説明

コンクリート構造物とその製造方法及びその管理方法

【課題】コンクリート構造物におけるコンクリートの品質、施工、施工後の各種測定データ、補修・維持管理に関する情報を簡易、正確、確実に、しかも一括で管理することができ、トレーサビリティーに活用することができるコンクリート構造物とその製造方法及びその管理方法を提供する。
【解決手段】本発明のコンクリート構造物は、コンクリート体1の表面1aの近傍、かつ打設面1b近傍に、薄板状のICタグ3が、そのアンテナ部のアンテナ面がコンクリート体1の表面1aと平行になるように埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物とその製造方法及びその管理方法に関し、更に詳しくは、コンクリートの品質、施工、維持管理を、簡便、正確かつ確実に行うことが可能であり、しかも、これらの一括管理が可能なコンクリート構造物とその製造方法及びその管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート構造物や組立式コンクリート構造物等のコンクリート構造物においては、それに用いられるコンクリートに関する配合比、使用材料、フレッシュ性状、圧縮強度、塩化物含有量等の品質情報は、生コンクリートを製造した生コンクリート工場が管理している。
また、コンクリート構造物の設計に関する設計者、認可機関、設計図等の保管場所等の設計情報は、設計会社が管理している。
また、施工に関するコンクリートの供給先、製造工場、納入日、納入量、施工者等の施工情報は施工会社が管理している。
また、施工後のコンクリートに関する中性化深さ、塩分測定量等の各種測定情報や補修・維持管理に関する情報は、施工主が管理している。
このように、コンクリート構造物に関する情報は、関与する業者や施工主毎に別々に管理され、一括管理がなされていないために、簡易に入手できない場合が多く、場合によっては、必要な情報がどこにあるかはっきりしないこともあった。
【0003】
また、コンクリート構造物のコンクリートに関する品質については、調査・把握が難しく、現実的には、地震等の天災での被害や中性化、塩害、凍結融解等による劣化が生じて初めて、本来の設計方法、施工方法、材料品質が確保されていないことが判明する場合が少なくない。この場合、施工時点での設計方法、施工方法、材料品質が規格値を満足していなかったこと等が考えられるが、これらの情報は、後からトレースすることが困難な場合が多い。
また、補修日時、補修内容等の補修・維持管理に関する情報や施工後の中性化深さ、塩分測定量等の各種測定データについても、上記の品質情報と関連つけて検討することが必要であるが、このような検討は、トレースが困難な場合が多いために難しいのが現状である。
【0004】
そこで、このような問題点を解消するために、コンクリート構造物にセンサを設置し、このセンサと外部読み取り装置との間で、無線で情報のやりとりを行うことが提案されている(特許文献1)。
このコンクリート構造物では、センサーが埋め込まれた位置は、センサーから返される電波の強度、および外部の数箇所にて検知する電波の方向等により決定している。
【特許文献1】特開2001−201379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコンクリート構造物にセンサを設置した構造では、単にセンサをコンクリート構造物中に埋め込んだだけでは、センサが埋め込まれた位置を特定することが難しく、したがって、信号が検出できなかったり、あるいは信号が検出できてもその感度が低かったり等の不具合が生じる虞があるという問題点があった。
また、センサーが埋め込まれた位置を特定するには、センサーから返される電波の強度を検知すると同時に、外部の数箇所にて電波の方向を検知する必要があり、装置構成が複雑かつ高価になるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、コンクリート構造物におけるコンクリートの品質に関する情報、施工に関する情報、施工後の各種測定データ、補修・維持管理に関する情報を簡易、正確、確実に、しかも一括で管理することができ、さらにはトレーサビリティーに活用することができるコンクリート構造物とその製造方法及びその管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、薄板状の非接触通信媒体をコンクリート構造物に埋め込むようにすれば、従来のような複雑かつ高価な装置を用いることなく、コンクリート構造物におけるコンクリートの品質に関する情報、施工に関する情報、施工後の各種測定データ、補修・維持管理に関する情報を簡易、正確、確実に、しかも一括で管理することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のコンクリート構造物は、コンクリート体の打設面近傍、かつ、このコンクリート体の前記打設面以外の1つの表面の近傍に、薄板状の非接触通信媒体が埋め込まれてなることを特徴とする。
【0009】
このコンクリート構造物では、コンクリート体の打設面近傍、かつ、このコンクリート体の前記打設面以外の1つの表面の近傍に、薄板状の非接触通信媒体を埋め込んだことにより、コンクリート体に埋め込まれた非接触通信媒体の位置を特定することが容易になる。これにより、非接触通信媒体からの信号を感度良く容易に検出することが可能になり、コンクリート構造物におけるコンクリートの品質に関する情報、施工に関する情報、施工後の各種測定データ、補修・維持管理に関する情報を簡易、正確、確実に、しかも一括で管理することが可能になる。
また、このコンクリート体には、薄板状の非接触通信媒体のみが埋め込まれていることにより、非接触通信媒体を固定するための治具等がコンクリート体の中に残ることも無くなり、よって、非接触通信媒体がコンクリート構造物の強度や耐久性に影響を及ぼす虞も無くなる。
【0010】
また、この非接触通信媒体は、コンクリート構造体に関する詳細な情報を大量に読み取り/書き込みすることが可能であるから、コンクリート構造物が経年で劣化、不具合等が生じた場合であっても、劣化や不具合に至った原因を容易に解明することが可能である。
また、これらの情報は、施工後長時間経過した場合であっても読み取り/書き込み可能であるから、情報の消失、劣化等の虞もない。
【0011】
本発明のコンクリート構造物は、前記非接触通信媒体の一端部の位置が、前記コンクリート体の打設面と略一致していることを特徴とする。
このコンクリート構造物では、非接触通信媒体の一端部の位置を、コンクリート体の打設面と略一致させたことにより、このコンクリートにおける非接触通信媒体の位置が一定となる。これにより、この非接触通信媒体から情報を読み取る際に、非接触通信媒体の位置を特定するのが極めて容易となり、コンクリート構造物の管理をさらに簡便、正確かつ確実に行うことが可能になる。
