説明

コンデンサー用電極セパレーターおよびコンデンサー

【課題】脂肪族ポリケトン繊維紙を電極セパレーターとして用いた高エネルギー密度(高容量)で、内部抵抗の小さい生産性の良いコンデンサー、および、薄くて強靱で、耐熱性、寸法安定性、電気絶縁性、耐薬品性、低吸水性に優れ、かつ、均一で多孔性のコンデンサー用電極セパレーターを提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリケトン繊維を含む脂肪族ポリケトン繊維紙を電極セパレーターとして用いたコンデンサーである。下記式(1)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリケトン繊維を含む湿式繊維紙からなるコンデンサー用電極セパレーターである。 −CH−CH−CO− (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成繊維の1〜99質量%が下記式(1)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリケトン繊維であるポリケトン含有繊維紙からなるコンデンサー用電極セパレーター、当該電極セパレーターを用いたアルミ電解コンデンサーまたは電気二重層キャパシタなどのコンデンサー関する。更に詳しくは、強度、寸法安定性、耐熱性、電気絶縁性、耐溶剤性、耐薬品性に優れ、かつ低吸水性である厚さの薄い多孔性の均一なポリケトン繊維紙を電極セパレーターとして用いたコンデンサー、およびコンデンサー用電極セパレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木材パルプの代わりに合成繊維を用いて抄紙した合成繊維紙が検討されている。合成繊維紙は耐水性がよく、合成繊維の様々な特徴を併せ持つので、新規材料として注目され、種々提案されている。
例えば、特許文献1ではポリエステル繊維を用いた合成繊維紙が開示され、耐水性、耐薬品性に優れるので、感熱孔版原版用支持体などに使用されている。しかし、ポリエステル繊維は熱可塑性樹脂であり、高温にすると熱膨張して寸法安定性、強度が低下するので、耐熱性の向上が必要である。
また、特許文献2では芳香族ポリアミド繊維を用いた繊維紙が開示され、力学的強度、寸法安定性、耐熱性などに優れるので、多層プリント配線基板用基材などに使用されている。しかし、芳香族ポリアミド繊維は吸水性が高く、高温処理すると吸水された水が脱着してプリント配線基板の膨れなどを生ずるので、改良する余地がある。また、芳香族ポリアミド繊維は他の樹脂との接着性の点でも性能向上が望まれている。
【0003】
脂肪族ポリケトン繊維を用いたシート状物は特許文献3で開示され、低吸水で剛性に富んだ、耐薬品性、力学的強度、寸法安定性、耐熱性、接着性などに優れた100μm〜10mmのシート状構造体材料を提供するとしているが、まだ市場に出ていない。
これらの合成繊維紙は電気絶縁性にも優れているので、電気材料、とくにコンデンサー用電極セパレーター等に使用する検討がされている。
電子機器の小型化、高集積化の進行に伴い、コンデンサーの高エネルギー密度化が要求されてきている。
コンデンサー用電極セパレーターにおいては薄膜化する際に、電極材料の突き刺しによる短絡や、加工時の強度不足による短絡が生じたり、充放電時のイオンや電位によるセパレーターの劣化対策が必要となる。これらはセパレーターの突き刺し強度や抗張力が高いものが望まれる。また電解液に耐えうる耐薬品性や組み立て加工時脱水処理に必要な耐熱性が重要となる。
【0004】
特許文献4,5、および6など、セルロース繊維を用いたコンデンサー用電極セパレーターの特許が提案され、また、市場で市販されている。しかし、セルロース繊維は吸水性が高く、有機系コンデンサーへ使用する時には高温で絶乾しなければならない。また、セルロース繊維は繊維同士を水素結合で接着しているので、コンデンサー組立時の加工強度を維持するためには厚さに限界がある。
合成繊維を用いた繊維紙からなるコンデンサー用電極セパレーターとしては、特許文献7で全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステルなどの液晶性高分子繊維をフィブリル化して湿式繊維紙とし、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性が優れていることから、電気二重層キャパシタ用セパレーターに使用することを提案している。
しかし、液晶性高分子繊維も吸水性が高く、有機系コンデンサーに組み込む際は加熱脱水して用いなければならない。
【0005】
【特許文献1】特開2005−7607号公報
【特許文献2】特開平10−37054号公報
【特許文献3】特開2001−207335号公報
【特許文献4】特開2000−3834号公報
