説明

コンデンサ及びその製造方法

【課題】誘電体層の腐食が防止されたコンデンサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のコンデンサ10は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と、陽極11の表面が酸化されて形成された誘電体層12と、誘電体層12上に形成され、固体電解質層13aを具備する陰極13とを有し、陰極13の固体電解質層13aが、π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含み、25℃におけるpHが3〜13の導電性高分子溶液が塗布されて形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサなどコンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のデジタル化に伴い、電子機器に用いられるコンデンサは高周波領域におけるインピーダンスを低下させることが要求されている。従来から、この要求に対応すべく、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁金属の酸化皮膜を誘電体とし、この表面にπ共役系導電性高分子を形成して陰極とした、所謂、機能性コンデンサが使用されている。
【0003】
この機能性コンデンサの構造は、特許文献1に示されるように、弁金属多孔質体からなる陽極と、陽極の表面を酸化して形成した誘電体層と、誘電体層に固体電解質層、カーボン層、銀層を積層した陰極とを有するものが一般的であり、コンデンサの固体電解質層としては、π共役系導電性高分子が用いられている。
【0004】
π共役系導電性高分子の膜の形成法としては、電解重合法と化学酸化重合法とが広く知られている。
特許文献2等に記載されているような電解重合法では、弁金属多孔質体表面にマンガン酸化物からなる導電層をあらかじめ形成した後にこれを電極として電解重合する。したがって、導電層を形成する分、煩雑になる上に、マンガン酸化物は導電性が低く、高導電性のπ共役系導電性高分子を使用する効果が薄れるという問題があった。
【0005】
また、特許文献3等に記載されているような化学酸化重合法では、重合時間が長く、また、膜の厚みを確保するために繰り返し重合しなければならず、コンデンサの生産効率が低かった上に、電解重合に比べて導電性も低かった。さらに、化学酸化重合法における溶液は酸化剤によってかなりの酸性を示すため、酸化皮膜である誘電体層を腐食させており、等価直列抵抗の増加を招いていた。また、巻回型アルミ電解コンデンサを製造しようとした場合、従来から使用されていたセルロースを原料としたセパレータを使用できないという問題があった。これはセパレータ中のセルロースが化学酸化重合を阻害するためと考えられる。
【0006】
電解重合法および化学酸化重合法以外のπ共役系導電性高分子の膜の形成法としては、スルホ基、カルボキシル基等を持つポリアニオンを共存させながらアニリンを化学酸化重合して水溶性のポリアニリンを調製し、そのポリアニリン水溶液を塗布、乾燥して塗膜を形成する方法が提案されている(特許文献4参照)。
また、π共役系導電性高分子とポリアニオンと特定の有機化合物を含む溶液を塗布、乾燥して導電性の塗膜を形成する方法が提案されている(特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2003−37024号公報
【特許文献2】特開昭63−158829号公報
【特許文献3】特開昭63−173313号公報
【特許文献4】特開平7−105718号公報
【特許文献5】特許第2916098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献4,5に記載の方法によれば、簡便に高導電性(高電気伝導度)の膜を形成できるものの、誘電体層を腐食させるという問題は解決されていない。そのため、コンデンサの等価直列抵抗を低くすることができなかった。
本発明は、誘電体層の腐食が防止されており、等価直列抵抗の低いコンデンサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンデンサは、弁金属の多孔質体からなる陽極と、該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成され、固体電解質層を具備する陰極とを有するコンデンサにおいて、
陰極の固体電解質層が、π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含み、25℃におけるpHが3〜13に調整された導電性高分子溶液が塗布されて形成されたものであることを特徴とする。
本発明のコンデンサにおいては、導電性高分子溶液にアルカリが添加されてpHが前記範囲に調整されていることが好ましい。
その場合、アルカリが窒素含有芳香族性環式化合物であることが好ましい。
また、本発明のコンデンサにおいては、導電性高分子溶液が、分子内に水酸基、グリシジル基、アミノ基のいずれか1種以上を有する化合物を含有することであることが好ましい。
本発明の弁コンデンサの製造方法は、金属の多孔質体からなる陽極と該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層とを有するコンデンサ中間体における誘電体層側表面に、π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含み、25℃におけるpHを3〜13に調整した導電性高分子溶液を塗布し、乾燥する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンデンサは、誘電体層の腐食が防止されているため、等価直列抵抗が低い。さらに、本発明のコンデンサは、誘電体層の腐食が防止されているため、漏れ電流が小さく、また、静電容量が高い。
本発明のコンデンサの製造方法によれば、誘電体層の腐食を防止でき、コンデンサの等価直列抵抗を低くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のコンデンサ及びその製造方法の一実施形態例について説明する。
図1は、本実施形態例のコンデンサの構成を示す図である。このコンデンサ10は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と、陽極11の表面が酸化されて形成された誘電体層12と、誘電体層12上に形成された陰極13とを有して概略構成されている。
