説明

コンクリート部材およびその製造方法

【課題】コンクリート部材の表面に光触媒機能を付与するとともに、使用する光触媒体の大部分が触媒機能を発揮することが可能となり、光触媒体の無駄が解消できる。
【解決手段】1)透水性舗装を行う路盤2の準備工程、2)主として骨材とセメントとからなるポーラス層3を敷設、形成する、3)硬化前に、その表面に光触媒体を散布、付着させる、4)そのポーラス層3の硬化と光触媒体を固着させるための養生、5)完成、といった工程からなる。そして、必要に応じて適所に目地5などを設ける。かくして、表面に、セメントをバインダとして固着した光触媒層4を備えたポーラスコンクリート透水性舗装を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒機能を付与したコンクリート部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主として骨材とセメントからなる水混練物を成形、硬化させて得られるコンクリート部材に光触媒機能を付与する方法として、特許文献1、2などが開示されている。
特許文献1には、道路の透水性舗装表面に、光触媒性能を有する二酸化チタンと固着材としてのセメントと、砂、ガラス粉など充填材と水から構成される混合物、例えば、重量比で1:3:2の混合物、からなる二酸化チタン層を形成する手法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2のものは、舗装用コンクリートブロックの表面に光触媒用酸化チタン粉末を含む表面層を形成するものである。この表面層は、セメント100重量部に対して酸化チタン粉末3〜50重量部の割合が適当であると開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−20208号公報:請求項1、請求項4、段落0010などの記載。
【特許文献2】特開2007−332700号公報:請求項1、請求項2、請求項5、段落0014などの記載。
【0005】
これら特許文献記載のものは、いずれも、光触媒機能を持つ酸化チタンとセメントとの混合物を用いて光触媒セメント層を構成する手法であって、酸化チタンの2倍以上のセメントを用いることから、得られる光触媒セメント層において、酸化チタンの大部分はそのセメント層の内部に埋没した状態で保持されることになり、表面において外界空気中の汚染物質、例えばNO2成分を除去するために実質的に機能する酸化チタン量は、全使用量のうちの一部分に過ぎないことになり、相当な部分が無駄になっていたという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、コンクリート部材の表面に光触媒機能を付与するとともに、使用する光触媒体の大部分が触媒機能を発揮することが可能となり、従来のような光触媒体の無駄が解消できるコンクリート部材およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題は、主として骨材とセメントからなる水混練物を硬化させてなるコンクリート部材において、その表面に光触媒体を、そのセメントをバインダとして固着させて光触媒機能を付与したことを特徴とする本発明のコンクリート部材によって、解決することができる。
【0008】
また、上記の問題は、主として骨材とセメントとからなる水混練物を成形、硬化させる工程を含むコンクリート部材の製造方法において、成形後、硬化前に、その表面に光触媒体を付着させ、その成形体の硬化とともに、その光触媒体を表面に、セメントをバインダとして固着させて光触媒機能を付与することを特徴とする本発明のコンクリート部材の製造方法によって、解決される。
【0009】
これらコンクリート部材およびその製造方法の発明において、前記コンクリート部材が多孔質吸音板または透水性舗装体である形態に好ましく具体化される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンクリート部材およびその製造方法は、このように、骨材とセメントとからなるコンクリート部材の表面に、そのセメントの硬化によって光触媒体を固着させるように構成されているので、使用する光触媒体の多くの部分が表層に集中して配置される。しかして、使用する光触媒体の大部分が触媒機能を発揮することが可能となり、従来のような光触媒体の無駄が解消できるという優れた効果がある。
【0011】
