説明

コンタクトレンズ

本発明は、製作が容易で軸安定性にも優れた、新規なバラスト機構を備えたコンタクトレンズを提供することを、目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明では、コンタクトレンズ30のレンズ前面36において、(i)光学部44を形成する円形状の光学部前面38と、(ii)周辺部46
,48を形成する円環形状の周辺部前面40,42とを、レンズ正面視においてそれぞれレンズ幾何中心軸32回りで略一定の径方向寸法をもって形成すると共に、周辺部前面40及び42の断面形状を周方向で変化せしめて、周辺部46及び48の肉厚寸法を周方向で変化させることにより、該コンタクトレンズ30の重心点:Gをレンズ幾何中心軸32から偏心させて設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ソフトタイプおよびハードタイプを含むコンタクトレンズに係り、特に装用時に周方向のレンズ位置決めを行うバラスト機構を備えたコンタクトレンズに関するものである。
【背景技術】
コンタクトレンズにおいては、例えば乱視矯正用の光学部を有する場合など、装用時に周方向の位置決めが必要とされる場合がある。そこで、装用時にコンタクトレンズを周方向で位置決めする手法の一種として、従来から、バラスト機構が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。かかるバラスト機構は、レンズの重心点をレンズの幾何中心軸から偏心設定することにより、コンタクトレンズに作用する重力を利用してコンタクトレンズを周方向に位置決めするようになっている。ところが、バラスト機構を採用したコンタクトレンズは、下方が厚肉となり過ぎて良好な装用感が得難いという問題があった。
そこで、このような問題に対処するために、バラスト機構にスラブオフを組み合わせることが提案されている。具体的には、図13及び図14に示されているように、コンタクトレンズ10において、レンズ後面12の曲率中心が位置せしめられたレンズ幾何中心軸14に対して、光学部16のレンズ前面18の曲率中心が位置せしめられた光学部中心軸20を距離:δだけ偏心させてプリズムを施すことにより、重心:Gをレンズ幾何中心軸14から偏心位置せしめると共に、レンズ前面18の外周縁部を薄肉化する形態のスラブオフ24を、特に厚肉となる重心Gの偏心側で幅広となるように形成することによって、スラブオフを組み合わせたプリズムバラスト機構が提供されることとなる。
ところが、このようなプリズムバラスト機構を備えた従来構造のコンタクトレンズ10は、光学部16やその外周部分に形成された周辺部26の曲率半径とスラブオフ24のレンズ前面の曲率半径が相互に異なるだけでなく、レンズ前面18の正面視において、スラブオフ24の径方向幅寸法がレンズ周方向で変化していることから、コンタクトレンズ10の樹脂成形型を射出成形するための金型を製作するに際して、その成形面の加工が難しく、光学部16や周辺部26のための成形面とスラブオフ24のための成形面を互いに別の加工工程で旋削形成する必要がある。そのために、光学部16や周辺部26のための成形面とスラブオフ24のための成形面の境界部分にエッジが発生し易く、金型加工ひいてはコンタクトレンズ10の製造が面倒で難しいという問題があったのである。また、かかる境界部分のエッジをならす目的で、タレット旋盤などを用いた研磨等の工程も必要となることから加工工程が多く作業も煩雑であった。
【特許文献1】 特公昭60−24924号公報
【発明の開示】
本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、装用状態下での軸安定性に優れると共に、製作も容易に行うことが可能となる、新規なバラスト構造を備えたコンタクトレンズを提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
(本発明の態様1)
すなわち、本発明の態様1は、中央部分に位置する光学部と、該光学部の周りに位置する周辺部とを含んで構成されていると共に、全体の重心がレンズ幾何中心軸から偏心せしめられて、装用状態下のレンズ方向を周方向で位置決めするバラスト機構を備えたコンタクトレンズであって、レンズ前面には、(i)前記光学部を形成する円形状の光学部前面と、(ii)前記周辺部を形成する円環形状の周辺部前面とが、レンズ正面視においてそれぞれレンズ幾何中心軸回りで略一定の径方向寸法をもって形成されていると共に、該周辺部前面の断面形状が周方向で変化しており、該周辺部の肉厚寸法が周方向で変化せしめられてその重心点がレンズ幾何中心軸から偏心して設定されているコンタクトレンズを、特徴とする。
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズでは、光学部の周囲に形成された周辺部において重心が偏心設定されることから、光学部の設計自由度が大きくなるのであり、例えば、光学部におけるプリズム量を抑えつつ、周辺部において重心を偏心させて良好なバラスト機構を実現することが可能となるのである。
