コンバイン
【課題】コンバインにおける油圧バルブの配置を、メンテナンスが行い易く且つ油温の上昇等による不具合発生を回避できるものとする。
【解決手段】エンジン(22)からの冷却風を機外へ排風するエンジン冷却風路(W)を扱室(4)の入口漏斗(5)の下側の空間に形成し、エンジン冷却風路(W)に油圧バルブ(6)を配置し、脱穀装置(3)に設けるフィードチェン(1)を脱穀本体側から駆動する伝動継手(32)を設け、フィードチェン(1)の外側に配置した第1カバー(2)と油圧バルブ(6)周辺の機体外側面(F)を覆う第2カバー(7)とをチェンフレーム(31)に一体的に取り付け、伝動継手(32)を離脱させてチェンフレーム(31)と一体の第1カバー(2)と第2カバー(7)とを回動支軸(35)を支点としてフィードチェン(1)と共に外側方向へ開放可能な構成とする。
【解決手段】エンジン(22)からの冷却風を機外へ排風するエンジン冷却風路(W)を扱室(4)の入口漏斗(5)の下側の空間に形成し、エンジン冷却風路(W)に油圧バルブ(6)を配置し、脱穀装置(3)に設けるフィードチェン(1)を脱穀本体側から駆動する伝動継手(32)を設け、フィードチェン(1)の外側に配置した第1カバー(2)と油圧バルブ(6)周辺の機体外側面(F)を覆う第2カバー(7)とをチェンフレーム(31)に一体的に取り付け、伝動継手(32)を離脱させてチェンフレーム(31)と一体の第1カバー(2)と第2カバー(7)とを回動支軸(35)を支点としてフィードチェン(1)と共に外側方向へ開放可能な構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインにおける各装置類の自動制御作用を行わせる複数個の油圧バルブを、操作席下方の空間に取り付けているものが一般的である。
【特許文献1】特開平8−116764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような油圧バルブを取り付けている操作席下方の空間は、各操作系統のロッドやリンク機構及びハーネス類等が交錯している場所であり、メンテナンス時に大変面倒で余分の工数を必要とすると共に、エンジンの近傍に位置しているため油温の上昇等による不具合発生の要因になり兼ねない。
【0004】
そこでこの発明は、これら油圧バルブの配置を、最もメンテナンスが行い易く且つ油温の上昇等による不具合発生を回避できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、車台(8)の下部側に左右一対の走行クローラ(9)を有する走行装置(10)を設け、前記車台(8)上に扱室(4)と排塵処理室(24)と選別室(25)とを有する脱穀装置(3)を設け、該脱穀装置(3)の前方に刈取装置(18)を昇降自在に設け、該刈取装置(18)の一側に操作席(21)を設け、該操作席(21)の下方にエンジン(22)を搭載し、該エンジン(22)からの冷却風を機外へ排風するエンジン冷却風路(W)を扱室(4)の入口漏斗(5)の下側の空間に形成し、該エンジン冷却風路(W)に油圧バルブ(6)を配置し、前記脱穀装置(3)に設けるフィードチェン(1)を脱穀本体側から駆動する伝動継手(32)を設け、該フィードチェン(1)の外側に配置した第1カバー(2)と前記油圧バルブ(6)周辺の機体外側面(F)を覆う第2カバー(7)とをチェンフレーム(31)に一体的に取り付け、前記伝動継手(32)を離脱させてチェンフレーム(31)と一体の第1カバー(2)と第2カバー(7)とを回動支軸(35)を支点としてフィードチェン(1)と共に外側方向へ開放可能な構成としたことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0006】
この構成により、脱穀時に穀稈を扱室4へ案内供給する入口漏斗5の下方側空間に、コンバインの各装置類の自動制御作用を行わせる油圧バルブ6を取付け、この油圧バルブ6位置周辺の機体外側面Fを覆う第2カバー7をフィードチェン1のチェンフレーム31に一体的に取り付けることにより、メンテナンス時等に該第2カバー7をフィードチェン1と共に外側方向へ開放させることができるようになる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によると、脱穀時に穀稈を扱室4へ案内する入口漏斗5の下側空間におけるエンジン冷却風路Wの一側に油圧バルブ6を設け、この油圧バルブ6の周辺の機体外側面Fを覆う第2カバー7をフィードチェン1と一体的に機外横方向へ開放させることができるから、フィードチェン1を開放させて油圧バルブ6のメンテナンスを容易に行うことができる。また、エンジン冷却後の排風により油圧バルブ6の油温の上昇等が制御可能となり油温の上昇による不具合の発生を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、この発明の実施例をコンバインについて図面に基づき説明する。
図4,図5はコンバインの全体構成を示すもので、車台8の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ9を張設した走行装置10を配設すると共に、該車台8上にフィードチェン1に挟持し搬送供給される穀稈の脱穀を行い、この脱穀された穀粒を選別回収して一時貯留するグレンタンク11と、このタンク11に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ12を備えた脱穀装置3を載置し、この脱穀装置3の後端部に排藁処理装置13を装架構成させる。
【0009】
該脱穀装置3の前方に、前端側から未刈穀稈を分草する分草体14と、分草された穀稈を引き起こす引起部15と、引き起こされた穀稈を刈り取る刈刃部16と、この刈り取られた穀稈を掻き込むと共に、搬送途上において扱深さを調節して搬送される穀稈を引き継いで該フィードチェン1へ受け渡しする供給調節搬送部17等を有する刈取装置18を、油圧駆動による刈取昇降シリンダ19により土壌面に対して昇降自在なるよう該車台8の前端部へ懸架構成させる。
【0010】
該刈取装置18の一側にコンバインの操作制御を行う操作装置20と、この操作のための操作席21を設け、この操作席21の後方側に前記グレンタンク11を配置すると共に下方側にエンジン22を搭載し、これらの走行装置10,脱穀装置3,刈取装置18,操作装置20,エンジン22等によってコンバインの機体23を構成させる。
【0011】
該脱穀装置3は、図1,図2,図3に示す如く、上方側に扱室4と、この扱室4の後方側に並行して排塵処理室24と、下方側に選別室25とを各々配置して設け、該扱室4に軸承支架した扱胴26には穀稈を脱穀処理する多数の扱歯26aを配列植設すると共に、この扱歯26aに対する略下半周部分を取り囲む扱受網27を脱着自在に装着し、該扱胴26で脱穀された脱穀物を再処理する排塵処理胴28を排塵処理室24に軸承支架して構成させる。
【0012】
該扱室4及び排塵処理室24等の本体上部を覆う扱胴カバー29を開閉可能に設け、この扱胴カバー29の前面側に搬送穀稈を上側から押圧挾持する挾持杆30と、この挾持杆30に下側から押圧挾持して搬送させるフィードチェン1とを相対配設し、このチェン1を巻掛け摺動案内するチェンフレーム31を延設すると共に、このチェン1を脱穀本体側から駆動する伝動継手32に脱着連結可能に構成させる。
【0013】
前記選別室25の前面側に配設した前側板33の上側切欠き部に、該扱受網27の機外への取り出しや揺動選別棚34等の掃除を行うために必要な大きさの開放空間Aを設けて構成させる。
【0014】
