説明

コンテナからの流出の際に薬液のpHを一定に保つための方法及び装置

本発明は、コンテナからの流出の際に薬液のpHを一定に保つための方法を示し、この装置では、薬液の流出中にCOと少なくとも1つの更なるガス又はガス混合物とがコンテナに流入する。さらに、本発明は、コンテナからの流出の際に薬液のpHを一定に保つための装置を示し、このコンテナは、薬液のための流出口と、COのための少なくとも1つの流入口と、1以上の更なるガス又はガス混合物のための流入口と、薬液の流出中にCO量を決定し自動的に供給するための電子制御とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナからの流出の際に薬液のpHを一定に保つための方法及び装置に関する。このような方法及びこのような装置は、薬液の製造及び充填の際、特に、重炭酸塩透析溶液などの薬液を製造及び充填する際に使用される。
【背景技術】
【0002】
このような薬液は、無菌条件下のいわゆるバッチ式のコンテナ中で、水(WFI、注射用水)と可溶性添加剤とから製造される。バッチコンテナは、例えば、約24,000Lの大きさを有し、水位が変化する中で液体が充填されている。コンテナにおいて溶液の上にはガススペースが存在し、このガススペースは、化学物理的な平衡に関して、溶液と複雑な相互作用をしている。薬液、例えば重炭酸塩溶液は、非常に狭い公差内で所定のpHを常に有するほうがよい。これに関する外乱因子としては、溶液からガススペースへのCOの抜け出しがあり、その結果としてpHの上昇を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これを算出するため、既知の方法では、溶液にCOが注入される。この場合、COは、バッチコンテナ(反応器)の底の部分に設けられたノズルから溶液に注入される。特に、pHセンサーは、経時的に変位したり異なった測定値を示すことがあり、定期的にキャリブレーションする必要があるが、そのことがとりわけ状況を悪化させている。インラインセンサーは、無菌状態の維持と相反する。
【0004】
この場合、COの抜け出しによるpHの上昇は、定期的に手作業で抜き取られ、実験室でpHが決定される溶液サンプルに基づいて目標値からのずれを決定し、さらに、反応器の底のノズルから溶液にCOを経験に基づいて注入することにより算出される。これにより、製造期間を通じて、pHの典型的な2点制御が行われる。化学分析に要する時間が長いので、pHの制御のズレは著しい。それに伴い、製造方法も怠惰なものとなる。さらに、pHを一定に維持するためのこの方法は、人手に頼りすぎであり、自動化から遠ざかってしまう。
【0005】
pHセンサーは、経時的に変位したり異なった測定値を示すことがあり、定期的にキャリブレーションする必要があるが、そのことがとりわけ状況を悪化させている。インラインセンサーは、無菌状態の維持と相反する。
【0006】
したがって、本発明の目的は、簡単で、時間が短縮でき、しかもコスト効率のよい、コンテナからの流出の際に薬液のpHを一定に保つための方法及び装置を提供することである。同様に、本発明の目的は、コンテナからの流出の際に薬液の一定のpHを維持するための方法を自動化できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明によれば、請求項1による、コンテナからの流出時に薬液のpHを一定に保つための方法により達成される。この方法では、本発明に基づき、薬液の流出中に、COと、1以上の更なるガス又はガス混合物とがコンテナへ流入する。本発明は、コンテナ内の液体とガススペースとは密接に相互作用する、という認識を利用している。このプロセスでは、COの分圧が平衡条件を下回っている場合、液体とその上のガススペースとが化学物理的な平衡になるまで、pHを上昇させながら、COは液体から抜け出す。
【0008】
逆に、ガススペースのCOの分圧が平衡条件を上回っている場合、COが液体に吸収されることによってpHが低下する。この場合、ガススペース雰囲気中のCOの比率は、ガススペースや溶液の圧力、温度などの物理化学的な基本条件を考慮に入れても、液体のpHに関する物理化学的な平衡にとって重要である。液位の低下と、薬液上のガススペースの拡大とが生じる液体の流出時に、液体とガススペースとの間の化学物理的な平衡における物理的な基本条件が変化する。上述の既知の方法では、これによりpHがシフトするため、後から補正する必要がある。
【0009】
それに対し、本発明によれば、COと、1以上の更なるガス又はガス混合物とが流入することにより、液体の流出時にガススペースの物理的な基本条件が変化しても、pHのシフトを全く生じることがなく、初期に設定される化学物理な平衡や、COと1以上の更なるガス又はガス混合物との適切な供給により達成される化学物理な平衡を維持することが可能になる。
【0010】
平衡条件を満たすためには、COに加えて、1以上の更なるガス又はガス混合物を流入することが重要である。これらガス又はガス混合物は、少なくともCOに関して液体と強く反応しないほうがよく、COは少量か微量しか含まないほうがよい。この場合、更なるガス混合物としては、特に空気が使用できる。
【0011】
本発明の方法には、pHを簡単な方法で一定に維持できるという利点があり、この場合、変動は、後から補償されるのではなく始めから防止される。それ故、より簡単でより迅速な方法の工程によってpHは一定に維持され、自動化もできる。
【0012】
さらに、本発明では、溶液サンプルを適切に抜き取り、実験室においてpHを決定することによって所望のpHを測定するという不十分な方法を、pHの分析が全く不要な簡単な方法に代替できる利点がある。特に、pHの決定は、法律で求められる最終的な溶液の品質制御のために、製造と充填工程が完了した後にたった1回行うだけでよい。
【0013】
本発明では、COの添加量は、決定され、その決定に基づいて制御して添加するのが好ましい。特に、液体の流出時に、液体のpHを維持するために必要なCOの量は、計算され、制御されて添加される。このとき、計算に基づいてCOを制御して添加することにより、液体とガススペースとの間の化学物理的な平衡を維持し、それによって液体のpHは一定に保たれる。流入する1以上の更なるガス又はガス混合物に関して化学物理的な平衡を維持するためにも、必要なCO量を決定する必要がある。
【0014】
本発明の方法では、さらに、液体の充填液位の変化を測定し、その測定に基づいて、コンテナへ添加するCOの量を決定するのが好ましい。充填液位の変化は、例えば、レーザーセンサーによる非接触法で測定することができる。COの添加のための制御因子としての充填液位の変化は、COの供給の簡単で効率的な制御を可能にする。
【0015】
さらに本発明では、コンテナにおける液体上のガススペースの体積変化は、特に、上述した液体の充填液位の変化に基づいて決定され、ガススペースの体積変化に応じてCOの添加量が決定される。ガススペースの体積変化によってガススペースの物理的な基本条件が変化することが考慮されるので、ガススペースと液体との間の化学物理的な平衡を維持するためには、適当なCO量を添加する必要がある。
【0016】
さらに本発明の方法では、液体の充填液位が変化する時に、ガススペースの圧力が外部の圧力に自動的に近似されるように、滅菌フィルタを通じて外気が流入する。それ故、外気は、薬液がコンテナから流出する時にCOと共にコンテナへ流入する1以上のガス混合物である。複雑なフィードバック制御やそれに必要とされる制御なしに、滅菌フィルタを通じた流入によって自動的な圧力補正が行えるので、物理化学的な平均の維持が簡単になる。滅菌フィルタは、液体の汚染を防止するために必要である。特に簡単な工程は、滅菌フィルタを通じたCO含有量の低い外気の流入とバランスを保つCOの制御された添加との組み合わせを生じ、それによって物理化学的な平衡が維持される。
【0017】
さらに本発明の方法では、計算によって決定される、ガススペースにおけるCOの平均体積比が一定となる量でCOを添加するのが好ましい。発明者の研究により、計算によって決定される、ガススペースにおけるCOの平均体積比に基づくCOの添加は、液体のpHを流出工程の全体にわたって一定に保つことに特に適していることが認められている。
【0018】
これに対し、COの体積比の測定は、ほとんど不可能であるか、ほとんど意味がない。なぜなら、ガススペースにおけるCOの分圧や体積比は、理論値としてしか示されず、その理論値は、ガススペースでは、実際にはガス密度が異なるので分離や濃度勾配の形成が生じ、混合ガスのガススペースでは有効な測定ができないからである。したがって、化学物理的な平衡の測定を必要とする理論的なCOの分圧は、ほとんど有効に試験されることがない。
【0019】
これに対し、計算によって決定される、ガススペース中のCOの平均体積比に基づいてCOを添加することで、本発明では、COの分圧のこのような測定は不要となる。むしろ、発明者らの研究により、適当なCOの添加によるガススペースの大きさの増加を考慮することで、液体のpHを一定に維持できる、ということが認められている。
【0020】
さらには、本発明の方法では、COの添加量は、計算によって決定される、液体とその上にあるガススペースとの間での化学物理的な平衡に基づいて決定するのが好ましい。この場合、特に、ガススペースにおける必要なCOの体積比は、液体の好ましいpHや計算により決定される化学物理的な平衡に関連する温度、圧力などの更なる基本条件に基づいて予め決定することができる。本発明によれば、液体のpHを一定に保つためにもまた、この体積比は一定に維持される。
【0021】
発明者の研究によれば、計算によって決定される化学物理的な平衡状態におけるこのCOの平均体積比は、ガススペースにおける各ガスの異なるガス密度と、それに関連するガス濃度勾配の形成とにより、局所的には測定できないことが認められている。それにもかかわらず、決定された、平衡状態のCOの平均体積比から算出されるCOの添加量によって、溶液中のpHは一定に維持される。本発明によるCOの添加量の決定及び(又は)試験は、一連の測定により可能であり、その測定結果は記憶装置に記憶することができる。
【0022】
COの添加量の決定は、流出中に行われる液体のpHの測定なしに行うことができる。そのような測定は時間を浪費し、方法を高価なものとする。本発明によれば、このような測定を上述したように省くことができる。
【0023】
COの添加量の決定は、ガススペースにおけるCO濃度の測定なしに行うことができる。上述したように、いずれにせよこのような測定はほぼ不可能であり、ほとんど有意に実施できない。本発明によれば、上述したように、計算によって決定されるCOの平均体積比が、ガススペースにおいて一定に維持されるような量でCOを添加することにより、このような測定を省くことができる。
【0024】
この場合、本発明の方法では、充填中に、CO及び1以上の更なるガス又はガス混合物が、液位の上のガススペースへ流入するようにしておくとよい。CO及び1以上の更なるガス又はガス混合物は、ガススペースの雰囲気における液体との化学物理的な平衡を維持するためにガススペースへ直接流入する。
【0025】
さらには、液体の流出の前に、予め決められた量のCOを液体へノズルを介して注入するのが好ましい。この場合、本発明によれば、水を入れて可溶性添加物を添加する準備プロセスの終了後に、化学物理的な計算に基づいて事前に決定された量のCOが、溶液に最初にノズルを介して注入される。その間、特定のpHを設定するための測定は全く要さず、むしろ既に存在しているCOの抜け出しを許容する。
【0026】
この場合、ガス相と液相との間の高いパルス状の変換により、ノズルによって微細なビーズ状の注入を可能にする注入ノズルを使用するのが好ましい。これにより、液体とその上のガススペースとの間における物理化学的な平衡を伴った溶液の特定のpHが最初に生じる。このため、ノズルによる注入中におけるガススペースからのガスの流出は抑制するのが好ましい。本発明によれば、pHも維持するための上述のような方法に基づいて、この化学物理的な平衡は維持される。
【0027】
本発明の方法は、重炭酸塩溶液の製造や流出の際に好適に使用できる。溶液からのCOの抜け出しという上記の問題は、このような重炭酸塩溶液において特に生じるが、本発明によれば、物理化学的な平衡の維持により、pHを一定に維持できる。
【0028】
