説明

コンデンサ

【課題】さらなる熱交換性能の向上を図りうるコンデンサを提供する。
【解決手段】コンデンサ1に、上下に連続して並んだ複数の凝縮用熱交換管からなる冷媒凝縮パスP1,P2が上下に並んで複数設ける。上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パスP1,P2間において、両凝縮用ヘッダ2,3間に液相冷媒流通管21を配置する。液相冷媒流通管21内での液相冷媒の流れ方向を、下側の冷媒凝縮パスP2を構成する凝縮用熱交換管内の冷媒の流れ方向と同方向とする。両凝縮用ヘッダ2,3のうち液相冷媒流通管21の冷媒流れ方向上流側の凝縮用ヘッダ3内に、上側の冷媒凝縮パスP1から流れてきた気液混相の冷媒から液相冷媒を分離し、液相冷媒流通管21内に送る液相冷媒分離手段22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車に搭載されるカーエアコンに好適に用いられるコンデンサに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「コンデンサ」という用語には、通常のコンデンサの他に凝縮部および過冷却部を有するサブクールコンデンサを含むものとする。
【0003】
また、この明細書および特許請求の範囲において、上下、左右は図1、図8および図9の上下、左右をいうものとする。
【背景技術】
【0004】
たとえばカーエアコンのコンデンサ(50)として、図9に示すように、互いに間隔をおいて配置された左右1対の凝縮用ヘッダ(51)(52)、両凝縮用ヘッダ(51)(52)間に配置されて両端部が両凝縮用ヘッダ(51)(52)に接続された複数の凝縮用熱交換管、および隣り合う凝縮用熱交換管どうしの間に配置されて凝縮用熱交換管に接合されたコルゲートフィンからなる凝縮部(50A)と、互いに間隔をおいて配置された左右1対の過冷却用ヘッダ(53)(54)、両過冷却用ヘッダ(53)(54)間に配置されて両端部が両過冷却用ヘッダ(53)(54)に接続された複数の過冷却用熱交換管、および隣り合う過冷却用熱交換管どうしの間に配置されて過冷却用熱交換管に接合されたコルゲートフィンからなる過冷却部(50B)と、凝縮部(50A)の左側の凝縮用ヘッダ(51)と過冷却部(50B)の左側の過冷却用ヘッダ(53)とに跨って固定された垂直状受液器(55)とを備えており、互いに間隔をおいて配置された上下方向にのびる左右1対のタンク(56)(57)内が、それぞれ同一高さ位置において仕切部材(58)により仕切られることによって、凝縮用ヘッダ(51)(52)および過冷却用ヘッダ(53)(54)が形成され、左側の凝縮用ヘッダ(51)内が、上下方向の中程の高さ位置に設けられたパス形成用仕切板(59)により上ヘッダ部(51a)と下ヘッダ部(51b)とに区画され、コンデンサ(50)の凝縮部(50A)に、パス形成用仕切板(59)の上方に位置する第1冷媒凝縮パス(P1)と、パス形成用仕切板(59)の下方に位置する第2冷媒凝縮パス(P2)とが設けられ、各冷媒凝縮パス(P1)(P2)を構成するすべての凝縮用熱交換管の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの冷媒凝縮パス(P1)(P2)の凝縮用熱交換管の冷媒流れ方向が異なっており、受液器(55)が、左側の凝縮用ヘッダ(51)の下ヘッダ部(51b)に通じる冷媒流入通路(62)および左側の過冷却用ヘッダ(53)に通じる冷媒流出通路(63)を有するとともに、凝縮用ヘッダ(51)および過冷却用ヘッダ(53)に跨って一方のタンク(56)に接合された取付部材(61)と、下端部が取付部材(61)に着脱自在に固定された垂直円筒状受液器本体(64)とよりなものが知られている。このコンデンサ(50)においては、カーエアコンの冷凍能力の向上を図るために、凝縮部(50A)で凝縮された液状冷媒を、過冷却部(50B)においてさらに凝縮温度よりも5〜15℃程度低い温度まで過冷却するようになっている(特許文献1参照)。なお、図9においては凝縮用熱交換管、過冷却用熱交換管およびコルゲートフィンの図示は省略している。
