説明

コンバインの刈取部

【課題】小さな操作力で、一対の株元搬送チェーンの間に詰まった穀稈を除去することができるコンバインの刈取部を提供する。
【解決手段】左右一対の左下部搬送装置56及び右下部搬送装置57を備えるコンバイン1の刈取部4であって、左無端回動チェーン56aの搬送方向終端側に巻回される解除用回転輪56bと、解除用回転輪56bを回転自在に支持するブラケット120と、ブラケット120を他方の右下部搬送装置57に対して近接または離間する方向に回動軸121aを介して回動自在に支持する解除フレーム110と、解除用回転輪56bの回動軸123aに連結される解除レバー130と、解除レバー130に回動可能に支持される案内用回転輪150と、解除レバー130の側方に配置され、案内用回転輪150と当接する当接板160と、解除レバー130を回動不能となるように保持する固定具140と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取部の下部搬送装置において、刈取穀稈の株元部が合流する部分の穀稈の詰まりを解除するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの刈取部は、刈刃により刈り取った穀稈の株元部を下部搬送装置により後方へ搬送し、左右の条の刈取穀稈を合流させて縦搬送装置へ受け継ぐように構成されている。この刈取穀稈の合流部において、詰まった穀稈を解除するための機構に関する技術は公知となっている。このようなコンバインの刈取部の技術としては、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1に記載のコンバインの刈取部は、一対の株元搬送チェーンと、一方の株元搬送チェーンを巻回する回転体と、前記回転体を支持するブラケットと、前記ブラケットに固設されるスライド軸と、前記スライド軸を摺動可能に支持する搬送フレームと、を具備するものである。このような構成において、前記回転体を、他方の株元搬送チェーンから離間する方向へ移動させることによって、一対の株元搬送チェーンを互いに離間させることができる。従って、当該一対の株元搬送チェーンの間に詰まった穀稈を容易に除去することができる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載のコンバインの刈取部では、スライド軸と搬送フレームとの摺動部に藁屑等が噛み込んだ場合、当該スライド軸と搬送フレームとを滑らかに摺動させることができず、操作に大きな力を要する場合や、操作することができない場合がある点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3968043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、小さな操作力で、一対の株元搬送チェーンの間に詰まった穀稈を除去することができるコンバインの刈取部を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1においては、
刈取穀稈の株元部を挟持して搬送し、その搬送方向終端部で合流させる左右一対の下部搬送装置を備え、この一対の下部搬送装置の少なくとも一方が無端回動チェーンを備えるコンバインの刈取部であって、
前記無端回動チェーンの搬送方向終端側に巻回される解除用回転輪と、
前記解除用回転輪を回転自在に支持するブラケットと、
前記ブラケットを他方の下部搬送装置に対して近接または離間する方向に支軸を介して回動自在に支持する解除フレームと、
前記解除用回転輪の回動軸に連結される解除レバーと、
前記解除レバーに回動可能に支持される案内用回転輪と、
前記解除レバーの側方に配置され、前記案内用回転輪と当接する当接板と、
前記解除レバーを回動不能となるように保持する固定具と、
を具備したものである。
【0008】
請求項2においては、
前記ブラケットは、
前記解除用回転輪を挟む板状部材によって前記解除用回転輪の回動軸を支持するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、解除レバーを回動させ、ブラケットを他方の下部搬送装置に対して離間させることで、無端回動チェーンが巻回される解除用回転輪を他方の下部搬送装置に対して離間させることができ、無端回動チェーンに詰まった穀稈を容易に除去することができる。また、ブラケットが支軸を中心として回動するため、ブラケットを円滑に動作させることができる。さらに、解除レバーを操作する際に、案内用回転輪が当接板に当接しながら回動するため、解除レバーを操作するための荷重を低減させることができる。
【0011】