さらに本発明は、コンテナからの流出時に、薬液のpHを一定に維持するための装置を含み、そのコンテナは、その液体用の流出口と、CO用の少なくとも1つの流入口と、1以上の更なるガス又はガス混合物用の流入口とを備えている。本発明によれば、この装置は、ガス(液体)のノズルを用いる溶液の設定初期に、及び(又は)、液体の流出中に、CO量を決定及び自動的に供給するための電子制御機能を備えている。特に、CO量の決定及び自動供給は、上述した本発明の方法の1つに従って行われる。これにより、方法に関して上述したのと同様の効果が得られる。コンテナは、液体とガススペースのそれぞれへのCOの流入口を備えるのが好ましい。
【0029】
さらに本発明の装置は、好ましくはマイクロ波(レーザー)による、コンテナ中の充填液位を決定するためのトランスデューサーを備えている。このトランスデューサーによってコンテナ中の充填液位が決定できるので、添加されるCO量は、充填液位やその低下に基づいて制御することができる。
【0030】
本発明の装置は、滅菌フィルタを通じて外気がガススペースへ流入可能にする、コンテナのガススペースと外部との間の接続部を備えるのが好ましい。この接続は、1以上の更なるガス又はガス混合物のための入口を示し、自動的な圧力補償に加えて外気の流入を提供する。電子制御によるCOの同調した供給により、物理化学的な平衡は維持される。
【0031】
さらに本発明は、上述したような方法を実施するための装置を含む。
【0032】
本発明は、図面及び実施形態を参照して更に詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態の装置におけるコンテナの概略図である。
【図2】従来技術の方法を使用した流出中のpHの変化を示す図である。
【図3】本発明の実施形態における方法を使用した流出中のpHの変化を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の以下に示す実施形態では、本発明の方法や装置は、充填中の重炭酸塩溶液のpHを一定に保つために使用される。この場合、まず、重炭酸塩溶液の準備プロセスが終了した後、その間は特定のpHの設定のための測定を全く取らずにむしろCOの抜け出しを許容して、化学物理的な計算に基づいて予め決定された量のCOをノズルから溶液に注入する。
【0035】
この実施形態では、例えば、24,000Lのバッチコンテナに70mmol/Lの濃度の重炭酸塩溶液が入れられ、初期に設定された10.5kgのCOが、ノズルを通じて微細なビーズ状にして溶液に注入される。この場合、微細なビーズ状の注入を可能にする注入ノズルが使用される。
【0036】
例えばプラスチック袋へ溶液を充填するために、バッチコンテナの底の開口部を通じて出来上がった溶液が流出する間、本発明では、溶液のpHは一定に維持する必要がある。このため、ガススペースへノズルを介して注入される、個々に必要なCOの補充注入量は、充填液位に依存してオンラインで計算される。この場合、溶液の流出中に物理的な基本条件が変化するために、本発明の補充ガス注入無しでは、溶液とガススペースとの間の化学物理的な平衡がシフトし、充填された製品のpHの変化を招くことが考えられる。
【0037】
空化工程(製品を充填する、充填液位を低下させる)の間に、マイクロ波を用いて連続的に測定される重炭酸塩溶液の充填液位に応じて補充するCOの量が計算され、その量のCOがノズルを介してガススペースに注入されるので、ガススペースにおけるCOの量は、COの容量%で20.5%の計算された理論的なCOの平均体積比に対応している。しかしながら、理論的な平衡計算に基づいて決定されるこの量は、ガススペースにおいて勾配形成が生じるためにそのいかなる部位においても測定することはできない。
【0038】
本発明によれば、COの測定は全く必要がなく、むしろ、驚くべきことに、研究において、空にする際のこれらの条件(15℃、1barでの容量%でx''CO2=20.5%)の観察はまた、例えば数日間のような、より長い期間、より長い空化工程にわたって、これまでは知られていなかった精度で重炭酸塩溶液のpH=7.2のpHを観察するという結果に終わるということを見出した。
【0039】
さらに、充填液位の低下の際に、減圧化を補うために、外気が滅菌フィルタを通じてガススペースへ流入する。この場合、空気又は空気中のCOと重炭酸塩溶液との間の相互作用は、無視できることが証明されている。これに対し、密閉された反応コンテナでは、平衡状態が圧力の変化に応じて絶えず変化するという問題がある。
【0040】
対して本発明の方法は、滅菌フィルタを通じて空気が流入することにより、ガススペースの圧力を一定に維持でき、圧力の釣り合いのためにCOを添加する必要はなく、むしろ、圧力の釣り合いとは無関係にCOを添加する自由度があるという利点を有している。これにより、本発明によれば、重炭酸塩溶液の液位を下回るx'CO2の急な勾配の形成を伴って不都合な強いpHの低下を生じることとなる、ノズルを通じてガススペースへ過剰なCOが注入されることも防止できる。
【0041】
次に、本発明のこの実施形態について更に詳しく説明する。
【0042】
(製品、プロセス)
特定の溶液では、無菌の薬液又は医薬品溶液の製造を目的とする製造プロセスの構成において設定されるこれらの特性により、二酸化炭素がガス注入される。これは特に、特定のpHの設定のために行われる。この場合、蒸留水(WFI−注射用水)に炭酸水素塩(重炭酸塩)や他の適切な粗原料が添加され、溶解される。
【0043】
例を挙げると、腹膜透析溶液は、(1バッチ当たり24,000Lを超える)大容量の専門的なプロセスで製造され、一体化したチューブとコネクタシステムとを有するプラスチックバッグシステムに充填される。この場合、その充填バッグシステムでは、溶液は、使用の直前まで2つのコンテナに分けて保存される。バッグシステムのコンテナ1、コンテナ2に分けられる溶液のタイプは、A溶液、B溶液と称する。この場合、いわゆるB溶液は二酸化炭素がガス注入される溶液を示す。
【0044】
ステンレス鋼からなる相応の大きさのコンテナ(バッチタンクB1)において、溶液は、その都度準備され、化学的に分析され、所定の条件下で調整され、それぞれ、下流側のガス/液体反応器(レシーバB2、B3)へと滅菌濾過される。それぞれのバッチラインは、1つのバッチタンクと、2つのレシーバコンテナまたはガス/液体反応器とで構成されている。
【0045】
