説明

コンクリート構造物の補修方法及びそのコンクリート構造物

【課題】 コンクリート構造物に繊維シートを接着した後もコンクリート構造物の表面に存在するひび割れなどの劣化の進展が目視観察が可能であり、施工時の作業性も良好で、繊維シートをコンクリート構造物表面に、より安定して保持できるとともに、長期的に信頼性の高い補修が可能であるコンクリート構造物の補修方法を提供すること。
【解決手段】 コンクリート構造物の表面に、プライマーと繊維接着剤からなる2液主剤型のアクリル樹脂接着剤で繊維シートを接着するコンクリート構造物の補修方法であって、プライマーのJIS K 7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が200〜2,000mPa・sであり、繊維接着剤の2液の混合直後の同粘度が2,500〜5,000mPa・sで、混合後5分間静置したときの同粘度が15,000〜30,000mPa・sであるコンクリート構造物の補修方法を構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維シートをコンクリート構造物表面に接着するコンクリート構造物の補修方法、及びその補修方法により補修されたコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート構造物は、そのものの経年劣化、地震、地盤沈下等の様々な要因により、コンクリートにひび割れが発生し、ひび割れが併合するとその箇所にはく落等の危険が生じる。したがってコンクリート構造物にひび割れのような変化が生じた場合には、その変化の種類や程度等を考慮して適切な補修や補強を行う必要がある。
【0003】
従来より、劣化したコンクリート構造物に対する補修方法として、炭素繊維、ガラス繊維、又はアラミド繊維といった強化繊維を、シート状や織物状に成型した繊維シートを、エポキシ樹脂等の常温硬化性樹脂でコンクリート構造物表面に接着する方法が行われている(特許文献1〜特許文献4参照)。
【0004】
特許文献1には、炭素繊維の補強層と繊維の接着補助層を一体化した繊維シートを常温硬化型の樹脂でコンクリート表面に接着するコンクリート構造物の補修方法が開示されている。
しかしながら、このコンクリート構造物の補修方法は、炭素繊維を繊維シートとして使用するものであり、炭素繊維は黒色不透明であるため、繊維シート接着後には、コンクリート表面の状態観察ができない、炭素繊維は導電性のため、電化された鉄道トンネル内で施工する際に、短絡事故を起こすおそれがあるなどの課題があった。
【0005】
特許文献2には、繊維シートと可撓性のある樹脂を一体化したFRPシートをパテ状の樹脂でコンクリート表面に接着する繊維シート接着工法が開示されている。
しかしながら、この繊維シート接着工法では、補強繊維の周囲を基材樹脂で一体化したFRPシートを使用するため、コンクリートとの間に空気を巻き込まないで貼り付ける作業が繁雑であることや、繊維シートと基材樹脂とを一体化しているため質量が大きく、天井面等へ施工する際の作業性が低下したり、一度貼り付けたFRPシートが剥がれ落ちてくることがあるなどの課題があった。
【0006】
特許文献3には、繊維シートと接着剤併用のアンカーを使用したコンクリート構造物に対する補修方法が開示されている。
しかしながら、このコンクリート構造物に対する補修方法は、アンカー設置のために、コンクリートに穴を開けるものとして、一般的に使用するものではない段付きドリルを使用するものであり、先端部の拡底には六角形のフランジ部をラチェットで締める作業が必要で、作業が繁雑で時間がかかるなどの課題があった。
【0007】
特許文献4には、コンクリート構造物表面にプライマーを塗布し、アクリル系の接着剤を用いて、アラミド繊維シートを接着するコンクリート構造物の補修方法が開示されている。
しかしながら、特許文献4には、特定の粘度のプライマーや接着剤を使用することについては全く記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−044322号公報
【特許文献2】特開2009−162033号公報
【特許文献3】特許第4113922号公報
【特許文献4】特開2001−355343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、施工の作業性が良好で、補修後も目視でコンクリート構造物表面に存在するひび割れなどの劣化の進展を確認することができ、耐久性に優れるコンクリート構造物の補修方法及びそのコンクリート構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)コンクリート構造物の表面に、プライマーと繊維接着剤からなる(メタ)アクリル酸エステルを主原料とする2液主剤型のアクリル樹脂接着剤で繊維シートを接着するコンクリート構造物の補修方法であって、前記プライマーの、JIS K 7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が200〜2,000mPa・sであり、前記繊維シートが、複数のフィラメントを束ねたストランドを2方向又は3方向に配列したメッシュ状のもので、複数のストランドで囲まれたメッシュの形状が1辺2〜20mmの四角形又は三角形であり、前記繊維接着剤の、2液の混合直後の、JIS K 7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が2,500〜5,000mPa・sで、混合後5分間静置したときのJIS K 7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が15,000〜30,000mPa・sであるコンクリート構造物の補修方法である。
