説明

コンドロイチンリアーゼ酵素

【課題】コンドロイチンリアーゼ酵素を提供すること。
【解決手段】細胞破砕、陽イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、高分解能イオン交換クロマトグラフィー、およびサイズ排除を組み込んだコンドロイチン硫酸多糖を分解し得る2つの高度に精製された酵素(コンドロイチン硫酸AおよびCを分解し得る77,000±5,000ダルトンのタンパク質、およびデルマタン硫酸を分解し得る55,000±2,300ダルトンのタンパク質)の多工程精製法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、Flavobacterium heparinumに見出されたコンドロイチンリアーゼ酵素(chondroitin lyase enzyme)の精製およびクローニングに関する。
【0002】
グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)は、異なる位置に硫酸基を保有する1つおきのヘキソサミン(hexosamine)残基およびヘキスロン(hexuronic)残基からなる非分枝多糖(unbranched polysaccharide)である。このクラスの分子は、二糖骨格(disaccharide backbone)の組成により、3つのファミリーに分けられ得る。これらは:ヘパリン/ヘパラン硫酸(heparin/heparan sulfate)[HexA-GlcNAc(SO4)];コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate) [HexA-GalNAc];およびケラタン硫酸(keratan sulfate)[Gal-GlcNAc]である。コンドロイチン硫酸ファミリーは、非硫酸化コンドロイチン硫酸(unsulfated chondroitin sulfate)、過硫酸化コンドロイチン硫酸(oversulfated chondroitin sulfate)、およびコンドロイチン硫酸A〜E(chondroitin sulfate A-E)と称される7つのサブタイプを包含する。コンドロイチン硫酸A〜Eは、硫酸官能基の数および位置において異なる。さらに、コンドロイチン硫酸B(デルマタン硫酸(dermatan sulfate)とも呼ばれる)は、イズロン酸(iduronic acid)が、1つおきのヘキスロニン酸(hexuronic acid)位置において優勢な残基である点において異なる。
【0003】
コンドロイチン硫酸A、B、およびCは、哺乳動物に見出される優勢な形態であり、そして種々の生物学的活性(細胞分化、接着、酵素的経路、およびホルモン相互作用を包含する)の調節に関与し得る。コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(chondroitin sulfate proteoglycan)の存在は、Yeoら、Am.J.Pathol. 138:1437-1450, 1991, RichardsonおよびHatton, Exp.Mol.Pathol. 58: 77-95, 1993およびForresterら、J.Am.Coll.Cardiol. 17:758-769, 1991により報告されたように、組織および血管損傷に応答する細胞成長のより後期の段階において増大される。コンドロイチン硫酸はまた、Tabasら、J.Biol.Chem., 268 (27): 20419-20432, 1993に記載されるように、血管の疾患の進行に関与する事象およびリポタンパク質(lipoprotein)取り込みに関連する。
【0004】
適切な純度および特徴のコンドロイチン酵素は、これらの細胞の事象を調節すること、および疾患状態の処置のための療法を開発することにおけるコンドロイチン硫酸の役割を決定することにおいて有用な道具であり得る。
【0005】
いくつかの細菌種由来のコンドロイチン硫酸分解酵素(コンドロイチナーゼ(chondroitinase)またはコンドロイチン硫酸リアーゼ(chondroitin sulfate lyase)と称される)が報告されている。Takegawaら、J.Ferm.Bioeng. 77(2):128-131,1991は、81,000ダルトンと83,000ダルトンとの間の分子量を有する、Aureobacterium由来のコンドロイチナーゼAC(chondroitinase AC)(銅イオンにより阻害される)を報告している。Bacteriodes thetaiotamicronは、Linnら、J.Bacteriol. 165:859-866, 1985により記載されるように、分子量104,000および108,000ダルトンの2つのコンドロイチナーゼAC分解酵素を産生する。Flavobacterium heparinum, Proteus vulgaris, Arthrobacter aurescensおよびPseudomonas fluorescensを包含する他の細菌は、Linhardtら、Appl.Biochem.Biotechnol. 12:135-177, 1986により総説されるように、コンドロイチナーゼACまたはコンドロイチナーゼABC酵素(これは、十分に特徴づけられていない)を産生する。F.heparinumは、Linhardt, R.らにより報告されるように、デルマタン硫酸に特異的である酵素、コンドロイチナーゼB(chondroitinase B)を産生する唯一の微生物である。しかし、F.heparinum由来のコンドロイチナーゼ分解酵素は、均質に精製されていないか、または完全に特徴づけられていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故、本発明の目的は、コンドロイチンリアーゼ酵素を精製する方法を提供する。
【0007】
本発明のさらなる目的は、コンドロイチンリアーゼ酵素をコードするDNA配列を提供することである。
【0008】
本発明のなおさらなる目的は、薬学試薬として有用である精製されたコンドロイチンリアーゼ酵素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって以下が提供される:
(1) Flavobacterium heparinumに由来する、コンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼBからなる群より選択される精製されたコンドロイチナーゼであって:
該細菌を溶解する工程;
該溶解した細菌の周辺腔からタンパク質を抽出する工程;
塩またはpHグラジエントを用いて、陽イオン交換クロマトグラフィーにより、該抽出されたタンパク質を分離する工程;
塩またはpHグラジエントを用いて、硫酸セルロース樹脂におけるクロマトグラフィーにより、該陽イオン交換クロマトグラフィーのマトリックスの溶出により得られた酵素活性を有する画分を分離する工程;
塩またはpHグラジエントを用いて、ヒドロキシアパタイトにおいて、該硫酸セルロース樹脂の溶出により得られた酵素活性を有する該画分を分離する工程;
塩またはpHグラジエントを用いて、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いるクロマトグラフィーにより、該ヒドロキシアパタイトの溶出により得られた酵素活性を有する該画分を分離する工程;および
分子量に基づいて、酵素活性を有する該画分を分離する工程、
を含むプロセスにより該細菌から99%よりも高度に精製された、コンドロイチナーゼ。