【0005】
特許文献1記載のコンデンサ(50)は、通常は十分な熱交換性能を有しているが、最近ではさらなる性能向上が要求されており、特許文献1記載のコンデンサ(50)では不十分である。特に、最近では、コンデンサ(50)の熱交換性能を向上させる目的で凝縮用熱交換管の冷媒通路断面積を従来に比べて小さくする傾向にあり、冷媒通路断面積を小さくした結果凝縮用熱交換管内で液相冷媒が生じ易くなることに起因する冷媒側熱伝達率低下が問題となっている。
【0006】
すなわち、特許文献1記載のコンデンサ(50)においては、第1冷媒凝縮パス(P1)の凝縮用熱交換管を通過する間に気相の冷媒が冷却されて凝縮し、多くの液相冷媒を含む気液混相の冷媒が凝縮部(50A)の右側凝縮用ヘッダ(52)内に入る。多くの液相冷媒を含む気液混相の冷媒が凝縮部(50B)の右側凝縮用ヘッダ(52)内に入ると、比重差により液相冷媒が主体となった気液混相冷媒(R1)(以下、液相主体気液混相冷媒というものとする)が右側凝縮用ヘッダ(52)内の下部に溜まり、液相主体気液混相冷媒(R2)は第2冷媒凝縮パス(P2)の下側の凝縮用熱交換管内に流入する。一方、気相冷媒が主体となった気液混相冷媒(R2)(以下、気相主体気液混相冷媒というものとする)は、第2冷媒凝縮パス(P2)の残りの凝縮用熱交換管内に流入する。また、右側凝縮用ヘッダ(52)内のパス形成用仕切板(59)よりも下方の部分の気相主体気液混相冷媒(R2)においても、液相冷媒の混合比率は上方から下方に向かって徐々に高くなっているので、気相主体気液混相冷媒(R2)が流入した第2冷媒凝縮パス(P2)の複数の凝縮用熱交換管においても、液相冷媒が存在する比率は上方から下方に向かって徐々に高くなる。したがって、第2冷媒凝縮パス(P2)のすべての凝縮用熱交換管に対する気相冷媒および液相冷媒の分配が不均一になる。
【0007】
しかも、凝縮用熱交換管の冷媒通路断面積を小さくすることにより、凝縮用熱交換管内に流入した気相冷媒の凝縮速度が向上して液相冷媒が生じ易くなるので、気相主体気液混相冷媒(R2)が流入した第2冷媒凝縮パス(P2)の複数の凝縮用熱交換管のうち液相冷媒の混合比率が高い凝縮用熱交換管では多くの液相冷媒が存在することになり、液相主体気液混相冷媒(R1)が流入した第2冷媒凝縮パス(P2)の下側の凝縮用熱交換管内においては多くの液相冷媒が存在することと相俟って、冷媒側熱伝達率が低下するという問題がある。
【特許文献1】特開2007−132631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、さらなる熱交換性能の向上を図りうるコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)左右方向に間隔をおいて配置された上下方向にのびる2つの凝縮用ヘッダと、両凝縮用ヘッダ間に上下方向に間隔をおいて並列状に配置されかつ両端部が両凝縮用ヘッダにそれぞれ接続された複数の凝縮用熱交換管と、隣接する凝縮用熱交換管間に配置されたフィンとを備えており、上下に連続して並んだ複数の凝縮用熱交換管からなりかつ冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスが上下に並んで複数設けられ、各冷媒凝縮パスを構成する全ての凝縮用熱交換管の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの冷媒凝縮パスの凝縮用熱交換管の冷媒流れ方向が異なっているコンデンサであって、
