説明

コンセントボックス取付口用塞ぎ蓋

【課題】 床パネルのコンセントボックス取付口を塞ぐ金属と樹脂とからなる塞ぎ蓋において、この塞ぎ蓋を簡単な操作で確実に取付口を閉蓋できるようにするとともに、バリ取り作業の不要や音鳴りの防止といった付加的な機能も派生させるものにする。
【解決手段】 塞ぎ蓋を金属製の蓋本体と蓋本体に装着する樹脂製のクリップとで構成するとともに、蓋本体は、床パネルの周縁延在方向の両端に上面より一段下がった位置から両端方向に向けて突出する突出部を有しており、クリップは、突出部を外方から銜え込む切込溝と、突出部の表裏面及び端面を覆うカバー部とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床の床パネルに形成されるコンセントボックス取付口を閉蓋するコンセントボックス取付口用塞ぎ蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンセントボックス取付口用塞ぎ蓋(以下「塞ぎ蓋」という)は、金属製又は樹脂製の単一素材によって成形されるのが一般的である。金属製のものは、強度に優れる反面、床パネルとのメタルタッチ音が発生する他、コンセントボックス取付口(以下「取付口」という)に対する係止力と嵌め込むために必要な力をバランスさせるのが難しく、塞ぎ蓋を着脱する際の操作性が問題になり易い。また、樹脂製のものは、取付口への着脱操作性に優れる反面、衝撃力が加わると割れてしまう虞れがある他、火災が発生すると消失して避難通路の確保ができないといった問題がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に見られるように、表裏に貫通する配線取出口(取付孔)を有する金属板製の塞ぎ板本体に、上方より取付孔に樹脂製のクリップを押し込み、クリップに設けた突起片とで塞ぎ板本体を上下方向から挟み付けて保持する第1の係合部によってクリップを塞ぎ板本体に一体に取り付け、さらに、クリップに設けた別の突起片で取付口を形成する切欠部の周囲に突設されたフランジの下方角に当てて上方への抜出を防ぐ第2の係合部によって、床パネルに対する塞ぎ板の固定を行うようにしている。
【0004】
しかしながら、特許文献1のものは、塞ぎ板を床パネルに装着する際に、切欠部と位置がずれたままの状態で力を加えると、別の突起片がフランジの頂面に押し付けられるだけで(通過しない)、それによる反発力がクリップを上方向に押し上げる力として作用し、クリップが塞ぎ板本体から外れてしまう虞れがあった。加えて、塞ぎ板本体は、強度性能を確保するのに適した金属製としているから(樹脂製であればクリップは一体成形すればよい)、床パネルに装着した状態において、ガタツキによる音鳴りの発生が懸念される。これを防ぐには、塞ぎ板の裏面に緩衝材を貼り付ける必要があり、材料費と手間が余分に掛かってしまう。
【0005】
さらに、塞ぎ板本体は金属製のプレス成形品であるため、プレス切断により発生したバリが塞ぎ板の切断面に残る虞れがあるから、塞ぎ板を開閉する際に作業者に危害を与える危険性がある。これを防ぐには、製造段階で発生したバリを後工程で潰したり、削るか又は塗装を行う必要があり、コストアップの要因となっていた。
【特許文献1】特許公報第2742767号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡単、かつ、確実な構造により、音鳴りの虞れがなく、また、バリによる怪我の心配もない上に塞ぎ板本体からクリップが外れ難い構造の取付口用塞ぎ蓋を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、床パネルの周縁の一部を外方から凹ませるとともに、凹みの周囲から凹み中に低段部を突出させたコンセントボックス取付口を、低段部に、金属製の蓋本体と蓋本体の周縁方向の両端に挿抜される樹脂製のクリップとで構成される塞ぎ蓋を載置して蓋をするコンセントボックス取付口用塞ぎ蓋において、蓋本体は、床パネルの周縁延在方向の両端に上面より一段下がった位置から両端方向に向けて突出する突出部を有しており、クリップは、突出部を外方から銜え込む切込溝と、突出部の表裏面及び端面を覆うカバー部とを有していることを特徴とするコンセントボックス取付口用塞ぎ蓋を提供したものである。