(2) 前記酵素が、コンドロイチナーゼACであり、そして72,000から82,000ダルトンの間の分子量を有し、そしてコンドロイチン硫酸Aおよびコンドロイチン硫酸Cを分解し得る、項目1に記載の酵素。
(3) 前記酵素が、コンドロイチナーゼBであり、そして52,700から57,300ダルトンの間の分子量を有し、そしてデルマタン硫酸またはコンドロイチン硫酸Bを分解し得る、項目1に記載の酵素。
(4) 配列番号1のヌクレオチド配列あるいはその保存的な置換または縮重性の置換を有する配列によりコードされる、組換えコンドロイチナーゼAC。
(5) 配列番号2のアミノ酸配列またはその保存的な置換を有する配列を有する、項目4に記載の酵素。
(6) 配列番号3のヌクレオチド配列あるいはその保存的な置換または縮重性の置換を有する配列によりコードされる、組換えコンドロイチナーゼB。
(7) 配列番号4のアミノ酸配列またはその保存的な置換を有する配列を有する、項目6に記載の酵素。
(8) 薬学的に受容可能なキャリアをさらに含有する、項目1に記載の酵素。
(9)配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、項目4に記載のコンドロイチナーゼ。
(10) 配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する、項目6に記載のコンドロイチナーゼ。
(11) 以下の工程を含むプロセスにより、Flavobacterium heparinumから、コンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼBからなる群より選択されるコンドロイチナーゼを精製するための方法:
該細菌を溶解する工程;
該溶解した細菌の周辺腔からタンパク質を抽出する工程;
塩またはpHグラジエントを用いて、陽イオン交換クロマトグラフィーにより、該抽出されたタンパク質を分離する工程;
塩またはpHグラジエントを用いて、硫酸セルロース樹脂におけるクロマトグラフィーにより、該陽イオン交換クロマトグラフィーのマトリックスの溶出により得られた酵素活性を有する画分を分離する工程;
塩またはpHグラジエントを用いて、ヒドロキシアパタイトにおいて、該硫酸セルロース樹脂の溶出により得られた酵素活性を有する該画分を分離する工程;
塩またはpHグラジエントを用いて、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いるクロマトグラフィーにより、該ヒドロキシアパタイトの溶出により得られた酵素活性を有する該画分を分離する工程;および
分子量に基づいて、酵素活性を有する該画分を、他の酵素から分離したコンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼBを含む画分に分離する工程。
【0010】
発明の要旨
グラム陰性生物、Flavobacterium heparinumのような細菌由来のコンドロイチンリアーゼ酵素を精製する方法が開発され、これは、精製されたコンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼBを産生する。細胞は、発酵槽培養により増殖される。この細胞は、好ましくは、細胞周辺腔からタンパク質を選択的に放出させる浸透圧ショック技術(osmotic shock technique)を用いて溶解され、次いで、陽イオン交換クロマトグラフィーにより分画される。コンドロイチナーゼ分解活性を含有する画分は、コンドロイチナーゼACとコンドロイチナーゼB活性とを分離する、硫酸化セルロースベース樹脂(sulfated cellulose based resin)およびヒドロキシルアパタイト(hydroxylapatite)クロマトグラフィーを用いるアフィニティークロマトグラフィーによりさらに分画される。それぞれの酵素の高度に精製された調整物は、高分解能の強力な陽イオン交換樹脂を用いるさらなるクロマトグラフィー工程により得られる。コンドロイチナーゼBの純粋な調製物は、分子のサイズに基づくさらなる分離工程(例えば、ゲル濾過液体クロマトグラフィー)を必要とし得る。
【0011】
Flavobacterial起源のコンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼB酵素をコードする遺伝子をクローン化した。これらは、適切な発現系と組み合わせて用いられ得、例えば、過剰発現プロモーターの調節下でFlavobacterium中に、またはFlavobacterium以外の生物において酵素を産生する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
F.heparinum由来のコンドロイチン硫酸分解酵素の精製
細胞は、十分な量の酵素を得るために発酵槽培養において増殖される。コンドロイチン硫酸Aは、コンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼB合成を誘導するために、0.5g/lと10g/lとの間、好ましくは1.0g/L〜2.0g/lの間の濃度で培地中に含有される。粗酵素抽出物は、標準的な細胞破砕技術(cell disruption technique)、好ましくは細胞の細胞周辺腔からタンパク質を選択的に放出させる浸透圧ショックに基づく技術により、細胞から可溶タンパク質を遊離させることにより調製される。例えば、タンパク質は、0.01〜1.0%の範囲の非イオン性界面活性剤(non-ionic detergent)での処理、細胞を凍結および解凍する工程、パルスモード(pulsed mode)25/75〜75/25における30〜60%の出力での0.5〜6.0分間の部分的超音波処理、0.001〜1.0mg/mlでの15〜60分間の4℃と25℃との間のリゾチーム(lysosyme)処理、0.01〜1.0%クロロホルム(chloroform)またはトルエン(toluene)での有機溶媒処理、またはZimmermannおよびCooneyの米国特許第5,169,772号に記載の浸透圧ショック法(osmotic shock process)により、細胞周辺腔から放出され得る。後者では、細胞は、0.5分と4.0分との間、poser3〜6パルスモード50/50、部分的ホモジナイゼーション250〜500psiで部分的に超音波処理され、続いて、15分と60分との間で、4℃と23℃との間にて、0.001〜1.0mg/mlでリゾチーム(lysozyme)処理され、そして0.01〜1.0%クロロホルムまたは0.01〜1.0%トルエンで有機溶媒処理される。
【0013】
好ましい実施態様では、粗抽出物は、6.0と8.5との間のpHで、0.01〜1.0M NaClに相当する塩グラジエントで、高流速樹脂(例えば、SepharoseTM S Big Beads (Pharmacia)、MonoSTM (Pharmacia)、CBX (J.T.Baker)、SepharoseTM S (Pharmacia)、およびCMセルロース(Bio-RadまたはSigma))を用いる陽イオン交換クロマトグラフィーにより分画される。結合したタンパク質は、好ましくはpH 7.0での0.25M 塩化ナトリウム(sodium chloride)および1.0M 塩化ナトリウムの段階グラジエントで溶出される。コンドロイチナーゼ活性は、0.25M 塩化ナトリウム画分中に溶出する。他の塩(例えば、リン酸ナトリウム(sodium phosphate)または硫酸ナトリウム(sodium sulfate))が、塩グラジエントを作製するために利用され得る。あるいは、6.0〜10.0の範囲におけるpHグラジエントが用いられ得るか、または塩およびpHグラジエントの組み合わせが用いられ得る。
