説明

コンバイン

【課題】前処理部駆動用ギヤケース、オイルタンク、及び電源用バッテリを簡潔に配置してコンバインをコンパクトに構成する。
【解決手段】前処理部16に動力を伝達する前処理部駆動用ギヤケース25と、前処理部16等の作業部を昇降作動させる油圧装置S1,S2用または動力伝達装置33の作動用オイルを貯留するオイルタンク32と、電気機器に電源を供給する電源用バッテリ34とを、前処理部16と脱穀部15との間における機体12の内側から左右方向に並べて配置することによって、簡潔な配置構造でコンバインのコンパクト化を図った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理部等の作業部を昇降作動させる油圧装置用または動力伝達装置の作動用オイルを貯留するオイルタンクと、電気機器に電源を供給する電源用バッテリとを機体上に搭載してなるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインは、脱穀部が搭載される機体の前方に前処理部を昇降自在に連結し、該前処理部が刈り取った茎稈を脱穀して穀粒を選別する脱穀部を機体上に配置している。
そして、この種のコンバインでは、機体上に、油圧装置用または動力伝達装置の作動用オイルを貯留するオイルタンクや、電気機器に電源を供給する電源用バッテリが搭載されるが、これらの配置が適切でない場合は、機体の大型化を招くばかりでなく、電源用バッテリのメンテナンス性が低下する等の不都合が生じる。
【0003】
そこで、機体の前端部に前処理部を支持する正面視冂字状の前処理支持フレームを立設し、この前処理支持フレームに入り込むようにオイルタンクを配置すると共に、該オイルタンクと脱穀部前面との間に電源用バッテリを配置したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−141041号公報(第4−5頁、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1のものは、比較的大型の4条刈りコンバインに適用可能な配置構成であって、2〜3条刈りの小型コンバインにおいては、脱穀部の前方に電源用バッテリとオイルタンクとを前後に並設すると、当該コンバインが必要以上に大きくなるといった不具合を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、機体の前方に前処理部を昇降自在に支持し、且つ前記機体の前処理部の後方部分に脱穀部を配置したコンバインにおいて、前記前処理部に動力を伝達する前処理部駆動用ギヤケースと、前処理部等の作業部を昇降作動させる油圧装置用または動力伝達装置の作動用オイルを貯留するオイルタンクと、電気機器に電源を供給する電源用バッテリとを、前記前処理部と脱穀部との間に左右方向に並べて配置したことを第1の特徴としている。
そして、オイルタンクを挟んで機体の内側に前処理部駆動用ギヤケースを配置すると共に、機体の外側に電源用バッテリを配置したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、前処理部に動力を伝達する前処理部駆動用ギヤケースと、前処理部等の作業部を昇降作動させる油圧装置用または動力伝達装置の作動用オイルを貯留するオイルタンクと、電気機器に電源を供給する電源用バッテリとを、前処理部と脱穀部との間に左右方向に並べて配置したことによって、簡潔な配置構造によりコンバインをコンパクトに構成することができる。
そして、請求項2の発明によれば、オイルタンクを挟んで機体の内側に前処理部駆動用ギヤケースを配置すると共に、機体の外側に電源用バッテリを配置したことによって、前記前処理部駆動用ギヤケースから前処理部への駆動経路を短く構成できると共に、電源用バッテリのメンテナンスも他の装置部品に干渉することなく容易に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るコンバイン11の左側全体側面図、図2は、一部を省略したコンバイン11の左側側面図、図3は、一部を省略したコンバイン11の平面図、図4は、一部を省略したコンバイン11の正面図、図5は、コンバイン11の伝動系統図、及び図6は、前処理部駆動用ギヤケース(24)の取り付け状態を示す斜視図である。
【0008】
コンバイン11は、図1〜図4に示すように、機体12の下方に左右一対のクローラ走行装置13を有し、このクローラ走行装置13の作動によって走行及び旋回可能に構成されると共に、機体12の左右一側に運転席14、他側に脱穀部15、そして機体の前方に前処理部16を昇降自在に支持している。
