説明

コンクリート構造物、及び該構造物に支持される支柱構造体

【課題】支柱構造体がコンクリート構造物に支持された状態において、前記支柱構造体が面方向へ(つまり、該コンクリート構造物の表面に沿った方向へ)移動するのを確実に阻止できるようにする。
【解決手段】コンクリート構造物1には、支柱構造体3の基端部3aを装入するための被装入手段4を設けておき、該被装入手段4には、前記支柱構造体3が挿入される挿入部4aと、該支柱構造体3が螺入される螺入部4aと、を前記支柱構造体3の装脱方向Aに沿って形成しておく。該支柱構造体3のネジ部3aを前記螺入部4aに螺合させることにより、支柱構造体3はコンクリート構造物1に支持されることとなり、該コンクリート構造物1の面方向Bへの移動を確実に阻止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床版等のコンクリート構造物、及び該コンクリート構造物に着脱可能に支持される支柱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート床版等のコンクリート構造物であって、支柱状の構造体を着脱可能に支持できるようにしたものについては、種々の構造のものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。図4は、仮設用手摺り(支柱構造体)をコンクリート床版(コンクリート構造物)に取り付けた様子の一例を示す断面図であり、符号20はコンクリート床版を示し、符号23は仮設用手摺りを示し、符号24は、コンクリート床版20を挟持して仮設用手摺り23を固定できるように構成された挟持部を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−239529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来品の場合には、仮設用手摺り23が面方向(矢印Bで示す方向)に移動しないように、挟持部24の締め付け力を十分に確保しておかなければならないという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の問題を解消することのできるコンクリート構造物及び支柱構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、図1(a) (b) に例示するものであって、支柱状である支柱構造体(3)を着脱可能に支持できるように構成されたコンクリート構造物(1)において、
前記支柱構造体(3)の基端部(3a)を装入できるように構成された被装入手段(4)、
を備え、
該被装入手段(4)は、前記支柱構造体(3)が挿入される挿入部(4a)と、該支柱構造体(3)が螺入される螺入部(4a)と、を前記支柱構造体(3)の装脱方向(A)に沿って有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記被装入手段(4)は、前記支柱構造体(3)を装入できる、鋼製の筒状部材であり、
前記螺入部(4a)は、前記支柱構造体(3)の基端部に形成されたネジ部(3a)に螺合され得るように突出された突起部(4c)を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記コンクリート構造物(1)の略全体の外形を形成する構造物本体(2)、を備え、
前記被装入手段(4)は、前記支柱構造体(3)を装入することのできる装入穴(4b)を形成した状態で前記構造物本体(2)内に埋設されてなることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記コンクリート構造物(1)の略全体の外形を形成する構造物本体(2)と、
前記コンクリート構造物(1)を吊り上げるための吊り上げ用部材(図2(a) の符号11参照)と、
を備え、
前記被装入手段(図2(a) (b) の符号14参照)は該吊り上げ用部材(11)に取り付けられてなることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記支柱構造体(3)が前記被装入手段(4)に装入された状態で、該支柱構造体(3)側のネジ部(3a)が前記被装入手段(4)側の螺入部(4a)よりも、該被装入手段(4)の奥側に配置されるように構成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発明において、前記支柱構造体(3)が、複数のパイプ部材(30,31)が連結されて構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、前記挿入部(4a)に挿入される被挿入部(3a)と、前記螺入部(4a)に螺入されるネジ部(3a)と、を備え、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコンクリート構造物(1,10)における前記被装入手段(4,14)に着脱可能に支持されることを特徴とする支柱構造体に関する。
【0013】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1,3,4,6及び7に係る発明によれば、前記装脱方向に直交する方向への支柱構造体の移動は、前記被装入手段により阻止することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、突起部はポンチ加工により簡単に形成できるので、被装入手段の製造が簡単になるという効果を奏する。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、支柱構造体が被装入手段に確実に支持されているかは、支柱構造体を軸方向に往復動させるだけで簡単に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a) は、本発明に係るコンクリート構造物等の構造の一例を示す断面図であり、同図(b)は、その拡大断面図である。
