説明

コンバインの照明装置

【課題】コンバインで薄暮や夜間に刈取作業を行なう場合、前処理部の右側分草体と刈り取り穀稈の条列を視認しながら容易に条合わせすることができる作業灯を提供する。
【解決手段】コンバイン11の操縦部14の前側を覆うパネル34に、前照灯35と作業灯36を左右に並置すると共に、該作業灯36にLEDランプを採用して前処理部15の右側分草体24の周辺を照らせるように構成し、以って当該右側分草体24の先端と刈り取り穀稈の条列を視認しながらの確実な条合わせを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの照明装置に係り、詳しくは、前処理部の右側分草体の周辺を照らす作業灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2〜3条刈りコンバインにおいては、前処理部の右横側に並設した操縦部の前側を覆うパネルに照明装置としての前照灯を設け、この前照灯によって、充分な明るさが得られない薄暮や夜間における刈取作業と路上走行を可能にしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、分草された穀稈を引き起こす左右両側の引起装置(穀稈引起体)の上部に、前照灯と夜間作業灯を兼ねるライトを取り付けたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】実用新案登録第2599876号公報(第2−3頁、図1−図2)
【特許文献2】実公平6−26109号公報(第2頁、第3図−第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1の前照灯は、機体前方側の比較的遠方の地表を照射するものであって、薄暮や夜間に刈取作業を行なう場合は、前処理部の右側分草体周辺の刈り取り穀稈に対する適切な照射がなされず、当該分草体と刈り取り穀稈の条列を視認しながら容易に条合わせすることができないことから作業性に問題を有していた。
【0005】
また、特許文献2の如く前照灯と夜間作業灯を兼ねるライトを設けたものでは、作業形態(刈取作業と路上走行)に対応させてライトの照射角度を調節しなければならず、また引起装置によって引起される穀稈の藁屑や粉塵等が当該ライトの照射面に付着し易いといった不具合も有していた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、前処理部の右横側に設けた操縦部の前側を覆うパネルに、前処理部の右側分草体の周辺を照らす作業灯を設けたことを第1の特徴としている。
【0007】
そして、作業灯にLEDランプを採用したことを第2の特徴としている。
【0008】
更に、前照灯と作業灯を並置したことを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、操縦部の前側を覆うパネルに、前処理部の右側分草体の周辺を照らす作業灯を設けたことによって、薄暮や夜間に刈取作業を行なう場合、前記作業灯によって前処理部の右側分草体の周辺を照らすことで、当該右側分草体の先端と刈り取り穀稈の条列を容易に視認することができるようになり、確実な条合わせが可能となって作業性が向上する。また、作業灯の照射角度を作業形態(刈取作業と路上走行)に対応させて調節する必要がなく、更に前処理部で発生する穀稈の藁屑や粉塵等が作業灯に付着するといった不具合も軽減できる。
【0010】
そして、請求項2の発明によれば、作業灯にLEDランプを採用したことによって、消費電力が少なく、且つ長寿命でコンパクトな作業灯を狭いスペースを利用して自由に配置できるようになる。
【0011】
更に、請求項3の発明によれば、前照灯と作業灯を並置したことによって、両灯をデザイン上一体感のある照明装置として構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は、2条刈りコンバイン11の側面図、平面図、及び正面図であって、コンバイン11は、左右一対のクローラ走行装置12,12に支持される機体フレーム13を有し、この機体フレーム13の一側上部位置を占める操縦部14を前処理部15の右横側に並設すると共に、当該操縦部14には、オペレータが着座する座席16、該座席16前方のフロントパネル17には、機体操向及び前処理部15の昇降操作を行うマルチステアリングレバー18を突設する一方、座席16左側のサイドパネル19には、主変速レバー21、副変速レバー22、及び作業機・刈取クラッチレバー23等のコンバイン11の操縦に必要な複数の操作レバーやスイッチ類を配置している。
【0013】
また、前処理部15には、刈り取り穀稈を分草する複数の分草体24を分草体支持フレーム25に一体的に取り付けると共に、分草体24の後方には、分草された穀稈を引き起こす複数の引起装置26を設けている。
【0014】
そして、前処理部15で刈り取った穀稈から穀粒を脱穀し、この脱穀済みの穀粒を選別する脱穀部27と、該脱穀部27で選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク28と、脱穀済みの排稈を機外に排出処理する後処理部29を機体フレーム13上に備えると共に、穀粒タンク28内に一時的に貯留した穀粒を穀粒排出オーガ31を介して機外に排出できるようになっている。
【0015】
また、操縦部14の床面(フロア)32の前端部左側には、走行用クラッチペダル33が配設してあり、この床面32の前端部から座席16の正面位置に相対して操縦部14の前側を覆う樹脂製の前面パネル34を立設している。
【0016】
そして、前面パネル34の正面側の略中央部には、機体前方側の比較的遠方の地表を照射する前照灯35と、前処理部15の右側分草体24の周辺を照らせるように、図4に示す如くB矢印方向に光軸を向けた作業灯36を左右に並置して設けている。
【0017】
即ち、薄暮や夜間に刈取作業を行なう場合、上述した作業灯36によって前処理部15の右側分草体24の周辺をスポット的に照らすことで、当該右側分草体24の先端と刈り取り穀稈の条列を容易に視認することができるようになり、確実な条合わせが可能となって作業性が向上する。また、作業灯36の照射角度を作業形態(刈取作業と路上走行)に対応させて調節する必要がなく、更に前処理部15で発生する穀稈の藁屑や粉塵等が作業灯36に付着するといった不具合も軽減できる。
【0018】
そして、作業灯36にLED(発光ダイオード)ランプを採用することによって、消費電力が少なく、且つ長寿命でコンパクトな作業灯を狭いスペースを利用して配置できるようになるので設計の自由度が増す。
【0019】
更に、前照灯35と作業灯36を左右に並置することによって、両灯35,36をデザイン上一体感のある照明装置として構成することができるようになる。
【0020】
ところで、座席16下方のエンジンルーム37内には、図示しないラジエータと冷却ファンを備えるエンジンが配置されているが、このエンジンルーム37の右側方から内方に向けてエンジン冷却風を吸入すべく、座席16の右側に防塵網を張設した吸風口38a,38bを備える薄厚なダクト状のエンジンカバー38を立設している。
【0021】
そして、ダクト状のエンジンカバー38上部の前側周縁には、図5に示すように、コンバイン11のオペレータが手を掛けながら操縦部14の床面32に昇降することができるように、樹脂製のサポートグリップ39を設けている。
【0022】
更に詳しくは、サポートグリップ39は、ダクト状のエンジンカバー38の座席16側角部に載置した状態で複数のビス41を用いて強固に取り付けると共に、当該サポートグリップ39の座席16側には、オペレータが確実に手を掛けて把持することができる突起部39aを全長に亘って設けてあり、この突起部39aを把持することによって操縦部14の床面32への安全な昇降を可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】コンバインの正面図。
【図4】図3におけるAA断面図。
【図5】図1におけるCC断面図。
【符号の説明】
【0024】
14 操縦部
15 前処理部
24 右側分草体
34 パネル
36 作業灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理部(15)の右横側に設けた操縦部(14)の前側を覆うパネル(34)に、前処理部(15)の右側分草体(24)の周辺を照らす作業灯(36)を設けたことを特徴とするコンバインの照明装置。
【請求項2】
作業灯(36)にLEDランプを採用した請求項1に記載のコンバインの照明装置。
【請求項3】
作業灯(36)と前照灯(35)を並置した請求項1または請求項2に記載のコンバインの照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−74976(P2007−74976A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266502(P2005−266502)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】