【0008】
また、本発明は、以上の塞ぎ蓋において、請求項2の、突出部は、コンセントボックス取付口の凹み方向の中央に両端から切れ込んで反両端方向に延びる取付溝を有しているとともに、切込溝の内部に取付溝に挿入する芯部を有しており、芯部と取付溝との間にクリップが両端方向に抜出するのを規制する係合構造が設けられている手段、請求項3の、係合構造が、取付溝の側面にポケットが形成され、芯部にポケットに弾性変形可能に嵌入して抜出を規制する突起片が設けられた手段、請求項4の、カバー部の裏面中央に、塞ぎ蓋がコンセントボックス取付口に上方から挿入される際、弾性変形して低段部を通過し、通過後に弾性復帰して低段部の下側に係止する係止爪が設けられている手段を提供する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の手段によると、蓋本体とクリップとの一体化は、蓋本体に形成された突出部とクリップに形成されたこれを銜え込む切込溝とによる上下挟持方式によるものであるから、一体化がより強固になる。したがって、塞ぎ蓋を取付口に位置ずれした状態で押し込んでも、クリップが抜け外れることがない。なお、クリップは塞ぎ蓋に対して床パネルの周縁に平行な方向には抜け出るが、取付口に置いた状態では低段部の縁に邪魔されてそれも起こらない。また、蓋本体は金属製で、クリップは樹脂製であるから、必要な強度も確保できるし、突出部の表裏面及び端面はカバー部で完全に覆われることになるから、仮に突出部の端部等にバリが発生していたとしても、これを覆い隠し、面倒なバリ作業を必要としない。さらに、裏面側のカバー部が低段部に接当することになるから、メタルタッチを避け、音鳴りも発生しない。
【0010】
請求項2の手段によると、蓋本体とクリップとの位置合せが確実になるとともに、クリップの内外方向への傾きが規制できて蓋本体とクリップの一体化がより強固になる。また、取付溝を長くとれることから、係合構造の施工も容易である。請求項3の手段によると、係合構造を簡単な構成にできるし、請求項4の手段によると、簡単な構造で塞ぎ蓋の上方抜出も防止できる。さらに、請求項4の係止爪はクリップの中央に形成されるものであるから、一種類のクリップで蓋本体のどちらの端にも装着できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、まず、図面を説明しておくと、図1はクリップと蓋本体とを一体にした場合の塞ぎ蓋と床パネルとの関係を示す斜視図、図2はクリップを蓋本体から外した状態の塞ぎ蓋の斜視図、図3は同じく裏面からみた斜視図、図4はコンセントボックス取付口に塞ぎ蓋を装着した状態の平面図、図5は図4のAーA拡大断面図、図6は同じくBーB拡大断面図、図7は同じくC部拡大図である。
【0012】
塞ぎ蓋1(以下「蓋1」という)は、床パネル2の周縁3の中央一部を外方から内方に凹ませて成形した取付口4に、上方から着脱可能に取り付ける。この場合、取付口4の三方周囲には内方に向けて突出する低段部41が形成されており、蓋1はこの低段部41の上に載置されるようになっている。取付口4は、通常、蓋1で塞いだ状態にしておくが、取付口4にコンセントボックス(図示省略)を取り付ける場合、蓋1は不要となるので取り外される。なお、ここで、方向を指称する場合、取付口4の凹み方向を前後方向、これと直角な床パネル2の周縁と平行な方向を左右方向と称する。
【0013】
これにおいて、蓋1は、金属板製の蓋本体5に樹脂製のクリップ6を後述する構成で一体に取り付けた構造である。このように、蓋本体5を金属板製とし、クリップ6を樹脂製とすることにより、蓋1は、強度に優れ、床パネル2に対する着脱操作性の良いものとなる。一方、クリップ6は樹脂製であるため、万が一、火災となった場合には消失する可能性があるが、蓋本体5が金属板製であるため焼け落ちることはない。したがって、取付口4は残った蓋本体5で塞がれた状態を維持し、避難通路は安全に確保される。
