説明

コンデンサ素子搬送用粘着テープおよびそれを用いた電解コンデンサの製造方法

【課題】 コンデンサ素子のリード線への粘着テープの糊の付着により付随する組立不良を低減する電解コンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】 陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して重ね合わされて巻回され、電解質が含浸されたコンデンサ素子を次工程に搬送する際、リード線を粘着テープで搬送台紙に貼り付けて行う電解コンデンサの製造方法であって、コンデンサ素子のリード線を粘着テープで搬送台紙に貼り付ける際、リード線と粘着テープ間に紙材を挟むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサのコンデンサ素子搬送用粘着テープおよびそれを用いた電解コンデンサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、多種多様なコンデンサが開発されているが、特に巻回形(素子巻取りタイプ)の電解コンデンサの需要は大きく、更なる品質向上と歩留向上が求められている。
【0003】
電解コンデンサは、一般的に次のように製造される。
まず、アルミニウム箔をエッチング処理した後、化成処理を施してコンデンサの誘電体となる酸化皮膜を形成させた陽極箔、およびエッチング処理した陰極箔を作製する。この陽極箔と陰極箔にそれぞれ電極を引き出すためのリード線を接続した後、陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回し、コンデンサ素子を作製する。
【0004】
続いて、このコンデンサ素子に電解液を含浸させ、含浸後のコンデンサ素子を一端が開口した有底円状の外装ケース(主としてアルミニウム製)に収納する。
さらに、外装ケースの開口端は、リード線が挿通される貫通孔が形成されたゴム材料からなる弾性封口材によって封止されて、リード線形電解コンデンサが作製される。
【0005】
このように作製されたリード線形電解コンデンサに、リード線が挿通される貫通孔が形成された樹脂等からなる絶縁板を、弾性封口材の下面に取り付け、リード線を絶縁板の貫通孔に挿通して、その先端部は絶縁板の底面(弾性封口材と反対側の面)に形成された収納溝に沿って折り曲げることで、面実装に対応できる形状のチップ形電解コンデンサが作製される(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上記電解コンデンサの作製の際、陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回して作製したコンデンサ素子を電解液含浸工程へ搬送する際や、電解液含浸工程から外装ケースに収納する組立工程へ搬送する際に、搬送台紙(主にPET製が用いられる)にリード線を、クラフト系の紙を基材として、ゴム系またはアクリル系の糊材が塗布された粘着テープで固定し、整列させた状態で搬送する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−247418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リード線を粘着テープで搬送台紙に固定(以下、テーピングと称する)されたコンデンサ素子は、テーピングされた状態のまま電解液を含浸し、その後、テーピングされた状態から、コンデンサ素子を引き抜いて取り出し、有底円状の外装ケースに収納している。
【0009】
上述のテーピングされた状態からコンデンサ素子を引き抜く際、粘着テープの糊がコンデンサ素子のリード線に付着することがあり、コンデンサ素子が有底円状の外装ケースに収納された後、パーツボウルで撹拌させて整列させる際などに、リード線に付着した糊が他の有底円状の外装ケースの外側に再付着することがある。
【0010】
この外装ケースの外側に付着した糊は、電解コンデンサの外装ケース上面へのマーキング(極性表示や定格表示のための印刷)を行う際にマーキングがかすれるという不具合を起こすことがある。
また、電解コンデンサでは、出荷用のキャリアテープへの収納や基板に面実装される際、外装ケース上面を吸着して、実装される方法が多いが、粘着テープの糊が外装ケース上面に付着していると、チップ形電解コンデンサを吸着する設備によっては吸着エラーを引き起こすことがある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するもので、電解コンデンサの作製過程において、コンデンサ素子のリード線への粘着テープの糊の付着量を低減することで、電解コンデンサの作製過程で発生するマーキング不良率と面実装される際の実装機による吸着エラーを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するもので、陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回され、電解質が含浸されたコンデンサ素子を次工程に搬送する際、リード線を搬送台紙に貼り付けるコンデンサ素子搬送用粘着テープであって、該コンデンサ素子のリード線を紙材を介して搬送台紙に貼り付けることを特徴とする。
【0013】
また、上記記載の紙材の幅が、粘着テープの幅に対して30〜40%であることを特徴とする電解コンデンサの製造方法である。
【0014】
