説明

コンデンサ及びその製造方法

【課題】固体電解質層の導電性に優れ、ESRが小さいコンデンサを提供する。
【解決手段】弁金属の多孔質体からなる陽極11と、陽極11表面が酸化されて形成された誘電体層12と、誘電体層12表面側に形成された陰極13とを具備し、陰極13が、π共役系導電性高分子とポリアニオンと下記一般式(1)で表される化合物とを含む固体電解質層13aを有する。(一般式(1)におけるnは0〜5の整数である。Rは水素原子または任意の置換基である。)
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサなどのコンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のデジタル化に伴い、電子機器に用いられるコンデンサは高周波領域におけるインピーダンス(等価直列抵抗、ESRということもある。)を低下させることが要求されている。従来から、この要求に対応すべく、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁金属の酸化皮膜を誘電体とし、この表面にπ共役系導電性高分子を形成して陰極とした、所謂、機能性コンデンサが使用されている。
【0003】
この機能性コンデンサの構造は、特許文献1に示されるように、弁金属多孔質体からなる陽極と、陽極の表面を酸化して形成した誘電体層と、誘電体層に固体電解質層、カーボン層、銀層を積層した陰極とを有するものが一般的である。コンデンサの固体電解質層は、ピロール、チオフェンなどのπ共役系導電性高分子から構成された層であり、多孔質体の内部にまで侵入し、より大面積の誘電体層と接触して高容量を引き出すと共に、誘電体層の欠損部を修復して漏れ電流の発生を防止する役割を果たしている。
π共役系導電性高分子の形成法としては、電解重合法(特許文献2参照)と化学酸化重合法(特許文献3参照)とが広く知られている。
しかし、電解重合法では、弁金属多孔質体表面にマンガン酸化物からなる導電層をあらかじめ形成しておく必要があり、非常に煩雑である上に、マンガン酸化物は導電性が低く、高導電性のπ共役系導電性高分子を使用する効果が薄れるという問題があった。
また、化学酸化重合法では、重合時間が長く、また、厚みを確保するために繰り返し重合しなければならず、コンデンサの生産効率が低かった上に、導電性も低かった。
特許文献4では、化学酸化重合法の条件を高度にコントロールして、固体電解質層の導電性を高めることが提案されている。しかし、その製造方法では、煩雑な化学酸化重合法をより複雑にすることが多く、工程の簡略化、低コスト化を実現できなかった。
【0004】
そこで、電解重合法や化学酸化重合法で誘電体層上にπ共役系導電性高分子を形成しない方法が提案されている(特許文献5参照)。特許文献5には、スルホ基、カルボキシル基等を持つ高分子酸を共存させながらアニリンを重合して水溶性のポリアニリンを調製し、そのポリアニリン水溶液を誘電体層上に塗布、乾燥する方法が記載されている。しかし、この製造方法は簡便であるものの、π共役系導電性高分子以外に高分子酸を含むために導電性が低かった。したがって、ESRの小さいコンデンサを得ることは困難であった。
【特許文献1】特開2003−37024号公報
【特許文献2】特開昭63−158829号公報
【特許文献3】特開昭63−173313号公報
【特許文献4】特開平11−74157号公報
【特許文献5】特開平7−105718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、固体電解質層の導電性に優れ、ESRが小さいコンデンサを提供することを目的とする。また、ESRが小さいコンデンサを簡便に製造できるコンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 弁金属の多孔質体からなる陽極と、陽極表面が酸化されて形成された誘電体層と、誘電体層表面側に形成された陰極とを具備するコンデンサにおいて、
陰極が、π共役系導電性高分子とポリアニオンと下記一般式(1)で表される化合物とを含む固体電解質層を有することを特徴とするコンデンサ。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(1)におけるnは0〜5の整数である。Rは水素原子または任意の置換基である。)
【0009】
[2] 一般式(1)におけるRが、一般式(2)で表される置換基であり、一般式(1)におけるnと一般式(2)におけるmの合計が2以上であることを特徴とする[1]に記載のコンデンサ。
【0010】
【化2】

【0011】
(一般式(2)におけるmは0〜5の整数である。)
【0012】
[3] 一般式(1)におけるRが、一般式(3)で表される置換基であることを特徴とする[1]に記載のコンデンサ。
NR− (3)
(一般式(3)におけるR、Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシアルキル基のいずれかを表す。)
【0013】
[4] 弁金属の多孔質体からなる陽極の表面を酸化して形成した誘電体層表面に、π共役系導電性高分子とポリアニオンと下記化学式(1)で表される化合物と溶媒とを含有する導電性高分子溶液を塗布する工程と、
誘電体層表面に塗布した導電性高分子溶液を乾燥させる工程とを有することを特徴とするコンデンサの製造方法。
【0014】
【化3】

【0015】
(一般式(1)におけるnは0〜5の整数である。Rは水素原子または任意の置換基である。)
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンデンサは、固体電解質層の導電性に優れ、ESRが小さい。
本発明のコンデンサの製造方法によれば、ESRが小さいコンデンサを簡便に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
「コンデンサ」
本発明のコンデンサの一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例のコンデンサの構成を示す。本実施形態のコンデンサ10は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と、陽極11の表面が酸化されて形成された誘電体層12と、誘電体層12の表面に形成された陰極13とを有して概略構成されている。
【0018】
<陽極>
陽極11をなす弁金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、タンタル、ニオブが好適である。これら弁金属は、電解酸化処理により、緻密で耐久性を有する誘電体酸化被膜(誘電体層)を形成できるため、コンデンサ容量を安定的に高くすることができる。
陽極11の具体例としては、アルミニウム箔をエッチングして表面積を増加させた後、その表面を酸化処理したものや、タンタル粒子やニオブ粒子の焼結体表面を酸化処理してペレットにしたものが挙げられる。このように酸化処理された陽極11は表面に凹凸が形成されている。
