説明

コンタクトを製造する方法、コンタクト、およびコンタクトを含む太陽電池

シリコン基板の上に保護層を堆積させるステップと、その後に少なくとも1つのコンタクト部位を設けるステップと、さらにパターン化露出シリコン表面を設けるステップとを有する、シリコン基板を含む太陽電池の後面に少なくとも1つのコンタクトを提供するための方法。次に、金属層を堆積させるステップと、構造体をアニールして金属シリサイドを形成するステップ。その後に、本プロセスは、任意選択で余分な金属を除去するステップと、最後に金属をシリサイドの上に付加して少なくとも1つのコンタクトを形成するステップと含む。シリコン基板と、シリコン基板の上に堆積しているアモルファスシリコン層と、アモルファスシリコン層の上に堆積しており少なくとも1つの開口部を有する反射層とを含む太陽電池の後面用のコンタクトであって、少なくとも1つの開口部の中にシリサイドがあり、付加された金属がシリサイドを覆っている、コンタクト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン太陽電池の後面用のコンタクトを製造する方法に関する。本発明はまた、この方法によって製造されるコンタクト、およびこのコンタクトを含む太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
生み出されるエネルギー単位当たりのコストを削減することは、太陽電池業界の主要な目標である。この目標に到達する方法が3つある。1つは製造コストを減らすことであり、もう1つは製品の効率を上げることであり、また3つ目は両方の対策を同時に行うことである。
【0003】
太陽電池の効率を上げる方法の1つは、太陽電池がより多くの光を取り込めるようにすることである。標準的な多結晶シリコン太陽電池では、太陽電池の後面全体が、大抵はアルミニウムである金属で通常覆われている。この構成の欠点の1つは、過度の荷電キャリア再結合と、それによる集電効率の低下とにつながる、アルミニウム/シリコン境界面におけるアルミニウムの比較的貧弱な保護特性(passivating property)である。
【0004】
局部的バックコンタクトを作ることによって、全体的に金属化された、太陽電池の後面を実装することによる上記の欠点をなくすことができる。局部的バックコンタクトの作製によって、コンタクト間の部分を保護層で覆うことができるため、集電効率が向上する。
【0005】
さらに、局部的バックコンタクトによって、表側金属コンタクトからのシェーディング(shading)を防ぐバックコンタクト太陽電池の製造も可能になる。裏側コンタクトでは、p型シリコンコンタクトとn型シリコンコンタクトの分離が必要である。
【0006】
上記全ての目的に対して、局部的コンタクトの作製にはパターニングが必要であり、最もよく知られているバックコンタクト電池設計は、高価なマスクをかけてそれを除去する必要があることや高価な金属分離技法を使用する必要があるために、製造するのに費用がかかる。
【0007】
本発明は、シリコン表面が金属導体の基盤となりつつ、全ての非シリコン表面がコンタクト分離部分となり得る構造化シリコン表面を提供することによって、上記の課題に取り組むことを目的とする。
【0008】
特許文献1(特許出願WO2008/039078A2)では、バックコンタクトシリコン太陽電池に関してコスト効率の高い方法が説明されている。この方法では、アルミニウムのバックコンタクトが後面全体に施され、その後に適切な方法によってコンタクトが分離される。
【0009】
特許文献2(特許出願WO2006/110048A1)では、アモルファスシリコンのシリコンカーボン底部層と、アモルファス窒化シリコン頂部層とからなる保護層構造を用いるための方法が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2008/039078号
【特許文献2】国際公開第2006/110048号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の目的
本発明の主な目的は、少なくとも1つのコンタクトが作られるようにして、太陽電池の後面を処理するためのコスト効率の高い方法を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、以下の説明と、添付の特許請求の範囲と、添付の図とに明記されている特徴によって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、シリコン太陽電池用のコンタクトを製造するための方法が提供され、この方法は、交互になっているp型伝導性とn型伝導性のドープ領域をシリコン基板に施すこと、またはp型伝導性もしくはn型伝導性をシリコン基板に施すことを含む。この方法は、
a)シリコン基板の上に保護層を堆積させるステップと、
b)少なくとも1つのコンタクト部位を設けるステップと、
c)パターン化露出シリコン表面を設けるステップと、
d)金属層を非選択的に堆積させるステップと、
e)構造体をアニール(annealing)して金属シリサイドを形成するステップと、
f)任意選択で、ステップe)の後に余分な金属を除去するステップと、
g)金属をシリサイドに付加して少なくとも1つのコンタクトを形成するステップと
を含む。
【0014】
本発明によれば、シリコン基板を含む太陽電池の後面用のコンタクトが提供され、シリコン基板の上には保護層が施され、保護層は、コンタクトが形成されることになる部分において、部分的に除去される。さらに、コンタクトは、シリコン基板の上またはその中にシリサイド部を含む。
【0015】
発明の説明
本発明は、低温シリサイド形成と、湿式化学エッチングステップによって行われ得るコンタクト分離との利用によって、シリコン太陽電池の後面におけるバックコンタクトを製造する方法に関する。
【0016】
本発明の方法は、表側コンタクトも有する太陽電池の裏側のバックコンタクトを用いることができ、また太陽電池が全てのコンタクト部位を裏側に有するようにして製造される太陽電池を用いることができる。
【0017】
本発明は、吸収体材料として働く任意のシリコンウェーハまたは薄膜を用いることができる。この吸収体材料は、本明細書では「基板」と呼ぶ。基板は、単結晶シリコン、微結晶シリコン、および多結晶シリコンのウェーハまたは薄い層または薄膜と、あらゆる公知の、また考えられる構成のpドープ領域およびnドープ領域とを含む。これは、それらに限定はされないが、
- n型Siに対するコンタクトが表側に位置し別方法によって接触しており、一方、p型Siに対するコンタクトが太陽電池の裏側に位置し本発明で説明する方法によって製造されることになる構成、または、
- p型Siに対するコンタクトが表側に位置し別方法によって接触しており、一方、n型Siに対するコンタクトが太陽電池の裏側に位置し本発明で説明する方法によって製造されることになる構成、または、
- n型Siに対するコンタクトと、p型Siに対するコンタクトとの両方が、太陽電池の後面に位置し本発明で説明する方法によって製造されることになる構成
を含む。