(2)コンクリート構造物の表面に、前記プライマーを塗布し、その後前記繊維接着剤を塗布し、前記繊維シートを貼り付け、さらに前記繊維接着剤を塗布して、前記繊維シートをコンクリート構造物の表面に接着する前記(1)のコンクリート構造物の補修方法である。
(3)前記繊維シートを構成するフィラメントがアラミド繊維からなる前記(1)又は(2)のコンクリート構造物の補修方法である。
(4)前記プライマーと前記繊維接着剤が透明又は半透明である前記(1)〜(3)のいずれか一項のコンクリート構造物の補修方法である。
(5)前記プライマーの塗布量が、0.05〜0.5kg/m2である前記(1)〜(4)のいずれか一項のコンクリート構造物の補修方法である。
(6)前記繊維接着剤の塗布量が、0.4〜1.1kg/m2である前記(1)〜(5)のいずれか一項のコンクリート構造物の補修方法である。
(7)コンクリート構造物に設けた孔に、ステンレス製の皿と拡底型アンカー本体からなる保持器具を設置し、拡底型アンカー本体とコンクリート構造物の孔壁の隙間に、JIS K 7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が50,000〜150,000mPa・sであり、ステンレスとの引張せん断接着強さが5N/mm2以上であるアクリル樹脂充填材を充填して固定し、前記プライマーと前記繊維接着剤で接着した前記繊維シートを固定する前記(1)〜(6)のいずれか一項のコンクリート構造物の補修方法である。
(8)前記保持器具の皿を、前記アクリル樹脂充填材又は前記繊維接着剤で被覆し、皿表面を大気から遮断する前記(7)のコンクリート構造物の補修方法である。
(9)前記繊維接着剤のステンレスとの引張せん断接着強さが5N/mm2以上である前記(8)のコンクリート構造物の補修方法である。
(10)前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のコンクリート構造物の補修方法により補修されたコンクリート構造物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンクリート構造物に繊維シートを接着した後もコンクリート構造物の表面に存在するひび割れなどの劣化の進展が目視観察が可能であり、施工時の作業性も良好で、繊維シートを接着剤、又は接着剤と保持器具で設置固定し、さらに保持器具の皿をアクリル樹脂充填材又は繊維接着剤で被覆することにより、繊維シートをコンクリート構造物表面に、より安定して保持できるとともに、長期的に信頼性の高い補修が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のコンクリート構造物の補修方法に使用する繊維シートの一実施態様を示す代表的な形状図である。
【図2】本発明のコンクリート構造物の補修方法に使用する繊維シートの他の実施態様を示す形状図である。
【図3】本発明のコンクリート構造物の補修方法の全体構成を示す代表的な形状図である。
【図4】本発明のコンクリート構造物の補修方法の効果を調べるための目視観察試験方法を説明するための概略構成図である。
【図5】本発明のコンクリート構造物の補修方法のアクリル樹脂充填材の効果を調べるための試験方法を説明するための概略構成図である。
【図6】本発明のコンクリート構造物の補修方法の耐久性を調べるための試験方法を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るコンクリート構造物の補修方法及びそのコンクリート構造物を図面を用いて詳しく説明するが、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。
【0014】
本発明で使用する繊維シートは、複数のフィラメントを束ねたストランドを2方向又は3方向に配列したメッシュ状のものである。
図1は、本発明のコンクリート構造物に使用する繊維シートの一実施態様を示す代表的な形状図である。
図1において、繊維シート1は複数のフィラメントを束ねたストランド2を2方向にシート状に配列したもので、配列したストランド2により辺aと辺bの四角形のメッシュが形成される。ここで四角形の辺a又はbは2〜20mmである。
【0015】
図2は、本発明で使用する繊維シートの他の実施態様を示す形状図である。
図2の繊維シート1は、ストランド2を3方向に配列したもので、それぞれ配列したストランドにより辺c、d、及びeを持つ三角形のメッシュが形成される。ここで三角形の辺c、d、及びeは2〜20mmである。
