説明

コンクリート製側溝蓋および側溝の閉蓋構造

【課題】高い剛性と優れた断面効率の側溝蓋を提供することにある。
【解決手段】左右方向の中央部下面にアーチ型の凹部10を形成した側溝蓋7であって、該側溝蓋と側溝ブロック1が接する左右の支持部9,9間であるスパン(L)と、前記アーチ型の凹部の高さ(f)との比(f/L)が、0.10〜0.35の範囲であることを特徴とするコンクリート製側溝蓋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経済的な断面形状に設計したコンクリート製の側溝蓋と、これを用いてがた
つきによる騒音の発生を抑止したコンクリート製の側溝ブロックの閉蓋構造に関する。
【背景技術】
【0002】
落ち蓋式のコンクリート側溝蓋としては、JIS A 5372 推奨仕様5ー3に規定された呼
び径250から500までの1種(歩道用)または3種(車道用)の蓋がある。これら側
溝蓋の断面設計では、1種蓋では足付部を除いた等分布荷重単純梁として、また3種蓋で
は有効長をスパンとし、輪荷重50kNの部分荷重が作用した単純梁としてそれぞれ曲げ
モーメント及びせん断力を計算し、断面が決定される。
【0003】
一方、橋梁・トンネル等で採用されるアーチ構造では、上載荷重がアーチ部材において
圧縮力に変換され両端の支点へ伝達されるため、曲げによるたわみの発生を防止し、断面
内の一様な圧縮応力(軸力)に変えることができる。従って、圧縮応力に有利なコンクリ
ート部材の断面を有効に利用することができ、断面の薄い製品とすることができる。
【0004】
発明者らは、アーチ構造を取り入れたコンクリート製側溝蓋によるコンクリート製側溝
ブロックの閉蓋構造を先に提案した(特開2009−13654号)。これを図9によっ
て説明すると、側溝ブロック1の上方開口部2に設けた嵌合部3を、側溝蓋7の両側面部
8の下方部8bを受ける蓋受部4と、その外縁に立設した両側面部8の上方部8aを収納
する立壁部6とから構成し、前記蓋受部4は水平部5とその内縁から水路内側に向かって
下がる下降傾斜面4aを備えている。
【0005】
一方、前記側溝蓋7は、その左右の側面部8の下方部8bの一部が前記左右の下降傾斜
面4aと接する曲面からなる突出部(支持部)9を有するとゝもに、左右方向における中
央部を左右両側部より厚さの薄い断面とすることによって、下面にへ字形又はアーチ型の
凹部10を形成し、前記側溝蓋7の上方部8aと下方部8bを繋ぐ水平な連結部8cと、
前記蓋受部4の水平部5との間に空隙が出来る構成とした。
【0006】
側溝ブロック1および側溝蓋7を上記のような構成とすることにより、側溝蓋7の前記
支持部9の曲面と側溝ブロック1の前記下降斜面4aとが密着して接触することで、がた
つきの発生を抑止する効果が得られるとともに、側溝蓋7が荷重Wを受けた際、その断面
内にほゞ一様な圧縮応力(矢印)の発生が促され、高い剛性と優れた断面効率とするコン
クリート製側溝ブロックの閉蓋構造を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−13654
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図1において、側溝蓋7の左右の両支持部9,9を結ぶ線を基線として
前記アーチ型の凹部の側溝蓋断面厚さ中心までの距離(f)と、側溝蓋7の前記側溝ブロ
ック1と接する左右の両支持部9,9間(支間)の距離であるスパン(L)の比(f/L
)が比較的小さなアーチ構造では、図4に示すように、側溝蓋7の支持部9,9と接触す
る側溝ブロック1の蓋受部4,4の部分、詳しくは蓋受部4の下降斜面4a,4aの部分に水平方向の反力が生じ、かつアーチ中央部(クラウン部)に発生する曲げモーメントも