また、前記コンクリート部材が多孔質吸音板または透水性舗装体であるときには、吸音孔または透水孔を閉塞することがなくほぼ原形を維持できるので、吸音性または透水性を阻害しないという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消したコンクリート部材およびその製造方法として、実用的価値はきわめて大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明のコンクリート部材およびその製造方法に係る実施形態を、ポーラスコンクリート透水性舗装を事例として、その製造工程を例示する図1のフローチャートおよび透水性舗装断面構造を示す図2に基づいて説明する。
すなわち、本発明の方法では、1)透水性舗装を行う路盤の準備工程、2)主として骨材とセメントとからなるポーラス層を敷設、形成する、3)硬化前に、その表面に光触媒体を散布、付着させる、4)そのポーラス層の硬化と光触媒体を固着させるための養生、5)完成、といった工程からなる。そして、必要に応じて適所に目地などを設けるのであるが、かくして、表面に、セメントをバインダとして固着した光触媒層4を備えたポーラスコンクリート透水性舗装を得ることを要旨とする。
【0013】
(路盤の準備)
舗装対象となる路床1を準備、形成し、その上に、砕石あるいは玉石などを充填した路盤2を形成して、ポーラス層3を形成する準備を行う。この工程は、従来のポーラスコンクリート透水性舗装の場合となんら変わりはない。
【0014】
(ポーラス層の形成)
予め準備した路盤2上に多孔質コンクリートのポーラス層3を形成する。このポーラス層3は、主として骨材とセメントとからなる水混練物を敷き均し、転圧、締め固め、表面仕上げなどにより、最終的に所定の透水性が得られるよう施工して得られる。この場合、路盤2とポーラス層3の厚さは、荷重条件などによるが、路盤2:70〜200mm/ポーラス層3:70〜150mmの範囲から適宜に選択される。
【0015】
このポーラス層3を構成するための、骨材、セメント混練物は、粒径が2.5〜5mm、5〜10mmの砂利、砕石などと、全容量に対して210〜510kg/mの割合のポルトランドセメント、高炉セメントなどを混合し、さらに、必要に応じて、シリカヒュームなどの無機バインダ、減水剤、AE剤などを添加し、水/セメント比が15%〜30%となるよう水を加えて、十分に混練して得られる。この混練物が固化して得られるポーラス層3は、空隙率が10〜30%、透水係数が1.0×10−3〜1.0cm/secとなるよう、骨材/セメント比、水/セメント比を調整するのがよい。
【0016】
(光触媒加工)
施工、形成されたポーラス層3が固化する前に、光触媒体を散布してそのポーラス層3上に付着させる工程である。
本発明で用いられる光触媒体としては、二酸化チタン単独または鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、珪素(Si)などの金属を付与した二酸化チタンの微粉末(粒度:1〜200nm程度)が好適である。
【0017】
この光触媒体をポーラス層3上に散布するには、前記光触媒体の水混合液を用いるのがよい。例えば、水100重量部に対して、1.0〜50重量部を含有させた水混合液を用いるのが適当である。この水溶媒液には、必要に応じて、ポリカルボン酸などの分散剤、アクリル系あるいは酢酸ビニル系エマルジョンなどバインダを50重量部以下、添加するのがよい。
【0018】
この光触媒体の水混合液を前記ポーラス層3の表面にエアガン、エアレスガン、または加圧式散布機を用いて表面に均等に散布して付着させる。
本発明における光触媒成分の付着量は、ポーラス層3の表面積当り3.0〜30g/mとするのが好ましい。3.0g/m未満では、光触媒機能が十分でないからであり、30g/m以上では、光触媒作用が飽和して付着量に応じた効果が発揮できないからである。
【0019】
本発明において特に重要なことは、ポーラス層3の少なくとも表面が固化していない状態、すなわち、形成されたポーラス層3のセメント成分は時間の経過とともに硬化が進行するのであるが、硬化が未完成で未だ付着力を持っている状態のときに、光触媒を付着させることが要点である。
かくして、次の養生の工程において、セメント成分の硬化とともに光触媒がポーラス層3の表面に固着して、光触媒層4が形成されるのである。
【0020】
(養生〜目地加工)
養生工程は、セメントの自然硬化によってポーラス層3を固化させるとともに、そのセメント成分により光触媒体をポーラス層3表面に固着させて、光触媒層4を形成する工程である。このようにして得られる光触媒層4では、その厚さは厚くても0.3mm、好ましくは0.1mmであって、光触媒体が表層部分に集中的に存在するよう構造されるのである。また、なおこの工程では、従来のコンクリート舗装の場合と同様、急激な乾燥の防止、凍害の予防、養生シートや防護柵の設置などを行えばよく、また、目地加工(目地カット、目地工など)も、従来と何ら変わるところはない。