例えば、バッチラインの1つは、B溶液の製造及び準備のために用いられる。バッチラインは、2つの無菌のレシーバコンテナB2、B3を備えているので、各バッチは、確かにバッチ毎に製造されるが、双方のレシーバコンテナの交換又は切り替えによってほぼ連続的に充填することができる。充填プロセスでない各レシーバコンテナは、洗浄や滅菌の段階にある。重炭酸塩を含有するB溶液では、2つのレシーバコンテナは、溶液への必要な二酸化炭素のガス注入により、各々の場合においてガス/液体反応器に相当する。
【0046】
B溶液の場合、溶液のpHの初期設定のために、それぞれ滅菌されたレシーバの状態の下で二酸化炭素を用いて上述のガス注入が行われる。ガス注入は、化学的分析の準備工程及びこれらのコンテナへの滅菌濾過の後に行われる。
【0047】
ガスは、コンテナの底の部分に設けられた分岐管を通じてその都度、pHの初期設定のプロセス中に添加される。二酸化炭素の供給は、コンテナと管で接続された加圧ガス瓶から行われる。加圧ガス瓶は、生産スペースの中心部を外れた位置に設置されている。
【0048】
濾過プロセス及びpHの初期設定が終了した後、溶液A、Bは、充填プロセスの期間中、約100mの長さの環状配管でそれぞれ循環される。2つの環状配管は、バッチラインのレシーバコンテナから場所的に離れて設けられている充填領域の充填ユニットまで導かれている。
【0049】
充填領域の各充填機を通じて小さな分量が連続的に流出し、大きな分量は浸漬管を通じて各タンクへ連続的に戻される。
【0050】
充填ユニットの複数の充填部位を通じてその都度流出する量は、1時間当たり数100Lから1,000Lを優に超える範囲で変化する。
【0051】
充填ユニットによって環状配管からその都度流出する一部の分量は、短いスタブを通じて個々の充填部位へ導かれる。
【0052】
A、B溶液の各環状配管から溶液を断続的に取り出すことが行われる。
【0053】
ポンプを通じて与えられるエネルギーやそれによって生じる溶液の加熱を補うために、ポンプの下流には、それぞれ熱交換器が接続されている。これにより、レシーバからの充填サイクルを数日にわたって使用しても温度を一定に保つことができる。
【0054】
バッチ及びレシーバコンテナは、疎水性滅菌フィルタを介して、外部環境や生産スペースと連通している。
【0055】
充填中の溶液の好ましい温度範囲は、15℃〜20℃である。ここでより詳細に説明する、2つのコンテナのシステムによる充填では、15℃の温度で行うのが好ましい。
【0056】
これらの溶液のタイプでは、低温で二酸化炭素のガス可溶性が高まるので、温度はより低いほうが効果的である。
【0057】
製造過程の時間的な順序と、バッチ交換ごとのレシーバコンテナの滅菌の必要性とにより、新たに準備される約15℃の溶液を、高温に加熱されたレシーバコンテナへ濾過することは避けられない。したがって、もし、次のバッチへの変更が、濾過(と、それに続くフィルタ完全性試験)の終了の直後に実行しなければならないとすれば、そのようなオーバーラップのせいで短時間の減圧(残存蒸気量の収縮)を招くだけでなく、滅菌濾過された溶液の温度差も招く。
【0058】
そのような場合では、ある一定の時間の経過により、上述した、接続された熱交換器によって15℃の温度レベルに到達することができる。
【0059】
ここで考慮される、いわゆる2つのコンテナの溶液のB溶液の組成について次に説明する。ここで考慮される溶液のタイプで供給される原料としては、炭酸水素ナトリウムだけが設定されている。
【0060】
二酸化炭素は、pH設定用の補助原料として示されている。添加する量は後述する。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
ここで確保されるべきpHの範囲としては、7.2〜7.3である。
【0064】
図1は、無菌の薬剤溶液への二酸化炭素の吸収プロセスに関する大きな専門プラントでの関係を概略図として示している。
【0065】
(充填前の溶液のガス注入プロセス)
いわゆるB溶液では、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)は、化学的な反応により生じる二酸化炭素の生成後、近似的に熱力学的な平衡状態になる。バッチタンクにおける準備工程中の測定では、pHは約8.3となる。
【0066】
溶液は、2つの反応器B2及びB3の1つへと滅菌濾過され、この反応器において、pHの設定のために、二酸化炭素がさらにガス注入される。
【0067】
このガス注入は、注入ノズルを通じて行うのが好ましい。
【0068】
(ガス注入の最終状態の設定)
ガス注入の工程は、採用する減圧された圧力ガス瓶の圧力と、個々の制御された測定の間のガス注入期間とに関して、既知の方法で各オペレータの経験に基づいて任意に行われ、同時に溶液の冷却も行われる。したがって、プロセスの全体は、非常に主観的に把握されている。
【0069】
ガス注入を続ける、あるいはある状態下で数回のガス注入の中断を行ってガス注入を終了し、変化のない値でpHがそれぞれ測定された後にのみ、代表的なpHの状態を評価することができる。これにより、相当に長い時間が必要とされる。
【0070】
しかしながら、最適な条件下で相応のキャリブレーションを行った場合でも、pHの測定精度は、一般的には、pHの単位で+/−0.05の程度である。全期間にわたって確保されるべきpHは、7.2〜7.3の間のpHでなければならない。充填時間の経過に伴ってpHはより高い値へ変位することが知られているので、採用すべき目標値は、pHの許容可能な最低値の7.2である。
【0071】
pHは、これらの関係のせいで、二酸化炭素を添加するための制御変数としては結局のところ適していない。
【0072】
ガス注入の工程中に、設定する最終状態に近似する従来の方法では、目的は満たし得ていなかった。このプロセスは、反復的にのみ実施可能であった。
【0073】
これに対し、本発明によれば、pHの再現性のある設定は、二酸化炭素ガス注入に関し、充填前に、CO−NaHCO3−HO系,(2)図2−1における熱力学的な平衡状態と吸収特性とを考慮しながら行われる。
【0074】