該前側板33の入口側近傍に設けた回動支軸35を支点として、該フィードチェン1を張設したチェンフレーム31と、このチェンフレーム31と一体的に設けた、該開放空間Aを塞ぐ蓋板36,該扱受網27の脱着端部をロックする網押え板37,フィードチェン1の作用部を残してその下方側外面部を覆う脱穀前カバー(第1カバー)2等の構成部材を機外横方向へ開閉可能に軸支装着すると共に、該フィードチェン1の開閉時には前記伝動継手32部を離脱させる構成とする。
【0015】
該揺動選別棚34は、選別室25の入口側始端部から出口側終端部に至る作用領域において扱受網27から漏下した脱穀物の比重選別を行うと共に、この揺動選別棚34の入口側下方に脱穀物を送風により風選別する唐箕38と、この唐箕38から出口側に至る間に、比重選別と風選別とにより選別された一番穀粒を横送りする一番螺旋39と、二番物を横送りする二番螺旋40とを各々設けて構成させる。
【0016】
該揺動選別棚34の下手側上方にシロッコファン等により脱穀排塵を機外へ排塵する排塵ファン41を、上部カバーと下部ガイドによりファン排塵口41aを設けて構成させる。
【0017】
脱穀本体の入口側板42外側へ装着した穀稈を前記扱室4へ案内供給する穀稈入口漏斗(入口漏斗)5の下方側空間に、前記操作席21下方に搭載したエンジン22からの冷却風を横方向へ機外排風するエンジン冷却風路Wを形成させる。
【0018】
該冷却風路Wに沿った排風出口側の機体外側面Fから内側へ向け該冷却風路Wの一側で且つ低い位置に、コンバインの各装置類の自動制御作用を行わせる複数個の油圧バルブ6を直列状態で、機体外側面Fに最も近い外側位置に、メンテナンス等の頻度が高い分流バルブとリリーフバルブを組合せ一体形成した複合形油圧バルブ6aを配置させるよう連接配設して構成させる。
【0019】
搬送途上の穀稈によって発生する落下藁屑等から該油圧バルブ6を防護するため該バルブ6位置周辺の機体外側面Fを、前記脱穀前カバー2(斜線記入部分)に連接する状態で覆うバルブカバー(第2カバー)7(斜線記入部分)を、フィードチェン1のチェンフレーム31に一体的に取り付けることにより、メンテナンス時等に該チェン1と共に機外横方向へ開閉可能に構成させる。(図4参照)
扱室4において扱胴26で脱穀処理され扱受網27から漏下した脱穀物と、排塵処理室24において再処理された処理物は、選別室25の揺動選別棚34上に落下し、この揺動選別棚34による比重選別と唐箕38による風選別とによって選別された一番穀粒及び二番物は、一番螺旋39及び二番螺旋40によって横送りされ各々グレンタンク11及び排塵処理室24等へ搬送され、選別後の排塵及び排塵処理室24からの排塵は排塵ファン41によって機外へ排出される。
【0020】
このような脱穀作用を行うものにおいて、該扱受網27の機外への取り出しや揺動選別棚34の掃除等を行う必要が生じたときは、該選別室25の前側板33の開放空間Aを塞いでいる蓋板36と、この蓋板36と共にチェンフレーム31と一体構成の網押え板37及び脱穀前カバー2を、フィードチェン1を巻掛け装着した状態で回動支軸35を支点として機外横方向へ開扉させる。
【0021】
このフィードチェン1及び脱穀前カバー2の機外横方向への開扉により、該扱受網27を引き出す開放空間Aが邪魔のない開放状態となり、扱受網27を脱穀本体から離脱させて容易に手前側へ引き出すことができると共に、揺動選別棚34に引っ掛かったり溜ったりしている藁屑等も容易に取り除くことができる。
【0022】
同時に、該フィードチェン1と共にバルブカバー7も開扉できるから油圧バルブ6のメンテナンス等を容易に行うことができる。特に、メンテナンス等の頻度が高い複合形油圧バルブ6aを該カバー7に近接配置しているから一層容易に行うことができる。
【0023】
なお、複数個の油圧バルブ6をエンジン冷却風路Wの一側で且つ低い位置に直列状態で連接配設していることにより排風の抵抗とならないと共に、この排風により油圧バルブ6の冷却が可能となり油温の上昇等による不具合発生を防止することができる。
【0024】