特に、周辺部は、そのレンズ前面の断面形状が周方向で変化せしめられていることから、従来のプリズムバラスト構造のコンタクトレンズのように一定の曲率半径でレンズ前面の全体に亘って周辺部やスラブオフが形成されていたものに比して、周辺部の設計自由度も大きく、周辺部における重心を大きく偏心させることによって、装用状態下でコンタクトレンズを周方向に有利に安定せしめ得るバラスト機構が実現可能となるのである。
(本発明の態様2)
本発明の態様2は、前記態様1に係るコンタクトレンズであって、前記光学部前面が、前記レンズ幾何中心軸から前記周辺部の重心点の偏心方向と同じ方向に外れた位置に曲率中心をもって形成されていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズにおいては、光学部の幾何中心をレンズ幾何中心に一致させつつ、即ち正面視において円形の光学部の中心点を円形のレンズ外形中心点に一致させつつ、光学部の重心点をレンズ幾何中心から偏心させることにより、光学部の重心の偏心と周辺部の重心の偏心とで協働して、コンタクトレンズ全体としてより大きな重心点の偏心量を得ることが可能となる。それによって、コンタクトレンズの装用状態下での周方向の安定性が一層有利に実現可能となるのである。
(本発明の態様3)
本発明の態様3は、前記態様1又は2に係るコンタクトレンズであって、前記周辺部が、前記光学部の外周縁部に接続された第一周辺部と、該第一周辺部の外周縁部に接続されてエッジ部まで至る第二周辺部とによって構成されており、該第一周辺部と該第二周辺部がそれぞれレンズ幾何中心軸回りで略一定の径方向寸法の円環形状とされていると共に、該第一周辺部のレンズ前面が非円弧形の断面形状とされている一方、該第二周辺部のレンズ前面が略円弧形の断面形状とされていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズにおいては、角膜と接するコンタクトレンズの外周部分を構成する第二周辺部が、滑らかなレンズ前面の形状をもって形成されると共に、その肉厚寸法を、周方向の全周に亘って薄肉とすることが出来ることから、優れた装用感が実現され得る。
なお、第一周辺部のレンズ前面は、径方向断面において径方向の全長に亘って曲率半径乃至は接線の傾斜角度が連続的に変化せしめられることにより、エッジ状の折れ点がなく全体に連続した湾曲形状とされることが望ましい。より好適には、レンズ前面において、第一周辺部の内周縁部と外周縁部も、光学部と第二周辺部に対して、それぞれ、共通接線をもって折れ点なく滑らかに接続されることが望ましい。それによって、エッジ状の折れ点が周方向に形成されることに起因する装用感の低下や、レンズ外観上でリング状のラインの発生が、有利に回避され得る。
因みに、そのような条件を満足し得る第一周辺部のレンズ前面は、例えば、二次以上の多項式や、円錐曲線,スプライン曲線の少なくとも一つ又はこれらの組み合わせによって定義される径方向断面形状によって実現され得ることとなる。具体的には、例えば、適当な径方向断面を周方向の適数箇所で具体的に設定し、それらの周方向間を適当な補間法で補うことによって、第一周辺部のレンズ前面の全体形状が設計され得る。
(本発明の態様4)
本発明の態様4は、前記態様3に係るコンタクトレンズであって、前記第二周辺部の内周縁部におけるレンズ肉厚寸法の最小値と最大値の差が、全周上で0.3mm以下とされていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズにおいては、角膜や眼瞼と接することによって装用感やコンタクトレンズの装用時の安定性に関して特に影響の大きい第二周辺部が、周方向において局部的に大きな肉厚寸法の変化もなく形成されることとなって、一層優れた装用感が実現可能となる。なお、第二周辺部のレンズ前面形状も、例えば、適当な径方向断面を周方向の適数箇所で具体的に設定し、それらの周方向間を適当な補間法で補うことによって、第二周辺部のレンズ前面の全体形状が設計され得る。また、本態様においてより好ましくは、第二周辺部の内周縁部におけるレンズ肉厚寸法の最小値と最大値の差が、全周上で0.1mm以下とされる。
(本発明の態様5)
本発明の態様5は、前記態様3又は4に係るコンタクトレンズであって、前記第二周辺部の断面形状が周方向で略一定とされていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズにおいては、コンタクトレンズの形状保持に関して特に影響の大きい外周縁部を構成する第二周辺部が周方向の全周に亘って略一定の断面形状とされていることにより、コンタクトレンズの歪な変形が抑えられて良好で安定した形状保持が実現され得る。
(本発明の態様6)
本発明の態様6は、前記態様1乃至5の何れかに係るコンタクトレンズであって、前記光学部のレンズ前面及び/又はレンズ後面がトーリック面とされていることを、特徴とする。
