説明

コンクリート打設装置及びコンクリート打設方法

【課題】モルタルとコンクリートあるいは二種類のコンクリートを簡単かつ経済的に打ち分けることができ、施工欠陥のないコンクリート構造物を施工することのできるコンクリート打設装置及びコンクリート打設方法を提供する。
【解決手段】コンクリートを第一の供給管3から篩い4を通過させて型枠1内にモルタル又は富配合コンクリートを打設する第一の打設工程と、第一の供給管3を篩い4から取り外して型枠1内に直接、コンクリートを打設する第二の打設工程とを交互に連続して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物を施工するために使用するコンクリート打設装置及びそのコンクリート打設装置を使用したコンクリート打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の施工方法としてコンクリートポンプを使用することが一般的である(例えば、特許文献1参照)。コンクリートポンプを使用したコンクリートの打設では、打ち始めや打ち継ぎ部、又は鉄筋が密な場所ではジャンカ(豆板)や空洞などの施工欠陥がしばしば発生する。その防止のため、昭和42年版の土木学会の標準示方書では「コンクリートを打つとき、まず、コンクリート中のモルタルと同程度の配合のモルタルを打ってこれを広げ、その上にコンクリートを打つことは、コンクリートの表面がきれいにできること及び豆板のできることを防ぐために必要なことである(無筋コンクリート41条解説)」と記述されている。また、49年版では、「型枠が狭く、打ち継ぎ目が型枠の下方で、旧コンクリート面にモルタルを敷くのが困難である場合は、通常よりもモルタル分が多く粗骨材最大寸法の小さなコンクリートを最初の数バッチ打ち込むことにしてもよい(132条解説)」と記述されている。
【特許文献1】特開平11−13972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のコンクリートポンプを使用した打設は、モルタルを打設した後にコンクリートを打設しており、二種類の配合を入れ替えて打設する必要があるため手間がかかるとともに、上記打設方法を実行した場合には、打ち重ね時間を要してコールドジョイントを生じたり、打ち重ね後の振動締固めまでに長時間を要して締固め不良を生じるなど新たな施工欠陥を生じることがあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、モルタルとコンクリートあるいは二種類のコンクリートを簡単かつ経済的に打ち分けることができ、施工欠陥のないコンクリート構造物を施工することのできるコンクリート打設装置及びコンクリート打設方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、例えば図1に示すように、コンクリート打設装置100において、
鉄筋2,2,…が配筋された型枠1の開口上端部に設けられてコンクリートを供給する第一の供給管3と、
前記第一の供給管から排出された前記コンクリートを所定の粗骨材の大きさに篩い分けを行い、モルタルあるいは富配合コンクリートを製造する篩い4と、
前記篩いを前後にスライド移動自在に支持するスライド部5とを備え、
前記第一の供給管は前記篩いに着脱自在に設けられていることを特徴とする。
【0005】
請求項1の発明によれば、第一の供給管から排出されたコンクリートは、篩いがスライド部によって前後にスライド移動することにより篩い目より大きな粗骨材が篩い目上に残って除去され、篩い目を通過したモルタル又は小さな粗骨材のコンクリートが型枠内に打設される。そして、第一の供給管は篩いに着脱自在に設けられているので、篩いにより篩い分けしてモルタル又は富配合コンクリートを型枠内に打設した後、第一の供給管を篩いから取り外して、篩いを通過させずに直接、第一の供給管から型枠内にコンクリートを打設することによって、篩い分けしたものと、篩い分けしないものとで異なる種類のコンクリートを打設することができる。このように異なる種類のコンクリートを打設することで、従来より推奨されていた打設方法を実現でき、しかも、従来のようにコンクリートポンプで二種類の配合を入れ替えて打設する場合に比べて、施工作業を極めて簡略化することができる。
その結果、柱、壁など高さの高い部材の下端部、打ち継ぎ部、鉄筋量の多い梁の下端部に生じるジャンカを防止することができる。さらに、高さの高い部材の下端部や鉄筋量の多い梁、柱、壁の内部に生じる空洞を防止することができ、施工欠陥のないコンクリート構造物とすることができる。
また、コンクリートの充填性を高めるために、過度に軟練りのコンクリートを用いる必要がなくなるので、振動締め固め作業によるコンクリートの分離がなくなり、表面の水みち、砂目などの発生も防止することができる。
また、篩い目の大きさを変えることによってモルタル又は富配合コンクリートの骨材を任意の大きさに容易に変更することができる。
【0006】
請求項2の発明は、例えば図1に示すように、請求項1に記載のコンクリート打設装置において、
