説明

コンクリート用混和剤

【課題】高温における流動保持性と、短期間で脱型できる早強性とを、コンクリートに付与できるコンクリート用混和剤を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される単量体由来の構成単位を70重量%以上含む構成単位からなる重合体(A)と、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)と、オキシカルボン酸又はその塩、糖類及び糖アルコールからなる群から選ばれる一種以上の化合物(C)とを、特定の〔(A)+(B)〕/(C)重量比及び特定の(A)/(B)重量比で含有するコンクリート用混和剤。
2C=CHCOOCH2CH2OH (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート用混和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
流動性に優れるコンクリート用混和剤として、ナフタレンスルホン酸系混和剤が知られている(特許文献1)。更に、30℃を超える高温下での流動性の経時低下(スランプロス)を防止するセメント分散剤も提案されている(特許文献2)。更に、高温で流動保持性に優れたコンクリートが得られるコンクリート混和剤が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平6−183803号公報
【特許文献2】特開2002−167257号公報
【特許文献3】特開2007−99552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、夏場のような高温条件でコンクリートに流動保持性を付与できることに加え、短期間(例えば、24時間以内)で脱型できる早強性をコンクリートに付与できることが望まれる。上記特許文献の分散剤では、早強性の付与が不十分で、この2つを両立することができない。
【0004】
本発明の課題は、高温における流動保持性と、短期間で脱型できる早強性とを、コンクリートに付与できるコンクリート用混和剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記式(1)で表される単量体由来の構成単位を70重量%以上含む構成単位からなる重合体(A)〔以下、(A)成分という〕と、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)〔以下、(B)成分という〕と、オキシカルボン酸又はその塩、糖類及び糖アルコールからなる群から選ばれる一種以上の化合物(C)〔以下、(C)成分という〕とを含有するコンクリート用混和剤であって、重合体(A)とナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)の合計と化合物(C)の重量比が〔(A)+(B)〕/(C)=100/5〜100/50であり、重合体(A)とナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)の重量比が(A)/(B)=5/95〜45/55であるコンクリート用混和剤に関する。
2C=CHCOOCH2CH2OH (1)
【0006】
また、本発明は、上記本発明のコンクリート用混和剤と、水硬性粉体と、骨材と、水とを含有するコンクリートに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高温における流動保持性と、短期間で脱型できる早強性とを、コンクリートに付与できるコンクリート用混和剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<(A)成分>
(A)成分は、構成単位の70重量%以上が上記式(1)で表される単量体〔以下、単量体(1)という〕由来の構成単位である重合体である。(A)成分はコンクリートの流動保持性の付与の観点から、構成単位の75重量%以上、更に85重量%以上、より更に90重量%以上が単量体(1)由来の構成単位であることが好ましい。なお、(A)成分の構成単位中に中和された酸又は塩基の塩がある場合は、その構成単位は、中和前の酸型又は塩基型の重量で換算して、式(1)で表される単量体由来の構成単位の重量%を計算する。
【0009】
(A)成分の重量平均分子量は1000〜100000が好ましく、より好ましくは3000〜80000であり、更に好ましくは5000〜60000である。この範囲の重量平均分子量を有する(A)成分は、コンクリートの流動保持性を付与するのに好適である。(A)成分の重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(GPC)を使用し、RI検出器並びに検量物質としてポリスチレンを使用することにより測定されたものである。測定条件は後述の合成例1の通りである。
【0010】
(A)成分は公知の重合方法で得ることができ、工業的な観点から重合濃度10重量%以上であることが好ましい。重合方法は、ラジカル重合、リビングラジカル重合、イオン重合等の方法で行うことが可能であり、好ましくはラジカル重合する方法である。重合溶媒としては、モノマーが可溶であれば限定されないが、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0011】