上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パス間において、両凝縮用ヘッダ間に液相冷媒流通管が配置されるとともに、液相冷媒流通管の両端部が両凝縮用ヘッダに接続され、液相冷媒流通管内での液相冷媒の流れ方向が、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パスのうち下側の冷媒凝縮パスを構成する凝縮用熱交換管内の冷媒の流れ方向と同方向となされ、両凝縮用ヘッダのうち液相冷媒流通管の冷媒流れ方向上流側の凝縮用ヘッダ内に、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パスのうち上側の冷媒凝縮パスから流れてきた気液混相の冷媒から液相冷媒を分離し、液相冷媒流通管内に送る液相冷媒分離手段が設けられているコンデンサ。
【0011】
2)液相冷媒分離手段が、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パスのうち下側の冷媒凝縮パスの最上位の凝縮用熱交換管と、最下位の液相冷媒流通管との間に設けられ、かつ凝縮用ヘッダ内を上下に仕切るとともに冷媒通過穴を有する仕切板、および仕切板に上方突出状に設けられ、かつ凝縮用ヘッダ内における仕切板の上下両側部分を通じさせる筒状の冷媒通過部材よりなり、冷媒通過部材の上端が最上位の液相冷媒流通管よりも上方に位置している上記1)記載のコンデンサ。
【0012】
3)両凝縮用ヘッダの下方に、それぞれ当該両凝縮用ヘッダと非連通状になるように過冷却用ヘッダが設けられ、両過冷却用ヘッダ間に、複数の過冷却用熱交換管が上下方向に間隔をおいて配置されるとともに、過冷却用熱交換管の両端部が両過冷却用ヘッダに接続されている上記1)または2)記載のコンデンサ。
【0013】
4)左右方向に間隔をおいて配置された上下方向にのびる1対のタンクが、同一高さ位置において仕切部材によって仕切られることによって、凝縮用ヘッダと過冷却用ヘッダとが上下に並んで設けられ、当該仕切部材よりも上方の部分が凝縮部となるとともに、同下方の部分が過冷却部となっており、いずれか一方のタンクに受液器が取り付けられ、凝縮部から流出した冷媒が受液器を経て過冷却部に送られるようになされている上記3)記載のコンデンサ。
【発明の効果】
【0014】
上記1)のコンデンサによれば、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パス間において、両凝縮用ヘッダ間に液相冷媒流通管が配置されるとともに、液相冷媒流通管の両端部が両凝縮用ヘッダに接続され、液相冷媒流通管内での液相冷媒の流れ方向が、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パスのうち下側の冷媒凝縮パスを構成する凝縮用熱交換管内の冷媒の流れ方向と同方向となされ、両凝縮用ヘッダのうち液相冷媒流通管の冷媒流れ方向上流側の凝縮用ヘッダ内に、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パスのうち上側の冷媒凝縮パスから流れてきた気液混相の冷媒から液相冷媒を分離し、液相冷媒流通管内に送る液相冷媒分離手段が設けられているので、液相冷媒分離手段により液相冷媒が気液混相の冷媒から分離され、液相主体気液混相冷媒は、液相冷媒流通管を通って液相冷媒流通管の冷媒流れ方向下流側の凝縮部用ヘッダ内に入る。したがって、下側の冷媒凝縮パスの凝縮用熱交換管内には気相主体気液混相冷媒のみが流入することになり、当該冷媒凝縮パスでの液相冷媒と気相冷媒の分配が均一となる。しかも、下側の冷媒凝縮パスの凝縮用熱交換管内には気相主体気液混相冷媒のみが流入することになるので、凝縮用熱交換管の冷媒通路断面積を小さくすることにより、凝縮用熱交換管内に流入した気相冷媒の凝縮速度が向上して液相冷媒が生じ易くなったとしても、下側の冷媒凝縮パスの凝縮用熱交換管内に多くの液相冷媒が存在することはなく、冷媒側熱伝達率の低下を防止することができる。その結果、コンデンサの熱交換性能の低下を防止することができる。