また、前記走行装置10は、図6に示す如く、入力軸43から変速した動力を伝達する操向軸44の操向センタギヤ45と、この操向センタギヤ45と噛合接続して操向作用を行わせる左右の操向クラッチ46と、この操向クラッチ46の切りにより走行ブレーキ47を制動させる左右のシフタ48とを各々配置すると共に、左右の旋回クラッチ49の入りにより旋回作用を行わせる走行用ミッションケース50を前記車台8の前端側に装架して構成させる。
【0025】
該ミッションケース50において、左右のプッシュシリンダ51を作動させることにより、左右のシフタ48を作用させて各々操向クラッチ46の入・切及び走行ブレーキ47の制動と、前記刈取昇降シリンダ19の作動とを行わせる油圧回路Bを、図7に示す如く構成させる。
【0026】
該油圧回路Bは、油圧ポンプ52からの圧油をシーケンスバルブ53からチェックバルブ54を経て、リリーフバルブ55を介し4ポート・3位置切替による方向切替バルブ56により、6ポート・7位置切替による操向切替バルブ57への単独乃至は前記刈取昇降シリンダ19との分流を可能に切替え接続し、この操向切替バルブ57から左右のプッシュシリンダ51に各々接続すると共に、このプッシュシリンダ51からの圧油を油タンク58へ逃がす2ポート・2位置切替による圧油切替バルブ59を接続して構成させる。
【0027】
このような構成により、図8に示す如く、該シーケンスバルブ53とチェックバルブ54を組合せ一体形成した複合シーケンスバルブSにより、前記エンジン22の始動時には油圧ポンプ52からの圧油はa室に入り、その後スプール53aは押圧バネ53bに抗して左方側にスライドしb室に流れ、その後チェックバルブ54を押し上げ方向切替バルブ56へ流れる。
【0028】
次に、エンジン22の停止後には、a室の圧油は絞り53cを通りd室へ抜け油タンク58へ戻るため、スプール53aは押圧バネ53bによって右方側へ押し戻されc室の圧油は油タンク58へ戻る。このような動きによって、左右のプッシュシリンダ51により両走行ブレーキ47を制動状態としエンジン22を停止しても、該両ブレーキ47の圧油は即時油タンク58へ戻り制動解除の状態となる。
【0029】
該チェックバルブ54からリリーフバルブ55を介して方向切替バルブ56へ送られた圧油は、常時は操向切替バルブ57側へ送られるが、該方向切替バルブ56の左右側への切替により同時に刈取昇降シリンダ19を介して前記刈取装置18の昇降作用を行わせる。
【0030】
該操向切替バルブ57へ送られた圧油により、パワステレバー60の左右側への傾動操作を行い左旋回LTと右旋回RTを行わせるが、この旋回作用は左又は右の1段位置xでは、左又は右のプッシュシリンダ51のベースピストン51a(斜線記入部)のu部と外筒のv部とが一致する位置まで上昇し該操向クラッチ46が切りとなる。
【0031】
更に、該パワステレバー60の傾動操作による操向切替バルブ57の2段位置yでは、可変絞りによる昇圧によりベースピストン51aから内挿ピストン51bが上昇し徐々に該走行ブレーキ47の制動を行う。更に、3段位置zでは、内挿ピストン51bが外筒のw部まで上昇し完全に該ブレーキ47の制動を行う。
【0032】
このような作用を行う操向切替バルブ57のセンタ位置において、該圧油切替バルブ59を両ブレーキレバー61の操作により圧油の油タンク58への戻りをブロックすることにより、左右のプッシュシリンダ51へ同時に圧油が流れ前記の作用の如く、ベースピストン51aから内挿ピストン51bの順に上昇し完全に両走行ブレーキ47の制動を行う。
【0033】
以上の如き油圧作用において、例えば、坂道等で両走行ブレーキ47の制動を行っているとき前記エンジン22を停止させたときや、エンストを起こしたようなときに、従来であれば、該プッシュシリンダ51の残圧により操向クラッチ46が切りのままで走行ブレーキ47が非制動状態となり暴走する危険性かあったが、この暴走状態を、該シーケンスバルブ53と絞り53cの作用により直ちに左右の操向クラッチ46の圧力を逃がして入りとすることにより、該ミッションケース50の連動機構により防止することができる。
