説明

コンクリート土間の支持構造及び施工方法

【課題】コンクリート土間11の沈下や不陸の発生を抑制すると共に、コンクリート土間11を構築する際の施工効率を向上させて施工コストを低減し、品質の高いコンクリート土間の支持構造及び施工方法を提供する。
【解決手段】既存の軟弱地盤G1に、この軟弱地盤G1に打設されると共にその下層の支持地盤G2に達しない沈下抑制杭221を含む浮上支持体22が設けられ、軟弱地盤G1及び浮上支持体22の上に荷重伝達層21を介してコンクリート土間11が支持される。このため、コンクリート土間11からの鉛直荷重Wは、荷重伝達層21を介して沈下抑制杭221を含む浮上支持体22に伝達され、前記荷重伝達層21及び浮上支持体22を介して軟弱地盤G1に伝達されるので、過大な支持力によるコンクリート土間11の不陸の発生が有効に吸収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱な地盤上に建設され1階床がコンクリート土間からなる建物におけるコンクリート土間の支持構造及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば物流施設、倉庫、工場、店舗など、1階床がコンクリート土間からなる建物の建築において、地盤中に存在する軟弱層によって、コンクリート土間(1階床)に使用上の不都合が生じるほどの圧密沈下が予想される場合、その沈下を抑制するために、コンクリート土間の下に、コンクリート土間の荷重あるいはコンクリート土間とその上に積載される物体の荷重のみを負担する土間受け杭を打設することが知られている。
【0003】
図11は、土間受け杭による従来のコンクリート土間の支持構造を示す断面図で、すなわち参照符号Gは軟弱地盤G1及びその下層の堅固な支持地盤G2からなる既存地盤、21は既存地盤G(軟弱地盤G1)上に盛土され固結材の混合により形成された改良地盤、101は改良地盤21から軟弱地盤G1中を支持地盤G2に達する土間受け杭、102は改良地盤21上に打設され土間受け杭101の杭頭に結合されたコンクリート土間である。なお、同様の技術が下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−207118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の技術によれば、支持地盤G2に達する土間受け杭101の許容支持力が大きすぎるため、軟弱地盤G1中の軟弱粘性土層などが上方からの荷重により圧密されて圧密沈下層G1aを生じると、これによって、土間受け杭101の杭頭101aから離れた位置でコンクリート土間102が沈下するのに対して、土間受け杭101で支持された位置ではコンクリート土間102は沈下しない。このため、相対的な「突上げ」によりコンクリート土間102に不陸を生じて使用上支障を生じるおそれがあった。
【0006】
したがって、土間受け杭101に支持されたコンクリート土間102を採用するには、コンクリート土間102の荷重やコンクリート土間102上に積載される載荷物の荷重あるいは改良地盤21の荷重による圧密沈下層G1aの圧密量(沈下量)を精度よく予測するか、沈下による相対的な「突上げ」が生じても問題がないように、コンクリート土間102を厚いスラブにする必要がある。しかし、スラブを厚くすると、沈下量を増すことになるばかりか、施工コストも嵩み、しかも剛性が大きくなるために僅かな沈下でもひび割れを生じやすくなるといった問題が指摘される。
【0007】
また、既存地盤G上に改良地盤21を施工する前は、図12に示されるように、土間受け杭101の頭部101aが既存地盤Gの表面GLから突出した状態にあるため、改良地盤21の構築のための盛土作業や固結材の混合攪拌、転圧・締固めなどの作業には、大型重機が使用できず、あるいは使用しても効率が著しく低下したり、改良地盤21の品質が低下したりするおそれがある。このため、改良地盤21の施工には、比較的小型の重機や、転圧・締固め機械を使用することを余儀なくされ、施工効率が上がらないといった問題が指摘される。