【0015】
上記2)のコンデンサによれば、液相冷媒分離手段が、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パスのうち下側の冷媒凝縮パスの最上位の凝縮用熱交換管と、最下位の液相冷媒流通管との間に設けられ、かつ凝縮用ヘッダ内を上下に仕切るとともに冷媒通過穴を有する仕切板、および仕切板に上方突出状に設けられ、かつ凝縮用ヘッダ内における仕切板の上下両側部分を通じさせる筒状の冷媒通過部材よりなり、冷媒通過部材の上端が最上位の液相冷媒流通管よりも上方に位置しているので、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パスのうち上側の冷媒凝縮パスから流れてきた気液混相の冷媒から液相冷媒を分離し、液相冷媒流通管内に送る液相冷媒分離手段を、比較的簡単な構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
以下の説明において、図1の紙面裏側(図3の上側)を前、これと反対側を後というものとする。
【0018】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0019】
図1はこの発明によるコンデンサの全体構成を示し、図2〜図4はその腰部の構成を示す。また、図5は図1のコンデンサの作動時の気相冷媒と液相冷媒との分布状況を示す
図1において、コンデンサ(1)は、左右方向に間隔をおいて配置された上下方向にのびる1対の凝縮用ヘッダ(2)(3)、幅方向を前後方向に向けるとともに長さ方向を左右方向に向けて両凝縮用ヘッダ(2)(3)間に配置され、かつ両端部が両凝縮用ヘッダ(2)(3)に接続された複数のアルミニウム製の扁平状凝縮用熱交換管(4)、隣り合う凝縮用熱交換管(4)どうしの間および上端の凝縮用熱交換管(4)の上側に配置されて凝縮用熱交換管(4)に接合されたアルミニウム製コルゲートフィン(5)、ならびに上端のコルゲートフィン(5)に接合されたサイドプレート(6)からなる凝縮部(1A)と、互いに間隔をおいて配置された左右1対の過冷却用ヘッダ(7)(8)、幅方向を前後方向に向けるとともに長さ方向を左右方向に向けて両過冷却用ヘッダ(7)(8)間に配置され、かつ両端部が両過冷却用ヘッダ(7)(8)に接続された複数のアルミニウム製の扁平状過冷却用熱交換管(9)、隣り合う過冷却用熱交換管(9)どうしの間および下端の過冷却用熱交換管(9)の下側に配置されて過冷却用熱交換管(9)に接合されたアルミニウム製コルゲートフィン(11)、ならびに下端のコルゲートフィン(11)に接合されたサイドプレート(12)からなる過冷却部(1B)と、凝縮部(1A)の左側の凝縮用ヘッダ(2)と過冷却部(1B)の左側の過冷却用ヘッダ(7)とに跨って固定された垂直状受液器(13)とを備えている。
【0020】
なお、凝縮部(1A)の凝縮用熱交換管(4)、コルゲートフィン(5)およびサイドプレート(6)と、過冷却部(1B)の過冷却用熱交換管(9)、コルゲートフィン(11)およびサイドプレート(12)とは、それぞれ同一構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0021】
凝縮部(1A)の両凝縮用ヘッダ(2)(3)と過冷却部(1B)の両過冷却用ヘッダ(7)(8)とは、左右方向に間隔をおいて配置された上下方向にのびる1対のアルミニウム製タンク(14)(15)内が、それぞれ同一高さ位置において仕切部材(16)により仕切られることによって形成されており、仕切部材(16)よりも上方の部分が凝縮部(1A)となるとともに、同下方の部分が過冷却部(1B)となっている。
【0022】