重合開始剤としてはアゾ系開始剤、パーオキシド系開始剤、マクロ開始剤、レドックス系開始剤等の公知の開始剤を使用してよい。水を含む重合溶媒の場合、重合開始剤としては、過硫酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素、2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等の水溶性アゾ化合物が挙げられる。水を含まない重合溶媒の場合、重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合物等が挙げられる。
【0012】
更に必用に応じて分子量調整剤等の目的で連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
【0013】
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、更に、一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’又はSO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1〜3を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素などが挙げられる。
【0015】
その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
重合温度については限定されないが、好ましくは重合溶媒の沸点までの領域で制御すればよい。
【0017】
(A)成分は、単量体(1)以外の単量体を構成単量体とすることができる。例えば、(i)(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸又はそれらの塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはそれらのエステル(例えば単量体(1)以外のアクリル酸エステル、あるいはメタクリル酸エステル)が挙げられる。更に、例えば、(ii)マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、又はその無水物もしくは塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはエステルが挙げられる。これらの中でも好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、更に好ましくは(メタ)アクリル酸又はこれらのアルカリ金属塩である。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味である(以下同様)。
【0018】
<(B)成分>
(B)成分は、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物であり、重量平均分子量は200000以下が好ましく、100000以下がより好ましく、80000以下が更に好ましく、50000以下がより好ましい。また、重量平均分子量は1000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、4000以上が更に好ましく、5000以上がより好ましい。したがって、1000〜200000が好ましく、3000〜100000がより好ましく、4000〜80000が更に好ましく、5000〜50000がより更に好ましい。(B)成分のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は酸の状態あるいは中和物であってもよい。
【0019】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の製造方法は、例えば、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとを縮合反応により縮合物を得る方法が挙げられる。前記縮合物の中和を行っても良い。また、中和で副生する水不溶解物を除去しても良い。具体的には、ナフタレンスルホン酸を得るために、ナフタレン1モルに対して、硫酸1.2〜1.4モルを用い、150〜165℃で2〜5時間反応させてスルホン化物を得る。次いで、該スルホン化物1モルに対して、ホルムアルデヒドとして0.95〜0.99モルとなるようにホルマリンを85〜95℃で、3〜6時間かけて滴下し、滴下後95〜105℃で縮合反応を行う。要すれば縮合物に、水と中和剤を加え、80〜95℃で中和工程を行う。中和剤は、ナフタレンスルホン酸と未反応硫酸に対してそれぞれ1.0〜1.1モル倍添加することが好ましい。また中和による生じる水不溶解物を除去、好ましくは濾過により分離しても良い。これらの工程によって、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩の水溶液が得られる。この水溶液はそのまま或いは他の成分を適宜添加して(B)成分して使用することができる。該水溶液の固形分濃度は用途にもよるが、(B)成分としては、30〜45重量%が好ましい。更に必要に応じて該水溶液を乾燥、粉末化して粉末状のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩を得ることができ、これを粉末状の(B)成分として用いてもよい。乾燥、粉末化は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等により行うことができる。
【0020】
<(C)成分>
