コンドロイチンの製造方法
【課題】 従来まで廃棄されていたサメの加工残渣からであっても骨組織を容易に分離でき、さらに、分離した骨組織からコンドロイチン硫酸を製造することができる方法を提供する。
【解決手段】 サメの加工残渣(組織集合体)を、−20℃に凍結させた状態で凍結粉砕し、得られる粉砕粒子群を分級することによって、筋肉組織および骨組織が混在する加工残渣から当該骨組織を容易に分離することができ、分離した骨組織からコンドロイチン硫酸を製造することができる。
【解決手段】 サメの加工残渣(組織集合体)を、−20℃に凍結させた状態で凍結粉砕し、得られる粉砕粒子群を分級することによって、筋肉組織および骨組織が混在する加工残渣から当該骨組織を容易に分離することができ、分離した骨組織からコンドロイチン硫酸を製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンドロイチンの製造方法に関し、より詳細には、コンドロイチンを、サメの加工残渣から分離した骨組織から製造するための製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康を意識した食品の開発が活発に行われており、例えばサメの軟骨に多く存在するコンドロイチンは、1960年代初期に医療用医薬品として認可されて以来、内服薬、注射薬、点眼薬として幅広く使用されており、特に、関節痛、肩間接周囲炎、腰痛症に対する関節軟骨の働きを補う用途として、また、眼角膜表層の保護等として注目されている。
【0003】
サメの軟骨やサメの肝油由来の医薬品・健康食品は、コンドロイチン以外にも、コラーゲン、ミネラル、スクワレン等のなどが注目を集めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したようなコンドロイチンを始めとするサメの軟骨(これを以下で、骨組織と呼ぶことがある)由来の成分は、海外に依存しているのが現状である。具体的には、日本国内で利用されているサメ由来の医薬品・健康食品の原料の多くはオーストラリアからの輸入品である。オーストラリアでは、サメの骨組織のみを得るためだけにサメの全魚体を利用している。
【0005】
サメ由来の医薬品・健康食品の原料を海外からの輸入に依存している原因としては、日本国内におけるサメの加工技術が挙げられる。サメは日本国内においても漁獲されており、尾鰭・背鰭・胸鰭などはフカヒレの材料として加工され、身は切り身として加工されているが、コンドロイチンを始めとする有用な成分が豊富に含まれている骨組織を含んだ頭部や中落ちは、加工残渣として焼却処分されている。その理由としては、日本国内のサメの加工技術では、加工残渣には皮や骨や肉が混在した状態となっており、加工残渣から骨組織を分離しようとしても、非常に労力を要してしまい生産性を向上させることが困難である。さらに、サメは肉組織に尿素を多量に含んでいるため、加工処理時間の経過とともにこの尿素が細菌によってアンモニアに分解され、強い臭気を伴う。このことも、加工残渣からの骨組織の分離(回収)をさらに困難なものとしている。
【0006】
以上のような理由から、現状では、日本国内で排出されるサメの加工残渣を再資源化することは困難であり、よって、焼却処分するしかないのが現状となっている。したがって、当然のことながら、サメの加工残渣から骨組織を分離するといった技術も全く確立されていない。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来まで廃棄されていたサメの加工残渣からであっても骨組織を容易に分離でき、さらに、分離した骨組織からコンドロイチンを製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記の問題点に鑑みて鋭意検討した結果、凍結粉砕処理および、ふるいを用いた分級処理を行うことによって加工残渣から骨組織を分離できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本願発明者らは、これまで、数々の食品素材を用いて、これらを凍結させ、凍結後の当該素材の性質の違いについて研究してきた。その研究過程で、本願発明者らは、凍結させた後で粉砕させた素材が、その種類によって粒子径に差を生じることを見出した。本願発明者らは、この点に着目し、粉砕粒子をふるい分級することによって、素材の種類を分別することができるのではないかと鋭意検討し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明のコンドロイチンの製造方法は、筋肉組織および骨組織を含む組織集合体を用いてコンドロイチンを製造するコンドロイチンの製造方法であって、上記組織集合体を凍結粉砕して、粉砕粒子群を得る凍結粉砕工程と、上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群から、上記骨組織からなる粉砕粒子を分級する分級工程とを含み、上記分級工程では、所定の粒子径を有する粉砕粒子を分級することを特徴としている。
【0011】
また、上記のコンドロイチンの製造方法は、上記分級工程では、上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群を、互いに異なる目開きの大きさを有する複数のふるいを用いて分級することが好ましい。
【0012】
また、上記のコンドロイチンの製造方法は、上記骨組織が、サメの軟骨であることが好ましい。
【0013】
また、上記のコンドロイチンの製造方法は、上記凍結粉砕工程において、上記組織集合体が−15℃〜−30℃で凍結していることが好ましい。
【0014】
また、上記のコンドロイチンの製造方法は、上記組織集合体が、サメ由来であるとともに、尾鰭、背鰭、胸鰭、および身といった加工部位を回収した後に排出される、頭部や中落ちを含む加工残渣であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコンドロイチンの製造方法は、筋肉組織および骨組織を含む組織集合体を用いてコンドロイチンを製造するコンドロイチンの製造方法であって、上記組織集合体を凍結粉砕して、粉砕粒子群を得る凍結粉砕工程と、上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群から、上記骨組織からなる粉砕粒子を分級する分級工程とを含み、上記分級工程では、所定の粒子径を有する粉砕粒子を分級することを特徴としている。
【0016】
これにより、従来まで廃棄されていたサメの加工残渣(すなわち、組織集合体)を用いた場合であっても、当該加工残渣から骨組織を容易に分離することが可能となるとともに、当該加工残渣に含まれる骨組織から容易にコンドロイチンを製造することができる。
【0017】
すなわち、従来は、上記したような加工残渣における問題が、当該加工残渣からの骨組織の分離を困難なものとさせていたが、本発明によれば、上記分級工程において所定の粒子径を有する粉砕粒子を分級することにより、機械的に、凍結粉砕した組織集合体の粉砕粒子群から骨組織からなる粉砕粒子群を分級することができる。
【0018】
特に、サメの加工残渣を用いる場合は、上記組織集合体の温度を−15℃〜−30℃の範囲に設定することにより、凍結粉砕工程によって得られる粉砕粒子群において、筋肉組織からなる粉砕粒子の粒子径と、骨組織からなる粉砕粒子の粒子径との差が最も大きくなる。これにより、分級工程において凍結粉砕工程によって得られる粉砕粒子群から骨組織からなる粉砕粒子をより正確に分離(分級)することが可能となる。
【0019】
よって、本発明によれば、日本国内にて加工された後のサメの加工残渣を用いた場合であっても、当該加工残渣から骨組織を機械的に分離することが可能となり、当該骨組織を容易に分離・回収することができる。
【0020】
したがって、本発明によれば、容易に分離・回収した当該骨組織からコンドロイチンを製造することができるので、製造コストを低減させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施形態について説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施の形態においては、筋肉組織と骨組織を含む組織集合体(加工残渣)として、サメの頭部を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、筋肉組織と骨組織を含む部位であればサメの他の部位であっても適用することができる。さらに、サメだけではなく、骨組織にコンドロイチン等の複合多糖を含有する他の生体,例えば魚類や陸上動物などであっても本発明を適用することが可能である。また、以下の説明では、本発明のコンドロイチンとして「コンドロイチン硫酸」を挙げて説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、コンドロイチンポリ硫酸やケラタン硫酸などの複合多糖であっても本発明を適用することができる。
【0022】
(1)コンドロイチン硫酸
コンドロイチン硫酸は、軟骨、角膜、血管壁など結合組織に広く分布する分子量2万〜5万の酸性ムコ多糖(アミノ基を含む多糖)で、N−アセチル−D−ガラクトサミンとD−グルクロン酸の2糖と硫酸残基で構成されている。
【0023】
コンドロイチン硫酸は、硫酸基の結合位置によって、A、C、D、E、K等のタイプに分けられる。サメの場合では、頭骨、中骨、鰭の軟骨に、コンドロイチン硫酸C(D−ガラクトサミンのC−6位に硫酸基が結合)とコンドロイチン硫酸D(D−ガラクトサミンのC−6位およびD−グルクロン酸のC−2位に硫酸基が結合)が多く含まれていることが知られている。組織中のコンドロイチン硫酸含量はサメの種類によって変動し、乾燥重量あたり約10%前後であると言われている。ここでは、サメ軟骨に主に含まれるコンドロイチン硫酸Cの構造を図1に示す。
【0024】
なお、サメ軟骨は、ムコ多糖と高分子蛋白質で構成されており、カルシウムなど一般の骨核を成す成分は含まれていない。
【0025】
また、通常、コンドロイチン硫酸は、生体内では蛋白質と結合したコンドロイチン硫酸蛋白質複合体として存在しており、サメ軟骨から精製されたコンドロイチン硫酸蛋白質複合体は、白色粉体で水に完全に溶解し、水溶液は弱酸性を呈することが知られている。
【0026】
本実施形態では、上記のような有用な成分であるコンドロイチン硫酸を、サメ軟骨(より具体的にはサメの加工残渣)を用いて、製造するための方法および、この方法を行なうにあたって使用する装置について説明する。
【0027】
加工に使用するための尾鰭・背鰭・胸鰭や身などを回収した後の、いわゆる加工残渣は皮や骨や肉が混在した状態となっているため、例えば、従来において、加工従属者が手作業でこの加工残渣から骨組織を分離するという作業は、非常に困難であった。加えて、サメは肉組織に尿素を多量に含んでいることから、加工処理時間の経過とともにこの尿素が細菌によってアンモニアに分解されて強い臭気を伴い、加工従属者にとって、加工残渣からの骨組織の分離作業はさらに困難なものとなっていた。このような現状から、日本国内で利用されているサメ由来の医薬品・健康食品の原料の大部分はオーストラリアからの輸入品に依存している。オーストラリアでは、日本国内のサメ加工処理において問題となっていた作業の困難性は回避するため、サメの軟骨組織のみを得るためだけにサメの全魚体を利用している。これにより、作業の困難性は回避されるものの、軟骨組織のみが回収され、他の部位は廃棄処分されているため、価格が低く抑えることが難しい。そこで、本実施形態では、特に、上述したような筋肉組織および骨(軟骨)組織が混在した加工残渣を用いた場合であっても、簡易な方法によって骨組織を分離することができ、分離した骨組織からコンドロイチン硫酸を製造することが可能な製造方法および、この方法を行なうにあたって使用する装置について説明する。
【0028】
(2)組織集合体からの骨組織の分離
本実施の形態では、筋肉組織と骨組織が混在している組織集合体からの当該骨組織の分離は、以下の基本原理に基づく。
【0029】
(2−a)基本原理
ゴムのような弾性体であっても、脆化点以下に冷却すると大変脆くなる性質をもつ。この性質は一般に低温脆弱性と呼ばれており、脆化点以下に冷却することによって容易に粉砕することができる。さらに、この性質を利用して物質を粉砕する場合、この脆化点を境に、粉砕粒子の大きさが異なる。すなわち、脆化点より低い温度では、物質が脆い状態(これを、脆性破壊領域と呼ぶ)にあるため、粉砕粒子は微細になる。一方、脆化点より高い温度(これを、延性破壊領域と呼ぶ)では、物質が壊れにくいため、粉砕粒子は粗大な粒子になる。
【0030】
ここで、例えば、ある脆化点を有する物質Aと、この物質Aより低い脆化点を有する物質Bとからなる二成分混在体から、物質Aまたは物質Bを分離する方法を考える。上述の脆化点を考慮すれば、物質Aの脆化点と物質Bの脆化点との間の温度を選び、その温度で二成分混在体の粉砕を行うことにより、物質Aと物質Bをそれぞれ分離できる可能性が考えられる。つまり、二成分混在体の両物質の破壊頻度が同じであることを前提とすれば、物質Aは脆化点以下の温度(脆性破壊領域内)において粉砕が行なわれるため、粉砕粒子は微細な粒子となる。一方、物質Bは脆化点より高い温度(延性破壊領域内)において粉砕が行なわれるため、粉砕粒子は粗大な粒子となる。そこで、この混在粉砕粒子群を、例えば適切な目開きのふるいを用いて分級することによって、互いに粒子径の異なる物質Aと物質Bの分離が可能となる。
【0031】
この原理を利用し、本実施形態では加工残渣の中からの骨組織を分離回収できるのではないかと考えた。頭部や中落ちが混在するサメの加工残渣を例に取ると、筋肉組織および骨組織などはそれぞれ異なった低温脆弱性を持つ。そこで、ある最適な温度でこの加工残渣を凍結粉砕することで、筋肉組織および骨組織をそれぞれ異なった粒子径を持つ粉砕粒子群にでき、これを適切な目開きのふるいを用いて分級することにより、加工残渣(組織集合体)からの骨組織の分離回収が可能になる。
【0032】
本発明の製造方法および製造装置は、以上のような基本原理に基づいて、筋肉組織および骨(軟骨)組織が混在した加工残渣から骨組織(軟骨)を分離することを目的とするものである。
【0033】
(2−b)凍結粉砕操作(凍結粉砕工程)
図2(a)および(b)は、本実施の形態において、筋肉組織および骨組織が混在する組織集合体を凍結粉砕するための凍結粉砕装置の構成を示す図であり、図2(a)は、この凍結粉砕装置の側面図であり、図2(b)は、図2(a)に示した凍結粉砕装置に設けられたスクリーンの構成を示した拡大平面図である。この凍結粉砕装置1は、上記した基本原理に基づいて、制御温度下で凍結した組織集合体を粉砕(凍結粉砕)するための装置である。そのため、凍結粉砕装置1は、投入部2と、粉砕部3と、スクリーン4と、連通路5と、恒温槽6と、凍結温度制御部7とを備えている。
【0034】
上記投入部2は、凍結粉砕に供される、筋肉組織および骨(軟骨)組織が混在する組織集合体を投入するための投入口である。投入部2では、図示しない凍結手段によって凍結した上記組織集合体(以下、凍結した組織集合体を単に組織集合体と呼ぶことがある)が投入される構成となっている。投入部2では、凍結した組織集合体の凍結温度は凍結温度制御部7によって制御されている。
【0035】
なお、本実施の形態の凍結粉砕装置1では、凍結温度制御部7によって装置全体が設定温度下で温度制御されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の凍結手段を用いることによって、投入部2内にて組織集合体を凍結させる構成としてもよく、後述する実施例にあるように凍結粉砕装置1を予め液体窒素で十分に冷却しておく構成であってもよい。
【0036】
また、凍結粉砕装置1は、組織集合体および/または凍結粉砕粒子が凍結粉砕装置1内を重力に従って恒温槽6まで移動する構成となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば組織集合体は、ベルトコンベアによって粉砕部3に送られる構成であってもよい。
【0037】