【0014】
コンドロイチナーゼ分解活性を含有する画分は、0.0〜0.4M NaClの直線グラジエントで硫酸化セルロースベース樹脂を用いる、アフィニティークロマトグラフィーによりさらに分画される。コンドロイチナーゼACは、主に、0.23〜0.26M NaClで溶出し、一方コンドロイチナーゼBは、0.27〜0.3M NaClで溶出する。これは、pH7.7で、0.25M NaClの段階グラジエントおよびそれに続く0.25〜1.0M NaClの直線グラジエントを用いるヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーに続く。コンドロイチナーゼBは、0.25M NaCl工程で溶出し、一方、コンドロイチナーゼACは、0.85〜0.95M NaClで溶出する。それぞれの酵素の高度に精製された調整物は、上記の陽イオン交換樹脂からの溶出に関して記載されるように、高分解能の強力な陽イオン交換樹脂を用いて得られ、0.025M リン酸ナトリウム(pH 7.0±0.1)中の0.125〜0.325M NaClの直線グラジエントで溶出される。コンドロイチナーゼBは、0.175〜0.225M NaClのタンパク質ピークに溶出する。コンドロイチナーゼBは、サイズ排除クロマトグラフィー、限外濾過、または分離用ゲル電気泳動により、分子のサイズに基づいてさらに精製され得る。5,000〜100,000の範囲の最大分解能力を有するゲル濾過(サイズ排除)樹脂が好ましい。これらは、Pharmacia由来のSuperoseTM 12、SuperoseTM 6、SephadexTM G-50、およびSephadexTM G-50、ならびにBioRad由来のBioGelTM P-60およびBioGelTM P-100を包含する。10,000〜30,000ダルトンの範囲の分子量カットオフを有する限外濾過または透析膜は、小さな混入物を除去することにおいて有用であり、一方、70,000〜1,000,000ダルトンの範囲の分子量カットオフを有する限外濾過または透析膜は、より大きな混入物を除去するのに有用である。あるいは、十分な純度(25%純粋以上)のコンドロイチナーゼB含有サンプルは、標準的な研究室手順によるゲル電気泳動にサンプルを供し、そして55,000±2,300ダルトンの分子量に現れる主要なバンドを切り出すことにより、さらに精製され得る。
【0015】
コンドロイチナーゼリアーゼ酵素を産生および精製する方法は、以下に例示される。
【0016】
F. heparinumを、15Lのコンピューター制御された発酵槽において、Galliherら、Appl.Environ.Microbiol. 41(2) :360-365, 1981に記載の種々の規定された栄養培地中で培養した。コンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼB合成の誘導物質として、コンドロイチン硫酸A (Sigma)を、1.0g/Lの濃度で培地中に含有させた。細胞を遠心分離により収集し、そして所望の酵素を、ZimmermannおよびCooneyの米国特許第5,169,772号に記載の浸透圧ショック法の変法により細胞周辺腔から放出させた。細胞を、0.01M リン酸ナトリウムおよび0.3M 塩化ナトリウム(pH 7.0±0.1)中に再懸濁し、600nmで100吸光単位の最終細胞濃度にする。非イオン性界面活性剤NoneditTM P-40を、0.1%の最終濃度で細胞懸濁物に添加し、そしてこの細胞を、マグネティックスターラーバー装置(magnetic stir bar device)を用いて1時間室温で撹拌する。次いで細胞および細胞細片を、JA-10ローターを有するSorvalTM RC5C遠心機を用いる10,000RPMで45分間の遠心分離により除去した。細胞ペレットを捨て、そしてオスモレート(osmolate)上清をさらなるプロセシングのために保持した。
【0017】
コンドロイチン硫酸Aで誘導したF.heparinum発酵物から得たオスモレートを、遠心分離に供し、細胞および細胞細片を除去し、そして上清を、10cm・分-1の直線流速で、陽イオン交換カラム(5.0cm×30cm, SepharoseTM S Big Beads, Pharmacia)に載せた。結合したタンパク質を、5.1cm・分-1の直線流速にて、0.01M ホスフェート(phosphate)、0.01M ホスフェート/0.25M 塩化ナトリウム、および0.01Mホスフェート/1.0M塩化ナトリウム(全てpH7.0±0.1)の段階グラジエントで溶出させた。コンドロイチナーゼ活性は、0.25M 塩化ナトリウム画分中に溶出した。
【0018】
この画分を、コンドロイチナーゼ含有画分を0.01M リン酸ナトリウムで2倍に希釈し、そしてセルファイン硫酸(cellufine sulfate)を含有するカラム(2.6cm i.d. ×100cm, Amicon)にこの物質を載せ、そして1.88cm・分-1の直線流速にて、塩化ナトリウムの直線グラジエント(0.0〜0.4M)で溶出させることによりさらに精製した。コンドロイチナーゼACは、主に、0.23〜0.26M 塩化ナトリウムで溶出し、一方コンドロイチナーゼBは、0.27〜0.3M 塩化ナトリウムで溶出した。
【0019】
各画分を、0.01M リン酸ナトリウムで2倍希釈し、そしてヒドロキシルアパタイトカラム(2.6cm i.d.×30cm)に載せた。結合したタンパク質を、全て0.025M リン酸ナトリウム(pH7.7±0.1)中の0.25M 塩化ナトリウムの段階グラジエント、およびそれに続く0.25〜1.0M 塩化ナトリウムの直線グラジエントで溶出した。コンドロイチナーゼBは、0.25M 塩化ナトリウム工程で溶出し、一方、コンドロイチナーゼACは、0.85〜0.95M 塩化ナトリウムで溶出する。
【0020】
コンドロイチナーゼB画分を、0.01M リン酸ナトリウム中に2倍希釈し、そして強力な陽イオン交換カラム(CBX-S, J.T.Baker, 1.6cm i.d.×10cm)に載せた。結合した物質を、1.0cm・分-1の流速にて、0.025M リン酸ナトリウム(pH7.0±0.1)中の0.125〜0.325M 塩化ナトリウムの直線グラジエントで溶出した。コンドロイチナーゼBは、0.175〜0.225M 塩化ナトリウムのタンパク質ピークに溶出し、そして分子量20,000ダルトンの微量混入タンパク質を含有した。このタンパク質を、SuperdexTM 200カラム(1.0cm i.d.×30cm, Pharmacia)にコンドロイチナーゼBサンプルをロードし、そして1.25cm・分-1の直線状流速にて0.05M リン酸ナトリウム(pH7.2)で溶出し、そしてタンパク質含有画分を回収することによるゲル濾過クロマトグラフィーにより除去した。
【0021】
ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーから回収したコンドロイチナーゼAC画分を、0.01M リン酸ナトリウム中に3倍希釈し、そして強力な陽イオン交換カラム(CBX-S, J.T.Baker, 1.6cm i.d.×10cm)に載せた。結合した物質を、1.0cm・分-1の流速にて、0.025M リン酸ナトリウム(pH7.0±0.1)中の0.125〜0.325M 塩化ナトリウムの直線グラジエントで溶出した。コンドロイチナーゼACは、0.175〜0.225M 塩化ナトリウムの単一のタンパク質ピークに溶出した。コンドロイチナーゼ酵素についての精製結果を図1に示す。
【0022】
表1:Flavobacterium heparinum発酵物からのコンドロイチナーゼ酵素の精製
【0023】
【表1】