【0018】
「前面」という用語は、太陽光に直接さらされる太陽電池の表面を示す。「後面」という用語は、前面に対して反対側の表面である。「バックコンタクト」という用語は、太陽電池の後面に位置している、その太陽電池への電気的コンタクトを意味する。
【0019】
「バックコンタクト太陽電池」という用語は、全てのコンタクト部位が太陽電池の後面にあることを意味する。
【0020】
「pドープ領域」という用語は、基板のある領域を形成している表面より下方の特定距離内のシリコン材料に、正電荷キャリア数の増加をもたらすドープ材料が加えられている場合の、p型伝導性の表面層を有する基板の表面部分を意味する。「nドープ領域」という用語は、基板のある領域を形成している表面より下方の特定距離内のシリコン材料に、負電荷キャリア(可動電子)数の増加をもたらすドープ材料が加えられている場合の、n型伝導性の表面層を有する基板の表面部分を意味する。
【0021】
「フロントコンタクト太陽電池」という用語は、前面と後面にコンタクトを有する太陽電池を意味する。
【0022】
前記のドープ領域は、以下のプロセスのいずれによっても、または以下のプロセスの組合せによって作ることができる。
- 基板の表面から、基板表面より下方の特定距離内における基板内への、ドーパント材料の内向き拡散
- 適切にドープされたアモルファスシリコン、微結晶シリコン、ナノ結晶シリコン、または結晶シリコンの堆積。「適切にドープされた」は、ドーパント濃度が厚さに応じて変化してもよく、また0cm-3〜1×1021cm-3の値を有してもよいことを意味する。
- 加速されたドーパント種による打ち込みと、それに続く、シリコン材料内でドーパント種を電気的に活性化させるための適切温度の熱処理とによるドーパント材料の注入。
【0023】
「シリコン材料」という用語は、適切な熱処理時に堆積した金属層と共に金属シリサイドを形成することになる任意のシリコン含有材料を示す。これには、結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、およびナノ結晶シリコンが含まれる。シリコン材料は、0〜40原子パーセントの水素を含むことができる。
【0024】
本明細書で「コンタクト部位」という用語は、基板の表面における部分を意味し、その部分で太陽電池は接触をとられることになる。この前記の部分は、nドープ領域、pドープ領域、n型シリコン材料、またはp型シリコン材料の上にあり得る。
【0025】
「コンタクト部位を設ける」という用語は、コンタクト部位と、堆積される金属層との間において、コンタクト部位の上部にシリコン材料だけがあるようにして構造体を処理することを示す。重要な点は、前のステップに関わらず、コンタクト部位にはシリコン材料だけがあるべきであることである。
【0026】
「シリサイド」という用語は、シリコンと、より多くの陽性元素とを共に有する化合物を示す。これらの元素は一般に、例えば、ニッケル、パラジウム、チタン、銀、金、アルミニウム、銅、タングステン、バナジウム、クロムでもよい。
【0027】
「露出シリコン表面」という用語は、周囲に露出しているシリコン材料を示す。
【0028】
「構造体」という用語は、任意の処理ステップにおけるデバイスを示す。
【0029】
バックコンタクト太陽電池用の基板は、p型伝導性とn型伝導性のそれぞれのうちの少なくとも1つの領域を後面に有するべきであるが、一般には、互いにかみ合うパターン(interdigitated pattern)で交互になっている伝導性を有するいくつかのドープ領域が存在することになる。
【0030】
本発明は、本書で説明した方法を適用する前の前面処理に関わらず、太陽電池用の少なくとも1つのバックコンタクトを製造するための方法を提供する。本発明はさらに、バックコンタクト、およびバックコンタクトを含む太陽電池に関する。
【0031】
図は、太陽電池の前面がページの下部に向き、後面がページの上部に向くようにして作成されている。これらの図面は概略的であり、ある縮尺に調整されたものではない。図では、コンタクト部位が一般にバックコンタクト太陽電池におけるものとして、図面は、それらのコンタクト部位を示している。添付の図は、本発明の実施形態を示す。
【0032】
本発明の実施形態を示す添付図面を参照して、本発明を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1a】本発明の方法の第1の実施形態に関する概略断面図である。
【図1b】本発明の方法の第1の実施形態に関する概略断面図である。
【図1c】本発明の方法の第1の実施形態に関する概略断面図である。
【図1d】本発明の方法の第1の実施形態に関する概略断面図である。
【図1e】本発明の方法の第1の実施形態に関する概略断面図である。
【図1f】本発明の方法の第1の実施形態に関する概略断面図である。
【図2a】本発明の方法の第2の実施形態に関する概略断面図である。
【図2b】本発明の方法の第2の実施形態に関する概略断面図である。
【図2c】本発明の方法の第2の実施形態に関する概略断面図である。
【図2d】本発明の方法の第2の実施形態に関する概略断面図である。
【図3a】本発明の方法の第3の実施形態に関する概略断面図である。
【図3b】本発明の方法の第3の実施形態に関する概略断面図である。
【図3c】本発明の方法の第3の実施形態に関する概略断面図である。
【図3d】本発明の方法の第3の実施形態に関する概略断面図である。
【図3e】本発明の方法の第3の実施形態に関する概略断面図である。
【図4a】本発明の方法の第4の実施形態に関する概略断面図である。
【図4b】本発明の方法の第4の実施形態に関する概略断面図である。
【図4c】本発明の方法の第4の実施形態に関する概略断面図である。
【図4d】本発明の方法の第4の実施形態に関する概略断面図である。
【図4e】本発明の方法の第4の実施形態に関する概略断面図である。
【図4f】本発明の方法の第4の実施形態に関する概略断面図である。
【図4g】本発明の方法の第4の実施形態に関する概略断面図である。
【図5a】本発明の方法の第5の実施形態に関する概略断面図である。
【図5b】本発明の方法の第5の実施形態に関する概略断面図である。
【図5c】本発明の方法の第5の実施形態に関する概略断面図である。
【図5d】本発明の方法の第5の実施形態に関する概略断面図である。
【図5e】本発明の方法の第5の実施形態に関する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
より詳細には、本発明は、シリコン太陽電池の後面用の少なくとも1つのコンタクトを製造するための方法に関する。この方法は、図1aに示されているように、シリコン基板2にドープ領域を施すことと、次にシリコン基板2の上に保護層3を堆積させることとを含む。本書では、保護層3は、単一保護層または保護スタック層を意味する。
【0035】
本発明における方法によって製造されるバックコンタクト構造体1は、シリコン基板2に堆積した保護層3を含む。保護層3は、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)層4および水素化アモルファス窒化シリコン(a-SiNx:H)層5を含むことが好ましい。