上記粉砕部3は、上記投入部2に外部から投入された組織集合体を実際に凍結粉砕するために設けられている。粉砕部3も、上記投入部2と同様に、組織集合体および/または粉砕粒子の温度は凍結温度制御部7によって制御されている。粉砕部3は、図示するように、回転刃8および固定刃9が設けられている。上記回転刃8および固定刃9によって、粉砕機に投入された試料は、粉砕部で固定刃と回転刃によって打撃・破壊される。具体的には、試料が固定刃と回転刃に挟まれ、高速回転している回転刃により試料が衝撃的な打撃力により破壊される。
【0038】
上記回転刃8は、図示しない回転制御部によって回転数が制御されている。具体的には、800〜1200rpmの範囲に制御されていることが好ましく、900〜1100rpmの範囲に制御されていることがより好ましく、約1000rpmに制御されていることが最も好ましい。回転数が800rpmを下回ると、回転刃8が組織集合体に及ぼす「粉砕に必要なエネルギー」が弱いため、粉砕が十分に行なわれないため、上記した基本原理に基づいた分級操作に適用することができない。一方、回転数が1200rpmを上回ると、回転刃8が組織集合体に及ぼす「粉砕に必要なエネルギー」が強く、粉砕が過剰に起きてしまうため、上記した基本原理に基づいた分級操作に適用することができない。したがって、回転刃8の回転数は、上記の範囲とすることが好ましい。
【0039】
なお、粉砕部3において良好な粉砕を実施することができるように、当該粉砕部3に導入される組織集合体の量を一定量に調節するための図示しない調節手段が設けられてもよい。
【0040】
上記スクリーン4は、粉砕部3の下方に設けられており、当該粉砕部3によって粉砕された粉砕粒子が通過するように配置されている。スクリーン4も、上記投入部2および粉砕部3と同様に、凍結温度制御部7によって温度制御されている。
【0041】
上記スクリーン4には、図2(b)に示すように、開口径5mmの目開き4aが設けられている。粉砕部3によって粉砕された粉砕粒子のうち、粒子径5mm未満の粉砕粒子はこの目開き4aを通過してスクリーン4の下方に設けられた連通路5を介して恒温槽6内に落下し、粒子径5mm以上の粉砕粒子は目開き4aを通過せずスクリーン4上に堆積する構成となっている。
【0042】
なお、スクリーン4上に堆積した粒子径5mm以上の粉砕粒子は、粉砕部3に投入して、再び凍結粉砕に供することが可能である。なお、再び凍結粉砕に供する際、スクリーン4を粉砕部3の下方から取り外して手動により粉砕部3に再投入する構成としてもよく、他の構成部材を用いて自動で再投入される構成であってもよい。また、このようにスクリーン4上に堆積した粉砕粒子を粉砕部3に再投入する場合は、凍結温度を維持した状態で行われる構成であってもよく、粉砕部3への投入時に投入部2(および粉砕部3)によって再度温度管理が行われる構成であってもよい。
【0043】
上記連通路5は、上記スクリーン4の下方に設けられており、スクリーン4の目開き4aを通過した粉砕粒子を、恒温槽6に導入するために設けられている。連通路5も、上記投入部2と粉砕部3とスクリーン4と同様に、凍結温度制御部7によって温度制御されている。
【0044】
上記恒温槽6は、上記粉砕部3によって凍結粉砕された粉砕粒子群を蓄積するために設けられており、液体窒素で満たされている。上記粉砕部3によって凍結粉砕され、スクリーン4と連通路5を通過した粉砕粒子群は、この液体窒素中に落下する。恒温槽6は、断熱効果を有する材料から構成されるものであればよく、具体的には発泡スチロールによって構成することができる。
【0045】
上記の構成を備えた凍結粉砕装置1を用いることによって、筋肉組織および骨(軟骨)組織が混在する組織集合体(加工残渣)の凍結粉砕は以下のようにして行われる。
【0046】
なお、この組織集合体は、皮を予め除去しておくことが好ましい。手作業にて行なうことが可能であるが、これ以外にも、凍結粉砕装置を用いて凍結粉砕により皮を除去することも可能である。
【0047】
凍結粉砕装置1の投入部2に投入される組織集合体は、上記したように、投入部2に投入される前に適切な凍結温度になるような構成としてもよく、投入部2内で凍結する構成であってもよい。以下に、この適切な凍結温度について詳述する。なお、以下の説明では、この「適切な凍結温度」を、分離可能温度と呼ぶことがある。
【0048】
本願発明者らによって提案された上記した本発明の基本原理は、物質Aの脆化点と物質Bの脆化点との間の温度で凍結粉砕することによって、物質Aは、脆化点以下の温度で粉砕が行なわれるため微細な粒子となり、物質Bは、脆化点より高い温度で粉砕が行なわれるため粗大な粒子となることを利用し、互いに粒子径の異なる物質Aと物質Bとを分離するというものである。そこで、本願発明者らは、サメの加工残渣に含まれる筋肉組織および骨組織が、異なる脆化点を有することに着目し、上記の基本原理によって加工残渣(組織集合体)からの骨組織を分離回収することができるのではないかと考え、本発明を完成するに至った。そこで、組織集合体からの骨組織を分離回収するためには、分離可能温度の特定が必要となる。詳細は、後の実施例にて説明しているが、まず、本願発明者らは、筋肉組織および骨組織をそれぞれ単独で用い、それぞれの粉砕性について検討した。その結果、−15℃〜−30℃の温度範囲において凍結粉砕した場合に、粉砕後の骨組織の粉砕粒子径と、筋肉組織の粉砕粒子径との差が大きくなることがわかった。具体的には、上記の温度範囲において、筋肉組織と骨組織における凍結粉砕後の粒子径分布を比較した場合、筋肉組織の方が、骨組織より平均粒子径が小さく、筋肉組織は微細な粒子に、骨組織は粗大な粒子になる傾向が見られた。
【0049】
そこで次に本願発明者らは、上記した単独の粉砕性検討結果が、筋肉組織と骨組織とが混在した組織集合体(加工残渣)においても適用するか否かを検討したところ、詳細は後の実施例において説明しているが、組織集合体における筋肉組織および骨組織の粉砕性は、個々の組織の粉砕性検討結果とほぼ一致していることが明らかとなった。すなわち、−15℃〜−30℃の温度範囲においてサメの加工残渣を凍結粉砕すれば、後述する分級操作によって骨組織と筋肉組織とを分離できることが示された。
【0050】
なお、本実施の形態では、−15℃〜−30℃の温度範囲を分離可能温度とすることが好ましいが、−18℃〜−22℃の温度範囲を分離可能温度とすることが最も好ましい。
【0051】
すなわち、本実施の形態では、組織集合体が、凍結粉砕装置1の投入部2に投入される前に、−15℃〜−30℃の範囲まで凍結されていてもよく、投入部2内で−15℃〜−30℃の範囲に凍結される構成であってもよい。
【0052】
なお、上述したように、本実施形態の凍結粉砕装置1には、粉砕部3において良好な粉砕を実施することができるように、当該粉砕部3に導入される組織集合体の量を一定量に調節するための調節手段が設けられていてもよい。また、粉砕部3における良好な粉砕を実施するために、粉砕部3に送り込まれる組織集合体の大きさは、1〜4cm3とすることが好ましい。例えば、1×1×1cm3〜1×2×2cm3とすることができる。しかしながら、この大きさは、凍結粉砕装置1の大きさ、具体的には粉砕部3と投入部2との連結部分の大きさや回転刃8および固定刃9の大きさ等によって適宜設定することが好ましいため、本発明が上記の範囲に限定されるものではない。
【0053】
上記した温度範囲で凍結した組織集合体が投入部2から粉砕部3に送り込まれると、組織集合体は、当該粉砕部3の回転刃8および固定刃9によって、粉砕機に投入された試料は、粉砕部で固定刃と回転刃によって打撃・破壊される。具体的には、試料が固定刃と回転刃に挟まれ、高速回転している回転刃により試料が衝撃的な打撃力により破壊される。
【0054】
なお、後の分級操作において骨組織を良好に分級するためには、粉砕部3に投入される組織集合体の量を上記した調節手段によって調節することが好ましく、さらに、一度、粉砕部3に投入された組織集合体の全てがスクリーン4を通過した後で、新たな組織集合体が粉砕部3に投入されることが好ましい。粉砕部3に投入される組織集合体の全てがスクリーン4を通過するために、スクリーン4は、上記したように、当該スクリーン4上に蓄積した粉砕粒子(本実施形態では粒子径5mm以上の粉砕粒子)を、再び粉砕部3に投入して凍結粉砕に供することができるように構成されている。すなわち、粉砕部3では、組織集合体を凍結粉砕するとともに、所望の大きさの粉砕粒子を得るために当該所望の大きさよりも大きい粉砕粒子を粉砕することもできる。
【0055】
上記粉砕部3によって凍結粉砕され、スクリーン4と連通路5を通過した粉砕粒子群は、恒温槽6の液体窒素中に落下する。恒温槽6の液体窒素中した粉砕粒子は、例えば約−30℃の冷凍庫内で液体窒素を完全に蒸発させ、続く分級操作に供することができる。しかしながら、冷凍庫内の温度は上記に限定されるものではなく、粉砕粒子がその形状を維持することができる温度であればよい。
【0056】
(2−c)分級操作(分級工程)
図3は、本実施の形態において、上記の凍結粉砕装置1によって粉砕された粉砕粒子群から、骨組織からなる粉砕粒子群を分級するための分級装置10の構成を示す斜視図である。そのため、この分級装置10は、ふるい11(11a〜11g)と、振とう手段12と、受け皿13と、フタ14とを備えている。
【0057】
上記ふるい11は、上記の凍結粉砕装置1によって粉砕された粉砕粒子群をその粒子径別に分級するために設けられている。ふるい11a〜11gそれぞれには、上記の(2−b)凍結粉砕操作において凍結粉砕装置1(図2(a))に配設されたスクリーン4(図2(a)および(b))と同様、目開きが設けられており、各ふるい11a〜11gの目開きの径は互いに異なっている。例えば、後述する実施例のように、JIS標準ふるい(目開き:0.355mm、0.50mm、0.71mm、1.00mm、1.41mm、2.00mm)を用いることができる。そして、図3のように、小さな目開きのふるいから順に上に重ね、最下段に受け皿13を設け、最上段にフタ14を設けた構成とすることができる。
【0058】
上記振とう手段12は、ふるい11aに投入された粉砕粒子群が各ふるい11a〜11gによって分級されるようにふるい11を振とうさせるために設けられている。上記振とう手段12には、従来公知の振とう器を用いることができる。
【0059】
上記のような構成を備えた分級装置10を用いることによって、上記の凍結粉砕操作によって粉砕された粉砕粒子群からの、骨組織からなる粉砕粒子群の分級は、以下のようにして行われる。
【0060】
ふるい11のうち、一番上のふるい11aに上記の凍結粉砕装置1によって粉砕された粉砕粒子群を投入すると、ふるい11aに設けられた目開きの径よりも径の小さな粉砕粒子が当該目開きを通過してふるい11aの下方に設けられたふるい11bに落下し、当該目開きの径よりも大きい径の粉砕粒子はふるい11aに残存する。一方、ふるい11bに落下した粉砕粒子は、次に、ふるい11bに設けられた目開きの径よりも径の小さな粉砕粒子が当該目開きを通過してふるい11bの下方に設けられたふるい11cに落下し、当該目開きの径よりも大きい径の粉砕粒子はふるい11bに残存する。このように各ふるいの目開きの径によって上記の凍結粉砕装置1によって粉砕された粉砕粒子群が分級される。
【0061】
なお、本実施の形態では、ふるい11として7種類のふるい(ふるい11a〜11g)を用いているが、本発明はその数に限定されるものではなく、分級した粉砕粒子の径によって適宜設定することが可能である。
【0062】
(3)骨組織からのコンドロイチン硫酸の製造(抽出工程)
上記した凍結粉砕操作および分級操作によって組織集合体(加工残渣)から分離した骨組織からのコンドロイチン硫酸の製造(抽出)は、以下のような手法によって行われる。
【0063】
分離した骨組織を乾燥し、10%食塩水を加え攪拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液でpH12.0に調整する。これを室温で2時間攪拌抽出する。さらに55℃の湯浴中で、1時間攪拌抽出する。次にこれを遠心分離し、残渣を再び10%食塩水で攪拌抽出し、遠心分離する。両回の上澄み液を合わせ、硫酸でpH2.0〜2.5に調整する。このとき生成する沈殿は、遠心分離で除去する。この上澄み液に蒸留水を加え、さらにカチオン界面活性剤を加えて攪拌し、1時間放置する。次にろ過助剤(セライト)を加え、攪拌しながら吸引ろ過を行う。この際、ろ液が透明になるまで、ろ過を反復する。ヌッチェロートに集めた沈殿を蒸留水で洗浄する。この沈殿を10%食塩水で抽出し、ろ過する。このろ液にエチルアルコールを加えると、析出物を生じるので遠心分離で回収し、乾燥させる。以上の方法により,コンドロイチン硫酸ナトリウムを抽出する。(「井谷彰,柴田哲夫,食品中のコンドロイチン硫酸ナトリウムの分析,食品衛生学会誌,5,246-249(1964).」参考)
以上のように、本発明に係るコンドロイチン硫酸の製造方法は、筋肉組織および骨組織を含む組織集合体を用いてコンドロイチン硫酸を製造するコンドロイチン硫酸の製造方法であって、上記組織集合体を凍結粉砕して、粉砕粒子群を得る凍結粉砕工程と、上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群から、上記骨組織からなる粉砕粒子を分級する分級工程と、上記分級工程によって分級された上記粉砕粒子からコンドロイチン硫酸を抽出する抽出工程とを含み、上記分級工程では、所定の粒子径を有する粉砕粒子を分級することを特徴としている。
【0064】
これにより、従来まで廃棄されていたサメの加工残渣(すなわち、組織集合体)を用いた場合であっても、骨組織を機械的に分離することが可能となり、当該骨組織からコンドロイチン硫酸を製造することができる。
【0065】
すなわち、従来は、上記したような加工残渣における問題が、当該加工残渣からの骨組織の分離を困難なものとさせていたが、本発明によれば、上記分級工程において所定の粒子径を有する粉砕粒子群を分級することにより、凍結粉砕した組織集合体の粉砕粒子群から骨組織からなる粉砕粒子群を分級することができる。
【0066】
具体的には、上記組織集合体の温度を−15℃〜−30℃の範囲に設定することにより、凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群における、筋肉組織からなる粉砕粒子の粒子径と、骨組織からなる粉砕粒子の粒子径との差が最も大きくなる。これにより、分級工程において分級をより正確に実施することが可能となる。
【0067】
よって、本発明によれば、日本国内にて加工された後のサメの加工残渣を用いた場合であっても、当該加工残渣から骨組織を機械的に分離することが可能となり、当該骨組織を容易に分離・回収することができる。
【0068】
したがって、本発明によれば、容易に分離・回収した当該骨組織からコンドロイチン硫酸を製造することができるので、製造コストを低減させることが可能となる。
【0069】
なお本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られるものについても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をより具体的に説明する。本実施例では、上述したように、サメの頭部や中落ちといった加工残渣を、筋肉組織および骨組織を含む組織集合体とし、当該筋肉組織および骨組織それぞれにおける粉砕性の検討結果が、組織集合体の粉砕性に直接反映されると考えた。
【0071】
そこで、本実施例では、まず、サメの加工残渣(組織集合体)の構成要素である筋肉組織および骨組織をそれぞれ単独で用い、各組織の凍結温度を変化させて、各凍結温度下で凍結粉砕を行い、凍結温度と、粉砕した組織の粒子径分布、および化学的成分との関係についてそれぞれ評価した。
【0072】
続いて本実施例では、上記の評価結果に基づいて、組織集合体からの骨組織の分離・回収に最も適した凍結粉砕および分級操作の条件について検討を行った。また、これと同時に凍結粉砕後の粉砕粒子の化学的成分の測定を行った。
【0073】
なお、以後の説明において、筋肉組織および骨組織をそれぞれ単独で用いた場合の組織を総称して、単一組織と呼ぶ場合がある。
【0074】
〔単一組織の凍結粉砕と、凍結粉砕後の粉砕粒子の粒子径分布、および化学的成分の凍結粉砕温度依存性〕
まず、本発明の着眼点である物質の破壊挙動に与える組織凍結温度の影響を検討した。具体的には、実際の凍結粉砕操作において、各組織(筋肉組織および骨組織)の粉砕性に及ぼす凍結粉砕温度の影響を調べた。