【0016】
図1又は図2に示した形状の繊維シートを使用することにより、繊維シートをコンクリート構造物表面に接着した後も繊維シートのメッシュによりコンクリート構造物表面のクラック、ひび割れなどの劣化の進展を目視観察することが可能となるが、四角形又は三角形のメッシュの形状の1辺が2mm未満だと、例えば、コンクリート構造物表面の0.2mmのひび割れが観察しにくくなり、四角形又は三角形のメッシュの形状の1辺が20mmを超えると繊維シートの剛性が低くなり、繊維シートの実質的なコンクリート構造物表面との接触面積が小さくなり、繊維シートの貼り付け作業中に繊維シートの自重により剥がれ落ちが生じるなど、作業性が低下する恐れがある。
【0017】
繊維シートの材質は、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、及びナイロン繊維等、補強効果があるものであればどのようなものでもよく、繊維シートを形成するにあたっては一種又は二種以上の材質を選択することができる。とくに電化された鉄道トンネルでの使用をも含めて考えた場合には、繊維シート自体の非導電性、補強の効果をあわせ考えアラミド繊維の使用が好ましい。
【0018】
本発明に用いられる接着剤は、一種類以上の(メタ)アクリル酸エステルと有機過酸化物とを含有する液と、一種類以上の(メタ)アクリル酸エステルと有機過酸化物を分解する還元物質とを含有する液からなる、(メタ)アクリル酸エステルを主原料とする2液主剤型のアクリル樹脂接着剤で、プライマーと繊維接着剤から構成される。施工後のコンクリート構造物表面の変状観察を可能とするためにこれらの接着剤は、透明又は半透明なものであることが好ましい。このような透明性のある接着剤を使用することにより、繊維シートをコンクリート構造物表面に接着して補強(補修)した後も、繊維シートを通してコンクリート構造物の表面のクラック、ひび割れなどの劣化の進展を直接目視観察することが可能となる。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステルを主原料とする2液主剤型のアクリル樹脂接着剤は、2液の混合比が多少ずれた場合でも硬化不良が発生しにくいことや、硬化した後の接着剤の性状に大きな影響を与えないので、屋外等コンクリート構造物を補修する現場での品質確保に有用である。
【0020】
プライマーは、コンクリート構造物と繊維接着剤との接着性増強のため使用するもので、コンクリート構造物表面に塗布することにより、コンクリート構造物に含浸硬化する。そして、コンクリート構造物表面に、硬化したプライマー層を形成することにより、プライマー塗布の後に施工する繊維接着剤との接着性を高める目的で、プライマーの粘度は、より低粘度であることが好ましいが、コンクリート構造物の縦の面や天井面への施工時に、プライマーの垂れ落ちなどによる周囲の汚染をできるだけ防ぐ観点から、本発明では、JIS K7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が200〜2,000mPa・sである。粘度が200mPa・s未満では垂れ落ちが激しくなったり、ほとんどがコンクリート構造物に染みこみ、コンクリート構造物表面にプライマー層を形成しない恐れがある。また、粘度が2,000mPa・sより高いとコンクリート構造物への含浸性が低下し、長期の接着耐久性が得られない恐れがある。
プライマーの塗布量は、プライマーの含浸硬化の程度、長期の接着耐久性、及び作業性等の面から、0.05〜0.5kg/m2が好ましく、0.1〜0.3kg/m2がより好ましい。
【0021】
繊維接着剤は、硬化したプライマー層の上に塗布して繊維シートを貼り付けるための接着剤で2液の混合時、塗布の時には低粘度であることが作業性の面で好ましいが、低粘度過ぎると貼り付けた繊維シートが繊維シート自体の自重や自然風により剥がれ落ちる恐れがあるので、本発明では、2液の混合直後のJIS K 7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が2,500〜5,000mPa・sである。
混合直後とは2液をはかり取り、電動ミキサーで1分間撹拌したあとのことをいう。混合直後の粘度が2,500mPa・s未満の場合、塗布できる厚みが確保できないため繊維シートの貼り付け作業が困難となる恐れがあり、5,000mPa・sより高くなると混合性や塗布作業性が低下する恐れがある。
【0022】
本発明では、通常、繊維接着剤を、例えば、ローラー塗布などで、塗布してから、5分程度経過後に繊維シート接着の作業を行う。
繊維接着剤は、繊維シート貼り付け後のコンクリート構造物表面への繊維シート保持性を高めるために、本発明では、2液を混合しその後5分間静置したときのJIS K 7117-1に準じて測定した20℃、20rpmでの粘度が15,000〜30,000mPa・sである。粘度が15,000mPa・s未満では、貼り付けた繊維シートが自然風で剥がれ落ちやすくなり、粘度が30,000mPa・sより高くなると繊維接着剤が繊維となじみにくくなり、繊維シートの貼り付け作業が繁雑になる恐れがある。