【図2】図2(a) は、本発明に係るコンクリート構造物等の構造の他の例を示す断面図であり、同図(b)は、被装入手段の外観を示す斜視図である。
【図3】図3(a) 〜(c) は、支柱構造体の装入状態の種々の態様を示す断面図である。
【図4】図4は、仮設用手摺り(支柱構造体)をコンクリート床版(コンクリート構造物)に取り付けた様子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1乃至図3に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
本発明に係るコンクリート構造物は、支柱状の構造体(以下、“支柱構造体”とする)を着脱可能に支持できるように構成されている。なお、本明細書におけるコンクリート構造物とは、コンクリート製の床版や壁や梁や柱等を含む概念であり、工場で製造する物(いわゆるプレキャスト製品)だけでなく、現場で製造する物(いわゆる現場打ち品)も含む概念である。また、本明細書における支柱構造体とは、
・ 建物を構築する際に床版に一時的に立設される仮設用手摺りや、
・ 建物を構築する際に床版や壁や柱に一時的に取り付けられる支柱
などを含む概念である。
【0020】
本発明に係るコンクリート構造物は、図1(a) (b) に符号1で例示するものであって、
・ 該コンクリート構造物1の略全体の外形を形成する構造物本体2(例えば、コンクリートや鉄筋で構成された複合体)と、
・ 支柱構造体3の基端部3aを装入できるように構成された被装入手段4と、
を備えている。そして、この被装入手段4は、前記支柱構造体3の装脱方向Aに沿って、
・ 前記支柱構造体3が挿入される挿入部4aと、
・ 該支柱構造体3が螺入される螺入部4aと、
を有している。図1(a) (b) に示す被装入手段4は、前記支柱構造体3を装入できる、鋼製の筒状部材であって、前記支柱構造体3を装入することのできる装入穴4bを形成した状態で前記構造物本体内に埋設されている。なお、コンクリート構造物がプレキャスト製品の場合には、該構造物をクレーンで吊り上げるための吊り上げ用部材(例えば、吊り上げ用のアイボルトを螺合するためのナット部材。図2(a)
の符号11参照)が構造物本体中に埋設されているのが一般的であるが、その吊り上げ用部材11(つまり、吊り上げ作業が終了してアイボルトが外された状態の吊り上げ用部材)に被装入手段14(例えば、前記支柱構造体3を装入できる、鋼製の筒状部材)を取り付けるようにしても良い。この場合の被装入手段は、図2(b)
に詳示するように、
・ 吊り上げ用部材11に螺合されるボルト部14aと、
・ 鋼製の筒状部材14bと、
により構成すると良い。そして、該筒状部材14bには、上述の挿入部や螺入部を設けておくと良い。
【0021】
ところで、上述の螺入部4aは、支柱構造体3の基端部に形成されたネジ部3aに螺合されるようなネジ部にしても良いが、図1(b) に符号4cで示すような突起部としても良い。そのような突起部4cはポンチ加工により簡単に形成できるので、被装入手段4の製造が簡単になるという効果を奏する。
【0022】
図1(a) (b) や図2(a) (b) に示すコンクリート構造物1,10では、被装入手段4,14の内部に支柱構造体3を装入するように構成されているが、その逆の構成(被装入手段の側にではなく支柱構造体の側に装入穴を形成しておいて、被装入手段を支柱構造体の装入穴に装入する構成)にしても良い。したがって、本明細書における“装入”とは、その両者、つまり、
・ 図1(a) (b) 及び図2(a) に示すように、被装入手段4,14に支柱構造体3を入れることによって該支柱構造体3を装着する態様と、
・ その逆の態様(つまり、支柱構造体に被装入手段を入れることによって該支柱構造体を装着する態様)
の両方を含む概念である。また、本明細書における“挿入”とは、
・ 図1(a) (b) 及び図2(a) に示すように、被装入手段4,14に支柱構造体3を挿し込むことによって入れる態様と、
・ その逆の態様(つまり、支柱構造体に被装入手段を挿し込むことによって入れる態様)
の両方を含む概念であって、挿入部にて被装入手段と支柱構造体とが接触しているか否かは問わない。さらに、本明細書における“螺入”とは、
・ 図1(a) (b) 及び図2(a) に示すように、支柱構造体3を被装入手段4,14にねじ入れる態様と、
・ その逆の態様(つまり、被装入手段を支柱構造体にねじ入れる態様)
の両方を含む概念である。
【0023】
なお、上述のような被装入手段4,14に装入する支柱構造体3の基端部には、
・ 該被装入手段4,14の挿入部(図1(b) の符号4a参照)に挿入される被挿入部(同図の符号3a参照)と、
・ 該被装入手段4,14の螺入部(図1(b) の符号4a参照)に螺合されるネジ部(同図の符号3a参照)と、
を形成しておくと良い。この場合、被装入手段側の螺入部の長さ寸法(符号4aで示す寸法)と、支柱構造体側のネジ部の長さ寸法(符号3aで示す寸法)とを短くしておけば(つまり、ピッチ数を少なくしておけば)、支柱構造体3を装脱着する際に回す回数を少なくでき、その作業を容易にすることができる。この支柱構造体は、単一の部材(例えば、1本のパイプ部材)で構成しても良いが、複数の部材(例えば、複数のパイプ部材)を連結して構成しても良い。図1(a) に示す支柱構造体は複数の部材で構成されており、符号30は、両端にネジが切られた連結パイプを示し、符号31は、いわゆる単管パイプを示す。このような連結パイプ30を使用すれば、色々な長さの単管パイプを接続し、支柱構造体の長さを自由に変更できる。
【0024】
ところで、支柱構造体側のネジ部3aは、当然ながら、被装入手段4に装入する際に螺入部4aに螺合される位置に形成されている必要がある。例えば、ネジ部3aが、図3(a) に示すように支柱構造体3の先端(図では下端)に形成されている場合には、螺入部4aは被装入手段4の奥側(図では下側)に形成しておく必要があり、ネジ部3aが図3(b)
に示す位置(つまり、先端よりも少し離れた位置)に形成されている場合には、螺入部4aは、それに対応した位置に形成しておく必要がある。さらには、図3(c)
に示すように、前記支柱構造体3が前記被装入手段4に装入された状態で、該支柱構造体側のネジ部3aが前記被装入手段側の螺入部4aよりも、該被装入手段4の奥側に配置されるように構成しても良い。以下、このような構成の効果について説明する。
【0025】
いま、図3(a) や(b) に示す構造のものでは、支柱構造体3がコンクリート構造物1に装着されている時は支柱構造体3のネジ部3aは被装入手段4の螺入部4aに螺合されることとなる。この場合、ネジ部3aが螺入部4aに ほんの少しだけ係止されてさえいれば、支柱構造体3は被装入手段4から抜けることは無いが、該支柱構造体3が僅かに回転されただけでネジ部3aと螺入部4aとの係合が外れてしまうおそれもある。そして、ネジ部3aと螺入部4aとが確実に係合状態にあるかどうかを確かめるには、支柱構造体3を掴んで“閉じ方向”に強く回転させる必要があり、その作業が煩雑であるという問題がある。これに対し、図3(c)
に示すような構成にすれば、支柱構造体3がコンクリート構造物1に装着されている時は支柱構造体3のネジ部3aは被装入手段4の螺入部4aに螺合されてはおらず、該支柱構造体3は 矢印Aに示す方向に 上下に僅かながらも“遊び”がある状態となる(当然ながら、支柱構造体3における、ネジ部3a以外の部分と螺入部4aとの間に隙間が形成されている必要がある)。つまり、矢印Aで示す方向に支柱構造体3を上下動させれば 該支柱構造体3は動くものの、被装入手段4から抜け出ることは無いという状態になる。したがって、支柱構造体3を抜こうとして抜けなければ、該支柱構造体3は被装入手段4に確実に支持されていることとなり、その確認作業を容易に行えるという効果がある。なお、その場合、支柱構造体3は、被装入手段4に支持されている状態でも軸方向Aには多少移動することとなるが、そのような遊びが問題にならない場合も多い。例えば、図1(a)
に示すように、コンクリート構造物としてのコンクリート床版1の端縁部に被装入手段4を設け、該被装入手段4に支柱構造体3を立設させて仮設の手摺りと利用するような場合は、該支柱構造体3には、水平方向の力や下方向の力は作用するものの、上方向の力は作用しないのが普通である。したがって、このような使用態様の場合には、図3(c)
に示すような構造は適している。
【符号の説明】
【0026】
1 コンクリート構造物
2 構造物本体
3 支柱構造体
3a 基端部
3a 被挿入部
3a ネジ部
4 被装入手段
4a 挿入部
4a 螺入部
4b 装入穴
4c 突起部
10 コンクリート構造物
11 吊り上げ用部材
14 被装入手段
30 パイプ部材
31 パイプ部材
A 支柱構造体の装脱方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱状である支柱構造体を着脱可能に支持できるように構成されたコンクリート構造物において、
前記支柱構造体の基端部を装入できるように構成された被装入手段、
を備え、
該被装入手段は、前記支柱構造体が挿入される挿入部と、該支柱構造体が螺入される螺入部と、を前記支柱構造体の装脱方向に沿って有する、
ことを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
前記被装入手段は、前記支柱構造体を装入できる、鋼製の筒状部材であり、
前記螺入部は、前記支柱構造体の基端部に形成されたネジ部に螺合され得るように突出された突起部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
前記コンクリート構造物の略全体の外形を形成する構造物本体、を備え、
前記被装入手段は、前記支柱構造体を装入することのできる装入穴を形成した状態で前記構造物本体内に埋設されてなる、
ことを特徴とする請求項2に記載のコンクリート構造物。
【請求項4】
前記コンクリート構造物の略全体の外形を形成する構造物本体と、
前記コンクリート構造物を吊り上げるための吊り上げ用部材と、
を備え、
前記被装入手段は該吊り上げ用部材に取り付けられてなる、
ことを特徴とする請求項2に記載のコンクリート構造物。
【請求項5】
前記支柱構造体が前記被装入手段に装入された状態で、該支柱構造体側のネジ部が前記被装入手段側の螺入部よりも、該被装入手段の奥側に配置されるように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項6】
前記支柱構造体は、複数のパイプ部材が連結されて構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコンクリート構造物。
【請求項7】
前記挿入部に挿入される被挿入部と、前記螺入部に螺入されるネジ部と、を備え、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコンクリート構造物における前記被装入手段に着脱可能に支持される、
ことを特徴とする支柱構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−248796(P2010−248796A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99567(P2009−99567)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(507111553)SMCテック株式会社 (5)