【0011】
<陽極>
陽極11をなす弁金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、タンタル、ニオブが好適である。
陽極11の具体例としては、アルミニウム箔をエッチングして表面積を増加させた後、その表面を酸化処理したものや、タンタル粒子やニオブ粒子の焼結体表面を酸化処理してペレットにしたものが挙げられる。このように処理されたものは表面に凹凸が形成されている。
【0012】
<誘電体層>
誘電体層12は、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液などの電解液中にて、金属体の陽極11の表面を陽極酸化することで形成されたものである。よって、図1に示すように、陽極11と同様に誘電体層12の表面にも凹凸が形成されている。
【0013】
<陰極>
陰極13は、固体電解質層13aと、固体電解質層13a上に形成されたアルミ箔などの陰極金属層13bとを具備するものであり、固体電解質層13aは、π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含有する導電性高分子溶液が塗布されて形成されたものである。
【0014】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0015】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0016】
中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性が向上する点から、より好ましい。
また、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)のようなアルキル置換化合物は溶媒溶解性や、疎水性樹脂を添加した場合の相溶性および分散性がより向上することからより好ましい。また、アルキル置換化合物のアルキル基の中では、導電性の低下を防ぐことから、メチル基が好ましい。
【0017】
上記π共役系導電性高分子は、溶媒中、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と後述のアニオン基を有する高分子の存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、N−メチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0018】
π共役系導電性高分子の製造で使用する溶媒としては特に制限されず、前記前駆体モノマーを溶解又は分散しうる溶媒であり、酸化剤の酸化力を維持させることができるものであればよい。例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の溶媒との混合物としてもよい。
【0019】
酸化剤としては、前記前駆体モノマーを酸化させてπ共役系導電性高分子を得ることができるものであればよく、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)、ぺルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0020】
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0021】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。ポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0022】
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーである。ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる1種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
これらの中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
【0023】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアニン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0024】
ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシル基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エステル基が好ましい。
アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシル基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶剤への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。
上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基が好ましい。
【0025】
前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
前記ヒドロキシル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したヒドロキシル基又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシル基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。ヒドロキシル基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。これらの中では樹脂への相溶及び有機溶剤への溶解性から、主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したヒドロキシル基がより好ましい。