【0019】
<誘電体層>
誘電体層12は、例えば、アジピン酸ジアンモニウム水溶液などの電解液中にて、陽極11の表面を陽極酸化することで形成することにより得られる。そのため、図1に示すように、誘電体層12は、陽極11の凹凸の表面に沿っている。
【0020】
<陰極>
陰極13は、誘電体層12側に配置された固体電解質層13aと、誘電体層12側と反対側に配置された導電層13bとを具備する。
また、固体電解質層13aと導電層13bとの間には、必要に応じて、セパレータを設けることができる。
【0021】
(固体電解質層)
固体電解質層13aは、π共役系導電性高分子とポリアニオンと一般式(1)で表される化合物とを必須成分として含有する層である。
固体電解質層13の厚さとしては、1〜100μmが好ましい。
【0022】
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるためには、アルキル基、カルボン酸基、スルホン酸基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0023】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0024】
中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高くなる上に耐熱性が向上する点から、より好ましい。
【0025】
[ポリアニオン]
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルから選ばれた単独重合体又は共重合体であって、アニオン基を有する構成単位を有するものである。また、必要に応じて、アニオン基を有さない構成単位を有してもよい。
なお、ポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させるだけでなく、π共役系導電性高分子のドーパントとしても機能する。
【0026】
ここで、ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0027】
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーである。これらの中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる一種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
【0028】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0029】
ポリアニオンが他の置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシル基、カルボニル基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エステル基が好ましい。
アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシル基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶剤への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。
上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基が好ましい。
【0030】
前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
前記ヒドロキシル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したヒドロキシル基又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシル基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。ヒドロキシル基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。これらの中では樹脂への相溶及び有機溶剤への溶解性から、主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したヒドロキシル基がより好ましい。
前記エステル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアルキル系エステル基、芳香族系エステル基、他の官能基を介在してなるアルキル系エステル基又は芳香族系エステル基が挙げられる。
前記シアノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したシアノ基等を挙げることができる。
【0031】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシル基がより好ましい。
【0032】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、π共役系導電性高分子の熱分解を緩和することができる。
【0033】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0034】
ポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への分散性及び溶解性が低くなり、均一な分散液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、固体電解質層13a中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0035】
[一般式(1)で表される化合物]
一般式(1)で表される化合物(以下、化合物1という。)におけるRは水素原子又は任意の置換基である。ここで、置換基としては特に制限されず、例えば、有機基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、水酸基、アルコキシル基等)が挙げられるが、導電性をより高くできる点では、一般式(2)で表される置換基、一般式(3)で表される置換基が好ましい。
一般式(3)におけるR、Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、アルケニル基(例えば、エチレン基、プロピレン基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アラルキル基、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等)のいずれかを表す。
【0036】
化合物1の具体例としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシアセトフェノン、3,4,5−トリヒドロキシアセトフェノン、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、3,4,5−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニルなどが挙げられる。
【0037】
が一般式(2)で表される置換基である場合、一般式(1)におけるnと一般式(2)におけるmの合計が2以上であり、容易に合成できる点では、6以下であることが好ましい。
一般式(2)におけるベンゼン環は置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メルカプト基等が挙げられる。
が一般式(2)で表される置換基である場合の化合物1の具体例としては、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
これらベンゾフェノン化合物の中でも、導電性をより高くできることから、4位または4’位にヒドロキシル基を有するものが好ましい。
【0038】
が一般式(3)で表される置換基である場合の化合物1の具体例としては、2−ヒドロキシベンズアミド、3−アセトアミドフェノール、4−アセトアミドフェノール、N−フェニルベンズアミド、ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、ヒドロキシフェニルジエチルアミド、4−ヒドロキシベンズアミド、3,4,5−トリヒドロキシベンズアミドなどが挙げられる。
【0039】
化合物1の分子量は5000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、500以下であることが特に好ましい。分子量が5000を超えると、水系溶媒への溶解性が低下する傾向にある。
【0040】
固体電解質層13a中の化合物1の含有量は、ポリアニオンのアニオン基1モルに対して0.1〜100モル当量であることが好ましく、0.5〜50モル当量であることがより好ましく、1.0〜20モル当量であることが特に好ましい。化合物1の含有量が前記下限値未満であると、化合物1の添加による導電性向上効果が発揮されにくくなり、前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子の濃度が低くなるため、導電性が低くなる傾向にある。
【0041】
[ドーパント]
固体電解質層13aにおいては、導電性を向上させるために、ポリアニオン以外の他のドーパントを含有してもよい。
他のドーパントとしては、π共役系導電性高分子を酸化還元できれば、ドナー性のものでもよいし、アクセプタ性のものでもよい。
以下に、ドナー性ドーパント、アクセプタ性ドーパントンの具体例を示す。
【0042】
・ドナー性ドーパント
ドナー性ドーパントとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン塩化合物等が挙げられる。
【0043】
・アクセプタ性ドーパント
アクセプタ性ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物等を使用できる。
さらに、ハロゲン化合物としては、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br2)、ヨウ素(I)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等が挙げられる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0044】
プロトン酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。さらに、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸等が挙げられる。
【0045】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシル基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
【0046】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を一つ又は二つ以上含むものを使用できる。スルホ基を一つ含むものとしては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフト−ル−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、へキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸 、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物等のスルホ基を含むスルホン酸化合物等が挙げられる。
【0047】
スルホ基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ドデシルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、ブチルナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、アントラセンジスルホン酸、ブチルアントラセンジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオ−シアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、1−アセトキシピレン−3,6,8−トリスルホン酸、7−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、8−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸、3−アミノ−1,5,7−ナフタレントリスルホン酸等が挙げられる。
【0048】
[電解液]
固体電解質層13aにおいては、π共役系導電性高分子が粒子径1〜500nmの粒子として形成することが多い。そのため、誘電体層12表面における微細な空隙の最深部にまでπ共役系導電性高分子が行き届かず、容量を引き出すことが難しくなることがある。このことから、固体電解質層13aに、必要に応じて電解液を浸透させることで、容量を補充することが好ましい。
【0049】
電解液としては導電性が高ければ特に限定されず、周知の溶媒中に周知の電解質を溶解させたものである。
電解液における溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等のアルコール系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、水等が挙げられる。
