説明

コンテナ用床板

【課題】コンテナ用床板を、木製と同様の摩擦係数とクッション性があり、吸湿せず、かつ臭いが付着しない上に、成型時もしくは使用中にクラックが生じない、釘打ちが可能な程度に軟質にする。
【解決手段】ガラス繊維220を含む熱可塑性樹脂シート200を金型に配置し、上面に設けられた載荷面101が平坦で、かつ下面に直線状のリブ110が平行に複数本形成され、下面が全体として波形形状になるように加熱圧縮成型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ用床板に関し、特にコンテナ内に備え付けるためのコンテナ用床板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から海上輸送用等のコンテナ用床板として、アピトン合板材をはじめとする木材で製造されたものが使われている。
【0003】
しかし、コンテナの新造量が年々増加し、それに伴いコンテナの床材として用いてきた木材の伐採量が増え、環境破壊の一因となっている。また、環境破壊に対する懸念から、今後木材が安定的に供給されなくなるおそれも生じている。
【0004】
また、木材を用いたコンテナ用床板は、コンテナ内を水洗いした後に内部を乾燥させる時間がかかってしまうことや、臭いが染みつきやすい性質があること、および木材本来の性質である吸排湿性によってコンテナ内の湿度コントロールが困難だった。また、床板の耐用年数が過ぎた後のリサイクル性が悪く、大量の床板を廃棄処分せざるを得なかった。
【0005】
そこで、金属板を立体成型したコンテナ用床板が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、裏面にクロスリブを設けることにより強度を増した合成樹脂製床板も提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】実開昭55−16240号公報
【特許文献2】実開昭63−13895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、金属製のコンテナ用床板は、木に比べて摩擦係数が低く、コンテナ内の荷物が動いて荷崩れしやすいという問題があった。また、従来から行われている、コンテナ内に載置された荷物を紐などで固定し、床板に釘打ちするなどしていた方法が使えなくなるという問題もあった。さらに、金属には木材と比べてクッション性が少なく、衝撃に弱い荷物をコンテナ内に載置するときは、木材を用いたコンテナ用床板を使用しているときは不要だった衝撃吸収材が必要になるという問題もあった。
【0008】
一方、合成樹脂製床板はもろいため、強い衝撃を与えるなどするとクラックが生じやすいという問題があった。また、繊維入り熱可塑性樹脂を熱圧縮成型することにより、上記特許文献2に記載されたようなクロスリブ形状に成型すると、縦横のリブの交差部に対して熱可塑性樹脂の繊維が様々な方向から流れ込むことにより、成型した床板に混ざり込む繊維が均一にならないため成型時にクラックが生じる。もしくは、成型時にクラックが生じないまでも、繊維が非均一で強度が均一ではなくなるため、使用中に強度が弱い部分にクラックが生じやすくなるという問題もある。これは、常に荷重がかかることが想定されるコンテナ用床板には致命的な欠陥といえる。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、木製と同様の摩擦係数とクッション性があり、吸湿せず、かつ臭いが付着しない上に、成型時もしくは使用中にクラックが生じない、釘打ちが可能な程度に軟質なコンテナ用床板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では上記問題を解決するために、コンテナ内に備え付けるためのコンテナ用床板において、上面が平坦で、かつ下面に直線状のリブが平行に複数本形成されるように、繊維入りの熱可塑性樹脂シートを加熱圧縮成型したことを特徴とするコンテナ用床板が提供される。
【0011】
このようなコンテナ用床板によれば、繊維入りの熱可塑性樹脂シートを材料としたことによって、床板自身が吸排湿しなくなる上に、水や油が染みこまなくなる。また、特に貨物と接触する上面に必要な、木製の床板と同様の摩擦および軟質性を得ることができる。
【0012】
また、直線状のリブを設けるように成型することにより、クロスリブ形状におけるリブの交差部のように様々な方向から繊維が流れ込むことがなく、成型時に繊維入りの熱可塑性樹脂シートの繊維がリブ内に一定方向からのみ流れ込む。したがって、床板全体に繊維が均等に含有することとなり、床板における各部分の強度が均等になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコンテナ用床板によれば、床板自身が吸排湿しないので、特に湿度に敏感な生鮮品などを運ぶ際のコンテナ内の湿度管理が容易になる。また、水や油などが染みこまないので、臭いを放つことがなくなり、特に臭い移りしないことが高い水準で要求されるコーヒー豆などを運ぶ際に、その荷物に臭いが付着することを防止することができる。
【0014】
また、木製のコンテナ用床板と同様の摩擦係数およびクッション性があり、かつ釘打ちが可能なので、輸送中におけるコンテナ内の荷物の荷崩れを防止し、また荷物を保護するための保護材を用いる必要がなくなるので、手間とコストを低減できる上に、コンテナ内に積み込むことが可能な荷物の最大積載量を、木製のコンテナ用床板を使ったときと同等に維持することができる。
【0015】
また、直線状のリブを設けるように成型することにより、成型時に繊維入りの熱可塑性樹脂シートの繊維が一定方向から流れ込むので、床板全体に繊維が均等に含有することとなり、床板における各部分の強度が均等になる。
【0016】
したがって、加熱圧縮成型時もしくは床板として使用しているときに、負荷がかかった床板に対して応力が均等に分散される。つまり、一部分が損傷することによって、床板の損傷部分以外の部分は使用できるにもかかわらず床板を廃棄しなければならない事態を回避することが可能となる。
【0017】
また、複数本のリブを設けることにより、床板に必要とされる厚さと強度を保ちながら樹脂シートを使用量を低減することが可能となり、床板製作時のコストを低減することができる。また、床板の重量を低減できるので、床板を備え付けたコンテナを陸上輸送するときやコンテナの積み下ろしのときにかかる労力やコストが低減することができる。
【0018】
また、一般的にコンテナ(下面)の強度向上のため、鉄製のクロス部材をコンテナ内の床面に適宜間隔で複数配設しているが、この鉄製のクロス部材と床板の下面に設けられたリブとが直交するように床板をコンテナ内に配設することにより、コンテナ下部の各方向に対する強度が保証される。また、熱可塑性樹脂を用いてコンテナ用床板とすることにより、床板のリサイクル性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の床板の上面斜視図である。
図1に示すように、床板100は長方形であり、その上面は平面な載荷面101が設けられている。また、下面には床板100の長辺に沿ってリブ111が設けられており、リブ111と平行にリブ112が設けられている。
次に、下面斜視図を用いて、床板100の下面に設けられているリブの構造ついて説明する。
【0020】
図2は、本実施の形態の床板の下面斜視図である。
図2に示すように、リブ111、112は、床板の長辺に対して平行に、かつ直線に一定間隔に設けられている。また、リブ111の内側長手側面、およびリブ112の両側長手側面には、各リブ間に形成された平面102に対して45度の斜面が形成されている。また、リブ111の外側長手側面は、床板100の上面に対して直角に形成されている。
【0021】
上述したような床板100は、繊維入りの熱可塑性樹脂シート(複数枚あるいは必要枚数)を熱圧縮成型することによって製造される。次に、床板100を成型する際に用いられる熱可塑性樹脂シートの積層構造について説明する。
【0022】
図3は、本実施の形態の床板を成型する際に用いられる熱可塑性樹脂シートの積層構造を示す図である。
図3に示すように、熱可塑性樹脂シート200は、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂210の間にガラス繊維220で構成された不織布を挟み、熱可塑性樹脂210、不織布、熱可塑性樹脂210、不織布、熱可塑性樹脂210の順でラミネート構造としたものを加圧および加熱することにより、不織布に熱可塑性樹脂210を含浸させて生成する。熱可塑性樹脂シート200の寸法は、利用上の便宜からおおむね1〜1.2m四方であり、また厚さが3〜5mmに成形される。
【0023】
なお、上述したガラス繊維220で構成された不織布は、らせん状のガラス繊維をベルトコンベア上に載置すると同時に、直線状のガラス繊維を載置して生成する。
また、熱可塑性樹脂シート200の使用の便宜のために、加圧および加熱することにより生成した熱可塑性樹脂シート200を送り方向に一定間隔で切断することにより上述の寸法とする。
次に、このようにして生成された熱可塑性樹脂シート200の特徴について説明する。
【0024】
図4は、本実施の形態の床板を成型する際に用いられる熱可塑性樹脂シートの上面模式図である。
図4に示すように、熱可塑性樹脂シート200は、直線状のガラス繊維221とらせん状のガラス繊維222が含まれて生成される。このような、らせん状のガラス繊維222を含むことによって、いかなる方向に対しても均等に強度を高めることができる。その上で、直線状のガラス繊維221を含むことによって、直線状のガラス繊維221の方向に対する強度を高めることができる。
【0025】
このような熱可塑性樹脂シート200を、製造しようとする床板100の大きさや厚さに応じた必要枚数を加熱圧縮装置の金型上に配置し、熱圧縮成型することにより上述の床板100を製造する。
次に、床板100の断面図を用いて、床板100の下面に設けられるリブ110の構造と、その構造にしたことによる加熱圧縮成型時の優れた点について説明する。
【0026】
図5は、本実施の形態の床板の長手方向断面図である。
図5に示すように、床板100の下面には、5本のリブ110が形成されている。このとき、載荷面101から接地面103までの厚みh1を28mmとしている。この厚みh1はコンテナの床面に設けられているクロス部材からコンテナの入り口の最下部までの高さを想定している。また、載荷面101から平面102までの厚みh2を6mmとしている。この厚みh2は、床板100に釘打ちした時の必要最小限の係止力を発揮できる厚みである。
【0027】
また、リブ111の接地面103aの幅w1を20mmとし、リブ112の接地面103bの幅w2を40mmとしている。この幅はコンテナの床面に設けられているクロス部材上に床板100を載置したときに、接地面103のクロス部材との接触部が使用中に損傷しない最小幅である。
【0028】
また上述の通り、リブ111の内側長手側面、およびリブ112の両側長手側面には、リブ110間に形成された平面102とのなす角αが45度の斜面が形成されている。また、リブ111の外側長手側面は、床板100の上面に対して直角に形成されている。
