説明

コンバインの穀稈引起装置

【課題】畦際に植付けされた穀稈を容易に刈取りできるものとし、刈取作業の能率を向上させる。
【解決手段】刈取装置(3)に設けた複数の引起装置(7,8)のうち、既刈側の引起装置(8)の下部前方に畦際穀稈引起し用の補助引起装置(9)を設け、該補助引起装置(9)の補助引起ラグ(9b)を駆動する伝動装置(10)を該既刈側の引起装置(8)の後側に設ける。また、既刈側の引起装置(8)の下部に軸支した引起ラグ(8b)駆動用の従動ローラ軸(8a)を経て、伝動装置(10)から補助引起装置(9)を駆動する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの刈取部に設ける穀稈引起装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンバインの機体の前方に刈取装置を設け、この刈取装置の前部に穀稈引起装置を配設し、この穀稈引起装置の下部前方に、穀稈引起経路へ突出しながら楕円形状の軌跡を描くように作用する作動杆を有した穀稈引起装置が開示されている。
【特許文献1】実開昭51−67229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
穀稈の植付け位置が畦際に接近している場合には、この穀稈を既刈側の引起装置で引き起こすことができず、この引起しされなかった穀稈は、刈刃装置で刈取りされずに、最悪の場合は、コンバインの走行装置で踏み付けられて、穀稈の収穫作業ができないことがあり、収穫損失が発生することがあったが、これらの問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述のような課題を解決するために、この発明は、次のような技術手段を講じる。
即ち、請求項1に記載の発明は、刈取装置(3)の前部に複数の引起装置(7,8)を並べて設け、該複数の引起装置(7,8)のうちの既刈側の引起装置(8)の下部前方に畦際穀稈引起し用の補助引起装置(9)を設け、該補助引起装置(9)の補助引起ラグ(9b)を駆動する伝動装置(10)を該既刈側の引起装置(8)の後側に設けたことを特徴とするコンバインの穀稈引起装置としたものである。
【0005】
請求項2に記載の発明は、前記既刈側の引起装置(8)の下部に軸支した引起ラグ(8b)駆動用の従動ローラ軸(8a)を経て、伝動装置(10)から補助引起装置(9)を駆動する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの穀稈引起装置としたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によると、畦際の穀稈を既刈側の引起装置8の下部前方に設けた補助引起装置9の補助引起ラグ9bによって引起して刈り取ることができ、コンバインによる刈残しを減らして、手刈り作業の省力化を図ることができる。しかも、この補助引起装置9の補助引起ラグ9bを駆動する伝動装置10が既刈側の引起装置8の後側に設けられるために、引起された穀稈がこの伝動装置10に干渉しにくく、円滑に引起されて刈取作業の能率を向上させることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果を奏するうえに、補助引起装置9への伝動構造を簡素化して安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
コンバイン1の走行車台2の前方部は、立毛穀稈を刈取りする刈取装置3を設けると共に、走行車台2の上側面には、該刈取装置3で刈取りした穀稈の供給を受けて脱穀する脱穀装置4を載置している。該脱穀装置4の右横側で該走行車台2の上側面には、該脱穀装置4から脱穀済みで、選別済みの穀粒の供給を受けて一時貯留する穀粒貯留タンク5を載置している。
【0009】