前記アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアミノ基又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。アミノ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したフェノール基又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。フェノール基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記エステル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアルキル系エステル基、芳香族系エステル基、他の官能基を介在してなるアルキル系エステル基又は芳香族系エステル基が挙げられる。
シアノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したシアノ基等を挙げることができる。
【0026】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシル基がより好ましい。
【0027】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、π共役系導電性高分子の熱分解を緩和することができる。
【0028】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0029】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0030】
アニオン基含有重合性モノマーは、モノマーの一部が一置換硫酸エステル基、カルボキシル基、スルホ基等で置換されたものであり、例えば、置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のメタクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリルアミドスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のビニル芳香族スルホン酸化合物が挙げられる。
具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリル酸エチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アクリル酸プロピルスルホン酸(CHCH-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、アリル酸エチルスルホン酸(CHCHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C64-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C108-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸エチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸プロピルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸フェニレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C64-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸ナフタレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C108-SO3H)及びその塩類、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらを2種以上含む共重合体であってもよい。
【0031】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
これらアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合することで溶媒溶解性をコントロールすることができる。
【0032】
導電性高分子溶液における上記π共役系導電性高分子とポリアニオンとの割合は、ポリアニオン100質量部に対してπ共役系導電性高分子1〜1000質量部であることが好ましい。π共役系導電性高分子が1質量部未満であると、導電性が不足する傾向にあり、1000質量部を超えると溶媒溶解性が不足する傾向にある。
【0033】
(ドーパント)
導電性高分子溶液において、ポリアニオンはπ共役系導電性高分子のドーパントとして機能するが、導電性高分子溶液にはポリアニオン以外のドーパント(以下、他のドーパントという。)が含まれていてもよい。
他のドーパントとしては、π共役系導電性高分子を酸化還元させることができればドナー性のものであってもよく、アクセプタ性のものであってもよい。
【0034】
[ドナー性ドーパント]
ドナー性ドーパントとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン化合物等が挙げられる。
【0035】
[アクセプタ性ドーパント]
アクセプタ性ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレン等を使用できる。
さらに、ハロゲン化合物としては、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br2)、ヨウ素(I)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等が挙げられる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0036】
プロトン酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。さらに、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。
【0037】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシル基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
【0038】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を一つ又は二つ以上含むもの、又は、スルホ基を含む高分子を使用できる。