【0024】
コンドロイチナーゼ活性を、Yangら、J.Biol.Chem., 160(30): 1849-1857, 1985に記載の分光光度的アッセイの改変法により測定した。コンドロイチナーゼは、脱離反応によりそれぞれの基質を分解し、232nmの紫外光を吸収する4,5-不飽和硫酸化二糖の形成を生じる。反応緩衝液は、50mM Tris, pH 8.0および0.5mg/ml基質;コンドロイチナーゼB活性についてはデルマタン硫酸、コンドロイチナーゼAC活性についてはコンドロイチン硫酸Aを含有した。連続的な分光光度的アッセイが、10〜50μlサンプルを石英キュベットに移し、そして反応緩衝液を添加して1mlの最終容量にすることにより実行される。キュベットは、Beckman DU 640分光光度計中に置かれ、30℃の一定温度を維持するために制御され、そして232nmでの吸光度における増加が、3〜5分間モニターされる。活性は、コンドロイチン硫酸に対する分子吸光計数5.1×103M-1を用いて計算され、そして国際単位、IUで表される。ここで、1IUは、1分当たりの1μmoleの不飽和産物の形成を触媒するのに必要とされる酵素の量である。
【0025】
コンドロイチナーゼ酵素の特性
本明細書に記載される精製方法は、特徴付け研究のための十分な質の精製されたコンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼBを入手するのに適切である。精製された酵素を、Laemmli, Nature, 227:680-685, 1970の技術を用いるSDS-PAGEにより分析し、そしてゲルを、走査型デンシトメーター(scanning densitometer)(Bio-Rad, Model GS-670)で数量化した。コンドロイチナーゼACは、77,000±5,000ダルトンの分子量および99%よりも高い純度を有することが示され、一方コンドロイチナーゼBは、55,000±2,300ダルトンの分子量および99%よりも高い純度を有する。
【0026】
77,000ダルトンのコンドロイチナーゼACタンパク質の反応速度論的パラメーターを、基質としてコンドロイチン硫酸Aおよびコンドロイチン硫酸Cの両方を用いて測定した。コンドロイチナーゼA活性に対するKmおよびKcat値は、それぞれ6μMおよび230s-1であり、一方コンドロイチナーゼC活性に対するKmおよびKcat値は、それぞれ9.3μMおよび150s-1であった。55,000ダルトンのコンドロイチナーゼBタンパク質の反応速度論的パラメーターを、基質としてデルマタン硫酸を用いて測定した。コンドロイチナーゼB活性に対するKmおよびKcat値は、それぞれ7.4μMおよび192s-1であった。
【0027】
添加される試薬の影響
コンドロイチナーゼ酵素のVmaxは、痕跡量の特定のエレメントにより影響され得る。20mM Tris緩衝液(pH8.0)および0.5 mg/ml基質、コンドロイチナーゼACについてはコンドロイチン硫酸A、またはコンドロイチナーゼBについてはデルマタン硫酸のいずれかの基礎反応緩衝液を用いて、コンドロイチナーゼ酵素の活性における二価金属および塩の影響を測定した。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
コンドロイチナーゼの安定化
コンドロイチナーゼ酵素活性は、賦形剤(excipient)の添加または凍結乾燥により安定化され得る。安定化剤(stabilizer)は、炭水化物、アミノ酸、脂肪酸、および界面活性剤を包含し、そして当業者に公知である。例は、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)、マンニトール(mannitol)、およびデキストラン(dextran)のような炭水化物、アルブミン(albumin)およびプロタミン(protamine)のようなタンパク質、アルギニン(arginine)、グリシン(glycine)、およびスレオニン(threonine)のようなアミノ酸、TweenTMおよびPluronicTMのような界面活性剤、塩化カルシウムおよびリン酸ナトリウムのような塩、ならびに脂肪酸(fatty acid)、リン脂質(phospholipid)、胆汁酸塩(bile salt)のような脂質を包含する。安定化剤は、一般に、1:10〜4:1(炭水化物対タンパク質、アミノ酸対タンパク質、タンパク質安定化剤対タンパク質、および塩対タンパク質);1:1000〜1:20(界面活性剤対タンパク質);および1:20〜4:1(脂質対タンパク質)の比でタンパク質に添加される。他の安定化剤は、ヘパリナーゼ活性との比較研究に基づく、高濃度の硫酸アンモニウム(ammonium sulfate)、酢酸ナトリウム(sodium acetate)、または硫酸ナトリウムを包含する。安定化剤、好ましくは硫酸アンモニウムまたは他の類似した塩が、0.1mg対4.0mg(硫酸アンモニウム/IU酵素)の比で酵素に添加される。
【0030】
安定化剤の使用は、以下に示される。精製されたコンドロイチナーゼ酵素を、2IU/mlの濃度で10mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)中に透析し、そして1mg/mlウシ血清アルブミン、1.5M酢酸ナトリウム、0.0025M Tris、または0.15M Trisのいずれかを補充し、そして加速貯蔵期間(accelerated shelf life)を37℃で実施した。2IUの精製されたコンドロイチナーゼ酵素をまた、種々の緩衝液中に配置し、凍結乾燥し、そして加速貯蔵期間を37℃で実施した。結果を表3に示す。
【0031】
【表3】