【0034】
なお、このため該エンジン22切りでの停車時には、油圧による左右の両走行ブレーキ47の制動作用を使用させないようにする。
【0035】
また、前記と異なり、進行方向の左右操向と旋回作用を行わせる油圧回路Cとして、図9(a)に示す如く、油圧ポンプ63からシーケンスバルブ64と減圧バルブ65へ各々接続させ、該シーケンスバルブ64により前記刈取装置18,脱穀装置3,走行装置10等の各作業部Hへ各々作用可能に通油すると共に、該減圧バルブ65により前記左右の操向クラッチ46と走行ブレーキ47の各作用部Gへ各々作用可能に通油を行い、該油圧ポンプ63からリリーフバルブ66を介して油タンク67へ返油可能に構成させる。
【0036】
このような構成に対し、従来の油圧回路Dとして、図9(b)に示す如く、該油圧ポンプ63から優先分流バルブ68へ接続させ、この優先分流バルブ68によって分流された制御流mを該各作業部Hへ各々作用可能に通油すると共に、この作用時以外は該分流バルブ68の切り替えにより制御流mを余剰流n側へ合流させ、該シーケンスバルブ64を介して該各作用部Gへ各々作用可能に通油を行い、該油圧ポンプ63からリリーフバルブ66を介して油タンク67へ返油可能に構成させる。
【0037】
このように、従来の優先分流バルブ68とシーケンスバルブ64による圧油供給方式に代えて、シーケンスバルブ64と減圧バルブ65による圧油供給方式とすることにより、コスト低減が可能になると共に、応答性を向上させることができる。
【0038】
また、前記と異なり、従来のパワステリリーフバルブ69に比例減圧バルブ70を組合わせた油圧回路Eを、図10に示す如く構成させる。
該油圧回路Eは、方向切替電磁バルブ71から該左右のプッシュシリンダ51を作動可能に接続し、このシリンダ51の2次側からの圧油をパワステリリーフバルブ69へ通油し、このリリーフバルブ69から該比例減圧バルブ70の一方のポートへ接続すると共に、他方のポートへは油圧ポンプ72から通油可能に接続を行い、この比例減圧バルブ70のパイロット70aを該リリーフバルブ69に接続して構成させる。
【0039】
このような油圧構成において、図11に示す如く、該パワステリリーフバルブ69と比例減圧バルブ70をパイロット70aを介して一体的に組合せた複合リリーフバルブRとして形成することにより、パワステリリーフバルブ69のマニュアルレバー69aによる手動操作に、該減圧バルブ70のパイロット圧による遠隔操作を追加し、両操作による該左右のプッシュシリンダ51の作動を容易に可能とすることができる。
【0040】
また、図12に示す如く、前記刈取装置18を昇降させる刈取昇降シリンダ19と刈取昇降切替電磁バルブ73との間にリターンバルブ74を接続し、このリターンバルブ74の外筒74aに内挿したロータリスプール74bに固定するスプール回動軸74cと、刈取装置18の昇降回動軸とを連結することにより、刈取装置18の高さに応じ、該スプール74bの回動によって外筒74aと連通する通油孔eの孔径を絞り下降速度を低速側に可変調節可能に構成させる。
【0041】
このため、従来の如く、刈取装置18の下降に際し通油を固定絞りとしていることにより下降速度が一定となり、特に、刈高さ制御時に1パルスの下げ量が大きなることから一定高さの制御ができ難いということがなく、微少調節による的確な刈高さ制御を行わせることができる。なお、刈取装置18の上昇についてはチェックバルブ74dの押し上げにより通油を絞られることがないから、上昇速度が変化することはない。
【0042】
また、進行方向の左右操向制御を行わせる刈取作業において、図13に示す如く、前記操作席21の後部上方側に、刈取装置18の上端部越しに刈取圃場面を撮像可能なCCDカメラ等による画像入力装置75を装着して設け、この画像入力装置75からの情報に基づいて穀稈の倒伏度合の判定を行う。