請求項2においては、解除用回転輪の回動軸を、解除用回転輪を挟む板状部材によって支持することにより、当該解除用回転輪のガタつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る刈取部を具備するコンバインの全体側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】本発明の実施形態に係る刈取部の側面概略図。
【図4】同じく平面概略図。
【図5】詰まり解除機構の作業位置を示す平面概略図。
【図6】同じく斜視図。
【図7】同じく図5におけるA矢視図。
【図8】詰まり解除機構の動作の様子を示す平面概略図。
【図9】詰まり解除機構の解除位置を示す平面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明に係るコンバインの刈取部の一実施形態である刈取部4を具備するコンバイン1について説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、コンバイン1は、左右一対の走行クローラ3によって走行機体2が支持されており、この走行機体2の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取部4が昇降調節可能に装着されている。走行機体2の左側には、刈り取られた穀稈を脱穀、選別する脱穀部5が配設され、走行機体2の右側には、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク6が、脱穀部5と横並びに配設されている。走行機体2の後部には、排出オーガ7が旋回可能に設けられており、穀粒タンク6の内部の穀粒が、排出オーガ7の籾投げ口7aからトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。そして、穀粒タンク6の前方には、運転部8が配設されている。
【0015】
以下では、図3及び図4を用いて刈取部4について説明する。
【0016】
上述の如く、刈取部4は、穀稈を刈り取りながら取り込むものである。刈取部4は、主として刈取フレーム10、分草板30、引起装置40、搬送装置50、切断装置70、ガイドバネ80等を具備する。
【0017】
図3に示すように、刈取フレーム10は、刈取部4の主たる構造体となるものである。刈取フレーム10は、主として刈取入力パイプ11、縦伝動パイプ12、横伝動パイプ13、分草フレーム14、駆動パイプ15、引起縦伝動パイプ16、引起横伝動パイプ17、引起駆動パイプ18、連結フレーム19、支持パイプ20等を具備する。
【0018】
刈取入力パイプ11は、機体フレームの前端部に、その軸線方向が左右方向と一致するように配置される。縦伝動パイプ12は、刈取入力パイプ11の前方に配置され、刈取入力パイプ11の左右中途部から前斜下方へ向けて延設される。横伝動パイプ13は、縦伝動パイプ12の前方に配置され、縦伝動パイプ12の先端部から左右方向へ延設される。
【0019】
複数の分草フレーム14・14・・・は、横伝動パイプ13の前方に配置され、左右方向に適宜の間隔をとって互いに平行に並設される。駆動パイプ15は、横伝動パイプ13の前斜下方に配置され、最外側に位置する左右の分草フレーム14・14の間に左右方向に水平に横設される。つまり、駆動パイプ15は、横伝動パイプ13と前後方向に所定間隔をとって互いに平行に並設される。
【0020】
引起縦伝動パイプ16は、横伝動パイプ13の上方に配置され、横伝動パイプ13の左端部から前斜上方へ向けて立設される。引起横伝動パイプ17は、横伝動パイプ13の前上方に配置され、引起縦伝動パイプ16の上端部に右方向に水平に横設される。
【0021】
複数の引起駆動パイプ18・18・・・は、引起横伝動パイプ17の下方に配置され、引起横伝動パイプ17の左右中途部から左右方向に所定間隔ごとに下方へ向けて延設される。また、連結フレーム19は、引起横伝動パイプ17の後方に配置され、引起横伝動パイプ17の左右中途部から縦伝動パイプ12の後部まで後方へ向けて延設される。
【0022】
支持パイプ20は、引起横伝動パイプ17の下方に配置され、引起横伝動パイプ17の左右中途部から下方へ向けて延設される。支持パイプ20の下端は、左右中央の分草フレーム14に連結される。
【0023】
こうして、刈取フレーム10は、刈取入力パイプ11と、縦伝動パイプ12と、横伝動パイプ13と、複数の分草フレーム14と、駆動パイプ15と、引起縦伝動パイプ16と、引起横伝動パイプ17と、複数の引起駆動パイプ18と、連結フレーム19と、支持パイプ20とを一体的に連結して構成される。
【0024】
図3及び図4に示すように、分草板30は、圃場の穀稈を一条ごとに分離(分草)するものである。分草板30・30・・・は、それぞれ先端(前端)が細くなるように形成され、分草フレーム14・14・・・の前端部に突設される。
【0025】
図3に示すように、引起装置40は、分草後の穀稈を引き起こすものである。引起装置40は、複数の引起ケース41・41・・・や、引起ケース41に回転駆動可能に巻回されるタイン付チェーン42・42・・・等を具備する。引起ケース41は分草板30の後方で左右方向に適宜の間隔をとって並べて配置され、分草フレーム14と引起駆動パイプ18との間に前低後高の傾斜状に立設される。
【0026】
図3及び図4に示すように、搬送装置50は、引起装置40により引き起こされた穀稈を後方へと搬送するものである。搬送装置50は、主として掻込機構51、搬送機構55等を具備する。
【0027】
掻込機構51は、引起装置40により引き起こされた穀稈の株元側を束にして掻き込むものである。掻込機構51は、搬送装置50の前部側に配置され、この搬送装置50の搬送始端部に設けられている。
【0028】
掻込機構51には、左掻込装置52と、右掻込装置53と、四つの掻込輪54・54・・・とが具備される。左掻込装置52及び右掻込装置53は、それぞれ左右一対で一組の突起付ベルトなどを有し、これらを回転駆動可能とするように構成される。左掻込装置52及び右掻込装置53は、それぞれ引起ケース41の後方に配置され、引起ケース41側から後方へ向けて、前低後高の傾斜状に延設される。
【0029】
四つの掻込輪54・54・・・は、それぞれスターホイルとされ、回転駆動可能に構成される。各掻込輪54は、左掻込装置52及び右掻込装置53の各突起付ベルトの後部下方に配置され、前低後高の傾斜状に設けられる。
【0030】
搬送機構55は、搬送装置50の後部側に配置され、搬送装置50の搬送中途部および搬送終端部に設けられている。搬送機構55には、左下部搬送装置56と、右下部搬送装置57と、上部搬送装置58と、縦搬送装置59と、補助搬送装置60とが具備される。各搬送装置はチェーンなどを有し、これらを回転駆動可能とするように構成される。
【0031】
左下部搬送装置56は、穀稈を搬送するための左無端回動チェーン56aを具備する。左下部搬送装置56は、左掻込装置52の後方に配置され、左掻込装置52側から右斜後方へ向けて、前低後高の傾斜状に延設される。右下部搬送装置57は、穀稈を搬送するための右無端回動チェーン57aを具備する。右下部搬送装置57は、右掻込装置53の後方に配置され、右掻込装置53側から左斜後方へ向けて前低後高の傾斜状に延設される。左下部搬送装置56の搬送終端部(右後端部)は、右下部搬送装置57の搬送終端部(左後端部)と近接するように配置される。以下では、この左下部搬送装置56と右下部搬送装置57とが近接する部分を合流部と記す。
【0032】
上部搬送装置58は、引起装置40の後方であって右下部搬送装置57の上方に配置され、右掻込装置53側から左斜後方へ向けて、前低後高の傾斜状に延設される。縦搬送装置59は、左下部搬送装置56の後方であって、上部搬送装置58の下方に配置され、左下部搬送装置56側から左斜後方へ向けて前低後高の傾斜状に延設される。補助搬送装置60は、縦搬送装置59の後方であって、上部搬送装置58の下方に配置され、縦搬送装置59側から後方へ向けて脱穀部5の脱穀搬送装置5aまで延設される。
【0033】
図3に示すように、切断装置70は、引起装置40により引き起こされた穀稈を株元側で切断するものである。切断装置70は、掻込機構51の下方に配置され、前低後高の傾斜状に設けられる。
【0034】
図3及び図4に示すように、ガイドバネ80は、板材を略U字状に折り曲げて形成される部材である。ガイドバネ80は、板材を略L字状に折り曲げて形成されたガイドバネブラケット81を介して、支持パイプ20に固設される。ガイドバネ80は、掻込輪54が形成する仮想平面と略同一平面上に位置するように、支持パイプ20に配置される。ガイドバネ80の一端側は、左下部搬送装置56により搬送される穀稈を合流部へ案内するように、他端側は、右下部搬送装置57により搬送される穀稈を合流部へ案内するように、それぞれ配置される。
【0035】
さらに、各装置を支持する刈取フレーム10においては、刈取入力パイプ11の内部に刈取入力軸11aが内挿されるとともに、その他の各パイプの内部に刈取伝動軸が内挿される。そして、引起装置40や搬送装置50等が各刈取伝動軸や刈取入力軸11aを介して図示せぬエンジンと連動連結される。こうして、引起装置40や搬送装置50等は、前記エンジンを駆動源としてこれから供給される動力を得て、駆動することができるように構成される。
【0036】
このような構成により、刈取部4において、各装置が駆動される場合に、分草板30により圃場の穀稈が一条ごとに分離するように分草された後、引起装置40で引起ケース41により分草後の穀稈が引き起こされる。つづいて、搬送装置50の掻込機構51で左掻込装置52及び右掻込装置53と掻込輪54とによりそれぞれ左又は右側二つの引起ケース41・41の間から導入される引起後の左又は右側二条分の穀稈の株元側が一束に掻寄せられ掻き込まれる。
【0037】
このとき、切断装置70により引越後の穀稈が株元側で切断される。切断された後、穀稈は搬送装置50の搬送機構55で右下部搬送装置57により右二条分の穀稈が左斜後方へ搬送されると同時に、左下部搬送装置56により左二条分の穀稈が右斜後方へ搬送されて、四条分の穀稈の株元側が合流部で合流させられる。
【0038】
次に、上部搬送装置58により四条分の穀稈の穂先側が寄せ集められながら左斜後方へ搬送されるとともに、縦搬送装置59により右下部搬送装置57の搬送終端部付近にて合流させられた四条分の穀稈の株元側が脱穀部5の脱穀搬送装置5aへ向けて後斜上方に搬送され、補助搬送装置60により穀稈の株元側が縦搬送装置59から脱穀部5の脱穀搬送装置5aへ渡される。このようにして、刈取部4で穀稈の一連の刈取作業が行われる。
【0039】
また、刈取部4において、刈取フレーム10は、縦伝動パイプ12の前後中途部を走行機体2の前下部から前方へ向けて延設される昇降シリンダ9(図3参照)の先端部に連結させ、この昇降シリンダ9の伸縮駆動に応じて刈取入力パイプ11回りに上下方向に回動可能に構成される。
【0040】
刈取フレーム10は、昇降シリンダ9の伸長駆動時には、刈取入力パイプ11回りに上方へ回動され、昇降シリンダ9の収縮駆動時には、刈取入力パイプ11回りに下方へ回動される。これにより、刈取部4全体が、刈取フレーム10の上方への回動時に、機体に対して上昇され、刈取フレーム10の下方への回動時に、機体に対して下降される。
【0041】
以下では、図5及び図6を用いて、左下部搬送装置56と右下部搬送装置57との合流部近傍における構成について詳細に説明する。
【0042】
図5に示すように、左無端回動チェーン56aは、解除用回転輪56b、駆動用スプロケット56c、テンション用回転輪56d等に巻回される。解除用回転輪56bは、左無端回動チェーン56aが右下部搬送装置57(右無端回動チェーン57a)と最も近接する位置(合流部)に配置される。駆動用スプロケット56cは、解除用回転輪56bの左方に配置され、テンション用回転輪56dは、駆動用スプロケット56cの前下方に配置される。駆動用スプロケット56cは、駆動ケース56e(図7参照)内の駆動機構に連結され、前記エンジンから伝達される動力により駆動される。テンション用回転輪56dは、テンション用ブラケット56f(図6参照)に回動可能に支持され、付勢部材56g(図6参照)による付勢力により、左無端回動チェーン56aに所定の張力を付与する。解除用回転輪56bは、後述する詰まり解除機構100により回動可能に支持される。
【0043】
図5に示すように、詰まり解除機構100の左方には、左無端回動チェーン56aにより搬送される穀稈を案内するガイド部材90が、ガイド支持部材91により支持される。
【0044】
右無端回動チェーン57aは、右回転輪57b等に巻回され、右案内板57cにより案内されて無端回動される。
【0045】
以下では、図5から図7までを用いて、詰まり解除機構100の構成について説明する。なお、説明の便宜上、図5においてはテンション用ブラケット56f及び付勢部材56gの図示を、図5及び図6においては駆動ケース56eの図示を、それぞれ省略している。
【0046】
図5及び図6に示すように、詰まり解除機構100は、解除用回転輪56bを所定の位置で回動可能に支持するとともに、所定の場合には右下部搬送装置57から解除用回転輪56bを離間させるものである。詰まり解除機構100は、主として解除フレーム110、ブラケット120、解除レバー130、固定具140、案内用回転輪150、当接板160、駆動ケースブラケット170等を具備する。
【0047】
解除フレーム110は、詰まり解除機構100の主たる構造体となるものである。解除フレーム110は、主として下フレーム111、上フレーム112等を具備する。
【0048】
下フレーム111は、略矩形状の板材であり、適宜の方法により刈取フレーム10に支持される。下フレーム111は、その長手方向前端部を左前方に、その長手方向後端部を右後方にそれぞれ向けて配置される。下フレーム111の右側面には、案内板111aが配置される。案内板111aは、穀稈の搬送経路と略同一方向に配置され、左無端回動チェーン56aを案内する。
【0049】
上フレーム112は、板材を略L字状に折り曲げて形成される部材である。上フレーム112の一側端部は、下フレーム111の後端部に固設される。これによって、下フレーム111と上フレーム112の上面との間には所定の間隙が形成される。