【0009】
前処理部16は、機体12の前端部に左右一対の支持部材17L,17Rに回転自在に支持した横伝動筒18と、この横伝動筒18に基端部を固設すると共に前下がり傾斜に斜設した縦支持筒19を備え、該縦支持筒19の先端部に構成した平行リンク機構21により当該前処理部16を左右スライド可能に支持している。そして、縦支持筒19の近傍には、入力伝動軸22が併設してあり、この入力伝動軸22を介して伝達される動力によって図示しない刈刃や刈取り搬送装置等が駆動される。
【0010】
また、脱穀部15には、該脱穀部15に沿って穀稈を搬送するためのフィードチェン23を付設している。そして、フィードチェン23と上述した刈取り搬送装置との間には、脱穀部15に対する穀稈の穂先側通過位置を調整し得るように、図示しない扱ぎ深さ搬送装置を設けている。
【0011】
そして、機体12の前部には、脱穀部15と前処理部16との間に位置するように、機体12に固設した左右一対の下部支持ブラケット24L,24Rを介して前処理部駆動用ギヤケース25を配置すると共に、該前処理部駆動用ギヤケース25の上部を脱穀部15の前面15aと内側面15bから延出させた上部支持ブラケット26,27に連結固定している。即ち、機体12の前部に前処理部駆動用ギヤケース25を配置することにより、前処理部駆動用ギヤケース25から前処理部16への駆動経路を短く構成することができる。
【0012】
前処理部駆動用ギヤケース25の機体中心側の側面には、前処理用油圧式無段変速装置(以下、前処理用HSTとする)28を取り付けてあって、この前処理用HST28は、図示しないHSTポンプ(斜板式可変容量油圧ポンプ)と、該HSTポンプに閉回路で接続する油圧モータと、当該閉回路内にオイルを供給するチャージポンプを備えており、HSTポンプの斜板操作に応じて前処理用HST28を無段階に変速することができるようになっている。尚、前処理用HST28の上部には、該前処理用HST28用のオイルタンク28aを付設してある。
【0013】
また、前処理部駆動用ギヤケース25の左右方向外側には、前記下部支持ブラケット24Lの前後方向略中間部に固設したプレート29に左右一側を螺設すると共に、機体12から立設させた支持部材31に他側を螺設したオイルタンク32を、脱穀部15と前処理部16との間に位置するように配置している。
【0014】
オイルタンク32内のオイルは、図5に示すコンバイン11の走行用油圧式無段変速装置(以下、走行用HSTとする)33の作動用オイルとして使用される他、前処理部16
を昇降作動させる油圧シリンダS1や、後述する後穀粒排出オーガ49を起伏動作させる油圧シリンダS2、及びその他の油圧装置の作動用オイルや潤滑用オイルとして使用され、機体12の前部にオイルタンク32を配置することにより、オイルタンク32から走行用HST33または各油圧装置への油圧配管を短く配策することができる。
【0015】
更に、オイルタンク32の左右方向外側には、コンバイン11に備える図示しないスタータモータ等の電気機器に電源を供給する電源用バッテリ34を、脱穀部15と前処理部16との間に位置するように配置してあり、電源用バッテリ34のメンテナンス作業も他の装置部品に干渉することなく容易に行うことができる。尚、電源用バッテリ34の上部はカバー34aによって覆われている。
【0016】
以上説明したように、前処理部16に動力を伝達する前処理部駆動用ギヤケース25と、前処理部16等の作業部を昇降作動させる油圧装置用または動力伝達装置の作動用オイルを貯留するオイルタンク32と、電気機器に電源を供給する電源用バッテリ34とを、前処理部16と脱穀部15との間に左右方向に並べて配置したことによって、簡潔な配置構造によりコンバイン11をコンパクトに構成することができる。
【0017】
そして、オイルタンク32を挟んで機体12の内側に前処理部駆動用ギヤケース25を配置すると共に、機体12の外側に電源用バッテリ34を配置したことによって、前処理部駆動用ギヤケース25から前処理部16への駆動経路を短く構成できると共に、電源用バッテリ34のメンテナンスも他の装置部品に干渉することなく容易に行えるようになる。また、2〜3条刈りの小型コンバインにも適用可能である。
【0018】
尚、上述した前処理用HST28には、該前処理用HST28側からオイルタンク32側に向けて送風する冷却ファン35を備えている。即ち、冷却ファン35により前処理用HST28を有効に冷却しながら、前処理部駆動用ギヤケース25の周囲の空気が吸引されるので、当該前処理部駆動用ギヤケース25を冷却することができると共に、冷却ファン35により吹き付けられる空気によって、オイルタンク32も冷却される。