スルホ基を一つ含むものとして、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキチルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、アントラキノンスルホン酸、ピレンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0039】
スルホ基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオ−シアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0040】
(溶媒)
導電性高分子溶液に含まれる溶媒としては水及び/又は有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては特に限定されず、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の溶媒との混合物としてもよい。
上記有機溶剤は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンと相互作用して、固体電解質の電気伝導度をより高める効果を奏するため、導電性高分子溶液中に含まれることが好ましい。
導電性高分子溶液に含まれる溶媒は、ポリアニオン又はπ共役系導電性高分子を製造する際に用いた溶媒をそのまま利用してもよいし、あらたに添加してもよい。
【0041】
上記有機溶剤の中でも、ポリアニオンが水溶性である場合が多いことから、水と混合できる溶媒が好ましい。さらに、π共役系導電性高分子及びポリアニオンとより相互作用しやすく、固定電解質層の電気伝導度がより高くなることから、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の極性溶媒、多価アルコール類、鎖状エーテル類が好ましい。
【0042】
(導電性高分子溶液のpH)
導電性高分子溶液は、25℃におけるpHが3〜13、好ましくは5〜11になるように調整されている。pHが3未満であると、酸性度が強すぎて、誘電体層12及び陰極金属層13bの腐食を防止できず、13を超えるとポリアニオンが脱ドープして、固体電解質層13aの導電性が不足する。
pHを調整する方法としては、例えば、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体の水溶液(以下、複合体水溶液という。)にアルカリを添加して酸と塩とを形成する方法、ポリアニオンの酸基をエステル化する方法、酸基をアミド化する方法などが挙げられる。
アルカリを添加して酸と、塩、エステル、アミドを形成することができれば、アルカリ処理の方法や手順としては特に限定されない。他の添加剤を添加しない場合には、アルカリを導電性高分子溶液中に添加するだけで容易にpHを調整できる。
他の添加剤を添加する場合には、他の添加剤を添加してからアルカリによりpHを調整する方法、アルカリによりpHを調整してから他の添加剤を添加する方法、アルカリによるpH調整と他の添加剤の添加を同時に行う方法などを適用できる。
ここで、他の添加剤を添加してからpHを調整する方法では、高い精度でpHを調整することができ、所定のpHに容易に調整できる。
アルカリを添加してから他の添加剤を添加する方法では、pH調整によって変動した導電性高分子の電気伝導度を他の添加剤を添加することによって調整できるため、導電性を容易に調整できる。
アルカリによるpH調整と他の添加剤の添加を同時に行う方法では、作業を簡便にできる。
【0043】
アルカリを添加する場合のアルカリとしては特に限定されず、公知の無機アルカリや有機アルカリを使用できる。無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどが挙げられる。また、有機アルカリとしては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミンのような脂肪族アミン、アニリン、ベンジルアミン、ピロール、イミダゾール、ピリジンのような芳香族アミンもしくはこれらの誘導体、N−メチル−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の窒素含有化合物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、カルシウムアルコキシド等の金属アルコキシド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
これらの中でも、弱塩基の脂肪族アミン、芳香族アミン、金属アルコキシドが好ましい。
【0044】
さらに、有機アルカリとして、窒素含有芳香族性環式化合物を好適に用いることができる。窒素含有芳香族性環式化合物は、ポリアニオンの脱ドープを防止できるだけでなく、導電性を向上させることもできる。
ここで、窒素含有芳香族性環式化合物とは、少なくとも1個以上の窒素原子を含む芳香族性環を有し、芳香族性環中の窒素原子が芳香性環中の他の原子と共役関係を持つものである。共役関係となるためには、窒素原子と他の原子とが不飽和結合を形成している。あるいは、窒素原子が直接的に他の原子と不飽和結合を形成していなくても、不飽和結合を形成している他の原子に隣接していればよい。窒素原子上に存在している非共有電子対が、他の原子同士で形成されている不飽和結合と擬似的な共役関係を構成できるからである。
窒素含有芳香族性環式化合物においては、他の原子と共役関係を有する窒素原子と、不飽和結合を形成している他の原子に隣接している窒素原子を共に有することが好ましい。
【0045】
このような窒素含有芳香族性環式化合物としては、例えば、一つの窒素原子を含有するピリジン類及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、ピラジン類及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体が好ましい。
また、窒素含有芳香族性環式化合物は、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシル基、カルボニル基等の置換基が環に導入されたものでもよいし、導入されていないものでもよい。また、環は多環であってもよい。
【0046】
置換基のうち、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