【0036】
保護層3の堆積後に、コンタクト部位は、そのコンタクト部位と、堆積される金属との間にシリコン材料だけがあるようにして構造体を処理することによって設けられる。これは一般に、コンタクト部位として定義する部分に位置している、a-SiNx:Hなどのいかなる非シリコン材料をも除去することを含む。一般に、このステップは、コンタクトが形成されることになる開口部7のパターンをもたらす。
【0037】
少なくとも1つの開口部7は、少なくとも1つのコンタクトが作られることになる場所に位置している。少なくとも1つの開口部7の形成後に、非選択的方法によって構造体1の上に金属層8を堆積させる。
【0038】
非選択的金属堆積方法は、スパッタリングまたは蒸着を含むことができ、金属が露出表面全体の上に堆積することを意味する。また、非選択的にメッキをかけることも可能である。
【0039】
金属層8の堆積後に、構造体1はアニーリング処理(温度処理)を受ける。使用される金属に応じて、一般に、175℃〜550℃、より好ましくは225℃〜500℃、最も好ましくは275℃〜450℃の範囲の、5〜60秒間の温度でシリサイドを作ることができる。この熱処理は、時間と共に直線的または非直線的に変化する温度プロファイルを含むことができる。この温度処理ステップは、例えば急速熱アニーリングによって行うことができる。
【0040】
開口部7における金属層8は、シリコン材料と反応してシリサイド部9を作る。非シリサイド金属は、本発明の第1の実施形態に関して説明する選択エッチングによって除去される。シリサイド部9は、コンタクトの電気抵抗を減らすために、電気メッキまたは無電解メッキをかけられる。メッキされる金属は、例えば銅でもよい。
【0041】
本発明はまた、本発明による方法によって製造されるバックコンタクト構造を含む太陽電池を提供する。
【0042】
保護層3の役割は、強化した表面保護によってシリコン構造体の集電特性を向上させることである。一部の用途に対しては、保護層3が、シリコン基板2を通過した光の最適な後面反射物として単独で働かない場合には、後面反射を増やすことが望ましい。この場合には、実施形態2、3、4、および5に例示されているように、保護層3の上部に反射層6が配置されて、シリコン構造体に戻す光子の後面反射を増やすように働き、それによってシリコン構造体1の電流発生特性が向上する。
【0043】
図は、2つのコンタクトを作るための方法を示す。しかし、本方法は、1つまたは複数のコンタクトの製造を含むことを強調しておく。
【0044】
本発明の第1の実施形態では、アモルファスシリコン底部層および窒化シリコン頂部層を含む保護層3が、シリコン基板2に最初に堆積する。
【0045】
続いて、範囲Aにおける窒化シリコン層5を除去することによってコンタクト部位が設けられ、少なくとも1つの特定のドープ領域13の上方部分における窒化シリコン層5内に、少なくとも1つの開口部7が作られる。このプロセスでは、図1bに見られるように、少なくとも1つの開口部7において、下にあるアモルファスシリコン層4の一部または全てが除去されてもよい。このようにして、コンタクト部位が設けられている。さらに、パターン化露出シリコン表面も同時に設けられている。少なくとも1つの開口部7におけるアモルファスシリコン層4の前記除去は、少なくとも1つの開口部7における窒化シリコン層5の前記除去と同じステップ、または別個のステップで行うことができる。続いて、図1cに見られるように、保護層3の上に金属層8が堆積して、少なくとも1つの開口部7を少なくとも充填する。充填は、開口部7における露出シリコンの全てまたは大部分が、金属8によって覆われることを意味する。次に、シリコン構造体1は、図1dに見られるように、金属8がシリコン材料と接触している部分に金属シリサイド9が形成されるように、適切なアニーリング処理(温度処理)を受ける。続いて、図1eに見られるように、シリサイド9を形成しなかった金属8を除去する選択エッチングを金属に施すことによって、コンタクトが分離される。
【0046】
保護層3は、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)層または水素化アモルファス窒化シリコン(a-SiNx:H)層を一般に含むことができる。他の実施形態では、保護層3は、a-Si:H層4およびa-SiNx:H層5を含むことができる。さらなる実施形態では、保護層3は、(シリコン基板から上に) a-Si:H層、a-SiNx:H層、およびa-Si:H層からなる。本発明は、これらの材料には限定されない。
【0047】
バックコンタクトを製造するための方法の第2の実施形態では、図2aに見られるように、保護層3の上にパターン化反射層6が堆積しており、少なくとも1つの開口部7が、コンタクトが形成されることになる場所を画定している。図2bに示されているように、開口部7において露出している保護層3の全てまたは大部分が除去されているが、それらを以下でより詳細に説明する。範囲A内の少なくとも1つの開口部7において周囲に露出している全ての窒化シリコン層5および全てのアモルファスシリコン層4は、除去されなければならない。このようにして、コンタクト部位が作られている。さらに、パターン化露出シリコン表面も同時に設けられている。次のステップは、金属層8の非選択的堆積を含む。次に、構造体1は、少なくとも1つの開口部7が位置しているシリコン構造体2の表面の上またはその下にシリサイド部9を形成するためにアニールされる。続いて、シリサイド9を形成しなかった金属を除去する選択エッチングを金属に施すことによって、コンタクトが分離される。これは図2cに示されている。一般に、電気抵抗を下げるために高導電性金属をシリサイド部9に加えて、コンタクト10を厚くすることができる。これは図2dに示されている。
【0048】
図3aは、反射層6によって画定されるパターンに従ってa-SiNx:H層5が除去される、少なくとも1つのバックコンタクトを製造するための方法の第3の実施形態を概略的に示す。図3bは、反射層6を覆い、また反射層6によって画定されるパターンに従って開口部7を充填するようにして施される金属層を有するシリコン構造体を示す。図3cは、シリサイド9を形成したアニーリングステップ後の同じシリコン構造体を概略的に示す。図3dは、シリサイドを形成しなかった金属8を除去した後のシリコン構造体を示す。図3eは、シリサイド部と結合したコンタクトを形成するために金属が付加された次のステップを概略的に示す。
【0049】