前記刈取装置3の前部には、刈取りする穀稈を分離する左右両側側端部には、各分草体6b、及び各ナローガイド6a等を設けると共に、穀稈を引起しする左側部に複数の引起装置7と、右畦際側の穀稈を引起しする、正面視において、右側引起装置(既刈側の引起装置)8を設け、この右側引起装置8で引起しされなかった穀稈を再引起しする横補助引起装置(補助引起装置)9を正面視右側へ設けている。正面視左側へ設ける複数個の各引起装置7と、右側の該右側引起装置8と、該横補助引起装置9等とを主に図示して説明すると共に、該横補助引起装置9を回転駆動する横補助回転装置(伝動装置)10を該右側引起装置8の正面視左側へ設けている。該横補助引起装置9等を主に図示して説明する。
【0010】
前記コンバイン1の走行車台2の下側には、図1〜4で示すように、土壌面を走行する左右一対の走行クローラ11aを張設した走行装置11を配設し、該走行車台2の上側面に脱穀装置4を載置している。走行車台2の前方部の刈取装置3で立毛穀稈を刈取りして、後方上部に移送し、該脱穀装置4のフィードチェン12aと、挟持杆12bとで引継ぎして、該脱穀装置4内を挟持移送しながら脱穀する。脱穀済みで選別済みの穀粒は、該脱穀装置4の右横側へ配設した穀粒貯留タンク5内へ供給され、一時貯留される。
【0011】
前記走行車台2の前方部には、図1〜4で示すように、立毛穀稈を分離するナローガイド6a、及び分草体6bと、立毛穀稈を引起す各引起装置7と、右側引起装置8と、横補助引起装置9とにより、引起された穀稈を掻込み移送する穀稈掻込移送装置13の各掻込装置13aと、掻込された穀稈を刈取る刈刃装置14と、刈取りされた穀稈を挟持移送して、該脱穀装置4のフィードチェン12aと、挟持杆12bとへ受渡しする穀稈掻込移送装置13の根元・穂先移送装置15・16等からなる刈取装置3を設けている。該刈取装置3は、油圧駆動による伸縮シリンダ17により、土壌面に対して昇降する。
【0012】
前記刈取装置3のナローガイド6aと、左右両外側の分草体6bとにより、分草された穀稈は、畦際側の穀稈は、右側端の右側引起装置8と、左側部は複数の引起装置7との箱形状の各引起ケース8c、7a内に回転自在に軸支した各引起チェン8b、7bに所定間隔で複数個を設けた、各引起ラグ8b、7cにより引起しされながら、更に穀稈掻込移送装置13の各掻込装置13aで掻込されながら、後方上部へ移送され、根元移送装置15と、穂先移送装置16とに引継ぎされ、後方上部へ移送中に株元側が刈刃装置14で刈取りされ、刈取り穀稈は、該根元移送装置15と、該穂先移送装置16とにより、更に後方上部へ移送され、前記脱穀装置4のフィードチェン12aと、挟持杆12bとに引継ぎされ、該脱穀装置4内へ供給され、この脱穀装置4内を挟持移送中に脱穀され、穀粒と藁屑等とに風別され、穀粒は該脱穀装置4の横側に設けた穀粒貯留タンク5内へ供給され、一時貯留される。又、藁屑、及び塵埃等は機外へ排出される。
【0013】
畦際側の穀稈を引起しする右端部側の右側引起装置8と、該右側引起装置8の左側には、図1〜図4で示すように、複数個の引起装置7と、該右側引起装置8の前側下部には、畦際側の引起しされなかった穀稈を再度引起しする横補助引起装置9とを設けている。
【0014】
前記右側引起装置8と、複数の該引起装置7とは、略箱形状の各引起ケース8c、7a内には、所定間隔に複数個の各引起ラグ8b、7cを各引起用チェン8d、7bに装着して設け、これら各引起用チェン8d、7bを回転自在に軸支して設け、回転駆動される。これら各引起用チェン8d、7bに装着した複数個の各引起ラグ8b、7cにより、引起ケース8c、引起ケース7a部より突出する複数の各引起ラグ8b、7cで穀稈は分離されながら、後方上部へ向けて引起しされる。
【0015】
又、前記横補助引起装置9は、略箱形状の補助引起しケース9cには、所定間隔に複数個の各補助引起ラグ9bを補助引起チェン9aに装着して設け、この該補助引起チェン9aを回転自在に軸支して設け、回転駆動される、この各補助引起ラグ9bにより、該補助引起ケース9c部より、突出する該各補助引起ラグ9bにより、特に畦際の穀稈を分離しながら、後方上部へ向けて引起しする。
【0016】