、図3に示すように相対的に大きなものとなる。
【0009】
一方、前記基線(J)から前記アーチ型の凹部10の側溝蓋断面厚さ中心までの距離(
以下、「凹部の高さ」と定義します)(f)とスパン(L)の比(f/L)を過大にする
と、アーチ中央部(クラウン部)に発生する曲げモーメントは小さくなるが、蓋受部4の
下降斜面4aに生じる一方の反力、詳しくは、下降斜面4aに生じる水平方向の反力に対
し垂直方向の反力が卓越して大きくなる。しかも、側溝蓋7と側溝ブロック1とが点また
は線接触による支持部とした点または接触による支持構造ではこの支持部に応力が集中す
るため、蓋受部4の垂直方向の負荷が大きくなり易い。
【0010】
また、前記凹部の高さ(f)とスパン(L)の比(f/L)を過大にすると、側溝蓋7
の有効厚さ(t)が大きくなって側溝ブロック1の通水断面積が狭まる他、側溝蓋7の厚
さが大きくなるなど製造コスト面でも不利になってくる。
【0011】
本発明は、前記凹部の高さ(f)とスパン(L)の比(f/L)の範囲を適切に定め、
ア−チ中央部(クラウン部)に発生する曲げモーメントをできるだけ小さく押さえること
で、経済的な断面形状に設計できる断面アーチ型の側溝蓋と、これを用いて、がたつきに
よる騒音の発生が少ないコンクリート製側溝ブロックの閉蓋構造を提供することを目的と
したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明はコンクリート製の側溝蓋であ
って、左右方向の中央部を左右両側部より厚さの薄い断面とすることによって下面にアー
チ型の凹部を形成してなり、コンクリート製の側溝ブロックの上方開口部に設けた嵌合部
に収納されて前記上方開口部を閉成する側溝蓋であって、該側溝蓋の前記側溝ブロックと
接する左右の支持部間であるスパン(L)と、前記左右の両支持部を結ぶ線を基線として
前記アーチ型の凹部の側溝蓋断面厚さ中心までの距離(f)との比(f/L)が、0.1
0〜0.35の範囲であることを特徴としている。
【0013】
また、上記の課題を解決するため、本願の請求項2に係る発明は、同じくコンクリート
製の側溝蓋であって、前記側溝ブロックの内幅(W)に対し、前記側溝蓋の左右方向の中
央部の厚さ(tc)が、tc=(0.1〜0.11)W+(30〜45)mmの範囲にあ
り、前記側溝蓋の両側面部にあってその下方部に、曲面の突出部からなる支持部を備えた
ものであり、請求項3に係る発明は、前記側溝蓋の断面横方向に配置される主筋が、中立
面の下方に位置するとともに、前記アーチ型の凹部に沿って折り曲げられて埋設されてい
ることを特徴としている。
【0014】
そして、上記の課題を解決するため、本願の請求項4に係る発明は、コンクリート製の
側溝ブロックと、その上方開口部に設けた嵌合部に請求項1乃至請求項3に記載のコンク
リート製の側溝蓋を設置して、前記上方開口部を閉成する側溝ブロックの閉蓋構造であっ
て、前記側溝ブロックの嵌合部は、前記側溝蓋の両側面部の下方部を受ける水平部と、そ
の内縁から水路内側に向かって下がる下降傾斜面からなる蓋受部と、前記水平部の外縁に
立設した前記側溝蓋の両側面部の上方部を収納する立壁部とから構成され、前記側溝蓋の
上方部と下方部を繋ぐ連結部と、前記蓋受部の水平部との間に空隙が出来る構成とすると
ともに、前記蓋受部の下降傾斜面が前記蓋受部の水平部に対しほぼ45度の角度で形成さ
れ、前記側溝蓋の左右方向の中央部の厚さ(tc)に対する前記蓋受部の中央部垂線と側
溝ブロックの側壁面までの長さ(a)の比(tc/a)が、1.2〜1.6であることを
特徴としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、側溝蓋に上記のような断面アーチ型の構造を採用することで、上載荷重によ
る側溝蓋の左右方向の中央部の発生モーメントを抑えることができ、側溝蓋を経済的な断
面形状とした設計が可能となる。また、上載荷重は、側溝ブロックの蓋受部において若干
水平方向が卓越した鉛直方向との分力となって支持され、側溝ブロックの蓋受部の構造を
も経済的な断面構造とすることができる。
【0016】
一方、側溝蓋の上載荷重は、側溝ブロックにおける蓋受部の下降傾斜面に対してほぼ垂
直に作用することから、大部分の力は圧縮応力のみが支配的となり、曲げモーメントとせ
ん断力が発生しにくい他、前記側溝蓋の連結部と前記蓋受部の水平部との間に空隙が形成
されていることで、側溝蓋の側面部の下方部は常時側溝ブロックにおける蓋受部の下降傾
斜面と接することとなる。また、鉛直荷重はアーチ型の構造によって側溝ブロックにおけ
る蓋受部の下降傾斜面に圧縮力として伝達されるため、楔効果によってがたつきが押さえ
られる。
【0017】
さらに、側溝蓋の左右の側面部にあってその下方部の一部又は全長に、側溝ブロックの
蓋受部における左右の下降傾斜面と点又は線で接触する突起又は凸条の支持部を備える構
成とすることで、伝達される圧縮力は側溝蓋の前記突起又は凸条の支持部に集中されるこ
とになり、より効果的にがたつきが押さえられる。また、側溝蓋には曲げ応力が発生しに
くいためたわみ挙動も少なくなり、たわみ挙動によるがたつきの発生も防止,軽減できる
とゝもに、同じ大きさの鉛直方向の荷重がかかる場合であっても、より小さな断面(薄い
部材)及び重量の蓋版が使用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る側溝ブロックの上方開口部をコンクリート製の側溝蓋で閉成した状態を示す側溝構造の断面部分図である。
【図2】図1に示す側溝構造の要部を示す拡大断面部分図である。
【図3】本発明の側溝蓋中央部に発生するモーメントと、側溝蓋の側溝ブロックと接する左右の支持部間であるスパンLと凹部の高さfとの比の関係を示すグラフ図である。
【図4】本発明の側溝構造の支持部に発生する支点反力と、側溝蓋と側溝ブロックが接する左右の支持部間であるスパンLと凹部の高さfとの比の関係を示すグラフ図である。
【図5】側溝ブロックの内巾Wに対する側溝蓋の左右方向中央部の厚さtcとの関係を示すグラフ図である。
【図6】本発明に係る側溝蓋を下方から見た斜視図である。
【図7】側溝ブロックの内巾Wに対する、側溝蓋の左右方向中央部の厚さtcと蓋受部の中央部垂線と側溝ブロックの側壁外面までの長さaの比a/tcの関係を示すグラフ図である。
【図8】側溝蓋の内部に埋設した主筋を示す左右方向の断面図である。
【図9】従来の側溝構造の作用を示す上方部の断面部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るコンクリート製の側溝蓋及びこの側溝蓋を用いたコンクリート製側
溝の閉蓋構造を、図1乃至し図8に示す一実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以
下では、前記図9に示す従来の側溝ブロック1および側溝蓋7と同一構造の部分は同一の
符合を付し、詳細な説明は省略する。
【0020】
図1及び図2において、1はコンクリート製のU型または門型の側溝ブロックで、その
上部に上方開口部2を備えており、該上方開口部2に形成した嵌合部3にコンクリート製
の側溝蓋7を嵌合によって設置することで、前記側溝ブロック1の上方開口部2を前記側
溝蓋7で閉成するように構成されている。