【0050】
ブラケット120は、案内用回転輪150を回動可能に支持するものである。ブラケット120は、主としてブラケット基部121、上ブラケット122、下ブラケット123等を具備する。
【0051】
ブラケット基部121は、板材を略U字状に折り曲げて形成される部材である。ブラケット基部121は、下フレーム111と上フレーム112との間に配置され、その前端部近傍は回動軸121aを介して上フレーム112に回動可能に支持される。
【0052】
上ブラケット122は、板材を略U字状(図7参照)に折り曲げて形成される部材である。上ブラケット122の前端部は、ブラケット基部121の後端部に固設される。
【0053】
下ブラケット123は板材であり、上ブラケット122の下面に固設される。これによって、上ブラケット122の上面と下ブラケット123との間には所定の間隙が形成される。解除用回転輪56bは、上ブラケット122と下ブラケット123との間に配置され、回動軸123aを介して上ブラケット122及び下ブラケット123に回動可能に支持される。
【0054】
解除レバー130は、ブラケット120を回動操作するものである。解除レバー130は、板材により形成される。解除レバー130の一端側は、上ブラケット122を貫通して設けられる解除用回転輪56bの回動軸123aを介して、上ブラケット122に回動可能に支持される。解除レバー130の他端側は、作業者によって把持可能な形状に形成される。解除レバー130の回動軸123a近傍には、当該回動軸123aを中心とする円弧状の案内孔131が形成される。
【0055】
図5から図7までに示すように、固定具140は、解除レバー130のブラケット120に対する回動を規制するものである。図7に示すように、固定具140は略円柱状の部材であり、その上端側141の径は下端側142の径よりも大きく形成される。また、固定具140の上端には、作業者が操作する際に把持される操作部143が形成される。固定具140の下端側142は解除レバー130の案内孔131に挿通され、上ブラケット122の上面に形成された取付部122aにねじ込まれることにより固定される。固定具140をねじ込むことで、固定具140の上端側141によって解除レバー130が押圧され、当該解除レバー130の回動が規制される。また、固定具140を緩めることで、固定具140の上端側141による解除レバー130の押圧が解除され、当該解除レバー130の回動が可能となる。
【0056】
図5から図7までに示すように、案内用回転輪150は、回動軸151を介して解除レバー130に回動可能に支持される。回動軸151は、その軸線方向が回動軸123aの軸線方向と平行になるように、かつ、回動軸123aと所定距離をおくように配置される。
【0057】
当接板160は、案内用回転輪150と当接する部材である。当接板160は、略矩形状の板材を折り曲げて形成される。当接板160の折り曲げ部は、解除レバー130が後述する作業位置にある場合において、案内用回転輪150の当接位置よりも若干後方側に位置するように形成される。当接板160の折り曲げ部よりも後方側は、解除用回転輪56bから離れる方向に傾斜する。当接板160は、上フレーム112の上面に立設される。
【0058】
駆動ケースブラケット170は、板材を略L字状に折り曲げて形成される部材であり、駆動ケース56e(図7参照)を支持するものである。駆動ケースブラケット170は、上フレーム112との間に当接板160を挟持するように配置される。
【0059】
以下では、図5、図8及び図9を用いて、上述の如く構成された詰まり解除機構100の動作態様について説明する。
【0060】
図5に示すように、コンバイン1が通常の刈取作業を行う場合、解除用回転輪56bが右下部搬送装置57に最も近接するようにブラケット120が回動されている。以下では、この解除用回転輪56bが右下部搬送装置57に最も近接する位置を作業位置と記す。この作業位置で固定具140をねじ込むことにより、解除用回転輪56bが当該作業位置に保持される。なお、この作業位置において、解除用回転輪56bと当接板160とが最も離間するように当該当接板160が配置されている。
【0061】
解除用回転輪56bが作業位置にある場合において、駆動用スプロケット56cが回動することにより、左無端回動チェーン56aは解除用回転輪56b、駆動用スプロケット56c、テンション用回転輪56d等の周りを無端回動する。回動する左無端回動チェーン56aにより搬送される穀稈は、案内板111aやガイド部材90に案内されて合流部へと搬送され、右無端回動チェーン57aにより搬送される穀稈と合流させられる。
【0062】
