説明

コンクリート用型枠

【課題】ビル建築や土木建設等の分野において、コンクリート打設用として用いられるコンクリート用型枠に関し、従来の木製、金属製、合成樹脂製の型枠のような問題点がなく、しかも脱型後のコンクリートの圧縮強度を向上させることができるようなコンクリート用型枠を提供する。
【解決手段】コンクリート用型枠2が、自重の2.5〜5.0倍の水を含浸させたゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板、又は自重の1.3〜3.0倍の水を含浸させたトバモライトからなるケイ酸カルシウム板で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用型枠、さらに詳しくは、ビル建築や土木建設等の分野において、コンクリート打設用として用いられるコンクリート用型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビル建築や土木建設等の分野においては、コンクリートを打設するために、コンクリート打設用の型枠が用いられており、そのようなコンクリート用型枠としては、従来ではベニヤ板等の木製のものが用いられている。しかし、このような木製の型枠は、木製であるが故に複数回の使用に耐えず、また使用後はコンクリートミルク等が付着しているので他の用途に転用することもできず、大半は産業廃棄物として処分されているのが現状である。このような現状は木材資源の枯渇を招き、環境保護上も問題視されている。
【0003】
このような木製の型枠に代わり、多数回の使用に耐えるものとして、たとえば特許文献1に示すような金属製の型枠も開発されているが、木製の型枠に比べて重量があり、且つ現場での加工が困難なために普及していないのが現状である。
【0004】
そこで、これらに代わるものとして、たとえば特許文献2や特許文献3に示すような合成樹脂製の型枠も開発されている。しかし、合成樹脂製の型枠は、ベニヤ板等の木製の型枠や金属製の型枠に比べて強度が弱く、何らかの補強を必要とされる。そのために、従来では、たとえば発泡体の中に芯材として補強用繊維を混入させ、或いは発泡体芯材の片面又は両面に硬質合成樹脂からなる表面材を接着し、さらには発泡体よりなるパネルの外表面を加熱、軟化させた後、これに押圧力を加え圧縮して表皮層を形成する等の種々の手段が講じられているが、いずれも複雑な工程を必要として、型枠の製造コストが増大することとなっていた。
【0005】
上述のように、木製、金属製、合成樹脂製のいずれの型枠も、一長一短があり、結局、最も実用に供されているのはベニヤ板等の木製の型枠であるのが現状となっている。また、型枠の材質をどのように選定しても、脱型後のコンクリートの強度等の物性を向上させることは到底できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−161638号公報
【特許文献2】特開平6−129094号公報
【特許文献3】特開2002−47795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたもので、上記従来の木製、金属製、合成樹脂製の型枠のような問題点がなく、しかも脱型後のコンクリートの圧縮強度を向上させることができるようなコンクリート用型枠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上述のような点に鑑み、型枠の素材について鋭意研究した結果、型枠の素材としてケイ酸カルシウム板を用いることで、上記木製、金属製、合成樹脂製の型枠のような問題点がなくなり、しかも脱型後のコンクリートの強度を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、上記のような課題を解決するために、自重の2.5〜5.0倍の水を含浸させたゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板で構成されていることを特徴とするコンクリート用型枠を提供するものである。ゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板に含浸させる水は、自重の3.0〜4.5倍であることがより好ましい。
【0010】