【0023】
本発明で使用する繊維接着剤の塗布量は、繊維シートを接着した後もコンクリート構造物の表面状態が目視観察可能とする目的を逸脱しない量であり、長期の接着耐久性や繊維シート貼り付け後の下地のコンクリートの可視性などの面から、0.4〜1.1kg/m2が好ましく、0.5〜0.8kg/m2がより好ましい。
【0024】
図3は、本発明のコンクリート構造物の補修方法の全体構成を示す代表的な形状図であり、本発明に使用するいずれもステンレス製である皿と拡底型アンカー本体で構成される保持器具の実施態様を示す代表的な図面である。
拡底型アンカー本体4は、中空構造の本体の表面に環状溝を設けると共に、先端部からスリットを設け、中空部に打込みピンを挿入したものである。
皿5は中心部に凹部を形成したカップ部材の底部に通孔を設け、該カップ部材の周縁部にフランジ部材が形成されている。
保持器具の施工方法は、特に限定されるものではないが、まず、コンクリートに、拡底型アンカー本体4の長さより10mm程度長く、削孔径は拡底型アンカー本体4の直径より0.6mm程度広く削孔し、孔内の削りカスを除去清掃し、アクリル樹脂充填材6を孔内へ満たし、その後、皿5の通孔へ拡底型アンカー本体4を挿入した保持器具3を孔内に差し込み、打ち込みピンをハンマーで打撃して拡底型アンカー本体4の底部を広げて固定を行う。施工後、余分のアクリル樹脂充填材6が孔内よりはみ出してくるので、ゴムベラなどを使ってはみ出したアクリル樹脂充填材6で皿を被覆する。なお、アクリル樹脂充填材が不足する場合は、繊維接着剤で皿を被覆することも可能である。
図3に示すとおり保持器具3は、プライマーと繊維接着剤を構成とする接着剤で貼り付けられた繊維シート9を貫通して、あらかじめ設けたコンクリート構造物8の孔に設置固定する。皿5はプライマーと繊維接着剤で貼り付けられた繊維シート9をコンクリート構造物表面へ押さえつける機能を有する。
【0025】
図3に示すとおり、本発明では拡底型アンカー本体4と、コンクリート構造物8に削孔した孔の壁との隙間にアクリル樹脂充填材6を充填させることが好ましい。アクリル樹脂充填材6がないとアンカー本体4の引き抜き荷重が低くかったり、長期の震動で引き抜き荷重が低下したりする場合がある。
【0026】
アクリル樹脂充填材は、縦面や天井面への施工時に、保持器具が、充分にコンクリート構造物の孔に保持される必要があるので、アクリル樹脂充填材の垂れ落ちの面、アンカー本体の引き抜き荷重低下の面、長期の震動での引き抜き荷重低下の面、アクリル樹脂充填材の充填性の面、及びアンカー本体の孔内への挿入性の面などから、JIS K 7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が50,000〜150,000mPa・sであることが好ましい。
【0027】
さらに図3に示すとおり、保持器具3の皿5を、アクリル樹脂充填材(7)で被覆することは、保持器具全体で、より一層コンクリート構造物8と、接着剤で貼り付けられた繊維シート9とを一体化させるために好ましい。アクリル樹脂充填材(7)の代わりに繊維接着剤で保持器具3の皿5を被覆することも可能である。
【0028】
このためアクリル樹脂充填材や繊維接着剤の、保持器具を構成する皿の材質であるステンレスとのJIS K 6850による引張せん断接着強さが、長期の震動による被覆の破壊の面、保持器具のコンクリート構造物や繊維シートとの一体化が低下する面、及び耐久性の面などから、5N/mm2以上であることが好ましい。
【0029】
本発明はコンクリート構造物の補修現場で、通常のコンクリート構造物の繊維シートの接着補強(補修)の手順と基本的に変わらない。すなわち手順としては、コンクリート構造物表面のケレン処理、プライマー塗布、繊維接着剤を用いた繊維シート貼り付けの順番で行うことができる。保持器具の設置固定は繊維シートの貼り付け作業後に繊維接着剤が硬化する前、硬化した後のいずれに行っても良い。
【0030】
コンクリート構造物への繊維シートの貼り付け枚数は、必要とされる補修、補強の程度に応じて適宜選択されるが、本発明の目的である施工後のコンクリート構造物表面の目視観察が可能な範囲、例えば2枚以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0031】
次に実施例により、本発明の効果を確認する目的で行った試験の詳細を述べる。
【0032】
実験例1
表1は、接着剤のひとつであるプライマーの粘度適性を調べた試験結果である。
JIS A 5371に規定されるプレキャスト無筋コンクリート製品中の舗装用平板の種類N300の表面をサンドブラスト処理して試験体とし、プライマーの粘度適性を調べた。
温度20℃、相対湿度60%の雰囲気で蛍光染料を0.1質量%溶解させた表1に示す粘度のプライマーを、試験体の縦面に、0.2kg/m2塗布し、7日間放置し、その後、プライマーの粘度適性を調べた。評価は縦面の施工状況、7日後の表面の状態、及び断面の状態を観察し、それらに基づいて、期待されるプライマーの効果を評価した。結果を表1に併記する。
なお、比較として粘度100mPa・sの比較用プライマーを調製して使用した。
