説明

コンクリート天端表示具

【課題】 天端表示部の位置調整を短時間で行なうことができ、これにより、作業能率を高めることができるコンクリート天端表示具の提供。
【解決手段】 縦筋5または横筋6に対し取り付け固定可能な取付手段1と、該取付手段1に設けられた縦孔14に対し上方へ抜き取り可能に下端が圧入されたポール2と、該ポール2に対し上下移動可能に装着される天端位置表示板32を備えた天端表示部材3と、該天端表示部材3をポール3の任意の移動位置で固定可能な固定手段4と、で構成され、固定手段4が小径部31aの外周に装着固定されたナット状金具41と、該ナット状金具41の側壁を貫通する状態で形成された雌ねじ孔41aに対し螺合される蝶ねじ42とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋造床コンクリートの敷設作業において、打設するコンクリートの天端位置を表示するためのコンクリート天端表示具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の天端表示具としては、例えば図5に示すように、一端にナット101を備え、他端に鉄筋102に着脱可能に取り付ける鉄筋取付部103aが形成された取付金具103と、下部に前記ナット101に進退可能に螺合する調整ボルト104aを備えた天端表示部材104とからなるものが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】実公平7−56452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来例の天端表示具にあっては、ナット101に対し調整ボルト104aのねじ込み量を調整することにより、天端表示部材104の位置調整を行なうものであったため、ねじピッチとの関係で位置調整に時間がかかり、作業能率が悪いという問題があった。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、天端表示部の位置調整を短時間で行なうことができ、これにより、作業能率を高めることができるコンクリート天端表示具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載のコンクリート天端表示具は、鉄筋に対し取り付け固定可能な取付手段と、該取付手段に設けられた縦孔に対し上方へ抜き取り可能に下端が圧入されたポールと、該ポールに対し上下移動可能に装着される天端表示部を備えた天端表示部材と、該天端表示部材を前記ポールの任意の移動位置で固定可能な固定手段と、で構成されていることを特徴とする手段とした。
【0007】
請求項2記載のコンクリート天端表示具は、請求項1に記載のコンクリート天端表示具において、前記ポールが可撓性材料で構成されていることを特徴とする手段とした。
【0008】
請求項3記載のコンクリート天端表示具は、請求項1または2に記載のコンクリート天端表示具において、前記天端表示部材が、前記ポールの外周に上下移動自在に装着可能な筒部と、該筒部の下端に形成された板状の天端表示部とで構成され、前記固定手段が、前記天板表示部材の筒部側壁に螺合された蝶ねじで構成されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のコンクリート天端表示具では、上述のように、天端表示部を備えた天端表示部材がポールに対し上下移動可能に装着され、固定手段で任意の移動位置に固定できるような構造としたため、移動幅が大きくても天端表示部の位置調整を短時間で行なうことができ、これにより、作業能率を高めることができるようになるという効果が得られる。
【0010】
また、ポールは取付手段に設けられた縦孔に対し単に圧入されているだけであるため、コンクリートの打設作業が終わった段階で上方へ簡単に抜き取ることができ、これより、天端表示部材を含むポールの除去作業の能率を高めることができるようになる。
また、表面に凹凸のないポールは従来の雄ねじに比べて打設コンクリートからの抜き取りが容易である。
【0011】
請求項2記載のコンクリート天端表示具では、上述のように、前記ポールが可撓性材料で構成されることにより、コンクリート供給パイプ移動中に接触してもポールが撓むことで移動作業の妨げにならず、かつ、作業者の安全性を確保することができると共に、撓んだポールもその可撓性により元に戻るため、天端表示機能を維持させることができる。
【0012】
請求項3記載のコンクリート天端表示具では、上述のように、前記天端表示部材が、ポールの外周に上下移動自在に装着可能な筒部と、該筒部の下端に形成された板状の天端表示部とで構成されることにより、天端表示位置の調整が正確に行なえるようになる。
また、固定手段が、天板表示部材の筒部側壁に螺合された蝶ねじで構成されることにより、蝶ねじを緩めることで天端表示部の位置調整が容易に行なえるようになると共に、蝶ねじをねじ込むことにより任意の位置に固定することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
この実施例1のコンクリート天端表示具は、請求項1〜3に記載の発明に対応する。
まず、この実施例1のコンクリート天端表示具を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1はこの実施例1のコンクリート天端表示具を示す取り付け状態の正面図、図2はクリップ本体を示す正面図、図3は図1のA−A線における横断平面図である。
このコンクリート天端表示具は、取付手段1と、ポール2と、天端表示部材3と、固定手段4と、を主な構成として備えている。
【0016】
さらに詳述すると、前記取付手段1は、前記ポール2の下端部を鉄筋に対し取り付け固定するための手段であり、この実施例1では、縦筋5に取り付けるタイプについて説明する。
即ち、この取付手段1は、クリップ本体1aと、ポール取付部1bと、締結部材1cとで構成されている。
【0017】
前記クリップ本体1aは、例えば、鋼板を曲げ加工して対向する一対の平行二面部11,12と、これらを繋ぐ背面部13とを設けたコ字状に形成され、平行二面部11の中央部にはその突出方向に向けて長い長穴11aが穿設されると共に、平行二面部12の中央部にはボルト穴12aが穿設されている。なお、背面部13の中央に穿設された穴13aは、コンクリートを打設する際、背面部13内側へのコンクリートの入りをよくする役目をなす他に、後述の横筋6に取り付けるタイプである実施例2におけるクリップ本体1aとの共用化を図るために穿設されるものである。
【0018】
前記ポール2は、ジラコン等の可撓性を有する合成樹脂製の丸棒で構成されている。
前記ポール取付部1bは、外形が六角の筒状で、その軸心部には前記ポール2の下端部を挿入可能な縦孔14が設けられていて、この縦孔14内にポール2の下端部を挿入した状態で、側面から縦孔14内へ向けてスポット的にプレスしてかしめることにより、該かしめ部aの摩擦抵抗により上方へ抜き取り可能な程度に圧入された状態で組み付けられている。
【0019】
そして、このポール取付部1bは、前記クリップ本体1におけるボルト穴12aが穿設された平行二面部12と背面部13との接続コーナ部の内側に接着剤または溶接により固定されている。
なお、前記クリップ本体1aの平行二面部11とポール取付部1bとの間に縦筋5を挿入可能な空間が形成されるように、前記背面部13の長さが設定されている。
【0020】
前記締結部材1cは、クリップ本体1aに対し縦筋5を締結固定する役目をなすもので、終端が幅広の楔状頭部15を有する締結ボルト16と、該締結ボルト16に螺合される締結ナット17とで構成されている。
前記楔状頭部15は、前記平行二面部11に穿設された長穴11aに挿入可能でその幅広の終端部が長穴11aの長手方向幅より幅広になるように形成されている。
【0021】
前記天端表示部材3は、天端位置を表示する役目をなすもので、前記ポール2の外周に上下移動自在に装着可能な円筒部31と、該円筒部41の下端に形成された円盤状の天端位置表示板(板状の天端表示部)32とを備え、合成樹脂により一体に形成されている。
【0022】
前記固定手段4は、前記天端表示部材3をポール2の任意の移動位置で固定する役目をなすもので、前記円筒部31の上端側に形成された小径部31aの外周に装着固定されたナット状金具41と、該ナット状金具41の側壁を貫通する状態で形成された雌ねじ孔41aに対し螺合される蝶ねじ42とで構成されている。
【0023】
そして、この蝶ねじ42をねじ込むことにより、該蝶ねじ42の先端が円筒部31の上端側に形成された小径部31aの側壁を内側へ押し込んでポール2に圧接させ、これにより、天端表示部材3をポール2の所定位置に固定することができるようになっている。
【0024】
次に、この実施例1の作用・効果を説明する。
この実施例1のコンクリート天端表示具では、上述のように構成されるため、固定手段を構成する締結ナット17を緩めた状態で、ポール取付部1bと平行二面部11との間に形成された空間内に縦筋5を挿入させた状態で締結ボルト16に対し締結ナット17をねじ込んで行くと、楔状頭部15の一方のテーパ側面b1が縦筋5の側面に当接すると同時にもう一方のテーパ側面b2が平行二面部11に穿設された長穴の一方の内周面cに当接し、この状態で締結ナット17をさらにねじ込むことにより、楔状頭部15の一方のテーパ側面b1が鉄筋5を背面部13およびポール取付部1b方向へ押圧し、これにより、鉄筋5に対し取付手段1が固定された状態となる。
【0025】
次に、天端位置表示板32を目的の天端位置に位置調整する時は、蝶ねじ42を緩めると、ポール2に対する小径部31aの圧接状態が解除され、天端表示部材3のポール2に対する固定状態が解除されるため、ポール2に対し天端表示部材3を上下移動させて天端位置表示板32が目的の天端位置になるように調整し、この状態で蝶ねじ42をねじ込むことにより、該蝶ねじ42の先端が円筒部31の上端側に形成された小径部31aの側壁を内側へ押し込んでポール2に圧接させ、これにより、天端表示部材3をポール2の所定位置に固定することができる。
【0026】
以上詳細に説明してきたように、この実施例1のコンクリート天端表示具では、天端表示部材3がポール2に対し上下移動可能に装着され、固定手段4で任意の移動位置に固定できるような構造としたため、移動幅が大きくても天端位置表示板32の位置調整を短時間で行なうことができ、これにより、作業能率を高めることができるようになるという効果が得られる。
【0027】
また、ポール2は取付手段1に設けられた縦孔14に対し単に圧入されているだけであるため、コンクリートの打設作業が終わった段階で上方へ簡単に抜き取ることができ、これより、天端表示部材3を含むポール2の除去作業の能率を高めることができるようになる。