【0012】
本発明のコンクリート構造物は、コンクリート体の内部に設けられた鉄筋の位置決め用部材に、非接触通信媒体が取り付けられていることを特徴とする。
このコンクリート構造物では、コンクリート体の内部に設けられた鉄筋の位置決め用部材に、非接触通信媒体を取り付けたことにより、このコンクリート構造物における非接触通信媒体の位置が一定となり、この非接触通信媒体から情報を読み取る際に、非接触通信媒体の位置を特定するのが極めて容易となる。よって、コンクリート構造物の管理をさらに簡便、正確かつ確実に行うことが可能になる。
【0013】
本発明のコンクリート構造物は、コンクリート体に薄板状の非接触通信媒体が埋め込まれてなるコンクリート部材を備えてなることを特徴とする。
このコンクリート構造物では、コンクリート体に薄板状の非接触通信媒体が埋め込まれてなるコンクリート部材を備えたことにより、このコンクリート部材をコンクリート構造物の所定位置に嵌め込むか、取り付けることにより、コンクリート構造物における非接触通信媒体の位置が一定となり、この非接触通信媒体から情報を読み取る際に、非接触通信媒体の位置を特定するのが極めて容易となる。よって、コンクリート構造物の管理をさらに簡便、正確かつ確実に行うことが可能になる。
【0014】
本発明のコンクリート構造物は、前記非接触通信媒体のアンテナ部と前記コンクリート体の表面との距離が3cm以内であることを特徴とする。
このコンクリート構造物では、前記非接触通信媒体のアンテナ部と前記コンクリート体の表面との距離を3cm以内としたことにより、情報を読み取る際のアンテナの感度がより高くなり、信頼性により優れたものとなる。よって、非接触通信媒体からの信号をさらに感度良く、さらに容易に検出することが可能になり、コンクリート構造体の管理をさらに簡便、正確かつ確実に行うことが可能になる。
【0015】
本発明のコンクリート構造物は、前記非接触通信媒体が、長さが150mm以内、幅が100mm以内であることを特徴とする。
このコンクリート構造物では、非接触通信媒体の形状を上記の数値の範囲内とすることで、非接触通信媒体がコンクリート体の強度に影響を及ぼす虞がなくなる。また、非接触通信媒体を埋め込む際に、生コンクリート中の骨材と接触する機会が少なくなり、埋め込み作業が簡単になる。
【0016】
本発明のコンクリート構造物は、前記非接触通信媒体が、可撓性を有する有機高分子からなる基板上に、情報の書き込み/読み取りが可能な集積回路及び前記アンテナ部が設けられていることを特徴とする。
このコンクリート構造物では、非接触通信媒体の基板に可撓性を有する有機高分子を用いたことにより、生コンクリートが硬化する際においても、生コンクリートの変形に非接触通信媒体の形状が追随し、生コンクリートと非接触通信媒体との間に亀裂や空隙が生じる虞がなくなる。これにより、コンクリート体の強度が低下する虞もなくなり、所望の機械的強度を有するものとなる。
【0017】
本発明のコンクリート構造物は、前記集積回路及び前記アンテナ部が、有機高分子からなるフィルムにより被覆されていることを特徴とする。
このコンクリート構造物では、少なくとも集積回路及びアンテナ部を、有機高分子からなるフィルムにより被覆したことにより、コンクリートが硬化する際においても、集積回路及びアンテナ部は有機高分子により保護され、コンクリートの硬化に起因する損傷が生じる虞もない。
【0018】
本発明のコンクリート構造物は、前記非接触通信媒体に記録された情報が、前記コンクリート体の識別情報であることを特徴とする。
このコンクリート構造物では、非接触通信媒体に記録された情報を、コンクリート体の識別情報とすることにより、これらの情報を非接触通信媒体読み取り装置を用いて非接触で読み取ることで、コンクリートの組成、特性、履歴等を、簡単に知ることが可能になる。
【0019】
本発明のコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート構造物の型枠内に生コンクリートを打設し、次いで、この生コンクリートの打設面から、薄板状の非接触通信媒体を、この生コンクリート内に埋め込み、次いで、この生コンクリートを硬化し、次いで脱型して、コンクリート構造物とすることを特徴とする。
【0020】
このコンクリート構造物の製造方法では、生コンクリートの打設面から、薄板状の非接触通信媒体を、この生コンクリート内に埋め込み、次いで、この生コンクリートを硬化し、脱型することにより、コンクリート構造物に関する各種情報を簡易、正確、確実に、しかも一括で管理することが可能なコンクリート構造物を、従来のコンクリート構造物の製造方法と同一の方法を用いて、容易かつ安価に製造することが可能になる。
【0021】
本発明のコンクリート構造物の製造方法は、鉄筋に設けられた位置決め用部材に非接触通信媒体を取り付け、次いで、この非接触通信媒体が取り付けられた鉄筋をコンクリート構造物の型枠内に配置し、次いで、この型枠内に生コンクリートを打設し、次いで、この生コンクリートを硬化し、次いで脱型して、コンクリート構造物とすることを特徴とする。
【0022】
このコンクリート構造物の製造方法では、鉄筋に設けられた位置決め用部材に非接触通信媒体を取り付け、次いで、この非接触通信媒体が取り付けられた鉄筋をコンクリート構造物の型枠内に配置し、次いで、この型枠内に生コンクリートを打設することにより、コンクリート構造物に関する各種情報を簡易、正確、確実に、しかも一括で管理することが可能なコンクリート構造物を、従来のコンクリート構造物の製造方法と同一の方法を用いて、容易かつ安価に製造することが可能になる。
【0023】
本発明のコンクリート構造物の管理方法は、非接触通信媒体に記録された情報を非接触通信媒体読み取り装置を用いて非接触にて読み取り、この読み取った情報を基に前記コンクリート構造物の管理を行うことを特徴とする。
【0024】
このコンクリート構造物の管理方法では、非接触通信媒体読み取り装置を用いて、非接触通信媒体に記録された情報を非接触にて読み取り、この読み取った情報を基に管理を行うことにより、コンクリート構造物に関する広範な情報を速やかに入手することが可能となり、コンクリート構造物の管理を簡便、正確かつ確実に、しかも一括して行うことが可能になる。
【0025】
本発明のコンクリート構造物の管理方法は、前記非接触通信媒体読み取り装置を、前記非接触通信媒体からの情報の読み取り、前記非接触通信媒体への情報の書き込み、の双方を行う携帯可能な非接触通信媒体読み取り/書き込み装置としたことを特徴とする。
【0026】