【0021】
上記嵌合部3は、前記側溝蓋7の左右の側面部8にあってその下方部8bを受ける蓋受
部4と、該蓋受部4の外縁から立設する前記側溝蓋7の側面部8の上方部8aを収納する
立壁部6とからそれぞれ構成されており、前記蓋受部4は水平部5とその内縁から水路内
側に向かって下がる下降傾斜面4aで形成されている。
【0022】
一方、前記側溝蓋7は、左右の側面部8にあってその下方部8bが側溝ブロック1の前
記左右の両下降傾斜面4aと点又は線で接触する曲面からなる突出部(支持部)9を備え
ている。更に、この側溝蓋7は、左右の両側方向(幅方向)の下面が、中央部が両側部よ
り厚さの薄い断面形状としたアーチ型の凹部10からなる構成としている。
【0023】
そこで、側溝ブロック1の上方開口部2を側溝蓋7で閉成する場合には、前記上方開口
部2の上方から側溝蓋7を入れ、嵌合部3内に側溝蓋7を落とし込んで設置する。側溝蓋
7が嵌合部3内に設置されることで、側溝蓋7の側面部8にあってその下方部8bの一部
に形成した曲面からなる突出部(支持部)9の先端と、蓋受部4の下降傾斜面4aとが点
又は線で密着して接触する。
【0024】
これにより、側溝蓋7はがたつきがない状態で側溝ブロック1の上方開口部2の嵌合部
3内に設置されることになる。このとき、側溝蓋7の側面部8にあってその上方部8aは
嵌合部3の立壁部6と、側溝蓋7の上方部8aと下方部8bとを繋ぐ水平な連結部8cは
蓋受部4の水平部5とそれぞれ所望の空隙を介して対峙している。
【0025】
なお、図中、tは前記側溝蓋7の左右方向の両端部の厚さであり、tcは側溝蓋7の左
右方向の中央部(アーチ中央部)の厚さである。また、fは前記側溝蓋7の左右の両支持
部9,9を結ぶ線を基線Jとして前記アーチ型の凹部10の側溝蓋断面厚さ中心までの鉛
直距離であり、Lはスパン(前記基線Jの長さ)である。また、tpは側溝蓋7の支持部
9の突出高さであり、Wは側溝ブロック1の通水内面の有効幅である。
【0026】
図3は、本発明の側溝蓋7にあってその左右方向の中央部の厚さtcの部分に発生する
モーメントと、スパン(L)と凹部10の高さ(f)との比(f/L)の関係を示したも
のである。10kNの荷重が厚さtcの中央部に集中した場合と、等分布荷重との場合と
を示したが、いずれの場合も、スパン(L)と凹部10の高さ(f)との比(f/L)が
0.10以上となるとアーチ中央部のモーメントは極めて小さくなることが判る。
【0027】
図4は、等分布荷重とした条件のもとでの側溝蓋7の左右の両支持部9,9と、側溝ブ
ロック1の左右両蓋受部4,4の左右の両下降傾斜面4a,4aとの接点部に発生する支
点反力と、スパン(L)と凹部10の高さ(f)との比(f/L)の関係を示したもので
ある。支点反力は水平方向分力(H)と垂直方向分力(V)とに分けられ、これらの各分
力の合力(R)はR=(H2 +V2 )0.5 の関係にある。
【0028】
スパン(L)と凹部10の高さ(f)との比(f/L)が0.1迄は水平方向分力Hが
f/Lとともに増加し、(f/L)が0.1より大きくなると水平方向分力Hが小さくな
っていく。一方、垂直方向分力Vは、(f/L)とともに増加する。水平方向分力Hと垂
直方向分力Vがつり合うのは、スパン(L)と凹部10の高さ(f)との比(f/L)が
0.3前後の場合であり、この場合、水平方向分力Hと垂直方向分力Vは側溝ブロック1
の蓋受部4における下降傾斜面4aに対し垂直方向に作用することになる。
【0029】
水平方向分力Hに対し垂直方向分力Vが卓越する領域では(f/L)が大きくなり、通
水断面積を確保するためには側溝ブロック1の高さが大きくなってしまう。また、この領