さらに、陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して重ね合わされて巻回され、電解質が含浸されたコンデンサ素子を次工程に搬送する際、リード線を粘着テープで搬送台紙に貼り付けて行う電解コンデンサの製造方法であって、前記搬送台紙に貼り付ける際、リード線と粘着テープ間に紙材を挟むことを特徴とする電解コンデンサの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンデンサ素子搬送用粘着テープおよびそれを用いた電解コンデンサの製造方法によれば、コンデンサ素子のリード線に粘着テープの糊が付着することによって付随する不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例に係るコンデンサ素子のテーピング後の状態図である。
【図2】従来例に係るコンデンサ素子のテーピング後の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0018】
〔実施例1〕
アルミニウム箔をエッチング処理した後、化成処理を施してコンデンサの誘電体となる酸化皮膜を形成させた陽極箔、およびエッチング処理のみ施した陰極箔を準備した。さらに、この陽極箔と陰極箔に電極を引き出すためのリード線を接続した後、セパレータを介して巻回し、コンデンサ素子を作製した。
続いて、上記コンデンサ素子を搬送台紙にテーピングする際、貼り付ける粘着テープ幅W0は、5.0mmのものを使用し、コンデンサ素子のリード線と粘着テープの間に挟む紙材は幅W1を1.5mmとし、かつ、粘着テープに対する貼り付け位置を中央とした。さらに、このコンデンサ素子に電解液を含浸させた後、搬送台紙から引き抜き、一端が開口した有底円状の外装ケースに収納し、外装ケースの開口端を弾性封口材によって封止した。
その後、絶縁板を弾性封口材の下面に取り付け、リード線を絶縁板の貫通孔に挿通させて、先端部を絶縁板の底面に形成した収納溝に沿って折り曲げることで、本発明に係る電解コンデンサを作製した。
【0019】
〔実施例2〕
テーピングする際、貼り付ける粘着テープ幅W05.0mmのものを使用し、コンデンサ素子のリード線と粘着テープの間に挟む紙材の幅W1を1.0mmとした以外は実施例1と同様の方法で電解コンデンサを作製した。
【0020】
〔実施例3〕
テーピングする際、貼り付ける粘着テープ幅W05.0mmのものを使用し、コンデンサ素子のリード線と粘着テープの間に挟む紙材の幅W1を2.0mmとした以外は実施例1と同様の方法で電解コンデンサを作製した。
【0021】
〔実施例4〕
テーピングする際、貼り付ける粘着テープ幅W05.0mmのものを使用し、コンデンサ素子のリード線を粘着テープの間に挟む紙材の幅W1を2.2mmとした以外は実施例1と同様の方法で電解コンデンサを作製した。
【0022】
〔比較例〕
テーピングする際、貼り付ける粘着テープ幅W03.5mmのものを使用し、コンデンサ素子のリード線を粘着テープの間に紙材を挟まずにテーピングした以外は、実施例1と同様の方法で電解コンデンサを作製した。
【0023】
〔従来例〕
テーピングする際、貼り付ける粘着テープ幅W05.0mmのものを使用し、コンデンサ素子のリード線と粘着テープの間に紙材を挟まずにテーピングした以外は、実施例1と同様の方法で電解コンデンサを作製した。
【0024】
上記実施例、比較例および従来例について、テーピング状態を確認した。また、テーピング状態からコンデンサ素子を引き抜いた後の工程において、電解コンデンサ1,000,000個についてのマーキング不良率と吸着エラーを確認した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
表1から明らかなように、実施例は、比較例、従来例と比較し、マーキング不良率および吸着エラーが大幅に低減されていることが分かる。これは紙材を使用することで、リード線への糊の付着量が低減されたためと考えられる。また、テープの幅に対する紙材の幅は、テーピング不良率、マーキング不良率、吸着エラーの観点から、20〜45%とすることが好ましく、30〜40%とするとより好ましいことが分かる。
【0027】
また、上記のように紙材の幅が粘着テープ幅に対して30〜40%であれば、細幅の粘着テープを2本またはそれ以上の本数としてテーピングしてもよい。
【0028】
また、実施例では、絶縁板を使用した電解コンデンサについて適用したが、絶縁板を使用しないリードタイプの電解コンデンサにも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 コンデンサ素子
2 搬送台紙
3 粘着テープ
4 紙材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回され、電解質が含浸されたコンデンサ素子を次工程に搬送する際、リード線を搬送台紙に貼り付けるコンデンサ素子搬送用粘着テープであって、該コンデンサ素子のリード線を紙材を介して搬送台紙に貼り付けることを特徴とするコンデンサ素子搬送用粘着テープ。
【請求項2】
上記紙材の幅が、粘着テープの幅に対して30〜40%であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して重ね合わされて巻回され、電解質が含浸されたコンデンサ素子を次工程に搬送する際、リード線を粘着テープで搬送台紙に貼り付けて行う電解コンデンサの製造方法であって、
前記搬送台紙に貼り付ける際、リード線と粘着テープ間に紙材を挟むことを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate