説明

コンテンツ情報の高速再構成方法

【課題】本発明は、記録媒体のコンテンツ情報の高速な再構成方法に関する。
【解決手段】記録媒体の、複数要素を有する署名(<S>)を決定するステップと、決定した署名(<S>)と、コンテンツデータベースに保存されている複数の署名(10)とを比較するステップと、決定した署名(<S>)が、コンテンツデータベースに保存されている署名(10)と一致する場合、コンテンツデータベースから、関連するファイルシステムを読み出すステップとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体のコンテンツ情報の高速な再構成方法及び該方法にて記録媒体との間で読み書きを行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクのマルチフォーマット再生機は、マルチメディアデータコンテンツを有する光ディスクの使用が可能である。使用可能なデータファイルの種別は、MP3オーディオファイル、JPEG静止画からMPEG4ビデオクリップにまで及んでいる。ファイルは、通常、光ディスクのファイルシステムに、光データ読出しのために設計されたフォーマットにより保存されている。光ディスクが再生機に挿入される度、装置は、まずコンテンツ情報、つまりファイルシステムを再構成し、マルチメディアファイルへアクセス可能となる前に、可能な限りデータベースを構築する。コンテンツ情報の再構成及び/又はデータベースの構築は、他の環境、例えば、複数あるディスクのうち1つが選択され、再生位置に移送されるディスクチェンジャーや、電源断モードから起動したポータブル再生機でも必要である。
【0003】
コンテンツ情報の再構成に必要な時間は、かなりの程度、記録媒体上のファイル数、つまりファイルシステムに依存している。ファイル数が増えるほど、コンテンツ情報の再構成にかかる時間は長くなる。この期間を短くすることは、利用者にとって都合が良い。
【0004】
特許文献1は、記録媒体の特徴的なプロファイルを判定し、ローカル又はリモートデータベースに保存されている複数のプロファイルと比較することで、記録媒体のコンテンツを識別する方法を開示している。データベースには、タイトル及びアーティスト情報からなるコンテンツ索引が、対応するプロファイルと共に保存されている。このコンテンツ索引は、特定媒体のプロファイルがデータベース中に発見されたときに使用される。タイトルとアーティスト情報は、コンテンツの再生中、表示される。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6034925号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、記録媒体のコンテンツ情報の高速な再構成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明よれば、上記目的は、
記録媒体の、複数要素を有する署名を決定するステップと、決定した署名と、コンテンツデータベースに保存されている複数の署名とを比較するステップと、決定した署名が、コンテンツデータベースに保存されている署名と一致する場合、コンテンツデータベースから、関連するコンテンツ情報を読み出すステップとを有する記録媒体のコンテンツ情報の再構成方法により達成される。
【0008】
好ましくは、コンテンツ情報は、記録媒体上でのコンテンツ位置を含むファイルシステムである。本発明による方法は、特定の記録媒体が、再生機器で使用されたか否かを検査する。このため、記録媒体について、記録媒体を一意に識別する様に定義される特徴ベクトルを含む署名が決定される。署名は、そのコンテンツのデータに少しの違いしかない記録媒体を識別できるものである。署名は、データベースの署名と比較される。同じコンテンツ(ファイルシステム)を持つ、物理的に同じ記録媒体がある場合にのみ、一致が発見される。従来技術では、対照的に、同じコンテンツを持つ、物理的に異なる記録媒体がある場合でも一致が発見される。一致が発見されると、保存されている署名に関連付けられたファイルシステムが、データベースから読み出され、現在の記録媒体に使用される。これは、最近、記録再生装置にて利用された記録媒体が、同じ記録再生装置に挿入されたときの、開始処理の速度を劇的に改良する。
【0009】
好ましくは、決定した署名と、コンテンツデータベースに保存されている複数の署名とを比較するステップは、決定した署名と、コンテンツデータベースに保存されている署名との数学的又は論理的距離を評価するステップを含んでいる。値が0である距離がある場合、その署名を一致するものと判定する。一方、値が0である距離が無い場合、システムは、ファイルシステムデータベースに一致するものは存在しないと判定する。
【0010】
本発明の他の実施形態によれば、
記録媒体の、複数要素を有する署名の第1の部分を決定するステップと、決定した署名の第1の部分と、コンテンツデータベースに保存されている複数の署名の対応する部分とを比較するステップと、署名の第1の部分が、コンテンツデータベースに保存されている署名の少なくとも1つ一致する場合、記録媒体の署名の他の部分を決定するステップと、決定した署名の他の部分と、コンテンツデータベースに保存されている複数の署名の対応する部分とを比較するステップと、決定した署名が、コンテンツデータベースに保存されている署名と一致する場合、コンテンツデータベースから、関連するファイルシステムを読み出すステップとを有する記録媒体のコンテンツ情報の再構成方法により達成される。
【0011】
この方法では、階層構造を利用している。署名の要素の順序は、最初のm個の要素を素早く評価する様に配置されている。よって、他の要素については決定に時間がかかるかもしれない。これは、記録媒体がコンテンツデータベースに保存されているものではないことの決定を非常に速く行うことができる。最初のm個の要素により記録媒体を過去に使用したことを排除できない場合にのみ、他の要素が考慮される。
【0012】