このコンクリート構造物の管理方法では、非接触通信媒体読み取り装置を、前記非接触通信媒体からの情報の読み取り、前記非接触通信媒体への情報の書き込み、の双方を行う携帯可能な非接触通信媒体読み取り/書き込み装置とすることにより、コンクリート構造体に関する広範な情報を、その場で、しかもリアルタイムで知ることが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のコンクリート構造物によれば、コンクリート体の打設面近傍、かつ、このコンクリート体の前記打設面以外の1つの表面の近傍に、薄板状の非接触通信媒体を埋め込んだので、コンクリートの品質に関する情報、施工に関する情報、施工後の各種測定データ、補修・維持管理に関する情報を簡易、正確、確実に、しかも一括で管理することができる。
また、このコンクリート体には、薄板状の非接触通信媒体のみが埋め込まれているので、非接触通信媒体を固定するための治具等がコンクリート体の中に残ることも無く、したがって、非接触通信媒体がコンクリート構造物の強度や耐久性に影響を及ぼす虞も無い。
【0028】
また、非接触通信媒体は、コンクリート構造体に関する詳細な情報を大量に読み取り/書き込みすることが可能であるので、コンクリート構造物が経年で劣化、不具合等が生じた場合であっても、劣化や不具合に至った原因を容易に解明することができる。
また、これらの情報は、施工後長時間経過した場合であっても読み取り/書き込み可能であるので、情報の消失、劣化等の虞もない。
【0029】
本発明のコンクリート構造物によれば、コンクリート体の内部に設けられた鉄筋の位置決め用部材に、非接触通信媒体を取り付けたので、非接触通信媒体の取り付け位置を一定とすることができ、情報を読み取る際の非接触通信媒体の位置を極めて容易に特定することができる。したがって、コンクリート構造物の管理をさらに簡便、正確かつ確実に、しかも一括して行うことができる。
【0030】
本発明のコンクリート構造物によれば、コンクリート体に薄板状の非接触通信媒体が埋め込まれてなるコンクリート部材を備えたので、このコンクリート部材をコンクリート構造物の所定位置に嵌め込むか、取り付けることにより、コンクリート構造物における非接触通信媒体の位置を一定とすることができ、情報を読み取る際の非接触通信媒体の位置を極めて容易に特定することができる。したがって、コンクリート構造物の管理をさらに簡便、正確かつ確実に、しかも一括して行うことができる。
【0031】
本発明のコンクリート構造物の製造方法によれば、生コンクリートの打設面から、薄板状の非接触通信媒体を、この生コンクリート内に埋め込み、次いで、この生コンクリートを硬化し、次いで脱型するので、コンクリート構造物に関する各種情報を簡易、正確、確実に、しかも一括で管理することができるコンクリート構造物を、従来のコンクリート構造物の製造方法と同一の方法により、容易かつ安価に製造することができる。
【0032】
本発明のコンクリート構造物の製造方法によれば、鉄筋に設けられた位置決め用部材に非接触通信媒体を取り付け、次いで、この非接触通信媒体が取り付けられた鉄筋をコンクリート構造物の型枠内に配置し、次いで、この型枠内に生コンクリートを打設するので、コンクリート構造物に関する各種情報を簡易、正確、確実に、しかも一括で管理することができるコンクリート構造物を、従来のコンクリート構造物の製造方法と同一の方法により、容易かつ安価に製造することができる。
【0033】
本発明のコンクリート構造物の管理方法によれば、非接触通信媒体に記録された情報を非接触通信媒体読み取り装置を用いて非接触にて読み取り、この読み取った情報を基に前記コンクリート構造物の管理を行うので、コンクリート構造物に関する広範な情報を速やかに、しかもリアルタイムで入手することができる。したがって、コンクリート構造物の管理を簡便、正確かつ確実に、しかも一括して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明のコンクリート構造物とその製造方法及びその管理方法を実施するための最良の形態について説明する。
なお、これらの形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0035】
「第1の実施の形態」
図1は、本発明の第1の実施形態のコンクリート構造物を示す斜視図、図2は図1のA−A線に沿う断面図であり、鉄筋コンクリート構造の柱の例である。
図において、1はコンクリート体、2はコンクリート体1の内部に配置された鉄筋、3はコンクリート体1の表面1aの近傍、かつ打設面1b近傍に埋め込まれた薄板状のICタグ(非接触通信媒体)である。ここでは、ICタグ3は、そのアンテナ部のアンテナ面がコンクリート体1の表面1aと平行になるように埋め込まれている。
【0036】
このように、ICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部のアンテナ面は、コンクリート体1の表面1aと平行とすることが好ましい。
また、ICタグ3のアンテナ部のアンテナ面をコンクリート体1の表面1aに対して傾斜した状態で埋め込む場合には、ICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部のアンテナ面を、コンクリート体1の表面1に対して45°以内とすることが好ましく、30°以内とすることがより好ましい。
【0037】
図3は、ICタグ3を示す斜視図、図4は図3のB−B線に沿う断面図であり、これらの図では、説明が容易なように、個々の厚みや縦横の比等を実際のものと変えてある。
このICタグ3は、薄板状のもので、可撓性を有する有機高分子からなる基板11上に、情報の書き込み/読み取りが可能なIC(集積回路)12、及び、このIC12の周囲に、これを囲むように、長円かつ渦巻き状のアンテナ部13が設けられ、これら基板11、IC12及びアンテナ部13は、全体が、例えば、ラミネートフィルム等のような有機高分子からなるフィルム14により被覆されている。
このICタグ3は、薄板状であれば、アクティブ型、パッシブ型のいずれでも構わないが、所定の薄板状にし易いこと、長期間コンクリート体1の内部に放置される等の点からは電源の不要なパッシブ型が好ましい。
【0038】
基板11としては、IC12及びアンテナ部13支持する支持体としての機能を有するものであればよく、適度の可撓性を有し、しかも取り扱いが容易という点で有機高分子フィルムが好ましい。この有機高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)等のプラスチックフィルムが好適に用いられ、特に、機械的強度及び熱安定性に優れている点でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。
この基板11の形状は、IC12及びアンテナ部13の形状に合わせて設定すればよいが、コンクリートへ埋め込む際に取り扱い易いという点で、長方形が好ましい。
【0039】
IC12は、このコンクリート構造物に関する情報の書き込み/読み取りが可能なものであればよいが、情報の改ざん等を防止するためには、既に書き込まれた情報の消去や上書きができず、情報の追加部分を書き込むのみとしたものが好ましい。
【0040】
このコンクリート構造物に関する情報としては、次のような項目が挙げられる。
(1)使用されたコンクリートに関する情報
a)コンクリートの品質
スランプ、空気量、塩化物イオン量、練り上がり温度等
b)コンクリートの材料
骨材の産地、種類、密度等
c)コンクリートの配合
d)コンクリートの納入先
e)コンクリートの打設
打設日、養生期間等
f)フレッシュ性状
g)塩化物量
h)圧縮強度
i)その他、仕様等で定められた項目
【0041】
(2)設計に関する情報
a)設計者(設計会社)
b)認可機関
c)設計図等の管理・保管場所
d)その他、仕様等で定められた項目
【0042】
(3)施工に関する情報
a)コンクリートの製造工場
b)納入日
c)納入量
d)施工者(施工会社)
e)その他、仕様等で定められた項目
【0043】
(4)施工後の各種測定データ
a)中性化深さ
b)塩分測定量
c)その他、仕様等で定められた項目
【0044】
(5)補修・維持管理に関する情報
a)補修日時
b)補修内容
コンクリートに関する情報
c)その他、仕様等で定められた項目
【0045】
アンテナ部13は、金属薄膜あるいは金属箔をエッチング加工して所定の大きさの長円かつ渦巻き状としたものである。
フィルム14は、基板11、IC12及びアンテナ部13全体を覆って、外部環境から保護するもので、コンクリートとの密着性の良いものが、コンクリート構造物の機械的強度等の特性に影響を及ぼさないので好ましく、例えば、ラミネートフィルムが好ましい。特に、複数層からなる積層構造のラミネートフィルムが強度が高い点で好ましい。
このラミネートフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)等のプラスチックフィルムが好適に用いられ、特に、機械的強度及び熱安定性に優れている点でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。
【0046】
このICタグ3は、長さが150mm以内、幅が100mm以内が好ましく、より好ましくは、長さが100mm以内、幅が70mm以内であり、さらに好ましくは、長さが90mm以内、幅が60mm以内である。また、厚みは3mm以内が好ましく、より好ましくは2mm以内であり、さらに好ましくは1mm以内である。
ICタグ3の大きさが上記の範囲内であれば、コンクリート構造物の機械的強度等の特性に影響を及ぼすことがない。さらに、ICタグ3を差し込む際に、コンクリート中の骨材と接触する機会が少なくなり、埋め込み作業が簡単になる。
ここで、ICタグ3の大きさとは、フィルム14の被覆がない場合には、フィルム14を除いた大きさであり、フィルム14の被覆がある場合には、フィルム14を含めたコンクリート体1の内部に埋め込まれる部分の大きさである。
【0047】
このICタグ3は、型枠に打設される生コンクリートが水分を含み、しかもアルカリ性であるため、使用期間中、コンクリートに含まれる水分やアルカリにより劣化しないものを用いる必要がある。そのため、必要に応じて、防水、防アルカリ処理を行うことが必要である。
【0048】
例えば、全体をラミネートフィルム等のような有機高分子からなるフィルム14により被覆してあるのが好ましい。このフィルム14は、コンクリートとの密着性の良いものが、コンクリート構造物の機械的強度等の特性に影響を及ぼさないためには好ましい。
この他、一体となった基板11、IC12及びアンテナ部13を、ビニール袋や密閉容器に収納する等としてもよい。
また、基板11、IC12及びアンテナ部13として、コンクリートに含まれる水分やアルカリ、水中養生の際に外部からコンクリート内に浸入する水分等に対して耐久性を有するものを用いてもよい。
なお、ICタグ3の替わりに、必要に応じてICカード(非接触通信媒体)等を用いてもよい。
【0049】
次に、本実施形態のコンクリート構造物の製造方法について図5に基づき説明する。
まず、型枠21をコンクリート構造物の形状に組み立て、この型枠21内に所定の形状の鉄筋2を配置し、次いで、この型枠21内に所定の生コンクリート22を打設する。
【0050】
次いで、この生コンクリート22の打設面22aから、ICタグ3を、打設面22a近傍、かつ、一つの型枠21の内面21aの近傍に位置するように、生コンクリート22内に埋め込む。
ここでは、ICタグ3のアンテナ部13を、型枠21の内面21aに平行、もしくは内面21aに対して傾斜した状態になるように、生コンクリート22内に埋め込む。
【0051】
このICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を、型枠21の内面21aと平行とすることが好ましい。
また、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を内面21aに対して傾斜した状態で埋め込む場合には、ICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を、内面21aに対して45°以内とすることが好ましく、30°以内とすることがより好ましい。
【0052】
このICタグ3は、そのアンテナ部13のアンテナ面全体が、型枠21の内面21aから3cm以内の領域に位置していることが好ましく、より好ましくは1cm以内の領域に位置していることである。つまり、このICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面全体がコンクリート体1の表面から3cm以内の領域、好ましくは1cm以内の領域に位置していることが好ましい。
このICタグ3のアンテナ面全体の埋め込み位置を、型枠21の内面21aから3cm以内の領域とすることにより、このICタグ3のアンテナ面が型枠21の内面21aに対して3次元のいずれの方向に傾斜した場合であっても、識別情報の書き込み/読み取り時の感度、安定性が良くなる。
【0053】
このICタグ3の埋め込み深さは、型枠21内に打設された生コンクリート22が硬化した時点で固定されていればよいが、ICタグ3に破損等の影響の無い程度の深さに埋め込むことが好ましい。
また、あまり深く埋め込むと、ICタグ3の破損、劣化等が生じ、信号の安定性も低下するという不具合が生じる虞があるので、ICタグ3の上端またはアンテナ部13の上端が、生コンクリート22の打設面22aから5mm〜10mm程度の深さまで埋め込むことが好ましい。
