熱膨張係数を所定の値以下に下げる構成とされていることを特徴とする、精密機械装置用の架台。
【請求項7】
複数のコンクリートブロック台は、直線加速器施設の加速管の支持手段として略一定の間隔で岩盤に設置されていること、
加速管のマグネット部を支持するコンクリートブロック台の内部に冷却水を循環させるための配管が埋め込まれており、この配管は加速管用の冷却水を循環させるための配管と接続され、コンクリートブロック台の冷却媒体として恒温に管理された前記加速管用の冷却水を循環させることを特徴とする、請求項6に記載した精密機械装置用の架台。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−310218(P2006−310218A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134019(P2005−134019)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】