説明

コンクリート補強用樹脂繊維分散装置

【課題】コンクリート補強用の樹脂繊維がホッパー空間内で詰まることも無く、長期間安定して使用することができるとともに装置価格も安価な、コンクリート補強用樹脂繊維分散装置を得る。
【解決手段】塊状となったポリプロピレン等からなる所定量の樹脂繊維塊を比較的広い空間を有したホッパーの上方側面部より当該ホッパー内に搬送する搬送装置と、前記搬送装置の終端部前方において前記搬送された樹脂繊維塊を回転機構により掻き取って分散を行う回転分散装置と、前記回転分散装置の前方にあって当該回転分散装置にて跳ね飛ばされた樹脂繊維を滞留させて分散を行う上部固定分散桿と、前記回転分散装置の下方にあって前記上部固定分散桿より落下した樹脂繊維を滞留させて分散を行う下部固定分散桿と、前記手段にて分散された樹脂繊維を吸引するとともに搬送管を経由して外部の練り混ぜ機に均一に投入するブロアにて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの強度や靭性の向上を図るため、コンクリート中に一定の割合で混入させる、ポリプロピレン等からなる樹脂繊維の分散装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート(モルタル等も含む)において、該コンクリートの強度や靭性の向上を図るため、各種の形状(例えば略S字型)や大きさ(例えば長さ30〜80mm程度)を有した鋼繊維を混入し、該鋼繊維を鉄筋と併用することにより強度や靭性の更なる向上を図ったり、鉄筋に代えて使用している。しかし、前記鋼繊維は一般的にタフネス特性は良いものの錆が発生するため、経年変化により腐食して前記強度や靭性が劣化してしまうという問題点があった。また、重量が重いため、コンクリートミキサー等の練り混ぜ機への投入に大きな設備が必要になってしまうという問題点もあった。
【0003】
このため、近年においてはポリプロピレン等からなる樹脂繊維がコンクリート補強用繊維として使用されている。該ポリプロピレン等からなる樹脂繊維は、コンクリートとの接着性を向上させて引張強さを増大するため、その表面にエンボス加工を施した長さ数センチ程度の棒状繊維である。そこで、該ポリプロピレン等からなる樹脂繊維をコンクリートミキサー等の練り混ぜ機にいきなり投入すると、前記ポリプロピレン等からなる樹脂繊維同士が絡み合って塊状になり、均一に練り混ぜることができないという別の問題点が発生した。
【0004】
上記問題点を解決すべく、例えば特許登録第2510671号の『補強繊維投入方法』では、ベルトコンベアで運ばれる補強繊維群を、該ベルトコンベア先端部上に設置された表面に多数の突起を有するローターで掻き落とし、掻き落とされた単繊維を送繊ファン及び空送配管を経由して直ちに被補強物(コンクリート)に投入すると同時に前記補強繊維と被補強物とを混練する補強繊維投入方法について記載されている。また、特開2006−37241号公報の『樹脂繊維供給装置』では、補強繊維の集合した被処理物を搬送するベルトコンベアと、前記被処理物を分散化させて送り出すほぐし処理部と、送り出された被処理物を風力で搬送し特定位置に放出する風力搬送部とを備え、前記ほぐし処理部が前下がり状の傾斜案内樋と、該傾斜案内樋の先端部に配置され前記ベルトコンベアの搬送した被処理物を第一ほぐし装置及び第二ほぐし装置で分散化させる樹脂繊維供給装置について記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許登録第2510671号
【特許文献2】特開2006−37241
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記何れの公報もコンクリート補強用の樹脂繊維を分散化させるためにベルトコンベアで運ばれた樹脂繊維群を突起物を設けた複数のローター(回転体)で掻き取るものであるが、該ローターを設置するホッパー空間内は非常に狭く、掻き取られた樹脂繊維が前記ホッパー空間内で詰まってしまうという危惧があった。