【0008】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、コンクリート土間の沈下や不陸の発生を抑制すると共に、コンクリート土間11を構築する際の施工効率を向上させて施工コストを低減し、品質の高いコンクリート土間の支持構造及び施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るコンクリート土間の支持構造は、既存の軟弱地盤に、この軟弱地盤に打設されると共にその下層の支持地盤に達しない沈下抑制杭を含む浮上支持体が設けられ、前記軟弱地盤及び浮上支持体の上に荷重伝達層を介してコンクリート土間が支持されたものである。このため、コンクリート土間からの鉛直荷重は、荷重伝達層を介して沈下抑制杭を含む浮上支持体に伝達され、前記荷重伝達層及び浮上支持体を介して軟弱地盤に伝達されるので、その圧密沈下が有効に抑制される。また、前記荷重伝達層はコンクリート土間からの鉛直荷重を平面方向へ拡散させながら伝達し、沈下を均一化させる作用を有する。
【0010】
請求項2の発明に係るコンクリート土間の支持構造は、請求項1に記載された浮上支持体が、軟弱地盤上に設けられると共に沈下抑制杭の杭頭に支持された荷重受け板を備え、この荷重受け板の平面投影面積が沈下抑制杭の杭径より大きいものである。
【0011】
請求項3の発明に係るコンクリート土間の支持構造は、請求項1に記載された浮上支持体が、沈下抑制杭の杭頭に形成された拡張部を備え、この拡張部が、平面投影面積が上側ほど大きくかつ前記沈下抑制杭の本体部分の杭径より大きい円錐又は多角錐状をなすものである。
【0012】
請求項4の発明に係るコンクリート土間の支持構造は、請求項1に記載された荷重伝達層が、改良地盤による盛土又は砕石層からなるものである。
【0013】
請求項5の発明に係るコンクリート土間の支持構造は、請求項1に記載された荷重伝達層が、弾性変形可能な緩衝材からなるものである。
【0014】
請求項6の発明に係るコンクリート土間の施工方法は、請求項1の発明に係るコンクリート土間の支持構造を構築するため、既存の軟弱地盤にその下層の支持地盤に達しない沈下抑制杭を打設してこの沈下抑制杭を含む浮上支持体を施工する工程と、前記軟弱地盤及び浮上支持体の上に荷重伝達層を形成する工程と、この荷重伝達層の上にコンクリート土間を施工する工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係るコンクリート土間の支持構造によれば、従来ではコンクリート土間に使用上問題となる沈下を生じるような鉛直荷重が作用しても、この荷重は荷重伝達層及び浮上支持体を介して軟弱地盤に伝達されるので、その沈下が有効に抑制されると共に、相対的な「突上げ」による不陸の発生も抑制される。しかもこのため、コンクリート土間を厚いスラブとする必要がなく、施工コストを低減することができる。
【0016】
請求項2又は3の発明に係るコンクリート土間の支持構造によれば、鉛直荷重に対する浮上支持体の支持力が向上するため、沈下やそれによる不陸の発生を一層有効に抑制することができる。
【0017】
請求項4の発明に係るコンクリート土間の支持構造によれば、改良地盤、盛土、又は砕石層からなる荷重伝達層の適度な変形性によって、不陸の発生を有効に吸収することができる。
【0018】
請求項5の発明に係るコンクリート土間の支持構造によれば、緩衝材からなる荷重伝達層の適度な変形性によって、不陸の発生を有効に吸収することができる。
【0019】
請求項6の発明に係るコンクリート土間の施工方法によれば、既存の軟弱地盤に打設した沈下抑制杭が、荷重伝達層を改良地盤あるいは盛土により施工する際の障害とならないため、大型の重機や大型の転圧・締固め機械を用いて効率良く施工することができ、その結果、施工の低コスト化が可能であると共に、品質の高いコンクリート土間の支持構造を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るコンクリート土間の支持構造の、第一の形態を示す断面図である。
【図2】第一の形態の支持構造の施工過程を示す断面図である。