図4aは、保護層3がa-Si:H層4を含み、a-Si:H層4の上にa-SiNx:H層5が堆積しており、a-SiNx:H層5の上にa-Si:H層11が堆積している、少なくとも1つのバックコンタクトを製造するための方法の第4の実施形態を概略的に示す。図4bは、以下で説明するように、開口部7においてa-Si:H層11およびa-SiNx:H層5を除去してa-Si:H層4の少なくとも一部が残る程度まで、保護層3の少なくとも一部を開口部7において除去した後の同じシリコン構造体1を示す。このようにして、コンタクト部位が設けられている。このステップは一般に、レーザアブレーションまたはインクジェットエッチングによって行うことができる。図4cは、反射層がa-Si:H層11の上に施されており、開口部7が作られなかった部分の少なくとも一部を覆っている同じ構造体を示す。このようにして、パターン化露出シリコン表面が設けられている。図4dは、金属層が堆積して少なくとも開口部7を充填した後の構造体1を示す。図4eは、金属層8がa-Si:Hと接触していた領域において、アニーリングステップがシリサイド形成部9をもたらした後の同じ構造体1を示す。図4fは、シリサイド9を形成しなかった金属8が、一般に選択エッチングによって除去された後の同じ構造体1を示す。次に、金属がシリサイド9に加えられて、コンタクト10を形成する。
【0050】
図5aは、保護層3がa-Si:H層4を含む、少なくとも1つのバックコンタクトを製造するための方法の第5の実施形態を概略的に示す。保護層3の上に、少なくとも1つのコンタクトが形成されることになる少なくとも1つの開口部7を有するパターン化反射層6が堆積しており、それによってパターン化露出シリコン表面が設けられている。構造体1の上に金属層8が堆積しており(図5b)、以降の温度処理によって金属層8が露出シリコン表面と反応して少なくとも1つのシリサイド部9を形成することになる(図5c)。続いて、図5dに見られるように、非反応金属8は、シリサイド部をそのまま残す選択エッチングによって除去される。最後に、少なくとも1つのシリサイド部9に金属10が堆積する。
【0051】
これらの実施形態では、太陽電池の裏側だけの処理に言及し、表側は十分に処理されているものとする。本発明の方法は、この想定には何ら制限されず、本発明で説明する裏側処理の後に表側が処理されるか、または表側処理ステップが同時もしくは本発明において説明するステップの間に行われる状況も含むことになる。
【0052】
本実施形態では2つ以上のコンタクトを作ることに言及するが、本発明の方法では少なくとも1つのコンタクトを作ることに言及する。
【0053】
第1の実施形態
本発明の方法の第1の実施形態は、開始点として、ドープ領域13をもつ後面を一般に有する、十分な表側処理を受けたシリコン基板2を有する。ドープ領域13は、同じ型の伝導性でもよく、また交互になっているp型伝導性とn型伝導性を有していてもよい。ドープ領域13は、基板と同じかまたは異なるドーピング濃度を有することができる。シリコン構造体1は、単結晶シリコンウェーハ、多結晶シリコンウェーハ、またはシリコンベースの薄膜のいずれかから製造することができる。後面は、例えば湿式化学処理またはプラズマ処理によって、平らであるか、または粗いきめであり得る。
【0054】
後面は、例えば、H2SO4とH2O2の混合物、HClとH2O2とH2Oとの混合物、またはNH4OHとH2O2とH2Oとの混合物への露出と、次に続く、希釈HFなどの中での酸化物除去とによって最初に洗浄される。
【0055】
1つまたは複数の保護層3は、シリコン基板2の後面に施される。保護層3は、特許文献2(特許WO2006/110048A1)において説明されているように、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)層4および水素化アモルファス窒化シリコン(a-SiNx:H)層5を含む。保護層は、プラズマ化学気相成長(PECVD)、または、ホットワイヤCVD(HWCVD)、熱膨張プラズマ(ETP)、電子サイクロトン共鳴(ECR)、スパッタリング、もしくは同様の技法などの本目的に好適な他の堆積技法を用いて施すことができる。この点の構造は、図1aに示されている。
【0056】
保護層3の役割は、シリコン基板2の表面および表面以外の部分において荷電キャリア輸送特性を向上させることであり、それによってシリコン基板自体の集電能力を増大させることである。a-Si:H層4の厚さは、一般に5〜200nmであり、好ましくは10〜60nmである。a-SiNx:Hの厚さは、10〜150nmであり、好ましくは20〜100nmである。
【0057】
次のステップでは、ドープ領域13と一直線にそろえられ、それによってコンタクトが後で形成されることになる部分をなすようにして、少なくとも1つの開口部7が保護層3に作られる。これは図1bに示されている。「開口部」は、少なくともa-SiNx:H層5が除去されており、一方a-Si:H層4が除去されているかまたは少なくとも部分的にはそのままになっていることを意味する。図1bは、a-Si:H層4の少なくとも一部がそのまま残される方法を示す。
【0058】
この手順は、前記の開口部7を含む部分にコンタクト部位を提供することからなる。
【0059】
保護層3における少なくとも1つの開口部7は、それらに限定はされないが、
- インクジェットエッチング
- レーザアブレーション
- パターン化エッチング耐性マスクをかけ、(湿式化学エッチングまたはプラズマエッチングによって)保護層3をエッチングし、続いてそのマスクを除去すること
- スクリーン印刷エッチング。
の技法によって作ることができる。
【0060】
少なくとも1つの開口部7が形成された後、図1cに示されているように、少なくとも1つの開口部7を金属が少なくとも充填するようにして、金属層8を非選択的に堆積させる。金属層8は、それらに限定はされないが、例えば蒸着またはスパッタリングによって施すことができる。
【0061】
蒸着および以降のシリサイド形成に適した金属には、ニッケル、パラジウム、チタン、銀、金、アルミニウム、銅、タングステン、バナジウム、クロム、またはこれらの金属の任意の組合せが含まれる。
【0062】
裏側のシリサイド形成に適切な金属はニッケルである。シリサイド形成を通じては、モノシリサイド(NiSi)が好ましいが、これは、この合金がニッケルシリサイドの中で最も低い電気抵抗を有するためである。このことに加えて、本プロセスは、シリコンとシリサイドの間の最小接触抵抗に向けて最適化される必要がある。
【0063】
金属層8が施された後、構造体1は、金属層8がシリコン材料と接触している場所でシリサイド9の形成を促進するために適切なアニーリングステップを受ける(図1d)。少なくとも1つの開口部7における金属は、シリコン材料と反応して、少なくとも1つのシリサイド部9を作る。シリサイドは、使用される金属に応じて、一般に、175℃〜550℃、より好ましくは225℃〜500℃、最も好ましくは275℃〜450℃の範囲の、5〜60秒間の温度で作ることができる。この熱処理は、時間と共に直線的または非直線的に変化する温度プロファイルを含むことができる。この温度処理ステップは、例えば急速熱アニーリングによって行うことができる。
【0064】
保護層3の最適化と、シリサイド9形成のアニールステップとに必要な温度および時間の間の不一致の可能性があるため、金属層8の付加の前に、保護層4および保護層5をアニールすることが有益である場合がある。
【0065】
本発明の方法がフロントコンタクト太陽電池の裏側に実施される場合には、コンタクト分離は必要ないことがある。
【0066】