【特許文献5】特開平11−168033号公報
【特許文献6】特開平9−129509号公報
【特許文献7】特開2002−266281号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来技術に見られる上記問題点を解決するものである。すなわち、本発明は、脂肪族ポリケトン繊維を含む繊維紙を電極セパレーターとして用いた高エネルギー密度で、内部抵抗の小さい生産性の良いコンデンサー、および、耐薬品性、耐熱性、寸法安定性、電気絶縁性に優れ、かつ、低吸水性である厚さが薄い多孔性のコンデンサー用電極セパレーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため、脂肪族ポリケトン繊維に着目して鋭意検討した結果、脂肪族ポリケトン繊維を含む繊維紙を電極セパレーターに用いた高エネルギー密度で内部抵抗の小さい生産性の良いコンデンサー、および、耐薬品性、耐熱性、寸法安定性、電気絶縁性に優れ、かつ低吸水性である厚さが薄い多孔性のコンデンサー用電極セパレーターを実現できることを見出し本発明に至ったものである。
【0008】
すなわち本発明の第1は、構成繊維の1〜99質量%が下記式(1)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリケトン繊維であるポリケトン含有繊維紙を含むコンデンサー用電極セパレーターである。
−CH−CH−CO− (1)
発明の第2は繊維紙の厚さが5〜200μmであることを特徴とする発明の第1のコンデンサー用電極セパレーターである。
発明の第3は下記で表される繊維紙の空隙率が30〜90%であることを特徴とする発明の第1または2のコンデンサー用電極セパレーターである。
空隙率={1-(繊維紙を構成する繊維の総質量/構成する繊維の密度)/(繊維紙の厚さ×面積)}×100
【0009】
発明の第4は脂肪族ポリケトン繊維の繊維長が0.5〜10mmにカットされた繊維であることを特徴とする発明の第1から3のいずれかのコンデンサー用電極セパレーターである。
発明の第5は脂肪族ポリケトン繊維の平均繊維径が0.1〜20μmであることを特徴とする発明の1から4のいずれかのコンデンサー用電極セパレーターである。
発明の第6は繊維紙を重ねて用いることを特徴とする発明の第1から5のいずれかのコンデンサー用電極セパレーターである。
発明の第7は発明の第1から6のいずれかの電極セパレーターを用いたコンデンサーである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の脂肪族ポリケトン繊維を含む繊維紙を電極セパレーターとして用いた高エネルギー密度で内部抵抗が小さく生産性の良いコンデンサー、および、高強度、高弾性率、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、寸法安定性、電気絶縁性に優れ、かつ低吸水性である非常に薄い多孔性の、脂肪族ポリケトン繊維を含むコンデンサー用電極セパレーターを提供するもので、従来に無い特徴を持ったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のコンデンサーは脂肪族ポリケトン繊維を含む繊維紙を電極セパレーターとして用いたものであり、該セパレーターの薄くて高強度であることから、該コンデンサーの高エネルギー密度化、および低内部抵抗化を実現し、併せて、高耐熱性、低吸水性により、加熱脱水が容易で高生産性を実現する特徴を持つ。
【0012】
本発明のコンデンサーは、白金箔、金箔、アルミ箔、活性炭粉末を集電体のアルミ箔上に塗布した炭素電極などを電極とし、同一種類の2つの電極間に脂肪族ポリケトン繊維紙のセパレーターを挟んで電極同士の接触を回避し、該セパレーターに電解液を含浸させて作製することができる。工業的には電極を捲回して、あるいは積層してコンパクト化し、コンデンサーのエネルギー密度(容量)を向上させているが、該セパレーターは強靭性を保ちながら薄いため、電気的内部抵抗が低く、かつエネルギー密度をより高めることができる。本発明のコンデンサーは電極の種類、および製法に限定されない。また、電解液として水系と有機系の2種類が工業的に使用されているが、電解液の種類にも限定されない。
【0013】
本発明のコンデンサー用電極セパレーターは、脂肪族ポリケトン繊維を含む繊維紙であり、脂肪族ポリケトン繊維の融点付近で急激に軟化し変形する性質を利用し、脂肪族ポリケトン繊維同士の全部または一部が熱融着していることを特徴とする。したがって、薄くてもまた多孔性であっても均一で強靭なコンデンサー用電極セパレーターを提供することができる。
【0014】