凝縮部(1A)の左側の凝縮用ヘッダ(2)内は、上下方向の中程の高さ位置に設けられたアルミニウム製のパス形成用仕切板(17)により上ヘッダ部(2a)と下ヘッダ部(2b)とに区画され、コンデンサ(1)の凝縮部(1A)に、パス形成用仕切板(17)の上方に位置するとともに、上下に連続して並んだ複数の凝縮用熱交換管(4)からなりかつ冷媒を凝縮させる第1冷媒凝縮パス(P1)と、パス形成用仕切板(17)の下方に位置するとともに、上下に連続して並んだ複数の凝縮用熱交換管(4)からなりかつ冷媒を凝縮させる第2冷媒凝縮パス(P2)とが設けられている。各冷媒凝縮パス(P1)(P2)を構成するすべての凝縮用熱交換管(4)の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、両冷媒凝縮パス(P1)(P2)を構成する凝縮用熱交換管(4)の冷媒流れ方向が異なっている。ここでは、上側の第1冷媒凝縮パス(P1)を構成する凝縮用熱交換管(4)の冷媒流れ方向は左から右であり、下側の第2冷媒凝縮パス(P2)を構成する凝縮用熱交換管(4)の冷媒流れ方向は右から左である。
【0023】
凝縮部(1A)の左側ヘッダ(5)の上ヘッダ部(2a)に、その内部に冷媒を流入させる冷媒入口部材(18)が接続され、過冷却部(1B)の右側ヘッダ(11)に、その内部から冷媒を流出させる冷媒出口部材(19)が接続されている。
【0024】
第1冷媒凝縮パス(P1)と第2冷媒凝縮パス(P2)との間でかつパス形成用仕切板(17)よりも下方の高さ位置において、左右両凝縮用ヘッダ(2)(3)間に、1つのアルミニウム製の扁平状液相冷媒流通管(21)が、幅方向を前後方向に向けるとともに長さ方向を左右方向に向けて配置され、液相冷媒流通管(21)の両端部が両凝縮用ヘッダ(2)(3)に接続されている。液相冷媒流通管(21)内での液相冷媒の流れ方向は、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パス(P1)(P2)のうち下側の第2冷媒凝縮パス(P2)を構成する凝縮用熱交換管(4)内の冷媒の流れ方向と同方向となされている。第1冷媒凝縮パス(P1)の下端の凝縮用熱交換管(4)および第2冷媒凝縮パス(P2)の上端の凝縮用熱交換管(4)と、液相冷媒流通管(21)との間にもそれぞれアルミニウム製コルゲートフィン(5)が配置されて凝縮用熱交換管(4)および液相冷媒流通管(21)にろう付されている。両凝縮用ヘッダ(2)(3)のうち液相冷媒流通管(21)の冷媒流れ方向上流側の凝縮用ヘッダ(3)内、すなわち右側の凝縮用ヘッダ(3)内に、第1冷媒凝縮パス(P1)の凝縮用熱交換管(4)から流れてきた気液混相の冷媒から液相冷媒を分離し、液相冷媒流通管(21)内に送る液相冷媒分離手段(22)が設けられている。なお、この実施形態においては、液相冷媒流通管(21)の数は1つであるが、これに限定されるものではなく、2以上の液相冷媒流通管(21)が上下方向に間隔をおいて配置されていてもよい。
【0025】
図2〜図4に示すように、液相冷媒分離手段(22)は、2つの冷媒凝縮パス(P1)(P2)のうち第2冷媒凝縮パス(P2)の最上位の凝縮用熱交換管(4)と最下位の液相冷媒流通管(21)との間に設けられ、かつ右側凝縮用ヘッダ(3)内を上下に仕切るとともに円形貫通穴(24)を有する仕切板(23)、および仕切板(23)に上方突出状に設けられ、かつ右側凝縮用ヘッダ(3)内における仕切板(23)の上下両側部分を通じさせる円筒状の冷媒通過部材(25)よりなる。仕切板(23)は、右側凝縮用ヘッダ(3)の周壁に形成されたスリット(26)を通して外部から右側凝縮用ヘッダ(3)内に挿入されている。仕切板(23)がスリット(26)を通して右側凝縮用ヘッダ(3)内に挿入された後に、冷媒通過部材(25)の下端部が仕切板(23)の貫通穴(24)内に嵌め入れられて仕切板(23)に固定されている。冷媒通過部材(25)の上端は最上位の液相冷媒流通管(21)よりも上方に位置している。なお、この実施形態では、液相冷媒流通管(21)の数は1つであるから、この液相冷媒流通管(21)が最下位の液相冷媒流通管(21)となるとともに、最上位の液相冷媒流通管(21)となっている。