電解質としては、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、蟻酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸等のデカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸等のオクタンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の有機酸、あるいは、硼酸、硼酸と多価アルコールより得られる硼酸の多価アルコール錯化合物、りん酸、炭酸、けい酸等の無機酸などをアニオン成分とし、一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等)、二級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン等)、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7等)、テトラアルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等)などをカチオン成分とした電解質が挙げられる。
【0050】
(導電層)
導電層13bは、例えば、カーボン、銀、アルミニウム等の層から構成されたものである。導電層13bが、カーボン、銀等で構成される場合には、カーボン、銀等の導電体を含む導電性ペーストから形成することができる。また、導電層13bがアルミニウムで構成される場合には、アルミニウム箔からなる。
【0051】
以上説明したコンデンサ10の固体電解質層13に含まれる化合物1は、ポリアニオンのアニオン基と相互作用しやすく、その結果、ポリアニオン同士を接近させることができると考えられる。そのため、ドーピングによってポリアニオン上に吸着されているπ共役導電性高分子同士も接近させることができる。これにより、π共役系導電性高分子同士間の導電現象であるホッピングに必要なエネルギーが小さくなり、全体の電気抵抗が小さくなる(導電性が高くなる)と考えられる。固体電解質層13aの導電性が高くなった結果、コンデンサ10のESRが小さくなる。
また、化合物1は水素を放出するため、π共役系導電性高分子の酸化劣化の際に生じるラジカルを失活させることができる。これにより、ラジカルの連鎖反応を遮断することができ、劣化の進行を抑制できるため、耐熱性及び安定性を高くすることもできる。
【0052】
「コンデンサの製造方法」
コンデンサ10の製造方法は、弁金属の多孔質体からなる陽極11の表面を酸化して形成した誘電体層12表面に、導電性高分子溶液を塗布する工程(以下、工程Aという。)と、誘電体層12表面に塗布した導電性高分子溶液を乾燥させて固体電解質層13aを形成する工程(以下、工程Bという。)と、固体電解質層13a上に導電性ペーストを塗布して導電層13bを形成する工程(以下、工程Cという。)とを有する方法である。
【0053】
[工程A]
工程Aにて使用される導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと化合物1と溶媒とを含有するものである。π共役系導電性高分子、ポリアニオン、化合物1としては、上述したものが使用される。
【0054】
該導電性高分子溶液を調製する方法の一例としては、まず、溶媒中、ポリアニオンの存在下、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、酸化剤を用いて化学酸化重合し、余剰の酸化剤や前駆体モノマーを除去して、π共役系導電性高分子とポリアニオンとが複合した複合体を含む溶液を調製する。次いで、化合物1を添加して、導電性高分子溶液を得る。
【0055】
前記溶媒としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)などのアルコール系溶媒、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド系溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル系溶媒、トルエン、キシレン、水など、これらの単独もしくは混合溶媒が用いられる。中でも、環境への負荷が小さいことから、水やアルコール系溶媒の使用が好ましい。
【0056】
酸化剤としては、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)、ぺルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素などの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0057】
導電性高分子溶液は25℃におけるpHを3〜13に調整することが好ましく、5〜11に調整することがより好ましい。導電性高分子溶液のpHを3以上に調整すれば、導電性高分子溶液による誘電体層12又は導電層13bの腐食を防止できる。ただし、pH13を超えるとπ共役系導電性高分子の導電性が低下する傾向にある。
導電性高分子溶液のpHを3〜13に調整するためには、アルカリ性化合物を添加すればよい。
【0058】
[工程B]
工程Bにおける導電性高分子溶液を誘電体層12の表面に塗布する方法としては、例えば、コーティング、浸漬、スプレーなどの公知の手法が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、真空乾燥等が挙げられる。
【0059】
[工程C]
工程Cで使用される導電性ペーストとしては、例えば、カーボンペースト、銀ペーストなどが挙げられる。
【0060】
以上説明したコンデンサの製造方法は、導電性高分子溶液を塗布、乾燥することにより固体電解質層13aを形成するから、工程が簡便であり、大量生産に向いており、低コストである。また、導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと化合物1とを含んでいるため、ホッピングエネルギーを小さくすることができ、さらに、固体電解質層13a中のπ共役系導電性高分子の劣化を防ぐことができる。そのため、固体電解質層13aの導電性を高くできるので、コンデンサのESRを小さくできる。
【実施例】
【0061】
以下に、例を示して本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
(1)導電性高分子溶液の調製
14.2g(0.1mol)の3,4−エチレンジオキシチオフェンと、2,000mlのイオン交換水に27.5g(0.15mol)のポリスチレンスルホン酸(分子量;約150,000)を溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムと8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とを添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液を透析して、未反応モノマー、酸化剤、酸化触媒を除去して約1.5質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液(以下、複合体溶液という。)を得た。