本発明のコンデンサー用電極セパレーターの厚さは5〜200μmであることが好ましい。より好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは5〜70μmである。5〜200μmにすることで通常使用している紙と同じように扱うことができ、柔軟で、加工性に富み、形状を容易に変形、裁断することができる。また、電解液の含浸性にも適し、コンデンサーとしての電気的内部抵抗を低くすることができる。5μm以上の厚さでセパレーターの強度を維持することができる。また、200μm以下の厚さで柔軟性、加工性が良く、ボタン型、積層型コンデンサーなどはもちろん、とくに捲回型コンデンサーの加工に適している。
【0015】
本発明のコンデンサー用電極セパレーターの空隙率は30〜90%であることが好ましい。
空隙率={1-(繊維紙を構成する繊維の総質量/構成する繊維の密度)/(繊維紙の厚さ×面積)}×100
より好ましくは35〜85%、さらに好ましくは40〜85%である。空隙率を30%以上とすることで電解液の浸透を容易にすることができ、また、電気的内部抵抗を低くすることができる。また、空隙率を90%以下とすることで電極セパレーターとして必要な強度を得ることができる。
【0016】
本発明のコンデンサー用電極セパレーターに使用する脂肪族ポリケトン繊維は下記式(1)で示される繰り返し単位を含む構造を有する。好ましくは下記式(1)で示される繰り返し単位が90モル%以上からなる構造を有する。より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
−CH−CH−CO− (1)
【0017】
繰り返し単位が90モル%以上であると高強度、高弾性を得ることができ、耐熱性にも優れる。また、該繊維の結晶化度は30%以上が好ましい。より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。30%以上であると高強度、高弾性を発現し、非常に優れた寸法安定性を得る。ポリケトン繊維の製法としては亜鉛塩、カルシウム塩、イソシアネート塩などを用いたポリケトン水溶液から湿式紡糸法で得たうえで、熱延伸して製造したポリケトン繊維が高強度、高弾性を有しており、好ましい。
【0018】
本発明のコンデンサー用電極セパレーターを構成する繊維に使用する脂肪族ポリケトン繊維は繊維長0.5〜10mmにカットされた短繊維であることが好ましい。繊維長0.5mm以上とすることで抄紙時の紙強度を維持できる。好ましくは1mm以上である。また、繊維長を10mm以下とすることで抄紙時の分散均一性を向上し、厚さむらを低減することができる。好ましくは7mm以下である。
本発明のコンデンサー用電極セパレーターを構成する繊維に使用する脂肪族ポリケトン繊維は均一で薄いシートを作製するために平均繊維径20μm以下であることが好ましい。より好ましくは17μm以下である。またシートを熱融着させる際の強度を保つために平均繊維径は0.1μm以上が好ましい。
【0019】
本発明のコンデンサー用電極セパレーターを構成する繊維は脂肪族ポリケトン繊維を1〜99質量%と、他の繊維を99〜1質量%混合されることが好ましい。より好ましくは脂肪族ポリケトン繊維が10〜95質量%である。該ポリケトン繊維が1質量%以上でポリケトン繊維の持つ高強度、高耐熱性の特質が現れる。また、99質量%以下で他の繊維の特質を該繊維紙に付与することができる。
【0020】
本発明に用いる他の繊維としては、天然繊維、再生天然繊維、無機繊維および/または合成繊維などを挙げることができる。たとえば、天然繊維としては綿、麻、木材などのセルロース繊維などを例示できる。再生天然繊維としてはビスコース繊維、レーヨン繊維、溶剤紡糸セルロース繊維などを挙げることができる。無機繊維としてはガラス繊維、カーボンファイバー、金属繊維などを挙げることができる。合成繊維としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。とくに、耐熱性合成繊維である全芳香族ポリアミド繊維(p-フェニレンテレフタラミド繊維やp-フェニレンジフェニールエーテルテレフタラミド繊維(以下、これらを「パラ型アラミド繊維」という))、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(以下PBO)繊維、ポリイミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維などを用いると、さらに耐熱性を上げることができる。また、他の繊維として1種類でも、あるいは複数種類組み合わせて該ポリケトン繊維と混合し、他の繊維の持つ特徴を併せ持った繊維紙を作ることができる。これら他の繊維の繊維長は該ポリケトン繊維と同様に0.5〜10mmの長さが好ましい。また、平均繊維径も0.1〜20μmが好ましい。
【0021】