【0029】
なお、リブ110の本数および接地面103の幅を一定にしたまま、角αを45度より小さくすると平面102が減る。つまり、肉厚な床板100になるので床板100の強度は向上するが、床板100を製造する際に必要となる熱可塑性樹脂シート200の量が多くなり、製造時のコストが上昇する。また、床板100の重量も増えるので、床板100を配置したコンテナの取り扱いがしづらくなる。
【0030】
一方、リブ110の本数および接地面103の幅を一定したまま、角αを45度より大きくすると、熱圧縮成型時に熱可塑性樹脂シート200に含まれるガラス繊維220がリブ110内に均等に流れ込まず、熱圧縮成型時にクラックが生じる可能性がある。また、熱圧縮成型時にクラックが生じない場合でも、成型された床板100の強度が一定にならず、床板100使用時に強度が弱い部分だけにクラックが生じ、耐用年数前に廃棄しなければならない事態が想定される。
【0031】
上述のような理由により角αは45度が望ましい。
なお、平面102と斜面部の接合部分をテーパ形状にしてもよい。テーパ形状にすることにより、より一層リブ110内にガラス繊維が流れ込みやすくなり、強度が一定になることに寄与する。
【0032】
このような構造の床板100を熱圧縮成型により製造するときには、金型のリブ110に相当する部分に対しては多めの熱可塑性樹脂シート200を配置する。また、熱可塑性樹脂シート200を金型に配置するときには、熱可塑性樹脂シート200の長手方向とリブ110の長手方向が平行になるように配置する。
【0033】
熱可塑性樹脂シート200内に含まれる直線状のガラス繊維221がリブ110と平行になり、熱圧縮成型の際にガラス繊維220がリブ110内に均等に流れ込むようにするためである。また、リブ110の長手方向に対する強度を増すためである。
【0034】
このようにリブ110の断面を上底より下底が短い台形の形状にすることにより、床板100を熱圧縮成型する際に熱可塑性樹脂シート200に含まれるガラス繊維220がリブ110内に対しても均等に流れ込むことになり、床板100の各部分の強度が一定になる。したがって、床板100使用時に強度が弱い部分だけにクラックが生じ、耐用年数より前に床板100を廃棄しなければならない事態を回避することができる。
【0035】
このようなコンテナ用床板100によれば、繊維入りの熱可塑性樹脂シート200を材料としたことによって、床板100自身が吸排湿しなくなる上に、水や油が染みこまなくなる。また、特に貨物と接触する上面に必要な、木製の床板と同様の摩擦および軟質性を得ることができる。
【0036】
また、直線状のリブ110を設けるように成型することにより、繊維入りの熱可塑性樹脂シート200を加熱圧縮成型することにより床板を製造するときに、クロスリブ形状におけるリブの交差部のように様々な方向から繊維が流れ込むことがなく、成型時に繊維入りの熱可塑性樹脂シート200のガラス繊維220がリブ110内に一定方向からのみ流れ込む。したがって、床板100全体にガラス繊維220が均等に含有することとなり、床板100における各部分の強度が均等になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施の形態の床板の上面斜視図である。
【図2】本実施の形態の床板の下面斜視図である。
【図3】本実施の形態の床板を成型する際に用いられる熱可塑性樹脂シートの積層構造を示す図である。
【図4】本実施の形態の床板を成型する際に用いられる熱可塑性樹脂シートの上面模式図である。
【図5】本実施の形態の床板の長手方向断面図である。
【符号の説明】
【0038】
100 床板
101 載荷面
102 平面
103、103a、103b 接地面
110、111、112 リブ
200 熱可塑性樹脂シート
210 熱可塑性樹脂
220、221、222 ガラス繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ内に備え付けるためのコンテナ用床板において、
上面が平坦で、かつ下面に直線状のリブが平行に複数本形成されるように、繊維入りの熱可塑性樹脂シートを加熱圧縮成型したことを特徴とするコンテナ用床板。
【請求項2】
前記リブの長手方向に直交した断面が、上底より下底が短い台形であることを特徴とする請求項1記載のコンテナ用床板。
【請求項3】
前記繊維入りの熱可塑性樹脂シートは、らせん状の繊維で構成された不織布に熱可塑性樹脂を含浸させたものであることを特徴とする請求項1記載のコンテナ用床板。
【請求項4】
らせん状の繊維と、一方向に並べた繊維とで構成された不織布に熱可塑性樹脂を含浸させた前記繊維入りの熱可塑性樹脂シートを、前記リブの長手方向が前記一方向に並べた繊維方向となるように加熱圧縮成型したことを特徴とする請求項1記載のコンテナ用床板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−12801(P2009−12801A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174878(P2007−174878)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(304035975)株式会社MTI (46)
【出願人】(500003453)クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン 株式会社 (5)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】