二酸化炭素が外部へ漏れないように、ガス注入の期間中はバルブV2は閉じられている。COの平衡の設定が可能になる。この場合、平衡に関しては、無菌の反応器に添加される二酸化炭素のみが解釈され、準備工程中に重炭酸塩の添加により反応によって生じる二酸化炭素は含まない。滅菌フィルタを通じた必要な外気の流入が、チェックバルブ3を通じて確保されている。これにより、(滅菌後の高温のコンテナの)冷却により生じる減圧の可能性に対処することができる。
【0075】
したがって、二酸化炭素の抜け出しが防止される。
【0076】
準備する溶液の関連する温度及び圧力の範囲でシステムの相平衡状態への近似の精度を決定する必要がある。熱力学的な平衡状態は、温度、圧力、化学ポテンシャルが全ての相において同じである、ということを表している。
【0077】
設定しようとするpHのために、付加的に吸収される二酸化炭素の量を決定する必要がある。ガス及び液体の相における二酸化炭素濃度と、ガス状の相の二酸化炭素の分圧との関連値も、平衡状態に関連して求める圧力及び温度の範囲で生じる。
【0078】
相平衡計算の結果やpH、圧力、温度、濃度、COの消費量、TIC(全無機炭素)に関する溶液の測定結果は、対応するデータを決定するために、そして最終的には製造プロセスを理論的なデータと一致させるために役立つ。
【0079】
製造プロセスにおけるシステムの熱力学的な状態を検出するために、次の値を決定することが考えられる。
【0080】
液体及び蒸気の相における温度、反応器の頂部の領域におけるCOの全圧や分圧、蒸気及び液体の相における二酸化炭素の比率である。COの抜け出しが抑制され、ガス注入中の圧力上昇はCOによってのみ引き起こされるために、COの分圧の変化は、異なった時間の全圧を決定することによって実現できる。
【0081】
バッチ処理に応じて、この場合では製造誘導システムを用い、配合表と溶液量とを参照して添加する二酸化炭素の量が決定され、その供給は、二酸化炭素の質量流量の決定によって制限又は停止することができる。
【0082】
上記の処理変数の測定によって、平衡状態に対する近似精度に基づく資料が得られる。多大で、時間を要するpHの測定を含む繰り返しの処理は不要になる。
【0083】
(概算される二酸化炭素の必要量)
二酸化炭素の必要量の概算は、実際の場合での結果の比較や予測を得るために、解離定数KやpK値の定数を使用し、質量作用の法則を参照して実施される。
【0084】
(反応平衡への適用)
【0085】
【数1】

【0086】
CO2−(炭酸塩イオン)の形成は、考えられるpHの範囲において無視できる。
【0087】
上記の式によれば、平衡状態は次のようになる。
【0088】
【数2】

【0089】
ただし、Kは平衡係数である。
【0090】
水は過剰なので簡略化できる。
【0091】
【数3】

【0092】
ただし、「基本表」又は製造指示書では[HCO]=70mmol/l=0.07mol/lが与えられている。
【0093】
Holleman及びWiebergによれば、水と二酸化炭素から炭酸HCOへの置換は僅か約0.2%である。
【0094】
遊離酸と分離できない炭酸は、理論的には解離定数Kを有する中強度の酸である。全ての式において、Hは、実存するヒドロニウムイオンHを表している。
【0095】
【数4】

【0096】
しかしながら、溶解する二酸化炭素の約99.8%はHCOとしてではなく、むしろ、水和したCOとして存在するので、溶液全体は弱い酸として機能する。
【0097】
解離されなかった酸の比率を考慮すると、いわゆる「明らかな解離定数」が与えられ、溶液の実際の特性をより簡単に説明できる。
【0098】
【数5】

【0099】
これに次を適用する。
【0100】
pK=−lgK
pK=6.35[Hollemann及びWibergによる]
=10−6.35
反応器中のガス注入されていない(濾過後の)溶液のpHは、一連の試験の測定によれば8.5であり、ガス注入後に最終的に設定されるpHは7.2である。したがって、pHの規定した後のプロトン濃度は次のようになる。
【0101】
【数6】

【0102】
上述の関係から、二酸化炭素の濃度は次のようになる。
【0103】
【数7】

【0104】
pK=6.35では次のようになる。
【0105】
【数8】

【0106】
したがって、二酸化炭素の濃度の変更のためのガス注入の開始と終了との間の差は次のようになる。
【0107】
【数9】

【0108】
44.011g/mol[リンデガス社]の二酸化炭素についての分子重量では、1Lの溶液に対し、次のような二酸化炭素の必要量となる。
【0109】
【数10】

【0110】
上記の計算では、体積の計算に関し、24mの溶液量を想定しているが、反応器は26.8mの内容量を有している。相平衡(添付B参照)のための理論的な計算から、気相は、溶液量が24mである場合、約1.054kgの二酸化炭素を有するということが分かる。結果が一般的に比較できるように、上記結果はこの値によって修正され、2つの値の加算に基づいて反応器の24,000Lの溶液に対する二酸化炭素必要量が得られる。
【0111】
m1+m2=mtot
8.789kg+1.054kg=9.843kg 二酸化炭素/24,000L 反応器中の溶液

質量作用の法則を用いた理想的な計算では、特に、炭酸水素ナトリウムの存在や、これにより生じる二酸化炭素量は考慮されていない。
【0112】
pHの設定に実際に必要なCO量に関し、比較測定が考慮される。
【0113】
この場合、意図する溶液の設定ができるように二酸化炭素の添加量が決定される。
【0114】
したがって、コンテナの所定の二酸化炭素量に関し、それぞれ予め選択された溶液量を用い、プロセス誘導システムによる個々の充填液位において対応した所定の二酸化炭素量を自動的に計算することや、二酸化炭素量が所定の目標値になるとガス供給を自動的に停止することがあり得る。充填液位が異なるという要因も考慮に入れられている。したがって、その後のpHの決定では、達成しようとする7.2のpHが確実なものとなる。
【0115】
絶対量に関しては、溶液量が多いと必要量が少なくなる場合がある。
【0116】
仮に、ガス注入の方法や溶液量を区別せずに単純化すると、使用される二酸化炭素量の絶対的な範囲は、10.25kg〜12.9kgに広がる。
【0117】
これは、相平衡に基づく理論的計算の結果と比較することができる。
【0118】