【0043】
この倒伏度合の判定は、図14のフローチャートに示す如く、刈取作業時に画像入力装置75により前方の圃場面における未刈穀稈の画像P(図15に示す)を入力し、この入力画像Pにおける分析領域fを適宜に設定し、この分析領域fの輝度の変化を計測して周波数分析を行い、この周波数分析によりパワースペクトル分布g(図16に示す)を得ることができる。
【0044】
このパワースペクトル分布gは中心の小円から斜めに長く分布しており、この分布状態からコントローラ等による演算処理の結果、機体23の進行方向に対し斜め方向に大きく倒伏している状態を示しており、穀稈倒伏における方向と強度の領域を連続的に検出処理することができる。
【0045】
この検出処理の結果、倒伏状態が大きいと評価判定されたときは、この倒伏穀稈の株元は非常に乱れているため、進行方向の左右操向を行う方向制御における感度や修正量等を通常状態より鈍感に設定させることにより、従来の如く、通常状態の感度で方向制御を行うときのように刈取条から脱線する等の不具合を生じることがなく、安定した刈取作業を行うことができる。
【0046】
なお、このような倒伏状態の検出処理については、画像Pによる処理以外に超音波による検出やその他の検出等による処理方法を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】脱穀装置の全体構成と油圧バルブ及びバルブカバーの配置状態を示す正面図。
【図2】脱穀装置の全体構成における扱室,排塵処理室,選別室の状態を示す側面図。
【図3】脱穀装置の全体構成とフィードチェン及びカバー類の開扉状態を示す斜視図。
【図4】コンバインの全体構成と脱穀前カバー及びバルブカバーの配置を示す側面図。
【図5】コンバインの全体構成とフィードチェン及びカバーの開扉状態を示す平面図。
【図6】走行用ミッションケースの伝動構成によるギヤ配列状態を示す正面展開線図。
【図7】プッシュシリンダと刈取昇降シリンダを制御する油圧回路を示すブロック図。
【図8】シーケンスバルブ及びチェックバルブを一体的に形成した状態を示す平面図。
【図9】(a)シーケンスバルブと減圧バルブを組合せた油圧回路を示すブロック図。(b)分流バルブとシーケンスバルブを組合せた油圧回路を示すブロック図。
【図10】パワステリリーフの手動と遠隔操作を切り替える油圧回路を示すブロック図。
【図11】リリーフバルブと比例減圧バルブを一体的に形成した作用状態を示す側面図。
【図12】刈取装置の下降速度を減速調節するリターンバルブの作用状態を示す側面図。
【図13】画像入力装置の装着と作用状態を示すコンバインの側面図。
【図14】画像の倒伏検出処理による方向制御感度の調節手順を示すフローチャート図。
【図15】画像入力装置で撮像した前方の未刈穀稈の状態とその分析領域を示す画像図。
【図16】入力画像の分析領域の周波数分析によるパワースペクトル分布を示す画像図。
【符号の説明】
【0048】
1 フィードチェン
2 脱穀前カバー(第1カバー)
3 脱穀装置
4 扱室
5 穀稈入口漏斗(入口漏斗)
6 油圧バルブ
7 バルブカバー(第2カバー)
8 車台
9 走行クローラ
10 走行装置
18 刈取装置
21 操作席
22 エンジン
24 排塵処理室
25 選別室
31 チェンフレーム
32 伝動継手
35 回動支軸
37 網押え板
F 機体外側面
W エンジン冷却風路
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインにおける各装置類の自動制御作用を行わせる複数個の油圧バルブを、操作席下方の空間に取り付けているものが一般的である。