【0075】
筋肉組織および骨組織として、宮城県気仙沼産のモウカサメ(ネズミザメ、salmon shark, Lamna ditropis Hubbs et Follett)の頭部および中落ちを用いた。これらは、加工残渣として約−30℃の冷凍庫内に保存しておいたものである。この加工残渣を室温で解凍した後、手作業によって筋肉組織および骨組織に分けた。その後、筋肉組織および骨組織それぞれを、カッターによって1×1×1cm3〜1×2×2cm3の切断片に切断し、−80℃、−60℃、−40℃、−20℃にそれぞれ温度設定したストッカーを用意し、各ストッカー内に筋肉組織および骨組織の切断片を保存することによって設定温度まで単一組織のそれぞれを凍結させた。
【0076】
凍結粉砕操作は、以下のようにして行った。
【0077】
凍結破砕操作には、上記した凍結破壊装置1(図2)を用いて行った。具体的には、凍結破壊装置1として、冷却型ウイレー粉砕機(吉田製作製作所(株)製)を使用した。凍結破壊装置1は、液体窒素で十分に冷却しておいた。凍結破壊装置1のスクリーン4には、目開き5mmのスクリーンを用い、粉砕部3の回転刃8の回転数は1000rpmに設定した。
【0078】
筋肉組織の切断片は、−80℃、−60℃、−40℃、−20℃で凍結粉砕操作を行った。また、骨組織の切断片は、−60℃、−40℃、−20℃で凍結粉砕操作を行った。粉砕部3での凍結粉砕にあたっては、粉砕部3(具体的には、投入部2および粉砕部3)への各単一組織の投入量は、上記の切断片に換算して2〜3個とし、また、一度粉砕部3に投入した単一組織がスクリーン4から完全に排出された後、新たな単一組織を投入した。
【0079】
スクリーン4から排出された各単一組織の粉砕粒子群は、液体窒素を満たした恒温槽6(発泡スチロール製)で受けた。
【0080】
恒温槽6内に蓄積された各単一組織の粉砕粒子群(骨組織の粉砕粒子群の総重量:250g、筋肉組織の粉砕粒子群の総重量:250g)は、約−30℃の冷凍庫内で液体窒素を完全に蒸発させ、続く分級操作に供した。
【0081】
分級操作は、以下のようにして行った。
【0082】
分級操作は、上記した分級装置10(図3)を用いて行った。具体的には、ふるい11として、目開き0.355mm(ふるい11f)、0.50mm(ふるい11e)、0.71mm(ふるい11d)、1.00mm(ふるい11c)、1.41mm(ふるい11b)、2.00mm(ふるい11a)のJIS標準ふるいを用いた。図3のように、小さな目開きのふるいから順に上に重ね、最下段に受け皿13を設けた構成とした。分級装置10は、約−20℃の低温室内で予め冷却しておいた。このように、本実施例においては、凍結粉砕した各単一組織をそれぞれ7フラクションに分級する構成とした。
【0083】
ふるい11a(目開き2.00mm)に、上記した凍結粉砕操作によって得られた単一組織の粉砕粒子群を投入し、フタ14をした後、ふるい11を手動で軽く振とうさせた後、振とう手段12として平工製作所(株)製の電磁式振とう器(MVS−2000)を用い、ふるい11を当該振とう手段12上にセットして、30分間振とうさせた。振とう後、各ふるいに残存した粉砕粒子を、予め秤量し低温室内で冷却しておいたサンプル瓶(ポリエチレン製)にそれぞれ移し、再度、各サンプル瓶の重量を測定し、予め秤量しておいたサンプル瓶との重量の差を算出した。この差が、各フラクション(すなわち、各粒子径)の重量である。ここから、各凍結粉砕温度における各単一組織の粉砕性を評価した。
【0084】
図4(a)および(b)に凍結温度−80℃〜−20℃において筋肉組織を凍結粉砕した場合の粒子径分布の凍結温度依存性を示した。また、図5(a)および(b)に凍結温度−60℃〜−20℃において骨組織を凍結粉砕した場合の粒子径分布の凍結粉砕温度依存性を示した。図4(b)、図5(b)では、横軸が対数目盛りの粒子径(mm)、縦軸が対数目盛りの積算ふるい下(%)である。積算ふるい下とは、全粒子の重量の総和を100として各フラクションの重量比を、粒子径の小さいフラクションから順に足し合わせたものである。また、分級操作後、受け皿13(図3)に残ったフラクションは粒子径0mmとしてグラフに示した。
【0085】
筋肉組織では各凍結温度により粉砕粒子の形状が異なり、凍結温度が−80℃〜−40℃の低温の場合、米粒状となったのに対し、凍結温度が−20℃と高温になると、繊維状となった。図4(a)より凍結温度が高くなるほど粒子径1.41mm、2.0mmのフラクション割合が減少し、小粒子側のフラクション割合が高くなる傾向が見られた。また、図4(b)より、各凍結温度での平均粒子径(重量分布50%の粒子径)を比較すると、−80℃〜−40℃において約1.0mmであるのに対し、−20℃において約0.7mmとなった。
【0086】
一般的に、物質の温度を変化させて粉砕を行った場合、脆化点より低い温度では、粉砕粒子は微細になり、脆化点より高い温度では粉砕粒子は粗大な粒子になることから、凍結温度が低いほど小粒子化すると考えられる。しかし、サメの筋肉組織の凍結粉砕を行った場合、凍結温度が高くなるのに伴って、粒子径分布が小粒子側にシフトした。これは、本実施例で用いた凍結粉砕装置の特徴として、粉砕が筋肉組織の周囲から削り取るようにして行われることが原因だと考えられる。凍結温度−20℃は脆化点以上の温度であり、粉砕機に試料を投入した直後の衝撃では、スクリーンから排出されるサイズ以下にまで破壊されにくく、粗大な粒子となる。そのため、排出されるまでに要する時間が長くなり、その間に粗大な粒子の周囲が削り取られ、微細な粒子にまで粉砕されてしまうことが、凍結温度−20℃において平均粒子径が小さくなる要因ではないかと考えられる。
【0087】
一方、骨組織では各凍結温度によって粉砕粒子の形状に違いはなく、−60℃〜−20℃のいずれの凍結温度においても、米粒状となった。図5(a)より、凍結温度が高くなるほど粒子径2.0mmのフラクション割合が減少する傾向が見られたが、どの凍結温度においても、大粒子側のフラクション割合が高い傾向を示した。また、図5(b)より、各凍結温度における平均粒子径を比較すると、−60℃〜−20℃のすべての凍結温度において約1.41mmと同じ値になった。これらのことから、骨組織の凍結粉砕を行う場合、凍結温度は粒子径分布にそれほど影響を与えないことが示唆された。
【0088】
物質を破壊する場合、その物質の脆性−延性遷移が起こる脆化点を境にして、衝撃破壊時の吸収エネルギーは急激に変化する。ところが、脆化点より低い温度帯の脆性破壊領域においては、温度が低くなっても破壊時の吸収エネルギーはほとんど変化しないことが多い。粉砕操作において、破壊時に粒子が吸収する単位質量(もしくは単位体積)当たりのエネルギーの総和が、粉砕に必要なエネルギーと考えた場合、同種の物質において同条件で粉砕操作を行った時、粉砕後の粒子径分布が小さい方が、粒子が破壊時に吸収する単位質量(もしくは単位重量)当たりのエネルギーは小さくなると考えられる。従って、骨組織の場合は、凍結温度が−60℃〜−20℃において粉砕粒子の形状や粒子径分布にあまり変化が見られなかった事より、破壊時の吸収エネルギーはほぼ同じであると考えられる。これより、骨組織において−60℃〜−20℃の温度範囲は、脆性破壊領域の温度帯であると考えた。
【0089】
以上のように、筋肉組織と骨組織それぞれにおける凍結粉砕後の粒子径分布を比較した場合、筋肉組織の方が、骨組織より平均粒子径が小さく、筋肉組織は微細な粒子に、骨組織は粗大な粒子になる傾向が見られた。また、凍結温度毎に筋肉組織および骨組織の粒子径分布を比較すると、凍結温度−20℃において、各組織の粉砕性に最も大きな差が見られたことより、凍結粉砕によりサメ加工残渣から筋肉および骨を分離する場合、凍結温度−20℃が最適温度であると考察した。
【0090】
次に、単一組織粉砕後の粉砕試料の化学的成分(水分、灰分、コンドロイチン硫酸ナトリウム)を粒子径毎に測定し、各組織(筋肉と骨)における化学的成分の特徴、および試料凍結温度と粉砕試料の化学的成分の関係について調べた。
【0091】
化学的成分の測定に用いる試料としては、凍結温度を変化させ、単一組織粉砕を行い、7フラクションに分級後、約−30℃のストッカー中に保存しておいた粉砕粒子を用いた。
【0092】
水分、灰分の定量には、筋肉組織の粉砕粒子(凍結温度:−80℃〜−20℃)、および骨組織の粉砕粒子(凍結温度:−60℃〜−20℃)を用いた。また、コンドロイチン硫酸ナトリウムの定量には、各組織(筋肉と骨)の粉砕性に最も大きな差が見られた凍結温度−20℃で単一組織粉砕を行った筋肉および骨組織の粉砕粒子のみを用いた。
【0093】
(a)水分の定量
常圧加熱乾燥法(日本食品工業学会食品分析法編集委員会編,食品分析法,pp.3-8,光琳,東京(1982).を参照)により水分を測定した。室温で解凍した粉砕粒子約2〜3gを予め重量を測定しておいたアルミホイルで作った皿の中に入れ、電気定温乾燥器(105℃)内で乾燥した。乾燥後、デシケーター内で30分間放冷し、秤量を行い、再度乾燥を行う恒量操作を繰り返した。水分は下記の式(1)より求めた。
【0094】
【数1】
【0095】
なお、ここで、Aはアルミ製容器の重量(g)、Bは乾燥前の容器と粉砕粒子の重量(g)、Cは乾燥後の容器と粉砕粒子の全体重量(g)である。
【0096】
(b)灰分の定量
直接灰化法(日本食品工業学会食品分析法編集委員会編,食品分析法,pp.241-250,光琳,東京(1982).を参照)により灰分を測定した。準備実験として、灰化容器(るつぼ)を約600℃の電気炉で1時間乾燥させた後、約200℃になるまで電気炉内に放置し、デシケーター内で30分間放冷して重量を測定した。これを恒量となった灰化容器の重量とした。
【0097】
室温で解凍した粉砕試料約2〜3gを予め恒量を求めた灰化容器に移し入れ、電気定温乾燥器(105℃)内で20時間乾燥した。バーナーの弱い炎で黒い煙が出なくなるまで少しずつ灰化し、30分間加熱した。その後、電気炉内に入れ、約600℃で6〜8時間保ち、白色になるまで灰化を行った。灰化終了後、約200℃になるまで電気炉内に放置した。デシケーター内で30分間放冷し、秤量を行った。灰分は下記の式(2)より求めた。
【0098】
【数2】
【0099】
なおここで、Aは恒量となった灰化容器の重量(g)、Bは灰化後の灰化容器と試料の重量(g)、Cは試料採取量(g)である。
【0100】
(c)コンドロイチン硫酸ナトリウム(ChSNa)の定量
ChsNaの定量は、カルバゾール硫酸法(T. Bitter and H.M. Muir, A modified uronic acid carbazole reaction, Analytical Biochemistry, 4, 330-334(1962).を参照)とアルシアンブルー法(矢部芳枝,二宮隆博,柏場英明,辰濃隆,岡田太郎,食品中に添加したコンドロイチン硫酸ナトリウムの分析法,食品衛生学会誌,28,13-18(1987).、服部学,有田淳哉,田淵照人,小池茂行,中村洋,アルシアンブルー8GXを用いるコンドロイチン硫酸ナトリウム/ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物の分別定量,分析化学,52,259-263(2003).)を組み合わせた方法により測定した。
【0101】
カルバゾール硫酸法とは、ChSNa中のグルクロン酸の発色色素であるカルバゾール溶液を添加し、分光光度計を用いて吸光度を測定する方法である。濃度を規定したグルクロン酸標準溶液を用いて検量線を作成し、検体中のChSNa含量を求める。カルバゾール硫酸法は、数種類あるChSNaの測定法の中で、代表的な試験法であるが、98℃以上の高温で濃硫酸を反応させ試料を分解するため、危険を伴うという問題点がある。一方、アルシアンブルー法は、ChSNaの発色色素であるアルシアンブルーを添加し、分光光度計を用いて吸光度を測定する方法である。検量線を引く際には、濃度を規定したChSNa標準溶液を用いる。アルシアンブルー法は、安全かつ再現性がよい試験法であるが、現段階ではChSNaの精密な定量法が確立されていないため、含量が規定されたChSNa試薬が市販されていないという問題点があった。そこで本実施例では、まずカルバゾール硫酸法により市販のChSNa試薬(和光純薬(株)製、コンドロイチン硫酸Cナトリウム試薬)の濃度を規定し、この試薬を、アルシアンブルー法を行う際のChSNa標準溶液として用い、粉砕試料中のChSNa含量を測定した。
【0102】
(c−1)カルバゾール硫酸法
コンドロイチン硫酸Cナトリウム試薬(和光純薬(株)製)100mgを正確に秤量後、蒸留水に溶解し全量を100mlとした。次に、この溶液5mlを正確に取り、蒸留水に溶解し全量を100mlとし、これ試験溶液とした。
【0103】
試験溶液、予め作成しておいたグルクロノラクトン標準溶液(和光純薬(株)製)(10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml)、およびブランク(蒸留水)をそれぞれ1mlずつ秤取し、試験管に注入した。それぞれについて2サンプルずつ作成した。試験管を氷水中で冷却しながら、硫酸(和光純薬(株)製)・ホウ砂溶液(和光純薬(株)製)5mlを各試験管に徐々に加え、十分に攪拌した。試験管にビー玉の栓をして、沸騰水浴中にて10分間加熱後、冷却水中で室温まで冷却した。
【0104】
カルバゾール溶液(和光純薬(株)製)0.2mlを加えて十分に攪拌し、再びビー玉で栓をして沸騰水浴中で正確に15分間加熱して発色させた。その後、流水で室温まで冷却した。
【0105】
分光光度計Bio Spec-1600(島津製作所(株)製)を用いて、530nmで吸光度を測定した。標準溶液の吸光度を基に検量線を作成し、検量線より検液中のグルクロノラクトン量を読み取った。読み取った検液中のグルクロノラクトン量より下記の式(3)および(4)に基づきコンドロイチン硫酸Cナトリウム試薬中のChSNa含量を算出した。
【0106】
【数3】
【0107】
【数4】
【0108】
(c−2)アルシアンブルー法
室温で解凍した粉砕粒子約5gにジエチルエーテル50mlを加え、60分間放置して脱脂した。水50mlを加え5000rpmで5分間ホモジナイズした後、3000rpmで10分間遠心分離し、上層のジエチルエーテルを除去した。
【0109】
1N水酸化ナトリウム溶液でpH7に調整した後、アクチナーゼE(科研製薬(株)製)溶液(100mg/ml)5mlを加え、40℃の水浴中で時々振り混ぜながら4時間放置し、蛋白質を分解した。3000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液についてガラス繊維を用いてろ過し、蒸留水で全量を100mlとし試験溶液とした。
【0110】
試験溶液およびブランク(蒸留水)1mlにそれぞれアルシアンブルー溶液0.2mlを加え20分間放置した。それぞれについて2サンプルずつ作成した。析出した沈殿は3000rpmで30分間遠心分離し、上澄み液は捨て、ついで水3mlで洗浄し、再び遠心分離を繰り返した。
【0111】
得られた沈殿はモノエタノールアミン5mlに溶解し、615nmにおける吸光度(島津製作所(株)製、分光光度計Bio Spec-1600)を測定し、あらかじめ作成した検量線により定量を行った。検量線は、ChSNa標準溶液(5μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml)を用いて試験溶液と同様に操作して作成した。試験溶液中のChsNa含量は次の式(5)より求めた。
【0112】
【数5】
【0113】
なお、ここで、0.913とはカルバゾール硫酸法により求めたChSNa試薬の標準溶液の含量補正項である。
【0114】
図6(a)および(b)に筋肉および骨組織を凍結粉砕し、分級した粉砕粒子における粒子径毎の水分含量の凍結温度依存性を示した。また、図7(a)および(b)に筋肉および骨組織を凍結粉砕し分級した粉砕粒子における粒子径毎の灰分含量の凍結粉砕温度依存性を示した。
【0115】
図6(a)、図7(a)より、筋肉組織に関して、−80℃〜−40℃の凍結温度では水分および灰分含量に差は見られなかったが、凍結温度−20℃においてのみ、粒子径0.71〜2.0mmで水分の減少、および灰分の増加が認められた。これは、粒子径0〜0.355mmの水分含量が高いこと(図6(a))や、凍結温度−20℃で他と比較して、受け皿(粒子径0mm)に集まったフラクションの割合が高いこと(図4(a))などから、筋肉中の水分が粉砕により微細な粒子になり、小粒子径のフラクションにふるい落とされたためであると考えた。また、すべての凍結温度において、粒子径0.355〜0.5mmの小粒子側で、大粒子側より水分含量が高く、灰分含量が低い傾向を示し、粒子径0.71〜2.0mmの大粒子側では、粒子径に関係なく水分、灰分含量ともにほぼ一定の値を示した。凍結温度−80℃〜−40℃と比較し、凍結温度−20℃で粒子径毎の化学的成分が変化したことより、上記した凍結粉砕・分級操作後の粒子径分布の凍結温度依存性と同様に、脆化点を境に凍結温度が粉砕粒子の化学的成分に影響を与えることが示唆された。
【0116】
一方、図6(b)および図7(b)より、骨組織では−60℃〜−20℃のいずれの凍結温度においても水分および灰分含量がほぼ同じ値となった。凍結温度−60℃での灰分含量が他の凍結温度よりやや高い値となったのは、灰化操作が十分でなかったことが原因であると考え、測定誤差範囲とした。また、すべての凍結温度において、粒子径0.355〜0.5mmの小粒子側で、大粒子側より水分含量が高くなる傾向を示し、粒子径0.71〜2.0mmの大粒子側では、粒子径に関係なく水分含量はほぼ一定の値となった。これらのことより、骨組織において、組織凍結温度−60℃〜−20℃で凍結粉砕を行う場合、凍結温度は粉砕粒子の化学的成分に影響を与えないことが示唆された。
【0117】
図8(a)および(b)にカルバゾール硫酸法、およびアルシアンブルー法により求めた検量線を示した。カルバゾール硫酸法により求めたコンドロイチン硫酸C試薬のChsNa含量は、91.3%であった。また、図9に凍結温度−20℃で筋肉および骨組織を凍結粉砕し、分級した粉砕粒子の粒子径毎のChSNa含量を示した。
【0118】
図9に示すように、筋肉組織では、粒子径0.355〜1.41mmの範囲で、ChSNa含量が0%に近い低い値を示したことより、筋肉組織はほとんどChsNaを含まないことが示唆された。一方、粒子径2.0mmにおいて筋肉組織の粉砕粒子が他の粒子径と比較して高いChsNa含量値を示したのは、粉砕試料のサイズが大きいため、操作過程の脱脂や蛋白質分解が十分に行われず、ChsNa以外の沈殿が生じたためであると考察した。
【0119】
一方、骨組織では、図9に示すように、粒子径0.355〜0.71mmの小粒子側で、大粒子側よりChsNa含量が高い値となった。これは、粒子径0.355〜0.71mmの範囲で粒子径が小さいほど含量が高く、粒子径1.0mm〜2.0mmの大粒子側で一定の含量値を示す水分の測定結果(図6(b))と同様の傾向を示していることより、水溶性であるChSNaが骨組織中の水に溶解し、凍結粉砕・分級操作時に水分とともに下方にふるい落とされるためではないかと考察した。これにより、例えば、骨組織のみを用いて−20℃で凍結粉砕した場合、粒子径0.355〜0.71mmの粉砕粒子を回収することによって、骨組織からのコンドロイチン硫酸の濃縮を実現できる。
【0120】
筋肉および骨組織における化学的成分を比較した場合、凍結温度−20℃を除くと、両組織間において水分含量に大きな差は見られなかった。これに対し、灰分、およびChsNa含量では、骨組織の方が筋肉組織より含量が顕著に高い傾向が示された。このことより、加工残渣を試料として用い、凍結粉砕・分級操作を行った場合、粉砕試料の灰分およびChsNa含量を測定することで、各組織が優先粉砕される条件を明らかにすることができる可能性が示唆された。
【0121】
サメ加工残渣を筋肉組織および骨組織の単一組織に分けたものを用い、凍結温度を変化させ凍結粉砕を行い、凍結温度と粉砕した試料の粒子径分布や化学的成分との関係についてそれぞれ評価した。
【0122】
筋肉組織と骨組織における凍結粉砕後の粒子径分布を比較した場合、筋肉組織の方が、骨組織より平均粒子径が小さく、筋肉組織は微細な粒子に、骨組織は粗大な粒子になる傾向が示され、凍結温度−20℃において、各組織の粉砕性に最も大きな差が見られた。また、化学的成分の分析を行った場合、灰分、およびChsNa含量で、骨組織の方が筋肉組織より含量が顕著に高い傾向が示された。
【0123】
これらのことより、凍結粉砕操作とふるいを用いた分級操作を組み合わせることで、筋肉および骨組織を分離できる可能性が示唆された、凍結粉砕によりサメ加工残渣から筋肉および骨を分離する場合、凍結温度−20℃が最適温度であると考察した。
【0124】
〔組織集合体の凍結粉砕と、凍結粉砕後の粉砕粒子の粒子径分布、および化学的成分の凍結粉砕温度依存性〕
上記において、筋肉および骨組織の単一組織を用い、それぞれ凍結粉砕・分級操作を行った後、粒子径分布を測定し、両者の分布を比較した。その結果、筋肉組織は微細な粒子に、骨組織は粗大な粒子になる傾向が見られ、凍結温度−20℃において、各組織の粉砕性に最も大きな差が現れた。
【0125】
そこで、次に、実際の加工残渣を想定した組織集合体として頭部(以下、これを組織集合体とよぶ)を用い、凍結温度−20℃で粉砕操作を行い、粉砕分離性を検討した。そして、単一組織粉砕の結果から予測される粉砕分離性と、組織集合体における粉砕分離性との比較を行った。また、粉砕試料の粒子径分布を評価すると同時に、粉砕試料の化学的成分(水分、灰分、およびコンドロイチン硫酸ナトリウム)の分析を行った。
【0126】
組織集合体として、上記と同様、宮城県気仙沼産のモウカサメの頭部を用いた。この頭部は、手作業にて予め皮を除去した。加工残渣とみなすことができる。約−30℃の冷凍庫内に保存しておいたこの頭部(組織集合体)を室温で解凍した後、カッターによって1×1×1cm3〜1×2×2cm3の切断片に切断し、−20℃に温度設定したストッカー中に保存し、十分に設定温度まで凍結させた。
【0127】
凍結破砕操作は、上記と同様に、液体窒素で十分に冷却しておいた凍結破壊装置1(図2)(吉田製作製作所(株)製の冷却型ウイレー粉砕機)を用いて行った。凍結破壊装置1のスクリーン4には、目開き5mmのスクリーンを用い、粉砕部3の回転刃8の回転数は1000rpmに設定した。
【0128】
粉砕部3での凍結粉砕にあたっては、粉砕部3(具体的には、投入部2および粉砕部3)への組織集合体の投入量は、上記の切断片に換算して2〜3個とし、一度、粉砕部3に投入した単一組織がスクリーン4から完全に排出された後、新たな単一組織を投入した。
【0129】
スクリーン4から排出された各単一組織の粉砕粒子群は、液体窒素を満たした恒温槽6(発泡スチロール製)で受け、恒温槽6内に蓄積された粉砕粒子群(総重量500g)は、約−30℃の冷凍庫内で液体窒素を完全に蒸発させ、続く分級操作に供した。
【0130】
分級操作も、上記と同様に、7フラクションに分級した。すなわち、目開き0.355mm(ふるい11f)、0.50mm(ふるい11e)、0.71mm(ふるい11d)、1.00mm(ふるい11c)、1.41mm(ふるい11b)、2.00mm(ふるい11a)のJIS標準ふるいを備えた分級装置10(図3)を用いて行った。その後、粉砕性を評価した。
【0131】
図10(a)および(b)に、組織集合体を凍結粉砕(−20℃)した粉砕粒子群の粒子径分布を示した。図10(a)は、粒子径分布の凍結粉砕温度依存性を示し、図10(b)は、粒子径(mm)を対数目盛りの横軸にとり、積算ふるい下(%)を対数目盛りの縦軸にとった場合の組織集合体の粉砕粒子群の粒子径分布である。なお、図10(a)および(b)には、比較のために、上記した単一組織を凍結粉砕させた際の筋肉および骨組織の粒子径分布も同時に示した。
【0132】
図10(a)より、組織集合体において、筋肉の単一組織と同様に、粒子径0.5mmでのピークが現れたことより、筋肉組織の粉砕分離性がそれほど変化しないことが予測された。また、骨の単一組織粉砕時に見られた粒子径1.41mmでのピークは、組織集合体粉砕時では小さくなって現れた。これは、図10(b)で組織集合体の平均粒子径が、筋肉の単一組織の平均粉砕粒子径に近い値を示したことなどから、組織集合体は骨組織より筋肉組織を多く含み、骨組織の粉砕性の影響があまり現れないためであると考えられた。
【0133】
次に、上記の方法と同様の方法により、組織集合体を凍結粉砕した粉砕粒子の水分および灰分含量をそれぞれ算出した。図11(a)および(b)は、組織集合体を凍結粉砕した粉砕粒子の水分および灰分含量をそれぞれ示したグラフである。なお、図11(a)および(b)には、比較のために、上記した単一組織を凍結粉砕させた際の筋肉および骨組織の化学的成分の分析結果も同時に示した。その結果、図11(b)のグラフから、粒子径が大きくなるほど、灰分が高くなる傾向が示された。
【0134】
次に、筋肉組織および骨組織には灰分含量に顕著な差があることを利用して、組織集合体の粉砕粒子群における筋肉組織と骨組織それぞれの割合を、図11(b)の灰分含量に基づいて求めた。フラクション中の骨の分率をαi〔−〕、フラクション中の灰分Ai〔%〕とおくと、次式(6)が成り立つ。
【0135】
【数6】
【0136】
ここで、afleshは筋肉の灰分(%)、aboneは骨の灰分(%)である。式(6)をαiについて整理すると次式(7)
【0137】
【数7】
【0138】
となる。よって、全フラクション重量に対する各フラクションの筋肉組織と骨組織の重量比を、次式(8)および(9)から求めた。
【0139】
【数8】
【0140】
【数9】
【0141】
なおここで、Wiはフラクション重量(g)である。式(6)および(7)から、組織集合体に含まれる全筋肉量、全骨量をそれぞれ100としたときのフラクション毎の筋肉および骨の重量割合は次式(10)および(11)により得られる。
【0142】
【数10】
【0143】
【数11】
【0144】
上記の式(10)および(11)に基づいて、各フラクションの筋肉組織と骨組織の量を算出し、粒子径分布を求めた。図12(a)および(b)に灰分含量から求めた組織集合体粉砕における筋肉および骨組織の粒子径分布を示した。同図には、比較のために、単一組織粉砕における筋肉および骨組織の粒子径分布も示した。
【0145】
これより、組織集合体における筋肉および骨組織の粉砕性は、単一組織におけるそれぞれの組織の粉砕性とほぼ同じであることが明らかとなった。つまり、筋肉組織は全体として粒子径が小さくなり、粒子径0.5mmにピークが現れ、骨組織は全体として粒子径が大きくなり、粒子径1.41mmにピークが現れるという単一組織粉砕と同様の傾向が見られた。
【0146】
そこで、骨組織が最も多く含まれている粒子径1.41mmのフラクションの粉砕粒子に含まれるコンドロイチン硫酸ナトリウム(ChsNa)を定量した。またその際、他のフラクションの粉砕粒子に含まれるChsNa量と比較した。定量方法は、上記したカルバゾール硫酸法とアルシアンブルー法とを組み合わせた方法によって測定した。図13は、各フラクションにおけるChsNa量を示すグラフである。図13より、粒子径1.41mmのフラクションの粉砕粒子に最も多くのコンドロイチン硫酸ナトリウムが含まれていることが示された。
【0147】
すなわち、本実施例では、凍結粉砕した粉砕粒子群の中から、上記した分級操作により所定の粒子径を有する粉砕粒子(すなわち、粒子径1.41mmのフラクションに含まれる粉砕粒子)を回収するという簡易な構成により、加工残渣から骨組織を分離することができ、さらに、その回収した粉砕粒子からコンドロイチン硫酸ナトリウムを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
以上のように、本発明によれば、所定の粒子径を有する粉砕粒子群を分級することにより、凍結粉砕した組織集合体の粉砕粒子群から骨組織からなる粉砕粒子群を分級すること可能となる。これにより、加工残渣からの骨組織の分離作業を簡略化できることによりコンドロイチン硫酸の製造効率の向上が期待でき、製造コストを低減できる。それゆえ、本発明は、他の水産加工産業にも好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】サメ軟骨に主に含まれるコンドロイチン硫酸Cの化学構造式である。
【図2】本発明に係る一実施形態において、筋肉組織および骨(軟骨)組織が混在する組織集合体を凍結粉砕するための凍結粉砕装置の構成を示しており、(a)は、当該凍結粉砕装置の側面図であり、(b)は、(a)に示した凍結粉砕装置に設けられたスクリーンの構成を示した拡大平面図である。
【図3】本発明に係る一実施形態において、図2に示した凍結粉砕装置によって凍結粉砕された粉砕粒子群から、骨(軟骨)組織からなる粉砕粒子群を分級するための分級装置の構成を示す斜視図である。
【図4】(a)および(b)はともに、凍結温度−80℃〜−20℃において筋肉組織を凍結粉砕した場合の粒子径分布の凍結温度依存性を示したグラフである。
【図5】(a)および(b)はともに、凍結温度−60℃〜−20℃において骨組織を凍結粉砕した場合の粒子径分布の凍結粉砕温度依存性を示したグラフである。
【図6】分級した粉砕粒子における粒子径毎の水分含量の凍結温度依存性を示しており、(a)は筋肉組織からなる粉砕粒子の水分含量を示し、(b)は骨組織からなる粉砕粒子の水分含量を示したグラフである。
【図7】分級した粉砕粒子における粒子径毎の灰分含量の凍結温度依存性を示しており、(a)は筋肉組織からなる粉砕粒子の灰分含量を示し、(b)は骨組織からなる粉砕粒子の灰分含量を示したグラフである。
【図8】(a)はカルバゾール硫酸法により求めた検量線を示し、(b)はアルシアンブルー法により求めた検量線を示したグラフである。
【図9】凍結温度−20℃において筋肉および骨組織を凍結粉砕し、分級した粉砕粒子の粒子径毎のChSNa含量を示したグラフである。
【図10】組織集合体を凍結粉砕(−20℃)した粉砕粒子群の粒子径分布を示し、(a)は粒子径分布の凍結粉砕温度依存性を示し、(b)は粒子径を対数目盛りの横軸にとり、積算ふるい下を対数目盛りの縦軸にとった場合の当該組織集合体の粉砕粒子群の粒子径分布を示すグラフである。
【図11】(a)は組織集合体を凍結粉砕した粉砕粒子群における粒子径毎の水分含量を示し、(b)は灰分含量を示したグラフである。
【図12】(a)および(b)はともに、灰分含量から求めた組織集合体粉砕における筋肉および骨組織の粒子径分布を示したグラフである。
【図13】組織集合体を凍結粉砕(−20℃)した粉砕粒子群における粒子径毎のChsNa量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0150】
1 凍結粉砕装置
2 投入部
3 粉砕部
4 スクリーン
4a 目開き
5 連通路
6 恒温槽
7 凍結温度制御部
8 回転刃
9 固定刃
10 分級装置
11a〜g ふるい
12 振とう手段
13 受け皿
14 フタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンドロイチンの製造方法に関し、より詳細には、コンドロイチンを、サメの加工残渣から分離した骨組織から製造するための製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康を意識した食品の開発が活発に行われており、例えばサメの軟骨に多く存在するコンドロイチンは、1960年代初期に医療用医薬品として認可されて以来、内服薬、注射薬、点眼薬として幅広く使用されており、特に、関節痛、肩間接周囲炎、腰痛症に対する関節軟骨の働きを補う用途として、また、眼角膜表層の保護等として注目されている。
【0003】
サメの軟骨やサメの肝油由来の医薬品・健康食品は、コンドロイチン以外にも、コラーゲン、ミネラル、スクワレン等のなどが注目を集めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したようなコンドロイチンを始めとするサメの軟骨(これを以下で、骨組織と呼ぶことがある)由来の成分は、海外に依存しているのが現状である。具体的には、日本国内で利用されているサメ由来の医薬品・健康食品の原料の多くはオーストラリアからの輸入品である。オーストラリアでは、サメの骨組織のみを得るためだけにサメの全魚体を利用している。
【0005】
サメ由来の医薬品・健康食品の原料を海外からの輸入に依存している原因としては、日本国内におけるサメの加工技術が挙げられる。サメは日本国内においても漁獲されており、尾鰭・背鰭・胸鰭などはフカヒレの材料として加工され、身は切り身として加工されているが、コンドロイチンを始めとする有用な成分が豊富に含まれている骨組織を含んだ頭部や中落ちは、加工残渣として焼却処分されている。その理由としては、日本国内のサメの加工技術では、加工残渣には皮や骨や肉が混在した状態となっており、加工残渣から骨組織を分離しようとしても、非常に労力を要してしまい生産性を向上させることが困難である。さらに、サメは肉組織に尿素を多量に含んでいるため、加工処理時間の経過とともにこの尿素が細菌によってアンモニアに分解され、強い臭気を伴う。このことも、加工残渣からの骨組織の分離(回収)をさらに困難なものとしている。
【0006】
以上のような理由から、現状では、日本国内で排出されるサメの加工残渣を再資源化することは困難であり、よって、焼却処分するしかないのが現状となっている。したがって、当然のことながら、サメの加工残渣から骨組織を分離するといった技術も全く確立されていない。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来まで廃棄されていたサメの加工残渣からであっても骨組織を容易に分離でき、さらに、分離した骨組織からコンドロイチンを製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記の問題点に鑑みて鋭意検討した結果、凍結粉砕処理および、ふるいを用いた分級処理を行うことによって加工残渣から骨組織を分離できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本願発明者らは、これまで、数々の食品素材を用いて、これらを凍結させ、凍結後の当該素材の性質の違いについて研究してきた。その研究過程で、本願発明者らは、凍結させた後で粉砕させた素材が、その種類によって粒子径に差を生じることを見出した。本願発明者らは、この点に着目し、粉砕粒子をふるい分級することによって、素材の種類を分別することができるのではないかと鋭意検討し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明のコンドロイチンの製造方法は、筋肉組織および骨組織を含む組織集合体を用いてコンドロイチンを製造するコンドロイチンの製造方法であって、上記組織集合体を凍結粉砕して、粉砕粒子群を得る凍結粉砕工程と、上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群から、上記骨組織からなる粉砕粒子を分級する分級工程とを含み、上記分級工程では、所定の粒子径を有する粉砕粒子を分級することを特徴としている。
【0011】
また、上記のコンドロイチンの製造方法は、上記分級工程では、上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群を、互いに異なる目開きの大きさを有する複数のふるいを用いて分級することが好ましい。
【0012】
また、上記のコンドロイチンの製造方法は、上記骨組織が、サメの軟骨であることが好ましい。
【0013】
また、上記のコンドロイチンの製造方法は、上記凍結粉砕工程において、上記組織集合体が−15℃〜−30℃で凍結していることが好ましい。
【0014】
また、上記のコンドロイチンの製造方法は、上記組織集合体が、サメ由来であるとともに、尾鰭、背鰭、胸鰭、および身といった加工部位を回収した後に排出される、頭部や中落ちを含む加工残渣であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコンドロイチンの製造方法は、筋肉組織および骨組織を含む組織集合体を用いてコンドロイチンを製造するコンドロイチンの製造方法であって、上記組織集合体を凍結粉砕して、粉砕粒子群を得る凍結粉砕工程と、上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群から、上記骨組織からなる粉砕粒子を分級する分級工程とを含み、上記分級工程では、所定の粒子径を有する粉砕粒子を分級することを特徴としている。
【0016】
これにより、従来まで廃棄されていたサメの加工残渣(すなわち、組織集合体)を用いた場合であっても、当該加工残渣から骨組織を容易に分離することが可能となるとともに、当該加工残渣に含まれる骨組織から容易にコンドロイチンを製造することができる。
【0017】
すなわち、従来は、上記したような加工残渣における問題が、当該加工残渣からの骨組織の分離を困難なものとさせていたが、本発明によれば、上記分級工程において所定の粒子径を有する粉砕粒子を分級することにより、機械的に、凍結粉砕した組織集合体の粉砕粒子群から骨組織からなる粉砕粒子群を分級することができる。
【0018】
特に、サメの加工残渣を用いる場合は、上記組織集合体の温度を−15℃〜−30℃の範囲に設定することにより、凍結粉砕工程によって得られる粉砕粒子群において、筋肉組織からなる粉砕粒子の粒子径と、骨組織からなる粉砕粒子の粒子径との差が最も大きくなる。これにより、分級工程において凍結粉砕工程によって得られる粉砕粒子群から骨組織からなる粉砕粒子をより正確に分離(分級)することが可能となる。
【0019】
よって、本発明によれば、日本国内にて加工された後のサメの加工残渣を用いた場合であっても、当該加工残渣から骨組織を機械的に分離することが可能となり、当該骨組織を容易に分離・回収することができる。
【0020】
したがって、本発明によれば、容易に分離・回収した当該骨組織からコンドロイチンを製造することができるので、製造コストを低減させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施形態について説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施の形態においては、筋肉組織と骨組織を含む組織集合体(加工残渣)として、サメの頭部を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、筋肉組織と骨組織を含む部位であればサメの他の部位であっても適用することができる。さらに、サメだけではなく、骨組織にコンドロイチン等の複合多糖を含有する他の生体,例えば魚類や陸上動物などであっても本発明を適用することが可能である。また、以下の説明では、本発明のコンドロイチンとして「コンドロイチン硫酸」を挙げて説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、コンドロイチンポリ硫酸やケラタン硫酸などの複合多糖であっても本発明を適用することができる。
【0022】
(1)コンドロイチン硫酸
コンドロイチン硫酸は、軟骨、角膜、血管壁など結合組織に広く分布する分子量2万〜5万の酸性ムコ多糖(アミノ基を含む多糖)で、N−アセチル−D−ガラクトサミンとD−グルクロン酸の2糖と硫酸残基で構成されている。
【0023】
コンドロイチン硫酸は、硫酸基の結合位置によって、A、C、D、E、K等のタイプに分けられる。サメの場合では、頭骨、中骨、鰭の軟骨に、コンドロイチン硫酸C(D−ガラクトサミンのC−6位に硫酸基が結合)とコンドロイチン硫酸D(D−ガラクトサミンのC−6位およびD−グルクロン酸のC−2位に硫酸基が結合)が多く含まれていることが知られている。組織中のコンドロイチン硫酸含量はサメの種類によって変動し、乾燥重量あたり約10%前後であると言われている。ここでは、サメ軟骨に主に含まれるコンドロイチン硫酸Cの構造を図1に示す。
【0024】
なお、サメ軟骨は、ムコ多糖と高分子蛋白質で構成されており、カルシウムなど一般の骨核を成す成分は含まれていない。
【0025】
また、通常、コンドロイチン硫酸は、生体内では蛋白質と結合したコンドロイチン硫酸蛋白質複合体として存在しており、サメ軟骨から精製されたコンドロイチン硫酸蛋白質複合体は、白色粉体で水に完全に溶解し、水溶液は弱酸性を呈することが知られている。
【0026】
本実施形態では、上記のような有用な成分であるコンドロイチン硫酸を、サメ軟骨(より具体的にはサメの加工残渣)を用いて、製造するための方法および、この方法を行なうにあたって使用する装置について説明する。
【0027】
加工に使用するための尾鰭・背鰭・胸鰭や身などを回収した後の、いわゆる加工残渣は皮や骨や肉が混在した状態となっているため、例えば、従来において、加工従属者が手作業でこの加工残渣から骨組織を分離するという作業は、非常に困難であった。加えて、サメは肉組織に尿素を多量に含んでいることから、加工処理時間の経過とともにこの尿素が細菌によってアンモニアに分解されて強い臭気を伴い、加工従属者にとって、加工残渣からの骨組織の分離作業はさらに困難なものとなっていた。このような現状から、日本国内で利用されているサメ由来の医薬品・健康食品の原料の大部分はオーストラリアからの輸入品に依存している。オーストラリアでは、日本国内のサメ加工処理において問題となっていた作業の困難性は回避するため、サメの軟骨組織のみを得るためだけにサメの全魚体を利用している。これにより、作業の困難性は回避されるものの、軟骨組織のみが回収され、他の部位は廃棄処分されているため、価格が低く抑えることが難しい。そこで、本実施形態では、特に、上述したような筋肉組織および骨(軟骨)組織が混在した加工残渣を用いた場合であっても、簡易な方法によって骨組織を分離することができ、分離した骨組織からコンドロイチン硫酸を製造することが可能な製造方法および、この方法を行なうにあたって使用する装置について説明する。
【0028】
(2)組織集合体からの骨組織の分離
本実施の形態では、筋肉組織と骨組織が混在している組織集合体からの当該骨組織の分離は、以下の基本原理に基づく。
【0029】
(2−a)基本原理
ゴムのような弾性体であっても、脆化点以下に冷却すると大変脆くなる性質をもつ。この性質は一般に低温脆弱性と呼ばれており、脆化点以下に冷却することによって容易に粉砕することができる。さらに、この性質を利用して物質を粉砕する場合、この脆化点を境に、粉砕粒子の大きさが異なる。すなわち、脆化点より低い温度では、物質が脆い状態(これを、脆性破壊領域と呼ぶ)にあるため、粉砕粒子は微細になる。一方、脆化点より高い温度(これを、延性破壊領域と呼ぶ)では、物質が壊れにくいため、粉砕粒子は粗大な粒子になる。
【0030】
ここで、例えば、ある脆化点を有する物質Aと、この物質Aより低い脆化点を有する物質Bとからなる二成分混在体から、物質Aまたは物質Bを分離する方法を考える。上述の脆化点を考慮すれば、物質Aの脆化点と物質Bの脆化点との間の温度を選び、その温度で二成分混在体の粉砕を行うことにより、物質Aと物質Bをそれぞれ分離できる可能性が考えられる。つまり、二成分混在体の両物質の破壊頻度が同じであることを前提とすれば、物質Aは脆化点以下の温度(脆性破壊領域内)において粉砕が行なわれるため、粉砕粒子は微細な粒子となる。一方、物質Bは脆化点より高い温度(延性破壊領域内)において粉砕が行なわれるため、粉砕粒子は粗大な粒子となる。そこで、この混在粉砕粒子群を、例えば適切な目開きのふるいを用いて分級することによって、互いに粒子径の異なる物質Aと物質Bの分離が可能となる。
【0031】
この原理を利用し、本実施形態では加工残渣の中からの骨組織を分離回収できるのではないかと考えた。頭部や中落ちが混在するサメの加工残渣を例に取ると、筋肉組織および骨組織などはそれぞれ異なった低温脆弱性を持つ。そこで、ある最適な温度でこの加工残渣を凍結粉砕することで、筋肉組織および骨組織をそれぞれ異なった粒子径を持つ粉砕粒子群にでき、これを適切な目開きのふるいを用いて分級することにより、加工残渣(組織集合体)からの骨組織の分離回収が可能になる。
【0032】
本発明の製造方法および製造装置は、以上のような基本原理に基づいて、筋肉組織および骨(軟骨)組織が混在した加工残渣から骨組織(軟骨)を分離することを目的とするものである。
【0033】
(2−b)凍結粉砕操作(凍結粉砕工程)
図2(a)および(b)は、本実施の形態において、筋肉組織および骨組織が混在する組織集合体を凍結粉砕するための凍結粉砕装置の構成を示す図であり、図2(a)は、この凍結粉砕装置の側面図であり、図2(b)は、図2(a)に示した凍結粉砕装置に設けられたスクリーンの構成を示した拡大平面図である。この凍結粉砕装置1は、上記した基本原理に基づいて、制御温度下で凍結した組織集合体を粉砕(凍結粉砕)するための装置である。そのため、凍結粉砕装置1は、投入部2と、粉砕部3と、スクリーン4と、連通路5と、恒温槽6と、凍結温度制御部7とを備えている。
【0034】
上記投入部2は、凍結粉砕に供される、筋肉組織および骨(軟骨)組織が混在する組織集合体を投入するための投入口である。投入部2では、図示しない凍結手段によって凍結した上記組織集合体(以下、凍結した組織集合体を単に組織集合体と呼ぶことがある)が投入される構成となっている。投入部2では、凍結した組織集合体の凍結温度は凍結温度制御部7によって制御されている。
【0035】
なお、本実施の形態の凍結粉砕装置1では、凍結温度制御部7によって装置全体が設定温度下で温度制御されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の凍結手段を用いることによって、投入部2内にて組織集合体を凍結させる構成としてもよく、後述する実施例にあるように凍結粉砕装置1を予め液体窒素で十分に冷却しておく構成であってもよい。
【0036】
また、凍結粉砕装置1は、組織集合体および/または凍結粉砕粒子が凍結粉砕装置1内を重力に従って恒温槽6まで移動する構成となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば組織集合体は、ベルトコンベアによって粉砕部3に送られる構成であってもよい。
【0037】
上記粉砕部3は、上記投入部2に外部から投入された組織集合体を実際に凍結粉砕するために設けられている。粉砕部3も、上記投入部2と同様に、組織集合体および/または粉砕粒子の温度は凍結温度制御部7によって制御されている。粉砕部3は、図示するように、回転刃8および固定刃9が設けられている。上記回転刃8および固定刃9によって、粉砕機に投入された試料は、粉砕部で固定刃と回転刃によって打撃・破壊される。具体的には、試料が固定刃と回転刃に挟まれ、高速回転している回転刃により試料が衝撃的な打撃力により破壊される。
【0038】
上記回転刃8は、図示しない回転制御部によって回転数が制御されている。具体的には、800〜1200rpmの範囲に制御されていることが好ましく、900〜1100rpmの範囲に制御されていることがより好ましく、約1000rpmに制御されていることが最も好ましい。回転数が800rpmを下回ると、回転刃8が組織集合体に及ぼす「粉砕に必要なエネルギー」が弱いため、粉砕が十分に行なわれないため、上記した基本原理に基づいた分級操作に適用することができない。一方、回転数が1200rpmを上回ると、回転刃8が組織集合体に及ぼす「粉砕に必要なエネルギー」が強く、粉砕が過剰に起きてしまうため、上記した基本原理に基づいた分級操作に適用することができない。したがって、回転刃8の回転数は、上記の範囲とすることが好ましい。
【0039】
なお、粉砕部3において良好な粉砕を実施することができるように、当該粉砕部3に導入される組織集合体の量を一定量に調節するための図示しない調節手段が設けられてもよい。
【0040】
上記スクリーン4は、粉砕部3の下方に設けられており、当該粉砕部3によって粉砕された粉砕粒子が通過するように配置されている。スクリーン4も、上記投入部2および粉砕部3と同様に、凍結温度制御部7によって温度制御されている。
【0041】
上記スクリーン4には、図2(b)に示すように、開口径5mmの目開き4aが設けられている。粉砕部3によって粉砕された粉砕粒子のうち、粒子径5mm未満の粉砕粒子はこの目開き4aを通過してスクリーン4の下方に設けられた連通路5を介して恒温槽6内に落下し、粒子径5mm以上の粉砕粒子は目開き4aを通過せずスクリーン4上に堆積する構成となっている。
【0042】
なお、スクリーン4上に堆積した粒子径5mm以上の粉砕粒子は、粉砕部3に投入して、再び凍結粉砕に供することが可能である。なお、再び凍結粉砕に供する際、スクリーン4を粉砕部3の下方から取り外して手動により粉砕部3に再投入する構成としてもよく、他の構成部材を用いて自動で再投入される構成であってもよい。また、このようにスクリーン4上に堆積した粉砕粒子を粉砕部3に再投入する場合は、凍結温度を維持した状態で行われる構成であってもよく、粉砕部3への投入時に投入部2(および粉砕部3)によって再度温度管理が行われる構成であってもよい。
【0043】
上記連通路5は、上記スクリーン4の下方に設けられており、スクリーン4の目開き4aを通過した粉砕粒子を、恒温槽6に導入するために設けられている。連通路5も、上記投入部2と粉砕部3とスクリーン4と同様に、凍結温度制御部7によって温度制御されている。
【0044】
上記恒温槽6は、上記粉砕部3によって凍結粉砕された粉砕粒子群を蓄積するために設けられており、液体窒素で満たされている。上記粉砕部3によって凍結粉砕され、スクリーン4と連通路5を通過した粉砕粒子群は、この液体窒素中に落下する。恒温槽6は、断熱効果を有する材料から構成されるものであればよく、具体的には発泡スチロールによって構成することができる。
【0045】
上記の構成を備えた凍結粉砕装置1を用いることによって、筋肉組織および骨(軟骨)組織が混在する組織集合体(加工残渣)の凍結粉砕は以下のようにして行われる。
【0046】
なお、この組織集合体は、皮を予め除去しておくことが好ましい。手作業にて行なうことが可能であるが、これ以外にも、凍結粉砕装置を用いて凍結粉砕により皮を除去することも可能である。
【0047】
凍結粉砕装置1の投入部2に投入される組織集合体は、上記したように、投入部2に投入される前に適切な凍結温度になるような構成としてもよく、投入部2内で凍結する構成であってもよい。以下に、この適切な凍結温度について詳述する。なお、以下の説明では、この「適切な凍結温度」を、分離可能温度と呼ぶことがある。
【0048】
本願発明者らによって提案された上記した本発明の基本原理は、物質Aの脆化点と物質Bの脆化点との間の温度で凍結粉砕することによって、物質Aは、脆化点以下の温度で粉砕が行なわれるため微細な粒子となり、物質Bは、脆化点より高い温度で粉砕が行なわれるため粗大な粒子となることを利用し、互いに粒子径の異なる物質Aと物質Bとを分離するというものである。そこで、本願発明者らは、サメの加工残渣に含まれる筋肉組織および骨組織が、異なる脆化点を有することに着目し、上記の基本原理によって加工残渣(組織集合体)からの骨組織を分離回収することができるのではないかと考え、本発明を完成するに至った。そこで、組織集合体からの骨組織を分離回収するためには、分離可能温度の特定が必要となる。詳細は、後の実施例にて説明しているが、まず、本願発明者らは、筋肉組織および骨組織をそれぞれ単独で用い、それぞれの粉砕性について検討した。その結果、−15℃〜−30℃の温度範囲において凍結粉砕した場合に、粉砕後の骨組織の粉砕粒子径と、筋肉組織の粉砕粒子径との差が大きくなることがわかった。具体的には、上記の温度範囲において、筋肉組織と骨組織における凍結粉砕後の粒子径分布を比較した場合、筋肉組織の方が、骨組織より平均粒子径が小さく、筋肉組織は微細な粒子に、骨組織は粗大な粒子になる傾向が見られた。
【0049】
そこで次に本願発明者らは、上記した単独の粉砕性検討結果が、筋肉組織と骨組織とが混在した組織集合体(加工残渣)においても適用するか否かを検討したところ、詳細は後の実施例において説明しているが、組織集合体における筋肉組織および骨組織の粉砕性は、個々の組織の粉砕性検討結果とほぼ一致していることが明らかとなった。すなわち、−15℃〜−30℃の温度範囲においてサメの加工残渣を凍結粉砕すれば、後述する分級操作によって骨組織と筋肉組織とを分離できることが示された。
【0050】
なお、本実施の形態では、−15℃〜−30℃の温度範囲を分離可能温度とすることが好ましいが、−18℃〜−22℃の温度範囲を分離可能温度とすることが最も好ましい。
【0051】
すなわち、本実施の形態では、組織集合体が、凍結粉砕装置1の投入部2に投入される前に、−15℃〜−30℃の範囲まで凍結されていてもよく、投入部2内で−15℃〜−30℃の範囲に凍結される構成であってもよい。
【0052】
なお、上述したように、本実施形態の凍結粉砕装置1には、粉砕部3において良好な粉砕を実施することができるように、当該粉砕部3に導入される組織集合体の量を一定量に調節するための調節手段が設けられていてもよい。また、粉砕部3における良好な粉砕を実施するために、粉砕部3に送り込まれる組織集合体の大きさは、1〜4cm3とすることが好ましい。例えば、1×1×1cm3〜1×2×2cm3とすることができる。しかしながら、この大きさは、凍結粉砕装置1の大きさ、具体的には粉砕部3と投入部2との連結部分の大きさや回転刃8および固定刃9の大きさ等によって適宜設定することが好ましいため、本発明が上記の範囲に限定されるものではない。
【0053】
上記した温度範囲で凍結した組織集合体が投入部2から粉砕部3に送り込まれると、組織集合体は、当該粉砕部3の回転刃8および固定刃9によって、粉砕機に投入された試料は、粉砕部で固定刃と回転刃によって打撃・破壊される。具体的には、試料が固定刃と回転刃に挟まれ、高速回転している回転刃により試料が衝撃的な打撃力により破壊される。
【0054】
なお、後の分級操作において骨組織を良好に分級するためには、粉砕部3に投入される組織集合体の量を上記した調節手段によって調節することが好ましく、さらに、一度、粉砕部3に投入された組織集合体の全てがスクリーン4を通過した後で、新たな組織集合体が粉砕部3に投入されることが好ましい。粉砕部3に投入される組織集合体の全てがスクリーン4を通過するために、スクリーン4は、上記したように、当該スクリーン4上に蓄積した粉砕粒子(本実施形態では粒子径5mm以上の粉砕粒子)を、再び粉砕部3に投入して凍結粉砕に供することができるように構成されている。すなわち、粉砕部3では、組織集合体を凍結粉砕するとともに、所望の大きさの粉砕粒子を得るために当該所望の大きさよりも大きい粉砕粒子を粉砕することもできる。
【0055】
上記粉砕部3によって凍結粉砕され、スクリーン4と連通路5を通過した粉砕粒子群は、恒温槽6の液体窒素中に落下する。恒温槽6の液体窒素中した粉砕粒子は、例えば約−30℃の冷凍庫内で液体窒素を完全に蒸発させ、続く分級操作に供することができる。しかしながら、冷凍庫内の温度は上記に限定されるものではなく、粉砕粒子がその形状を維持することができる温度であればよい。
【0056】
(2−c)分級操作(分級工程)
図3は、本実施の形態において、上記の凍結粉砕装置1によって粉砕された粉砕粒子群から、骨組織からなる粉砕粒子群を分級するための分級装置10の構成を示す斜視図である。そのため、この分級装置10は、ふるい11(11a〜11g)と、振とう手段12と、受け皿13と、フタ14とを備えている。
【0057】
上記ふるい11は、上記の凍結粉砕装置1によって粉砕された粉砕粒子群をその粒子径別に分級するために設けられている。ふるい11a〜11gそれぞれには、上記の(2−b)凍結粉砕操作において凍結粉砕装置1(図2(a))に配設されたスクリーン4(図2(a)および(b))と同様、目開きが設けられており、各ふるい11a〜11gの目開きの径は互いに異なっている。例えば、後述する実施例のように、JIS標準ふるい(目開き:0.355mm、0.50mm、0.71mm、1.00mm、1.41mm、2.00mm)を用いることができる。そして、図3のように、小さな目開きのふるいから順に上に重ね、最下段に受け皿13を設け、最上段にフタ14を設けた構成とすることができる。
【0058】
上記振とう手段12は、ふるい11aに投入された粉砕粒子群が各ふるい11a〜11gによって分級されるようにふるい11を振とうさせるために設けられている。上記振とう手段12には、従来公知の振とう器を用いることができる。
【0059】
上記のような構成を備えた分級装置10を用いることによって、上記の凍結粉砕操作によって粉砕された粉砕粒子群からの、骨組織からなる粉砕粒子群の分級は、以下のようにして行われる。
【0060】
ふるい11のうち、一番上のふるい11aに上記の凍結粉砕装置1によって粉砕された粉砕粒子群を投入すると、ふるい11aに設けられた目開きの径よりも径の小さな粉砕粒子が当該目開きを通過してふるい11aの下方に設けられたふるい11bに落下し、当該目開きの径よりも大きい径の粉砕粒子はふるい11aに残存する。一方、ふるい11bに落下した粉砕粒子は、次に、ふるい11bに設けられた目開きの径よりも径の小さな粉砕粒子が当該目開きを通過してふるい11bの下方に設けられたふるい11cに落下し、当該目開きの径よりも大きい径の粉砕粒子はふるい11bに残存する。このように各ふるいの目開きの径によって上記の凍結粉砕装置1によって粉砕された粉砕粒子群が分級される。
【0061】
なお、本実施の形態では、ふるい11として7種類のふるい(ふるい11a〜11g)を用いているが、本発明はその数に限定されるものではなく、分級した粉砕粒子の径によって適宜設定することが可能である。
【0062】
(3)骨組織からのコンドロイチン硫酸の製造(抽出工程)
上記した凍結粉砕操作および分級操作によって組織集合体(加工残渣)から分離した骨組織からのコンドロイチン硫酸の製造(抽出)は、以下のような手法によって行われる。
【0063】
分離した骨組織を乾燥し、10%食塩水を加え攪拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液でpH12.0に調整する。これを室温で2時間攪拌抽出する。さらに55℃の湯浴中で、1時間攪拌抽出する。次にこれを遠心分離し、残渣を再び10%食塩水で攪拌抽出し、遠心分離する。両回の上澄み液を合わせ、硫酸でpH2.0〜2.5に調整する。このとき生成する沈殿は、遠心分離で除去する。この上澄み液に蒸留水を加え、さらにカチオン界面活性剤を加えて攪拌し、1時間放置する。次にろ過助剤(セライト)を加え、攪拌しながら吸引ろ過を行う。この際、ろ液が透明になるまで、ろ過を反復する。ヌッチェロートに集めた沈殿を蒸留水で洗浄する。この沈殿を10%食塩水で抽出し、ろ過する。このろ液にエチルアルコールを加えると、析出物を生じるので遠心分離で回収し、乾燥させる。以上の方法により,コンドロイチン硫酸ナトリウムを抽出する。(「井谷彰,柴田哲夫,食品中のコンドロイチン硫酸ナトリウムの分析,食品衛生学会誌,5,246-249(1964).」参考)
以上のように、本発明に係るコンドロイチン硫酸の製造方法は、筋肉組織および骨組織を含む組織集合体を用いてコンドロイチン硫酸を製造するコンドロイチン硫酸の製造方法であって、上記組織集合体を凍結粉砕して、粉砕粒子群を得る凍結粉砕工程と、上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群から、上記骨組織からなる粉砕粒子を分級する分級工程と、上記分級工程によって分級された上記粉砕粒子からコンドロイチン硫酸を抽出する抽出工程とを含み、上記分級工程では、所定の粒子径を有する粉砕粒子を分級することを特徴としている。
【0064】
これにより、従来まで廃棄されていたサメの加工残渣(すなわち、組織集合体)を用いた場合であっても、骨組織を機械的に分離することが可能となり、当該骨組織からコンドロイチン硫酸を製造することができる。
【0065】
すなわち、従来は、上記したような加工残渣における問題が、当該加工残渣からの骨組織の分離を困難なものとさせていたが、本発明によれば、上記分級工程において所定の粒子径を有する粉砕粒子群を分級することにより、凍結粉砕した組織集合体の粉砕粒子群から骨組織からなる粉砕粒子群を分級することができる。
【0066】
具体的には、上記組織集合体の温度を−15℃〜−30℃の範囲に設定することにより、凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群における、筋肉組織からなる粉砕粒子の粒子径と、骨組織からなる粉砕粒子の粒子径との差が最も大きくなる。これにより、分級工程において分級をより正確に実施することが可能となる。
【0067】
よって、本発明によれば、日本国内にて加工された後のサメの加工残渣を用いた場合であっても、当該加工残渣から骨組織を機械的に分離することが可能となり、当該骨組織を容易に分離・回収することができる。
【0068】
したがって、本発明によれば、容易に分離・回収した当該骨組織からコンドロイチン硫酸を製造することができるので、製造コストを低減させることが可能となる。
【0069】
なお本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られるものについても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をより具体的に説明する。本実施例では、上述したように、サメの頭部や中落ちといった加工残渣を、筋肉組織および骨組織を含む組織集合体とし、当該筋肉組織および骨組織それぞれにおける粉砕性の検討結果が、組織集合体の粉砕性に直接反映されると考えた。
【0071】
そこで、本実施例では、まず、サメの加工残渣(組織集合体)の構成要素である筋肉組織および骨組織をそれぞれ単独で用い、各組織の凍結温度を変化させて、各凍結温度下で凍結粉砕を行い、凍結温度と、粉砕した組織の粒子径分布、および化学的成分との関係についてそれぞれ評価した。
【0072】
続いて本実施例では、上記の評価結果に基づいて、組織集合体からの骨組織の分離・回収に最も適した凍結粉砕および分級操作の条件について検討を行った。また、これと同時に凍結粉砕後の粉砕粒子の化学的成分の測定を行った。
【0073】
なお、以後の説明において、筋肉組織および骨組織をそれぞれ単独で用いた場合の組織を総称して、単一組織と呼ぶ場合がある。
【0074】
〔単一組織の凍結粉砕と、凍結粉砕後の粉砕粒子の粒子径分布、および化学的成分の凍結粉砕温度依存性〕
まず、本発明の着眼点である物質の破壊挙動に与える組織凍結温度の影響を検討した。具体的には、実際の凍結粉砕操作において、各組織(筋肉組織および骨組織)の粉砕性に及ぼす凍結粉砕温度の影響を調べた。
【0075】
筋肉組織および骨組織として、宮城県気仙沼産のモウカサメ(ネズミザメ、salmon shark, Lamna ditropis Hubbs et Follett)の頭部および中落ちを用いた。これらは、加工残渣として約−30℃の冷凍庫内に保存しておいたものである。この加工残渣を室温で解凍した後、手作業によって筋肉組織および骨組織に分けた。その後、筋肉組織および骨組織それぞれを、カッターによって1×1×1cm3〜1×2×2cm3の切断片に切断し、−80℃、−60℃、−40℃、−20℃にそれぞれ温度設定したストッカーを用意し、各ストッカー内に筋肉組織および骨組織の切断片を保存することによって設定温度まで単一組織のそれぞれを凍結させた。
【0076】
凍結粉砕操作は、以下のようにして行った。
【0077】
凍結破砕操作には、上記した凍結破壊装置1(図2)を用いて行った。具体的には、凍結破壊装置1として、冷却型ウイレー粉砕機(吉田製作製作所(株)製)を使用した。凍結破壊装置1は、液体窒素で十分に冷却しておいた。凍結破壊装置1のスクリーン4には、目開き5mmのスクリーンを用い、粉砕部3の回転刃8の回転数は1000rpmに設定した。
【0078】
筋肉組織の切断片は、−80℃、−60℃、−40℃、−20℃で凍結粉砕操作を行った。また、骨組織の切断片は、−60℃、−40℃、−20℃で凍結粉砕操作を行った。粉砕部3での凍結粉砕にあたっては、粉砕部3(具体的には、投入部2および粉砕部3)への各単一組織の投入量は、上記の切断片に換算して2〜3個とし、また、一度粉砕部3に投入した単一組織がスクリーン4から完全に排出された後、新たな単一組織を投入した。
【0079】
スクリーン4から排出された各単一組織の粉砕粒子群は、液体窒素を満たした恒温槽6(発泡スチロール製)で受けた。
【0080】
恒温槽6内に蓄積された各単一組織の粉砕粒子群(骨組織の粉砕粒子群の総重量:250g、筋肉組織の粉砕粒子群の総重量:250g)は、約−30℃の冷凍庫内で液体窒素を完全に蒸発させ、続く分級操作に供した。
【0081】
分級操作は、以下のようにして行った。
【0082】