【0026】
受液器(13)は、凝縮部(1A)の左側凝縮用ヘッダ(2)の下ヘッダ部(2b)内に通じる冷媒流入通路(28)および過冷却部(1B)の左側過冷却用ヘッダ(7)内に通じる冷媒流出通路(29)を有し、かつ両ヘッダ(2)(7)に跨って左側のタンク(14)に接合された取付部材(27)と、下端部が取付部材(27)に着脱自在に固定された垂直円筒状受液器本体(31)とよりなる。
【0027】
コンデンサ(1)は、圧縮機、膨張弁(減圧器)およびエバポレータとともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両に搭載される。
【0028】
上述した構成のコンデンサ(1)において、圧縮機により圧縮された高温高圧の気相冷媒が、冷媒入口部材(18)を通して凝縮部(1A)の左側凝縮用ヘッダ(2)の上ヘッダ部(2a)内に流入し、第1冷媒凝縮パス(P1)の凝縮用熱交換管(4)内を右方に流れて右側凝縮用ヘッダ(3)内の仕切板(23)よりも上方の部分に流入する。
【0029】
高温高圧の気相冷媒が第1冷媒凝縮パス(P1)の凝縮用熱交換管(4)内を流れる間に凝縮して液相冷媒が生じるので、右側凝縮用ヘッダ(3)内の仕切板(23)よりも上方の部分に流入した冷媒のうち液相主体気液混相冷媒(R1)は、液相冷媒分離手段(22)の仕切板(23)上に溜まる。仕切板(23)上に溜まった液相主体気液混相冷媒(R1)の液面が液相冷媒流通管(21)よりも上方に至ると、液相冷媒流通管(21)内に入り、液相冷媒流通管(21)内を左方に流れて左側凝縮用ヘッダ(2)の下ヘッダ部(2b)内に流入する。一方、右側凝縮用ヘッダ(3)内の仕切板(23)よりも上方の部分に流入した冷媒のうち気相主体気液混相冷媒(R2)は、液相冷媒分離手段(22)の冷媒通過部材(25)を通って右側凝縮用ヘッダ(3)内における仕切板(23)よりも下方の部分に流入する。
【0030】
右側凝縮用ヘッダ(3)内における仕切板(23)よりも下方の部分に流入した気相主体気液混相冷媒(R2)は、分流して第2冷媒凝縮パス(P2)の凝縮用熱交換管(4)内に入り、凝縮用熱交換管(4)内を左方に流れる。気相主体気液混相冷媒(R2)が第2冷媒凝縮パス(P2)の凝縮用熱交換管(4)内を流れる間に気相冷媒が凝縮して液相冷媒が生じるので、左側凝縮用ヘッダ(2)の下ヘッダ部(2b)内には液相主体気液混相冷媒(R1)が流入する。第2冷媒凝縮パス(P2)の凝縮用熱交換管(4)を通って左側凝縮用ヘッダ(2)の下ヘッダ部(2b)内に流入した液相主体気液混相冷媒(R1)と、液相冷媒流通管(21)を通って左側凝縮用ヘッダ(2)の下ヘッダ部(2b)内に流入した液相主体気液混相冷媒(R1)とは、受液器(13)の取付部材(27)の冷媒流入路(28)を通って受液器本体(31)内に入り、ここで異物および水分が除去された後、取付部材(27)の冷媒流出路(29)を通って過冷却部(1B)の左側過冷却用ヘッダ(7)に流入し、全ての過冷却用熱交換管(9)内を右方に流れる間に5〜15℃過冷却され、右側ヘッダ(12)に流入した後、冷媒出口部材(19)を通して膨張弁を経て蒸発器に送られる。
【0031】