ヒドロキシル基としては、ヒドロキシ、メチレンヒドロキシ、エチレンヒドロキシ、トリメチレンヒドロキシ、テトラメチレンヒドロキシ、ペンタメチレンヒドロキシ、ヘキサメチレンヒドロキシ、ヘプタメチレンヒドロキシ、プロピレンヒドロキシ、ブチレンヒドロキシ、エチルメチレンヒドロキシ等のアルキレンヒドロキシル基、プロペニレンヒドロキシ、ブテニレンヒドロキシ、ペンテニレンヒドロキシ等のアルケニレンヒドロキシル基が挙げられる。
カルボキシル基としては、カルボキシ、メチレンカルボキシ、エチレンカルボキシ、トリメチレンカルボキシ、プロピレンカルボキシ、テトラメチレンカルボキシ、ペンタメチレンカルボキシ、ヘキサメチレンカルボキシ、ヘプタメチレカルボキシ、エチルメチレンカルボキシ、フェニルエチレンカルボキシ等のアルキレンカルボキシ、イソプレンカルボキシ、プロペニレンカルボキシ、ブテニレンカルボキシ、ペンテニレンカルボキシ等のアルケニレンカルボキシル基が挙げられる。
【0047】
シアノ基としては、シアノ、メチレンシアノ、エチレンシアノ、トリメチレンシアノ、テトラメチレンシアノ、ペンタメチレンシアノ、ヘキサメチレンシアノ、ヘプタメチレンシアノ、プロピレンシアノ、ブチレンシアノ、エチルメチレンシアノ等のアルキレンシアノ基、プロペニレンシアノ、ブテニレンシアノ、ペンテニレンシアノ等のアルケニレンシアノ基が挙げられる。
フェノール基としては、フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、ブチルフェノール等のアルキルフェノール基、メチレンフェノール、エチレンフェノール、トリメチレンフェノール、テトラメチレンフェノール、ペンタメチレンフェノール、ヘキサメチレンフェノール等のアルキレンフェノール基等が挙げられる。
フェニル基としては、フェニル、メチルフェニル、ブチルフェニル、オクチルフェニル、ジメチルフェニル、等のアルキルフェニル基と、メチレンフェニル、エチレンフェニル、トリメチレンフェニル、テトラメチレンフェニル、ペンタメチレンフェニル、ヘキサメチレンフェニル、ヘプタメチレンフェニル等のアルキレンフェニル基と、プロペニレンフェニル、ブテニレンフェニル、ペンテニレンフェニル等のアルケニレンフェニル等が挙げられる。
アルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、フェノキシ等が挙げられる。
【0048】
ピリジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、2,6−ピリジン−ジカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,6−ジヒドロキシピリジン、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0049】
イミダゾール類及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0050】
ピリミジン類及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0051】
ピラジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0052】
トリアジン類及びその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0053】
窒素含有芳香族性環式化合物における窒素原子には非共有電子対が存在しているため、窒素原子上には置換基又はプロトンが配位又は結合されやすい。窒素原子上に置換基又はプロトンが配位又は結合された場合には、窒素原子上にカチオン電荷を帯びる傾向がある。ここで、窒素原子と他の原子とは共役関係を有しているため、窒素原子上に置換基又はプロトンが配位又は結合されたことによって生じたカチオン電荷は窒素含有芳香族性環中に拡散されて、安定した形で存在するようになる。
このようなことから、窒素含有芳香族性環式化合物は、窒素原子に置換基が導入されて窒素含有芳香族性環式化合物カチオンを形成していてもよい。さらに、そのカチオンとアニオンとが組み合わされて塩が形成されていてもよい。塩であっても、カチオンでない窒素含有芳香族性環式化合物と同様の効果を発揮する。
【0054】
窒素含有芳香族性環式化合物の窒素原子に導入される置換基としては、水素、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシル基、カルボニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基と、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
ヒドロキシル基としては、ヒドロキシ、メチレンヒドロキシ、エチレンヒドロキシ、トリメチレンヒドロキシ、テトラメチレンヒドロキシ、ペンタメチレンヒドロキシ、ヘキサメチレンヒドロキシ、ヘプタメチレンヒドロキシ、プロピレンヒドロキシ、ブチレンヒドロキシ、エチルメチレンヒドロキシ等のアルキレンヒドロキシル基、プロペニレンヒドロキシ、ブテニレンヒドロキシ、ペンテニレンヒドロキシ等のアルケニレンヒドロキシル基が挙げられる。
カルボキシル基としては、カルボキシ、メチレンカルボキシ、エチレンカルボキシ、トリメチレンカルボキシ、プロピレンカルボキシ、テトラメチレンカルボキシ、ペンタメチレンカルボキシ、ヘキサメチレンカルボキシ、ヘプタメチレンカルボキシ、エチルメチレンカルボキシ、フェニルエチレンカルボキシ等のアルキレンカルボキシル基、イソプレンカルボキシ、プロペニレンカルボキシ、ブテニレンカルボキシ、ペンテニレンカルボキシ等のアルケニレンカルボキシル基が挙げられる。
【0055】
シアノ基としては、シアノ、メチレンシアノ、エチレンシアノ、トリメチレンシアノ、テトラメチレンシアノ、ペンタメチレンシアノ、ヘキサメチレンシアノ、ヘプタメチレンシアノ、プロピレンシアノ、ブチレンシアノ、エチルメチレンシアノ等のアルキレンシアノ基と、プロペニレンシアノ、ブテニレンシアノ、ペンテニレンシアノ等のアルケニレンシアノ基が挙げられる。
フェノール基としては、フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、ブチルフェノール等のアルキルフェノール基と、メチレンフェノール、エチレンフェノール、トリメチレンフェノール、テトラメチレンフェノール、ペンタメチレンフェノール、ヘキサメチレンフェノール等のアルキレンフェノール基等が挙げられる。