好ましくは比較するステップにおいて、決定した署名の要素と、コンテンツデータベースに保存されている署名の対応する要素との比較を1度に1つだけ行い、署名の各要素が、ネガティブ検索結果を出力する、ネガティブ進行検査法を使用する。
【0013】
署名の要素と、署名リストの全署名の対応する要素に一致が無い場合、無条件に“一致なし”と結論付けられる。これは、更なる要素について考慮する必要がないため、処理速度を速くする。
【0014】
好ましくは、前記方法は、
決定した署名が、コンテンツデータベース保存されている署名と一致しない場合、記録媒体からコンテンツ情報を再構成するステップと、再構成したコンテンツ情報及び決定した署名を、コンテンツデータベースに保存するステップとを含んでいる。
【0015】
上述した従来技術での解決方法では、データベースにアーティスト及びタイトル情報を加えるためにユーザによる手作業が必要である。同じ状態において、本発明による方法は、ファイルシステムを自動的に生成し、関連する署名と共に、データベースに加える。
【0016】
好ましくは、記録媒体の記録再生装置は、記録媒体のコンテンツ情報再構成のために、本発明による方法を使用する。その様な装置は、記録媒体が以前その装置で利用されていたものである場合、開始時の処理にほとんど時間がかからないため、利用者にとって便利である。
【0017】
好ましくは、前記装置は、記録媒体が挿入された後、記録媒体を再生位置に移送した後、電源断モードからの復帰時のいずれかのときに、記録媒体のコンテンツ情報の再構成を実施する。これらは、コンテンツ情報の再構成が必要となる主な状態である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のより良い理解のために、最良の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴については、本発明の範囲から逸脱しない結合及び/又は修正がなされ得るものである。
【0019】
図1は、本発明による、記録再生装置に挿入された記録媒体のコンテンツ情報11の高速再構成方法を示す図である。以下の説明においては、光ディスクを例にして説明する。しかしながら、本発明は、他の記録媒体に対しても適用可能である。更に、コンテンツ情報の例として、ファイルシステムを用い説明する。
【0020】
ステップ1において、ディスクが光記録再生装置のローダに、シングルディスク装置の場合には手作業で、ディスクチェンジャー装置の場合には選択機構により、挿入され、ステップ2において、署名<S>10が生成される。署名10は、特徴ベクトル、
<S>={s(1),s(2),s(3),・・・,s(n)}
の形式で表現される。特徴ベクトル{s(1),s(2),s(3),・・・,s(n)}の各要素は、ディスクのコンテンツデータのパターンに基づく特徴の単一測定結果である。
【0021】
ステップ3において、署名10は、記録再生装置のファイルシステムデータベース内の署名リストと比較される。署名リストの各署名は、図2に示す様にファイルシステム11に結び付けられている。ファイルシステムデータベースは、好ましくは不揮発性メモリに保存される。
【0022】
次のステップ4において、署名10に一致する署名がない場合、ディスクのファイルシステム11が、ディスクから読み出したデータより再構成(ステップ7)される。この新しいファイルシステム11とそれに関連する署名10は、ファイルシステムデータベースに加えられる(ステップ8)。一方、ステップ4において、署名10に一致する署名がある場合、一致する署名10に関連付けられたファイルシステム11がファイルシステムデータベースから読み出され、ディスクのファイルシスム11として使用される。どちらの場合においても、完全なファイルシステム11が読み出されたときに、手順は終了する(ステップ6)。
【0023】
図2は、ファイルシステムデータベースの一般的な構造を示す図である。ファイルシステムデータベースの各署名10は、対応するファイルシステム11に関連付けられている。
【0024】
特徴ベクトルを持つ署名10は、ディスクの唯一の識別子を提供する様に定義される。更に、そのコンテンツのデータに少しの違いしかないディスクを識別できる必要がある。好ましくは、署名10は、マルチセッションディスクも扱い、正確に、かつ、素早く測定できる特徴を使用する。署名の判定と、ファイルシステムデータベースとの比較を合理的な時間内に実行するため、特徴ベクトルの長さが、好ましくは、調整される。
【0025】
特徴ベクトルを決定するために利用可能な要素は、
ディスク状態:
・オープン/クローズドディスク
・セッション数
・各セッションのトラック数
タイミング情報:
・各セッションのリードインタイム
・各セッションのリードアウトタイム
・コンテンツテーブルの各データトラックのQコード情報
・コンテンツテーブルのタイミング情報から計算される各セッションの総合時間
データ整合性:
・特定トラックのデータチェックサム
【0026】
好ましくは、ディスクの最終トラックのデータチェックサムが分析される。特定トラックのデータチェックサムは、データトラック内のあらかじめ定められた領域の算術加算である。本発明による方法において、あらかじめ定められた領域は、トラックの開始、中間、終了部分のいずれかである。領域の大きさは、1セクタ以上である。チェックサムは、好ましくは、16ビット又は32ビットである。もちろん、記録媒体の他の特徴を、特徴ベクトルの決定に使用することができる。
【0027】
入力の署名<S>が、ファイルシステムデータベースの署名10の1つに一致するか否かの検査には、異なる方法が存在する。
【0028】
図3は、署名の一致のための、ファイルシステムデータベース検査の第1の方法を示す図である。ステップ2において、署名<S>が、それぞれの特徴ベクトルの要素を評価することにより構成される。署名ベクトル<S>と、ファイルシステムデータベースの署名リストの各署名10との距離が、評価される(ステップ31)。ステップ4において、値0の距離と遭遇した場合、これは一致と判定される(ステップ41)。一方、ステップ4において、値0の距離と遭遇しない場合、ファイルシステムデータベース内に一致する署名は無いと判断する(ステップ42)。
【0029】
