説明

コンバインの排藁処理装置

【課題】排出口からスムーズに排藁が排出可能であるとともにカッタフレーム及び上部カバーの振動が抑制されたコンバインの排藁処理装置を提供する。
【解決手段】排藁を切断処理するカッタ部14の枠体を構成するカッタフレーム18を、コンバインの走行機体側に固設された支持体21に水平回動可能に支持し、カッタフレーム18上方を覆う上部カバー22を該上部カバー22とカッタフレーム18との間に排出口23から形成されるようにカッタフレーム18に対して固定し、後方搬送されてくる排藁を排出口23から排出可能なコンバインの排藁処理装置において、カッタフレーム18の水平回動支点の前方箇所に固定されて後方に延設された取付体39の後部側に上部カバー22を支持固定し、カッタフレーム18の水平回動支点の同一軸心上で支持体21に対して水平回動可能に取付体39を支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの排藁処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排藁を切断処理するカッタ部の枠体を構成するカッタフレームを、コンバインの走行機体側に固設された支持体に水平回動可能に支持し、カッタフレーム上方を覆う上部カバーを該上部カバーとカッタフレームとの間に排出口から形成されるようにカッタフレームに対して固定し、後方搬送されてくる排藁を前記排出口から排出可能な特許文献1に示すコンバインの排藁処理装置が公知になっている。
【特許文献1】特開2002−51632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記文献のコンバインの排藁処理装置は、カッタフレームを水平回動することによりカッタ部のメンテナンスが容易になるというメリットがある一方で、カッタフレーム上方を覆う上部カバーを該上部カバーとカッタフレームとの間に排出口から形成されるようにカッタフレームに対して固定するための取付体(上記文献の図2では、上部カバーの進行方向右側端部から一体で下方延設されるプレート状部材)が排出口の水平回動支点側(進行方向右側端部)の側方全体を覆っているため、排出口から排出される排藁が取付体に引っ掛かり、排藁が排出口からスムーズに排出されないことがあるという課題がある。
【0004】
また、上部カバーのカッタフレームへの取付強度不足やカッタフレームの支持体への支持強度不足等により、カッタ部駆動時にカッタフレームや上部カバーに振動が発生することがあるという課題もある。
本発明は、カッタ部の枠体を走行機体に水平回動可能に支持し、枠体と枠体上方の上部型ーとの間に排藁の排出口から形成されたコンバインの排藁処理装置において、排出口からスムーズに排藁が排出可能であるとともにカッタフレーム及び上部カバーの振動が抑制されたコンバインの排藁処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明のコンバインの排藁処理装置は、排藁を切断処理するカッタ部14の枠体を構成するカッタフレーム18を、コンバインの走行機体3側に固設された支持体21に水平回動可能に支持し、カッタフレーム18上方を覆う上部カバー22を該上部カバー22とカッタフレーム18との間に排出口23から形成されるようにカッタフレーム18に対して固定し、後方搬送されてくる排藁を前記排出口23から排出可能なコンバインの排藁処理装置において、カッタフレーム18の水平回動支点Sの前方箇所に固定されて後方に延設された取付体39の後部側に前記上部カバー22を支持固定し、カッタフレーム18の水平回動支点Sの同一軸心上で前記支持体21に対して水平回動可能に前記取付体39を支持したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明のコンバインの排藁処理装置によれば、カッタフレームの水平回動支点の前方箇所に固定されて後方に延設された取付体の後部側に前記上部カバーを支持固定することにより、排出口の水平回動支点側側方の少なくとも一部を開放できるため、排藁の引っ掛かりを防止して排藁を排出口からよりスムーズに排出することが可能になるとともに、取付体がカッタフレームに固定されるだけでなく支持体側にも支持されるため、上部カバーのカッタフレームへの取付強度及びカッタフレームの支持体への支持強度が向上し、カッタ部駆動時のカッタフレームや上部カバーの振動を抑制できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図示する例に基づき本発明実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用したコンバインの全体側面図であり、図2は、本コンバインの脱穀部及び排藁処理部の構成を示す要部側面図である。本コンバインは、左右一対のクローラ式走行装置(走行部)1L,1Rに支持される機体フレーム2上に載置固定された走行機体3と、走行機体3の前部に昇降自在に連結されて圃場の穀稈の刈取作業を行う前処理部4とを備えている。
【0008】
前処理部4で刈取られ後方搬送された穀稈の株元は、走行機体3の進行方向左(左)側部の前端から後方に延設されたフィードチェーン6に渡される。このフィードチェーン6は、走行機体3の左部に設置される脱穀部(脱穀装置)7に穂先側が挿入されるように株元側を挟持した状態で、脱穀部7に沿って穀稈を後方搬送する。
【0009】
脱穀部7で脱穀された処理物は、籾(穀粒)と藁屑等とに選別される。藁屑等は走行機体3後端部から機外に排出される。籾は走行機体3の右半部後側に設置されたグレンタンク8内に収容される。グレンタンク8内の籾は、オーガ9を介して機外に排出される。オーガ9は、前述の機体フレーム2右側後端部側から上方に突出形成されて軸回りに回動自在に支持された上下方向の縦筒11と、縦筒11上端部に基端部が上下揺動自在に支持されて直線状に延びる排出筒12とを備え、内部に設けられた搬送ラセンによって、グレンタンク9側の籾を排出筒12先端部から機外に排出する。
【0010】
一方、脱穀部7を通過して排藁になった穀稈は、脱穀部7後方の排藁処理部(後処理部,排藁処理装置)13に受渡される。排藁処理部13は、排藁を切断処理するカッタ部14と、フィードチェーン6からの排藁をカッタ部14に後方搬送する排藁搬送体16とを備えており、排藁をそのまま又は切断処理して走行機体3の後端部から機外に排出するように構成されている。ちなみに、排藁搬送体16は、主に、排藁の株元側を挟持搬送する株元搬送体(排藁チェーン)17及び排藁の穂先側を搬送する穂先搬送体とから構成され、フィードチェーン6の後端部近傍からから後方斜め機体右側(機体内側,内側)の延設されている。
【0011】
次に、図3乃至6に基づき、カッタ部12の構成について説明する。
図3乃至6は、排藁処理部の要部側面図、要部背面図、要部斜視図及び要部平面図である。カッタ部14は、前方及び上方が開放されて左右及び上下方向に長い直方体形状の箱状に成形されてカッタ部14の枠体を構成するカッタフレーム18と、側面視円形状をなす姿勢でカッタフレーム18内に左右並列配置された複数の円盤状の掻込刃及び切断刃と、カッタフレーム18上方を開閉する切換板(切換体)19と、機体フレーム2(走行機体3側)に固定設置されてカッタフレーム18を機体フレーム2(走行機体3側)に水平回動自在に支持する支持体21と、所定間隔を介してカッタフレーム18上方に配置された上部カバー(カバー体)22とを備えている。
【0012】
上記掻込刃と切断刃は、側面視重複するように前後に配置され、上方からカッタフレーム18内に導入された排藁を掻込んで切断処理するように構成されている。
【0013】
上記切換板19は、後端部を支点に上下揺動可能に支持されており、後端部から前端部に向かって上方傾斜した状態でカッタフレーム18上方を開放して搬送されてくる排藁をカッタフレーム18内に導入する導入姿勢と、カッタフレーム18上方を閉塞して搬送されてくる排藁をカッタフレーム18と上部カバー22との間に形成される排出口(排藁搬出口)23から排出する排出姿勢とに姿勢切換可能に構成されている。
【0014】
上記支持体21は、縦筒11と平行な状態で機体フレーム2側から上方に突設された上下方向の支柱24と、同心軸上に配置された上下一対の上下方向の支持軸26,26と、支柱24と対応する支持軸26とを連接して支持軸26を支柱24に対して固定する上下一対の連接固定プレート(連接固定体)27,27とを備えている。
【0015】
支柱24は、上端及び下端にフランジ28,29が形成され、上側のフランジ28が走行機体3側から縦筒11側に一体的に延設された板状の機体側上部フレーム(機体側フレーム)31にボルト固定される一方で、下側のフランジ29が機体フレーム2上にボルト固定されている。くわえて、支柱24の中途部は、走行機体3側から縦筒11側に一体的に延設されて上記機体側上部フレーム31下方に配置される機体側下部フレーム32に取付固定されている。ちなみに、機体側上部フレーム31にはプレート状の連結部材33等を介して軸回りに回動自在な状態で前述の縦筒11が連結されている他、機体側下部フレーム32には縦筒11が軸回りに回動自在に挿通支持されている。
【0016】
一方、カッタフレーム18の支持体21側側面(図示する例では右側面)には、平面視内側が開放されるU字状に成形された上下方向に延びるチャネル状の支持フレーム34が溶着等によって取付固定されている。この支持フレーム34に固着された上下一対の支持ブラケット36,36に対応する上記支持軸27をそれぞれ軸回りに回動自在に支持することにより、支持軸27の軸心を支点(水平回動支点)Sに、カッタフレーム18が機体フレーム2に水平回動自在に支持される。
【0017】
カッタフレーム18は、上記支持構造によって、走行機体3の背面側に沿うように最前方側に水平回動され、走行機体3の壁面等によりカッタフレーム18前方が閉塞されて排藁の切断処理が可能な切断姿勢と、平面視支持端(水平回動支点側,支点側)側から自由端(図示する例では左端)側に向かって斜め後方に傾斜するように最後方側に水平回動され、カッタフレーム18前方が開放されてカッタフレーム18内部が露出するメンテナンス姿勢とに姿勢切換可能に構成されている。そして、カッタフレーム18は、切断姿勢時、ロック部材37(図2参照)によりロックされ、走行機体3側に固定された状態になる。
【0018】
上記上部カバー22は、左右方向に長い直方体形状の部材の左右両端を下方に屈曲又は湾曲形成したような形状に成形されており、カッタフレーム18の上面上方且つ上記支点S後方に位置するように、左右の取付体38,39によって、カッタフレーム18側(カッタフレーム18に対して)支持固定されている。
【0019】
自由端側の取付体38は上部カバー22の自由端側側面の下端とカッタフレーム18の自由端側側面の上端とを連接する板状に成形されている。このため、上部カバー22の自由端側が、排出口23の自由端側側方が取付体38にカバーされた状態で、支持固定されている。
【0020】
支持端側の取付体39は、カッタフレーム18の支持端側の側面における上記支点Sよりも前方箇所に溶着固定(固着された)された固定ブラケット41と、固定ブラケット41にボルト固定された方形状の固定プレート42と、下端部が固定プレート42に溶着等により取付固定されて上下方向に延びる棒状の縦フレーム43と、前端部が縦フレーム43上端部に固着されて前後方向に延びるプレート状の横フレーム44とにより構成されている。すなわち、取付体39は、カッタフレーム18側部の支点S前方箇所に固定されて上方に突出形成されたるとともに、上端部から後方に延設されている。
【0021】
横フレーム44は背面視内側及び上方に延びるL字状をなして水平面状の載置面44aを有するアングル状部材あり、中途部から機体外側(外側)に向かってフラットな支持部44bが一体的に延設されている。そして、取付体39は、上記載置面44aの後半部(後部)に上部カバー22の支持端側下端面を載置してボルト固定することにより、上部カバー22の支持端を、排出口23の支持端側側方全体が開放された状態で、支持固定している。
【0022】
また、支柱24の上端部周面に固着されて側面視後方及び上方に延びるアングル状をなす左右方向のブラケット47に、前述した上下一対の支持軸27,27の同心軸上に配置された支持ピン46を介して、上記支持部44bを水平回動自在に支持している。すなわち、支持ピン46により、取付体39は、支点Sの同一心軸上で、支持体21側に(支持体21に対して)水平回動自在に支持されている。
【0023】
前述した排藁チェーン17は、最下流側端が排出口23の左右方向中心から若干支持端側寄りに位置しており、支持端側に穂先を向けた状態で株元側を挟持して排藁を後方搬送するように構成されている。この際、排出口23における排藁の穂先側が向けられた支持端側は、前述したように側方が開放されているため、排藁は穂先が引っ掛かること無くスムーズに排出口23から走行機体3後方に排出される。
【0024】
以上のように構成される本コンバインによれば、取付体39がカッタフレーム18を支持する支持体21に支持されて支持強度が補強されているため、取付体39自在の強度を必要以上に確保する必要がなく、取付体39を構成する各種部材を適宜軽量化することが可能になる。
【0025】
以下、本発明の他の実施形態について前述した例と異なる点を説明する。
図7は、他の実施形態を示す排藁処理部の斜視図である。本コンバインは、支持フレーム34を上方に延設することにより縦フレーム43を構成している。また、支持体21は、支柱24と平行な状態で配設された上下方向の支柱48を備えており、2つの支柱24,48は、2つの支柱24,48間の上下3箇所にそれぞれ設けられた連結部材49,51,52によって連結固定されている。くわえて、支柱48の上端にはフランジ53が形成されており、該フランジ53は、支柱24のフランジ28にボルト固定されるとともに、オーガ9の縦筒11側にボルト固定されている。さらに、ブラケット47は、上記3つの連結部材49,51,52の内の最も高い位置に配置された連結部材49にボルト固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用したコンバインの全体側面図である。
【図2】本コンバインの脱穀部及び排藁処理部の構成を示す要部側面図である。
【図3】排藁処理部の要部側面図である。
【図4】排藁処理部の要部背面図である。
【図5】排藁処理部の要部斜視図である。
【図6】排藁処理部の要部平面図である。
【図7】他の実施形態を示す排藁処理部の斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
3 走行機体
14 カッタ部
18 カッタフレーム
21 支持体
22 上部カバー(カバー体)
23 排出口(排藁搬出口)
39 取付体
S 支点(水平回動支点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排藁を切断処理するカッタ部(14)の枠体を構成するカッタフレーム(18)を、コンバインの走行機体(3)側に固設された支持体(21)に水平回動可能に支持し、カッタフレーム(18)上方を覆う上部カバー(22)を該上部カバー(22)とカッタフレーム(18)との間に排出口(23)から形成されるようにカッタフレーム(18)に対して固定し、後方搬送されてくる排藁を前記排出口(23)から排出可能なコンバインの排藁処理装置において、カッタフレーム(18)の水平回動支点(S)の前方箇所に固定されて後方に延設された取付体(39)の後部側に前記上部カバー(22)を支持固定し、カッタフレーム(18)の水平回動支点(S)の同一軸心上で前記支持体(21)に対して水平回動可能に前記取付体(39)を支持したコンバインの排藁処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−63410(P2010−63410A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232933(P2008−232933)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】