また本発明は、 自重の1.3〜3.0倍の水を含浸させたトバモライトからなるケイ酸カルシウム板で構成されていることを特徴とするコンクリート用型枠を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上述のように、自重の2.5〜5.0倍の水を含浸させたゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板によってコンクリート用型枠を構成したものであるため、又は自重の1.3〜3.0倍の水を含浸させたトバモライトからなるケイ酸カルシウム板によってコンクリート用型枠を構成したものであるため、このようなコンクリート用型枠内にコンクリートを充填して打設すると、そのコンクリート用型枠を構成するゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板が自重の2.5〜5.0倍という多量の水を含浸させたものであるので、又はトバモライトからなるケイ酸カルシウム板が自重の1.3〜3.0倍の水を含浸させたものであるので、型枠内に充填されたコンクリート中の水が水蒸気となって飛散するのが極力防止されることとなり、その結果、このような型枠で打設された脱型後のコンクリートは、たとえば標準水中養生によって養生されたコンクリートと同程度の圧縮強度を有するものとなる。
【0012】
このように、本発明においては、標準水中養生を行っていないにもかかわらず、型枠の素材を、自重の2.5〜5.0倍の水を含浸させたゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板に選定することによって、又は自重の1.3〜3.0倍の水を含浸させたトバモライトからなるケイ酸カルシウム板に選定することによって、標準水中養生によって養生されたコンクリートと同程度の圧縮強度を有するコンクリートが得られることとなり、従来の木製、金属製、合成樹脂製等の型枠で打設されたコンクリートに比べて、圧縮強度が著しく向上することとなった。
【0013】
さらに、従来用いられていた木製の型枠の内側に本発明のケイ酸カルシウム板からなる型枠を配置して用いることもでき、この場合においても、コンクリートは内側に配置されたケイ酸カルシウム板からなる型枠内に充填されることとなるので、優れた圧縮強度のコンクリートが得られ、しかもケイ酸カルシウム板からなる型枠は充填されるコンクリートと接触するが、外側の木製の型枠は充填されるコンクリートと接触することがないので、木製の型枠は何度でも繰り返して使用することができ、その結果、木製の型枠の寿命が従来に比べて各段に延びるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態としてのコンクリート用型枠の施工例において、木製の型枠及びケイ酸カルシウム板からなる型枠を設置する工程を示す断面図。
【図2】同実施形態の施工例において、コンクリート型枠内にコンクリートを充填する工程を示す断面図。
【図3】同実施形態の施工例において、木製の型枠を脱型する工程を示す断面図。
【図4】同実施形態の施工例において、ケイ酸カルシウム板からなる型枠を脱型する工程を示す断面図。
【図5】他実施形態の施工例を示す断面図。
【図6】さらに他の実施形態の施工例を示す断面図。
【図7】圧縮強度の試験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のコンクリート用型枠は、上述のように、自重の2.5〜5.0倍の水を含浸させたゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板、又は自重の1.3〜3.0倍の水を含浸させたトバモライトからなるケイ酸カルシウム板で構成されたものである。
【0016】
このように多量の水をケイ酸カルシウム板に含浸させ、そのようなケイ酸カルシウム板でコンクリート型枠を構成し、その型枠でコンクリートを打設した場合に、打設されたコンクリートの圧縮強度は、上述のように標準水中養生によって養生されたコンクリートの圧縮強度と同程度に優れたものとなる。
【0017】
その理由は必ずしも定かではないが、一応、次のように推定される。すなわち、ケイ酸カルシウム板は水の吸収力が非常に高く、水とセメントと骨材とを混合して未だ湿潤状態にあるコンクリートを型枠内に充填した直後において、コンクリート中の水がケイ酸カルシウム板に不用意に吸収され、それによってコンクリートが固化する前に乾燥してしまうおそれがある。その結果、ケイ酸カルシウム板の吸水調整のバランスが崩れるとともにコンクリートの水分発散の調整も崩れるおそれがある。
【0018】
この点、自重の2.5倍以上の水を予めゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板に含浸させておくことで、又は自重の1.3〜3.0倍の水を予めトバモライトからなるケイ酸カルシウム板に含浸させておくことで、飽和含水量の水を含んだケイ酸カルシウム板が得られ、ケイ酸カルシウム板の吸水調整のバランスが維持されて、そのようなケイ酸カルシウム板で構成された型枠内に充填されるコンクリート中の水分が不用意に飛散するのが防止されるものと考えられる。このため、上記のような型枠からの脱型後のコンクリートの圧縮強度が優れたものになるものと推定される。