しかし、本発明の方法が、バックコンタクト電池の裏側に適用される場合には、一般に2つ以上のコンタクトを有することになるため、図1eに示されているように、これらのコンタクトを分離する必要がある。シリサイド9を形成するように反応しなかった金属8を除去するための適切な方法は、金属8よりはるかに遅くシリサイド9をエッチングするエッチング溶液を用いる選択エッチングによるものである。これは、例えば、HNO3、またはHNO3とHClの混合物への露出によって行うことができる。
【0067】
あるいは、レーザアブレーション、スクリーン印刷エッチング、またはインクジェットエッチングによってコンタクトを分離することもできる。
【0068】
続いて、コンタクトは、より低い電気抵抗を有する、より大きいコンタクト10をもたらす電気メッキまたは無電解メッキによって厚くされる。
【0069】
第2の実施形態
本発明の方法の関する第2の実施形態は、開始点として、交互になっているp型伝導性とn型伝導性のドープ領域をもつ後面を一般に有する、十分な表側処理を受けたシリコン基板2を有する。シリコン構造体は、単結晶シリコンウェーハ、多結晶シリコンウェーハ、またはシリコンベースの薄膜のいずれかから製造することができる。後面は、例えば湿式化学処理またはプラズマ処理によって、平らであるか、または粗いきめであり得る。
【0070】
後面は、例えば、H2SO4とH2O2の混合物、HClとH2O2とH2Oとの混合物、または、NH4OHとH2O2とH2Oとの混合物への露出と、次に続く、希釈HFなどの中での酸化物除去とによって最初に洗浄される。
【0071】
1つまたは複数の保護層3は、シリコン基板2の後面に施される。保護層3は、特許文献2(特許WO2006/110048A1)において説明されているように、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)層4および水素化アモルファス窒化シリコンa-SiNx:H層5を含む。保護層は、プラズマ化学気相成長(PECVD)、または、ホットワイヤCVD(HWCVD)、熱膨張プラズマ(ETP)、電子サイクロトン共鳴(ECR)、スパッタリング、もしくは同様の技法などの本目的に好適な他の堆積技法を用いて施すことができる。
【0072】
保護層3の役割は、シリコン基板2の表面および表面以外の部分において荷電キャリア輸送特性を向上させることであり、それによってシリコン基板自体の集電能力を増大させることである。a-Si:H層4の厚さは、一般に5〜200nmであり、好ましくは10〜60nmである。a-SiNx:Hの厚さは、10〜150nmであり、好ましくは20〜100nmである。層の厚さは、保護特性を維持しつつ、後面反射に関して最適化するために個別に調整することができる。
【0073】
保護層3の上部には、一般にインクジェットエッチングによってパターン化反射層6が施され、それによって、少なくとも1つのコンタクト部位13と一直線にそろえられている、反射層6における少なくとも1つの開口部7が残される。これは図2aに見られる。あるいは、保護層3の大部分または全てを覆う反射層6を施すことができ、この反射層6の一部は、少なくとも1つの開口部7を画定するために後で除去される。これらの両方の方法は等価であり、「少なくとも1つの開口部7を有する反射樹脂層6を施す」という表現でカバーされる。
【0074】
反射層6の材料は樹脂を含むことができ、樹脂は反射強化剤を含む。本実施形態における反射層の目的は、
- 保護層の開口部7のパターンを画定すること、
- 以降のエッチングステップの下で、保護層に対する保護マスクとして働くこと、
- シリコン基板2に吸収されなかった光子の向上した後面反射を確実にすること
である。
【0075】
反射層6における開口部7がパターンを画定し、そのパターンに対して、保護層3がシリコン基板2に向けて開口されることになる。保護層3は、図2bに見られるように、保護層3、すなわちa-SiNx:H層5およびa-Si:H層4の全てまたは大部分を除去する適切な溶液の中でエッチングされる。
【0076】
適切な溶液は、それらに限定はされないが、希釈HF溶液、濃縮HF溶液、もしくは緩衝HF溶液、または、希釈KOH溶液もしくは濃縮KOH溶液、または、希釈NaOH溶液または濃縮NaOH溶液、または、HFとHNO3とCH3COOHとを含む混合物、またはこれらの組合せでもよい。開口部を得るための方法の選択は重要ではない。重要な特徴は、保護層3を局所的に除去して下にあるシリコン材料を露出させる必要があるということである。このようにして、コンタクト部位が設けられる。
【0077】
反射層6によって画定されたパターンで保護層3を開口した後、反射層6の上部に適切な方法によって金属層8を施して、金属層8がシリコン基板2と接触した状態になる程度まで保護層3における開口部7を充填する。
【0078】
この方法は、シリコン基板2の裏側の全範囲、すなわち金属層8の非選択的堆積をもたらすことになる金属蒸着、スパッタリング、または無電解メッキを含むことができる。
【0079】
蒸着および以降のシリサイド形成に適した金属には、ニッケル、パラジウム、チタン、銀、金、アルミニウム、銅、タングステン、バナジウム、クロム、またはこれらの金属の任意の組合せが含まれる。
【0080】
裏側のシリサイド形成に適切な金属はニッケルである。シリサイド形成を通じては、モノシリサイド(NiSi)が好ましいが、これは、この合金がニッケルシリサイドの中で最も低い電気抵抗を有するためである。このことに加えて、本プロセスは、シリコンとシリサイドの間の最小接触抵抗に向けて最適化される必要がある。シリサイドは、使用される金属に応じて、一般に、175℃〜550℃、より好ましくは225℃〜500℃、最も好ましくは275℃〜450℃の範囲の、5〜60秒間の温度で作ることができる。この熱処理は、時間と共に直線的または非直線的に変化する温度プロファイルを含むことができる。この温度処理ステップは、例えば急速熱アニーリングによって行うことができる。
【0081】
金属層8が施された後、構造体1は、金属層8が少なくとも1つの開口部7において露出シリコン表面と接触している場所でシリサイド9の形成を促進するために適切なアニーリングステップを受ける。シリサイドは、使用される金属に応じて、一般に、175℃〜550℃、より好ましくは225℃〜500℃、最も好ましくは275℃〜450℃の範囲の、5〜60秒間の温度で作ることができる。この熱処理は、時間と共に直線的または非直線的に変化する温度プロファイルを含むことができる。この温度処理ステップは、例えば急速熱アニーリングによって行うことができる。
【0082】
保護層3の最適化と、シリサイド9形成のアニールステップとに必要な温度および時間の間の不一致の可能性があるため、反射層の付加の前に、保護層4および保護層5をアニールすることが有益である場合がある。
【0083】
シリサイドを形成しなかった金属は、第1の実施形態で説明した選択エッチングによって除去することができ、これは図2cに見られる
【0084】
続いて、コンタクトは、より低い電気抵抗を有する、より大きいコンタクト10をもたらす電気メッキまたは無電解メッキによって厚くされることになる(図2d)。