【0033】
<使用材料>
プライマー:2液主剤型アクリル樹脂接着剤、粘度250mPa・sを使用し、アエロジルを添加して粘度を調整したもの、透明又は半透明
比較用プライマー:2液主剤型アクリル樹脂接着剤、試作品、粘度100mPa・s、透明
【0034】
<評価方法>
粘度 :JIS K 7117-1に準じて、20℃、20rpmで測定
縦面の施工状況:
目視し、塗布したプライマーの量の50質量%以上が垂れ落ちた場合を不可、30質量%以上、50質量%未満が垂れ落ちた場合を可、10質量%以上、30質量%未満が垂れ落ちた場合を良、10質量%未満が垂れ落ちた場合を優とした。
7日後の表面の状態:
目視し、プライマーが表面に残らず全て含浸した場合を不可、表面にプライマーの硬化層を形成し、その面積が、表面全体の面積の35%以上、50%未満である場合を可、表面にプライマーの硬化層を形成し、その面積が、表面全体の面積の50%以上、75%未満である場合を良、表面にプライマーの硬化層を形成し、その面積が、表面全体の面積の75%以上である場合を優とした。
断面の状態:
試験体をダイヤモンドカッターで切断し、材料の塗布断面に紫外線ランプを照射し、目視により含浸硬化状態を観察した。塗布したプライマーが塗布表面近傍に残らないで、試験体内部でほぼ全て拡散し、紫外線ランプによる蛍光発色が認められない場合又は塗布したプライマーが、塗布表面近傍に残っているが、0.1mm程度の含浸が確認できない場合を不可、塗布したプライマーが、塗布表面近傍に残っていて、0.1mm未満の含浸が部分的に認められる場合を可、塗布したプライマーが、塗布表面近傍に残っていて、0.1mm以上、0.5mm未満の含浸が認められる場合を良、塗布したプライマーが、塗布表面近傍に残っていて、0.5〜1mmの含浸が認められる場合を優とした。
期待されるプライマーの効果:
縦面の施工状況、7日後の表面の状態、及び断面の状態の3項目の評価で、1項目でも不可がある場合は不可、3項目の評価に不可がなく、2項目の可がある場合は可、3項目の評価に不可がなく、可が1項目ある場合を良、3項目の評価に不可や可がない場合を優とした。
【0035】
【表1】

【0036】
表1よりプライマーの粘度は200〜2,000mPa・sが好適であることがわかった。
【0037】
実験例2
表2は接着剤のひとつである繊維接着剤の粘度適性を調べた結果である。
市販のボックスカルバートの内部天井表面を用い、その105cm×105cmの表面をブラスト処理し、プライマーαを0.2kg/m2塗布し、繊維シートAを、表2に示す粘度の繊維接着剤0.6kg/m2(繊維シート貼り付け前0.4kg/m2、繊維シート貼り付け後0.2kg/m2)で貼り付けた。材料の手動による混合のしやすさ(材料の混合性)、繊維シート貼り付け作業の状況、強制風による影響(対風圧性)を観察し、総合結果を評価した。結果を表2に併記する。
【0038】
<使用材料>
繊維シートA:アラミド繊維、繊維量90g/m2、メッシュ形状は四角形で四角形の各辺は7〜8mm、100cm×100cm
プライマーα:アクリル系樹脂接着剤、粘度250mPa・s、透明
繊維接着剤:アクリル系樹脂接着剤、アエロジルを添加して粘度を調整したもの、透明又は半透明
【0039】
<評価方法>
材料の混合性:
繊維接着剤の2液を、各々500gづつ、径14cmで容量2リットルの円筒状プラスチック製容器に秤入れ、直径7mmのガラス棒で撹拌し、撹拌混合のしやすさを評価した。目視観察で、撹拌混合で全体の色相がほぼ均一になったと認められる時間が、60秒より長い場合を不可、45秒を超え、60秒以内の場合を可、30秒を超え、45秒以内の場合を良、30秒以内の場合を優とした。
繊維シート貼り付け作業状況:
粘度が低いため、塗布した繊維接着剤の垂れ落ちが激しく、0.4kg/m2の塗布が確保できない場合、又は、粘度が高すぎて貼り付けた繊維シートがコンクリート表面に密着しない場合を不可、塗布した繊維接着剤の垂れ落ちは認められるが、繊維シートは密着している場合を可、塗布した繊維接着剤の垂れ落ちがなく、かつ、繊維シートが密着している場合を良とした。
耐風圧性:
ボックスカルバート内に送風機で風速5m/sの強制風を送り施工上の問題がないかを確認、端部から繊維シートが剥がれ、全体が落ちた場合を不可、端部だけの剥がれが一部に認められるが全体は保持されている場合を可、剥がれが認められない場合を良とした。
総合結果:
前記評価項目の結果で、1つ以上不可がある場合を不可、不可がなく、可が2つ以上の場合を可、不可がなく、可が1つの場合を良、前項目で不可や可がない場合を優とした。
【0040】
【表2】

【0041】
表2より、繊維接着剤の粘度は、2液の混合性、繊維シートの貼り付け作業性、及び耐風圧性の面から、2液の混合直後の粘度が2,500〜5,000mPa・sで、混合後5分間静置したときの粘度が15,000〜30,000mPa・sが好適であることがわかる。
【0042】
実験例3
図4は、本発明のコンクリート構造物の補修方法後の表面の目視観察試験方法を説明するための概略構成図である。図4(a)は側面図、図4(b)は平面図である。
