説明

コンバインの排藁処理装置

【課題】排藁の切断処理効率が良好で、メンテナンスも容易なコンバインの排藁処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】脱穀部から搬送されてくる排藁を掻き込んで切断処理するカッター9と、排藁をカッター9の掻き込み箇所Pに押え入れる藁押さえローラ18とを備えたコンバインの排藁処理装置において、藁押さえローラ18を、カッター9と近接して排藁をカッター9の掻き込み箇所に押え入れる藁押え姿勢と、カッター9から離間してカッター9の掻き込み箇所を露出させるメンテナンス姿勢とに姿勢切換可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの排藁処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来公知のコンバインの排藁処理装置は、排藁チェーン等によって搬送されてくる排藁をカッターで掻き込んで切断処理するように構成されているが、カッターで排藁を掻き込む際に排藁の姿勢の乱れが生じて切断処理効率が低下してしまうことがあるという欠点があった。
【0003】
上記欠点を改善するため、脱穀部から搬送されてくる排藁を掻き込んで切断処理するカッターと、排藁をカッターの掻き込み箇所に押え入れる藁押さえローラとを備え、カッターで排藁を掻き込む際に発生する排藁の姿勢の乱れを防止する特許文献1に示すコンバインの排藁処理装置が公知となっている。
【特許文献1】特開2005−312381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献のコンバインの排藁処理装置は、カッターの掻き込み箇所への排藁の押え入れが可能なカッター近傍に藁押えローラを設置する必要があるため、カッターに詰まった藁の除去作業を行う場合やカッターのメンテナンス作業を行う場合等に、藁押えローラが邪魔になり、作業効率が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明のコンバイン排藁処理装置は、第1に脱穀部から搬送されてくる排藁を掻き込んで切断処理するカッター9と、排藁をカッター9の掻き込み箇所Pに押え入れる藁押さえローラ18とを備えたコンバインの排藁処理装置において、藁押さえローラ18が、カッター9と近接して排藁をカッター9の掻き込み箇所に押え入れる藁押え姿勢と、カッター9から離間してカッター9の掻き込み箇所を露出させるメンテナンス姿勢とに姿勢切換可能に構成されたことを特徴としている。
【0006】
第2に、開作動して排藁をカッター9の掻き込み箇所Pに導入する排藁導入状態と、閉作動して排藁を機外に排出する排藁排出状態とに状態切換可能に構成された切換体11を設け、藁押えローラ18を、前記切換体11の開閉作動に連動して姿勢切換されるように構成したことを特徴としている。
【0007】
切換体11に藁押えローラ18を支持し、該藁押えローラ18を、切換体11の排藁排出状態への切換に伴ってカッター9から避退する方向に移動するように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成される本発明のコンバインの排藁処理装置によれば、藁押さえローラを、カッターと近接して排藁をカッターの掻き込み箇所に押え入れる藁押え姿勢と、カッターから離間してカッターの掻き込み箇所を露出させるメンテナンス姿勢とに姿勢切換可能に構成することによって、排藁の切断処理効率を良好に保つことができるとともに、藁押えローラをメンテナンス姿勢に切り換えることによりカッターの掻き込み箇所のメンテナンスや清掃を容易に行うことができる。
【0009】
また、藁押えローラを、切換体の開閉作動に連動して姿勢切換されるように構成することにより、藁押えローラと切換体の切換を各別に行う場合に比べて切換の手間が軽減される。
【0010】
さらに、切換体に藁押えローラを支持し、該藁押えローラを、切換体の排藁排出状態への切換に伴ってカッターから避退する方向に移動するように構成することにより、切換体の開閉作動に連動して姿勢切換される藁押さえローラを簡易な構造により構成することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明を適用したコンバインの全体側面図である。本コンバインは、クローラ式の走行部1を備える走行機体2と、走行機体2の前方に昇降自在連結された穀稈の刈取りを行う前処理部3とから構成されている。前処理部3で刈り取られた穀稈は、フィードチェーン(図示しない)によって走行機体3の左部前側の脱穀部(図示しない)に搬送され、穀粒は走行機体3の右部のグレンタック4内に貯蔵され、排藁は排藁チェーン6により機体後方に搬送される。機体後方に搬送された排藁は、そのまま又は走行機体3の後端部の排藁処理装置7によって切断処理され機体後方から排出される。
【0012】
次に排藁搬送装置について説明する。