また、複数のローターを使用するために故障率も高くなるため、前記問題発生が更に高まってしまうという危惧と、装置が複雑化するとともに装置価格も高額になってしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、コンクリート補強用の樹脂繊維がホッパー空間内で詰まることも無く、長期間安定して使用することができるとともに装置価格も安価な、コンクリート補強用樹脂繊維分散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のコンクリート補強用樹脂繊維分散装置においては、塊状となったポリプロピレン等からなる所定量の樹脂繊維塊を比較的広い空間を有したホッパーの上方側面部より当該ホッパー内に搬送する搬送装置と、前記搬送装置の終端部前方において前記搬送された樹脂繊維塊を回転機構により掻き取って分散を行う回転分散装置と、前記回転分散装置の前方にあって当該回転分散装置にて跳ね飛ばされた樹脂繊維を滞留させて分散を行う上部固定分散桿と、前記回転分散装置の下方にあって前記上部固定分散桿より落下した樹脂繊維を滞留させて分散を行う下部固定分散桿と、前記手段にて分散された樹脂繊維を吸引するとともに搬送管を経由して外部の練り混ぜ機に均一に投入するブロアにて構成する。
【0009】
上記回転分散装置は、搬送装置の横幅と略同一の長さを有した回転軸に多数の棒状の回転分散桿を放射状に固設して構成し、上記上部固定分散桿及び下部固定分散桿は、ホッパーの横幅と略同一の長さを有した軸桿に平板状又は棒状の分散桿を適度な間隔に設けて構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンクリート補強用樹脂繊維分散装置によれば、構造が簡単で回転機構も最小限にて構成され、ホッパー自体も比較的広い空間を有しているため、コンクリート補強用の樹脂繊維がホッパー空間内で詰まることも無く、長期間安定して使用することができるとともに装置価格も安価に提供できるという絶大なる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を図を用いて説明する。
【0012】
図1は本発明のコンクリート補強用樹脂繊維分散装置の構成を示す側面断面模式図である。該図に示すように、コンクリート補強用樹脂繊維分散装置1は、塊状となったポリプロピレン等からなる所定量の樹脂繊維塊5を比較的広い空間を有したホッパー2の上方側面部より当該ホッパー2内に搬送する搬送装置3と、前記搬送装置3の終端部前方において前記搬送された樹脂繊維塊5を回転機構により掻き取って分散を行う回転分散装置7と、前記回転分散装置7の前方にあって当該回転分散装置7にて跳ね飛ばされた樹脂繊維5aを滞留させて分散を行う上部固定分散桿10と、前記回転分散装置7の下方にあって前記上部固定分散桿10より落下した樹脂繊維5aを滞留させて分散を行う下部固定分散桿11と、前記手段にて分散された樹脂繊維5aを吸引するとともに搬送管15を経由して外部の練り混ぜ機に均一に投入するブロア14にて構成する。
【0013】
上記搬送装置3としては、エンドレスベルト4が回転軸6にて移送駆動されるベルトコンベアが好適であり、前記エンドレスベルト4上には所定量のポリプロピレン等からなる樹脂繊維塊5が載置され、所定速度にてホッパー2内に搬送される。
【0014】
上記回転分散装置7は、搬送装置3の横幅と略同一の長さを有した回転軸8に、多数の棒状の回転分散桿9を放射状に固設して構成する。
【0015】
上記上部固定分散桿10及び下部固定分散桿11は、ホッパー2の横幅と略同一の長さを有した軸桿に平板状又は棒状の分散桿を適度な間隔に設けて構成する。図2は図1における固定分散桿の平面図であり、(a)は分散桿が平板状のものを示し、(b)は分散桿が棒状のものを示している。(a)においては平板状の軸桿17aに対し多数の平板状の分散桿18aが間隙部19を形成するように直角に設けられ、(b)においては棒状の軸桿17bに対し多数の棒状の分散桿18bが間隙部19を形成するように直角に設けられている。なお、上述の構造は一実施例を示すものであり、同一機能を有して構成されるものは本発明に包含されるものである。
【0016】
次に、本発明のコンクリート補強用樹脂繊維分散装置1の動作原理を図を用いて説明する。
【0017】