本発明のコンデンサー用電極セパレーターに用いる繊維紙は湿式抄造法で作製することができる。上述のポリケトン短繊維1〜99質量%と他の繊維99〜1質量%を離解機で水に均一に分散した後、円網抄紙機、長網抄紙機、または傾斜短網抄紙機、あるいはそれらを組み合わせたコンビネーション抄紙機などで抄造し、網上に該繊維が平面状に均一に分散した紙層を形成する。その後、ドラムドライヤー、ヤンキードライヤー、熱風ドライヤーなどの乾燥機で十分乾燥して、最終的に熱プレスなどでポリケトン繊維同士の全部または一部が、またはポリケトン繊維が他の繊維と融着して紙の最終強度を発現させる。
【0022】
以上は典型的な製造方法であるが、本発明の電極セパレーターは該製造方法に限定されない。たとえば、ポリケトン繊維1〜99質量%と他の繊維99〜1質量%を混合する際は離解機で同時に混合しても、また別々に離解した後混合してもよく、何ら限定されない。また、抄造前に該ポリケトン繊維の全部または一部を叩解、破砕などの処理をしてフィブリル化し、および/または、他の繊維の全部または一部を叩解、破砕などの処理をしてフィブリル化してから混合しても、あるいはポリケトン繊維と他の繊維を混合後、同時に叩解、破砕などの処理をしてもよく、叩解、破砕などの処理によって紙層強度を増して生産スピードを上げ、生産性向上を可能にしたり、フィブリル化したμmからサブμmのポリケトン繊維および/または他の繊維の細径繊維を用いてμmからサブμmの孔径(繊維で囲まれた開口部)を均一に分布させたコンデンサー用電極セパレーターを造ることができるが、本発明は叩解、破砕などの処理によっても何ら限定されるものではない。さらに、100%ポリケトン繊維紙をあらかじめ作製し、その後、ポリケトン繊維および/または他の繊維を100%ポリケトン繊維紙の上に抄紙してもよく、あるいは、ポリケトン繊維および/または他の繊維を100%ポリケトン繊維紙の表裏両面に抄紙してもよく、またその工程順を反対に作製してもよく、製法には何ら限定されない。
【0023】
脂肪族ポリケトン繊維同士の全部または一部を熱融着させるためにはポリケトン繊維の融点温度の−40℃〜+40℃で熱プレスすることが好ましい。融点温度の−40℃以上の熱プレスでポリケトン繊維が熱融着する。また、融点温度の+40℃以下の熱プレスでは溶融、焼け付きを起こさず好ましい。熱プレス時のプレス線圧は公知の範囲で実施することができるが、厚さをコントロールするために1〜200kN/mが好ましい。
本発明のコンデンサー用電極セパレーターは熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂を含浸または塗布して強度をさらに高めたり、加工性や別の機能をコンデンサー用電極セパレーターに付与することもできる。
本発明の繊維紙を2枚以上重ねてコンデンサー用電極セパレーターに用いてもよい。
【実施例】
【0024】
本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
コンデンサー用電極セパレーターに使用した繊維の種類、形状などを表1に、コンデンサー用電極セパレーターの構成要件、および該セパレーターを用いたコンデンサーの特性測定結果を表2に示す。
【0025】
[実施例1]
平均繊維径10μm、繊維長3mmの脂肪族ポリケトン短繊維70質量%に、叩解してフィブリル化した溶剤紡糸セルロース繊維30質量%を加え、消泡剤を添加し、高速離解機で水分散し繊維分散液を調整した。この繊維分散液に粘剤を添加し、抄紙直前で真空脱気を行い、100メッシュの抄紙網を備えた円網抄紙機で抄紙し、表面温度275℃の熱プレスロールを追加した表面温度130℃のヤンキードライヤーで加熱乾燥し、厚さ50μm、空隙率70%のコンデンサー用電極セパレーターを得た。コンデンサーはテストセル内に該セパレーターを用いて炭素電極で挟み230℃、3時間の真空加熱乾燥後、真空状態で電解液を該セパレーター内に含浸させ、作製した。
【0026】
[実施例2〜13]
実施例1と同様の製造方法を用いて、表2に示す脂肪族ポリケトン繊維および他の繊維を用いたコンデンサー用電極セパレーターを得た。製造方法中の条件の異なる部分については表2に記載した。該セパレーターを用いて実施例1と同様の方法でコンデンサーを作製した。
【0027】
[比較例1]
平均繊維径12μm、繊維長3mmのパラ型アラミド繊維50質量%とPBO繊維50質量%に消泡剤を添加し、高速離解機で水分散し繊維分散液を調整した。この繊維分散液に粘剤を添加し、抄紙直前で真空脱気を行い、100メッシュの抄紙網を備えた円網抄紙機で抄紙し、上限温度350℃にした熱プレスロールを追加した表面温度130℃のヤンキードライヤーで加熱乾燥した。しかし、パラ型アラミド繊維およびPBO繊維ともに軟化温度に到達せず、繊維紙の強度は発現しなかった。
【0028】
[比較例2〜4]