【0085】
第3の実施形態
本発明による方法の第3の実施形態を図3a〜図3eに示す。
【0086】
第1のステップは、第2の実施形態における第1のステップと同じである。本方法は、交互になっているp型伝導性とn型伝導性のドープ領域をもつ後面を一般に有する、十分な表側処理を受けたシリコン基板2で始まる。シリコン構造体は、単結晶シリコンウェーハ、多結晶シリコンウェーハ、またはシリコンベースの薄膜のいずれかから製造することができる。後面は、例えば湿式化学処理またはプラズマ処理によって、平らであるか、または粗いきめであり得る。裏側は、一般に第1の実施形態と同じ方法で洗浄される。
【0087】
シリコン基板2の上に、保護スタック層3が施される。保護スタック層3は、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)層4と、この上部に水素化アモルファス窒化シリコン(a-SiNx:H)層5とを含む。層4、5は、第1の実施形態と同じ方法で堆積する。
【0088】
保護層4、5の役割は、シリコン基板2の表面および表面以外の部分において荷電キャリア輸送特性を向上させることであり、それによってシリコン基板自体の集電能力を増大させることである。a-Si:H層4の厚さは、一般に5〜200nmであり、好ましくは10〜60nmである。a-SiNx:Hの厚さは、10〜150nmであり、好ましくは20〜100nmである。層の厚さは、保護特性を維持しつつ、後面反射に関して最適化するために個別に調整される。
【0089】
次のステップでは、パターン化反射層6が、第1の実施形態と同じ方法で層5の上に施される。反射層6は、一般にインクジェットエッチングによって堆積し、それによって、コンタクト部位13と一直線にそろえられている、反射層6における少なくとも1つの開口部7が残される。あるいは、保護層5の大部分または全てを覆う反射層6を施すことができ、この反射層6の一部は、開口部7に関するパターンを画定するために後で除去される。これらの方法は等価であり、「パターンによって画定される少なくとも1つの開口部7を有する反射樹脂層6を施す」という表現でカバーされる。
【0090】
反射層材料は樹脂を含むことができ、樹脂は反射強化剤を含む。反射樹脂を施す目的は、
- 保護層の開口部7のパターンを画定することと、
- 以降のエッチングステップの下で、保護層に対する保護マスクとして働くことと、
- シリコン基板2に吸収されなかった光子の向上した後面反射を確実にすることと
である。
【0091】
反射層6における開口部7がパターンを画定し、そのパターンに対して、保護層5が露出することになる。
【0092】
図3aは、反射層6で覆われていないa-SiNx:H層5の一部が除去され、a-Si:H層4を少なくとも部分的にそのまま残す次のステップを示す。これは一般に、希釈HF溶液への露出によって行われる。
【0093】
図3bは、反射層6の上部に金属層8が非選択的に施され、堆積した金属が、反射樹脂層6によって画定された開口部7を通じてa-Si:H層4と接触している次のステップを示す。
【0094】
金属の付加は、第1の実施形態と同じ方法で行われる。適切な金属も、第1の実施形態における適切な金属と同じである。
【0095】
金属層8が施された後、構造体1は、金属層8が少なくとも1つの開口部7において露出シリコン表面と接触している場所でシリサイド9の形成を促進するために、適切なアニーリングステップを受ける(図3c)。シリサイドは、使用される金属に応じて、一般に、175℃〜550℃、より好ましくは225℃〜500℃、最も好ましくは275℃〜450℃の範囲の、5〜60秒間の温度で作ることができる。この熱処理は、時間と共に直線的または非直線的に変化する温度プロファイルを含むことができる。この温度処理ステップは、例えば急速熱アニーリングによって行うことができる。
【0096】
この実施形態におけるシリサイド形成は、結晶シリコンのシリサイド形成に必要な温度がより高いため、一般に第2の実施形態より低い温度で行われ得る。これによって、大部分はa-Si:H/シリコン基板2の境界面で止まるシリサイド形成がもたらされる。これは図3cに示されている。
【0097】
保護層3の最適化と、シリサイド9形成のアニールステップとに必要な温度および時間の間の不一致の可能性があるため、反射樹脂層の付加の前に、保護層4および保護層5をアニールすることが有益である場合がある。
【0098】
本発明の方法が、コンタクト分離が必要ないことがある表側コンタクト太陽電池の裏側に実施される場合には、さらなる処理ステップはなくてもよい。
【0099】
しかし、本発明の方法が、裏側コンタクト電池の後面に適用される場合には、一般に2つ以上のコンタクトを有することになるため、図3dに示されているように、これらのコンタクトを分離する必要がある。適切な方法は、残留金属8だけが除去される選択エッチングによって、シリサイド9を形成するように反応しなかった金属8を除去することである。これは、例えば、HNO3、またはHNO3とHClの混合物への露出によって行うことができる。
【0100】
あるいは、レーザアブレーション、スクリーン印刷エッチング、またはインクジェットエッチングによってコンタクトを分離することもできる。
【0101】
続いて、コンタクトは、より低い電気抵抗を有する、より大きいコンタクト10をもたらす電気メッキまたは無電解メッキによって厚くされる(図3e)。
【0102】
第4の実施形態
本発明による方法の第4の実施形態を図4a〜図4gに示す。
【0103】
この方法は基板2で始まり、基板2は基板2の上に堆積している保護層3を有する。本発明のこの実施形態では、保護層3は底部アモルファスシリコン層4を有し、底部アモルファスシリコン層4の上にはアモルファス窒化シリコン層5が堆積しており、アモルファス窒化シリコン層5の上にはアモルファスシリコン層11が堆積している。この保護スタックは、図4aに示されている。
【0104】
保護層は、本発明の第1の実施形態で述べた技法によって施すことができる。
【0105】
次に、少なくとも頂部アモルファスシリコン層11およびアモルファス窒化シリコン層5が除去され、それによってアモルファスシリコン層4の少なくとも一部はそのままである開口部7が残される。この除去ステップは図4bに示されており、少なくとも1つの開口部7が少なくとも1つのコンタクト部位13と一直線にそろえられていることを示す。図4b参照。
【0106】
この除去ステップは、インクジェットエッチング、スクリーン印刷エッチング、レーザアブレーションを利用すること、以降のエッチングおよびマスク除去に関してフォトマスクを適用すること、または他の適切な技法を含むことができる。
【0107】
残っている保護層3の上部には、以降のシリサイド形成が必要でない部分に反射層6が施される。これは図4cに示されている。
【0108】
最後の2つのステップが行われる順序は重要ではない。保護層3全体を反射層6で完全に覆うことも可能であり、次のステップで、反射層、頂部a-Si:H層、およびa-SiNx:H層が開口部7を作製するために除去される。上記材料層の除去は、例えばレーザアブレーションによって行うことができる。