前記スライド部の下面には、前記型枠内の打設面に前記モルタル又は富配合コンクリートを案内して打設する第二の供給管6が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明によれば、スライド部の下面に、打設面にモルタル又は富配合コンクリートを案内して打設する第二の供給管が設けられているので、この第二の供給管によってモルタル又は富配合コンクリートを型枠内の打設面に確実に打設することができ、打設面までモルタル又は富配合コンクリートが自由落下しないので、ジャンカの発生を防止することができる。
【0008】
請求項3の発明は、例えば図1に示すように、請求項1又は2のいずれか一項に記載のコンクリート打設装置100を使用して、コンクリートを打設するコンクリート打設方法において、
前記第一の供給管からコンクリートを前記篩いに通過させて前記型枠内に前記モルタル又は富配合コンクリートを打設する第一の打設工程と、
前記第一の供給管を前記篩いから取り外して前記型枠内に直接、前記コンクリートを打設する第二の打設工程とを備え、
前記第一の打設工程と前記第二の打設工程とを、それぞれ交互に連続して行うことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明によれば、第一の供給管からコンクリートを篩いに通過させて型枠内にモルタル又は富配合コンクリートを打設する第一の打設工程と、第一の供給管を篩いから取り外して型枠内に直接、コンクリートを打設する第二の打設工程とをそれぞれ交互に連続して行うので、異なる種類のコンクリートを容易に打設でき、打ち始めあるいは打ち継ぎ部において良好なコンクリートを打設することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なる種類のコンクリートを簡単かつ容易に打ち分けて打設することができ、施工欠陥のないコンクリート構造物を施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、コンクリート打設装置100の使用状態を示した斜視図である。
図1に示すように、型枠1内には多数の鉄筋2,2,…が縦横に配されており、コンクリート打設装置100は型枠1の開口上端部に取り付けられている。コンクリート打設装置100は、コンクリートを供給する第一の供給管3と、第一の供給管3から排出されたコンクリートを所定の粗骨材の大きさに篩い分けを行い、モルタルあるいは富配合コンクリートを製造する篩い4と、篩い4を前後にスライド移動自在に支持するスライド部5とを備えている。また、スライド部5の下面には、篩い4を通過したモルタル又は富配合コンクリートが流れ込み、型枠1内の打設面にモルタル又は富配合コンクリートをガイドする第二の供給管6が接続されている。
【0012】
第一の供給管3は、例えば、フレキシブルホースから構成され、コンクリートポンプの圧送管(図示しない)の先端に接続されている。
篩い4は、下方に凸となった箱状に形成され、その底部に所定の大きさの篩い目4aが設けられている。また、篩い4には、第一の供給管3が着脱自在に固定される治具(固定部)41が設けられている。治具41は、篩い目4aの上に設けられた箱体42の上面に取り付けられて、第一の供給管3が挿入自在とされるバンド等が挙げられる。そして、第一の供給管3が治具41に固定されている場合、篩い4はコンクリートポンプの脈動に伴ってスライド部5上を前後にスライド移動し、この前後移動によって篩い4に供給されたコンクリートが篩い分けされる。
【0013】
スライド部5は、篩い4が前後にスライド自在に載置される載置部51を備え、載置部51には、篩い4で篩い分けされることにより製造されたモルタル又は富配合コンクリートが型枠1内に打設されるように上下に貫通した貫通穴52が形成されている。貫通穴52には、第二の供給管6が接続されており、篩い4で篩い分けされたモルタル又は富配合コンクリートが貫通穴52及び第二の供給管6を介して型枠1内に打設される。また、載置部51の上面外周縁には、上方に立ち上がった立ち上がり部53が形成されており、立ち上がり部53は載置部51に載置された篩い4の外周を囲むように配置されるため、篩い4が載置部51から落下しないように防止される。載置部51の幅及び長さは、篩い4の幅及び長さよりも大きく、また、型枠1の開口上端部に設置されるように開口上端部の幅、すなわち型枠1の互いに対向する壁部1a,1a間よりも若干大きく形成されている。
【0014】
第二の供給管6は、例えば、フレキシブルホースから構成され、スライド部5の下面、すなわち載置部51に形成された貫通穴52に接続されている。これによって、第一の供給管3から篩い4を通過したモルタル又は富配合コンクリートが第二の供給管6にガイドされて型枠1内の打設面に打ち込まれる。打設面としては、例えば、打ち始めの際には施工されるコンクリート構造物の下端部や、打ち継ぎの際には打ち継ぎ部へガイドする。
【0015】
次に、上述のコンクリート打設装置100を使用してコンクリートを打設するコンクリートの打設方法について説明する。