【0019】
一方、自重の5.0倍を超える水をゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板に含浸させた場合には、或いは自重の3.0倍を超える水をトバモライトからなるケイ酸カルシウム板に含浸させた場合には、ケイ酸カルシウム板の飽和含水量を超えることとなり、そのようなケイ酸カルシウム板で構成される型枠で打設されるコンクリートの圧縮強度が増加することがないばかりか、ケイ酸カルシウム板の品質が低下するおそれがある。この観点からは、ゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板に含浸させる水は、ケイ酸カルシウム板の自重の3.0〜4.5倍であることがより好ましい。
【0020】
本発明のコンクリート用型枠を構成するケイ酸カルシウム板は、ケイ酸質原料、石灰質原料と補強繊維を主成分として、ウェットマシンで抄造して得られた板である。このように得られたケイ酸カルシウム板は、強く安定した結晶構造を持ち、結晶構造を持たない他の板に比べて経年変化、温湿度による変質変形が少ない、安定した品質の不燃材である。
【0021】
本発明におけるケイ酸カルシウム板としては、主としてゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)からなるケイ酸カルシウム板が用いられる。ただし、トバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)を使用することも可能である。
【0022】
ゾノトライト及びトバモライトのいずれも、石灰質材料とケイ酸質材料(SiO2)を主な出発原料とし、混練、成形し、オートクレーブ処理して得ることができる。
【0023】
石灰質材料としてはセメント系材料が通常用いられる。CaOや水酸化カルシウムも利用できるが、成形後脱枠してオートクレーブ養生を行う場合には、自硬性の材料である、普通、早強、超早強、耐硫酸塩、中庸熱、低熱のポルトランドセメント、白色セメント、エコセメント等を好適に使用することができる。また、混合セメントである高炉セメント、フライアッシュセメントやシリカセメント等も好適に使用できる。
【0024】
一方、ケイ酸質材料としては、α−石英を主成分とするケイ石微粉末や産業副産物であるシリカフューム、籾殻灰、フライアッシュ等を使用することができる。石灰質材料とケイ酸質材料の混合比率は、特に限定されるものではないが、目的とする生成物がトバモライトである場合は、セメント系材料等の石灰質材料10〜90重量部とケイ酸質材料90〜10重量部であり、より好ましくは、石灰質材料40〜50重量部とケイ酸質材料60〜50重量部である。
【0025】
上記のオートクレーブ処理温度は、一般に110℃以上である。具体的には、目的とする生成物により異なり、トバモライトでは180℃、ゾノトライトでは200℃程度が好適であり、結晶性の低い水和物では、110℃から150℃程度であるのが好適である。
【0026】
ケイ酸カルシウム板の成形に際しては、型枠に原料スラリーを流し込んで成形し、若しくは加圧脱水成形し、或いは抄造成形した後、飽和水蒸気圧下でオートクレーブ養生してケイ酸カルシウム水和物とする方法、又は予めケイ酸カルシウム水和物を撹拌式オートクレーブなどで合成した後、加圧脱水してケイ酸カルシウム水和物とする方法等がある。後者の方法では、成形の際には、耐アルカリ性ガラス繊維などを繊維補強材として加えることもできる。
【0027】
この場合の繊維補強材としては、有機系及び無機系のいずれの繊維をも使用できる。有機系繊維補強材としては、セルロース繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維等を使用することができ、無機系繊維補強材としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維等を使用することができる。
【0028】
以下、本発明のより具体的な実施形態について説明する。
【0029】
(実施形態1)
本実施形態では、ベニヤ板からなる型枠と、ケイ酸カルシウム板で構成された型枠とを用いて、コンクリートの躯体を得る実施形態の施工例について説明する。ケイ酸カルシウム板としては、上述のように、自重の2.5〜5.0倍の水を含浸させたゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板、又は自重の1.3〜3.0倍の水を含浸させたトバモライトからなるケイ酸カルシウム板を用いる。
【0030】