【0109】
金属層8を非選択的に施し、少なくとも反射樹脂層6で覆われていない部分を充填する次のステップが図4dに示されている。金属層は、蒸着、スパッタリング、または他の適切な技法によって施すことができる。
【0110】
蒸着および以降のシリサイド形成に適した金属には、ニッケル、パラジウム、チタン、銀、金、アルミニウム、銅、タングステン、バナジウム、クロム、またはこれらの金属の任意の組合せが含まれる。
【0111】
本発明は、これらの金属の選択には制限されず、高導電性シリサイドまたはシリコン合金を形成する任意の金属を用いて、p型シリコンおよびn型シリコンの両方に対して適用可能である。
【0112】
金属層8が施された後、構造体1は、金属層8が少なくとも1つの開口部において露出シリコン表面と接触している場所でシリサイド9の形成を促進するために適切なアニーリングステップを受ける(図4e)。シリサイドは、使用される金属に応じて、一般に、175℃〜550℃、より好ましくは225℃〜500℃、最も好ましくは275℃〜450℃の範囲の、5〜60秒間の温度で作ることができる。この熱処理は、時間と共に直線的または非直線的に変化する温度プロファイルを含むことができる。この温度処理ステップは、例えば急速熱アニーリングによって行うことができる。このプロセスは、金属が層4または層11においてアモルファスシリコンと接触している領域に、シリサイド9を形成する。
【0113】
したがって、反射層6の上部にある金属はシリサイドを形成しない。
【0114】
バックコンタクト太陽電池のように、形成されるコンタクトを分離する必要がある場合には、シリサイドを形成しなかった金属は、第1の実施形態で述べた選択エッチングによって除去することができる。
【0115】
電池が電池の表側にも接触している両側コンタクト太陽電池におけるバックコンタクトとして付加する場合には、シリサイドを形成しなかった金属は、除去する必要がないことがある。
【0116】
続いて、コンタクトは、より低い電気抵抗を有する、より大きいコンタクト10をもたらす電気メッキまたは無電解メッキによって厚くされる。
【0117】
第5の実施形態
本発明の第5の実施形態を図5a〜図5eに示す。
【0118】
この方法は基板2で始まり、基板2は、基板2の上に堆積している保護層3を有する。本発明のこの実施形態では、保護層3は、アモルファスシリコン(a-Si:H)層4を有する。
【0119】
保護層3の上部には、一般にインクジェットエッチングによってパターン化反射層6が施され、それによって、少なくとも1つのコンタクト部位13と一直線にそろえられている、反射層6における少なくとも1つの開口部7が残される。これは図5aに見られる。あるいは、保護層3の大部分または全てを覆う反射層6を施すことができ、この反射層6の一部は、少なくとも1つの開口部7を画定するために後で除去される。これらの両方の方法は等価であり、「少なくとも1つの開口部7を有する反射樹脂層6を施す」という表現でカバーされる。
【0120】
このステップの後、図5bに見られるように、蒸着またはスパッタリングによって、金属層が構造体1全体の上に非選択的に施される。
【0121】
蒸着および以降のシリサイド形成に適した金属には、ニッケル、パラジウム、チタン、銀、金、アルミニウム、銅、タングステン、バナジウム、クロム、またはこれらの金属の任意の組合せが含まれる。
【0122】
金属層8が施された後、構造体1は、金属層8が少なくとも1つの開口部7において露出シリコン表面と接触している場所でシリサイド9の形成を促進するために、適切なアニーリングステップを受ける(図5c)。シリサイドは、使用される金属に応じて、一般に、175℃〜550℃、より好ましくは225℃〜500℃、最も好ましくは275℃〜450℃の範囲の、5〜60秒間の温度で作ることができる。この熱処理は、時間と共に直線的または非直線的に変化する温度プロファイルを含むことができる。この温度処理ステップは、例えば急速熱アニーリングによって行うことができる。このプロセスは、図5cに見られるように、金属が層4におけるアモルファスシリコンと接触している領域にシリサイド9を形成する。
【0123】
したがって、反射層6の上部にある金属はシリサイドを形成しない。
【0124】
バックコンタクト太陽電池のように、形成されるコンタクトを分離する必要がある場合には、シリサイドを形成しなかった金属は、第1の実施形態で述べた選択エッチングによって除去することができ、これは図5dに見られる。
【0125】
電池が電池の表側にも接触している両側コンタクト太陽電池におけるバックコンタクトとして付加する場合、シリサイドを形成しなかった金属は、除去する必要はない。
【0126】
続いて、コンタクトは、図5eに見られるように、より低い電気抵抗を有する、より大きいコンタクト10をもたらす電気メッキまたは無電解メッキによって厚くされる。
【符号の説明】
【0127】
1 シリコン構造体
2 シリコン基板
3 保護層
4 水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)層
5 水素化アモルファス窒化シリコン(a-SiNx:H)層
6 反射層
7 開口部
8 金属層
9 シリサイド部
10 コンタクト
11 水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)層
13 ドープ領域
13 コンタクト部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板(2)、少なくとも1つのドープ領域(13)を含む太陽電池の後面に少なくとも1つのコンタクトを有する構造体(1)を提供するための方法であって、
a)前記シリコン基板(2)の前記後面の上に保護層(3)を堆積させるステップと、
b)少なくとも1つのコンタクト部位を設けるステップと、
c)パターン化露出シリコン表面を設けるステップと、
d)金属層(8)を非選択的に堆積させるステップと、
e)前記構造体(1)をアニールして金属シリサイド(9)を形成するステップと、
f)ステップe)の後に余分な金属(8)を除去するステップと、
g)金属を前記シリサイド(9)の上に付加して少なくとも1つのコンタクト(10)を形成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップb)およびステップc)が同時に行われ得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)がステップb)の前に行われ得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)が、少なくとも1つの開口部(7)を有する反射層(6)を堆積させるステップと、その後で前記少なくとも1つの開口部(7)に前記コンタクト部位を設けるステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)が、反射層(6)を前記保護層(3)の上に堆積させるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)が、a−Si:H層(4)を堆積させるステップを含むことを特徴とする、請求項1から3に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)が、a−Si:H層(4)を堆積させるステップと、次に前記a−Si:H層(4)の上部にa−SiN:H層(5)を堆積させるステップとを含むことを特徴とする、請求項1から3に記載の方法。