図4は、署名の一致のための、ファイルシステムデータベース検査の他の方法を示す図である。本方法では、階層構造を使用する。署名<S>の特徴ベクトルの要素の順序を、最初のm個の要素が素早く評価される様に配置する。つまり、残りのm+1番目からn番目の要素は判定するのにより長い時間を必要とする。署名<S>の要素と、署名リストに含まれる総ての署名10の同じ位置の要素との間に、1つでも一致しないものがある場合、無条件に“一致なし”とする(ステップ42)。署名<S>の1番目の要素からm番目の要素が、まず決定され(ステップ21)、各要素の一致の検査が順次実行される(ステップ43、44)。他方、m+1番目の要素からn番目の要素については、各要素がそれぞれ決定された後(ステップ22、23)直ぐに、要素の一致が検査される(ステップ45、46)。決定された署名と全要素が一致する署名10が署名リスト中に発見された場合、この署名が一致するものと判定される(ステップ41)。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による記録媒体のファイルシステムの高速再構成方法を示す図である。
【図2】ファイルシステムデータベースの一般的な構造を示す図である。
【図3】署名の一致のための、ファイルシステムデータベース検査の第1の方法を示す図である。
【図4】署名の一致のための、ファイルシステムデータベース検査の第2の方法を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10 署名
11 ファイルシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に保存されたデータパターンに基づく特徴を測定することにより、記録媒体の、複数要素を有する署名(<S>)を決定するステップと、
決定した署名(<S>)と、コンテンツデータベースに保存されている複数の署名(10)とを比較するステップと、
決定した署名(<S>)が、コンテンツデータベースに保存されている署名(10)と一致する場合、コンテンツデータベースから、関連するファイルシステムを読み出すステップと、
を有する記録媒体のファイルシステム再構成方法。
【請求項2】
決定した署名(<S>)と、コンテンツデータベースに保存されている複数の署名(10)とを比較するステップは、
決定した署名(<S>)と、コンテンツデータベースに保存されている署名(10)との距離を評価するステップを含んでいること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記録媒体の署名(<S>)を決定するステップと、決定した署名(<S>)と複数の署名とを比較するステップは、
複数要素(s(1),s(2),s(3),・・・,s(n))を有する署名(<S>)の第1の部分を決定するステップと、
決定した署名(<S>)の第1の部分と、コンテンツデータベースに保存されている複数の署名(10)の対応する部分とを比較するステップと、
決定した署名(<S>)の第1の部分が、コンテンツデータベースに保存されている、少なくとも1つの署名の対応部分に一致する場合、署名(<S>)の他の部分を決定するステップと、
決定した署名(<S>)の他の部分と、コンテンツデータベースに保存されている複数の署名(10)の対応する部分とを比較するステップと、
を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
比較するステップは、
決定した署名(<S>)の要素と、コンテンツデータベースに保存されている署名(10)の対応する要素との比較を1度に1つだけ行い、署名(<S>)の各要素がネガティブ検索結果を出力する、ネガティブ進行検査法を使用すること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
決定した署名(<S>)に、コンテンツデータベースに保存されている署名(10)と一致するものが無い場合、記録媒体からファイルシステムを取得するステップと、
取得したファイルシステム及び決定した署名(<S>)をコンテンツデータベースに保存するステップと、
を更に有する請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
署名(<S>)は、記録媒体ごとに一意であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
署名の要素は、ディスク状態、タイミング情報又はデータ整合性から選択され、
ディスク状態は、オープン/クローズドディスク、セッション数又は各セッションのトラック数であり、
タイミング情報は、各セッションのリードイン時間、各セッションのリードアウト時間、各セッションの総合時間又は各トラックのサブコード情報であり、
データ整合性は、特定トラックのデータチェックサムである、
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
記録媒体の記録再生装置であって、
記録媒体のファイルシステム再構成のために、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法を使用すること、
を特徴とする装置。
【請求項9】
記録媒体のファイルシステム再構成を、
記録媒体の挿入後、記録媒体を再生位置に移送した後、又は、電源断モードからの復帰後に実行すること、
を特徴とする請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−501988(P2007−501988A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522275(P2006−522275)
【出願日】平成16年7月24日(2004.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008327
【国際公開番号】WO2005/015562
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】