【0032】
コンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼBのクローニング
アミノ酸分析
精製されたタンパク質をEdman, Ann.N.Y.Acad.Sci. 88: 602, 1950の技術により分析し、N末端のアミノ酸を決定した。しかし、Edman化学は、アミノ酸を遊離し得なかった。これは、翻訳後修飾が、両方のコンドロイチナーゼタンパク質のN末端のアミノ酸において生じたことを示す。コンドロイチナーゼACおよびBの1nmolサンプルを、ピログルタミン酸アミノペプチダーゼ(pyroglutamate aminopeptidase)を用いる脱ブロッキング(deblocking)のために用いた。コントロールサンプルを、ペプチダーゼを添加しない1nmolサンプルを偽脱ブロッキング(mock deblocking)することにより、作製した。全てのサンプルを、10mMジチオスレイトール(dithiothreitol)を有する10mM炭酸アンモニウム(ammonium carbonate)緩衝液(pH 7.5)中に置いた。1mUペプチダーゼをサンプルに添加し、そして37℃にて8時間インキュベートして反応させた。さらなる0.5mUペプチダーゼを添加し、そしてインキュベーションを16時間継続した。反応混合物を、10,000ダルトンカットオフ限外濾過膜(Centricon, Amicon)を用いるダイアフィルトレーションにより、35%蟻酸(formic acid)中に取り替え、そしてサンプルを減圧下で乾燥させた。次いで、脱ブロックされたコンドロイチナーゼ酵素を、Edman化学により分析し、Applied Biosystems 745A Protein Sequencerを用いて、N末端配列を決定した。
【0033】
コンドロイチナーゼACのN末端配列は、QTGTAEL(配列番号2、アミノ酸24〜30)であり、そしてコンドロイチナーゼBのN末端配列は、VVASNEL(配列番号4、アミノ酸27〜34)であった。
【0034】
コンドロイチナーゼ酵素を、アルギニン特異的プロテアーゼクロストリパイン(clostripain)(EC 3.4.22.8, Sigma)を用いて酵素的断片化に供した。予め活性化したクロストリパインを、1〜2%w/w比で0.025M リン酸ナトリウム、0.0002M 酢酸カルシウム、および0.0025M ジチオスレイトール(pH7.5±0.1)中でコンドロイチナーゼACに添加し、そして37℃にて2〜3時間インキュベートした。反応混合物をVydac C18逆相HPLCカラム(0.46cm I.D.×30cm)に載せ、そしてペプチドフラグメントを、1cm-分-1の直線流速にて1% トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)中の10〜90%アセトニトリル(acetonitrile)の直線グラジエントで溶出した。得られたペプチドフラグメントのうち4つを、アミノ酸配列決定に供した。
【0035】
クロストリパインを、1〜2%w/w比で0.025M リン酸ナトリウム、0.0002M 酢酸カルシウム、および0.0025M ジチオスレイトール(pH7.5±0.1)中でコンドロイチナーゼBに添加し、そして37℃にて2〜3時間インキュベートした。反応混合物をVydacTM C18逆相HPLCカラムに載せ、そしてペプチドフラグメントを、6.0cm・分-1の直線流速にて1% トリフルオロ酢酸中の10〜90%アセトニトリルの直線グラジエントで溶出した。得られたペプチドフラグメントのうち3つを、アミノ酸配列決定に供した。
【0036】
Flavobacterium heparinum遺伝子ライブラリーの構築
Flavobacterium heparinum染色体DNAライブラリーを、λファージDASHIIにおいて構築した。0.4μgのF.heparinum染色体DNAを、Maniatisら, Molecular Cloning, A laboratory Manual, 1982に記載されるように、制限酵素Sau3Aを用いて部分的に消化し、20kb付近のサイズである大多数のフラグメントを生成した。このDNAをフェノール/クロロホルム抽出し、エタノール沈澱し、DASHIIアームと連結し、そしてLambda DASHIITM/BamHI Cloning キット(Stratagene, La Jolla, CA)に由来するパッケージング抽出物を用いてパッケージした。パッケージング後に、約10-5pfu/mlで滴定したライブラリーを、プレート溶解法(plate lysis method)により10-8pfu/mlに増幅し、そしてSilhavyら, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, 1972に記載のように−70℃にて貯蔵した。
【0037】
F.heparinum染色体ライブラリーを、約300pfu/プレートに滴定し、E.coliの菌叢(lawn)に上塗りし、そして細胞を37℃にて一晩トランスフェクトさせ、プラークを形成させた。ファージプラークを、Maniatisら、同書に記載のように、ニトロセルロース紙に移し、そしてファージDNAをフィルターに結合させた。
【0038】
コンドロイチナーゼACをコードする核酸配列
変性プライマーを、ペプチドAC-1、AC-3、およびAC-4(配列番号2、それぞれアミノ酸395〜413;603〜617;514〜536;および280〜288)から設計した。プライマーの増幅を、0.1mlの反応緩衝液中で実行した。この反応緩衝液は、50mM KCl、10mM Tris/HCl pH9、0.1% Triton X-100、2.5mM MgCl2、ならびに200μMの4種のdNTP、2.5ユニットのTaq Polymerase(Bio/Can, Mississauga,Ont.)、0.1mMの各プライマー、および10ngのF.heparinumゲノムDNAを含有する。増幅したプライマーを、個々の制限消化物においてSalI、NotI、およびXbaIを用いて直線化し、そして精製後、テンプレートDNAとして用いるために組み合わせた。サンプルを、自動化加熱ブロック(DNA ThermocyclerTM, Barnstead/Thermolyne, Dubuque, IA)中に配置し、94℃にて1分間の変性温度、50℃にて2分間のアニール温度、および72℃にて2分間の伸長温度を用い、この一連の工程を35反復行うサイクルをプログラムした。合成オリゴヌクレオチドプライマーの組み合わせは:ペプチドAC-3に対応する5’−TCNGGRAARTARTANCCDATNGCRTCRTG−3’(配列番号5);およびペプチドAC-4に対応する5’−TAYATGGAYTTYAAYGTNGARGG−3’(配列番号6);は約750bpのサイズのPCR産物を産生する。このフラグメントを、E.coli FTB1株中のベクターpTZ/PCまたはpCRII(TAクローニングキット, Invitrogen, San Diego, Ca.)中にクローンする試みは、不成功であった。