【図3】第一の形態において、既存地盤の表層部に改良地盤を形成した例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例の支持構造による効果を、従来の支持構造(比較例1,比較例2)と比較して示す線図である。
【図5】実施例,比較例1,比較例2の支持構造を示す断面図である。
【図6】本発明に係るコンクリート土間の支持構造の、第二の形態を示す断面図である。
【図7】本発明に係るコンクリート土間の支持構造の、第三の形態を示す断面図である。
【図8】本発明に係るコンクリート土間の支持構造の、第四の形態を示す断面図である。
【図9】本発明に係るコンクリート土間の支持構造を、コンクリート土間を有する建物の施工に適用した施工例を示す断面図である。
【図10】図9における荷重受け板を示す平面図である。
【図11】土間受け杭による従来のコンクリート土間の支持構造を示す断面図である。
【図12】従来のコンクリート土間の支持構造を施工する過程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、本発明に係るコンクリート土間の支持構造の、第一の形態を示す断面図である。
【0022】
図1において、参照符号Gは軟弱地盤G1及びその下層の堅固な支持地盤G2からなる既存地盤である。軟弱地盤G1には、軟弱地盤G1へ鉛直に打設された沈下抑制杭221からなる浮上支持体22が設けられ、軟弱地盤G1及び浮上支持体22の上には適当な層厚の改良地盤21が形成され、この改良地盤21の上にコンクリート土間11が構築されている。
【0023】
改良地盤21は請求項1に記載の荷重伝達層であって、土材にセメントなどの固化材を添加して混合・撹拌し、転圧することによって、コンクリート土間11やその上に積載される保管物などの重量による鉛直荷重に対する支持力を発現したものである。したがってこの改良地盤21は、コンクリート土間11からの鉛直荷重Wを平面方向へ拡散させながら、その底面21aから軟弱地盤G1へ伝達し、軟弱地盤G1の圧密沈下を均一化させる作用を有する。
【0024】
また、沈下抑制杭221としては、既製杭の打設によるものや、場所打ち杭、あるいはソイルセメントコラムなどを好適に採用することができる。この沈下抑制杭221の杭頭は改良地盤21の底面21a又はその付近に位置しており、下端が支持地盤G2に達しない長さとなっている。
【0025】
上記構成を備えるコンクリート土間11の施工においては、図2に示されるように、まず既存地盤Gにおける軟弱地盤G1へ沈下抑制杭221を打設することにより浮上支持体22の施工を行う。このとき、沈下抑制杭221は、その杭頭が既存地盤Gの表面GLから突出しないように打設する。
【0026】
次に、沈下抑制杭221の打設や基礎工事の施工に伴って発生した土材などを既存地盤G(軟弱地盤G1)上に盛り立て、固化材を添加し、混合攪拌し、転圧することにより改良地盤21を構築する。このとき、浮上支持体22としての沈下抑制杭221の杭頭が既存地盤G(軟弱地盤G1)の表面GLから突出していないので、改良地盤21を施工するために重機によって土材などを盛り立てたり固化材を混合攪拌し転圧したりする際の障害とならず、大型の重機や大型の転圧・締固め機械が縦横に自在に走行することができる。このため、改良地盤21を効率よく施工することができ、その結果、施工の低コスト化が可能であると共に品質の高い改良地盤21を構築することができる。
【0027】
改良地盤21の施工が終わったら、この改良地盤21上に、通常の方法によってコンクリート土間11を施工する。
【0028】
なお、改良地盤21は、砕石や再生砕石などを混合した盛土地盤あるいは砕石層などからなるものに代えてもよい。また、この改良地盤21は、図3に示されるように既存地盤Gの表層部に形成しても良いが、この場合の施工においては、沈下抑制杭221の打設に際して、その頭部が改良地盤の底面となる深さに位置するように打ち込む。
【0029】
