説明

コンクリート構造物の施工方法

【課題】ジャンカやコールドジョイントの発生を防止でき、簡便かつ安価にコンクリート構造物を施工することのできるコンクリート構造物の施工方法を提供することを目的としている。
【解決手段】柱主筋11、梁主筋21、帯筋12、肋筋22が配筋された型枠4内に、コンクリート柱の下端部11a又は打ち継ぎ部にモルタルMを吹き付け、モルタル吹き付け後に、コンクリートを打設することによってコンクリート柱等のコンクリート構造物を施工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物を構築する場合、一般に、配筋した型枠内にコンクリートをコンクリートポンプやバケットを使用して打設している(例えば、特許文献1参照)。図2は、コンクリートポンプを使用した従来例であり、型枠104内に柱主筋101、梁主筋102、肋筋又は帯筋103,103,…が配筋されて、コンクリートポンプのホース105からコンクリートCを打設している状態を示した側断面図である。図中符号Sは、粗骨材を示している。
【特許文献1】特開平11−13972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、鉄筋コンクリート構造物においては、コンクリート構造物の最下端部及び打ち継ぎ部に粗骨材の分離に起因するジャンカなどが生じ、問題となっている。ジャンカの発生原因としては、以下のことが考えられる。第一に、コンクリートポンプのホースの先端を配置されている鉄筋の間を通してコンクリート構造物の内部まで挿入することができず、コンクリートが自由落下して勢いよく先行打設され既に硬化しているコンクリートなどに衝突して粗骨材とモルタルとが分離し、粗骨材が型枠の表面付近に集まること、第二に、コンクリートポンプのホースの先端より出たコンクリートが鉄筋あるいは型枠面に勢いよく衝突するため、粗骨材とモルタルとが分離し、粗骨材が型枠表面付近に集まること、第三に、打設速度を速くしようとして一カ所からコンクリートを流し込むため、コンクリートの流動に伴ってモルタルと粗骨材とが分離し、粗骨材が型枠の表面付近に集まること等が挙げられる。
一方、従来では打ち始めのコンクリート構造物の下端部や打ち継ぎ部にモルタルを打設することは一般的であったが、モルタルの打設は、コールドジョイントを発生しないようにコンクリート打設の直前に行う必要があるが、従来、モルタル打設に用いていたコンクリートポンプやバケットでは機動性に乏しく、隈無くモルタルを敷き広げることが困難であり、局部的にジャンカの発生が避けられない。また、コールドジョイントを生じないようにモルタルを打設すると、一連のコンクリート打設の効率が著しく低下するという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ジャンカやコールドジョイントの発生を防止でき、簡便かつ安価にコンクリート構造物を施工することのできるコンクリート構造物の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、コンクリート構造物の施工方法において、
鉄筋が配筋された型枠内に、コンクリート構造物の下端部又は打ち継ぎ部にモルタルを吹き付けるモルタル吹き付け工程と、
前記モルタル吹き付け後に、コンクリートを打設するコンクリート打設工程とを備えることを特徴とする。
【0005】
請求項1の発明によれば、コンクリート構造物の下端部又は打ち継ぎ部にモルタルを吹き付けた後に、コンクリートを打設するので、予めモルタルを吹き付けておくことによってコンクリート打設に伴い、種々の原因により生ずる粗骨材とモルタルの分離に起因するジャンカや、モルタルの打設むらにより発生する局部的なジャンカを防止することができる。また、打ち継ぎ部に生じるコールドジョイントも防止することができる。その結果、施工欠陥のない良好なコンクリート構造物とすることができる。また、コンクリートの打設を妨げることなく、モルタルの打設を簡便に独立して行うことができるので、設備費・労務費等の費用を抑えることができる。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコンクリート構造物の施工方法において、
前記モルタル吹き付け工程は、円管又は矩形管を鉄筋間に挿入することによってモルタルを吹き付けることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明によれば、細径の円管又は矩形管を鉄筋間に挿入することによって、モルタルを吹き付けるので、鉄筋量が多い場合にも容易に鉄筋間に挿入することができ、所定箇所に確実にモルタルを吹き付けることができる。その結果、ジャンカ発生の防止に繋がる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリートの打設に伴うジャンカの発生やモルタルの打設によるコールドジョイントを防止でき、また、コストの削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明では、コンクリート構造物の施工方法として、コンクリート柱及びコンクリート梁に適用した場合を例に挙げて説明する。