前記横補助引起装置9に内装した複数の該補助引起ラグ9bを装着した該補助引起チェン9aを回転駆動する横補助回転装置10を、図1、及び図3で示すように、該右側引起装置8の横側後方部に設け、この横補助回転装置10の上部軸10aから入力され下部軸10bから出力されることにより、該横補助引起装置9が回転駆動され、特に畦際の穀稈を引起し、後方上部へ移送して、脱穀装置4へ引継ぎ供給され、この脱穀装置4内を挟持移送中に脱穀されて風選別され、選別済み穀粒は、穀粒貯留タンク5内へ移送供給されて、一時貯留される。
【0017】
前記刈取装置3で刈取りする穀稈は、この刈取装置3の前部に設けて、略畦際側の穀稈を引起しする該右側引起装置8と、他の複数の各引起装置7とにより、穀稈は引起しされるが、該右側引起装置8で引起しされなかった穀稈を再度引起しする、前側下部に畦際部の引起しされなかった穀稈を、再度引起しする横補助引起装置9と、該右側引起装置8とは、略平行状態(M)に設けた構成である。
【0018】
前記横補助引起装置9に内装した複数の補助引起ラグ9bを装着した補助引起チェン9aを回転駆動する横補助回転装置10を、該右側引起装置8の横側後方部に設けたことにより、伝動部が引起し対象の穀稈に対して障害になることがない。又、該横補助引起装置9の伝動構成が簡単であり、この横補助引起装置9により、畦際の刈り残しを防止することができる。
【0019】
前記右側引起装置8の下部には、図1で示すように、従動ローラ軸8aを回転自在に軸支して設け、該従動ローラ軸8aを経て、該横補助回転装置10から該横補助引起装置9を回転駆動すべく設けて、該右側引起装置8と、該横補助引起装置9とにより、右側の畦際の穀稈を引起しさせて、畦際の穀稈の引起しの忘れ、及び刈り残しを防止させている。
【0020】
前記右側引起装置8の下部に軸支した従動ローラ軸8aを経て、該横補助回転装置10から横補助引起装置9を回動駆動すべく設けたことにより、最も近くを駆動源として利用することにより、安価に製作することができる。
【0021】
図3〜図5で示すように、右側の引起装置7の後側で根元移送装置15の上部には、穀稈を移送する掻込ラグ装置27を設けた構成である。
これにより、穀稈の刈取り巾を拡大して、刈巾をプラス1条とした場合でも、穀稈を確実に搬送することができる。
【0022】
図5で示すように、右外側の横補助引起装置9の所定距離(L)外側位置に、刈刃装置14の右外側端部を位置させて設けると共に、右外側に設けた分草体6bの分草パイプ6dの中心位置を、該刈刃装置14の右端部と同じ位置に位置させて設けている。
【0023】
これにより、前記横補助引起装置9で引起しされた穀稈を、該刈刃装置14で刈取りすることができる。
前記横補助引起装置9は、図4で示すように、右側部の左右回動移動自在な分草体6bの分草板6cに設けた分草支持パイプ6dの回動メタル6eと、該分草板6cの後端部との間に設けた構成である。
【0024】
これにより、右側端部の前記分草体6bを右側方向に、該回動メタル6e部を回動中心として、回動移動操作しても、この分草体6bの該分草板6cが、該横補助引起装置9に当接することなく、回動移動させることができる。
【0025】
前記掻込装置13a部と、該右側引起装置8部等とを、右外側部より、カバーする刈取サイドカバー28を、図1で示すように設けた構成である。
これにより、前記刈取装置3の刈取右サイド部と、該右側引起装置8部とを、一体的に覆うことができて、構成が簡略化できる。
【0026】
図2で示すように、前記右側引起装置8の引起ラグ8bの回転軌跡と、横補助引起装置9の補助引起ラグ9bの回転軌跡とを重合させた構成である。
これにより、前記引起ラグ8bと、該補助引起ラグ9bとは、正面視において、該各引起ラグ8bと、該各補助引起ラグ9bとのそれぞれの作用ラグの軌跡を重合させることができ、このために、穀稈を確実に引起しすることができる。
【0027】
図5で示すように、前記右側引起装置8の該引起ラグ8bと、該補助引起装置9の該補助引起ラグ9bとの間隔は、略平衡状態(N)に設けた構成である。又、右端の分草体6bの分草支持パイプ6dと、横補助引起装置9とは、所定距離(L)を設けた構成である。