所定の二酸化炭素量は、液相及び気相において必要である。仮に充填液位が下がれば、二酸化炭素は液相から気相へ移行する。充填液位に応じて、液相や気相における二酸化炭素の比率は変化する。
【0119】
本システムにおける平衡状態についての計算では、約10.5kgという二酸化炭素量の平均値が出る。
【0120】
全体として見れば、実際の関係については近似的にしか達成できないこの理論的な状態への優れた近似が、上記の値によって見出すことができる。
【0121】
試験評価により、一連の処理を通じてガス注入の時間は変化するが、使用される二酸化炭素量はそれによって大きく影響されないことが明らかになった。
【0122】
定量する二酸化炭素量の事前の決定により、バッチラインの製造で利用するプラントの増加と、スタッフの必要性の低下とに関して節約がなされる。ガス注入モードの約3回の停止からの開始し、対応するサンプリングや、実験室におけるpHの測定のキャリブレーション、計算や測定、ガス注入の再開が行われ、目的とする開始された最後の状態の到達後に、pHの決定は、その到達状態を確定するために一回しか必要とされない。
【0123】
上述した約20分の個々の作業の所要時間では、バッチ当たり約40分の作業時間の短縮となる。プラントの利用性の増加や実験器具の利用性、消耗品の節約も同様である。
【0124】
(従来技術の方法における、充填期間中のpHの変化について)
溶液の充填は、約40時間の期間にわたって無菌反応器の充填液位の連続した低下を生じる。既知の方法では、溶液のpHは、このプロセス期間中は連続的に増大し、pH7.3の上限値を超えることになる。
【0125】
この場合、通常は設置されたインラインのpHプローブにより、充填バルブの自動的な閉鎖によって充填は中断される。
【0126】
各オペレータの経験に基づいて数分間の間、溶液には二酸化炭素の後ガス注入が行われる。
【0127】
ガス注入は所定期間後に終了され、それによって得られるpHは、サンプルと実験室でのpHの測定で数回確定される。この手順は、7.2〜7.3の間のpHに達するまで相当に頻繁に繰り返される。この場合、充填液位が低減するにつれてpHは上がり続けるので、溶液の準備後の初期設定に応じて、下限値の7.2に戻すように調整する努力がなされる。
【0128】
設置されたインラインのプローブは、実験室のpHの測定によるpHの測定に基づいて、適宜、その測定変換器を介して実際の値に調整される。
【0129】
製造停止や後ガス注入作業の停止のそれぞれは、約45分である。発生回数の推移は初期設定の品質に依存し、溶液が下限のpH7.2近くに最適に設定されている場合でも、各バッチの充填サイクルでは経験的に約4回は必要にな可能性がある。
【0130】
図2に、ガス注入及び充填プロセスを使用した場合でのpHの推移を示す。
【0131】
本発明では、コンテナの充填液位に応じた熱力学的な平衡に基づく状態変数を用いて二酸化炭素を再供給することにより、充填中のpHを安定させることができる。
【0132】
充填プロセス中、付加的に生じる容積は、滅菌エアフィルタを通じて流入する室内空気によって置き換えられる。これにより、反応器のガススペースにおける二酸化炭素の濃度は初期状態よりも低下する。
【0133】
したがって、平衡状態は、2つの相の間で近似的に連続して繰り返し採用される。溶液から気相へ二酸化炭素が抜け出す結果、溶液のpHは増大し、ある時間の経過後には7.3の上限値を上回る。
【0134】
チェックバルブV3は、充填プロセス中、又は反応器の充填液位が低下した場合に、室内空気の流入を許し、減圧の形成を防止する。測定された充填液位と、相平衡における気相の既知の二酸化炭素の濃度とに応じて、少量の二酸化炭素が、別に、ほぼ連続的にバルブV2を通じてガススペースへ添加される。チェックバルブと、充填期間中は閉じられる空気フィルタバルブV2とにより、ガスの流出は防止される。
【0135】
充填回路、つまり「大きな循環回路」において絶えず流れる溶液の逆流は、浸漬された管を介して行われるので、気相を通る液体の噴射による二酸化炭素の直接的な吸収は回避される。
【0136】
反応器における気相と液相との間の熱力学的な状態や開始時に採用される近似的な平衡状態はほぼ維持されており、二酸化炭素の解離やpHの増大は算出される。
【0137】
要するに、各バッチ(約24,000袋のシステム)での充填期間にわたるpHの勾配形成はこの方法により防止できるので、pHの変化が生じずに済むということができる。
【0138】
これにより、充填のバッチ毎に約4回の後ガス注入作業を省けるので、バッチ毎に約3時間の製造停止を回避できる。
【0139】
代替の解決方法:流入する室内空気の量に依存する熱力学的な平衡における状態変数に基づいて二酸化炭素を再供給することによる、充填中のpHの安定化について
先に示した方法に基づくと、充填液位の低下とそれに伴う減圧(V2は常時開)により、滅菌フィルタを通じて室内空気が吸引、流入するとき、二酸化炭素の再供給を、SPS制御のみによって実行することが考えられる。この状態を確定するために、フィルタ(FIC1)の領域において、対応する流量の高精度レンジでの測定機能が備えられ、この流量の測定によってバルブV1を通じた二酸化炭素の流入が制御される。
【0140】
COの添加は、理論的に決定する平衡状態のモル分率に基づいて行うのが好ましい。溶液システムのpH、温度、圧力、組成は維持されるほうがよいので、モル分率は、充填期間中、同一に維持するべきである。更に、二酸化炭素の供給は、流入する室内空気の量と、充填ユニットや袋システムの充填速度とによってのみ決定されるのが好ましい。
【0141】
ガス供給バルブV1が制御バルブとして構成されている場合、流入する室内空気の量により、コンテナの気相中の室内空気に対する予め設定された二酸化炭素の比率が維持されるように、ガス供給バルブV1の目標とする設定値が設定される。これにより、システムは、速度の異なる充填工程に直接対応する。先のケースでの説明とは異なり、二酸化炭素の供給は、室内空気の供給が行われる期間中も連続的に行われる。これにより、反応器の気相の組成の設定は、意図を持って直接的に行われ、安定した条件が得られる。
【0142】
しかしながら、反応器システムでは、接続された管流路に関して気密性が必要なため、プラントへ流入する室内空気の量に基づいて二酸化炭素を再供給するという解決法には問題がある。したがって、充填液位の変化に基づく制御が好ましい。