市販の10cm×10cm×40cmのコンクリート製品を、ダイヤモンドカッターで10cm×10cm×20cmの二つに切断し、切断面を突き合わせ、直径0.2mmの鋼線11をスペーサーとし、この隙間にアクリル樹脂製のコンクリート構造物用ひび割れ注入材12を注入し、硬化し、接合してコンクリート構造物試験体を作製した。
このコンクリート構造物試験体の一面をサンドブラスト処理し、プライマーα(プライマー13)を0.2kg/m2塗布し、硬化させた。
次に、繊維接着剤a(繊維接着剤14)を0.4kg/m2塗布し、表3に示す繊維シート15を貼り付け、さらに、繊維接着剤aを0.2kg/m2塗布し、補修したコンクリート構造物試験体を得た。
補修したコンクリート構造物試験体の表面に、新規のひび割れを発生させるために荷重負荷試験を行った。荷重負荷試験は万能試験機(島津製作所社製オートグラフAG−300KNG)を用いた三等分荷重曲げ試験方法(JIS A 1106に準拠)にて行い、最大荷重が観察された時点で除荷し観察を行った。また、模擬ひび割れとしてあらかじめ設けた0.2mmの隙間の状況も観察した。結果を表3に併記する。
【0043】
<使用材料>
繊維シートB:アラミド繊維、繊維量180g/m2、メッシュ形状は四角形で四角形の各辺は2〜3mm
繊維シートE:アラミド繊維、繊維量325g/m2、ストランド間の隙間1mm以下
繊維接着剤a:アクリル樹脂接着剤、混合直後の粘度4,000mPa・s、混合後5分間静置したときの粘度21,000mPa・s、透明
【0044】
<評価方法>
あらかじめ設けた0.2mmの隙間の観察状況:
模擬ひび割れとしてあらかじめ設けた0.2mmの隙間の状況観察が不可能の場合を不可、目視で観察が可能の場合を良とした。
載荷で発生した新規ひび割れの観察状況:
観察が不可能の場合を不可、目視でひび割れが発見可能の場合を良、目視でひび割れが容易に発見可能の場合を優とした。
【0045】
【表3】

【0046】
表3に示すように、ストランドにより形成されるメッシュ形状の1辺が2mm以上であれば、コンクリート構造物試験体表面の、あらかじめ設けた0.2mmの隙間や新規に発生した0.2mmのひび割れが観察、発見できることが確認できた。
【0047】
実験例4
表4は本発明の繊維シートのストランドで形成されるメッシュ形状の1辺が20mm以下であることの効果を示す試験結果である。
市販のボックスカルバートの内部天井表面を用い、105cm×105cmの表面をブラスト処理し、プライマーαを0.2kg/m2塗布し、表4に示す繊維シートを繊維接着剤a0.4kg/m2で貼り付け、天井面の施工性を評価したこと以外は実験例3と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0048】
<使用材料>
繊維シートC:アラミド繊維、繊維量90g/m2の繊維シートαの経緯方向のストランドを2本につき1本を撤去したもの、メッシュ形状は四角形で各辺は14〜16mm
繊維シートD:アラミド繊維、繊維量90g/m2の繊維シートαの経緯方向のストランドを3本につき2本撤去したもの、メッシュ形状は四角形で各辺は21〜24mm
【0049】
<評価方法>
耐風圧性:
ボックスカルバート内に送風機で風速5m/sの強制風を送り、施工上の問題がないかを確認した。評価は、繊維シート貼り付け作業の状況、強制風による影響の確認、繊維シートの剛性が低く、貼り付け作業が困難で、コンクリート表面との接触面積が小さく、強制風による繊維シートの剥がれ落ちが起きる場合を不可、貼り付け作業が容易な場合を良とした。
【0050】
【表4】

【0051】
表4に示すとおり繊維シートのストランドで形成されるメッシュ形状の1辺は耐風圧性から20mm以下であることが好ましい。
【0052】
実験例5
表5に示す量のプライマーαを塗布し、硬化させ、次に、繊維接着剤aを0.4kg/m2塗布し、繊維シートAを貼り付け、さらに、繊維接着剤aを0.2kg/m2塗布し、補修したコンクリート構造物を得、縦面の施工状況、断面の状態、及びそれらに基づく総合評価を評価したこと以外は実験例3と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0053】
<評価方法>
総合評価:
縦面の施工状況と断面の状態の2項目の評価結果で、不可がある場合は不可、不可がなく、可がある場合を可、不可や可がなく良が一つの場合を良、優が二つの場合を優とした。
【0054】
【表5】

【0055】
表5よりプライマーの塗布量は0.05〜0.5kg/m2が好適であることがわかった。
【0056】
実験例6
プライマーαを0.2kg/m2塗布し、硬化させ、次に、表6に示す量の繊維接着剤aを塗布し、繊維シートAを貼り付け、さらに、繊維接着剤aを0.2kg/m2塗布し、補修したコンクリート構造物を得、繊維シート貼り付け前に塗布した繊維接着剤の状態と繊維シートの貼り付き状況、及びそれらに基づく総合評価を評価したこと以外は実験例3と同様に行った。結果を表6に併記する。
【0057】
<評価方法>
繊維シート貼り付け前に塗布した繊維接着剤の状態:
繊維接着剤が少ないため、繊維シート貼り付け範囲全体に繊維接着剤が塗布できない場合、又は繊維接着剤が多いため、垂れ落ちが顕著に認められる場合を不可、繊維接着剤が少ないが何とか繊維接着剤を繊維シート貼り付け範囲全体に塗布できる場合、又は繊維接着剤が多いため、垂れ落ちが認められる場合を可、繊維接着剤を繊維シート貼り付け範囲全体に容易に塗布でき、繊維接着剤の垂れ落ちが認められない場合を良とした。
繊維シートの貼り付き状況:
繊維接着剤が少ないため繊維シートが貼り付け面から浮き上がっている箇所がある場合を不可、繊維シートが貼り付け面から浮き上がっている箇所がないが、部分的に繊維シートのストランドへの繊維接着剤の含浸が足りない箇所が認められる場合を可、繊維シートが貼り付け面から浮き上がっている箇所がなく、繊維シートのストランドへの繊維接着剤含浸が充分である場合を良とした。
総合評価:
前記繊維シート貼り付け前に塗布した繊維接着剤の状態と繊維シートの貼り付き状況の2項目評価で不可がある場合を不可、前記2項目とも可の場合を可、1項目が可で1項目が良の場合を良、2項目とも良の場合を優とした。
【0058】
【表6】

【0059】
表6より、繊維接着剤の塗布量は繊維シート貼り付け前後の合計で0.4〜1.2kg/m2が好適であることがわかった。
【0060】
実験例7
図5は本発明の保持器具の設置固定方法の効果を試験したときの試験体の概念図である。保持器具とアクリル樹脂充填材の接着強度について検討した。
市販のボックスカルバートの天井のあらかじめ削孔した孔に保持器具3のうちのアンカー本体4のみを挿入して設置固定した。
表7に示すように、アクリル樹脂充填材を充填し、引張試験を行った。結果を表7に併記する。
【0061】
<使用材料>
アクリル樹脂充填材イ:粘度250mPa・s、JIS K 6850によるステンレスとの引張せん断接着強さ20N/mm2
アクリル樹脂充填材ロ:粘度50,000mPa・s、JIS K 6850によるステンレスとの引張せん断接着強さ12N/mm2
アクリル樹脂充填材ハ:粘度100,000mPa・s、JIS K 6850によるステンレスとの引張せん断接着強さ12N/mm2
アクリル樹脂充填材ニ:粘度150,000mPa・s、JIS K 6850によるステンレスとの引張せん断接着強さ7N/mm2
【0062】
<試験・評価方法>
引張試験:
アンカー本体を設置固定し、24時間経過後に、引張試験用のアダプターを設置し、油圧式のセンターホールジャッキで最大荷重を計測した。
評価:
アクリル樹脂充填材の粘度が低く、天井面の施工では充填されない場合やアンカー本体抜けとなる場合を不可、アクリル樹脂充填材が天井面の施工で垂れ落ちがなく、アンカー本体が破断する場合を良とした。
【0063】
【表7】

【0064】
表7に示すとおり、保持器具のコンクリートへの設置固定にアクリル樹脂充填材を使用することで信頼性の高い固定が可能である。
【0065】
実験例8
図6は本発明のコンクリート構造物の補修方法を実際のコンクリート構造物へ適用し、耐久性を評価したときの試験概要図である。
補修したコンクリート構造物は新幹線トンネルの本抗とは隔離された横坑の側壁コンクリートである。なおこの場所は、本抗とは隔離されているが新幹線通過時の衝撃風を受ける場所である。
側壁のコンクリート10をブラスト処理し、プライマーα(プライマー13)を0.2kg/m2塗布し、その後、繊維接着剤a(繊維接着剤14)を0.4kg/m2塗布し、直ちに繊維シートA(繊維シート15)の110cm×110cmを貼り付け、再度繊維接着剤aを0.2kg/m2塗布し全体を仕上げた。
その後、保持器具3を設置固定するための孔をコンクリートに削孔し、アクリル樹脂充填材6(図6にて図示せず)を孔内に充填し、保持器具3を設置固定した。
保持器具は繊維シートの端部から5cm内側に50cmピッチで設置固定した。さらに保持器具3を構成する皿5(図6にて図示せず)をアクリル樹脂充填材6(図6にて図示せず)で被覆した(被覆した状態は7)。
なお繊維シートの4辺の端部5cmは保持器具の効果を確認するために敢えて接着剤の塗布は行わなかった。
試験体作製後8年経過した後の、下地の目視確認、その他外観観察を行った。結果を表8に示す。
また、アクリル樹脂充填材6の代わりに、皿5を繊維接着剤bで同様に被覆した結果も併記する。
【0066】
<使用材料>
繊維接着剤b:アクリル樹脂接着剤、混合直後の粘度4,000mPa・s、混合後5分間静置したときの粘度21,000mPa・s、ステンレスとの引張せん断接着強さ17N/mm2
【0067】
<測定・評価方法>
評価 :保持器具が抜け出している状態、保持器具の皿がもはや繊維シートを押さえ込んでいない状態であった場合を不可、図6の断面図の構成が完全に保たれている場合を良とした。
【0068】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明のコンクリート構造物の補修方法を適用することにより、繊維シートを接着した後もコンクリート構造物の表面状態が目視観察可能であり、繊維シートを接着した後のコンクリート構造物の表面の劣化の進展が目視で確認可能である。