まず、図1に示すように搬送装置3であるベルトコンベアのエンドレスベルト4上に所定量のポリプロピレン等からなる樹脂繊維塊5を載置し、ホッパー2の上方側面部より当該ホッパー2内に搬送する。前記樹脂繊維塊5のエンドレスベルト4上への載置手段は、当該搬送装置3の先端部において図示しない別のホッパーにて行う。
【0018】
上記エンドレスベルト4上の樹脂繊維塊5は、搬送装置3の終端部前方に設置された回転分散装置7の回転分散桿9により図中矢印の方向に掻き取って分散する。このとき、前記樹脂繊維5aは比較的高速で回転する回転分散桿9により前方に跳ね飛ばされる。また、該回転分散装置7の前方には上部固定分散桿10が設置され、前記跳ね飛ばされた樹脂繊維5aを滞留させて更に分散する。なお、図1において上部固定分散桿10と回転分散桿9とは重なり合う部分があるが、図2に示すように各回転分散桿9は上部固定分散桿10の間隙部19を通過するよう回転軸8に固設することにより、回転分散装置7の回転分散桿9と上部固定分散桿10の分散桿18とが接触することはない。
【0019】
次に、上記上部固定分散桿10の間隙部19より分散して落下した樹脂繊維5aを、上部固定分散桿10と反対面の下部に設置した下部固定分散桿11により更に滞留させて分散する。
【0020】
上記のようにして分散された樹脂繊維5aは、ブロア14により空気吸入孔12より吸入された外気とともに連通路13を通過し、更に搬送管15を経由して外部のコンクリートミキサー等の練り混ぜ機に均一に投入されることになる。
【0021】
なお、搬送装置3や搬送管15等の近傍に各種センサを接続した計測装置16を設置し、搬送装置3にて搬送される樹脂繊維塊5の搬送量や練り混ぜ機に投入される樹脂繊維5aの投入量を図示しない制御装置にてフィードバック制御を行うようにすれば、更に均一な投入量の制御が行えることになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のコンクリート補強用樹脂繊維分散装置の構成を示す側面断面模式図である。
【図2】図1における固定分散桿の平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 コンクリート補強用樹脂繊維分散装置
2 ホッパー
3 搬送装置
4 エンドレスベルト
5 樹脂繊維塊
5a 樹脂繊維
6 回転軸
7 回転分散装置
8 回転軸
9 回転分散桿
10 上部固定分散桿
11 下部固定分散桿
12 空気吸入孔
13 連通路
14 ブロア
15 搬送管
16 計測装置
17 軸桿
18 分散桿
19 間隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状となったポリプロピレン等からなる所定量の樹脂繊維塊を比較的広い空間を有したホッパーの上方側面部より当該ホッパー内に搬送する搬送装置と、前記搬送装置の終端部前方において前記搬送された樹脂繊維塊を回転機構により掻き取って分散を行う回転分散装置と、前記回転分散装置の前方にあって当該回転分散装置にて跳ね飛ばされた樹脂繊維を滞留させて分散を行う上部固定分散桿と、前記回転分散装置の下方にあって前記上部固定分散桿より落下した樹脂繊維を滞留させて分散を行う下部固定分散桿と、前記手段にて分散された樹脂繊維を吸引するとともに搬送管を経由して外部の練り混ぜ機に均一に投入するブロアにて構成することを特徴とする、コンクリート補強用樹脂繊維分散装置。
【請求項2】
回転分散装置は、搬送装置の横幅と略同一の長さを有した回転軸に多数の棒状の回転分散桿を放射状に固設して構成し、上部固定分散桿及び下部固定分散桿は、ホッパーの横幅と略同一の長さを有した軸桿に平板状又は棒状の分散桿を適度な間隔に設けて構成することを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート補強用樹脂繊維分散装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−308854(P2007−308854A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162843(P2006−162843)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(500079713)シーエムシー有限会社 (2)
【Fターム(参考)】