トーリックレンズは、従来から乱視矯正用として広く採用されているが、眼球の乱視軸とコンタクトレンズの光学部における円柱軸との相対位置に関して高度で且つ安定した合致性が要求されることとなる。従って、トーリックレンズに対しては、特に本発明が有利に適用されることとなり、本発明を適用することによって、良好な装用感を確保しつつ、安定した乱視矯正効果が発揮されるのである。
(本発明の態様7)
本発明の態様7は、前記態様1乃至6の何れかに係るコンタクトレンズであって、前記光学部のレンズ前面及び/又はレンズ後面が多焦点を与える非球面とされていることを、特徴とする。
例えば老視を矯正する遠近両用のコンタクトレンズを提供するために、二焦点のバイフォーカルレンズや三以上の焦点のマルチフォーカルレンズ、或いは累進多焦点レンズ等の多焦点レンズが広く採用されているが、特にセグメントタイプなどの光学中心回りの周方向のレンズ度数分布が一様でないレンズデザインが採用された多焦点レンズは、前述のトーリックレンズと同様に、周方向の位置決めが必要となる。そこで、多焦点レンズに対しても本発明が有利に適用されることとなり、本発明を適用することによって、良好な装用感を確保しつつ、安定した老視矯正効果が発揮されるのである。
(本発明の態様8)
本発明の態様8は、前記態様1乃至7の何れかに係るコンタクトレンズの製造方法であって、一軸回りの回転による旋削加工でキャビティ形成面の全体を連続的に加工した金型を用いて合成樹脂製の成形雌型を製作することにより、前記光学部前面および前記周辺部前面を含むレンズ前面を該金型の該キャビティ形成面によって該成形雌型に形成し、かかる成形雌型を用いてコンタクトレンズを型成形するコンタクトレンズの製造方法を特徴とする。
このような本発明方法に従えば、上述の如き本発明の態様1乃至7の何れかに従う構造とされた新規な構造のコンタクトレンズを得るための成形雌型用の金型を、一軸回りの旋削加工によってキャビティ形成面の全体を形成せしめて、容易に加工することが出来るのであり、それ故、目的とするコンタクトレンズを、金型製作を含めた全体工程において良好な作業性と優れた精度をもって、容易に製造することが可能となるのである。
特に、目的とするコンタクトレンズにおいて光学部と周辺部を含むレンズ前面の全ての領域がレンズ幾何中心軸を中心とする同心円形状とされていることから、かかるコンタクトレンズを型成形するのに用いられる成形雌型用の金型を製作するに際して、キャビティ形成面の全体が一軸回りの旋削加工で形成され得るのであり、それ故、金型ひいてはコンタクトレンズの寸法精度と製造効率が極めて有利に確保され得ることとなる。
また、被加工物に対するバイト位置を数値制御することの出来るNC旋盤等が、本発明方法に従う金型のキャビティ形成面の加工に有利に採用され得るのであり、例えば、金型をキャビティ形成面の中心軸回りに回転させつつバイトをキャビティ形成面の径方向に次第に移行させることで、キャビティ形成面を渦巻状の軌跡をもって旋削加工するに際して、金型の中心軸回りの回動角度に応じて、バイトを金型の中心軸方向で金型に対して相対的に往復変位させることにより、プリズム等によって重心点が偏心せしめられたコンタクトレンズ用の金型を有利に製作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施形態としてのコンタクトレンズを示す正面図である。
図2は、本発明の第一の実施形態としてのコンタクトレンズを示す半径方向:θ=0度の縦断面図である。
図3は、図2に示されたコンタクトレンズの別の半径方向:θ=90度の縦断面図である。
図4は、図2に示されたコンタクトレンズの更に別の半径方向:θ=180度の縦断面図である。
図5は、図2に示されたコンタクトレンズにおける第二ジャンクションの肉厚寸法を示すグラフである。
図6は、本発明の第二の実施形態としてのコンタクトレンズを示す半径方向:θ=0度の縦断面図である。
図7は、図6に示されたコンタクトレンズの別の半径方向:θ=90度の縦断面図である。
図8は、図6に示されたコンタクトレンズの更に別の半径方向:θ=180度の縦断面図である。
図9は、本発明の第三の実施形態としてのコンタクトレンズを示す半径方向:θ=0度の縦断面図である。
図10は、図9に示されたコンタクトレンズの別の半径方向:θ=90度の縦断面図である。
図11は、図9に示されたコンタクトレンズの更に別の半径方向:θ=180度の縦断面図である。
図12は、本発明方法に従うコンタクトレンズの一製造工程を説明するためのモデル図である。
図13は、従来構造のプリズムバラスト機構を備えたコンタクトレンズを概略的に示す正面説明図である。
図14は、図13に示された従来構造のコンタクトレンズを概略的に示す縦断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則としてコンタクトレンズの装用時に略鉛直上下方向とされる、図1中の上下方向をいうものとする。