分級操作は、上記した分級装置10(図3)を用いて行った。具体的には、ふるい11として、目開き0.355mm(ふるい11f)、0.50mm(ふるい11e)、0.71mm(ふるい11d)、1.00mm(ふるい11c)、1.41mm(ふるい11b)、2.00mm(ふるい11a)のJIS標準ふるいを用いた。図3のように、小さな目開きのふるいから順に上に重ね、最下段に受け皿13を設けた構成とした。分級装置10は、約−20℃の低温室内で予め冷却しておいた。このように、本実施例においては、凍結粉砕した各単一組織をそれぞれ7フラクションに分級する構成とした。
【0083】
ふるい11a(目開き2.00mm)に、上記した凍結粉砕操作によって得られた単一組織の粉砕粒子群を投入し、フタ14をした後、ふるい11を手動で軽く振とうさせた後、振とう手段12として平工製作所(株)製の電磁式振とう器(MVS−2000)を用い、ふるい11を当該振とう手段12上にセットして、30分間振とうさせた。振とう後、各ふるいに残存した粉砕粒子を、予め秤量し低温室内で冷却しておいたサンプル瓶(ポリエチレン製)にそれぞれ移し、再度、各サンプル瓶の重量を測定し、予め秤量しておいたサンプル瓶との重量の差を算出した。この差が、各フラクション(すなわち、各粒子径)の重量である。ここから、各凍結粉砕温度における各単一組織の粉砕性を評価した。
【0084】
図4(a)および(b)に凍結温度−80℃〜−20℃において筋肉組織を凍結粉砕した場合の粒子径分布の凍結温度依存性を示した。また、図5(a)および(b)に凍結温度−60℃〜−20℃において骨組織を凍結粉砕した場合の粒子径分布の凍結粉砕温度依存性を示した。図4(b)、図5(b)では、横軸が対数目盛りの粒子径(mm)、縦軸が対数目盛りの積算ふるい下(%)である。積算ふるい下とは、全粒子の重量の総和を100として各フラクションの重量比を、粒子径の小さいフラクションから順に足し合わせたものである。また、分級操作後、受け皿13(図3)に残ったフラクションは粒子径0mmとしてグラフに示した。
【0085】
筋肉組織では各凍結温度により粉砕粒子の形状が異なり、凍結温度が−80℃〜−40℃の低温の場合、米粒状となったのに対し、凍結温度が−20℃と高温になると、繊維状となった。図4(a)より凍結温度が高くなるほど粒子径1.41mm、2.0mmのフラクション割合が減少し、小粒子側のフラクション割合が高くなる傾向が見られた。また、図4(b)より、各凍結温度での平均粒子径(重量分布50%の粒子径)を比較すると、−80℃〜−40℃において約1.0mmであるのに対し、−20℃において約0.7mmとなった。
【0086】
一般的に、物質の温度を変化させて粉砕を行った場合、脆化点より低い温度では、粉砕粒子は微細になり、脆化点より高い温度では粉砕粒子は粗大な粒子になることから、凍結温度が低いほど小粒子化すると考えられる。しかし、サメの筋肉組織の凍結粉砕を行った場合、凍結温度が高くなるのに伴って、粒子径分布が小粒子側にシフトした。これは、本実施例で用いた凍結粉砕装置の特徴として、粉砕が筋肉組織の周囲から削り取るようにして行われることが原因だと考えられる。凍結温度−20℃は脆化点以上の温度であり、粉砕機に試料を投入した直後の衝撃では、スクリーンから排出されるサイズ以下にまで破壊されにくく、粗大な粒子となる。そのため、排出されるまでに要する時間が長くなり、その間に粗大な粒子の周囲が削り取られ、微細な粒子にまで粉砕されてしまうことが、凍結温度−20℃において平均粒子径が小さくなる要因ではないかと考えられる。
【0087】
一方、骨組織では各凍結温度によって粉砕粒子の形状に違いはなく、−60℃〜−20℃のいずれの凍結温度においても、米粒状となった。図5(a)より、凍結温度が高くなるほど粒子径2.0mmのフラクション割合が減少する傾向が見られたが、どの凍結温度においても、大粒子側のフラクション割合が高い傾向を示した。また、図5(b)より、各凍結温度における平均粒子径を比較すると、−60℃〜−20℃のすべての凍結温度において約1.41mmと同じ値になった。これらのことから、骨組織の凍結粉砕を行う場合、凍結温度は粒子径分布にそれほど影響を与えないことが示唆された。
【0088】
物質を破壊する場合、その物質の脆性−延性遷移が起こる脆化点を境にして、衝撃破壊時の吸収エネルギーは急激に変化する。ところが、脆化点より低い温度帯の脆性破壊領域においては、温度が低くなっても破壊時の吸収エネルギーはほとんど変化しないことが多い。粉砕操作において、破壊時に粒子が吸収する単位質量(もしくは単位体積)当たりのエネルギーの総和が、粉砕に必要なエネルギーと考えた場合、同種の物質において同条件で粉砕操作を行った時、粉砕後の粒子径分布が小さい方が、粒子が破壊時に吸収する単位質量(もしくは単位重量)当たりのエネルギーは小さくなると考えられる。従って、骨組織の場合は、凍結温度が−60℃〜−20℃において粉砕粒子の形状や粒子径分布にあまり変化が見られなかった事より、破壊時の吸収エネルギーはほぼ同じであると考えられる。これより、骨組織において−60℃〜−20℃の温度範囲は、脆性破壊領域の温度帯であると考えた。
【0089】
以上のように、筋肉組織と骨組織それぞれにおける凍結粉砕後の粒子径分布を比較した場合、筋肉組織の方が、骨組織より平均粒子径が小さく、筋肉組織は微細な粒子に、骨組織は粗大な粒子になる傾向が見られた。また、凍結温度毎に筋肉組織および骨組織の粒子径分布を比較すると、凍結温度−20℃において、各組織の粉砕性に最も大きな差が見られたことより、凍結粉砕によりサメ加工残渣から筋肉および骨を分離する場合、凍結温度−20℃が最適温度であると考察した。
【0090】
次に、単一組織粉砕後の粉砕試料の化学的成分(水分、灰分、コンドロイチン硫酸ナトリウム)を粒子径毎に測定し、各組織(筋肉と骨)における化学的成分の特徴、および試料凍結温度と粉砕試料の化学的成分の関係について調べた。
【0091】
化学的成分の測定に用いる試料としては、凍結温度を変化させ、単一組織粉砕を行い、7フラクションに分級後、約−30℃のストッカー中に保存しておいた粉砕粒子を用いた。
【0092】
水分、灰分の定量には、筋肉組織の粉砕粒子(凍結温度:−80℃〜−20℃)、および骨組織の粉砕粒子(凍結温度:−60℃〜−20℃)を用いた。また、コンドロイチン硫酸ナトリウムの定量には、各組織(筋肉と骨)の粉砕性に最も大きな差が見られた凍結温度−20℃で単一組織粉砕を行った筋肉および骨組織の粉砕粒子のみを用いた。
【0093】
(a)水分の定量
常圧加熱乾燥法(日本食品工業学会食品分析法編集委員会編,食品分析法,pp.3-8,光琳,東京(1982).を参照)により水分を測定した。室温で解凍した粉砕粒子約2〜3gを予め重量を測定しておいたアルミホイルで作った皿の中に入れ、電気定温乾燥器(105℃)内で乾燥した。乾燥後、デシケーター内で30分間放冷し、秤量を行い、再度乾燥を行う恒量操作を繰り返した。水分は下記の式(1)より求めた。
【0094】
【数1】
【0095】
なお、ここで、Aはアルミ製容器の重量(g)、Bは乾燥前の容器と粉砕粒子の重量(g)、Cは乾燥後の容器と粉砕粒子の全体重量(g)である。
【0096】
(b)灰分の定量
直接灰化法(日本食品工業学会食品分析法編集委員会編,食品分析法,pp.241-250,光琳,東京(1982).を参照)により灰分を測定した。準備実験として、灰化容器(るつぼ)を約600℃の電気炉で1時間乾燥させた後、約200℃になるまで電気炉内に放置し、デシケーター内で30分間放冷して重量を測定した。これを恒量となった灰化容器の重量とした。
【0097】
室温で解凍した粉砕試料約2〜3gを予め恒量を求めた灰化容器に移し入れ、電気定温乾燥器(105℃)内で20時間乾燥した。バーナーの弱い炎で黒い煙が出なくなるまで少しずつ灰化し、30分間加熱した。その後、電気炉内に入れ、約600℃で6〜8時間保ち、白色になるまで灰化を行った。灰化終了後、約200℃になるまで電気炉内に放置した。デシケーター内で30分間放冷し、秤量を行った。灰分は下記の式(2)より求めた。
【0098】
【数2】
【0099】
なおここで、Aは恒量となった灰化容器の重量(g)、Bは灰化後の灰化容器と試料の重量(g)、Cは試料採取量(g)である。
【0100】
(c)コンドロイチン硫酸ナトリウム(ChSNa)の定量
ChsNaの定量は、カルバゾール硫酸法(T. Bitter and H.M. Muir, A modified uronic acid carbazole reaction, Analytical Biochemistry, 4, 330-334(1962).を参照)とアルシアンブルー法(矢部芳枝,二宮隆博,柏場英明,辰濃隆,岡田太郎,食品中に添加したコンドロイチン硫酸ナトリウムの分析法,食品衛生学会誌,28,13-18(1987).、服部学,有田淳哉,田淵照人,小池茂行,中村洋,アルシアンブルー8GXを用いるコンドロイチン硫酸ナトリウム/ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物の分別定量,分析化学,52,259-263(2003).)を組み合わせた方法により測定した。
【0101】
カルバゾール硫酸法とは、ChSNa中のグルクロン酸の発色色素であるカルバゾール溶液を添加し、分光光度計を用いて吸光度を測定する方法である。濃度を規定したグルクロン酸標準溶液を用いて検量線を作成し、検体中のChSNa含量を求める。カルバゾール硫酸法は、数種類あるChSNaの測定法の中で、代表的な試験法であるが、98℃以上の高温で濃硫酸を反応させ試料を分解するため、危険を伴うという問題点がある。一方、アルシアンブルー法は、ChSNaの発色色素であるアルシアンブルーを添加し、分光光度計を用いて吸光度を測定する方法である。検量線を引く際には、濃度を規定したChSNa標準溶液を用いる。アルシアンブルー法は、安全かつ再現性がよい試験法であるが、現段階ではChSNaの精密な定量法が確立されていないため、含量が規定されたChSNa試薬が市販されていないという問題点があった。そこで本実施例では、まずカルバゾール硫酸法により市販のChSNa試薬(和光純薬(株)製、コンドロイチン硫酸Cナトリウム試薬)の濃度を規定し、この試薬を、アルシアンブルー法を行う際のChSNa標準溶液として用い、粉砕試料中のChSNa含量を測定した。
【0102】
(c−1)カルバゾール硫酸法
コンドロイチン硫酸Cナトリウム試薬(和光純薬(株)製)100mgを正確に秤量後、蒸留水に溶解し全量を100mlとした。次に、この溶液5mlを正確に取り、蒸留水に溶解し全量を100mlとし、これ試験溶液とした。
【0103】
試験溶液、予め作成しておいたグルクロノラクトン標準溶液(和光純薬(株)製)(10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml)、およびブランク(蒸留水)をそれぞれ1mlずつ秤取し、試験管に注入した。それぞれについて2サンプルずつ作成した。試験管を氷水中で冷却しながら、硫酸(和光純薬(株)製)・ホウ砂溶液(和光純薬(株)製)5mlを各試験管に徐々に加え、十分に攪拌した。試験管にビー玉の栓をして、沸騰水浴中にて10分間加熱後、冷却水中で室温まで冷却した。
【0104】
カルバゾール溶液(和光純薬(株)製)0.2mlを加えて十分に攪拌し、再びビー玉で栓をして沸騰水浴中で正確に15分間加熱して発色させた。その後、流水で室温まで冷却した。
【0105】
分光光度計Bio Spec-1600(島津製作所(株)製)を用いて、530nmで吸光度を測定した。標準溶液の吸光度を基に検量線を作成し、検量線より検液中のグルクロノラクトン量を読み取った。読み取った検液中のグルクロノラクトン量より下記の式(3)および(4)に基づきコンドロイチン硫酸Cナトリウム試薬中のChSNa含量を算出した。
【0106】
【数3】
【0107】
【数4】
【0108】
(c−2)アルシアンブルー法
室温で解凍した粉砕粒子約5gにジエチルエーテル50mlを加え、60分間放置して脱脂した。水50mlを加え5000rpmで5分間ホモジナイズした後、3000rpmで10分間遠心分離し、上層のジエチルエーテルを除去した。
【0109】
1N水酸化ナトリウム溶液でpH7に調整した後、アクチナーゼE(科研製薬(株)製)溶液(100mg/ml)5mlを加え、40℃の水浴中で時々振り混ぜながら4時間放置し、蛋白質を分解した。3000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液についてガラス繊維を用いてろ過し、蒸留水で全量を100mlとし試験溶液とした。
【0110】
試験溶液およびブランク(蒸留水)1mlにそれぞれアルシアンブルー溶液0.2mlを加え20分間放置した。それぞれについて2サンプルずつ作成した。析出した沈殿は3000rpmで30分間遠心分離し、上澄み液は捨て、ついで水3mlで洗浄し、再び遠心分離を繰り返した。
【0111】
得られた沈殿はモノエタノールアミン5mlに溶解し、615nmにおける吸光度(島津製作所(株)製、分光光度計Bio Spec-1600)を測定し、あらかじめ作成した検量線により定量を行った。検量線は、ChSNa標準溶液(5μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml)を用いて試験溶液と同様に操作して作成した。試験溶液中のChsNa含量は次の式(5)より求めた。
【0112】
【数5】
【0113】
なお、ここで、0.913とはカルバゾール硫酸法により求めたChSNa試薬の標準溶液の含量補正項である。
【0114】
図6(a)および(b)に筋肉および骨組織を凍結粉砕し、分級した粉砕粒子における粒子径毎の水分含量の凍結温度依存性を示した。また、図7(a)および(b)に筋肉および骨組織を凍結粉砕し分級した粉砕粒子における粒子径毎の灰分含量の凍結粉砕温度依存性を示した。
【0115】
図6(a)、図7(a)より、筋肉組織に関して、−80℃〜−40℃の凍結温度では水分および灰分含量に差は見られなかったが、凍結温度−20℃においてのみ、粒子径0.71〜2.0mmで水分の減少、および灰分の増加が認められた。これは、粒子径0〜0.355mmの水分含量が高いこと(図6(a))や、凍結温度−20℃で他と比較して、受け皿(粒子径0mm)に集まったフラクションの割合が高いこと(図4(a))などから、筋肉中の水分が粉砕により微細な粒子になり、小粒子径のフラクションにふるい落とされたためであると考えた。また、すべての凍結温度において、粒子径0.355〜0.5mmの小粒子側で、大粒子側より水分含量が高く、灰分含量が低い傾向を示し、粒子径0.71〜2.0mmの大粒子側では、粒子径に関係なく水分、灰分含量ともにほぼ一定の値を示した。凍結温度−80℃〜−40℃と比較し、凍結温度−20℃で粒子径毎の化学的成分が変化したことより、上記した凍結粉砕・分級操作後の粒子径分布の凍結温度依存性と同様に、脆化点を境に凍結温度が粉砕粒子の化学的成分に影響を与えることが示唆された。
【0116】
一方、図6(b)および図7(b)より、骨組織では−60℃〜−20℃のいずれの凍結温度においても水分および灰分含量がほぼ同じ値となった。凍結温度−60℃での灰分含量が他の凍結温度よりやや高い値となったのは、灰化操作が十分でなかったことが原因であると考え、測定誤差範囲とした。また、すべての凍結温度において、粒子径0.355〜0.5mmの小粒子側で、大粒子側より水分含量が高くなる傾向を示し、粒子径0.71〜2.0mmの大粒子側では、粒子径に関係なく水分含量はほぼ一定の値となった。これらのことより、骨組織において、組織凍結温度−60℃〜−20℃で凍結粉砕を行う場合、凍結温度は粉砕粒子の化学的成分に影響を与えないことが示唆された。
【0117】
図8(a)および(b)にカルバゾール硫酸法、およびアルシアンブルー法により求めた検量線を示した。カルバゾール硫酸法により求めたコンドロイチン硫酸C試薬のChsNa含量は、91.3%であった。また、図9に凍結温度−20℃で筋肉および骨組織を凍結粉砕し、分級した粉砕粒子の粒子径毎のChSNa含量を示した。
【0118】
図9に示すように、筋肉組織では、粒子径0.355〜1.41mmの範囲で、ChSNa含量が0%に近い低い値を示したことより、筋肉組織はほとんどChsNaを含まないことが示唆された。一方、粒子径2.0mmにおいて筋肉組織の粉砕粒子が他の粒子径と比較して高いChsNa含量値を示したのは、粉砕試料のサイズが大きいため、操作過程の脱脂や蛋白質分解が十分に行われず、ChsNa以外の沈殿が生じたためであると考察した。