したがって、繊維シートを接着した後のコンクリート構造物の剥落、崩落等の異常現象の発生前に早期に対策を講じることが可能となる。また長期にわたり接着剤と保持器具の相乗効果による安定した繊維シートのコンクリート構造物表面への保持が可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1 繊維シート
2 複数のフィラメントを束ねたストランド
3 保持器具
4 アンカー本体(拡底している状態)
5 皿
6 アクリル樹脂充填材
7 皿の被覆(アクリル樹脂充填材又は繊維接着剤)
8 コンクリート構造物
9 接着剤(プライマーと繊維接着剤)で貼り付けられた繊維シート
10a コンクリート試験体
10b コンクリート試験体
11 鋼線
12 ひび割れ注入材
13 プライマー
14 繊維接着剤
15 繊維シート
16 引張試験治具(全ネジで中をくり貫き円筒状としたもの)
a メッシュ形状の辺
b メッシュ形状の辺
c メッシュ形状の辺
d メッシュ形状の辺
e メッシュ形状の辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の表面に、プライマーと繊維接着剤からなる(メタ)アクリル酸エステルを主原料とする2液主剤型のアクリル樹脂接着剤で繊維シートを接着するコンクリート構造物の補修方法であって、前記プライマーの、JIS K 7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が200〜2,000mPa・sであり、前記繊維シートが、複数のフィラメントを束ねたストランドを2方向又は3方向に配列したメッシュ状のもので、複数のストランドで囲まれたメッシュの形状が1辺2〜20mmの四角形又は三角形であり、前記繊維接着剤の、2液の混合直後の、JIS K
7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が2,500〜5,000mPa・sで、混合後5分間静置したときのJIS K 7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が15,000〜30,000mPa・sであることを特徴とするコンクリート構造物の補修方法。
【請求項2】
コンクリート構造物の表面に、前記プライマーを塗布し、その後前記繊維接着剤を塗布し、前記繊維シートを貼り付け、さらに前記繊維接着剤を塗布して、前記繊維シートをコンクリート構造物の表面に接着することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の補修方法。
【請求項3】
前記繊維シートを構成するフィラメントがアラミド繊維からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンクリート構造物の補修方法。
【請求項4】
前記プライマーと前記繊維接着剤が透明又は半透明であることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のコンクリート構造物の補修方法。
【請求項5】
前記プライマーの塗布量が、0.05〜0.5kg/m2であることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載のコンクリート構造物の補修方法。
【請求項6】
前記繊維接着剤の塗布量が、0.4〜1.1kg/m2であることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちのいずれか1項に記載のコンクリート構造物の補修方法。
【請求項7】
コンクリート構造物に設けた孔に、ステンレス製の皿と拡底型アンカー本体からなる保持器具を設置し、拡底型アンカー本体とコンクリート構造物の孔壁の隙間に、JIS K 7117-1に準じて測定した20℃、20rpmの粘度が50,000〜150,000mPa・sであり、ステンレスとの引張せん断接着強さが5N/mm2以上であるアクリル樹脂充填材を充填して固定し、前記プライマーと前記繊維接着剤で接着した前記繊維シートを固定することを特徴とする請求項1〜請求項6のうちのいずれか1項に記載のコンクリート構造物の補修方法。
【請求項8】
前記保持器具の皿を、アクリル樹脂充填材又は繊維接着剤で被覆し、皿表面を大気から遮断することを特徴とする請求項7に記載のコンクリート構造物の補修方法。
【請求項9】
前記繊維接着剤のステンレスとの引張せん断接着強さが5N/mm2以上であることを特徴とする請求項8に記載のコンクリート構造物の補修方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のコンクリート構造物の補修方法により補修されたコンクリート構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−7290(P2012−7290A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141144(P2010−141144)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】