ICタグ3の埋め込み深さを上記の範囲とすることにより、ICタグ3の破損、劣化等を防止し、また、信号の安定性も向上する。
【0054】
このICタグ3は、生コンクリート22の打設面22aに埋め込み易くするために、ICタグ3を所定の深さまで埋め込んだ際、基板11の端部のみが打設面25aから突出するように、基板11のみを長くしておくこともできる。
この際、埋め込み深さに合わせて、伸ばした基板11の端部に印を付けておけば、コンクリート構造物毎のばらつきもなく、簡易に所定の深さまでICタグ3を埋め込むことができる。
この打設面22aから突出した基板11の端部は、生コンクリート22が硬化した後、必要であれば簡易に切断することができる。
【0055】
また、ICタグ3をラッピングして使用する際は、ICタグ3を打設面22aから所定の深さまで埋め込んだ際、ラッピングのみの部分が打設面22aから突出するように、ラッピングのみの部分を長くしておくこともできる。ここでも、埋め込み深さに合わせて、伸ばしたラッピング部分に印を付けておけば、コンクリート構造物毎のばらつきもなく、簡易に所定の深さまでICタグ3を埋め込むことができる。
【0056】
この打設面25aから突出したラッピング部分は、生コンクリート25が硬化した後、必要であれば簡易に切断することができ、また、切断し易いように切り込みを形成しておいても良い。
また、袋、その他の容器にICタグを入れて使用する場合もラッピングの場合と同様である。
このようにすることで、ICタグ3を所定の埋め込み深さに、コンクリート構造物毎のばらつきも無く、簡易に取り付けることができる。また、ICタグ3との情報のやりとりの感度がコンクリート構造物によらず同じであるから、得られるデータの正確性、信頼性も向上し、作業性も向上する。
【0057】
このICタグ3には、打設前に、予め上述したコンクリート構造物に関する情報が書き込まれてあってもよく、また、ICタグ3を生コンクリート22に埋め込んだ後に上述したコンクリート構造物に関する情報を書き込んでもよい。
次いで、この生コンクリート22を硬化、脱型し、さらに、所定の温度にて所定の時間、養生を施し、本実施形態のコンクリート構造物とする。
【0058】
このコンクリート構造物のICタグ3に記録された情報をICタグリーダ/ライタ(非接触通信媒体書き込み/読み取り装置)を用いて非接触にて読み取り、この読み取った情報に基づきコンクリート構造物の管理を行う。
このICタグリーダ/ライタとしては、特に限定されないが、携帯可能なものが好ましい。その理由は、コンクリート構造物においては、構造物自体を動かすことはできないので、コンクリート構造物に取り付けたICタグ3の情報の書き込み/読み取りを行うためには、ICタグリーダ/ライタは携帯可能であることが必要である。
【0059】
このICタグ3に書き込まれた情報を非接触で読み取ることのできる距離は、ICタグリーダ/ライタのアンテナの大きさに左右される。しかし、携帯可能なICタグリーダ/ライタを用いる場合、あまり大きなアンテナのついたものは使用することができない。そこで、ICタグリーダ/ライタをコンクリート構造物に埋め込まれたICタグ3の近くに持っていくためには、ICタグ3がコンクリート構造物のどの位置に埋まっているか、すぐに探せる(分かる)ことが重要である。
【0060】
このコンクリート構造物では、コンクリート体1の打設面1b近傍にICタグ3が、そのアンテナ部13がコンクリート体1の一表面1aと平行になるように埋め込まれているので、コンクリート体1のどの辺りにICタグ3が埋め込まれているかを、容易に推察することができる。
また、ICタグ3へのデータの書き込みは、データの改ざんを防止するために、システム上、書き込んだデータの修正ができず、データの追加のみができることが好ましい。
【0061】
以上により、コンクリート構造物のICタグ3に記録された情報を、携帯可能なICタグリーダ/ライタを用いて非接触にて読み取り、この読み取った情報を基にコンクリート構造物の管理を行うので、個々のコンクリート構造物に関する広範な情報を速やかに入手することができ、個々のコンクリート構造物の管理を簡便、正確かつ確実に、しかも一括して行うことができる。
【0062】
次に、本発明のコンクリート構造物の管理方法の適用例として、2つの管理方法を挙げ、説明する。
【0063】
(管理方法1)
(1) 生コンクリートの出荷元にて、コンクリートに関する所定の情報を、ICタグリーダ/ライタを介してICタグに書き込む。具体的には次の2通りのうちいずれかを行う。
a)コンクリート及びコンクリート構造物に関する所定の情報を、ICタグリーダ/ライタに入力し、ICタグに書き込む。
b)コンクリート及びコンクリート構造物に関する所定の情報を、サーバ、パソコン等に入力し、それをICタグリーダ/ライタに無線等で送信し、ICタグに書き込む。
(2) ICタグリーダ/ライタでICタグの情報を読み込み、出荷する。
このICタグは、生コンクリートの運搬車に取り付けるか、またはこのICタグを持参して納入時に納入先に渡す。
【0064】
(3) 納入先で、ICタグの情報を読み込み、正しい納入か否かを確認する。
(4) 納入先のサーバ等に保存された設計に関する情報や施工に関する情報をICタグに書き込む。具体的には次の2通りのうちいずれかを行う。
a)読み取ったコンクリートに関する情報と、納入先のサーバ等に保存された設計に関する情報、及び施工に関する情報を、他のICタグに書き込む。
b)納入時に渡されたコンクリートに関する情報が書き込まれたICタグに、納入先のサーバ等に保存された設計に関する情報、及び施工に関する情報を書き込む。
なお、この情報の書き込みは、ICタグをコンクリート構造物に取り付けた後に行ってもよい。
(5)設計や施工に関する情報が書き込まれたICタグを所定の方法で、コンクリート構造物に取り付ける。
(6)その後、所定の時期に、施工後の各種測定データ、維持管理に関するデータをコンクリート構造物に取り付けたICタグに書き込む。
【0065】
この管理方法1によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)ICタグリーダ/ライタとサーバ、パソコン等を無線等で結ぶことにより、IDを介して打設したコンクリートに関する品質、材料等のデータ、設計、施行データ、その後の管理データ等を簡易、正確、確実に、しかも一括して確認することができる。
(2)データの保存、書き込みが容易にできる。
(3)ICタグに必要なデータが全て入っているため、携帯可能なICタグリーダ/ライタで、施工現場や設置場所にてコンクリート及びコンクリート構造物に関する情報を、サーバ等と情報のやりとりをすることなく、その場で、すぐに必要な情報を直接読み取ることができ、したがって、その場で、すぐに必要な情報を把握することができる。
【0066】
(4)施工現場は広汎にわたり、施工業者も多岐にわたるために、データを一つのサーバで管理することは難しく、さらに、長期間経過後にデータが必要となるため、サーバにおいては長期間のメンテナンスも大変であるが、ここでは、コンクリート構造物に情報を書き込んだICタグが埋め込まれているので、データの管理に手間や費用をかけることなく、長期間経過後も現場で必要なデータを入手することができ、長期間の品質のトレーサビリティを行うことができる。
【0067】
(管理方法2)
(1)コンクリートに関する所定の情報をサーバ、パソコン等に保存する。
(2)上記の情報に対応するID番号をICタグに書き込む。
(3)ICタグリーダ/ライタでICタグのID情報を読み込み、出荷する。
(4)納入先で、ICタグのID情報を読み込み、正しい納入か否かを確認する。
(5)設計に関する情報、施工に関する情報をサーバ、パソコンに保管し、上記のID番号と対応させる。
(6)ID番号を書き込んだICタグを所定の方法で、コンクリート構造物に取り付ける。
【0068】
(7)その後、所定の時期に、施工後の各種測定データ、維持管理に関するデータをコンクリート構造物に取り付けたICタグのID番号と対応させて、サーバ、パソコンに保管する。
(8)施行設置後、点検、補修時にICタグリーダ/ライタでICタグのID情報を読み込み、サーバ、パソコン等にアクセスすることにより、ID番号をもとに各種の情報を入手する。
【0069】
この管理方法2によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)ICタグリーダ/ライタとサーバ、パソコン等を無線等で結ぶことにより、IDを介して打設したコンクリートに関する品質、材料等のデータ、設計、施行データ、その後の管理データ等を簡易、正確、確実に、しかも一括して確認することができる。
(2)データの保存、書き込みが容易にできる。
【0070】
以上説明した通り、本実施形態のコンクリート構造物によれば、識別する際に、各種データの書き込み/読み取りが可能なICタグ3を、コンクリート構造物に、所定の埋め込み方向、埋め込み位置、埋め込み深さにて埋め込むこととしたので、コンクリート構造物の管理を、簡易、正確、確実に、しかも一括して実施することができる。
このICタグは、長期間データを保持することができるので、コンクリート構造物が長期に亘って使用される間に様々な現象が生じた場合、コンクリート構造物のトレーサビリティを正確にかつ短時間で実施することができる。
【0071】
ICタグのデータは、携帯可能なICタグリード/ライタで読み取れるので、場所や日時の制約がなく、どこでも情報を入手することができる。
以上により、コンクリート構造物の管理を簡易、正確、確実に、しかも一括して行うことができ、さらに長期間保管できることで、コンクリート構造物のトレーサビリティー、維持管理等、様々な分野で活用することができ、その効果は非常に大きい。
【0072】
「第2の実施の形態」
図6は、本発明の第2の実施形態のコンクリート構造物を示す断面図であり、本実施形態のコンクリート構造物が第1の実施形態のコンクリート構造物と異なる点は、第1の実施形態のコンクリート構造物では、薄板状のICタグ3を、コンクリート体1の打設面1b近傍に直接埋め込んだ構成であるのに対し、本実施形態のコンクリート構造物では、薄板状のICタグ3を、鉄筋2と生コンクリートを打設する型枠21の内面21aとの間隔を一定に保持するためのスペーサ(位置決め用部材)31に取り付けた点である。
【0073】
このスペーサ31は、型枠に生コンクリートを打設する際に、鉄筋2が型枠の内面に触れることの無いように設けられたもので、図6及び図7に示すように、格子状に配置された鉄筋2の接合部に嵌め込まれて固定される固定部32と、この固定部32から水平方向外方へ延びる一対の板状の位置決め部33、33と、位置決め部33、33の先端部近傍同士を接続して位置決め部33、33間の間隔を一定に保持する板状の接続部34とにより構成され、これら位置決め部33、33は、この鉄筋2を型枠21、22内に配置したときに型枠21の内面21aに当接させることで、この鉄筋2と内面21aとの間隔を一定に保持し続けることが可能である。
【0074】
ICタグ3は、接続部34の外側の面に取り付けることにより、そのアンテナ部がコンクリート体1の型枠21の1つの内面21aに平行、もしくは内面21aに対して傾斜した状態になるように、生コンクリートに埋め込まれている。
このICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を、型枠21の内面21aと平行とすることが好ましい。
また、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を内面21aに対して傾斜した状態で埋め込む場合には、ICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を、内面21aに対して45°以内とすることが好ましく、30°以内とすることがより好ましい。
【0075】
このICタグ3は、そのアンテナ部13のアンテナ面全体が、型枠21の内面21aから3cm以内の領域に位置していることが好ましく、より好ましくは1cm以内の領域に位置していることである。つまり、このICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面全体がコンクリート体の表面から3cm以内の領域、好ましくは1cm以内の領域に位置していることが好ましい。
このICタグ3のアンテナ面全体の埋め込み位置を、型枠21の内面21aから3cm以内の領域とすることにより、このICタグ3のアンテナ面が型枠21の内面21aに対して3次元のいずれの方向に傾斜した場合であっても、識別情報の書き込み/読み取り時の感度、安定性が良くなる。
【0076】
このコンクリート構造物は、ICタグ3を鉄筋2の接合部のスペーサ31に取り付け、次いで、このICタグ3が取り付けられた鉄筋2をコンクリート構造物の型枠21内に配置し、次いで、この型枠21内に生コンクリートを打設し、次いで、この生コンクリートを硬化させ、次いで脱型することにより得られる。
【0077】
本実施形態のコンクリート構造物においても、第1の実施形態のコンクリート構造物と同様の効果を奏することができる。
しかも、ICタグ3を、鉄筋2に設けられたスペーサ31の接続部34の外側の面に取り付けたので、ICタグ3の取り付け位置が固定され、生コンクリート打設時に動いたり、アンテナの方向が変わったり等の虞もない。
また、スペーサ31の接続部34にICタグ3を取り付けたので、ICタグを取り付けるための治具等を新たに必要とせず、簡易に人の手でICタグを取り付けることができる。