先ず、図1〜4には、本発明に従う構造とされたコンタクトレンズ30aの具体例が示されている。かかるコンタクトレンズ30aは、全体として部分的な略球殻形状を有しており、良く知られているように、眼球における角膜の表面に重ね合わせて装用されることによって使用されるようになっている。また、本実施形態のコンタクトレンズ30aは、レンズ外形の中心軸であるレンズ幾何中心軸32を通る一つの径方向線33に関して対称形状とされており、装用状態下で、この径方向線33が略鉛直方向となるようにバラスト機構が付与されている。なお、径方向断面形状を示す図2〜4では、対称軸となる径方向線33上で、図1中の上方を基準(θ=0度)として、レンズ幾何中心軸32回りの周方向でθ=0度,90度,180度の三つを示す。
より詳細には、本実施形態のコンタクトレンズ30aは、図1に示された正面視において円形状とされており、略凹状球面とされたレンズ後面34と略凸状球面とされたレンズ前面36を有している。レンズ後面34は、全体として、装用される角膜の表面形状に対応した略凹状球面形状のベースカーブとされている。レンズ前面36は、正面視で円形状の光学部前面38と、同円環形状の第一周辺部前面40と、同円環形状の第二周辺部前面42によって構成されている。これら各領域38,40,42は、レンズ幾何中心軸32を中心として同心的な円形の周縁部をもって形成されている。
これにより、コンタクトレンズ30aは、構造上、光学部前面38でレンズ前面が形成された光学部44と、第一周辺部前面40でレンズ前面が形成された第一周辺部46と、第二周辺部前面42でレンズ前面が形成された第二周辺部48、および最外周縁部に位置してレンズ前後面を接続するエッジ部50によって、構成されている。
ここにおいて、レンズ後面34は、装用される角膜の表面形状に対応した略凹状球面形状のベースカーブとされており、径方向断面形状として数次の多項式をはじめとする任意の形状が採用可能である。
また、光学部前面38は、レンズ後面34と協働して、要求される視力矯正機能等の光学特性として、例えば単一焦点や複数焦点或いは多焦点のレンズ度数を実現せしめるように、適当な曲率半径の球面や非球面が採用される。更に、本発明が有利に適用される乱視矯正用コンタクトレンズでは、要求される乱視矯正機能の光学特性を光学部44に付与するために、レンズ後面34と光学部前面38の少なくとも一方において、適当な円柱度数が、適当な円柱軸角度をもって発現されるように、円柱レンズ面が組み合わせられる。
更にまた、光学部前面38においては、必要に応じて、その光学中心軸52がレンズ幾何中心軸32から下方に適当な距離:δだけ偏心して設定される。これにより、光学部44にプリズムを設定して、光学部44の重心:Gを、レンズ幾何中心軸32から下方に偏心設定することが出来る。
一方、第一周辺部46および第二周辺部48は、何れもコンタクトレンズ30aの光学特性に影響を与えるものでないことから、その形状を、要求される光学特性による拘束を受けることなく設定することが出来る。そこで、第一周辺部46は、その重心点をレンズ幾何中心軸32から下方に偏心設定することにより、光学部44の重心:Gの下方への偏心と協働して、コンタクトレンズ30a全体の重心が下方に偏心設定されてバラスト機構を有利に実現せしめ得るように、第一周辺部前面40の形状を設定することが可能である。また、第二周辺部48は、コンタクトレンズ30aに対して装用時の位置安定性や装用感が良好に発揮されるように、第二周辺部前面42の形状を設定することが可能である。
具体的には、これら第一周辺部前面40および第二周辺部前面42には、任意の形状の付与が可能であるが、設計および製作の作業性等も考慮すると、例えば、第一周辺部前面40としては、二次以上の多項式や円錐曲線,スプライン曲線の少なくとも一つ又はこれらの組み合わせによって定義される径方向断面形状が好適に採用される一方、第二周辺部前面42としては、円弧形状や二次曲線形状によって定義される径方向断面形状が好適に採用される。
ここにおいて、良好な装用感を実現するために、好ましくは、第一周辺部前面40は、何れの半径方向断面においても、第一周辺部46の肉厚寸法が光学部44の肉厚寸法の最大値を越えないように、形状設定される。一般には、光学部44のレンズ度数がマイナスディオプタのコンタクトレンズ30aでは、各半径方向断面において、光学部44と第一周辺部前面40の接続部位である第一ジャンクション54の位置で、第一周辺部46が最も肉厚となるようにされる。また、光学部44のレンズ度数がプラスディオプタのコンタクトレンズ30aでは、各半径方向断面において、光学部44の光学中心軸52上と第一ジャンクション54との何れか肉厚寸法が大きい方に対して、第一周辺部46の肉厚寸法が、それ以下となるように設定される。
なお、第一周辺部46は、バラスト機構によるコンタクトレンズ30aの装用時の周方向安定性を有利に実現するために、周方向の肉厚寸法は積極的に変化せしめれられることとなり、レンズ幾何中心軸32に対する第一周辺部46の重心の下方への偏心量は、少なくとも第二周辺部48の重心の偏心量より大きく、好ましくは、光学部44の重心の偏心量より大きく設定される。尤も、第二周辺部48の重心は、必ずしも偏心位置せしめられる必要はない。
また、装用感や、コンタクトレンズ30aを手指に載せた状態での形状保持特性を、有利に実現するために、好ましくは、第二周辺部前面42は、第一周辺部46と第二の周辺部48の接続部位である第二ジャンクション56の厚さ寸法を基準として、略一定の厚さ寸法で広がるか、外周側に行くに従って僅かに薄肉となるように形状設定される。特に、コンタクトレンズ30aを手指に載せた状態での形状保持特性を一層有利に得るために、第二周辺部48の径方向断面形状は、周方向の全周に亘って略一定であることが望ましく、好適には、第二周辺部48の何れの径方向部位においても周方向の全周における肉厚寸法差(周上の肉厚寸法の最大値と最小値の差)が、0.3mm以下となるように設定される。
特に、光学部44にマイナスディオプタが設定された本実施形態のコンタクトレンズ30aでは、第二周辺部48の最大厚さ寸法が第一周辺部46の最小厚さ寸法以下に設定されている。これにより、コンタクトレンズ30aは外周側に行くに従って薄肉となるように形状設定されて、良好な装用感と形状保持特性が有利に両立されることとなる。
さらに、一層良好な装用感を実現するために、第一周辺部前面40や第二周辺部前面42は、何れも、折れ点のない滑らかな形状とされることが望ましく、より好適には、光学部前面38と第一周辺部前面40の接続点である第一ジャンクション54や第一周辺部40と第二周辺部42の接続点である第二ジャンクション56の各レンズ前面を含むレンズ前面36の実質的に全体に亘って、径方向において接線の傾斜角度が連続的に変化せしめられることにより、エッジ状の折れ点がなく連続した滑らかな形状とされる。
具体的には、図2〜4に示された本実施形態のコンタクトレンズ30aでは、外径寸法(DIA)が14.0mmとされている。また、レンズ後面34が、レンズ幾何中心軸32上に曲率中心を有する曲率半径:8.70mmの球面に対して、円柱度数:−1.50ディオプタの円柱レンズ面を、円柱軸角度:180度として水平方向に延びる円柱軸をもって組み合わせた形状とされている。レンズ前面36は、球面形状を採用して、レンズ幾何中心軸32上の肉厚寸法(Ct)が0.08mmで、且つ−8.00ディオプタのパワー(P)を与えるように設定されている。また、レンズ前面36の曲率中心である光学中心軸52は、レンズ幾何中心軸32に対して偏心量(δ)=0.14mmだけ下方に偏心設定されて、光学部44にプリズムが付与されている。一方、第一周辺部前面40は、周上の各部位における径方向断面形状が3次曲線を使用して設定されている。また、第二周辺部前面42は、周上の各部位における径方向断面形状が円弧を使用して設定されている。更に、レンズ前面36は、第一ジャンクション54および第二ジャンクション56の何れにおいても、一つの接線を共有した、折れ点のない滑らかな径方向断面を持って設計されている。
また、第二周辺部前面42は、図5に示されているように、第二周辺部48の厚さ寸法の周上での差が最も大きくなる第二ジャンクション56において、その最小厚さ寸法が0.16mm,最大厚さ寸法が0.22mmとなり、全周上での厚さ寸法差が0.06mmとなるように設計されている。なお、第一周辺部前面40と第二周辺部前面42は、何れも、径方向断面形状が周方向において変化せしめられているが、周方向においてもエッジ状の折れ点がなく滑らかに環状に連続した湾曲面形状とされている。
なお、このような本発明に従う形状のコンタクトレンズは、外径寸法(DIA)やレンズ後面34の曲率半径(ベースカーブ),光学部44の光学特性,第一及び第二の周辺部40,42の内外径寸法などの各値が適当に変更設定されることにより、多数のコンタクトレンズ装用者において要求される多様な光学特性や幾何形状等に対応することが出来るようにされるものであり、多くの場合には、各種設定値を適当な間隔で変更設定した複数種類を組み合わせてシリーズとして市場に提供されることとなる。
従って、コンタクトレンズにおける光学特性や幾何形状等は、上述の具体例としてのコンタクトレンズ30aによって限定されるものでない。参考までに、光学特性の別の設定態様としてのコンタクトレンズ30bおよび30cを、図6〜8および図9〜11において、前記実施形態における図2〜4に対応する径方向断面で例示する。なお、これらのコンタクトレンズ30b,30cは、何れも、基本的な構造を、図2〜4に示されたコンタクトレンズ30aと同じにするものであるから、詳細な説明を省略する。
すなわち、図6〜8に示されたコンタクトレンズ30bは、外径寸法(DIA)が14.0mmとされていると共に、そのレンズ後面34は、曲率半径=8.70mmの球面に対して円柱度数:−1.50ディオプタの円柱レンズ面を円柱軸角度:180度として組み合わせた形状とされている。レンズ前面36は、球面形状を採用して、レンズ幾何中心軸32上の肉厚寸法(Ct)が0.11mmで、且つ−3.00ディオプタのパワー(P)を与えるように設定されている。また、レンズ前面36の曲率中心である光学中心軸52は、レンズ幾何中心軸32に対して偏心量(δ)=0.14mmだけ下方に偏心設定されて、光学部44にプリズムが付与されている。そして、第一周辺部前面40は、周上の各部位における径方向断面形状が3次曲線を使用して設定されている。また、第二周辺部前面42は、周上の各部位における径方向断面形状が円弧を使用して設定されている。なお、これら第一周辺部前面40と第二周辺部前面42は、何れも、径方向および周方向の何れにおいてもエッジ状の折れ点がなく滑らかに連続した湾曲面形状とされている。