上述の形態によれば、コンクリート土間11の荷重と、このコンクリート土間11上に積載される載荷物の荷重の和による鉛直荷重Wは、荷重伝達層である改良地盤21を介して沈下抑制杭221(浮上支持体22)及び軟弱地盤G1に伝達される。そして、沈下抑制杭221と軟弱地盤G1との間に、沈下抑制杭221の下端側ほど大きくなる抵抗力Fを生じるため、鉛直荷重Wが、従来ではコンクリート土間11に使用上問題となる沈下を生じるような大きなものであっても、沈下抑制杭221の抵抗力Fによって沈下が有効に抑制され、言い換えれば、軟弱地盤G1中の軟弱粘性土層などが圧密されることにより生じる圧密沈下層G1aの圧密(沈下)が低減される。
【0030】
また、沈下抑制杭221は軟弱地盤G1の下層の堅固な支持地盤G2に達するものではないため、ある程度の沈下は許容するものであり、したがって過大な支持力によるコンクリート土間11の相対的な「突上げ」が抑制される。また、改良地盤21(あるいは砕石層など)からなる荷重伝達層は、沈下抑制杭221とコンクリート土間11との間である程度の変形を許容する緩衝性を有し、しかもコンクリート土間11からの鉛直荷重Wを平面方向へ拡散させながら伝達して軟弱地盤G1の圧密沈下を均一化させる作用を有するため、コンクリート土間11の不陸の発生が有効に吸収される。したがって、コンクリート土間11を厚いスラブとする必要がなく、施工コストを低減することができる。
【0031】
更に、沈下抑制杭221は軟弱地盤G1の水平剪断力を向上させるため、地震が発生したときの液状化現象なども有効に抑制することができる。
【0032】
なお、沈下抑制杭221の摩擦による抵抗力Fは、沈下抑制杭221の長さが長いほど大きなものとなるので、予測される圧密沈下量を考慮して適切に設定される。
【0033】
図4は、本発明の支持構造による効果を、従来の支持構造と比較して示す線図である。この線図における実施例は、図5(A)に示されるように、軟弱地盤G1及び沈下抑制杭221の上に改良地盤21を介してコンクリート土間11を支持し、すなわち上述した形態と同様に構成したものであり、図4の線図における比較例1は、図5(B)に示されるように、コンクリート土間11の一部を沈下抑制杭221の杭頭によって当接支持し、すなわち先に説明した図11と同様に構成したものであり、図4の線図における比較例2は、図5(C)に示されるように、沈下抑制杭221によるコンクリート土間11の支持のない構造としたものである。
【0034】
図4の線図から、コンクリート土間11を沈下抑制杭221で直接支持した比較例1では、沈下抑制杭221による支持力が大きすぎて、その周囲の沈下に伴い、コンクリート土間11に相対的な突上げによる大きな不陸が生じ、沈下抑制杭221による支持のない比較例2では、コンクリート土間11に大きな沈下を生じるのに対し、実施例によれば、比較例2に比較して沈下が低減されると共に、相対的な突上げによる不陸も防止されることがわかる。
【0035】
図6は、本発明に係るコンクリート土間の支持構造の、第二の形態を示す断面図である。この第二の形態において、先に説明した図1に示される第一の形態と異なるところは、浮上支持体22が、軟弱地盤G1上(軟弱地盤G1と改良地盤21との間)に設置された荷重受け板222を含むことにある。荷重受け板222は、平面投影面積が沈下抑制杭221の杭径よりも十分に大きいものであって、プレキャストコンクリート版からなるものや、場所打ちコンクリートの打設によるものや、防錆加工した鉄板からなるものなどが好適に採用可能であり、好ましくは沈下抑制杭221の杭頭に結合される。その他の部分は、基本的に図1と同様に構成することができる。
【0036】
したがって第二の形態によれば、コンクリート土間11の荷重と、このコンクリート土間11上に積載される載荷物の荷重の和による鉛直荷重Wは、荷重伝達層である改良地盤21から荷重受け板222を介して沈下抑制杭221へ伝達されるので、より大きな面積で鉛直荷重Wを支持することができる。
【0037】
図7は、本発明に係るコンクリート土間の支持構造の、第三の形態を示す断面図である。この第三の形態において、先に説明した図1に示される第一の形態と異なるところは、浮上支持体22が、沈下抑制杭221の杭頭に形成された拡張部223を備えることにある。拡張部223は、平面投影面積が上側ほど大きくかつ沈下抑制杭221の杭径より大きい円錐又は多角錐状をなす。その他の部分は、基本的に図1と同様に構成することができる。
【0038】
したがって第三の形態によれば、コンクリート土間11の荷重と、このコンクリート土間11上に積載される載荷物の荷重の和による鉛直荷重Wは、荷重伝達層である改良地盤21から拡張部223を介して沈下抑制杭221へ伝達されるので、沈下抑制杭221の杭頭より大きな面積で鉛直荷重Wを支持することができる。しかも拡張部223に伝達される鉛直荷重によって、拡張部223のテーパ状の側面223aが周囲の地盤を押し広げるように作用するため、沈下に対する抵抗力が向上する。
【0039】
図8は、本発明に係るコンクリート土間の支持構造の、第四の形態を示す断面図である。この第四の形態において、先に説明した図1に示される第一の形態と異なるところは、コンクリート土間11と既存地盤G(軟弱地盤G1)との間に介在する荷重伝達層が、改良地盤21と、緩衝材23からなることにある。緩衝材23は浮上支持体22(沈下抑制杭221)の設置位置の真上に設けられており、ゴム材料やゴム状弾性を有する合成樹脂材料、あるいはアスファルトなど、弾性変形可能な材料からなるものである。その他の部分は、基本的に図1と同様に構成することができる。
【0040】
したがって第四の形態によれば、コンクリート土間11の荷重と、このコンクリート土間11上に積載される載荷物の荷重の和による鉛直荷重Wは、沈下抑制杭221の設置位置の周囲では改良地盤21を介して軟弱地盤G1へ伝達されるのに対し、沈下抑制杭221の設置位置では、緩衝材23を介して沈下抑制杭221に伝達されることになる。このため、鉛直荷重Wに対する支持力が緩衝材23の変形特性によって緩和されるので、沈下抑制杭221の設置位置の周囲の沈下に伴う沈下抑制杭221の相対的な突上げによる不陸の発生を、有効に吸収することができる。
【0041】
なお、図8に示される浮上支持体22も、沈下抑制杭221の上に、先に説明した図6のような荷重受け板222や、図7のような拡張部223を設けた構成とすることができる。
【0042】
次に図9は、本発明に係るコンクリート土間の支持構造を、コンクリート土間を有する建物の施工に適用した施工例を示す断面図、図10は、図9における荷重受け板を示す平面図である。
【0043】
図9において、参照符号10は例えば物流施設、倉庫、工場、店舗などとして使用される建物で、軟弱地盤G1の上に建てられ、1階床がコンクリート土間11からなる。
【0044】
建物10の柱12は、軟弱地盤G1の下層の堅固な支持地盤G2へ達するように既存地盤Gに打設された支持杭13に、鉄筋コンクリートによる基礎梁14を介して支持されており、コンクリート土間11は、軟弱地盤G1の上に改良地盤21又は砕石層を介して施工されている。
【0045】
既存地盤Gにおける軟弱地盤G1には、支持杭13及び基礎梁14による建物10の支持位置の間に位置して浮上支持体22が設けられている。この浮上支持体22は、軟弱地盤G1へ鉛直に打設されると共に下端が支持地盤G2に達しない沈下抑制杭221と、軟弱地盤G1上に設置されると共に前記沈下抑制杭221の杭頭に結合された荷重受け板222とからなり、図10に示されるように、4本の沈下抑制杭221の杭頭が、それぞれ正方形状の荷重受け板222における4つの角部近傍に結合されている。
【0046】
上述の建物10の施工においては、まず既存地盤Gへの支持杭13の打設や鉄筋コンクリートによる基礎梁14の施工といった基礎工事と並行して、軟弱地盤G1へ沈下抑制杭221を打設し、軟弱地盤G1上へ荷重受け板222を設置して沈下抑制杭221の杭頭と結合するといった浮上支持体22の施工を行う。
【0047】
次に、支持杭13及び沈下抑制杭221の打設や基礎梁14の施工に伴って発生した土材などを既存地盤G(軟弱地盤G1)上に盛り立てて固化材を添加し、混合攪拌して転圧することにより、荷重伝達層としての改良地盤21を構築する。このとき、基礎梁14で区画された領域では、浮上支持体22が既存地盤Gの表面GLから突出していないので、重機によって土材などを盛り立てたり固化材を混合・攪拌して転圧したりする際の障害とならず、大型の重機や大型の転圧・締固め機械が縦横に自在に走行することができる。このため、効率よく混合攪拌や転圧を行うことができ、その結果、施工の低コスト化が可能であると共に、品質の高い改良地盤21を施工することができる。