【0019】
そして、図5の伝動系統図に例示するように、脱穀部15は、穀稈から穀粒を扱ぎ落とす扱胴41及び処理胴42と、該扱胴41及び処理胴42により扱ぎ落とされた穀粒と藁屑等の夾雑物から穀粒を選別する揺動選別体43と、この揺動選別体43に穀粒と夾雑物を選別する選別風を送風する唐箕ファン44と、揺動選別体43から吹き飛ばされた夾雑物を吸引して脱穀部15の外部(機外)へ排出する排塵ファン45と、脱穀部15の後部に配置され脱穀が終わった排藁を短く切断して排出する排藁処理部46と、フィードチェン23により搬送され、扱胴41により脱穀された穀稈をフィードチェン23から引き継いで排藁処理部46に搬送する排藁搬送チェン47を備えている。尚、脱穀部15で選別済みの穀粒は、穀粒タンク48に一時的に貯留された後穀粒排出オーガ49を介して機外に排出できるようになっている。
【0020】
以下コンバイン11の伝動系統について簡単に説明する。エンジン51の出力軸51aには、プーリ52,53,54,55が固設してあり、プーリ52からベルト56を介して穀粒タンク48の下部搬送螺旋57に動力が伝達され、プーリ53,54からベルト58,59を介して走行用HST33に動力が伝達される。そして、プーリ55からベルト61を介して唐箕ファン44の駆動軸62の一端に固設したプーリ63に動力が伝達されると共に、このプーリ63の両側に固設したプーリ64とベルト65を介して前処理用HST28と、またプーリ66とベルト67を介して扱胴41、処理胴42及び排藁搬送チェン47に動力が伝達されるようになっている。
【0021】
一方、上述した唐箕ファン44の駆動軸62の他端には、プーリ68が固設してあり、このプーリ68とベルト69を介して揺動選別体43、排塵ファン45及び排藁処理部46に動力が伝達されるようになっている。
【0022】
また、前処理用HST28から前処理部駆動用ギヤケース25に入力された動力は、該
前処理部駆動用ギヤケース25内の歯車列25a及び副変速機構25bを介して出力軸71,72に出力され、この出力軸71の軸端に固設したスプロケット73を介してフィードチェン23に伝達される一方、出力軸72に固設したプーリ74とベルト75、及びプーリ76を介して前処理部16に伝達されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】コンバインの左側面図。
【図2】一部を省略したコンバインの左側側面。
【図3】一部を省略したコンバインの平面図。
【図4】一部を省略したコンバインの正面図。
【図5】コンバインの伝動系統図。
【図6】前処理部駆動用ギヤケースの取り付け状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0024】
11 コンバイン
12 機体
15 脱穀部
16 前処理部
25 前処理部駆動用ギヤケース
32 オイルタンク
33 動力伝達装置(走行用油圧式無段変速装置)
34 電源用バッテリ
S1 油圧装置
S2 油圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体(12)の前方に前処理部(16)を昇降自在に支持し、且つ前記機体(12)の前処理部(16)の後方部分に脱穀部(15)を配置したコンバイン(11)において、前記前処理部(16)に動力を伝達する前処理部駆動用ギヤケース(25)と、前処理部(16)等の作業部を昇降作動させる油圧装置(S1,S2)用または動力伝達装置(33)の作動用オイルを貯留するオイルタンク(32)と、電気機器に電源を供給する電源用バッテリ(34)とを、前記前処理部(16)と脱穀部(15)との間に左右方向に並べて配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
オイルタンク(32)を挟んで機体(12)の内側に前処理部駆動用ギヤケース(25)を配置すると共に、機体(12)の外側に電源用バッテリ(34)を配置した請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−129988(P2007−129988A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328233(P2005−328233)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】