【0143】
充填液位の低下速度や理論的に決定される相平衡状態における組成を考慮して、制御された方法でシステムに補充される量が供給されるが、溶液システムでは、気相に約20.5容量%の二酸化炭素が観察される。
【0144】
12.9kgの設定消費量と、空の反応器での相平衡の場合に理論的な計算に基づいて決定される二酸化炭素量(10.09kg)とに対し、11.15kg(図3)の量の二酸化炭素量の補充の良好な再現性が興味深い。pHが理想的に一定に推移し、相平衡状態が維持されると仮定しても、24,000リットル容量の反応器における気相の既存の二酸化炭素量の比率もまだ付加される必要がある。計算値によれば、その量は約1.05kgの二酸化炭素に相当する。吸入される室内空気中の二酸化炭素による僅かな添加量は無視される。
【0145】
反応器において測定される充填液位の低下に基づいて制御されるので、反応器は、作業によるサポートなしに、上記の制御によって自動的に充填する、場所的に離れた製造ラインの変更に対応する。
【0146】
次に、制御の構成について詳細に説明する。次の説明により、更なる説明はせずに、pH測定の曲線を参照して、結果を再現できるであろう。
【0147】
ここでは、いわゆる「ヘッドスペース法」と呼ばれる方法を示している。
【0148】
図3では、(図2に基づく評価に対し)、充填の終了前まで一定に維持されているpHの推移を示している。
【0149】
この場合、許容可能なpHの限界の上昇もまた、必要とされる後ガス注入の作業を防ぐことができないことが指摘される。一連の試験Iの構成で再現されるpHの推移(図2参照)は、より高い値への増加を示しており、例えば、許容可能なIPKの上限のpH7.4への上昇は問題に対する解決策になり得ないことを曲線の傾きが示している。
【0150】
浸漬した管(コンテナの流出口近傍に配置)の好ましい形態の改善の可能性は、反応器が空になる際に生じる。そこでは、液表面からの浸漬した流出経路の流出により、pHが短時間で上昇する(図3参照)。これまでは、反応器を空にする前に、数Lの残量が捨てられて反応器は分離制御によって空にされるので、充填ラインの製造工程で、この状態は到達していない。
【0151】
反応器を空にする操作は、1つの反応器から他の反応器への自動的な切替操作と関連しているので、好ましい半連続的な運転が実現される。pHがいくらか上昇しても、pHは、依然として許容可能な範囲、すなわち7.3よりも小さい範囲にある。最終的には、これは、予めpH=7.2の一定のpHに維持することによって実現される。
【0152】
充填工程における充填時間や溶液量に応じて、約2〜4回の中断で、中断毎に約45分の後ガス注入の作業を省略するこの方法の実現により、労力が軽減される。依頼の状況や、溶液のタイプで異なる袋サイズに対する市場の需要に応じて、年々に計算可能な充填用の溶液量が得られる。様々な国からの配給需要によって特別な回数で必要な袋数が規定され、バッチの規模や反応器への充填量が予測される。
【0153】
上述した製造での2回から4回の約45分の中断に対し、溶液のタイプに応じた本発明の方法の適用により、相当な時間の製造停止が回避される。さらに、後ガス注入の作業を行うための労力も軽減される。
【0154】
制御バルブや付属の配管の設置、二酸化炭素の流量測定、二酸化炭素の追加需要(11.15kg、図3)により増加する労力は、その負担軽減に比べて些細なものである。
【0155】
図4は、(充填液位0%から100%の)入力信号から始まって、制御バルブの制御変数(0%から100%)までの概略的な制御手順を示している。
【0156】
装置には、メモリやプログラム可能な制御用のS5−115U CPU 944Bを用いている。
【0157】
図4の制御図における1)〜6)は、次のように簡潔に説明される。
【0158】
1)100個の値から平均値を形成する(新しい値/秒)。
【0159】
2)1%の充填液位の低下は、250Lの溶液の充填、又は、250Lの溶液増大に相当する。250Lで20.5%(二酸化炭素;相平衡の観察による)、1%の充填液位の低下毎に51.25Lの二酸化炭素が添加される。
【0160】
3)期間中の流量の積算による実際量である。
【0161】
4)安定した制御特性を達成するための、二酸化炭素量の目標/実際の評価を行うための比較制御、あるいは増幅率(初期値は二酸化炭素の目標流量に相当)である。
【0162】
増幅率=100、すなわち、流量の目標値は、1LでのCO量の目標/実際の偏差当たり100ml/分増加する。
【0163】
5)測定する二酸化炭素が1〜5L/分の有効で許容可能な動作範囲内に収まるように、デッドゾーン/ヒステリシスを考慮する。
【0164】
COの流量の目標値は、1000ml/分を超えて増加するまで、900ml/分から低下する際、0ml/分に設定される(「クリープフロー」の防止、例えば、仮に10L未満のCOが損失する場合、制御バルブは閉じたままである(10Lの入力値×増幅100=1000ml/分の初期値)。
【0165】
5,000ml/分からは、目標値は5,000ml/分に設定、あるいは「凍結」される(流量計測器の最大測定レンジ)。
【0166】
6)目標/実際の状態の「安定化」又は近似のための、制御バルブのPI制御である。安定した制御特性を得るために、目標/実際の偏差は5%に設定される。
【0167】
本発明は、ガス/液体の反応器の気相への二酸化炭素の補充により、事前に設定して液相のpHが一定に維持されるシステムを確立する方法を示している。この方法は「ヘッドスペース法」と称される。この場合、近似された相平衡状態の維持は、液相からの二酸化炭素の抜け出しを防止する。
【0168】
「ヘッドスペース法」の実現により、労力は低減され、特に各製造ラインにおけるプラントの利用性が向上する。
【0169】
同様に、本発明は、例えば、変更された炭酸水素塩含有量と、電解質として添加される塩化ナトリウムとを有し、二酸化炭素がガス注入される溶液など、他の溶液の充填や製造に利用できる。
【0170】
熱力学的平衡に基づいて決定される理論的な二酸化炭素の濃度に応じて、同様にしてこの溶液システムで溶液の調整が行われ、二酸化炭素は反応器のヘッドスペースに補充される。
【0171】