【0021】
このように、本発明のコンクリート部材の製造方法によって、本発明の、主として骨材とセメントからなる水混練物を硬化させてなるコンクリート部材において、その表面に光触媒体を、そのセメントをバインダとして固着させて光触媒機能を付与したことを特徴とする本発明のコンクリート部材が好ましく製造されるのである。そして、透水性コンクリート舗装の場合には、光触媒層はごく薄いので透水孔を閉塞することがなくほぼ開口原形を維持できるから、本来の透水性を阻害することがない。また、コンクリート製多孔質吸音材の場合にも、吸音特性を阻害することがない。
【0022】
かくして得られる本発明のコンクリート部材の利点を要約すると次の通りである。
1)(透水性)透水性コンクリートであることから、内部に連続空隙を持つので降雨水を舗装内に貯留し路床へ適宜に浸透させる利点とともに、舗装道路として十分な強度と耐摩耗性、耐候性、耐熱性など耐久性に優れている。そして、上記の通り、下地となる透水性コンクリートの本来の透水性を阻害することがない。
【0023】
2)(景観性と温度上昇の防止性)酸化チタンからなる光触媒を用いるので、外観が白色に近い明るい色彩を呈することから、従来のグレー色のコンクリート面のやや暗い景観とは異なる明るい景観が提供できる利点がある。
【0024】
また、日照による舗装表面の温度上昇が抑制されるという格別の利点が得られる。例えば、快晴の真夏の正午、外気温が37.8℃のとき、普通アスファルト舗装面が64.2℃、光触媒を付着させない普通の透水性コンクリート舗装面が56.8℃であったが、本発明の舗装面は48.9℃であって、顕著な温度上昇防止効果が認められた。
また、ブラウン、赤茶系の無機顔料を添加して土舗装のような自然にマッチした色彩を付与することもできる。この場合でも触媒効果には影響がなく、温度上昇防止効果もかなり保持することができた。
【0025】
3)(光触媒性)本発明のコンクリート部材は、光触媒体が表層部分に集中的に存在するよう構造されるので、環境中の有害成分、例えばNOxなどの除去に当って、使用した光触媒体を無駄なく有効に作用させることができる利点がある。
例えば、特許文献1の場合、単位面積あたり光触媒量は平均1000g/mであるが、本発明では3〜30g/m程度で十分な除去効果が得られている。また、特許文献2の場合、光触媒を含む層の厚さは2〜15mmに対して、本発明では0.3mm以下で同等の光触媒効果が得られるので、光触媒体の全使用量は、単純比較で1/30あるいは1/6といったレベルで済むという格別の利点も得られるのである。
【0026】
なお、以上の実施形態は、ポーラスコンクリート透水性舗装を事例として説明されているが、対象が、高速道路、鉄道などに用いられるコンクリート製多孔質吸音材の場合も同様であり、これまでの説明が準用されることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を説明するための要部フローチャート。
【図2】本発明のコンクリート舗装構造の断面概念図。
【符号の説明】
【0028】
1:路床
2:路盤
3:ポーラス層
4:光触媒層
5:目地



【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として骨材とセメントからなる水混練物を硬化させてなるコンクリート部材において、その表面に光触媒体を、そのセメントをバインダとして固着させて光触媒機能を付与したことを特徴とするコンクリート部材。
【請求項2】
前記コンクリート部材が多孔質吸音板または透水性舗装体である請求項1に記載のコンクリート部材。
【請求項3】
主として骨材とセメントとからなる水混練物を成形、硬化させる工程を含むコンクリート部材の製造方法において、成形後、硬化前に、その表面に光触媒体を付着させ、その成形体の硬化とともに、その光触媒体を表面に、セメントをバインダとして固着させて光触媒機能を付与することを特徴とするコンクリート部材の製造方法。
【請求項4】
前記コンクリート部材が多孔質吸音板または透水性舗装体である請求項3に記載のコンクリート部材の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−144439(P2010−144439A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323296(P2008−323296)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(599104716)大有コンクリート工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】