まず、型枠1内に多数の鉄筋2,2,…を縦横に配し、型枠1の互いに対向する壁部1a,1aの上端部にスライド部5を設置し、第一の供給管3からコンクリートを篩い4に流し込む。これによって篩い目4aで所定の大きさに篩い分けされ、篩い目4aより大きな粗骨材が篩い目4a上に残って除去され、篩い4を通過したモルタル又は富配合コンクリートが第二の供給管6に流れ込み、第二の供給管6によって型枠1内の打設面にガイドされて打設される(第一の打設工程)。このようにして所定量のモルタル又は富配合コンクリートが打設されたら、篩い4に固定されている第一の供給管3を取り外して、第一の供給管3からコンクリートを篩い4を通過させずに直接、型枠1内に打設する(第二の打設工程)。
このようにして篩い4を通過させてモルタル又は富配合コンクリートを打設する工程と、篩い4を通過させずに第一の供給管3から直接、型枠1内にコンクリートを打設する工程とを、型枠1の前後の位置を移動しながらそれぞれ連続的に交互に行うことによってコンクリート壁を施工する。
【0016】
以上、本発明の実施の形態によれば、第一の供給管3から篩い目4a上に排出されたコンクリートは、篩い4をスライド部5上で前後にスライド移動させることにより篩い分けされて、モルタル又は富配合コンクリートの状態で第二の供給管6を介して打設面である型枠1内の下端部に打設される。そして、第一の供給管3は篩い4の治具41に着脱自在に設けられているので、篩い分けしてモルタル又は富配合コンクリートを型枠1内に打設した後、第一の供給管3を篩い4から取り外して、篩い4を通過させずに直接、第一の供給管3から型枠1内にコンクリートを打設することによって、篩い分けしたものと、篩い分けしないコンクリートとで二種類のコンクリートを打設することができる。このように二種類のコンクリートを打設することによって、従来より推奨されていた打設方法を実現でき、しかも、従来のようにコンクリートポンプで二種類の配合を入れ替えて打設する場合に比べて、施工作業を極めて簡略化することができる。
その結果、柱、壁など高さの高い部材の下端部、打ち継ぎ部、鉄筋量の多い梁の下端部に生じるジャンカを防止することができ、さらに、高さの高い部材の下端部や鉄筋量の多い梁、柱、壁の内部に生じる空洞を防止することができ、施工欠陥のないコンクリート構造物とすることができる。
また、篩い目4aの大きさを変えることによってモルタル又は富配合コンクリートの骨材を任意の大きさに容易に変更することができる。
また、スライド部5の下面に打設面にモルタル又は富配合コンクリートを案内する第二の供給管6が設けられているので、この第二の供給管6によってモルタル又は富配合コンクリートを型枠1内の打設面に確実に打設することができ、打設面までモルタル又は富配合コンクリートが自由落下しないので、ジャンカの発生を防止することができる。
【0017】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施の形態では、コンクリート壁を施工する場合に本発明を適用したが、これに限られるものではなく、その他、コンクリート梁やコンクリート柱を施工する場合にも本発明のコンクリート打設装置100及びコンクリート打設方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コンクリート打設装置100の使用状態を示した要部斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 型枠
2 鉄筋
3 第一の供給管
4 篩い
5 スライド部
6 第二の供給管
100 コンクリート打設装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋が配筋された型枠の開口上端部に設けられてコンクリートを供給する第一の供給管と、
前記第一の供給管から排出された前記コンクリートを所定の粗骨材の大きさに篩い分けを行い、モルタルあるいは富配合コンクリートを製造する篩いと、
前記篩いを前後にスライド移動自在に支持するスライド部とを備え、
前記第一の供給管は前記篩いに着脱自在に設けられていることを特徴とするコンクリート打設装置。
【請求項2】
前記スライド部の下面には、前記型枠内の打設面に前記モルタル又は富配合コンクリートを案内して打設する第二の供給管が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打設装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載のコンクリート打設装置を使用して、コンクリートを打設するコンクリート打設方法において、
前記第一の供給管からコンクリートを前記篩いに通過させて前記型枠内に前記モルタル又は富配合コンクリートを打設する第一の打設工程と、
前記第一の供給管を前記篩いから取り外して前記型枠内に直接、前記コンクリートを打設する第二の打設工程とを備え、
前記第一の打設工程と前記第二の打設工程とを、それぞれ交互に連続して行うことを特徴とするコンクリート打設方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−88703(P2008−88703A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270916(P2006−270916)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】