そして、この複合体溶液100gに、攪拌しながら、0.36gの25質量%アンモニア水を添加した後、2.5gの3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒドを添加して、pH8.5の導電性高分子溶液を得た。
【0062】
(2)コンデンサの製造
エッチドアルミニウム箔(陽極箔)に陽極リード端子を接続した後、アジピン酸ジアンモニウム10質量%水溶液中で100Vの電圧を印加し、化成(酸化処理)して、アルミニウム箔表面に誘電体層を形成してコンデンサ中間体を得た。
次に、コンデンサ中間体の陽極箔に、陰極リード端子を溶接させた対向アルミニウム陰極箔を、セルロース製のセパレータを介して積層し、これを巻き取って、コンデンサ素子とした。
このコンデンサ素子を(1)で調製した導電性高分子溶液に減圧下で浸漬した後、120℃の熱風乾燥機で60分間乾燥する工程を3回繰り返してコンデンサ中間体の誘電体層側表面に固体電解質層を形成させた。
次いで、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子をアルミニウム製のケースに収容し、封口ゴムで封止して、コンデンサを作製した。
作製したコンデンサについて、LCZメータ2345(エヌエフ回路設計ブロック社製)を用いて、120Hzでの静電容量、100kHzでの等価直列抵抗(ESR)の初期値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
(実施例2)
2.5gの3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒドの代わりに4.5gのヒドロキシベンズアミドを用いたこと以外は実施例1と同様にして、コンデンサを作製した。そして、実施例1と同様にして静電容量、ESRの初期値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
2.5gの3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒドの代わりに4.5gの3,4,5−トリヒドロキシベンズアミドを用いたこと以外は実施例1と同様にして、コンデンサを作製した。そして、実施例1と同様にして静電容量、ESRの初期値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0066】
(実施例4)
2.5gの3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒドの代わりに4.5gのヒドロキシフェニルベンズメタクリルアミドを用いたこと以外は実施例1と同様にして、コンデンサを作製した。そして、実施例1と同様にして静電容量、ESRの初期値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0067】
(実施例5)
複合体溶液100gに、0.36gの25質量%アンモニア水と30gのエタノールとを混合させた後、3.0gの2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンを添加したこと以外は実施例1と同様にして、コンデンサを作製した。そして、実施例1と同様にして、静電容量、ESRの初期値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
複合体溶液100gをそのまま導電性高分子溶液として使用したこと以外は実施例1と同様にして、コンデンサを作製した。そして、実施例1と同様にして、静電容量、ESRの初期値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0069】
(比較例2)
複合体溶液100gに、0.36gの25質量%アンモニア水のみを添加したこと以外は実施例1と同様にして、コンデンサを作製した。そして、実施例1と同様にして、静電容量、ESRの初期値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0070】
固体電解質層が化合物1を含有する実施例1〜5のコンデンサは、ESRが小さかった。しかも、静電容量の低下は見られなかった。
固体電解質層が化合物1を含有しない比較例1,2のコンデンサは、ESRが大きかった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明のコンデンサの一実施形態例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0072】
10 コンデンサ
11 陽極
12 誘電体層
13 陰極
13a 固体電解質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁金属の多孔質体からなる陽極と、陽極表面が酸化されて形成された誘電体層と、誘電体層表面側に形成された陰極とを具備するコンデンサにおいて、
陰極が、π共役系導電性高分子とポリアニオンと下記一般式(1)で表される化合物とを含む固体電解質層を有することを特徴とするコンデンサ。
【化1】

(一般式(1)におけるnは0〜5の整数である。Rは水素原子または任意の置換基である。)
【請求項2】
一般式(1)におけるRが、一般式(2)で表される置換基であり、一般式(1)におけるnと一般式(2)におけるmの合計が2以上であることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【化2】

(一般式(2)におけるmは0〜5の整数である。)
【請求項3】
一般式(1)におけるRが、一般式(3)で表される置換基であることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
NR− (3)
(一般式(3)におけるR、Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシアルキル基のいずれかを表す。)
【請求項4】
弁金属の多孔質体からなる陽極の表面を酸化して形成した誘電体層表面に、π共役系導電性高分子とポリアニオンと下記化学式(1)で表される化合物と溶媒とを含有する導電性高分子溶液を塗布する工程と、
誘電体層表面に塗布した導電性高分子溶液を乾燥させる工程とを有することを特徴とするコンデンサの製造方法。
【化3】

(一般式(1)におけるnは0〜5の整数である。Rは水素原子または任意の置換基である。)

【図1】
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【公開番号】特開2008−135514(P2008−135514A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319776(P2006−319776)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)