【0028】
これにより、後方側に位置する該右側引起装置8が穀稈に対して抵抗になることが少なく、このために、穀稈を引き抜くことが防止できる。
図6〜図8で示すように、前記横補助引起装置9の補助引起ラグ9bは下方部側の接地ゾーン側では、穀稈を引起しする起立側構成であると共に、上方部側の非作用側では、折り畳み状態になるような構成であり、引起し作用側には、クランクフィンガー28を設け、このクランクフィンガー28の下側面(θ)部では、この下側面(θ)に当接して、図8で示すように、該補助引起ラグ9bが起立する構成である。
【0029】
これにより前記横補助引起装置9には、穀稈の巻き付きが防止できる。又、該補助引起装置9をコンパクトにすることができて、前方視界性の向上を図ることができる。
前記刈取装置3の前方下部から後方上部へ傾斜する支持杆18の上端部に設ける支持パイプ杆19を、走行車台2の上側面に設けた支持装置20で回動自在に支持させている。伸縮シリンダ17を作動させると支持杆18と共に、刈取装置3が上下回動する。
【0030】
前記刈取装置3の穀稈掻込移送装置13によって形成される穀稈移送経路中には、刈取られて移送する穀稈に接触作用することにより、脱穀装置4への穀稈の供給の有無を検出する穀稈センサ3aを設けている。
【0031】
前記穀粒貯留タンク5側の前部には、図1〜図4で示すように、コンバイン1を始動、停止、及び各部を調節等の操作を行う制御装置21と、操縦席22とを設け、この操縦席22の下側にエンジン23を載置している。
【0032】
前記走行車台2の前端部に装架した走行用のミッションケース24内の伝動機構24aの伝動経路中には、その出力に基づいて、走行車速を検出するポテンションメータ方式の車速センサ24bを設けている。
【0033】
前記穀粒貯留タンク5内へ貯留した穀粒を機外へ排出するこの穀粒貯留タンク5の後側には、図2、及び図3で示すように、縦移送螺旋25aを内装した排出支持筒25を略垂直姿勢で旋回自在に装着して設け、この排出支持筒25の上端部には、その全長がコンバイン1の前後長に亘る機外へ穀粒を排出する排出螺旋26aを伸縮自在に内装した排出オーガ26を伸縮自在、上下回動自在、及び左右旋回自在に前後方向に配設している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンバインの前部の側面図
【図2】コンバインの正面図
【図3】コンバインの側面図
【図4】コンバインの前部の平面図
【図5】刈取装置の説明用平面図
【図6】既刈側の引起装置と補助引起装置の側面図
【図7】既刈側の引起装置と補助引起装置の正面図
【図8】補助引起装置の補助引起ラグの作用説明図
【符号の説明】
【0035】
3 刈取装置
7 引起装置
8 既刈側の引起装置
8a 従動ローラ軸
8b 引起ラグ
9 補助引起装置
9b 補助引起ラグ
10 伝動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置(3)の前部に複数の引起装置(7,8)を並べて設け、該複数の引起装置(7,8)のうちの既刈側の引起装置(8)の下部前方に畦際穀稈引起し用の補助引起装置(9)を設け、該補助引起装置(9)の補助引起ラグ(9b)を駆動する伝動装置(10)を該既刈側の引起装置(8)の後側に設けたことを特徴とするコンバインの穀稈引起装置。
【請求項2】
前記既刈側の引起装置(8)の下部に軸支した引起ラグ(8b)駆動用の従動ローラ軸(8a)を経て、伝動装置(10)から補助引起装置(9)を駆動する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの穀稈引起装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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