フェニル基としては、フェニル、メチルフェニル、ブチルフェニル、オクチルフェニル、ジメチルフェニル等のアルキルフェニル基、メチレンフェニル、エチレンフェニル、トリメチレンフェニル、テトラメチレンフェニル、ペンタメチレンフェニル、ヘキサメチレンフェニル、ヘプタメチレンフェニル等のアルキレンフェニル基、プロペニレンフェニル、ブテニレンフェニル、ペンテニレンフェニル等のアルケニレンフェニル等が挙げられる。
アルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、フェノキシ等が挙げられる。
【0056】
このようなアルカリを導電性高分子溶液に含有させた場合には、導電性高分子溶液の塗布によって形成される固体電解質層13aの電気伝導度を向上させることができる。
【0057】
コンデンサ10を電気回路中で使用する際には、充分に低い等価直列抵抗(ESR)が要求される。コンデンサのESRは、固体電解質層13aの電気伝導度、電極占有面積、固体電解質層13aの緻密性等の様々な要因に支配されることが多い。特に固体電解質層13aの電気伝導度はコンデンサ10のESRに大きく影響を与え、コンデンサ10のESRを低くするためには、固体電解質層13aの電気伝導度が高いことが少なくとも必要である。このことから、固体電解質層13aの電気伝導度は1S/cm以上であることが好ましく、10S/cm以上であることがより好ましく、50S/cm以上であることが特に好ましい。
【0058】
固体電解質層13aの電気伝導度を高くする(1S/cm以上にする)ためには、導電性高分子溶液に、アルカリを添加するアルカリ処理を施しておく方法、分子内に水酸基、グリシジル基、アミノ基のいずれか1種以上を有する化合物を添加する方法が挙げられる。また、固体電解質層13aの電気伝導度を高くする方法としては、導電性高分子溶液に上記有機溶剤を含有させる方法を採ることもできる。
【0059】
分子内に水酸基を有する化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、トリクロロエタノール、トリフルオロエタノール、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の脂肪族アルコール類、ベンジルアルコール、フェノール、ヒドロキノン、ピロガロール、レゾルシノール、ピロカテコール等の芳香族アルコール類やフェノール性水酸基含有化合物、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類などが挙げられる。分子内に水酸基を有する化合物を添加した場合には、酸基をエステル化できる。
分子内にグリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、ビスフェノールA、ジグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル等のグリシジル化合物などが挙げられる。分子内にグリシジル基を有する化合物を添加した場合にも、酸基をエステル化できる。
また、アミノ基を有する化合物としては、例えば、前記アミノアルコール類、エチルアミン、アニリン、ベンジルアミン等のアミン化合物などが挙げられる。分子内にアミノ基を有する化合物を添加した場合には、酸基をアミド化できる。
【0060】
これらのうち、π共役系導電性高分子の導電性をより向上させることができることから、脂肪族アルコールまたはフェノール性水酸基含有化合物が好ましい。さらに、フェノール性水酸基含有化合物は、酸化防止機能を有するため、耐熱性および長期安定性を向上させることもできるため、特に好ましい。また、ヒドロキシエチルアクリルアミドやヒドロキシエチルアクリレートのようなアクリル基を有する化合物は、光または開始剤を併用することにより、π共役系導電性高分子を架橋させることができ、熱特性、力学特性を向上させることができる点で好ましい。
【0061】
以上説明したコンデンサ10は、陰極13の固体電解質層13aがπ共役系導電性高分子とドーパントと窒素含有芳香族性環式化合物とを含み、pHが3〜13に調整された導電性高分子溶液が塗布されて形成されたものである。すなわち、固体電解質層13aは、酸性度が弱められた導電性高分子溶液から形成されているから、誘電体層12の腐食を防止でき、等価直列抵抗を小さくできる。また、導電性高分子溶液にアルカリ処理が施されていれば、固体電解質層13aの電気伝導度が高くなるため、等価直列抵抗をより高くできる。
また、コンデンサ10は、上記導電性高分子溶液により固体電解質層13aが形成されており、誘電体層の腐食が防止されているため、漏れ電流が小さく、また、静電容量が高い。
【0062】
(コンデンサの製造方法)
次に、本発明のコンデンサの製造方法について説明する。
本発明のコンデンサの製造方法では、弁金属の多孔質体からなる陽極と陽極の表面が酸化されて形成された酸化被膜の誘電体層とを有するコンデンサ中間体の誘電体層側表面に、pHを3〜13に調整した前記導電性高分子溶液を塗布、固体電解質層を形成する。
導電性高分子溶液の塗布方法としては、例えば、コーティング、浸漬、スプレーなどの公知の手法が挙げられる。乾燥方法としては、熱風乾燥など公知の手法が挙げられる。
【0063】
固体電解質層を形成した後には、必要に応じて電解液を浸透させ、次いで、カーボンペースト、銀ペーストを塗布して陰極を形成できる。また、セパレータにカーボンペーストあるいは銀ペーストを含浸させて陰極を形成することもできる。
セパレータとしては、セルロース繊維、ガラス繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの単一または混合不織布、これらを炭化した炭化不織布などが用いられる。
【0064】
上述したコンデンサの製造方法は、25℃におけるpHを3〜13に調整した導電性高分子溶液を誘電体層表面に塗布して固体電解質層を形成するから、誘電体層の腐食を防止できる。その結果、コンデンサの等価直列抵抗を小さくすることができる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
(1)導電性高分子溶液の調製
14.2g(0.1mol)の3,4−エチレンジオキシチオフェンと、27.5g(0.15mol)のポリスチレンスルホン酸(分子量;約150000)を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムと8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とを添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液を透析して、未反応モノマー、酸化剤を除去して約1.5質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液を得た。そして、この溶液100mlに2.79gのイミダゾールを溶解させて、pH8.1の導電性高分子溶液を得た。なお、pHの測定は、25℃で行った(以降の例も同様である。)。
π共役系導電性高分子の性能を評価するために、得られた導電性高分子溶液をガラス上に塗布し、120℃の熱風乾燥機中で乾燥させて厚さ2μmの導電膜を形成して、ロレスタ(ダイアインスツルメンツ製)により電気伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
(2)コンデンサの製造
エッチドアルミ箔(陽極泊)に陽極リード端子を接続した後、アジピン酸アンモニウム10質量%水溶液中で化成(酸化処理)して、アルミ箔表面に誘電体層を形成してコンデンサ中間体を得た。
次に、コンデンサ中間体の陽極箔に、陰極リード端子を溶接させた対向アルミ陰極箔を、セルロース製のセパレータを介して積層し、これを巻き取ってコンデンサ素子とした。
このコンデンサ素子を(1)で調製した導電性高分子溶液に減圧下で浸漬した後、150℃の熱風乾燥機で10分間乾燥する工程を5回繰り返してコンデンサ中間体の誘電体層側表面に固体電解質層を形成させた。
次いで、アルミニウム製のケースに、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子と、封口ゴムで封止して、コンデンサを作製した。
作製したコンデンサについて、LCZメータ2345(エヌエフ回路設計ブロック社製)を用いて、120Hzでの静電容量、100kHzでの等価直列抵抗(ESR)の初期値、150℃、1000時間後のESRを測定した。
【0068】
(実施例2)
実施例1において、約1.5質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液にイミダゾール2.79gを添加する代わりに、ヒドロキシエチルアクリレート2.38gを添加してpH5.4の導電性高分子溶液を得た。そして、実施例1と同様にしてコンデンサを作製した。
作製したコンデンサについて、120Hzでの静電容量、100kHzでのESRの初期値、150℃1000時間後のESRを測定した。それらの測定結果を表1に示す。
【0069】
(実施例3)
実施例1において、約1.5質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液にイミダゾール2.79gを添加する代わりに、ジエチルアミン2.52gを添加し、100℃で12時間還流してpH12.4の導電性高分子溶液を得た。そして、実施例1と同様にしてコンデンサを作製した。
作製したコンデンサについて、120Hzでの静電容量、100kHzでのESRの初期値、150℃1000時間後のESRを測定した。それらの測定結果を表1に示す。
【0070】
(比較例1)
実施例1の導電性高分子溶液の調製において、イミダゾールを添加しなかった以外は実施例1と同様にしてコンデンサを作製した。なお、この場合の導電性高分子溶液のpHは1.2であった。
作製したコンデンサについて、120Hzでの静電容量、導電膜の電気伝導度、100kHzでのESRの初期値、150℃、1000時間後のESRを測定した。それらの測定結果を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
実施例1におけるポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液に、10gのN−メチル−2−ピロリドンを添加した後、アンモニア水を添加して、pH7.5の導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液について実施例1と同様にして電気伝導度を測定し、また、得られた導電性高分子溶液を用いてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0072】
(実施例5)
実施例1におけるポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液に、10gのジメチルスルホキシドを添加した後、アンモニア水を添加して、pH7.5の導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液について実施例1と同様にして電気伝導度を測定し、また、得られた導電性高分子溶液を用いてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
(実施例6)
実施例1におけるポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液に、10gのN−ビニルアセトアミドを添加した後、アンモニア水を添加して、pH7.5の導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液について実施例1と同様にして電気伝導度を測定し、また、得られた導電性高分子溶液を用いてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0074】
(実施例7)
実施例1におけるポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液に、6gのエチレングリコールを添加した後、アンモニア水を添加して、pH7.5の導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液について実施例1と同様にして電気伝導度を測定し、また、得られた導電性高分子溶液を用いてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0075】
(実施例8)
実施例1におけるポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液に、6gのグリセリンを添加した後、アンモニア水を添加して、pH7.5の導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液について実施例1と同様にして電気伝導度を測定し、また、得られた導電性高分子溶液を用いてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0076】
(実施例9)