ここで、第1冷媒凝縮パス(P1)の凝縮用熱交換管(4)内を流れる間に凝縮して生じた液相冷媒は、液相冷媒分離手段(22)により気液混相の冷媒から分離され、当該液相冷媒を主体とする液相主体気液混相冷媒(R1)が液相冷媒流通管(21)を通って左側凝縮用ヘッダ(2)の下ヘッダ部(2b)内に入るので、図5に示すように、第2冷媒凝縮パス(P2)の凝縮用熱交換管(4)内には気相主体気液混相冷媒(R2)のみが流入することになり、第2冷媒凝縮パス(P2)での液相冷媒と気相冷媒の分配が均一となる。しかも、第2冷媒凝縮パス(P2)の凝縮用熱交換管(4)内には気相主体気液混相冷媒(R2)のみが流入することになるので、凝縮用熱交換管(4)の冷媒通路断面積を小さくすることにより、凝縮用熱交換管(4)内に流入した気相冷媒の凝縮速度が向上して液相冷媒が生じ易くなったとしても、第2冷媒凝縮パス(P2)の凝縮用熱交換管(4)内には左側凝縮用ヘッダ(2)寄りの部分を除いては多くの液相冷媒が存在することはなく、冷媒側熱伝達率の低下を防止することができる。その結果、コンデンサ(1)の熱交換性能の低下を防止することができる。
【0032】
図6〜図8は液相冷媒分離手段(22)の変形例を示す。
【0033】
図6示す液相冷媒分離手段(35)の場合、冷媒通過部材(25)は、下端部が予め仕切板(23)の貫通穴(24)内に挿入されて固定されている。右側タンク(15)の右側凝縮用ヘッダ(3)の周壁におけるスリット(26)の長さ方向の中間部には、仕切板(23)および冷媒通過部材(25)が通過しうる大きさの方形の貫通穴(36)が形成されている。そして、仕切板(23)および冷媒通過部材(25)が、スリット(26)および貫通穴(36)を通して右側凝縮用ヘッダ(3)内に嵌め入れられた後に、貫通穴(36)が、右側凝縮用ヘッダ(3)の周壁外面に接合された閉鎖部材(37)により閉鎖されている。
【0034】
図7に示す液相冷媒分離手段(40)の場合、仕切板(23)にだ円形の貫通穴(41)が形成され、横断面形状がだ円形の冷媒通過部材(42)の下端部が、貫通穴(41)内に嵌め入れられて仕切板(23)に固定されている。
【0035】
図8に示す液相冷媒分離手段(45)の場合、仕切板(23)に半円形の冷媒通過穴(46)が形成されており、仕切板(23)の上面における冷媒通過穴(46)の周囲の部分に、右側凝縮用ヘッダ(3)内における仕切板(23)の上下両側部分を通じさせる横断面半円形の冷媒通過部材(47)が、立ち上がり状に一体に形成されている。
【0036】
上記実施形態においては、凝縮部の冷媒凝縮パスの数は2つであるが、これに限定されるものではなく、3以上であってもよい。この場合、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パス間に液相冷媒流通管が配置されるとともに、上側の冷媒凝縮パスから流れてきた気液混相の冷媒から液相冷媒を分離し、液相冷媒流通管内に送る液相冷媒分離手段が設けられる。
【0037】
また、上記実施形態においては、コンデンサは凝縮部および過冷却部を有しているが、これに限定されるものではなく、凝縮部のみを有するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明によるコンデンサの実施形態の全体構成を示す正面図である。
【図2】図1のコンデンサの右側タンクの要部を示す垂直断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図1のコンデンサの右側タンクの要部を示す分解斜視図である。
【図5】図1のコンデンサの作動時の気相冷媒と液相冷媒との分布状況を示す模式図である。
【図6】液相冷媒分離手段の変形例を示す図4相当の図である。
【図7】液相冷媒分離手段の他の変形例を示す斜視図である。
【図8】液相冷媒分離手段のさらに他の変形例を示す斜視図である。
【図9】特許文献1記載のコンデンサの作動時の気相冷媒と液相冷媒との分布状況を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
(1):コンデンサ
(1A):凝縮部
(1B):過冷却部
(2)(3):凝縮用ヘッダ
(4):凝縮用熱交換管
(5):コルゲートフィン
(7)(8):過冷却用ヘッダ