左無端回動チェーン56aがテンション用回転輪56dにより付勢されたり、搬送時に張力がかかったり、穀稈が詰まったりした場合、解除用回転輪56bには回動軸121a方向(X方向)と、この方向と直角のY方向に力がかかる。しかし、X方向の力は回転軸121aにより受け止められる。また、Y方向の力によってブラケット120が回動軸121aを中心として左方(駆動用スプロケット56c側)へ回動しようとするが、案内用回転輪150が当接板160に当接することによって当該力は受け止められる。
【0063】
合流部において、搬送されてきた穀稈の詰まり等が発生して、当該穀稈の除去等のメンテナンスが必要な場合、解除用回転輪56bを右無端回動チェーン57aから離間させることで、詰まった穀稈等を容易に除去することができる。以下では、解除用回転輪56bを右無端回動チェーン57aから離間させる際の操作について説明する。なお、この場合の動作の様子を図8中の白抜き矢印で示す。
【0064】
図8に示すように、まず、固定具140を緩めることで、解除レバー130の回動の規制が解除される。この状態で、解除レバー130を図示反時計回りに回動させると、案内用回転輪150は、当接板160に当接しながら回動し、当該当接板160に沿って図示上方へと移動し、当接板160の折り曲げ部を乗り越える。この時、回動軸123aの中心と当接板160との距離は略同一なので、解除レバー130は大きな力を必要とせず容易に回動操作することができる。また、解除レバー130の回動により、回動軸123aが図示略右方向(右無端回動チェーン57aから離間する方向)へ移動するため、これに伴いブラケット120は回動軸121aを中心として図示時計回りに回動される。このブラケット120の回動により、解除用回転輪56bは右無端回動チェーン57aから離間し、合流部における右無端回動チェーン57aと左無端回動チェーン56aとが離間する。
【0065】
図9に示すように、解除レバー130を反時計回りに最大限回動させた状態で、固定具140をねじ込むことにより、解除レバー130の回動が再び規制され、右無端回動チェーン57aと左無端回動チェーン56aとを離間した状態に保持することができる。以下では、この解除レバー130を図示反時計回りに最大限回動させた際の解除用回転輪56bの位置を解除位置と記す。
【0066】
上述の如く、合流部における右無端回動チェーン57aと左無端回動チェーン56aとを離間させることで、当該合流部において右無端回動チェーン57aと左無端回動チェーン56aとの間に詰まった穀稈等を容易に除去することができ、刈取部4の清掃時やメンテナンス時における作業性を向上させることができる。また、ブラケット120が回動軸121aを中心として回動するため、当該ブラケット120を円滑に動作させることができる。さらに、解除レバー130を操作する際に、案内用回転輪150が当接板160に当接しながら回動するため、解除レバー130を操作するための荷重を低減させることができる。
【0067】
また、合流部の清掃やメンテナンスが終了した場合、解除用回転輪56bを解除位置から作業位置に移動させ、当該作業位置に保持することで、再度刈取作業を行うことができる。以下では、解除用回転輪56bを作業位置に保持させる際の操作について説明する。なお、この場合の動作の様子を図8中の黒塗り矢印で示す。
【0068】
図8に示すように、まず、固定具140を緩めることで、解除レバー130の回動の規制が解除される。この状態で、解除レバー130を図示時計回りに回動させると、案内用回転輪150は、当接板160に当接しながら回動し、当該当接板160に沿って図示下方へと移動する。また、解除レバー130の回動により、回動軸123aが図示略左方向(右無端回動チェーン57aに近接する方向)へ移動するため、これに伴いブラケット120は回動軸121aを中心として図示反時計回りに回動される。このブラケット120の回動により、解除用回転輪56bは右無端回動チェーン57aに近接し、合流部における右無端回動チェーン57aと左無端回動チェーン56aとが近接する。
【0069】
解除レバー130を図5における時計回りに最大限回動させた状態で、固定具140をねじ込むことにより、解除レバー130の回動が再び規制され、右無端回動チェーン57aと左無端回動チェーン56aとを最も近接した状態に保持することができる。すなわち、解除用回転輪56bを作業位置に保持することができる。
【0070】
上述の如く、解除用回転輪56bは、作業位置において当接板160と最も離間する、すなわち、右無端回動チェーン57aと最も近接する。従って、作業位置と解除位置とを切り換える際に、解除用回転輪56bはさらに右無端回動チェーン57aに近接することがないため、合流部に藁屑等が詰まっている状態であっても軽い操作荷重で解除レバー130を操作することができる。
