説明

コンテナ

【課題】コンテナを水密構造とすることで内部への浸水の発生をなくし、海上に落下したり津波に遭遇した場合でも沈むことがなく、内部に収納した物品の回収が行えるコンテナを提供する。
【解決手段】一面が扉部材によって開閉自在となる内部中空の箱形に形成されたコンテナ本体を、前記扉部材の閉鎖状態で内部を密閉できる水密構造に形成し、このコンテナ本体の内部で周壁と天井面に浮力付与部材が張設してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種物品の輸送に用いると共に、事務所や倉庫、災害時の仮設住宅等としても使用することができるコンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
各種物品を安全に目的地まで効率よく輸送するために広く一般に用いられているコンテナは、輸送せんとする部材に対応して幾つかの形態があるが、最も一般的に用いられているコンテナとして、海上コンテナや鉄道コンテナがあり、これらコンテナは、各種鋼材や金属板を用いて組立てられ、一面に開閉用の扉部材を設けた内部中空の箱形に形成されたドライタイプの構造になっており、その内部に各種物品を収納し、コンテナ船、トレーラー、鉄道等の輸送手段を用いて目的地に輸送するものである。
【0003】
従来のドライタイプのコンテナは、輸送手段による輸送時や集荷場での設置状態で、太陽光を直接受けると内部の温度が上昇して収納部材に悪影響を与えることになるため、周壁の適所に通気孔を設け、内部の換気を行うことで温度上昇を抑える構造になっており、これとは別に、前記通気孔に加えて、コンテナの内周面に断熱材を張設し、内部温度の上昇を更に抑えるようにしたものもある(例えば、特許文献1と2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−214918号公報
【特許文献2】特開2009−150110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した従来のドライタイプのコンテナは、コンテナ自体の構造に水密性は考慮されておらず、しかも、周壁に設けた通気孔の存在によって、内部空間の気密性や水密性がないため、例えば、コンテナ船による海上輸送時に、海難事故又は荒波や強風により荷崩れが発生して海上に落ちた場合、水密性のない隙間部分や通気口から内部への浸水が発生し、この浸水が原因でコンテナが水中に沈むことになり、コンテナが沈むと収納した内部の物品を回収することができない事態が発生するという問題があり、経済的な負担は甚大なものになる。
【0006】
また、コンテナを仮設住宅に利用する考えが特許文献2のように提案されているが、コンテナ自体には移動性がないため、クレーン等で吊下げて目的の場所に安定よく設置させるための作業に手間がかかると共に、クレーン車が進入できないような条件の場所には設置することができないという問題がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、上記のような問題点を解決するため、コンテナを水密構造とすることで内部への浸水の発生をなくし、海上に落下したり津波に遭遇した場合でも沈むことがなく、内部に収納した物品の回収が行えるだけでなく、仮設住宅等として使用した場合、設置場所の制約を受けることが少ないコンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するため、この発明は、一面が扉部材によって開閉自在となる内部中空の箱形に形成されたコンテナ本体を、前記扉部材の閉鎖状態で内部を密閉できる水密構造に形成し、このコンテナ本体の内部周面に浮力付与部材を張設したものである。
【0009】
上記コンテナ本体の内部に、生活関連器材がセットしてあるようにしたり、コンテナ本体の底面に、複数の移動用キャスターと、上下に高さ調節が可能な複数の接地部材とを設けた構造とすることができる。
また、上記コンテナ本体の寸法は、国際基準もしくは国内基準に準じた大きさに設定されているようにすることができる。
【0010】