【特許文献1】特開平8−116764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような油圧バルブを取り付けている操作席下方の空間は、各操作系統のロッドやリンク機構及びハーネス類等が交錯している場所であり、メンテナンス時に大変面倒で余分の工数を必要とすると共に、エンジンの近傍に位置しているため油温の上昇等による不具合発生の要因になり兼ねない。
【0004】
そこでこの発明は、これら油圧バルブの配置を、最もメンテナンスが行い易く且つ油温の上昇等による不具合発生を回避できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、車台(8)の下部側に左右一対の走行クローラ(9)を有する走行装置(10)を設け、前記車台(8)上に扱室(4)と排塵処理室(24)と選別室(25)とを有する脱穀装置(3)を設け、該脱穀装置(3)の前方に刈取装置(18)を昇降自在に設け、該刈取装置(18)の一側に操作席(21)を設け、該操作席(21)の下方にエンジン(22)を搭載し、該エンジン(22)からの冷却風を機外へ排風するエンジン冷却風路(W)を扱室(4)の入口漏斗(5)の下側の空間に形成し、該エンジン冷却風路(W)に油圧バルブ(6)を配置し、前記脱穀装置(3)に設けるフィードチェン(1)を脱穀本体側から駆動する伝動継手(32)を設け、該フィードチェン(1)の外側に配置した第1カバー(2)と前記油圧バルブ(6)周辺の機体外側面(F)を覆う第2カバー(7)とをチェンフレーム(31)に一体的に取り付け、前記伝動継手(32)を離脱させてチェンフレーム(31)と一体の第1カバー(2)と第2カバー(7)とを回動支軸(35)を支点としてフィードチェン(1)と共に外側方向へ開放可能な構成としたことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0006】
この構成により、脱穀時に穀稈を扱室4へ案内供給する入口漏斗5の下方側空間に、コンバインの各装置類の自動制御作用を行わせる油圧バルブ6を取付け、この油圧バルブ6位置周辺の機体外側面Fを覆う第2カバー7をフィードチェン1のチェンフレーム31に一体的に取り付けることにより、メンテナンス時等に該第2カバー7をフィードチェン1と共に外側方向へ開放させることができるようになる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によると、脱穀時に穀稈を扱室4へ案内する入口漏斗5の下側空間におけるエンジン冷却風路Wの一側に油圧バルブ6を設け、この油圧バルブ6の周辺の機体外側面Fを覆う第2カバー7をフィードチェン1と一体的に機外横方向へ開放させることができるから、フィードチェン1を開放させて油圧バルブ6のメンテナンスを容易に行うことができる。また、エンジン冷却後の排風により油圧バルブ6の油温の上昇等が制御可能となり油温の上昇による不具合の発生を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、この発明の実施例をコンバインについて図面に基づき説明する。
図4,図5はコンバインの全体構成を示すもので、車台8の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ9を張設した走行装置10を配設すると共に、該車台8上にフィードチェン1に挟持し搬送供給される穀稈の脱穀を行い、この脱穀された穀粒を選別回収して一時貯留するグレンタンク11と、このタンク11に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ12を備えた脱穀装置3を載置し、この脱穀装置3の後端部に排藁処理装置13を装架構成させる。
【0009】
該脱穀装置3の前方に、前端側から未刈穀稈を分草する分草体14と、分草された穀稈を引き起こす引起部15と、引き起こされた穀稈を刈り取る刈刃部16と、この刈り取られた穀稈を掻き込むと共に、搬送途上において扱深さを調節して搬送される穀稈を引き継いで該フィードチェン1へ受け渡しする供給調節搬送部17等を有する刈取装置18を、油圧駆動による刈取昇降シリンダ19により土壌面に対して昇降自在なるよう該車台8の前端部へ懸架構成させる。