【0039】
E.coli FTB1を以下のように構築した:lac Iqリプレッサー遺伝子を有するE.coli XL-1 Blue(Stratagene,La Jolla CA)由来のF’エピソームを、Miller, Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor, 1972に記載のように、Bakerら, Proc.Natl.Acad.Sci. 81: 6779-6783, 1984に記載されるE.coli TB1に移動した。FTB1バックグランドは、lacオペレーターを有するプロモーター(例えば、lacプロモーターおよびtacプロモーター)を有するプラスミドからの転写のよりストリンジェントな抑制を可能にする。
【0040】
これらのPCR産物のクローン化を容易にするために、制限部位をプライマーの5’末端に取り込ませた。PCR産物を、プライマーにどの制限部位を加えるべきか決定するために、pBluescript(Stratagene,La Jolla CA)のマルチクローニング部位に見出される制限部位の不在について分析した。これは、DNAフラグメントの末端に突出部を形成するために用いられる制限酵素で処理する場合に、 PCR産物が複数のフラグメントに切断されないことを確実にする。BamHIは、この基準を全ての3つのPCR産物に対して満たす。新しいプライマーを、これらの5’末端でBamHI部位を合成し、これは、さもなければ上記のものと同一であり、そして図1の764bpのPCR産物を作製するために用いた。このDNAフラグメントをBamHIを用いて消化し、Maniatisら、同書に記載のようにアガロースゲルで単離し、そしてGenecleanTMキット(Bio/Can, Mississauga,Ont.)を用いて単離した。pBluescriptをBamHIで精製し、5’末端をManiatisら、同書に記載のようにアルカリホスファターゼ処理により脱リン酸化し、そしてGenecleanTMキットを用いてアガロースゲルから精製した。処理されたPCRフラグメントおよびpBluescriptプラスミドDNAを連結し、FTB1に形質転換し、そして0.2mg/mlのアンピシリンを含有するLBアガープレートにプレートした。これらのプレート上で増殖したコロニー由来のプラスミドを、Maniatisら、同書に記載のようにコロニークラッキングにより単離した。全ての酵素は、New England Biolabs(Mississauga, Ont.)から入手した。プラスミドをRPMTMキット(Bio/Can, Mississauga,Ont.)を用いて精製した。クローン化されたPCRフラグメントの配列分析は、逆転写されたコンドロイチナーゼACペプチド由来のペプチド配列と相関した。これは、PCRフラグメントが、コンドロイチナーゼAC遺伝子をコードすることを示す。DNA配列決定を、Sangerら, Proc.Natl.Acad.Sci. 74: 5463-5467, 1978のダイデオキシチェインターミネーション法により行なった。配列決定反応を、SequenaseTMキット(U.S.Biochemical Corp., Cleveland, Ohio)およびS-dATP(Amersham Canada Ltd., Oakville, Ontario, Canada)を用いて供給者に指定されるように行った。
【0041】
プラスミドpA2C1BS-11に含有される764bpPCRフラグメントは、コンドロイチナーゼAC遺伝子の約36%のコード領域を表す。この764bpフラグメント全体を配列決定し、そしてペプチドAC-3、AC-4、およびAC-1(配列番号2、それぞれアミノ酸395〜413;603〜617;514〜536;280〜288)をコードする連続するオープンリーディングフレームを含有することを見出した。
【0042】
764bpPCRフラグメントを用いて、ゲノムF.heparinumλライブラリーをプローブした。始めに、pA2C1BS-11を、Maniatisら、同書に記載のように沸騰法により単離した。プラスミドをBamHIを用いて消化し、ベクターから分離し、上記のように精製し、そして放射標識した32P α-dATPを用いてNick TranslationTMキット(Boehringer Mannheim, Montreal, Canada)で標識した。E.coli P2392(Stratagene, La Jolla, CA)を、λライブラリーをプレートするための菌叢として用いた。約6000個のプラークを、Maniatisら、同書に記載のようにBA85ニトロセルロースメンブレン(Scheicher & Schuell, Keene, NH)を用いて、プラークハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。プラークハイブリダイゼーションを、65℃にて16時間、Tek StarTMハイブリダーゼーションオーブン(Bio-CAN Scientific, Mississauga, Ontario)中で実行した。引き続く洗浄を65℃にて、2×SSC中で15分間を2回、2×SSC/0.1%SDS中で30分間を1回、そして0.5×SSC/0.1%SDS中で15分間を1回行った。100個を超えるポジティブクローンを同定および単離した。そのうちいくつかはプラークのクラスターであった。これらを、P2392宿主細胞の菌叢上にλクローンをスポットし、そしてプラークハイブリダイゼーションにより再プローブすることにより再スクリーニングした。6つのプラークが再スクリーニングにおいてポジティブであり、そしてこれらのDNAを、Maniatisら、同書に記載のように単離し、そしてλDASH IIアームの末端の部位に対応する制限酵素で消化した。このDNAを、プラークハイブリダイゼーションについて上記のハイブリダーゼーションおよび洗浄条件を用いて、HybondTM Nナイロンメンブレン(Amersham, Oakville, Canada)上にブロットすることにより、サザンハイブリダイゼーション分析(Southern, J.Mol.Biol. 98:503-517, 1975)に用いた。1つのクローンは4.5kb SalIフラグメントを含有しており、そして他方は6kb BamHIフラグメントを含有しており、これらは両方ともプローブとハイブリダイズした。これらは、pBluescriptの対応する部位にクローン化されていた。
【0043】