図2は、排藁導入状態に切り換えられた排藁処理装置の要部側面図であり、図3は、排藁排出状態に切り換えられた排藁処理装置の要部側面図であり、図4は、メンテナンス状態に切り換えられた排藁処理装置の要部側面図である。排藁処理装置7は、走行機体3の後端部の設置され、上部に装置内部に排藁を導入するための左右方向の導入口8(図5参照)が形成されており、排藁を掻き込んで切断処理するカッター9と、導入口8を開閉する切換体11とを備えている。
【0013】
上記カッター9は、排藁処置装置7の枠体を構成する左右の側板12,12(図5参照)に回転自在に軸支された左右方向の掻込軸13及び切断軸14と、掻込軸13に所定間隔で一体固定された複数の円盤状の掻込刃16と、掻込刃16の設置箇所に対応して切断軸14に所定間隔で一体固定された複数の円盤状の切断刃17とから構成されている。なお、掻込刃16と比較して切断刃17の直径は大きくなっている。
【0014】
上記掻込刃16が装置内部の上部前側に配置される一方で、上記切断刃17は措置内部且つ掻込刃16の後方斜め下方位置に配置され、掻込刃16に近接している。掻込刃16の下部後側と切断刃17の上部前側の一部は側面視において重なり合っており、この重なり合った部分の後方斜め上方に排藁の掻き込み箇所Pが形成される。
【0015】
導入口8からの排藁を上記掻き込み箇所Pに送る方向(図2における反時計回り)に掻込刃16を回動駆動させるとともに、排藁を掻込刃16とともに掻き込む方向(図2における時計回り)に切断刃17を回動駆動させ、排藁を掻き込み箇所Pから掻き込む。
【0016】
掻き込み箇所Pから掻き込まれる排藁は、排藁チェーン6によって左右方向を向いた姿勢で導入口8まで搬送されてくるため、通常その姿勢を維持したまま、左右方向に所定間隔で配置された掻込刃16及び切断刃17により略等間隔に切断処理され、後方から機外に排出される。そして、掻き込み箇所Pの後方斜め上方には、掻き込み時における排藁の最適な姿勢を維持されるため、後述する藁押えローラ18が設けられている。
【0017】
上記切換体11は、主に、排藁処理装置7の導入口8を覆って塞ぐ左右方向の天板19と、天板19の基端部に一体的に固定された左右方向の切換軸21(図5参照)と、天板19の内面から突設されたガイド部材22と、天板の両サイドにそれぞれ設けられたサイドプレート23,23と、藁押えローラ18を支持する左右の支持プレート24,24とからなり、切換軸21が左右の側板12,12の後端部上側に回動自在に軸支されており、これによって切換体11が回動可能に構成されている。
【0018】
上記回動機構により、切換体11は、天板19が基端から先端に向かって前方斜め上方を向いて導入口8を開放する導入姿勢(図2参照)と、天板19が導入口8全体を塞ぐ排出姿勢(図3参照)と、天板が基端から先端に向かって後方斜め上方を向いて導入口8を導入姿勢以上に大きく開放するメンテナンス姿勢(図4参照)とに姿勢切換可能になる。
【0019】
切換体11の上記姿勢切換により、排藁処理装置7は、搬送されてきた排藁を導入口8から掻き込み箇所Pに案内する排藁導入状態と、導入口8を塞いで搬送されてきた排藁を機体後方に排出する排藁排出姿勢と、導入口8を大きく開いて内部のカッター9等のメンテナンスを容易にするメンテナンス状態とに状態切換可能に構成される。
【0020】
上記切換軸21の右端には、板バネにより構成される切換操作レバー26(切換操作具)の基端部がボルト固定されている。切換操作レバー26は、先端部が外側(機体の右側)に屈曲しており(図5参照)、先端にグリップ26bが形成され、中途部に軸方向に長い係合孔26aが穿設されている。排藁処理装置7の右側の側版には、上記係合孔26aと係合する導入状態固定ピン27(図2参照)と、排出状態固定ピン28(図3参照)と、メンテナンス状態固定ピン29(図4参照)とが突設されている。
【0021】
切換操作レバー26の係合孔26aを導入状態固定ピン27に挿入固定すると、切換操作レバー26は先端が前方斜め下方を向いた状態で固定され、それに伴って切換体11が導入姿勢で固定される。また、切換操作レバー26の係合孔26aを排出状態固定ピン28に挿入固定すると、切換操作アーム26は先端が下方を向いた状態で固定され、それに伴って切換体11が排出姿勢で固定される。
【0022】
さらに、切換操作レバー26の係合孔26aをメンテナンス状態固定ピン29に挿入固定すると、切換操作アーム26の先端が前方斜め上方を向いた状態で固定され、それに伴って切換体11がメンテナンス姿勢で固定される。なお、切換操作レバー26と上記3つのピン27,28,29との係脱は、板バネである切換操作レバー26の先端部を引いて外側に湾曲させ、切換操作レバーを回動させることにより行う。
【0023】
上記ガイド部材22は、左右幅が天板19よりも若干短い左右方向に延びるプレート状の部材であり(図5参照)、導入姿勢時の切換体11において、下方斜め前方を向いた姿勢で固定され、搬送されてくる排藁を前述した掻き込み箇所Pに案内するためのものである。
【0024】
上記左右のサイドプレート23,23は、それぞれ切換体11の閉回動方向を向いた状態で天板に対して垂直に設置されている。そして、各サイドプレート23の切換軸21に近い側の部分には、切換体11の閉回動方向側に突出した支持プレート24が一体形成により設けられている。
【0025】