(C)成分は、高温でのコンクリートの流動保持性に寄与する成分である。(C)成分として、オキシカルボン酸又はその塩、糖類及び糖アルコールからなる群から選ばれる一種以上の化合物が挙げられる。オキシカルボン酸としては、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸及びクエン酸から選ばれる一種以上が好ましい。オキシカルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等の有機塩、無機塩が挙げられる。また、糖類としては、単糖類、オリゴ糖類及び多糖類から選ばれる一種以上の化合物が好ましい。単糖類は、グルコース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、アビトース、リポーズ、異性化糖等が、オリゴ糖としては、二糖類、三糖類等が挙げられ、サッカロース、マルトース、デキストリン等が挙げられる。多糖類としては、デキストリン、澱粉、澱粉の分解物(例えば澱粉の酵素分解物)等が挙げられる。また、これら単糖類、オリゴ糖類を含む糖蜜類が挙げられる。また、糖アルコールとしては、エリスリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール等が挙げられ、ソルビトールが好ましい。
【0021】
(C)成分としては、流動保持性及び早強性の観点から、オキシカルボン酸又はその塩及び糖類が好ましく、糖類がより好ましい。なかでも澱粉を酵素等により分解した多糖類がより好ましい。コンクリート温度が35℃を超える過酷な条件では、グルコース等の単糖類、サッカロース等の二糖類、グルコン酸等のオキシカルボン酸又はその塩及び多糖類が好ましい。なかでも、タピオカ澱粉を酵素等により分解した多糖類がより好ましい。(C)成分としては、グルコン酸又はその塩及び多糖類からなる群から選ばれる一種以上の化合物が好ましく、また、グルコン酸又はその塩及びタピオカ澱粉の酵素分解物からなる群から選ばれる一種以上の化合物が好ましい。
【0022】
<コンクリート用混和剤>
本発明のコンクリート用混和剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する。本発明では、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の重量比は、特に、高温でのコンクリートの流動保持性及び早強性の観点から、〔(A)+(B)〕/(C)=100/5〜100/50であり、好ましくは100/7〜100/40、より好ましくは100/10〜100/30である。また、(A)成分と(B)成分の重量比は、コンクリートの流動保持性の観点から、(A)/(B)=5/95〜45/55であり、好ましくは7/93〜40/60、より好ましくは10/90〜30/70である。
【0023】
本発明のコンクリート用混和剤は、例えば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を別々に、もしくは(A)成分、(B)成分及び(C)成分を混合して添加することで得られる。作業性の観点から、これらの成分は水等に溶解又は分散させ、液体状であることが好ましい。
【0024】
本発明のコンクリート用混和剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計が、水硬性粉体100重量部に対し、0.01〜5重量部、更に0.05〜2重量部の比率で用いられることが、安定したコンクリートの流動保持性の点で好ましい。また、本発明のコンクリート用混和剤は、添加の作業性の観点から、一液品の液体状であることが好ましい。
【0025】
本発明のコンクリート用混和剤は、その他の添加剤(材)を含有することもできる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;AE減水剤;塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、蟻酸(塩)、アルカノールアミン等の早強剤又は促進剤;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;高炉スラグ;流動化剤;ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等の消泡剤;防泡剤;フライアッシュ;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系、アミノスルホン酸系、ポリマレイン酸系等の高性能減水剤;シリカヒューム;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、オレイルアルコールのエチレンオキサイド付加物もしくはこれとビニルシクロヘキセンジエポキシドとの反応物等の合成系等の水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。
【0026】
本発明のコンクリート用混和剤における(A)成分の含有量は、コンクリートの流動保持性の観点から、0.01〜0.5重量%、更に0.02〜0.3重量%、より更に0.05〜0.2重量%が好ましい。また、(B)成分の含有量は、コンクリートの流動性の観点から、0.1〜1.5重量%、更に0.15〜1.0重量%、より更に0.2〜0.8重量%が好ましい。また、(C)成分の含有量は、コンクリートの早強性の観点から、0.01〜0.7重量%、更に0.01〜0.6重量%、より更に0.02〜0.5重量%が好ましい。また、本発明のコンクリート用混和剤の全固形分中、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計濃度は、50〜100重量%、更に、80〜100重量%であることが好ましい。
【0027】
<コンクリート>