コンドロイチナーゼACの分子量が約75kDであるため、対応する遺伝子のサイズは2.05kbである。4.5kb SalIおよび6kb BamHI染色体DNAフラグメントは両方とも、完全なコンドロイチナーゼAC遺伝子を含み得る。完全な遺伝子をコードするDNAフラグメントの分析の確率を増加するために、6kb BamHIフラグメントを配列分析のために選択した。このBamHIフラグメントを含有するpBluescriptプラスミド(p64BS2-7と呼ぶ、図1)を、Qiageneキット(Bio/Can, Miss, Ont)を用いて単離した。DNA配列決定の方法であるウォーキングプライマーストラテジー(Vossら, Meth.Molec.Cell.Biol. 3: 153-155 (1992))を、合成プライマー(Eppendorf, モデルECOSYNTM D300, Madison, WI)およびA.L.F.DNAシークエンサー(Pharmacia LKB, Mtl, Qc)を用いて行った。Pharmacia AutoRead キット中に提供される蛍光化UniversalプライマーおよびReverseプライマーもまた用いた。蛍光標識dNTPを、Pharmacia AutoRead Fluorescent標識キット(Pharmacia LKB, Mtl, Qc)を用いる配列決定反応において取り込ませた。2次構造の領域を、2つの方法の内の一方で決定した。第1に、2次構造の領域および5’に密接にハイブリダイズする蛍光化プライマーを合成した。これらのプライマー、Pharmacia AutoCycleTMキット(Pharmacia LKB, Mtl, Qc)、および自動化ヒートブロック(DNA ThermocyclerTM, Barnstead/Thermolyne, Dubuque, Iowa)を用いて、95℃にて36秒、50℃にて36秒、および72℃にて84秒で25回繰り返す工程サイクルでプログラムして、2次構造領域の配列決定を達成した。第1の方法によりまだ決定されない任意の不明瞭な領域を、Sangerら, Proc. Natl. Acad. Sci. 74: 5463-5467 (1978)の方法により、35S a-dATP、およびdGTPがdITPにより置き換えられいるUSB SequenaseTMキット(LaJolla,Ca.)を用いて配列決定した。
【0044】
DNA配列の分析は、700アミノ酸残基に対するコドンを含有する2100bpの単一の連続するオープンリーディングフレームが存在することを示した。4つ全てのクロストリパイン(clostropain)誘導ペプチドは、この遺伝子によりコードされていた。GeneworksTM(Intelligenetics, Mountain View, Ca.)を用いる、可能性があるシグナルペプチド配列に対するサーチは、成熟形態へのタンパク質のプロセシングに対する2つの可能性がある部位:Q-23(グルタミン)およびA-28(アラニン)が存在することを示唆した。脱ブロックのプロセシングをされたコンドロイチナーゼACのN末端アミノ酸配列決定は、成熟タンパク質がQ-23で始まり、そして計算分子量77、169ダルトンを有する678アミノ酸を含有することを示した。
【0045】
E.coliにおけるコンドロイチナーゼACの発現
コンドロイチナーゼACに対する発現ベクターの構築が、図2において示される。ベクターpGBは、単一のBamHI部位を含有するE.coli発現ベクターである。それにより、この部位に挿入されるDNAフラグメントの発現は、2つのtacプロモーターにより駆動される。ベクターはまた、カナマイシン耐性遺伝子およびIPTGでの転写の誘導を可能にするlac Iq遺伝子を含有する。PCRを用いて、成熟コンドロイチナーゼAC遺伝子を作製した。
【0046】
オリゴヌクレオチド5’−GCGGATCCATGCAGCAGACCGGTACTGCAGAA−3’(配列番号7)を、成熟コンドロイチナーゼACの最初のアミノ酸(Q-23)に対するコドンの直前にATG開始部位に挿入するために設計し、一方、オリゴヌクレオチド5’−CGCGGATCCCCTAGATTACTACCATCAAAA−3’(配列番号8)を、TAG停止コドンの下流にハイブリダイズさせるために設計した。両方のオリゴヌクレオチドはまた、BamHI部位を含有した。プラスミドp64BS2-7を、45℃のアニール温度を用いるPCR反応においてテンプレートとして用いた。2034bpの予想サイズの特異的フラグメントを得た。このフラグメントを単離し、そして発現ベクターpGBのBamHI部位に挿入した。
【0047】
構築物を、E.coli株F-TB1に形質転換し、そして形質転換した細菌を、75μg/ml カナマイシンを含有するLB培地において37℃にて0.5のOD600まで増殖させ、この時点でpGB由来のtacプロモーターを、1mM IPTGの添加により誘導した。培養物をさらに2〜5.5時間、23℃、30℃、または37℃のいずれかで増殖させた。細胞を氷上で冷やし、遠心分離により濃縮し、そして元々の培養容量の1/10で冷PBS中に再懸濁した。細胞を超音波処理により溶解し、そして細胞細片を10,000×g、5分の遠心分離により取り出した。ペレットおよび上清画分を、コンドロイチン硫酸AまたはC分解(コンドロイチナーゼAC)活性について別々に分析した。1.24×10-2、2.88×10-2、および4.25×10-2IU/ml/ODのコンドロイチン硫酸A分解活性、ならびに1.57×10-2、2.24×10-2、および6.02×10-2IU/ml/ODのコンドロイチン硫酸C分解活性も、それぞれ23、30、および37℃にて増殖させた培養物から観察した。基質としてコンドロイチン硫酸Aを用いる活性は、基質としてコンドロイチン硫酸Cを用いる活性の約2倍である。この比はまた、これら両方の基質を用いる野生型コンドロイチナーゼACの活性を測定する場合にも観察される。
【0048】
E.coli F-TB1(pGB-ChAC)を、3.5L Braun Biostat E コンピューター制御発酵槽においてM9培地中で35g/Lの乾燥細胞重量濃度まで増殖させた。グルコースおよびアンモニアを、増殖およびpH 7.0を維持するために必要なだけ添加した。コンドロイチナーゼA活性は103.44 IU/mlまで蓄積し、一方、コンドロイチナーゼC活性は28.26 IU/mlまで蓄積した。
【0049】
コンドロイチナーゼBをコードする核酸
部分的推測PCRプライマー(partial-guessmer PCR primer)を、コンドロイチナーゼBタンパク質由来のクロストリパイン生成ペプチドのアミノ酸配列およびFlavobacterium遺伝子に通常見出されるコドン(表4)を用いて設計した。3つのペプチドを作製し、CHB-1(配列番号4、アミノ酸373〜384)、CHB-2(配列番号4、アミノ酸41〜50)、およびCHB-3(配列番号4、アミノ酸130〜146)と称した。
表4:FlavobacteriumおよびEscherichia coliに対するコドン使用頻度表
【0050】
【表4】