また、図9〜11に示されたコンタクトレンズ30cは、外径寸法(DIA)が14.0mmとされていると共に、そのレンズ後面34は、曲率半径=8.70mmの球面に対して円柱度数:−1.50ディオプタの円柱レンズ面を円柱軸角度:180度として組み合わせた形状とされている。レンズ前面36は、球面形状を採用して、レンズ幾何中心軸32上の肉厚寸法(Ct)が0.16mmで、且つ+2.00ディオプタのパワー(P)を与えるように設定されている。また、レンズ前面36の曲率中心である光学中心軸52は、レンズ幾何中心軸32に対して偏心量(δ)=0.14mmだけ下方に偏心設定されて、光学部44にプリズムが付与されている。そして、第一周辺部前面40は、周上の各部位における径方向断面形状が3次曲線を使用して設定されている。また、第二周辺部前面42は、周上の各部位における径方向断面形状が円弧を使用して設定されている。なお、これら第一周辺部前面40と第二周辺部前面42は、何れも、径方向および周方向の何れにおいてもエッジ状の折れ点がなく滑らかに連続した湾曲面形状とされている。
因みに、ベースカーブ=9.00mm,光学部44のパワー=+1.75ディオプタ,DIA=14.0mm,レンズ後面34の円柱レンズ度数(Cyl)=−1.00ディオプタ,同円柱レンズ軸角度(Ax)=180度,レンズ前面36の曲率中心である光学中心軸52の、レンズ幾何中心軸32に対する偏心量(δ)=0.14mmの諸元を有するコンタクトレンズを、スチレン/アクリロニトリル共重合体を用いて試作した。得られた試作コンタクトレンズを装用したところ、良好な軸安定性(中心軸回りの周方向での位置安定性)が発揮されて、瞬目や眼球運動等に際してもプリズム基底軸が鉛直上下方向で安定することが確認できた。また、かかる試作コンタクトレンズでは、光学部の中心がレンズの幾何中心(レンズの円形外周縁の中心点)に略一致せしめられており、装用時に光学部と瞳孔の相対位置関係も良好に保たれることが確認された。
また、上述の如き本発明に従う構造とされたコンタクトレンズ30a,30b,30cは、従来構造として図13〜14に示されているような、光学部16と連続した前面形状をもった周辺部26を有しており、その外周部分に形成したスラブオフ24によって周辺部26の前面外周縁部をエッジ部に接続した、従来構造のプリズムバラスト機構をもったコンタクトレンズ10に比して、第一周辺部46及び第二周辺部48の形状設計自由度が大きく確保され得ることから、第一周辺部46の肉厚寸法を全体として小さく抑えつつ、重心の偏心量を大きく設定することが出来るのであり、それによって、極めて優れた装用感が実現され得るのである。
因みに、従来構造のプリズムバラスト機構をもったコンタクトレンズの設計手法に従ってレンズ前面を決定した場合の形状を、図2〜4,図6〜8,図9〜11に、それぞれ、仮想線で併せ示す。これらの図面からも、上述の如き本実施形態のコンタクトレンズ30a,30b,30cが十分に薄肉とされていることが明らかである。なお、上述の試作コンタクトレンズについて累積厚みを計算したところ、従来構造のプリズムバラスト機構をもったコンタクトレンズに比して、重心点の偏心量は略同じであるが、略15%ものレンズ総累積厚みの軽量化が実現されることが確認された。
ところで、上述の如き構造とされたコンタクトレンズ30a,30b,30c(以下、まとめて「コンタクトレンズ30」という)は、何れも、適当な材料で予め重合成形されたブロックを直接に切削加工することで形成することも可能であるが、量産性や品質安定性等を考慮すると、モールド成形によって有利に製造され得る。コンタクトレンズのモールド成形方法そのものは、例えば特開2003−94458号公報等に記載された周知の技術であることから、ここでは詳述しないが、本実施形態のコンタクトレンズ30は、第一周辺部前面40や第二周辺部前面42が、何れも周方向で異なる断面形状をもって形成されているものの、レンズ幾何中心軸32回りで同一中心軸上の円形内外周面を有していることから、モールド成形に際して用いられる金型ひいては目的とするコンタクトレンズ30を、容易に製造することが出来るのである。
具体的には、一般に、レンズ後面34に対応した球状凸面形状の成形面を有する成形雄型と、レンズ前面36に対応した球状凹面形状の成形面を有する成形雌型とを用い、それら雌雄両型を相互に型合わせすることによって両型の成形面間に画成された略密閉状の成形キャビティ内で、所定の重合用モノマーを重合成形することによって、目的とするレンズ前後面36、34を備えたコンタクトレンズ30を製造する成形方法が、好適に採用される。
また、成形雌型と成形雄型は、生産性や製造コスト等を考慮して、一般に、ポリアミド樹脂等の適当な合成樹脂材料によって成形されて使い捨てられる。従って、成形雌型や成形雄型は、金型を用いて射出成形等によって連続的に大量生産されて供給されることとなる。