本発明の混和剤の対象となるコンクリートは、水硬性粉体を含有する水硬性組成物であり、水硬性粉体とは、水と反応して硬化する性質をもつ粉体及び単一物質では硬化性を有しないが、2種以上を組み合わせると水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加されたものでもよい。なお、これらの粉体に骨材として、砂、砂及び砂利が添加されて最終的に得られる水硬性組成物が、一般にそれぞれモルタル、コンクリートなどと呼ばれている。本発明の混和剤は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、地盤改良用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
【0028】
本発明は、本発明のコンクリート用混和剤と、水硬性粉体と、骨材と、水とを含有するコンクリートを提供する。本発明のコンクリートは、本発明のコンクリート用混和剤を、水硬性粉体に対して前記の比率で含有することが好ましい。
【0029】
骨材として細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。本発明のコンクリートは、骨材として細骨材と粗骨材とを含有することが好ましい。
【0030】
また、本発明のコンクリートが、細骨材及び粗骨材を含有する場合、細骨材率(s/a)が35〜55体積%、更に40〜50体積%であることが好ましい。s/aは、細骨材(S)と粗骨材(G)の体積に基づき、s/a=〔S/(S+G)〕×100(体積%)で算出されるものである。また、細骨材を未硬化の水硬性組成物(フレッシュ状態の水硬性組成物)1m3に対して、600〜800kg、更に650〜750kg、粗骨材を未硬化の水硬性組成物(フレッシュ状態の水硬性組成物)1m3に対して、800〜1200kg、更に900〜1100kg含有することが好ましい。
【0031】
該コンクリートは、水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記される。〕が65重量%以下、更に10〜60重量%、更に12〜57重量%、更に15〜55重量%、より更に20〜55重量%、より更に30〜50重量%の配合において、本発明の混和剤の効果が顕著に奏される。
【実施例】
【0032】
〔(A)成分〕
(A)成分として以下の合成例の重合体を用いた。
【0033】
<合成原料>
・ヒドロキシエチルアクリレート:Aldrich(有効分96%)〔単量体(1)〕
・アクリル酸:Aldrich(有効分99%)
・メルカプトプロピオン酸:Aldrich
・ペルオキソ二硫酸アンモニウム:和光純薬工業(株)
【0034】
<合成例>
合成例1
反応容器の4つ口フラスコにイオン交換水84.2gを仕込み、脱気後窒素雰囲気下にした。アクリル酸(以下、AAと表記する)20.2gとヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAと表記する)83.5gを混合し、単量体液を調製した。ペルオキソ二硫酸アンモニウム1.3gをイオン交換水26.4gに溶解し開始剤水溶液(1)を調製した。3−メルカプトプロピオン酸2.6gをイオン交換水25gに溶解し連鎖移動剤水溶液を調製した。反応容器を80℃にして単量体液、開始剤水溶液(1)及び連鎖移動剤水溶液を同時に90分かけて滴下した。その後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.3gをイオン交換水6.6gに溶解した開始剤水溶液(2)を30分掛けて滴下し、更に80℃で60分間反応させた。反応終了後に常温にして、48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH5の重合体A−1の水溶液を得た。
仕込み組成比:
AA/HEA=19.5/80.5(重量比)(HEA80.5重量%)
AA/HEA=28.0/72.0(モル比)
重量平均分子量:34500
AA:反応率97%(HPLC)
HEA:反応率98%(HPLC)
分子量の測定は以下のGPC条件で行った。
[GPC条件]
標準物質:ポリスチレン換算
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/アセトニトリル=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0035】
合成例2
反応容器の4つ口フラスコにイオン交換水85.6gを仕込み、脱気後窒素雰囲気下にした。AA11.7gとHEA92.1gを混合し、単量体液を調製した。ペルオキソ二硫酸アンモニウム1.3gをイオン交換水25.2gに溶解し開始剤水溶液(1)を調製した。3−メルカプトプロピオン酸2.5gをイオン交換水25gに溶解し連鎖移動剤水溶液を調製した。反応容器を80℃にして単量体液、開始剤水溶液(1)及び連鎖移動剤水溶液を同時に90分かけて滴下した。その後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.3gをイオン交換水6.3gに溶解した開始剤水溶液(2)を30分掛けて滴下し、更に80℃で60分間反応させた。反応終了後に常温にして、48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH5の重合体A−2の水溶液を得た。
仕込み組成比:
AA/HEA=11.3/88.7(重量比)(HEA88.7重量%)
AA/HEA=17.0/83.0(モル比)
重量平均分子量:30600
AA:反応率97%(HPLC)