本発明のヘッドスペース法は、二酸化炭素をガス注入する必要のある、他の薬品溶液や薬剤溶液において好適に使用できる。
【符号の説明】
【0172】
CIP 定置洗浄;蒸留水80℃、注射用水
SIP 定置滅菌;純蒸気121℃
CO 二酸化炭素
(装置及び器具)
I1,I2,I3 インジェクタI1,I2,I3
BX インジェクタI1,I2,I3を有する無菌レシーバとしての反応器B2、B3
P1 ポンプP1
W1 熱交換器W1
F1 空気フィルタF1(疎水性滅菌フィルタPVDF)
V1 バルブ1、二酸化炭素を主に供給する
V2 バルブ2、コンテナを外部へ開放する
V3 バルブ3、コンテナの通気用のチェックバルブ
V4 バルブ4、ガススペースへ二酸化炭素を補充する
V5 バルブ5、液体へCOを供給する
V6 バルブ6、充填時に供給する
V7 バルブ7、二酸化炭素の後溶解のバイパスバルブ
V8 バルブ8、「小さな」タンク循環
(測定技術)
FQ1/T2 COの質量流量を測定する
FIC1 流入する室内空気の流量を測定する
TIC1 冷水の流れにより温度を制御する
Q1 品質変数−液体表面上の気相のCOの含有量
Q2 品質変数−pH、インライン測定
P1 COの圧/分圧
L1 コンテナの充填液位
T1 液体の温度
I1 インジェクタ1、pHの設定のための溶液へのガス注入
I2 インジェクタ2、ガススペースへの過剰な二酸化炭素の溶解
I3 インジェクタ3、バイパスの流れとノズルI2から溶解前の二酸化炭素とを混合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナからの流出時に薬液のpHを一定に保つための方法であって、
前記薬液の流出中に、COと、1以上の更なるガス又はガス混合物と、がコンテナへ流入することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
COの添加量は、決定され、その決定に基づいて制御して添加される方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記液体の充填液位の変化が測定され、その測定に基づいて、コンテナへ添加されるCOの量が決定される方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の方法において、
前記コンテナにおける液体上のガススペースの体積変化は、液体の充填液位の変化に基づいて決定され、
ガススペースの体積変化に応じてCOの添加量が決定される方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法において、
液体の充填液位が変化する時に、ガススペースの圧力が外部の圧力に自動的に近似されるように、滅菌フィルタを通じて外気が流入する方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法において、
計算によって決定される、ガススペースにおけるCOの平均体積比が一定となる量でCOが添加される方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法において、
計算によって決定される、液体と、この液体の上のガススペースとの間の化学物理的な平衡に基づいて、COの添加量が決定される方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法において、
COの添加量の決定が、液体のpHを測定せずに行われる方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法において、
COの添加量の決定は、ガススペースにおけるCOの濃度を測定せずに行われる方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
COと、1以上の更なるガス又はガス混合物とが、薬液の流出中に、液体上のガススペースへ流入する方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法において、
液体が流出する前に、ノズルを通じて所定量のCOが液体へ注入される方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法において、
液体が重炭酸塩溶液である方法。
【請求項13】
コンテナからの流出時に薬液のpHを一定に保つための装置であって、
前記コンテナは、
薬液用の流出口と、
CO用の少なくとも1つの流入口と、
1以上の更なるガス又はガス混合物用の流入口と、
を備え、
ガスや液体のノズルによる初期溶液の設定のために、及び/又は、薬液の流出中に、CO量を決定し、自動的に供給する電気制御を特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、
マイクロ波測定又はレーザー測定により、コンテナ内の充填液位を決定するトランスデューサーを備える装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の装置において、
滅菌フィルタを通じてガススペースへの外気の流入を可能にする、コンテナのガススペースと外部とに連通する流路を更に備える装置。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか1項に記載の方法を実施するための請求項13から15のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−535550(P2010−535550A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519366(P2010−519366)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006328
【国際公開番号】WO2009/018961
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(599117152)フレゼニウス メディカル ケアー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Deutschland GmbH
【Fターム(参考)】