【0051】
5’−CGG GAT CCC ARA TYG CCG AYG GNA CNT ATA AAG A−3’(配列番号9)は、CHB-2ペプチド(配列番号4、アミノ酸41〜50)に由来し、そして5’−CGG GAT CCG GCN SKA TTG CGT TCR TCA AA−3’(配列番号10)は、CHB-3ペプチド(配列番号4、アミノ酸130〜146)に由来した。BamHI部位は、各プライマーの5’末端に存在し、PCR産物のクローン化効率を増大させた。上記の直鎖状F.heparinum染色体DNAをテンプレートとして用いて、単一の300bp DNAフラグメントを増幅した。増幅のための条件は、以下のようである:94℃にて40秒間の変性、45または50℃にて1分間のアニーリング、および72℃にて2分間の伸長。このサイクルを35回繰り返した。
【0052】
図3に示すように、PCRフラグメントをアガロースゲルで精製し、BamHIで消化し、そしてBamHI消化した脱リン酸化pBluescriptに連結した。連結混合物を用いてE.coli FTB1を形質転換した。得られた50個の形質転換体のうち、1つは、BamHIで切断した場合に300bpフラグメントを産生した。このプラスミドpCHB300中の挿入物を、上記のように行われるDNA配列分析に供した。これは、挿入物が、プライマー領域の外側にDNA配列を含有することを明らかにした。このDNA配列は、2つのコンドロイチナーゼBペプチドについて決定されたアミノ酸配列とマッチするアミノ酸配列をコードする。この挿入物を用いて、上記のように構築されたF.heparinum染色体DNAのλライブラリーをスクリーニングした。
【0053】
λライブラリーを、1皿あたり200プラークの密度でプレートした。20皿のプレートリフトを行った。プローブの作製のために、500ngのpCHB300を、上記のプライマーを用いて以下の30サイクルのPCR増幅に供した;それぞれ1分間の、93℃での変性、55℃でのアニーリング、および72℃での伸長。得られたPCRフラグメントをアガロースゲルで精製し、そしてRandom Primer 標識キット(Boehringer Mannheim, Laval, Canada)を用いてdATPa32Pで標識した。このプローブにハイブリダイズする31個の潜在的なλクローンが、リフトを2×SSC中で58℃にて1回洗浄に供した後に見出された。これらのプラークの再スクリーニングは、58℃にて、2×SSC中で15分間を2回、2×SSC/0.1%SDS中で30分間を1回、および0.5×SSC/0.1%SDS中で20分間を1回の洗浄後に17個のプラークのポジティブシグナルを与えた。さらに分析した8クローンの内2個は、プローブとハイブリダイズし、そしてF.heparinum染色体DNA由来のHindIIIフラグメント(これもまた、300bpプローブとハイブリダイズする)と同時に移動する5.0kb HindIIIフラグメントを示した。5.0kbフラグメントを、両方のλクローンからゲル精製し、pBluescriptのHindIII部位に連結し、そしてFTB1に形質転換した。
【0054】
44コロニーをつつき、そして20μlの上記と同じPCR混合物を含有する0.5ml PCRチューブの端に擦り付けた。PCRを以下のように行った:93℃にて30秒間の変性、58℃にて30秒間のアニーリング、および72℃にて1分間の伸長、35サイクル。分析において、6個の形質転換体は、300bpのバンドの増幅物を示した。これらのコロニーに由来するDNAを単離し、そしてHindIIIにより消化したところ、5.0kbフラグメントの存在が明らかとなった。6つのクローンの内5つは、300kbフラグメントのハイブリダイズし、そしてPCR増幅実験の結果を確認した。これらのクローンの内の1つであるpCHB78を選択し、そしてDNA配列決定のためのテンプレートとして使用した。
【0055】
ウォーキングプライマーストラテジーを用いて、配列決定反応を、A.L.F.DNAシークエンサーに関する上記のように実行した。配列分析は、506アミノ酸残基をコードする単一の1.52kbのオープンリーディングフレームを明らかにした。プレタンパク質(preprotein)が、25アミノ酸のシグナルペプチドを有することを見出した。成熟コンドロイチナーゼB酵素は、計算分子量53,563ダルトンを有する481アミノ酸を含有する。
【0056】
E.coliにおけるコンドロイチナーゼBの発現
コンドロイチナーゼBに対する発現ベクターの構築が、図4に示される。プライマーを、コンドロイチナーゼAC遺伝子の発現に関する上記の方法と同様の方法で、コンドロイチナーゼBのコード領域を増幅するために設計した。コンドロイチナーゼBコード配列の増幅のために用いられる1つのオリゴヌクレオチド(5’−CGCGGATCCATGCAGGTGTTGCTCAAATGAAACT−3’)(配列番号11)は、その5’末端にBamHI制限部位、および成熟タンパク質の最初のアミノ酸の前に挿入されたATGコドンを含有した。第2のオリゴヌクレオチド(5’−CGGAATCAATTCACCGGGAT−3’)(配列番号12)は、XmnI制限部位および終結コドンが遺伝子のコード配列の末端に挿入されるように設計された。100ngのpCHB78をテンプレートとして用いて、52℃のアニール温度で、1.5kbフラグメントを増幅し、ゲル精製し、制限消化し、そして予めBamHIおよびXmnIで切断されたpGBに挿入した。これにより、このタンパク質を発現するために用いられる最終的なpGB-CHB構築物を得た。
【0057】
この構築物を、E.coli株 DH5αに形質転換し、コンドロイチナーゼAC酵素について記載されるように発現させた。細胞をO.D.600=0.5まで増殖させた後、1mM IPTGを培養物に添加し、タンデムtacプロモーターを誘導し、そして細胞を23℃、30℃、または37℃のいずれかに移して、それぞれさらに5、3、および2時間増殖させた。超音波処理後、上清画分をデルマタン硫酸(dermatan sulfate)における活性についてアッセイした。23℃における細胞の増殖は、0.57 IU/ml/ODの分解活性を有して最良の結果をもたらし、一方、30℃および37℃における細胞の増殖は、それぞれ0.14および0.01 IU/ml/ODの分解活性を有した。
【0058】
本発明は、天然の生物であるFlavobacterium heparinumに由来する高度に精製されたコンドロイチン分解酵素およびこれらの遺伝子をコードする遺伝子を得るための方法論を記載している。これらの遺伝子の誘導体は、実質的に得られる酵素活性に影響を与えないこれら遺伝子の保存的置換、付加、および欠失により、または遺伝子の縮重型を用いることにより調製され得る。本明細書中で用いられるように、保存的置換は、同じアミノ酸をコードするコドンの置換、および同様の構造および化学的特性を有するアミノ酸(これは、当業者に周知であり、例えば、(I,L,V);(F,Y);(K,R);(Q,N);(D,E);および(G,A)を包含する構造的に同様のアミノ酸のグループである)についてのアミノ酸の置換を包含する。
【0059】
これらの方法の変形物は、前記の本発明の詳細な記載から当業者に明らかである。このような改変は、添付の請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、Flavobacterium heparinum由来のコンドロイチナーゼAC遺伝子を配列決定するために用いられたプラスミド、pA2C1B、p64BS2-7の構築の模式図である。制限部位は:S−SaU、B−BamHI、P−PstI、E−EcoRI、H−HindIII、C−ClaI、およびK−KpnIである。
【図2】図2は、タンデムtacプロモーター(tandem tac promoter)(2重矢尻)から、E.coliにおいて活性なコンドロイチナーゼACの発現を指揮し得るプラスミド、pGB-ChACの構築の模式図である。
【図3】図3は、Flavobacterium heparinum由来のコンドロイチナーゼB遺伝子を配列決定するために用いられたプラスミド、pCHB300およびpCHB78の構築の模式図である。
【図4】図4は、タンデムtacプロモーター(2重矢尻)から、E.coliにおいて活性なコンドロイチナーゼBの発現を指揮し得るプラスミド、pGB-CHBの構築の模式図である。
【0061】
(配列表)
【0062】
【数7】

【0063】
【数8】

【0064】
【数9】

【0065】
【数10】

【0066】
【数11】

【0067】
【数12】

【0068】
【数13】

【0069】
【数14】

【0070】
【数15】

【0071】
【数16】

【0072】
【数17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書等に記載されるような、コンドロイチンリアーゼ酵素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−86325(P2008−86325A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286768(P2007−286768)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【分割の表示】特願平8−504422の分割
【原出願日】平成7年7月7日(1995.7.7)
【出願人】(506136483)バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】