HEA:反応率98%(HPLC)
GPCの測定条件は合成例1と同様である。
【0036】
合成例3
反応容器の4つ口フラスコにイオン交換水224.5gを仕込み、脱気後窒素雰囲気下にした。ペルオキソ二硫酸アンモニウム4.4gをイオン交換水90gに溶解し開始剤水溶液(1)を調製した。3−メルカプトプロピオン酸10.2gをイオン交換水80gに溶解した連鎖移動剤水溶液を調製した。反応容器を80℃にしてHEA280gの単量体液、開始剤水溶液(1)及び連鎖移動剤水溶液を同時に90分かけて滴下した。その後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.6gをイオン交換水10gに溶解した開始剤水溶液(2)を30分掛けて滴下し、更に80℃で60分間反応させた。反応終了後に常温にして、48%水酸化ナトリウム水溶液で攪拌しながら中和した。pH5の重合体A−3の水溶液を得た。
仕込み組成比:HEA100モル%(100重量%)
重量平均分子量:14200
HEA:反応率96%(HPLC)
GPCの測定条件は合成例1と同様である。
【0037】
〔(B)成分〕
(B)成分として、マイテイ150〔ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物系混和剤、花王(株)製〕を用いた。これをB−1とした。
【0038】
〔(C)成分〕
(C)成分として、以下の化合物を用いた。
・C−1:サッカロース
・C−2:グルコン酸
・C−3:マイテイ90RA〔糖系遅延剤(タピオカ澱粉の酵素分解物)、花王(株)製〕
【0039】
〔コンクリートの調製及び評価〕
上記(A)〜(C)成分を用いて、コンクリート用混和剤を調製し、表1の配合のコンクリートに対して表2の量で用いた場合の評価を行った。結果を表2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1中の使用材料は以下のものである。
W(水):水道水
C(セメント):普通ポルトランドセメント〔太平洋セメント(株)製普通ポルトランドセメント/住友大阪セメント製普通ポルトランドセメント=1/1(重量比)の混合セメント〕、密度=3.16(g/cm3
S(細骨材):岐阜県揖斐川産川砂、密度=2.60(g/cm3
G(粗骨材):兵庫県家島山産砕石、密度=2.60(g/cm3
【0042】
(性能評価)
(1)コンクリートのスランプ評価方法
60L練り二軸ミキサーに表1のコンクリート配合の30L分、全材料と表2の混和剤を投入して30℃で90秒間混練りし、コンクリートを得た。調製直後、30分後、60分後、90分後、120分後のコンクリートについてスランプフローをそれぞれ測定した。フロー差は上記5点のコンクリートのスランプフローの最大値から最小値を引いたもので、この差が小さい程、コンクリートの性状が安定していることを意味する。
【0043】
(2)早強性の評価方法
(i)圧縮強度
60L練り二軸ミキサーに表1のコンクリート配合の30L分、全材料と表2の混和剤を投入して30℃で90秒間混練りした。調製したコンクリートの120分のスランプを測定後、内径10cm、高さ20cmの円柱プラモールドに充填し、30℃で気中養生を行い、24時間後に脱型し圧縮強度を測定した。尚、24時間後に指で押さえて変形する供試体を未硬化と評価した。圧縮強度が高い程、早強性に優れることを示す。
【0044】
(ii)24時間後脱型性
上記(i)の圧縮強度の評価において、24時間後に脱型できるかどうかを観察し、以下の基準で早強性を評価した。
○:脱型できる
×:硬化不十分で脱型できない
【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される単量体由来の構成単位を70重量%以上含む構成単位からなる重合体(A)と、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)と、オキシカルボン酸又はその塩、糖類及び糖アルコールからなる群から選ばれる一種以上の化合物(C)とを含有するコンクリート用混和剤であって、重合体(A)とナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)の合計と化合物(C)の重量比が〔(A)+(B)〕/(C)=100/5〜100/50であり、重合体(A)とナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)の重量比が(A)/(B)=5/95〜45/55であるコンクリート用混和剤。
2C=CHCOOCH2CH2OH (1)
【請求項2】
化合物(C)がグルコン酸又はその塩及び多糖類からなる群から選ばれる一種以上の化合物である請求項1記載のコンクリート用混和剤。
【請求項3】
化合物(C)がグルコン酸又はその塩及びタピオカ澱粉の酵素分解物からなる群から選ばれる一種以上の化合物である請求項1又は2記載のコンクリート用混和剤。
【請求項4】
重合体(A)の重量平均分子量が5000〜60000である請求項1〜3の何れか1項記載のコンクリート用混和剤。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載のコンクリート用混和剤と、水硬性粉体と、骨材と、水とを含有するコンクリート。

【公開番号】特開2010−37129(P2010−37129A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200926(P2008−200926)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】