【0014】
図2に示すように、蓋本体5の左右両端には、上面から一段下がって突出部51を左右方向に向けて突出させており(ちなみに、蓋本体5の下面には上面側を折り返しており、これにより、突出部51はその厚みの中央から突出する形態をしている)、この突出部51は中央がU字形に凹む形状(これを「Ω形」と称する)をしており、Ω形の中心に左右に延びる取付溝52が形成されている。クリップ6は、突出部51を左右方向から銜え込む切込溝61が形成されたコ字形断面を有するもので、切込溝61の表裏面及び側面には、突出部51の表裏面及び端面を覆うカバー部62が形成されている。このカバー部62は、当然ながら突出部51と同じΩ形をしている。そして、切込溝61の内部には取付溝52に入り込む芯部63が設けられており、芯部63と取付溝52との間には、クリップ6が左右方向に抜出するのを防ぐ係合構造が設けられている。
【0015】
本例の係合構造は、取付溝52の前後の表面(側面)にポケット53が陥設され、芯部63にこのポケット53に嵌入する楔形の突起片64が一体に形成されたものである。これにより、クリップ6を挿入するときには、突起片64が押し潰されて取付溝52への進入を許容するが、突起片64がポケット53に嵌入すると、突起片64が弾性復帰してポケット53内に張出して抜出を規制する。ただし、クリップ6を強く引っ張ると、突起片64が再度弾性変形して抜出を許容する。この趣旨に沿って突起片64は挿入方向を後側が高くなる傾斜面に形成して挿入し易くするとともに、抜出方向は直交面に形成して抜け出し難くしている。
【0016】
さらに、カバー部62の裏面中央には、蓋1が取付口4に上方から挿入される際、弾性変形して低段部41を通過し、通過後に弾性復帰して低段部41の下側に係止する係止爪65が形成されている。この係止爪65は、クリップ6と一体成形された樹脂製であるため、適当な可撓性を有し、低段部41に対する係止を容易、かつ、確実なものにする。金属板から係止爪を切り起こす等して一体成形したものでは、高価なバネ鋼でも使用しない限り、係止爪に樹脂製のような形状復元力を付与することは難しく、通常、着脱を数回行うと係止爪が変形してしまい、取付口4への係止力が弱くなる。一方、これを考慮して係止爪を強力に取付口4に係合させるように予め設定すると、蓋1を最初に装着する際、非常に大きな力が必要になり、施工性を大幅に低下させることになる。また、係止爪65は、カバー部62の前後方向のほぼ中心となる位置に設定され、これが左右2箇所に設けられることで、効率的、かつ、安定した蓋1の装着が可能となる。
【0017】
金属板製の蓋本体5は、通常、プレス成形によって端部が切断加工されるため、その切断面、例えば、突出部51の端面にバリが発生する。そのままの状態にしておくと、塞ぎ蓋1を着脱する作業者に危害を与える虞れがあって大変危険である。この対策として、後工程でバリを潰すか削ったり又は塗装で覆い隠す等の作業が必要になるが、何れにしても費用がかかる。しかし、本例のクリップ6には、上記したカバー部62が設けられており、このカバー部62は蓋本体5の突出部51を覆い隠すものであるから、その端面等に発生するバリの処理作業を不要にしている(バリを除去する必要がない)。
【0018】
カバー部62は、コ字形断面をして内部に切込溝61を有しており、切込溝61に突出部51の板厚部分が挿入されるからであり、この点で、安全、かつ、安価な製品を提供することになる。なお、プレス成形によるバリの発生方向は、パンチが移動する上下何れか一定方向となり、例えば、下方向に発生する場合であれば、カバー部62は、剪断面の下側のエッジ部分のみを覆い隠す断面L型形状のものにしてもよい。しかし、本例では、装着安定性を高めるためにコ字形断面としており、表裏両方で突出部51を覆い隠すようにしている。
【0019】