図1は、コンクリート柱及びコンクリート梁の施工方法を示すための側断面図である。図1に示すように、コンクリート柱及びコンクリート梁を施工するために、まず、型枠4内に柱主筋11及び柱主筋11の上端部に梁主筋21を配筋する。さらに、柱主筋11の鉛直方向に沿って所定間隔で多数の帯筋12,12,…を配筋し、また、梁主筋21の水平方向に沿って所定間隔で多数の肋筋22,22,…を配筋する。
次いで、モルタル吹き付け装置(図示しない)を使用して、柱主筋11の最下端部11aの周辺及び型枠4の表面付近に隈なくモルタルMを吹き付ける(モルタル吹き付け工程)。ここで、モルタル吹き付け装置はモルタル吹き付け管3を備えている。モルタル吹き付け管3は、矩形管であり、例えば、柱主筋11,11間や梁主筋21,21間に挿入できる径の細管である。なお、矩形管以外にも円管を使用しても良い。特に、矩形管を用いることによって、通常鉄筋が直角上方向に配置され、鉄筋間が矩形状の空間になっているため、挿入し易い。また、楕円管を使用しても良いが、楕円管の製造は現状の技術では難しいのに対し、矩形管の場合には縦横比の異なる管の製造が比較的容易であるため、この点においても矩形管を使用することが好ましい。使用する管の大きさは、円管の場合で直径20mm〜50mm程度、矩形管の場合は短辺が15mm〜30mm程度で、長辺が20mm〜50mm程度が好ましい。
柱主筋11の最下端部11aの周辺にモルタルMを所定量吹き付けた後、コンクリートを打設する(コンクリート打設工程)。コンクリートの打設は、周知のコンクリートポンプによって行う。
このようにしてコンクリートを打設し、コンクリートの打ち継ぎの際には、同様にして打ち継ぎ部(図示しない)にモルタル吹き付け管3を使用してモルタルMを吹き付けた後(モルタル吹き付け工程)、コンクリートを打設する(コンクリート打設工程)。
【0010】
以上、本発明の実施の形態によれば、コンクリート打設前に先立ってコンクリート柱の下端部11a又は打ち継ぎ部にモルタルMを吹き付けた後、コンクリートを型枠4内に打設するので、従来のようにコンクリート打設に伴って粗骨材が型枠4の表面に現れることにより粗骨材とモルタルMとの分離に起因するジャンカや、モルタルMの打設ムラにより発生する局部的なジャンカの発生を防止することができる。また、モルタルMをモルタル吹き付け管3によって吹き付けるため、打ち継ぎ部に生じるコールドジョイントを防止することができる。その結果、施工欠陥のない良好なコンクリート柱及びコンクリート梁とすることができる。また、コンクリートの打設を妨げることなく、モルタルMの打設を簡便に独立して行うことができるので、打設速度を低下せずに適用でき、さらに設備費・労務費等の費用を抑えることができる。
また、モルタルMの吹き付けは、矩形管であるモルタル吹き付け管3を柱主筋11,11間や梁主筋21,21の間に挿入することによって行えるので、矩形管を使用することにより狭い鉄筋間にも挿入でき、鉄筋量が多く、鉄筋の配置が混み合った箇所でも容易に挿入することができ、所定箇所に確実にモルタルMを吹き付けることができる。そして、ジャンカ発生の防止に繋がる。
【0011】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施の形態では、コンクリート柱及びコンクリート梁について適用したが、この場合に限るものではなく、コンクリート壁にも適用できるのは勿論であり、コンクリート構造物であればその他のものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンクリート柱及びコンクリート梁の施工方法を示すための側断面図である。
【図2】従来例を示したもので、コンクリート柱及びコンクリート梁の施工方法を示すための側断面図である。
【符号の説明】
【0013】
4 型枠
11 柱主筋
11a 下端部
12 帯筋
21 梁主筋
22 肋筋
M モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の施工方法において、
鉄筋が配筋された型枠内に、コンクリート構造物の下端部又は打ち継ぎ部にモルタルを吹き付けるモルタル吹き付け工程と、
前記モルタル吹き付け後に、コンクリートを打設するコンクリート打設工程とを備えることを特徴とするコンクリート構造物の施工方法。
【請求項2】
前記モルタル吹き付け工程は、円管又は矩形管を鉄筋間に挿入することによってモルタルを吹き付けることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の施工方法。

【図1】
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【図2】
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