上記支持プレート24は、切換体11の導入姿勢時、突出方向が前述の掻き込み箇所Pを向くように構成されている。また、支持プレート24には、支持プレート24の突出方向に長いガイド孔24aが穿設されている。
【0026】
次に藁押えローラについて説明する。
図5は、排藁処理装置の要部を示す平断面図であり、図2〜5に示すように、支持プレート24に形成された左右のガイド孔24aには、ガイド溝24aの長手方向にスライド移動可能な状態で、左右方向のローラ軸31の左右端部が挿入支持されている。ローラ軸31の左右端部は、各支持プレート24からガイド孔24aを介して外側に突出しており、それぞれピン32により抜け止めがされている。ローラ軸31の上記突出部分に、サイドプレート23に設けられたスプリングピン33が当接することにより、ローラ軸31が支持プレート24の突出方向側に付勢される。なお、ローラ軸31の長さは、切換体11の左右幅より若干長く、排藁処理装置7の左右の側板12,12間の距離よりも若干短くなるように形成されている。
【0027】
上記ローラ軸31の左右端部の支持プレート24より内側部分は、それぞれベアリング34で軸受されている。そして、上記左側のベアリング34から右側のベアリング34に亘り略円筒形状の左右方向の藁押えローラ18が架設されている。上記構成により、藁押さえローラ18はローラ軸31に対して回転自在に軸支される。なお、切換体11における藁押えローラ18の支持位置は、前述したガイド部材22の案内面の裏側且つ天板の内面側位置になる。
【0028】
切換体11の導入姿勢時、支持プレート24が前述したように掻き込み箇所Pに向かって突出し、藁押えローラ18がスプリングピン33によって掻き込み箇所Pに向かって弾性的に付勢されている状態となる。上記構成により、藁押えローラ18が排藁を掻き込み箇所Pに弾力的に押え入れるため、搬送されてくる排藁の量関係なく、効率の良い排藁切断処理を行うことができる。
【0029】
一方、切換体11の排出姿勢時、藁押えローラ18が必要以上に掻込刃16及び切断板17に近接しないように、左右の側版12,12の内面側にはそれぞれストッパー36が設置されている。各ストッパー36は、アングル状に形成され、ストッパー面36a(図5参照)が導入口8側に向いた状態で固定されている。
【0030】
切換体11を閉作動させていくと、左右のストッパー36,36は、対応するローラ軸31の端部に当接してローラ軸31を掻き込み箇所から離間させる方向にスライド移動させて、藁押えローラ18を一定以上カッター9に近接させないように構成されている。上記機構により、切断効率を向上させる最適な箇所に位置決め可能に構成された藁押えローラ18を、切換体11に支持することが可能になる。
【0031】
また、藁押えローラ18は、姿勢切換可能な切換体11に支持されているため、掻き込み箇所Pに近接して藁押え行う藁押え姿勢と、掻き込み箇所Pから大きく離れてカッター9の上方を開放させるメンテナンス姿勢とに姿勢切換可能に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用したコンバインの全体側面図である。
【図2】排藁導入状態に切り換えられた排藁処理装置の要部側面図である。
【図3】排藁排出状態に切り換えられた排藁処理装置の要部側面図である。
【図4】メンテナンス状態に切り換えられた排藁処理装置の要部側面図である。
【図5】排藁処理装置の要部を示す平断面図である。
【符号の説明】
【0033】
9 カッター
11 切換体
18 藁押えローラ
P 掻き込み箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部から搬送されてくる排藁を掻き込んで切断処理するカッター(9)と、排藁をカッター(9)の掻き込み箇所(P)に押え入れる藁押さえローラ(18)とを備えたコンバインの排藁処理装置において、藁押さえローラ(18)が、カッター(9)と近接して排藁をカッター(9)の掻き込み箇所に押え入れる藁押え姿勢と、カッター(9)から離間してカッター(9)の掻き込み箇所を露出させるメンテナンス姿勢とに姿勢切換可能に構成されたコンバインの排藁処理装置。
【請求項2】
開作動して排藁をカッター(9)の掻き込み箇所(P)に導入する排藁導入状態と、閉作動して排藁を機外に排出する排藁排出状態とに状態切換可能に構成された切換体(11)を設け、藁押えローラ(18)を、前記切換体(11)の開閉作動に連動して姿勢切換されるように構成した請求項1のコンバインの排藁処理装置。
【請求項3】
切換板(11)に藁押えローラ(18)を支持し、該藁押えローラ(18)を、切換体(11)の排藁排出状態への切換に伴ってカッター(9)から避退する方向に移動するように構成した請求項2のコンバインの排藁処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−228664(P2008−228664A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73688(P2007−73688)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】