また、カバー部62の下(裏)側部分は、蓋本体5の下面と取付口4の内周に形成した低段部41との間に介在する緩衝部66として作用する。樹脂製の緩衝部66の厚みを蓋本体5の低段部41に重合する部分の厚み(本例では、蓋本体5を構成する鋼板を前後で裏側に折り返しており、その折返し部分の厚み)よりやや厚くしておくと、蓋1に少々のガタツキがあっても、蓋本体5は低段部41に接触せず、メタルタッチが防がれて音鳴りの発生が防止される。通常、蓋1を金属板で成形した場合は、メタルタッチ音の発生防止のため、緩衝材の貼付けが別途必要となるが、このように、樹脂で構成されるカバー部62を緩衝部66に兼用させることで、緩衝材貼り付けにかかる費用と手間を省き、より安価な製品となる。
【0020】
係止爪65は、カバー部62の裏面中央から突設されているから、クリップ6は係止爪65を中心に前後対称形状に設定されていることになる。これにより、蓋本体5へのクリップ6の取付けに際しては、左右どちらの突出部51であっても装着できるようになり、左右それぞれに専用部材を設ける必要がなく、金型費用が削減できるし、組立作業性も向上する。なお、蓋本体5にクリップ6を装着した状態では、その上面の高さは揃い、境界の間隙も小さいものになるのはもちろんである。この他、蓋本体5の前後方向の外端には適当数の配線取出口54が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の取付口用蓋と床パネルの関係を示す斜視図である。
【図2】本発明の取付口用蓋の上面側から見た分解斜視図である。
【図3】本発明の取付口用蓋の裏面側から見た分解斜視図である。
【図4】本発明の取付口用蓋を床パネルに取り付けた状態を示す平面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】図4のB−B断面図である。
【図7】図4のC部拡大図である。
【符号の説明】
【0022】
1 コンセントボックス取付口用塞ぎ蓋
2 床パネル
3 周縁
4 コンセントボックス取付口
41 低段部
5 蓋本体
51 突出部
52 取付溝
53 ポケット
54 配線取出口
6 クリップ
61 切込溝
62 カバー部
63 芯部
64 突起片
65 係止爪
66 緩衝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床パネルの周縁の一部を外方から凹ませるとともに、凹みの周囲から凹み中に低段部を突出させたコンセントボックス取付口を、低段部に、金属製の蓋本体と蓋本体の周縁方向の両端に挿抜される樹脂製のクリップとで構成される塞ぎ蓋を載置して蓋をするコンセントボックス取付口用塞ぎ蓋において、蓋本体は、床パネルの周縁延在方向の両端に上面より一段下がった位置から両端方向に向けて突出する突出部を有しており、クリップは、突出部を外方から銜え込む切込溝と、突出部の表裏面及び端面を覆うカバー部とを有していることを特徴とするコンセントボックス取付口用塞ぎ蓋。
【請求項2】
突出部は、コンセントボックス取付口の凹み方向の中央に両端から切れ込んで反両端方向に延びる取付溝を有しているとともに、切込溝の内部に取付溝に挿入する芯部を有しており、芯部と取付溝との間にクリップが両端方向に抜出するのを規制する係合構造が設けられている請求項1のコンセントボックス取付口用塞ぎ蓋。
【請求項3】
係合構造が、取付溝の側面にポケットが形成され、芯部にポケットに弾性変形可能に嵌入して抜出を規制する突起片が設けられたものである請求項2のコンセントボックス取付口用塞ぎ蓋。
【請求項4】
カバー部の裏面中央に、塞ぎ蓋がコンセントボックス取付口に上方から挿入される際、弾性変形して低段部を通過し、通過後に弾性復帰して低段部の下側に係止する係止爪が設けられている請求項1〜3いずれかのコンセントボックス取付口用塞ぎ蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−209570(P2009−209570A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52813(P2008−52813)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000103404)オーエム機器株式会社 (30)
【Fターム(参考)】