また、表面に凹凸のないポール2は従来の雄ねじに比べて打設コンクリートからの抜き取りが容易である。
【0028】
また、前記ポール2が可撓性材料で構成されることにより、コンクリート供給パイプ移動中に接触してもポール2が撓むことで移動作業の妨げにならず、かつ、作業者の安全性を確保することができると共に、撓んだポール2もその可撓性により元に戻るため、天端表示機能を維持させることができる。
【0029】
また、前記天端表示部材3が、ポール2の外周に上下移動自在に装着可能な円筒部31と、該円筒部31の下端に形成された円盤状の天端位置表示板32とで構成されることにより、天端表示位置の調整が正確に行なえるようになる。
【0030】
また、固定手段4が、円筒部31の上端側に形成された小径部31aの外周に装着固定されたナット状金具41と、該ナット状金具41の側壁を貫通する状態で形成された雌ねじ孔41aに対し螺合される蝶ねじ42とで構成されることにより、蝶ねじ42を緩めることで天端位置表示板32の位置調整が容易に行なえるようになると共に、蝶ねじ42をねじ込むことにより任意の位置に固定することができるようになる。
【0031】
次に、他の実施例について説明する。この他の実施例の説明にあたっては、前記実施例1と同様の構成部分については図示を省略し、もしくは同一の符号を付けてその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【実施例2】
【0032】
この実施例2は、前記ポール2の下端部を横筋6に対し取り付け固定する場合の変形例を示すものである。
即ち、この実施例2のコンクリート天端表示具は、クリップ本体1aを前記実施例1と共通にするもので、前記実施例1における場合との相違点は、図4に示すように、ポール取付部1bを背面部13に穿設された穴13aから平行二面部12の内面側に沿って挿入した状態で、該平行二面部12の内面側に接着剤または溶接により固定するようにした点のみである。
【0033】
従って、この実施例2のコンクリート天端表示具においても、前記実施例1と同様の効果が得られる。
【0034】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、実施例では、固定手段4としてナット状金具41を用い、このナット状金具41に蝶ねじ42をねじ込む蝶ねじ孔41aを形成したが、ナット状金具41を省略し、円筒部31に直接蝶ねじ孔を形成するようにしてもよい。
【0035】
また、取付手段1としては、縦筋5または横筋6に対しポール取付部1bを取り付け固定可能であれば、実施例の構造には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1のコンクリート天端表示具を示す図取り付け状態の正面図である。
【図2】実施例1のコンクリート天端表示具におけるクリップ本体を示す正面図である。
【図3】図1のA−A線における横断平面図である。
【図4】実施例2のコンクリート天端表示具を示す要部断面図である。
【図5】従来例のコンクリート天端表示具を示す正面である。
【符号の説明】
【0037】
1 取付手段
1a クリップ本体
1b ポール取付部
1c 締結部材
2 ポール
3 天端表示部材
31 円筒部
31a 小径部
32 円盤状の天端位置表示板(板状の天端表示部)
4 固定手段
41 ナット状金具
41a 雌ねじ孔
42 蝶ねじ
5 縦筋
6 横筋
11 平行二面部
11a 長穴
12 平行二面部
12a ボルト穴
13 背面部
13a 穴
14 縦孔
15 楔状頭部
16 締結ボルト
17 締結ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋に対し取り付け固定可能な取付手段と、該取付手段に設けられた縦孔に対し上方へ抜き取り可能に下端が圧入されたポールと、該ポールに対し上下移動可能に装着される天端表示部を備えた天端表示部材と、該天端表示部材を前記ポールの任意の移動位置で固定可能な固定手段と、で構成されていることを特徴とするコンクリート天端表示具。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート天端表示具において、前記ポールが可撓性材料で構成されていることを特徴とするコンクリート天端表示具。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンクリート天端表示具において、前記天端表示部材が、前記ポールの外周に上下移動自在に装着可能な筒部と、該筒部の下端に形成された板状の天端表示部とで構成され、
前記固定手段が、前記天板表示部材の筒部側壁に螺合された蝶ねじで構成されていることを特徴とするコンクリート天端表示具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−152611(P2006−152611A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342529(P2004−342529)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(594017994)ゼン技研株式会社 (17)
【出願人】(500339972)
【Fターム(参考)】