実施例1におけるポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液に、10gのクレゾールを添加した後、アンモニア水を添加して、pH7.5の導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液について実施例1と同様にして電気伝導度を測定し、また、得られた導電性高分子溶液を用いてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0077】
(実施例10)
実施例5において、アンモニア水を添加する代わりに、イミダゾールを添加して、pH7.5の導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液について実施例1と同様にして電気伝導度を測定し、また、得られた導電性高分子溶液を用いてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0078】
(実施例11)
実施例5において、アンモニア水を添加する代わりに、ジエチルアミンを添加して、pH7.5の導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液について実施例1と同様にして電気伝導度を測定し、また、得られた導電性高分子溶液を用いてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0079】
(実施例12)
実施例1におけるポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液にアンモニア水を添加して、pH7.4の溶液を得た。この溶液に10gのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を添加して、pH6.9の導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液について実施例1と同様にして電気伝導度を測定し、また、得られた導電性高分子溶液を用いてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0080】
(実施例13)
実施例12において、4gの20%アンモニア水とN,N−ジメチルアセトアミドを混合して混合溶液を得た。この混合溶液をポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液に添加して、pH6.3の導電性高分子溶液を得た。
得られた導電性高分子溶液について実施例1と同様にして電気伝導度を測定し、また、得られた導電性高分子溶液を用いてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0081】
(比較例2〜7)
実施例4〜9の導電性高分子溶液を調製する際にアンモニア水を添加しなかったこと以外はそれぞれ実施例4〜9と同様にして比較例2〜7のコンデンサを得た。そして、これらコンデンサを実施例1と同様にして評価した。
【0082】
pHが3〜13に調整された導電性高分子溶液から形成された固体電解質層を陰極に有する実施例1〜13のコンデンサは、誘電体層の腐食が防がれており、また、固体電解質の電気伝導度が高いため、ESRが低かった。特に、150℃、1000時間後のESRが低かった。また、静電容量も高かった。
これに対し、pHが3〜13に調整されていない導電性高分子溶液から形成された固体電解質層を陰極に有する比較例1〜7のコンデンサは、誘電体層の腐食を防ぐことができず、ESRを低くすることができなかった。なお、比較例2〜7のコンデンサでは、固体電解質層形成の際に、有機溶剤を含む導電性高分子溶液を用いたため、電気伝導度は高かったが、誘電体層の腐食を防止できなかったため、ESRを高くすることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明のコンデンサにおける一実施形態例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
10 コンデンサ
11 陽極
12 誘電体層
13 陰極
13a 固体電解質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁金属の多孔質体からなる陽極と、該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成され、固体電解質層を具備する陰極とを有するコンデンサにおいて、
陰極の固体電解質層が、π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含み、25℃におけるpHが3〜13に調整された導電性高分子溶液が塗布されて形成されたものであることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
導電性高分子溶液にアルカリが添加されてpHが前記範囲に調整されていることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
アルカリが窒素含有芳香族性環式化合物であることを特徴とする請求項2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
導電性高分子溶液が、分子内に水酸基、グリシジル基、アミノ基のいずれか1種以上を有する化合物を含有することであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項5】
弁金属の多孔質体からなる陽極と該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層とを有するコンデンサ中間体における誘電体層側表面に、π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含み、25℃におけるpHを3〜13に調整した導電性高分子溶液を塗布し、乾燥する工程を有することを特徴とするコンデンサの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−287182(P2006−287182A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340010(P2005−340010)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)