【0071】
なお、解除用回転輪56bが作業位置にある場合に、解除レバー130に形成される案内孔131の一端に固定具140が挿通され、解除用回転輪56bが解除位置にある場合に、解除レバー130に形成される案内孔131の他端に固定具140が挿通されるように、当該案内孔131の両端位置が決定される。このように構成することにより、解除レバー130を、固定具140が案内孔131のいずれか一方の両端に当接するまで回動させることで、作業位置と解除位置とを切り換えることができる。すなわち、操作の度に作業者が解除用回転輪56bの位置を調節する必要がないため、作業性を向上させることができる。
【0072】
以上の如く、本実施形態におけるコンバイン1の刈取部4は、
刈取穀稈の株元部を挟持して搬送し、その搬送方向終端部で合流させる左右一対の左下部搬送装置56及び右下部搬送装置57を備え、この一対の左下部搬送装置56及び右下部搬送装置57の少なくとも一方(左下部搬送装置56)が左無端回動チェーン56aを備えるコンバイン1の刈取部4であって、
左無端回動チェーン56aの搬送方向終端側に巻回される解除用回転輪56bと、
解除用回転輪56bを回転自在に支持するブラケット120と、
ブラケット120を他方の右下部搬送装置57に対して近接または離間する方向に回動軸121aを介して回動自在に支持する解除フレーム110と、
解除用回転輪56bの回動軸123aに連結される解除レバー130と、
解除レバー130に回動可能に支持される案内用回転輪150と、
解除レバー130の側方に配置され、案内用回転輪150と当接する当接板160と、
解除レバー130を回動不能となるように保持する固定具140と、
を具備するものである。
このように構成することにより、解除レバー130を回動させ、ブラケット120を右下部搬送装置57に対して離間させることで、左無端回動チェーン56aが巻回される解除用回転輪56bを右下部搬送装置57に対して離間させることができ、合流部に詰まった穀稈を容易に除去することができる。また、ブラケット120が回動軸121aを中心として回動するため、ブラケット120を円滑に動作させることができる。さらに、解除レバー130を操作する際に、案内用回転輪150が当接板160に当接しながら回動するため、解除レバー130を操作するための荷重を低減させることができる。
【0073】
また、ブラケット120は、
解除用回転輪56bを挟む上ブラケット122及び下ブラケット123によって解除用回転輪56bの回動軸123aを支持するものである。
このように構成することにより、解除用回転輪56bの回動軸123aを、解除用回転輪56bを挟む上ブラケット122及び下ブラケット123によって支持し、当該解除用回転輪56bのガタつきを防止することができる。なお、本実施形態においては、上ブラケット122と下ブラケット123とを別部材により構成したが、本発明はこれに限るものではなく、上ブラケット122と下ブラケット123とを一枚の板材を折り曲げて形成する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 コンバイン
4 刈取部
56 左下部搬送装置
56a 左無端回動チェーン
56b 解除用回転輪
57 右下部搬送装置
110 解除フレーム
120 ブラケット
123a 回動軸
130 解除レバー
140 固定具
150 案内用回転輪
160 当接板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取穀稈の株元部を挟持して搬送し、その搬送方向終端部で合流させる左右一対の下部搬送装置を備え、この一対の下部搬送装置の少なくとも一方が無端回動チェーンを備えるコンバインの刈取部であって、
前記無端回動チェーンの搬送方向終端側に巻回される解除用回転輪と、
前記解除用回転輪を回転自在に支持するブラケットと、
前記ブラケットを他方の下部搬送装置に対して近接または離間する方向に支軸を介して回動自在に支持する解除フレームと、
前記解除用回転輪の回動軸に連結される解除レバーと、
前記解除レバーに回動可能に支持される案内用回転輪と、
前記解除レバーの側方に配置され、前記案内用回転輪と当接する当接板と、
前記解除レバーを回動不能となるように保持する固定具と、
を具備するコンバインの刈取部。
【請求項2】
前記ブラケットは、
前記解除用回転輪を挟む板状部材によって前記解除用回転輪の回動軸を支持する請求項1に記載のコンバインの刈取部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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