ここで、上記コンテナ本体は、パイプや鋼材等を用いて組立てた矩形状枠体の一面を除く外部周面に波板等を用いた側板を張設し、上面に天井板と下部に床板を張設して一面が開放した内部中空の箱形に組立てられ、一面の開口部分には両側に開くことのできる扉部材が取付けられ、扉部材は閉位置にある状態で施錠することにより開口部分を閉鎖できるようになっている。
【0011】
このコンテナ本体は、矩形状枠体に対して側板と天井板及び床板を水密構造となるように張設して組立てられ、上記扉部材も閉位置で開口部分を水密状に閉鎖できるようにすることで、内部に浸水が発生しないようになっており、海上に落下したり津波に襲われた場合でも、内部の気密状態を保つことで浮力が得られ、コンテナ本体が沈むことのないようにしている。
【0012】
また、コンテナ本体の内面に張設する浮力付与部材は、ウレタンや発泡スチロール等を用い、側板と天井板の内面に重ねて張設することで、例えば、扉部材が開いたり施錠していない状態でコンテナ本体が海上に落下したり津波に襲われ、内部に浸水が発生した場合に、前記浮力付与部材の浮力によってコンテナ本体が沈むことのないようにし、これによって、コンテナ本体内に収容した物品の回収を可能にするものである。
【0013】
上記浮力付与部材は、側板と天井板の内面に重ねて張設することで、コンテナ本体に断熱や防音の効果を付与するだけでなく、内面の保護や強度を向上させることができる。
【0014】
上記コンテナ本体は各種物品の輸送に用いるだけでなく、倉庫、事務所、店舗、仮設住宅としてそのまま使用することができ、例えば、仮設住宅として使用する場合の内部に設ける生活関連器材としては、浴槽、キッチン、トイレを例示することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、一面が扉部材によって開閉自在となる内部中空の箱形に形成されたコンテナ本体を、前記扉部材の閉鎖状態で内部を密閉できる水密構造に形成したので、海上に落下したり津波に襲われた場合でも、内部への浸水の発生を防ぎ、内部に閉じ込めた空気によって浮力を確保することで沈むことがなくなり、内部に収納した搬送物品の回収を可能にして経済的な損失の発生を防ぐことができる。
【0016】
また、コンテナ本体の内部周面に浮力付与部材を張設したので、扉部材が開いたり施錠していない状態で海上に落下したり津波に襲われ、内部に浸水が発生しても、この浮力付与部材の浮力によってコンテナ本体が沈むことのないようにすることができ、これにより、全てではないがコンテナ本体内に残った搬送物品の回収が可能になる。
【0017】
更に、コンテナ本体はそのまま倉庫、事務所、店舗等に用いることができ、コンテナ本体の内部に生活関連器材をセットすればそのまま仮設住宅となり、しかも、コンテナ本体の底面に、移動用キャスターと上下に高さ調節が可能な複数の接地部材とを設けることにより、設置位置までの移動が容易となるだけでなく、クレーン車の進入が困難な場所への設置も可能となり、設置場所の制約を受けることが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係るコンテナの外観を示す斜視図
【図2】この発明に係るコンテナの縦断正面図
【図3】この発明に係るコンテナの横断平面図
【図4】この発明に係るコンテナを仮設住宅とした場合の横断平面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図示のように、この発明のコンテナ1は、パイプや鋼材等を縦材や横材に用いて組立てた矩形状骨組み枠体2の一面を除く外部周面に波板等を用いた側板3を張設し、上面に天井板4と下部に床板5を張設して内部中空の箱形となるコンテナ本体6を組立て、このコンテナ本体6の一面に設けた出し入れ用の開口部分には、両側に開くことのできる一対の扉部材7が取付けられ、扉部材7は閉位置にある状態で周知構造を有する施錠機構8を施錠することにより開口部分を閉鎖できるような構造になっている。
【0021】
このコンテナ本体6は、矩形状骨組み枠体2に側板3と天井板4及び床板5を水密構造となるように溶接等の手段で固定して張設することにより組立てられ、上記一対の扉部材7は、両側に開く観音開きの構造を有し、周囲に設けたパッキンにより閉位置で開口部分を水密状に閉鎖できるようになっており、扉部材7を閉じて施錠機構8を施錠すると、コンテナ本体6は、内部が密封されて気密状態を保つことで浮力が発生して外部からの浸水が生じない不沈構造となり、海難事故や荷崩れによって海上に落下したり津波に襲われた場合でも、外部からの浸水がないので沈むようなことがなくなり、浮いているコンテナ1から内部に納まる搬送物品の回収が可能になる。
【0022】
上記コンテナ本体6の内部には、図2乃至図4のように、側板3と天井板4の内面全体に浮力付与部材9が張設され、図示の場合、前記側板において、開口部分と対面側にある端板3の内面に張設する浮力付与部材は他の部分よりも厚めとし、この浮力付与部材9としては、必要な厚みを有するウレタンや発泡スチロール等の板を用い、このような材質の浮力付与材を貼付けることにより、内部に浸水が生じた場合のコンテナ本体6に対して浮力を付与することができる。
【0023】
即ち、上記扉部材7が開いていたり施錠機構8を施錠していない状態で、コンテナ1が海難事故や荷崩れによって海上に落下したり津波に襲われた場合、開口部分からコンテナ本体6の内部に浸水が生じることになるが、このようなときに上記した浮力付与部材9の浮力によってコンテナ本体6が沈まないようにし、少なくとも、コンテナ本体6内に残った物品を回収することができるようにし、できるだけ経済的な損失の発生を防ぐものである。
【0024】
上記浮力付与部材9は、図示の場合、コンテナ本体6の内面に張設した状態で、コンテナ本体6内に臨む面に適宜材質の内装材10を貼り付けることで、内装の仕上がりを見た目に綺麗なものにしており、この浮力付与部材9は、浮力の付与だけでなく、コンテナ本体6に対して断熱や防音の効果を付与でき、更に、内面の保護や強度を向上させることができるという利点がある。
【0025】
上記コンテナ本体6は、倉庫、事務所、店舗、仮設住宅等として使用することができ、例えば仮設住宅として使用する場合は、図4に示すように、このコンテナ本体6の内部に生活関連器材11をセットするようにし、また、図2のように、コンテナ本体6の底面で四隅の位置に、複数の移動用キャスター12と、上下に高さ調節が可能な複数の接地部材(アジャスター)13とを設けた構造とする。
【0026】
上記生活関連器材11としては、図4のように、脱衣スペースを備えた浴槽11aとシンク11b、レンジ11c及びその給排水設備、給電用の配線のほかに、必要に応じてトイレやベッド、照明機器、空調機器等を挙げることができ、コンテナ本体6を設置するだけで直ぐに生活が行えるようになっている。
【0027】
また、移動用キャスター12を設けることにより、コンテナ本体6をトラックからクレーンで地面に下ろした状態で人力によって押すことで移動可能とすることができ、従って、クレーン車が入れないような条件の場所にもコンテナ本体6を設置することができる。
【0028】
しかも、コンテナ本体6の底面四隅に設けた接地部材13は、コンテナ本体6を所定の位置に配置した状態で、回動操作して下端を接地させることにより、コンテナ本体6を移動が生じないように固定化することができ、各接地部材13を上下に調整することで傾斜地や平面度の良くない地面にも安定よく設置することができる。
【0029】
上記したコンテナ1において、コンテナ本体6の大きさは、国際基準もしくは国内基準に準じた大きさに設定され、例えば、国際基準の20フィートコンテナ、40フィートコンテナ、国内基準の12フィートコンテナの大きさとなり、国際基準もしくは国内基準に準じた大きさとすることにより、既に用いられているコンテナ船、トレーラー、鉄道の貨車荷台、トラック等の輸送手段を用い手支障なく積載搬送することができることなる。
【0030】
この発明のコンテナ1は、上記のような構成であり、各種物品の搬送に用いる場合、その内部に物品を収納し、輸送手段に積載して目的地に搬送するものであるが、コンテナ本体6の開口部を扉部材7で閉じて施錠機構8を施錠すると、コンテナ本体6の内部は水密状に密閉される。
【0031】
このため、コンテナ船上での海難事故や荷崩れで海上に落下したり、荷役集積所に設置した状態で津波に遭遇したような場合、扉部材7を閉じて施錠した状態で、コンテナ本体6は内部に閉じ込められた空気の存在によって浮力が発生し、海上や水上に浮いて沈むようなことがなく、このため、コンテナ本体6を引き寄せ、扉部材7を開いて内部の収納物品を回収することができ、コンテナ本体6も回収できることで経済的損失の発生を抑えることができる。
【0032】
また、コンテナ本体6の内部に張設した浮力付与部材9は、断熱や防音の機能があるので、輸送途中や荷役集積所に設置した状態でコンテナ本体6が太陽光の照射を受けても、内部温度の極端な上昇を抑えることができ、収納した物品に対する温度上昇の影響を少なくすることができる。
【0033】
ここで、コンテナ本体6の扉部材7が開いた状態や施錠していない状態で、海難事故や荷崩れで海上に落下したり荷役集積所に設置した状態で津波に遭遇したような場合、開口部分からコンテナ本体6の内部に浸水が生じることになるが、コンテナ本体6の内部には浮力付与部材9が張設してあるので、内部に浸水してもコンテナ本体6は不沈状態となり、浮力付与部材9の浮力によってコンテナ本体6が沈むのを防ぐことで、少なくともコンテナ本体6内に残っている物品を回収することができることになる。
【0034】
次に、上記コンテナ1を、倉庫、事務所、店舗、仮設住宅等として用いる場合は、図2のように、コンテナ本体6の底部に複数の移動用キャスター12と接地部材13を取付け、このコンテ本体6をクレーン車で設置現場まで輸送したらクレーンで地面に下ろし、クレーン車が進入できない条件の場合は手前で下ろし、移動用キャスター12を利用して目的の設置位置まで押して移動させ、設置位置に配置したコンテナ本体6は、接地部材13を回動操作することで下面を接地させ、コンテナ本体6を地面に対して固定配置する。
【0035】
コンテナ本体6を仮設住宅等として用いる場合、コンテナ本体6の内部に予め生活関連器材11をセットしておくので、設置後に給排水や電源の接続処理を行えば、直ぐに生活ができることになり、震災発生時に必要となる仮設住宅として有効である。
【0036】
なお、コンテナ本体6は、内部に張設した浮力付与部材9によって内部温度の極端な上昇を抑えることができるので、生活環境を維持できると共に、扉部材7を閉じると内部の居住空間が密閉されるので、コンテナ本体6を倉庫、事務所、店舗、仮設住宅等として使用する場合、周壁等の適宜位置に通気孔を設けるようにしたり、周壁に窓を設ける等の加工を加えるようにしてもよい。
【0037】
上記したこの発明のコンテナ1は、コンテナ本体6が国際基準もしくは国内基準に準じた大きさに設定されているので、既存のコンテナ輸送手段をそのまま使用して輸送したり移動させることができることになる。
【符号の説明】
【0038】
1 コンテナ
2 矩形状骨組み枠体
3 側板
4 天井板
5 床板
6 コンテナ本体
7 扉部材
8 施錠機構
9 浮力付与部材
10 内装材
11 生活関連器材
12 移動用キャスター
13 接地部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面が扉部材によって開閉自在となる内部中空の箱形に形成されたコンテナ本体を、前記扉部材の閉鎖状態で内部を密閉できる水密構造に形成し、このコンテナ本体の内部周面に浮力付与部材を張設したコンテナ。
【請求項2】
上記コンテナ本体の内部に、生活関連器材が予めセットしてある請求項1に記載のコンテナ。
【請求項3】
上記コンテナ本体の底面に、複数の移動用キャスターと、上下に高さ調節が可能な複数の接地部材とを設けた請求項1又は2に記載のコンテナ。
【請求項4】
上記コンテナ本体は、国際基準もしくは国内基準に準じた大きさに形成されている請求項1乃至3の何れかに記載のコンテナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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