域では、側溝ブロック1における蓋受部4の立壁部6に対する張り出しを大きくする必要
もでてくる。従って、図4の側溝蓋7のアーチの中央部に発生するモーメントが小さくな
る条件のもと、かつ水平方向分力Hと垂直方向分力Vがほぼ等しい条件のもと、スパンL
と凹部10の高さfとの比(f/L)をできるだけ小さくしなければならない。こうして
みると、(f/L)は0.10〜0.35の範囲、より望ましくは0.15〜0.3の範
囲とすることが設計上合理的である。
【0030】
側溝蓋7には、使用される荷重条件に対する所要の性能を満たすことが求められる。下
表はT−25縦断用の道路用側溝の側溝蓋として使用される場合の設計荷重Pを、側溝ブ
ロックの通水内面の有効幅Wに対して求めたものである(衝撃係数1.1、試験時のスパ
ン方向有効幅a‘=S、製品方向有効幅b‘=0.5mとした場合)。
【表1】

【0031】
ここに、bは製品長さ方向の有効幅(=0.2+t+0.6S)、Sは設計スパン、Q
は載荷重(=T/(a ×b), a:輪幅(=0.5m ), T:輪荷重(=50×1.1))
であり、PはP=Q×a‘×b‘で表される。上表中のtcは、設計荷重Pを満たす場合
の側溝蓋中央部の厚さを示したものであり、安全率1.4倍以上を満たすことが判明して
いる。一方、設計荷重Pを満たさないtcについてプロットしたものが図5である。側溝
蓋中央部の厚さtcは実用上支障のない範囲で小さいことが望ましいため、図5の結果か
ら、有効幅Wに対して側溝蓋の中央部の厚さtc=(0.1〜0.11)W+(30〜4
5)mmの範囲であるものとした。
【0032】
なお、本発明で、前記側溝蓋7には、側面部8の下方部8bにあって左右の側面部から
やや中央寄りに、断面形状が円弧とした突出部(支持部)9が設けられているが、この突
出部(支持部)9の水路外側に向かって下方へ突出する突出高さは10〜15mmの範囲
としている。また、突出部(支持部)9の形状はR15前後の半円状であり、側溝ブロッ
ク1の下降傾斜面4aに線状に接するよう延長方向に連続的に形成してもよいし、あるい
は、図6に示すように、側溝蓋7の裏面の四隅に形成して、点接触させてもよい。
【0033】
一方、側溝ブロック1の閉蓋構造においては、上記設計荷重Pに対し側溝蓋7にひび割
れが生ずる前に側溝ブロック1の蓋受部4が破壊されてはならない。図7は、側溝ブロッ
ク1の内幅(W)に対する本発明の側溝蓋7の中央部の厚さ(tc)と、側溝ブロック1
の蓋受部4の下降傾斜面4aに対する中央部垂線と側溝ブロック1の外側壁面までの長さ
(a)の比a/tcの関係を示す図である。
【0034】
載荷試験によっても、側溝ブロック1の蓋受部4に問題が生じない場合を○で、一方、
載荷試験によって側溝蓋7にひび割れ等何らかの損傷が生ずる前またはほとんど同時に側
溝ブロック1の蓋受部4になんらかの異常が生じた場合を△で示している。側溝ブロック
1の内幅Wが大きくなると、a/tcを小さくすることができる。一方、aが過大になる
と設計上不経済な断面となるため、およそa/tc=1.6以下が望ましいものと考えら
れる。一方、a/tc=1.2以下となると、側溝ブロック1の蓋受部4が損傷を受ける
ことがあるため、少なくともa/tc=1.2以上とする必要がある。
【0035】
上記のように、側溝蓋7にアーチ構造を採用することで、側溝ブロック1に経済的な断
面形状の閉蓋構造を提供できるが、上載荷重は側溝ブロック1の下降傾斜面4aでの分力
の他、アーチの中央部から側溝蓋7の両支持部9,9間にもモーメントを生じさせる。こ
うした構造のもとでは、図8に示すように、中立面Cの下方位置に主筋Sを配置するとゝ
もに、該主筋Sをアーチ型の凹部10に沿って下方へ折り曲げて配設するすることで、さ
らに断面は有利となる。
【0036】
以上のように、側溝蓋7は上載荷重により断面に軸力が生じ、応力計算上有利に働く構
造の蓋版となる。そのため、剛性が高くなって曲げが発生しにくく、且つたわみ挙動も小
さい。したがって、たわみによるがたつきの発生を防止,軽減できるとゝもに、同じ大き
さの荷重が掛かる場合であっても、より薄い断面構造(薄い部材)及び小さな重量からな
る側溝蓋が使用可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 側溝ブロック
2 上方開口部
3 嵌合部
4 蓋受部
4a 下降傾斜面
5 水平部
6 立壁部
7 側溝蓋
8 側面部
8a 上方部
8b 下方部
8c 連結部
9 突出部(支持部)
10 凹部
f 凹部の高さ
L スパン
t 側溝蓋の端部の厚さ
tc 左右方向中央部の厚さ
tp 突出部(支持部)の高さ
W 側溝ブロックの内巾
J 基線
C 中立面
S 主筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向の中央部を左右両側部より厚さの薄い断面とすることによって下面にアーチ型
の凹部を形成してなり、コンクリート製の側溝ブロックの上方開口部に設けた嵌合部に収
納されて前記上方開口部を閉成する側溝蓋であって、該側溝蓋の前記側溝ブロックと接す
る左右の支持部間であるスパン(L)と、前記左右の両支持部を結ぶ線を基線として前記
アーチ型の凹部の側溝蓋断面厚さ中心までの距離(f)との比(f/L)が、0.10〜
0.35の範囲であることを特徴とするコンクリート製側溝蓋。
【請求項2】
前記側溝ブロックの内幅(W)に対し、前記側溝蓋の左右方向の中央部の厚さ(tc)
が、tc=(0.1〜0.11)W+(30〜45)mmの範囲にあり、前記側溝蓋の両
側面部にあってその下方部に、曲面の突出部からなる支持部を備えたものであることを特
徴とする請求項1記載のコンクリート製側溝蓋。
【請求項3】
前記側溝蓋の断面横方向に配置される主筋が、中立面の下方に位置するとともに、前記
アーチ型の凹部に沿って折り曲げられて埋設されていることを特徴とする請求項1または
請求項2記載コンクリート製側溝蓋。
【請求項4】
コンクリート製の側溝ブロックと、その上方開口部に設けた嵌合部に請求項1乃至請求
項3に記載のコンクリート製の側溝蓋を設置して、前記上方開口部を閉成する側溝ブロッ
クの閉蓋構造であって、前記側溝ブロックの嵌合部は、前記側溝蓋の両側面部の下方部を
受ける水平部と、その内縁から水路内側に向かって下がる下降傾斜面からなる蓋受部と、
前記水平部の外縁に立設した前記側溝蓋の両側面部の上方部を収納する立壁部とから構成
され、前記側溝蓋の上方部と下方部を繋ぐ連結部と、前記蓋受部の水平部との間に空隙が
出来る構成とするとともに、前記蓋受部の下降傾斜面が前記蓋受部の水平部に対しほぼ4
5度の角度で形成され、前記側溝蓋の左右方向の中央部の厚さ(tc)に対する前記蓋受
部の中央部垂線と側溝ブロックの側壁面までの長さ(a)の比(tc/a)が、1.2〜
1.6であることを特徴とするコンクリート製側溝ブロックの閉蓋構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−202185(P2012−202185A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70524(P2011−70524)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(308025923)前田製品販売株式会社 (16)
【Fターム(参考)】