このようなコンクリートの躯体を得る場合には、先ず図1に示すように、ベニヤ合板からなる型枠6、6を配置するとともに、そのベニヤ合板からなる型枠6、6の内面側に、ケイ酸カルシウム板で構成された型枠2、2を配置する。次に図2に示すように、型枠2、2間の空間部内にコンクリート1を充填する。次に、一定期間養生後、図3に示すようにベニヤ合板からなる型枠6、6を外して脱型した後、図4に示すように、ケイ酸カルシウム板で構成された型枠2、2を外して脱型することによって、コンクリート1の躯体が得られることとなる。
【0031】
この場合において、得られたコンクリート1の躯体は、上記のように自重の2.5〜5.0倍の水を含浸させたゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板、又は自重の1.3〜3.0倍の水を含浸させたトバモライトからなるケイ酸カルシウム板で構成された型枠2、2間の空間部内に充填して得られたものであるので、圧縮強度が非常に優れたものとなる。
【0032】
(実施形態2)
本実施形態では、金属製の型枠と、ケイ酸カルシウム板で構成された型枠とを用いて、コンクリートの躯体1を得る実施形態の施工例について説明する。型枠を構成するケイ酸カルシウム板としては、上記実施形態1と同じものを用いた。
【0033】
本実施形態では、図5に示すように、鋼板3の上に金属製の型枠4を四方に設置し、その型枠4で包囲される空間部の底面であって鋼板3の上部に、ケイ酸カルシウム板で構成された型枠2を設置し、次に型枠4内にコンクリート1を充填し、さらに充填されたコンクリート1の上部にケイ酸カルシウム板で構成された型枠2を設置する。一定期間養生後、上部のケイ酸カルシウム板で構成された型枠2を外すとともに、金属製の型枠4を外し、さらに下部のケイ酸カルシウム板で構成された型枠2からコンクリート1を剥離することによって、コンクリート1の躯体が得られることとなる。
【0034】
本実施形態においては、上記実施形態1と相違し、金属製の型枠4内に充填されるコンクリート1の上下にケイ酸カルシウム板で構成された型枠2、2が配置されることとなるが、コンクリート1が1対の型枠2、2で挟持された状態となる点では実施形態1と共通している。
【0035】
そして、コンクリート1を挟持するように配置された型枠2、2は、実施例1と同様に自重の2.5〜5.0倍の水を含浸させたゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板、又は自重の1.3〜3.0倍の水を含浸させたトバモライトからなるケイ酸カルシウム板で構成されたものであるので、得られたコンクリート1の躯体は、上記実施形態1と同様に、圧縮強度が非常に優れたものとなる。
【0036】
(実施形態3)
本実施形態も、上記実施形態2と同様に、金属製の型枠4と、ケイ酸カルシウム板で構成された型枠2とを用いて、コンクリートの躯体1を得る実施形態である。型枠を構成するケイ酸カルシウム板としては、上記実施形態1、2と同じものを用いた。鋼板3の上に金属製の型枠4を四方に設置する点も、上記実施形態2と共通する。
【0037】
本実施形態においては、図6に示すように、コンクリート1の上部のみにケイ酸カルシウム板で構成された型枠2が設置され、コンクリート1の下部(鋼板3の上部)にはケイ酸カルシウム板で構成された型枠2は設置されていない。この点で、上下にケイ酸カルシウム板で構成された型枠2、2が設置されていた上記実施形態2と相違する。
【0038】
このように、本実施形態では、ケイ酸カルシウム板で構成された型枠2がコンクリート1の上部のみに設置され、下部には設置されていないので、上記実施形態1、2のようにコンクリート1が1対のケイ酸カルシウム板の型枠2、2で挟持された状態となるわけではない。
【0039】
しかしながら、本実施形態では、上記実施形態2と同様に、充填されるコンクリート1の四方が金属製の型枠4で包囲されているので、コンクリート1の養生中に、コンクリート1から水蒸気が放散されるのは、金属製の型枠4で包囲されずに開口している上面側からとなり、その上面側には、上記のように自重の2.5〜5.0倍の水を含浸させたゾノトライト、又は自重の1.3〜3.0倍の水を含浸させたトバモライトからなるケイ酸カルシウム板で構成された型枠2が配置されているので、このように飽和含水量の水を含んだケイ酸カルシウム板で構成された型枠2によって、コンクリート中の水分が上面側から飛散するのが好適に防止されることとなる。
【0040】
従って、1対のケイ酸カルシウム板の型枠2、2で挟持された状態でコンクリートが養生されているわけではないにもかかわらず、得られるコンクリート1の躯体は、圧縮強度が非常に優れたものとなる。
【0041】
(その他の実施形態)