さらに、かかる金型は、その成形面の形状がそのまま成形雌型や成形雄型に転写されて、コンタクトレンズ30のレンズ前後面36,34の形状を決定することになる。従って、上述の如き特定形状のレンズ前後面36,34を備えたコンタクトレンズ30を得るに際しては、金型を如何に高精度に加工して製作することが出来るかが重要であり、また、金型の製作コストも考慮されなければならない。
ここにおいて、目的とするコンタクトレンズ30は、レンズ後面34だけでなく、レンズ前面36も、レンズ幾何中心軸32回りで同心的な領域として、光学部前面38,第一周辺部前面40,第二周辺部前面42を有している。そこで、コンタクトレンズ30の成形型を射出成形するための金型においても、そのキャビティ形成面は、それら光学部前面38,第一周辺部前面40,第二周辺部前面42に各対応する形状の領域を同一中心軸上に備えた形状をもって形成されることとなる。
金型におけるこのようなキャビティ形成面は、数値制御式の工作機械であるNC旋盤を用いて、有利に加工され得る。具体的には、例えば図12に示されているように、金型素材60を旋盤の加工主軸62に対してチャックで固定することにより、コンタクトレンズ30のレンズ前面36に対応する略球状の凸面からなるキャビティ形成面64を、加工主軸62の回転中心軸68に一致させて保持せしめる。そして、加工主軸62によって金型素材60を中心軸回りに回転駆動させつつ、そのキャビティ形成面64に対して、位置および移動制御される切削バイト70による旋削加工を施すことによって、目的とするキャビティ形成面64を加工成形する。その際、切削バイト70は、加工主軸62から半径方向一方向に向かって連続的に移動制御せしめられるが、同時に、加工主軸62の回転角度に応じて、加工主軸62の軸方向にも移動制御される。これにより、切削バイト70の軌跡は、キャビティ形成面64上で螺旋状となり、キャビティ形成面64には、中心軸回りの各半径方向で異なる表面形状が付与されることとなる。
なお、切削バイト70の径方向および軸方向の位置は、例えば、加工主軸62と平行なX軸方向の座標値と、加工主軸62に対する軸直角方向となるY軸方向の座標値を、加工主軸62の中心軸回りの軸角度:ωの値に応じて設定することによって特定することが可能である。一般には、Y軸方向で適当な間隔に設定した複数位置で、それぞれ、加工主軸62回りで適当な軸角度毎にX軸方向の値を予め設定することによって、複数箇所において切削バイト70の位置を特定すると共に、それら複数箇所の間における切削バイト70の位置を直線補間や円弧補間などの適当な補間法を用いて求めることにより、切削バイト70の制御位置が決定されることとなる。
すなわち、レンズ前面36に対応する形状が求められる金型のキャビティ形成面64においては、レンズ前面36における光学部前面38や第一及び第二の周辺部前面40,42に対応する各領域が、加工主軸62に関して同一中心軸上で円形周縁部を有する複数の領域として形成されることから、上述の如き単一の加工主軸62回りでの旋削加工に際して、一周する間に切削バイト70による切削加工位置が複数の領域に跨がって出入りすることがない。それ故、切削バイト70の位置制御を容易且つ高精度に行うことが出来て、目的とする面形状が、良好な加工効率と精度をもって形成され得るのである。
従って、このようにして旋削加工されたキャビティ形成面64を備えた金型を用いて成形雌型を射出成形し、それを別途同様に射出成形された成形雄型と組み合わせて得られるモールド成形型によって、上述の如く所定の重合性モノマーを重合成形することにより、目的とするコンタクトレンズ30を有利に製造することが出来るのである。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
例えば、前記実施形態では、光学部前面38の外周部分を第一周辺部前面40と第二周辺部前面42の二つの円環形状の領域に分けて形状設定されていたが、これらを区別することなく、単一の円環形状の周辺部前面として形成することも、適当な多次元多項式や円錐曲線,スプライン曲線或いはそれらの組み合わせによって、径方向断面形状を設定することによって、実現可能である。
或いは、光学部前面38の外周部分を、それぞれ円環形状を有する3つ以上の分割周辺部前面によって構成することも、勿論可能である。特に、本発明方法に従う製造方法を採用して、数値制御される旋削旋盤で金型加工を行う場合には、3つ以上の分割周辺部前面を採用した場合でも、作業工程の複雑化を殆ど伴うことがなく、良好な作業性や製作性および良好な製造コストが維持され得るのである。
また、本発明は、装用状態下での軸安定性が要求される各種のコンタクトレンズに対して適用され得るものであることは言うまでもないが、特に、以下の▲1▼〜▲6▼に記載のそれぞれのコンタクトレンズ、或いは▲1▼〜▲3▼何れかと▲4▼〜▲6▼の何れかを任意の態様で組み合わせたコンタクトレンズに対して、本発明が有利に適用され得る。
▲1▼レンズ後面がトーリック面とされたコンタクトレンズ
▲2▼レンズ前面がトーリック面とされたコンタクトレンズ
▲3▼レンズ前面と後面の両面がトーリック面とされたコンタクトレンズ
▲4▼レンズ前面が多焦点を与える非球面とされたコンタクトレンズ