【請求項8】
ステップa)が、a−Si:H層(4)を堆積させるステップと、次に前記a−Si:H層(4)の上部にa−SiN:H層(5)を堆積させるステップと、次に前記a−SiN:H層(5)の上部にa−Si:H層(11)を堆積させるステップとを含むことを特徴とする、請求項1から3に記載の方法。
【請求項9】
前記反射層(6)が反射樹脂層であることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項10】
前記反射層(6)が、反射強化ポリマーまたは反射強化エポキシであることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項11】
前記反射層(6)が、インクジェットまたはスプレーによって堆積することを特徴とする、請求項4、5、9、または10に記載の方法。
【請求項12】
ステップd)における金属層(8)の前記金属がニッケルであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップd)における金属の前記付加が、蒸着またはスパッタリングによって行われることを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
シリコン基板(2)と、前記シリコン基板(2)の上に堆積しているアモルファスシリコン層(3)と、前記アモルファスシリコン層(3)の上に堆積しており少なくとも1つの開口部(7)を有する反射層(6)とを含む太陽電池の後面用のコンタクト(10)であって、前記少なくとも1つの開口部7の中にシリサイド(9)があり、付加された金属が前記シリサイド(9)を覆っている、コンタクト(10)。
【請求項15】
前記コンタクト(10)が、請求項1から13の一項に記載の方法によって太陽電池の後面に設けられていることを特徴とする、コンタクトを含む後面を含む太陽電池。
【請求項16】
請求項14に記載のコンタクトを含む後面を含む太陽電池。
【請求項17】
少なくとも1つのドープ領域(13)を有するシリコン基板(2)を含む太陽電池の後面に少なくとも1つのコンタクトを有する構造体(1)を提供するための方法であって、
a)前記シリコン基板(2)の上に保護層(3)を堆積させるステップと、
b)少なくとも1つのコンタクト部位を設けるステップと、
c)パターン化露出シリコン表面を設けるステップと、
d)金属層(8)を非選択的に堆積させるステップと、
e)前記構造体(1)をアニールして金属シリサイド(9)を形成するステップと、
f)金属を前記シリサイド(9)の上に付加して少なくとも1つのコンタクト(10)を形成するステップと
を含む方法。
【請求項18】
ステップb)およびステップc)が同時に行われ得ることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップc)がステップb)の前に行われ得ることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ステップb)が、少なくとも1つの開口部(7)を有する反射層(6)を堆積させるステップと、その後で前記少なくとも1つの開口部(7)にコンタクト部位を設けるステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ステップc)が、反射層(6)を前記保護層(3)の上に堆積させるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
ステップa)が、a−Si:H層(4)を堆積させるステップを含むことを特徴とする、請求項17から19に記載の方法。
【請求項23】
ステップa)が、a−Si:H層(4)を堆積させるステップと、次に前記a−Si:H層(4)の上部にa−SiN:H層(5)を堆積させるステップとを含むことを特徴とする、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ステップa)が、a−Si:H層(4)を堆積させるステップと、次に前記a−Si:H層(4)の上部にa−SiN:H層(5)を堆積させるステップと、次に前記a−SiN:H層(5)の上部にa−Si:H層(11)を堆積させるステップとを含むことを特徴とする、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記反射層(6)が反射樹脂層であることを特徴とする、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記反射層(6)が、反射強化ポリマーまたは反射強化エポキシであることを特徴とする、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記反射層(6)が、インクジェットまたはスプレーによって堆積することを特徴とする、請求項20、21、25、または26に記載の方法。
【請求項28】
ステップd)における金属層(8)の前記金属がニッケルであることを特徴とする、請求項17から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ステップf)における金属の前記付加が、電気メッキまたは無電解メッキによって行われることを特徴とする、請求項17から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記コンタクト(10)が、請求項17から29のいずれか一項に記載の方法によって太陽電池の後面に設けられていることを特徴とする、コンタクトを含む後面を含む太陽電池。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図4g】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【公表番号】特表2012−516567(P2012−516567A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547845(P2011−547845)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【国際出願番号】PCT/NO2010/000031
【国際公開番号】WO2010/087718
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(506282470)リニューアブル・エナジー・コーポレーション・エーエスエー (9)
【Fターム(参考)】