尚、本発明における型枠とは、上記実施形態1、2のように、コンクリートの両側に1対のものが配置されて、充填されるコンクリートを挟持しうるような状態で養生しうる一般的な型枠の他に、上記実施形態3のように、金属製の型枠4で包囲された空間部の上部開口部を閉鎖すべく、コンクリートの上部のみに配置されて前記空間部の上部開口部の蓋として用いられるような型枠も含むことを意味する。
【0042】
また、上記実施形態1乃至3では、ケイ酸カルシウム板からなる型枠の他に、木製の型枠や金属製の型枠を併用する施工例について説明したが、ほかの型枠と併用する場合に限らず、ケイ酸カルシウム板からなる型枠を単独で使用することも可能である。
【0043】
さらに、具体的な施工例も上記実施形態1乃至3に限定されるものではなく、該実施形態1乃至3以外の施工例を採用することも可能である。
【0044】
さらに、ケイ酸カルシウム板で構成された型枠2のコンクリートと接触する面側に、予めセロファンを貼着することも可能である。このようなセロファンを予め貼着しておくことで、養生後にケイ酸カルシウム板で構成された型枠2をコンクリートから取り外す場合に、コンクリートからのケイ酸カルシウム板で構成された型枠2の離型性が良好になるという効果がある。また、セロファンは透湿性に優れているので、水蒸気の出入りを伴うコンクリートとケイ酸カルシウム板の型枠との境界面に設置することにも適している。尚、この場合のセロファンとしては、普通セロファン(PT)が用いられる。このようなセロファンの貼着は、上記実施形態1乃至3のいずれの施工例にも適用することができ、また実施形態1乃至3以外の施工例にも適用することができる。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
本実施例では、上記のようにケイ酸カルシウム板で構成された型枠内に充填して得られたコンクリートの圧縮強度を試験した。また、一般に優れた圧縮強度を有すると認識されている標準水中養生したものを比較例1として準備し、気中養生して得られたものを比較例2として準備した。
【0046】
尚、圧縮強度の測定は、JIS A 1108に基づいて行い、材齢7日、14日、21日、及び28日の圧縮強度を測定した。すなわち、実施例1では試験用のケイ酸カルシウム板の型枠内にコンクリートを充填し、7日、14日、21日、及び28日間養生後の圧縮強度を測定し、比較例1、及び比較例2では、7日、14日、21日、及び28日間、それぞれ標準水中養生、及び気中養生してコンクリートの圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。表1中の数値の単位はN/mm2である。
【0047】
【表1】

【0048】
また、上記表1の試験結果は、図7にも示す。図7において、○のプロットで結線されるグラフが実施例1のものであり、□のプロットで結線されるグラフが比較例1のものであり、△のプロットで結線されるグラフが比較例2のものである。
【0049】
表1及び図7からも明らかなように、ケイ酸カルシウム板の型枠で得られた実施例1のコンクリートの材齢28日における圧縮強度は、一般に優れた圧縮強度のコンクリートが得られるとされている標準水中養生で得られた比較例1のコンクリートの材齢28日における圧縮強度よりもさらに優れたものであった。また、実施例1のコンクリートの材齢28日における圧縮強度を、気中養生で得られた比較例2のコンクリートの材齢28日における圧縮強度と比較すると、約2倍以上となっていた。
【符号の説明】
【0050】
1 コンクリート
2 ケイ酸カルシウム板の型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自重の2.5〜5.0倍の水を含浸させたゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板で構成されていることを特徴とするコンクリート用型枠。
【請求項2】
自重の3.0〜4.5倍の水を含浸させたゾノトライトからなるケイ酸カルシウム板で構成されていることを特徴とするコンクリート用型枠。
【請求項3】
自重の1.3〜3.0倍の水を含浸させたトバモライトからなるケイ酸カルシウム板で構成されていることを特徴とするコンクリート用型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−196105(P2011−196105A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64481(P2010−64481)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(509251707)株式会社クレイン (2)
【Fターム(参考)】