【0048】
改良地盤21の施工が終わったら、この改良地盤21上に、通常の方法によって1階床のコンクリート土間11を施工する。そしてその後の建物10の施工も、通常と同様に行われる。
【0049】
上述の建物10によれば、コンクリート土間11の荷重と、このコンクリート土間11上に積載される載荷物の荷重の和による鉛直荷重W1は、図9に示される支持杭13及び基礎梁14による支持位置付近では、コンクリート土間11の剛性によって、基礎梁14及び支持杭13に伝達される。
【0050】
一方、支持杭13及び基礎梁14による支持位置から離れた位置では、コンクリート土間11の荷重と、このコンクリート土間11上に積載される載荷物の荷重の和による鉛直荷重W2は、荷重伝達層である改良地盤21を介して浮上支持体22の荷重受け板222に伝達され、更にこの浮上支持体22の沈下抑制杭221から既存地盤G(軟弱地盤G1)に伝達される。このため、鉛直荷重W2が、従来ではコンクリート土間11に使用上問題となる沈下を生じるような大きなものであっても、浮上支持体22と軟弱地盤G1間に生じる抵抗力によって沈下が有効に抑制され、しかも相対的な「突上げ」によるコンクリート土間11の不陸の発生が有効に吸収される。
【符号の説明】
【0051】
10 建物
11 コンクリート土間
12 柱
13 支持杭
14 基礎梁
21 改良地盤(荷重伝達層)
21a 底面
22 浮上支持体
23 緩衝材
221 沈下抑制杭
222 荷重受け板
223 拡張部
G 既存地盤
G1 軟弱地盤
G1a 圧密沈下層
G2 支持地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の軟弱地盤に、この軟弱地盤に打設されると共にその下層の支持地盤に達しない沈下抑制杭を含む浮上支持体が設けられ、前記軟弱地盤及び浮上支持体の上に荷重伝達層を介してコンクリート土間が支持されたことを特徴とするコンクリート土間の支持構造。
【請求項2】
浮上支持体が、軟弱地盤上に設けられると共に沈下抑制杭の杭頭に支持された荷重受け板を備え、この荷重受け板の平面投影面積が沈下抑制杭の杭径より大きいことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート土間の支持構造。
【請求項3】
浮上支持体が、沈下抑制杭の杭頭に形成された拡張部を備え、この拡張部が、平面投影面積が上側ほど大きくかつ前記沈下抑制杭の本体部分の杭径より大きい円錐又は多角錐状をなすことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート土間の支持構造。
【請求項4】
荷重伝達層が、改良地盤による盛土、又は砕石層からなることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート土間の支持構造。
【請求項5】
荷重伝達層が、弾性変形可能な緩衝材からなることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート土間の支持構造。
【請求項6】
請求項1の発明に係るコンクリート土間の支持構造を構築するため、既存の軟弱地盤にその下層の支持地盤に達しない沈下抑制杭を打設してこの沈下抑制杭を含む浮上支持体を施工する工程と、前記軟弱地盤及び浮上支持体の上に荷重伝達層を形成する工程と、この荷重伝達層の上にコンクリート土間を施工する工程と、を備えることを特徴とするコンクリート土間の施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−196346(P2010−196346A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42023(P2009−42023)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】