▲5▼レンズ後面が多焦点を与える非球面とされたコンタクトレンズ
▲6▼レンズ前面と後面の両面が多焦点を与える非球面とされたコンタクトレンズ
なお、特に▲4▼〜▲6▼のコンタクトレンズでは、レンズ前面及び/又はレンズ後面がバイフォーカルタイプの非球面とされたコンタクトレンズに対して、本発明が一層好適に適用されることとなる。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
而して、上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされたコンタクトレンズにおいては、正面視において光学部の幾何中心がレンズ幾何中心に一致していることにより、良好な装用感を得ることが出来る。しかも、光学部の周囲に形成された周辺部においてレンズ前面の形状が周方向に異ならせられており、光学部よりも径方向外方に位置する周辺部によって重心点が偏心設定されることから、良好なバラスト機構が実現可能となる。
また、本発明に従う構造とされたコンタクトレンズは、その正面視において光学部や周辺部がレンズ幾何中心回りで同心的に形成されることから、その成形用金型などを一軸回りの旋削で加工することが出来るのであり、それ故、本発明方法に従うことによって、目的とするコンタクトレンズを、良好な生産効率と優れた寸法精度をもって有利に製造することが出来るのである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部分に位置する光学部と、該光学部の周りに位置する周辺部とを含んで構成されていると共に、全体の重心がレンズ幾何中心軸から偏心せしめられて、装用状態下のレンズ方向を周方向で位置決めするバラスト機構を備えたコンタクトレンズであって、
レンズ前面には、(i)前記光学部を形成する円形状の光学部前面と、(ii)前記周辺部を形成する円環形状の周辺部前面とが、レンズ正面視においてそれぞれレンズ幾何中心軸回りで略一定の径方向寸法をもって形成されていると共に、該周辺部前面の断面形状が周方向で変化しており、該周辺部の肉厚寸法が周方向で変化せしめられてその重心点がレンズ幾何中心軸から偏心して設定されていることを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記光学部前面が、前記レンズ幾何中心軸から前記周辺部の重心点の偏心方向と同じ方向に外れた位置に曲率中心をもって形成されている請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記周辺部が、前記光学部の外周縁部に接続された第一周辺部と、該第一周辺部の外周縁部に接続されてエッジ部まで至る第二周辺部とによって構成されており、該第一周辺部と該第二周辺部がそれぞれレンズ幾何中心軸回りで略一定の径方向寸法の円環形状とされていると共に、該第一周辺部のレンズ前面が非円弧形の断面形状とされている一方、該第二周辺部のレンズ前面が略円弧形の断面形状とされている請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記第二周辺部の内周縁部におけるレンズ肉厚寸法の最小値と最大値の差が、全周上で0.3mm以下とされている請求項3に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記第二周辺部の断面形状が周方向で略一定とされている請求項3又は4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記光学部のレンズ前面及び/又はレンズ後面がトーリック面とされている請求項1乃至5の何れかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記光学部のレンズ前面及び/又はレンズ後面が多焦点を与える非球面とされている請求項1乃至6の何れかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載のコンタクトレンズの製造方法であって、
一軸回りの回転による旋削加工でキャビティ形成面の全体を連続的に加工した金型を用いて合成樹脂製の成形雌型を製作することにより、前記光学部前面および前記周辺部前面を含むレンズ前面を該金型の該キャビティ形成面によって該成形雌型に形成し、かかる成形雌型を用いて請求項1乃至7の何れかに記載のコンタクトレンズを型成形することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。

【国際公開番号】WO2005/040896
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−509856(P2005−509856)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013716
【国際出願日】平成15年10月27日(2003.10.27)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】