説明

コンテナクレーン構造物保護機構

【課題】コンテナ船からコンテナを荷揚げする時に、吊り具に作用した衝撃的な荷重(スナックロード)を巻上げワイヤで吸収する。
【解決手段】トロリー6から巻上げワイヤ8a〜8dを介して吊り具7を吊り下げ、巻上げワイヤ8a〜8dの一端をブーム5の海側端に固定する一方、巻上げワイヤ8a〜8dの他端をガーダ3の陸側端に設けたガーダエンドシーブ4a〜4dを経てドラム11に巻き取り、かつ、ガーダエンドシーブ4a〜4dを回転自在に支持するシーブブラケット20a〜20dと、各シーブブラケット20a〜20dの端部に剪断ピン23を介して連結した電動ジャッキ22とを備えたコンテナクレーンにおいて、ガーダエンドシーブ4a〜4dとシーブブラケット20a〜20dの下端部との間に巻上げワイヤ屈曲部材30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナクレーン構造物保護機構、更に詳しくは、コンテナ船からコンテナを吊り上げる時に、吊り具に作用した衝撃的な荷重(スナックロード)を巻上げワイヤで吸収するように構成したコンテナクレーン構造物保護機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラムから引き出したワイヤーロープをガーダエンドシーブを経由してトロリに設けたシーブ群と吊り具に設けたシーブ群との間に巻回させたコンテナクレーンにおいて、ガーダエンドシーブを細長いシーブブラケットに回転自在に設け、更に、シーブブラケットの一端を揺動可能に軸支すると共に、シーブブラケットの他端にシーブブラケット揺動用のアクチュエータを接続させたコンテナクレーンが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところが、コンテナ船からコンテナを吊り上げる時に、吊り具に衝撃的な荷重(以下、「スナックロード」と称する。)が発生することがあった。スナックロードが発生すると、コンテナクレーンは、構造物に致命的なダメージを受けることがあった。スナックロードは、例えば、コンテナ船内のコンテナを固定しているラッシングベルトの取り忘れ、或いは、コンテナの引っ掛かり等によって起こると言われている。
【0004】
スナックロードを防ぐ手段として、油圧シリンダを用いる方法がある。この方法は、シーブブラケットの下端部と油圧シリンダのピストンロッド先端部とを連結ピンで連結し、シーブブラケットに一定以上の荷重が加わると、油圧シリンダの作動油をリークさせてスナックロードを軽減する方法である。
【0005】
しかし、油圧シリンダを用いる方法は、部品点数が多く、保守点検が大変であった。また、油圧シリンダのストロークを超えると、油圧シリンダが破損する問題があった。
【0006】
その他の方法として、剪断ピンを用いる方法がある。この方法は、前記連結ピンの代わりに剪断ピンを使用するものである。図7に示すように、各シーブブラケット20a〜20dの先端部と各電動ジヤッキ22a〜22dのロッド先端部25とを連結している剪断ピン23が破断すると、各シーブブラケット20a〜20dが支点軸21を中心にして回動してスナックロードを軽減するようになっている。
【0007】
しかし、剪断ピンは、許容値以上の力が発生するのを防ぐことができるが、スナックロードエネルギーの吸収力は、限定的であり、スナックロードの残存エネルギーで各シーブブラケット20a〜20dがストッパ50に衝突して破損することがあった。図中、7は吊り具、8a〜8dは巻上げワイヤ、9はコンテナ、11はドラムを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−261734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、コンテナ船からコンテナを荷揚げする時に、吊り具に作用した衝撃的な荷重(スナックロード)をワイヤーロープ(巻上げワイヤ)で吸収するように構成したコンテナクレーン構造物保護機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るコンテナクレーン構造物保護機構は、ガーダ及びブーム上を横行するトロリーから巻上げワイヤを介して吊り具を吊り下げ、前記巻上げワイヤの一端をブームの海側端に固定する一方、前記巻上げワイヤの他端をガーダの陸側端に設けたガーダエンドシーブを経てドラムに巻き取り、かつ、前記ガーダエンドシーブを回転自在に支持するシーブブラケットと、該シーブブラケットの端部に剪断ピンを介して連結した電動ジャッキとを備えたコンテナクレーンにおいて、前記ガーダエンドシーブと前記シーブブラケットの下端部との間に巻上げワイヤ屈曲部材を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係るコンテナクレーン構造物保護機構は、巻上げワイヤ屈曲部材を棒状体により構成したことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係るコンテナクレーン構造物保護機構は、巻上げワイヤ屈曲部材を棒状体と、該棒状体の背後に所定の角度で取り付けた板状体により構成したことを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係るコンテナクレーン構造物保護機構は、巻上げワイヤ屈曲部材を、シーブブラケットに回転自在に設けたローラにより構成したことを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係るコンテナクレーン構造物保護機構は、ローラの回転を、ブレーキ、ダンパー等の拘束手段によって拘束可能にしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ガーダエンドシーブと前記シーブブラケットの下端部との間に巻上げワイヤ屈曲部材を設けたので、剪断ピンが破断してシーブブラケットが支持軸を軸にして回転した時に、巻上げワイヤをシーブブラケットに設けた巻上げワイヤ屈曲部材によって強制的に屈曲させることで、巻上げワイヤの軸方向のエネルギーを巻上げワイヤの振れ方向及び曲げ方向のエネルギーに変換させることができる。その結果、剪断ピンで吸収しきれなかったスナックロードの衝撃エネルギーを巻上げワイヤで減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コンテナクレーンの側面図である。
【図2】図1のコンテナクレーンのロープ掛け構造を示す斜視図である。
【図3】本発明のコンテナクレーン構造物保護機構を持つシーブブラケットの側面図である。
【図4】本発明のコンテナクレーン構造物保護機構を持つシーブブラケットの正面図である。
【図5】図3のX部の拡大図である。
【図6】本発明のコンテナクレーン構造物保護機構の作用説明図である。
【図7】従来のコンテナクレーン構造物保護機構の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1に示すように、コンテナクレーン1は、岸壁10に沿って移動可能なクレーン本体2と、陸及び海側に向けてクレーン本体2に固定したガーダ3と、ガーダ3の陸側端に設けた複数のガーダエンドシーブ4と、ガーダ3の海側に設けたブーム5と、ブーム5とガーダ3の間を横行するトロリー6と、トロリー6の下方に配した吊り具7とを備え、機械室18内のドラム11から引き出した複数本の巻上げワイヤ8を各ガーダエンドシーブ4を経由してトロリー6のシーブ群12と吊り具7のシーブ群13との間に巻回した後、ブーム5の海側先端に固定している。符号9は、吊り具7に把持されたコンテナを示している。
【0018】
図2に示すように、トロリー6は、吊り具4を4点吊りするために、前後左右にシーブ群12a,12b,12c,12dを備えている。右手陸側のシーブ群12aは、第1シーブ121と第2シーブ122より構成され、左手陸側のシーブ群12bは、第3シーブ123と第4シーブ124より構成され、右手海側のシーブ群12cは、第5シーブ125と第6シーブ126より構成され、左手海側のシーブ群12dは、第7シーブ127と第8シーブ128より構成されている。他方、吊り具7は、前後左右に4個のシーブ、すなわち、第1〜第4シーブ131,132,133,134を備えている。
【0019】
上記ドラム11は、左右のドラム11R,11Lより構成され、右側の第1ドラム11Rから第1、第2の2本の巻上げワイヤ8a,8bが引き出され、左側の第2ドラム11Lから第3、第4の2本の巻上げワイヤ8c,8dが引き出されている。
【0020】
上記巻上げワイヤ8a〜8dは、上記シーブに次のように巻回されている。
【0021】
すなわち、
(a) 第1巻上げワイヤ8aは、第1ガーダエンドシーブ4a→第2シーブ122→第1シーブ131→第1シーブ121→第1シーブ14aに巻回後、ブーム前端の第1固定具16に固定される。
【0022】
(b) 第2巻上げワイヤ8bは、第2ガーダエンドシーブ4b→第6シーブ126→第3シーブ133→第5シーブ125→第3シーブ15aに巻回後、ブーム前端の第2固定具17に固定される。
【0023】
(c) 第3巻上げワイヤ8cは、第3ガーダエンドシーブ4c→第7シーブ127→第4シーブ134→第8シーブ128→第4シーブ15bに巻回後、ブーム前端の第2固定具17に固定される。
【0024】
(d) 第4巻上げワイヤ8dは、第4ガーダエンドシーブ4d→第3シーブ123→第2シーブ132→第4シーブ124→第2シーブ14bに巻回後、ブーム前端の第1固定具16に固定される。
【0025】
図2に示すように、第1〜第4のガーダエンドシーブ4a〜4dは、各シーブブラケット20a〜20dを構成する縦長の一対のシーブブラケット片20,20の間にそれぞれ回転自在に軸支されている。各シーブブラケット20a〜20dは、図3に示すように、その上端部が支点軸21によってガーダ3上の支持ブラケット29に軸支され、前記支点軸21を軸にして海及び陸側に揺動するようになっている。また、上記第1〜第4のガーダエンドシーブ4a〜4dは、支持軸19によって一対のシーブブラケット片20,20の間にそれぞれ回転自在に軸支されている。
【0026】
また、各シーブブラケット20a〜20dの下端部には、図3及び図5に示すように、剪断ピン23によって各電動ジャッキ22a〜22dの先端部25が連結されている。電動ジャッキ22aは、シーブブラケット20aのA及びB方向の揺動に追随し、電動ジャッキ22bは、シーブブラケット20bのC及びD方向の揺動に追随し、電動ジャッキ22cは、シーブブラケット20cのE及びF方向の揺動に追随し、電動ジャッキ22dは、シーブブラケット20dのG及びH方向の揺動に追随するようになっている。図5中、27は近接スイッチ、28はL字形のレバーを示している。
【0027】
上記各シーブブラケット20a〜20dは、図3及び図4に示すように、左右一対のシーブブラケット片20,20の間に巻上げワイヤ屈曲部材30を設けている。巻上げワイヤ屈曲部材30は、各ガーダエンドシーブ4a〜4dと各シーブブラケット20a〜20dの下端部の間に設けられている。巻上げワイヤ屈曲部材30としては、例えば、棒状体31とブレード32から構成されている。
【0028】
棒状体31は、中実、或いは、中空状に形成され、かつ、円弧状に形成された凸状部33を海側に向けている。また、棒状体31は、図3に示すように、シーブブラケット片20,20の海側面20sよりも海側に突出するようにシーブブラケット片20,20の間に設けられている。他方、ブレード32は、棒状体31の背後にあってシーブブラケット20に所定の角度θで取り付けられ、その海側端は、棒状体31の上端部に接続されている。ブレード32には、無孔板、或いは、多孔板が使用される。
【0029】
今、図6に示すように、コンテナ船(図示せず)からコンテナ9を荷揚げする時に、吊り具7にスナックロードによる衝撃が走ると、先ず、各シーブブラケット20a〜20dと電動ジャッキ22の先端部25とを連結している剪断ピン23が破断してスナックロードに起因する衝撃を吸収する。
【0030】
剪断ピン23が破断すると、各シーブブラケット20a〜20dが、図6にて、反時計方向に回動し、各シーブブラケット20a〜20dに取り付けた巻上げワイヤ屈曲部材30によって各ガーダエンドシーブ4a〜4dと吊り具7の間の各巻上げワイヤ8a〜8dが強制的に湾曲又は屈曲される。
【0031】
このため、各巻上げワイヤ8a〜8dの軸方向のエネルギーが各巻上げワイヤ8a〜8dの振れ方向及び曲げ方向のエネルギーに変換され、剪断ピン23で吸収しきれなかったスナックロードの衝撃エネルギーが吸着される。その結果、各巻上げワイヤ8a〜8d自体によってスナックロードの衝撃エネルギーを減衰させることができる。
【0032】
以上の説明では、巻上げワイヤ屈曲部材30を棒状体31とブレード32から構成する場合について説明したが、これに限らず、例えば、棒状体31単独、又はブレード32単独で構成しても支障がない。或いは、巻上げワイヤ屈曲部材30を、シーブブラケットに回転自在に設けたローラによって構成しても支障がない。その際、ローラの回転を、ブレーキ、ダンパー等の拘束手段によって拘束可能にしても支障がない。
【符号の説明】
【0033】
3 ガーダ
5 ブーム
6 トロリー
8 巻上げワイヤ
7 吊り具
4a〜4d ガーダエンドシーブ
20a〜20d シーブブラケット
23 剪断ピン
22 電動ジャッキ
30 巻上げワイヤ屈曲部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーダ及びブーム上を横行するトロリーから巻上げワイヤを介して吊り具を吊り下げ、前記巻上げワイヤの一端をブームの海側端に固定する一方、前記巻上げワイヤの他端をガーダの陸側端に設けたガーダエンドシーブを経てドラムに巻き取り、かつ、前記ガーダエンドシーブを回転自在に支持するシーブブラケットと、該シーブブラケットの端部に剪断ピンを介して連結した電動ジャッキとを備えたコンテナクレーンにおいて、前記ガーダエンドシーブと前記シーブブラケットの下端部との間に巻上げワイヤ屈曲部材を設けたことを特徴とするコンテナクレーン構造物保護機構。
【請求項2】
巻上げワイヤ屈曲部材を棒状体により構成したことを特徴とする請求項1記載のコンテナクレーン構造物保護機構。
【請求項3】
巻上げワイヤ屈曲部材を棒状体と、該棒状体の背後に所定の角度で取り付けた板状体により構成したことを特徴とする請求項1記載のコンテナクレーン構造物保護機構。
【請求項4】
巻上げワイヤ屈曲部材を、シーブブラケットに回転自在に設けたローラにより構成したことを特徴とする請求項1記載のコンテナクレーン構造物保護機構。
【請求項5】
ローラの回転を、ブレーキ、ダンパー等の拘束手段によって拘束可能にしたことを特徴とする請求項4記載のコンテナクレーン構造物保護機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−235244(P2010−235244A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84225(P2009−84225)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】