【0119】
一方、骨組織では、図9に示すように、粒子径0.355〜0.71mmの小粒子側で、大粒子側よりChsNa含量が高い値となった。これは、粒子径0.355〜0.71mmの範囲で粒子径が小さいほど含量が高く、粒子径1.0mm〜2.0mmの大粒子側で一定の含量値を示す水分の測定結果(図6(b))と同様の傾向を示していることより、水溶性であるChSNaが骨組織中の水に溶解し、凍結粉砕・分級操作時に水分とともに下方にふるい落とされるためではないかと考察した。これにより、例えば、骨組織のみを用いて−20℃で凍結粉砕した場合、粒子径0.355〜0.71mmの粉砕粒子を回収することによって、骨組織からのコンドロイチン硫酸の濃縮を実現できる。
【0120】
筋肉および骨組織における化学的成分を比較した場合、凍結温度−20℃を除くと、両組織間において水分含量に大きな差は見られなかった。これに対し、灰分、およびChsNa含量では、骨組織の方が筋肉組織より含量が顕著に高い傾向が示された。このことより、加工残渣を試料として用い、凍結粉砕・分級操作を行った場合、粉砕試料の灰分およびChsNa含量を測定することで、各組織が優先粉砕される条件を明らかにすることができる可能性が示唆された。
【0121】
サメ加工残渣を筋肉組織および骨組織の単一組織に分けたものを用い、凍結温度を変化させ凍結粉砕を行い、凍結温度と粉砕した試料の粒子径分布や化学的成分との関係についてそれぞれ評価した。
【0122】
筋肉組織と骨組織における凍結粉砕後の粒子径分布を比較した場合、筋肉組織の方が、骨組織より平均粒子径が小さく、筋肉組織は微細な粒子に、骨組織は粗大な粒子になる傾向が示され、凍結温度−20℃において、各組織の粉砕性に最も大きな差が見られた。また、化学的成分の分析を行った場合、灰分、およびChsNa含量で、骨組織の方が筋肉組織より含量が顕著に高い傾向が示された。
【0123】
これらのことより、凍結粉砕操作とふるいを用いた分級操作を組み合わせることで、筋肉および骨組織を分離できる可能性が示唆された、凍結粉砕によりサメ加工残渣から筋肉および骨を分離する場合、凍結温度−20℃が最適温度であると考察した。
【0124】
〔組織集合体の凍結粉砕と、凍結粉砕後の粉砕粒子の粒子径分布、および化学的成分の凍結粉砕温度依存性〕
上記において、筋肉および骨組織の単一組織を用い、それぞれ凍結粉砕・分級操作を行った後、粒子径分布を測定し、両者の分布を比較した。その結果、筋肉組織は微細な粒子に、骨組織は粗大な粒子になる傾向が見られ、凍結温度−20℃において、各組織の粉砕性に最も大きな差が現れた。
【0125】
そこで、次に、実際の加工残渣を想定した組織集合体として頭部(以下、これを組織集合体とよぶ)を用い、凍結温度−20℃で粉砕操作を行い、粉砕分離性を検討した。そして、単一組織粉砕の結果から予測される粉砕分離性と、組織集合体における粉砕分離性との比較を行った。また、粉砕試料の粒子径分布を評価すると同時に、粉砕試料の化学的成分(水分、灰分、およびコンドロイチン硫酸ナトリウム)の分析を行った。
【0126】
組織集合体として、上記と同様、宮城県気仙沼産のモウカサメの頭部を用いた。この頭部は、手作業にて予め皮を除去した。加工残渣とみなすことができる。約−30℃の冷凍庫内に保存しておいたこの頭部(組織集合体)を室温で解凍した後、カッターによって1×1×1cm3〜1×2×2cm3の切断片に切断し、−20℃に温度設定したストッカー中に保存し、十分に設定温度まで凍結させた。
【0127】
凍結破砕操作は、上記と同様に、液体窒素で十分に冷却しておいた凍結破壊装置1(図2)(吉田製作製作所(株)製の冷却型ウイレー粉砕機)を用いて行った。凍結破壊装置1のスクリーン4には、目開き5mmのスクリーンを用い、粉砕部3の回転刃8の回転数は1000rpmに設定した。
【0128】
粉砕部3での凍結粉砕にあたっては、粉砕部3(具体的には、投入部2および粉砕部3)への組織集合体の投入量は、上記の切断片に換算して2〜3個とし、一度、粉砕部3に投入した単一組織がスクリーン4から完全に排出された後、新たな単一組織を投入した。
【0129】
スクリーン4から排出された各単一組織の粉砕粒子群は、液体窒素を満たした恒温槽6(発泡スチロール製)で受け、恒温槽6内に蓄積された粉砕粒子群(総重量500g)は、約−30℃の冷凍庫内で液体窒素を完全に蒸発させ、続く分級操作に供した。
【0130】
分級操作も、上記と同様に、7フラクションに分級した。すなわち、目開き0.355mm(ふるい11f)、0.50mm(ふるい11e)、0.71mm(ふるい11d)、1.00mm(ふるい11c)、1.41mm(ふるい11b)、2.00mm(ふるい11a)のJIS標準ふるいを備えた分級装置10(図3)を用いて行った。その後、粉砕性を評価した。
【0131】
図10(a)および(b)に、組織集合体を凍結粉砕(−20℃)した粉砕粒子群の粒子径分布を示した。図10(a)は、粒子径分布の凍結粉砕温度依存性を示し、図10(b)は、粒子径(mm)を対数目盛りの横軸にとり、積算ふるい下(%)を対数目盛りの縦軸にとった場合の組織集合体の粉砕粒子群の粒子径分布である。なお、図10(a)および(b)には、比較のために、上記した単一組織を凍結粉砕させた際の筋肉および骨組織の粒子径分布も同時に示した。
【0132】
図10(a)より、組織集合体において、筋肉の単一組織と同様に、粒子径0.5mmでのピークが現れたことより、筋肉組織の粉砕分離性がそれほど変化しないことが予測された。また、骨の単一組織粉砕時に見られた粒子径1.41mmでのピークは、組織集合体粉砕時では小さくなって現れた。これは、図10(b)で組織集合体の平均粒子径が、筋肉の単一組織の平均粉砕粒子径に近い値を示したことなどから、組織集合体は骨組織より筋肉組織を多く含み、骨組織の粉砕性の影響があまり現れないためであると考えられた。
【0133】
次に、上記の方法と同様の方法により、組織集合体を凍結粉砕した粉砕粒子の水分および灰分含量をそれぞれ算出した。図11(a)および(b)は、組織集合体を凍結粉砕した粉砕粒子の水分および灰分含量をそれぞれ示したグラフである。なお、図11(a)および(b)には、比較のために、上記した単一組織を凍結粉砕させた際の筋肉および骨組織の化学的成分の分析結果も同時に示した。その結果、図11(b)のグラフから、粒子径が大きくなるほど、灰分が高くなる傾向が示された。
【0134】
次に、筋肉組織および骨組織には灰分含量に顕著な差があることを利用して、組織集合体の粉砕粒子群における筋肉組織と骨組織それぞれの割合を、図11(b)の灰分含量に基づいて求めた。フラクション中の骨の分率をαi〔−〕、フラクション中の灰分Ai〔%〕とおくと、次式(6)が成り立つ。
【0135】
【数6】
【0136】
ここで、afleshは筋肉の灰分(%)、aboneは骨の灰分(%)である。式(6)をαiについて整理すると次式(7)
【0137】
【数7】
【0138】
となる。よって、全フラクション重量に対する各フラクションの筋肉組織と骨組織の重量比を、次式(8)および(9)から求めた。
【0139】
【数8】
【0140】
【数9】
【0141】
なおここで、Wiはフラクション重量(g)である。式(6)および(7)から、組織集合体に含まれる全筋肉量、全骨量をそれぞれ100としたときのフラクション毎の筋肉および骨の重量割合は次式(10)および(11)により得られる。
【0142】
【数10】
【0143】
【数11】
【0144】
上記の式(10)および(11)に基づいて、各フラクションの筋肉組織と骨組織の量を算出し、粒子径分布を求めた。図12(a)および(b)に灰分含量から求めた組織集合体粉砕における筋肉および骨組織の粒子径分布を示した。同図には、比較のために、単一組織粉砕における筋肉および骨組織の粒子径分布も示した。
【0145】
これより、組織集合体における筋肉および骨組織の粉砕性は、単一組織におけるそれぞれの組織の粉砕性とほぼ同じであることが明らかとなった。つまり、筋肉組織は全体として粒子径が小さくなり、粒子径0.5mmにピークが現れ、骨組織は全体として粒子径が大きくなり、粒子径1.41mmにピークが現れるという単一組織粉砕と同様の傾向が見られた。
【0146】
そこで、骨組織が最も多く含まれている粒子径1.41mmのフラクションの粉砕粒子に含まれるコンドロイチン硫酸ナトリウム(ChsNa)を定量した。またその際、他のフラクションの粉砕粒子に含まれるChsNa量と比較した。定量方法は、上記したカルバゾール硫酸法とアルシアンブルー法とを組み合わせた方法によって測定した。図13は、各フラクションにおけるChsNa量を示すグラフである。図13より、粒子径1.41mmのフラクションの粉砕粒子に最も多くのコンドロイチン硫酸ナトリウムが含まれていることが示された。
【0147】
すなわち、本実施例では、凍結粉砕した粉砕粒子群の中から、上記した分級操作により所定の粒子径を有する粉砕粒子(すなわち、粒子径1.41mmのフラクションに含まれる粉砕粒子)を回収するという簡易な構成により、加工残渣から骨組織を分離することができ、さらに、その回収した粉砕粒子からコンドロイチン硫酸ナトリウムを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
以上のように、本発明によれば、所定の粒子径を有する粉砕粒子群を分級することにより、凍結粉砕した組織集合体の粉砕粒子群から骨組織からなる粉砕粒子群を分級すること可能となる。これにより、加工残渣からの骨組織の分離作業を簡略化できることによりコンドロイチン硫酸の製造効率の向上が期待でき、製造コストを低減できる。それゆえ、本発明は、他の水産加工産業にも好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】サメ軟骨に主に含まれるコンドロイチン硫酸Cの化学構造式である。
【図2】本発明に係る一実施形態において、筋肉組織および骨(軟骨)組織が混在する組織集合体を凍結粉砕するための凍結粉砕装置の構成を示しており、(a)は、当該凍結粉砕装置の側面図であり、(b)は、(a)に示した凍結粉砕装置に設けられたスクリーンの構成を示した拡大平面図である。
【図3】本発明に係る一実施形態において、図2に示した凍結粉砕装置によって凍結粉砕された粉砕粒子群から、骨(軟骨)組織からなる粉砕粒子群を分級するための分級装置の構成を示す斜視図である。
【図4】(a)および(b)はともに、凍結温度−80℃〜−20℃において筋肉組織を凍結粉砕した場合の粒子径分布の凍結温度依存性を示したグラフである。
【図5】(a)および(b)はともに、凍結温度−60℃〜−20℃において骨組織を凍結粉砕した場合の粒子径分布の凍結粉砕温度依存性を示したグラフである。
【図6】分級した粉砕粒子における粒子径毎の水分含量の凍結温度依存性を示しており、(a)は筋肉組織からなる粉砕粒子の水分含量を示し、(b)は骨組織からなる粉砕粒子の水分含量を示したグラフである。
【図7】分級した粉砕粒子における粒子径毎の灰分含量の凍結温度依存性を示しており、(a)は筋肉組織からなる粉砕粒子の灰分含量を示し、(b)は骨組織からなる粉砕粒子の灰分含量を示したグラフである。
【図8】(a)はカルバゾール硫酸法により求めた検量線を示し、(b)はアルシアンブルー法により求めた検量線を示したグラフである。
【図9】凍結温度−20℃において筋肉および骨組織を凍結粉砕し、分級した粉砕粒子の粒子径毎のChSNa含量を示したグラフである。
【図10】組織集合体を凍結粉砕(−20℃)した粉砕粒子群の粒子径分布を示し、(a)は粒子径分布の凍結粉砕温度依存性を示し、(b)は粒子径を対数目盛りの横軸にとり、積算ふるい下を対数目盛りの縦軸にとった場合の当該組織集合体の粉砕粒子群の粒子径分布を示すグラフである。
【図11】(a)は組織集合体を凍結粉砕した粉砕粒子群における粒子径毎の水分含量を示し、(b)は灰分含量を示したグラフである。
【図12】(a)および(b)はともに、灰分含量から求めた組織集合体粉砕における筋肉および骨組織の粒子径分布を示したグラフである。
【図13】組織集合体を凍結粉砕(−20℃)した粉砕粒子群における粒子径毎のChsNa量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0150】
1 凍結粉砕装置
2 投入部
3 粉砕部
4 スクリーン
4a 目開き
5 連通路
6 恒温槽
7 凍結温度制御部
8 回転刃
9 固定刃
10 分級装置
11a〜g ふるい
12 振とう手段
13 受け皿
14 フタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋肉組織および骨組織を含む組織集合体を用いてコンドロイチンを製造するコンドロイチンの製造方法であって、
上記組織集合体を凍結粉砕して、粉砕粒子群を得る凍結粉砕工程と、
上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群から、上記骨組織からなる粉砕粒子を分級する分級工程とを含み、
上記分級工程では、所定の粒子径を有する粉砕粒子を分級することを特徴とするコンドロイチンの製造方法。
【請求項2】
上記分級工程では、上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群を、互いに異なる目開きの大きさを有する複数のふるいを用いて分級することを特徴とする請求項1に記載のコンドロイチンの製造方法。
【請求項3】
上記骨組織は、サメの軟骨であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンドロイチンの製造方法。
【請求項4】
上記凍結粉砕工程では、上記組織集合体が−15℃〜−30℃で凍結していることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のコンドロイチンの製造方法。
【請求項5】
上記組織集合体は、サメ由来であるとともに、尾鰭、背鰭、胸鰭、および身といった加工部位が回収された後に排出される、頭部や中落ちを含む加工残渣であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のコンドロイチンの製造方法。
【請求項1】
筋肉組織および骨組織を含む組織集合体を用いてコンドロイチンを製造するコンドロイチンの製造方法であって、
上記組織集合体を凍結粉砕して、粉砕粒子群を得る凍結粉砕工程と、
上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群から、上記骨組織からなる粉砕粒子を分級する分級工程とを含み、
上記分級工程では、所定の粒子径を有する粉砕粒子を分級することを特徴とするコンドロイチンの製造方法。
【請求項2】
上記分級工程では、上記凍結粉砕工程によって得られた上記粉砕粒子群を、互いに異なる目開きの大きさを有する複数のふるいを用いて分級することを特徴とする請求項1に記載のコンドロイチンの製造方法。
【請求項3】
上記骨組織は、サメの軟骨であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンドロイチンの製造方法。
【請求項4】
上記凍結粉砕工程では、上記組織集合体が−15℃〜−30℃で凍結していることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のコンドロイチンの製造方法。
【請求項5】
上記組織集合体は、サメ由来であるとともに、尾鰭、背鰭、胸鰭、および身といった加工部位が回収された後に排出される、頭部や中落ちを含む加工残渣であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のコンドロイチンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−225485(P2006−225485A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39838(P2005−39838)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
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