実施例1と同様の製造方法を用いて、表2に示す他の繊維を組み合わせて配合したコンデンサー用電極セパレーターを得た。製造方法中の条件の異なる部分については表2に記載した。該セパレーターを用いて実施例1と同様の方法でコンデンサーを作製したが、乾燥温度が高すぎて、比較例2および4の電極セパレーターは溶融、変形を、また比較例3の電極セパレーターは炭化したので、160℃、24時間かけて乾燥した。
【0029】
実施例1〜13および比較例2〜4で作製した電極セパレーターを以下の方法で評価比較した。
厚さ:マイクロメータで測定し、5点平均値とした。
厚さむら:上記測定について
変化率(%)=(最大値−最小値)×100/平均値
○:変化率 10%未満のもの
△:変化率 10%以上20%未満のもの
×:変化率 20%以上のもの
引張強さ:定速伸張形引張試験機を用い、試験片幅15mm、試験片長100mmの試験片を伸張速度300mm/minで伸張し、破断までの最大荷重を測定し、5点平均値を引張強さ(kN/m)とした。
透気度:ガーレー式デンソメーターを用いて6.45cmのセパレーター面積を100mlの空気が通過する時間を測定し、5点平均値とした。
【0030】
また、上記により作製した電極セパレーターを用いたコンデンサー(電気二重層キャパシタ)は、三電極型セル(電極径20mmΦ,厚さ約0.5mm)を用い、電極として活性炭を用いた炭素電極(活性炭:導電剤:バインダー=10:1:1)を用い、電解液として1.8Mトリエチルメチルアンモニウム・BF4塩/プロピレンカーボネート溶液(富山薬品工業社製)を用い作製し、パワーシステム社製の充放電試験機(CDT5R02-4)を用いて、以下の充放電条件で内部抵抗、静電容量の評価を行った。
充放電条件:0.5mA/2.5Vの定電流定電圧による充電後、0.5mA/0Vの定電流で放電した。
【0031】
内部抵抗:放電初期(総放電時間の10%に相当する初期放電時間)でのIRドロップから算出し、これを電極面積当たりの抵抗値(Ω/cm)に換算した。
静電容量:エネルギー換算法すなわち、放電電力E=(1/2)CV(C:静電容量,V:放電電圧)の関係からCを算出した。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のポリケトン繊維紙を電極セパレーターとして用いたコンデンサー、および、コンデンサー用電極セパレーターは、電解型コンデンサーに向いており、とくに電極セパレーターが薄いことなどから、高容量で内部抵抗の小さい大電流の充放電が可能な電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサー等イオンを用いた湿式コンデンサーなどの用途で好適に利用できる。また、耐熱性、強度、寸法安定性のよいことなどからコンデンサーの生産性も高くすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成繊維の1〜99質量%が下記式(1)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリケトン繊維であるポリケトン含有繊維紙を含むコンデンサー用電極セパレーター。
−CH−CH−CO− (1)
【請求項2】
繊維紙の厚さが5〜200μmであることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサー用電極セパレーター。
【請求項3】
下記で表される繊維紙の空隙率が30〜90%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンデンサー用電極セパレーター。
空隙率={1-(繊維紙を構成する繊維の総質量/構成する繊維の密度)/(繊維紙の厚さ×面積)}×100
【請求項4】
脂肪族ポリケトン繊維の繊維長が0.5〜10mmにカットされた繊維であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンデンサー用電極セパレーター。
【請求項5】
脂肪族ポリケトン繊維の平均繊維径が0.1〜20μmであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンデンサー用電極セパレーター。
【請求項6】
繊維紙を重ねて用いることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項記載のコンデンサー用電極セパレーター。
【請求項7】
請求項1から6記載の電極セパレーターを用いたコンデンサー。

【公開番号】特開2007−13010(P2007−13010A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194312(P2005−194312)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】