(9):過冷却用熱交換管
(13):受液器
(14)(15):タンク
(16):仕切部材
(21):液相冷媒流通管
(22)(35)(40)(45):液相冷媒分離手段
(23):仕切板
(25)(42)(47):冷媒通過部材
(P1):第1冷媒凝縮パス
(P2):第2冷媒凝縮パス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に間隔をおいて配置された上下方向にのびる2つの凝縮用ヘッダと、両凝縮用ヘッダ間に上下方向に間隔をおいて並列状に配置されかつ両端部が両凝縮用ヘッダにそれぞれ接続された複数の凝縮用熱交換管と、隣接する凝縮用熱交換管間に配置されたフィンとを備えており、上下に連続して並んだ複数の凝縮用熱交換管からなりかつ冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスが上下に並んで複数設けられ、各冷媒凝縮パスを構成する全ての凝縮用熱交換管の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの冷媒凝縮パスの凝縮用熱交換管の冷媒流れ方向が異なっているコンデンサであって、
上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パス間において、両凝縮用ヘッダ間に液相冷媒流通管が配置されるとともに、液相冷媒流通管の両端部が両凝縮用ヘッダに接続され、液相冷媒流通管内での液相冷媒の流れ方向が、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パスのうち下側の冷媒凝縮パスを構成する凝縮用熱交換管内の冷媒の流れ方向と同方向となされ、両凝縮用ヘッダのうち液相冷媒流通管の冷媒流れ方向上流側の凝縮用ヘッダ内に、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パスのうち上側の冷媒凝縮パスから流れてきた気液混相の冷媒から液相冷媒を分離し、液相冷媒流通管内に送る液相冷媒分離手段が設けられているコンデンサ。
【請求項2】
液相冷媒分離手段が、上下に隣り合う2つの冷媒凝縮パスのうち下側の冷媒凝縮パスの最上位の凝縮用熱交換管と、最下位の液相冷媒流通管との間に設けられ、かつ凝縮用ヘッダ内を上下に仕切るとともに冷媒通過穴を有する仕切板、および仕切板に上方突出状に設けられ、かつ凝縮用ヘッダ内における仕切板の上下両側部分を通じさせる筒状の冷媒通過部材よりなり、冷媒通過部材の上端が最上位の液相冷媒流通管よりも上方に位置している請求項1記載のコンデンサ。
【請求項3】
両凝縮用ヘッダの下方に、それぞれ当該両凝縮用ヘッダと非連通状になるように過冷却用ヘッダが設けられ、両過冷却用ヘッダ間に、複数の過冷却用熱交換管が上下方向に間隔をおいて配置されるとともに、過冷却用熱交換管の両端部が両過冷却用ヘッダに接続されている請求項1または2記載のコンデンサ。
【請求項4】
左右方向に間隔をおいて配置された上下方向にのびる1対のタンクが、同一高さ位置において仕切部材によって仕切られることによって、凝縮用ヘッダと過冷却用ヘッダとが上下に並んで設けられ、当該仕切部材よりも上方の部分が凝縮部となるとともに、同下方の部分が過冷却部となっており、いずれか一方のタンクに受液器が取り付けられ、凝縮部から流出した冷媒が受液器を経て過冷却部に送られるようになされている請求項3記載のコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−65880(P2010−65880A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230968(P2008−230968)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】