【0078】
「第3の実施の形態」
図8は、本発明の第3の実施形態のコンクリート製品であるコンクリート構造物を示す断面図であり、本実施形態のコンクリート構造物が第2の実施形態のコンクリート構造物と異なる点は、スペーサの形状が異なる点である。
【0079】
このスペーサ41は、図8及び図9に示すように、嵌め込み用の切り込み42が軸線に沿って形成された小リング部43と、小リング部43から外側へ放射状に延びるリブ44、44、…と、リブの先端部近傍に接続され、これらのリブ44、44、…を相互に接続するとともに、嵌め込み用の切り込み45が軸線に沿って形成された大リング部46とにより構成され、これらリブ44、44、…は、この鉄筋2を型枠21内に配置したときに型枠21の内面21aに当接させることで、この鉄筋2と内面21aとの間隔を一定に保持し続けることが可能である。
【0080】
ICタグ3は、鉄筋2に嵌め込まれた複数のスペーサ41(図9では4個)それぞれのリブ44、44間の大リング部46の外周面に取り付けることにより、そのアンテナ部がコンクリート体1の型枠21の内面21aに平行、もしくは内面21aに対して傾斜した状態になるように、生コンクリートに埋め込まれている。
このICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を、型枠21の内面21aと平行とすることが好ましい。
また、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を内面21aに対して傾斜した状態で埋め込む場合には、ICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を、内面21aに対して45°以内とすることが好ましく、30°以内とすることがより好ましい。
【0081】
このICタグ3は、そのアンテナ部13のアンテナ面全体が、型枠21の内面21aから3cm以内の領域に位置していることが好ましく、より好ましくは1cm以内の領域に位置していることである。つまり、このICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面全体がコンクリート体の表面から3cm以内の領域、好ましくは1cm以内の領域に位置していることが好ましい。
このICタグ3のアンテナ面全体の埋め込み位置を、型枠21の内面21aから3cm以内の領域とすることにより、このICタグ3のアンテナ面が型枠21の内面21aに対して3次元のいずれの方向に傾斜した場合であっても、識別情報の書き込み/読み取り時の感度、安定性が良くなる。
【0082】
このコンクリート構造体は、まず、鉄筋2の所定位置、例えば接続部近傍に所定の数のスペーサ41を嵌め込み、これらのスペーサ41、41、…それぞれのリブ44、44間の大リング部46の外周面にICタグ3を取り付け、次いで、このICタグ3が取り付けられた鉄筋2をコンクリート構造物の型枠21内に配置し、次いで、この型枠21内に生コンクリートを打設し、次いで、この生コンクリートを硬化させ、次いで脱型することにより得られる。
【0083】
本実施形態のコンクリート構造物においても、第2の実施形態のコンクリート構造物と同様の効果を奏することができる。
しかも、鉄筋2に所定の数のスペーサ41を嵌め込み、これらのスペーサ41、41、…それぞれのリブ44、44間の大リング部46の外周面にICタグ3を取り付けたので、ICタグを取り付けるための治具等を新たに必要とせず、簡易に人の手でICタグを取り付けることができる。
【0084】
「第4の実施の形態」
図10は、本発明の第4の実施形態のコンクリート構造体を示す斜視図であり、鉄筋コンクリート構造の壁体の例である。
図において、51はコンクリート体、52はコンクリート部材であり、このコンクリート部材52は、コンクリート体51の壁面51aに形成されたコンクリート部材52と相補形状の凹部53に嵌め込まれており、このコンクリート部材52の壁面(1つの表面)52aは、嵌め込まれた際にコンクリート体51の壁面51aと同一面となっている。
【0085】
このコンクリート部材52には、第1の実施形態のコンクリート体1と同様に、ICタグ3が壁面(1つの表面)52aの近傍、かつ打設面52b近傍に埋め込まれている。
ここでも、第1の実施形態と同様に、ICタグ3は、そのアンテナ部のアンテナ面がコンクリート部材52の壁面52aに平行、もしくは壁面52aに対して傾斜した状態になるように、コンクリート部材52に埋め込まれている。
このICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を、壁面52aと平行とすることが好ましい。
また、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を壁面52aに対して傾斜した状態で埋め込む場合には、ICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を、壁面52aに対して45°以内とすることが好ましく、30°以内とすることがより好ましい。
【0086】
このICタグ3は、そのアンテナ部13のアンテナ面全体が壁面52aから3cm以内の領域に位置していることが好ましく、より好ましくは1cm以内の領域に位置していることである。つまり、このICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面全体が壁面52aから3cm以内の領域、好ましくは1cm以内の領域に位置していることが好ましい。
このICタグ3のアンテナ面全体の埋め込み位置を、壁面52aから3cm以内の領域とすることにより、このICタグ3のアンテナ面が壁面52aに対して3次元のいずれの方向に傾斜した場合であっても、識別情報の書き込み/読み取り時の感度、安定性が良くなる。
【0087】
このICタグ3をコンクリート部材52に取り付ける方法は、第1の実施形態と全く同様である。
コンクリート体51とコンクリート部材52とは、同一組成のコンクリートを用いることが、機械的強度や美観の点から好ましい。
このコンクリート部材52は、構造物に取り付ける銘板として使用することもできる。すなわち、銘板に各種情報を書き込んだICタグ3を埋め込むことにより、ICタグ3の位置を容易に特定し、情報を把握することができる。
【0088】
本実施形態のコンクリート構造物においても、第1の実施形態のコンクリート構造物と同様の効果を奏することができる。
しかも、ICタグ3を、コンクリート体51に比べて遙かに小さいコンクリート部材52に埋め込むので、ICタグ3の固定が正確、確実になるとともに、ICタグ3の位置も明確に分るようになる。
また、コンクリート構造物の一部が破損、補修等した場合、ICタグ3を第1の実施形態の様にコンクリート体1中に固定すると、ICタグ3も破損等してしまう虞があるが、本実施形態であれば、コンクリート部材52を凹部53から取り外すことにより、破損したコンクリート体のみの補修等を行うことができ、コンクリート部材52のICタグ3が破損する虞もない。
このコンクリート部材52は、補修後、凹部53に再度嵌め込めばよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1の実施形態のコンクリート構造物を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】ICタグを示す斜視図である。
【図4】図3のB−B線に沿う断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のコンクリート構造物の製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態のコンクリート構造物を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態のコンクリート構造物のスペーサを示す斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態のコンクリート構造物を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態のコンクリート構造物のスペーサを示す斜視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態のコンクリート構造物を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0090】
1 コンクリート体
1a 一表面
1b 打設面
2 鉄筋
3 薄板状のICタグ
11 基板
12 IC
13 アンテナ部
14 フィルム
21 型枠
21a 内面
31 スペーサ
32 固定部
33 位置決め部
34 接続部
41 スペーサ
42 切り込み
43 小リング部
44 リブ
45 切り込み
46 大リング部
51 コンクリート体
51a 壁面
52 コンクリート部材
52a 壁面
53 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート体の打設面近傍、かつ、このコンクリート体の前記打設面以外の1つの表面の近傍に、薄板状の非接触通信媒体が埋め込まれてなることを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
前記非接触通信媒体の一端部の位置は、前記コンクリート体の打設面と略一致していることを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
コンクリート体の内部に設けられた鉄筋の位置決め用部材に、非接触通信媒体が取り付けられていることを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項4】
コンクリート体に薄板状の非接触通信媒体が埋め込まれてなるコンクリート部材を備えてなることを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項5】
前記非接触通信媒体のアンテナ部と前記コンクリート体の表面との距離が3cm以内であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のコンクリート構造物。
【請求項6】
前記非接触通信媒体は、長さが150mm以内、幅が100mm以内であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載のコンクリート構造物。
【請求項7】
前記非接触通信媒体は、可撓性を有する有機高分子からなる基板上に、情報の書き込み/読み取りが可能な集積回路及び前記アンテナ部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載のコンクリート構造物。
【請求項8】
前記集積回路及び前記アンテナ部は、有機高分子からなるフィルムにより被覆されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載のコンクリート構造物。
【請求項9】
前記非接触通信媒体に記録された情報は、前記コンクリート体の識別情報であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載のコンクリート構造物。
【請求項10】
請求項1または2記載のコンクリート構造物の製造方法であって、
コンクリート構造物の型枠内に生コンクリートを打設し、
次いで、この生コンクリートの打設面から、薄板状の非接触通信媒体を、この生コンクリート内に埋め込み、
次いで、この生コンクリートを硬化し、次いで脱型して、コンクリート構造物とすることを特徴とするコンクリート構造物の製造方法。
【請求項11】
請求項3記載のコンクリート構造物の製造方法であって、
鉄筋に設けられた位置決め用部材に非接触通信媒体を取り付け、
次いで、この非接触通信媒体が取り付けられた鉄筋をコンクリート構造物の型枠内に配置し、
次いで、この型枠内に生コンクリートを打設し、次いで、この生コンクリートを硬化し、次いで脱型して、コンクリート構造物とすることを特徴とするコンクリート構造物の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし9のいずれか1項記載のコンクリート構造物を管理する方法であって、
前記非接触通信媒体に記録された情報を非接触通信媒体読み取り装置を用いて非接触にて読み取り、この読み取った情報を基に前記コンクリート構造物の管理を行うことを特徴とするコンクリート構造物の管理方法。
【請求項13】
前記非接触通信媒体読み取り装置は、前記非接触通信媒体からの情報の読み取り、前記非接触通信媒体への情報の書き込み、の双方を行う携帯可能な非接触通信媒体読み取り/書き込み装置であることを特徴とする請求項12記載のコンクリート構造物の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−138452(P2008−138452A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326132(P2006−326132)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(506400812)ユーシーテクノロジ株式会社 (8)
【出願人】(593084797)
【Fターム(参考)】