【0010】
該刈取装置18の一側にコンバインの操作制御を行う操作装置20と、この操作のための操作席21を設け、この操作席21の後方側に前記グレンタンク11を配置すると共に下方側にエンジン22を搭載し、これらの走行装置10,脱穀装置3,刈取装置18,操作装置20,エンジン22等によってコンバインの機体23を構成させる。
【0011】
該脱穀装置3は、図1,図2,図3に示す如く、上方側に扱室4と、この扱室4の後方側に並行して排塵処理室24と、下方側に選別室25とを各々配置して設け、該扱室4に軸承支架した扱胴26には穀稈を脱穀処理する多数の扱歯26aを配列植設すると共に、この扱歯26aに対する略下半周部分を取り囲む扱受網27を脱着自在に装着し、該扱胴26で脱穀された脱穀物を再処理する排塵処理胴28を排塵処理室24に軸承支架して構成させる。
【0012】
該扱室4及び排塵処理室24等の本体上部を覆う扱胴カバー29を開閉可能に設け、この扱胴カバー29の前面側に搬送穀稈を上側から押圧挾持する挾持杆30と、この挾持杆30に下側から押圧挾持して搬送させるフィードチェン1とを相対配設し、このチェン1を巻掛け摺動案内するチェンフレーム31を延設すると共に、このチェン1を脱穀本体側から駆動する伝動継手32に脱着連結可能に構成させる。
【0013】
前記選別室25の前面側に配設した前側板33の上側切欠き部に、該扱受網27の機外への取り出しや揺動選別棚34等の掃除を行うために必要な大きさの開放空間Aを設けて構成させる。
【0014】
該前側板33の入口側近傍に設けた回動支軸35を支点として、該フィードチェン1を張設したチェンフレーム31と、このチェンフレーム31と一体的に設けた、該開放空間Aを塞ぐ蓋板36,該扱受網27の脱着端部をロックする網押え板37,フィードチェン1の作用部を残してその下方側外面部を覆う脱穀前カバー(第1カバー)2等の構成部材を機外横方向へ開閉可能に軸支装着すると共に、該フィードチェン1の開閉時には前記伝動継手32部を離脱させる構成とする。
【0015】
該揺動選別棚34は、選別室25の入口側始端部から出口側終端部に至る作用領域において扱受網27から漏下した脱穀物の比重選別を行うと共に、この揺動選別棚34の入口側下方に脱穀物を送風により風選別する唐箕38と、この唐箕38から出口側に至る間に、比重選別と風選別とにより選別された一番穀粒を横送りする一番螺旋39と、二番物を横送りする二番螺旋40とを各々設けて構成させる。
【0016】
該揺動選別棚34の下手側上方にシロッコファン等により脱穀排塵を機外へ排塵する排塵ファン41を、上部カバーと下部ガイドによりファン排塵口41aを設けて構成させる。
【0017】
脱穀本体の入口側板42外側へ装着した穀稈を前記扱室4へ案内供給する穀稈入口漏斗(入口漏斗)5の下方側空間に、前記操作席21下方に搭載したエンジン22からの冷却風を横方向へ機外排風するエンジン冷却風路Wを形成させる。
【0018】
該冷却風路Wに沿った排風出口側の機体外側面Fから内側へ向け該冷却風路Wの一側で且つ低い位置に、コンバインの各装置類の自動制御作用を行わせる複数個の油圧バルブ6を直列状態で、機体外側面Fに最も近い外側位置に、メンテナンス等の頻度が高い分流バルブとリリーフバルブを組合せ一体形成した複合形油圧バルブ6aを配置させるよう連接配設して構成させる。
【0019】
搬送途上の穀稈によって発生する落下藁屑等から該油圧バルブ6を防護するため該バルブ6位置周辺の機体外側面Fを、前記脱穀前カバー2(斜線記入部分)に連接する状態で覆うバルブカバー(第2カバー)7(斜線記入部分)を、フィードチェン1のチェンフレーム31に一体的に取り付けることにより、メンテナンス時等に該チェン1と共に機外横方向へ開閉可能に構成させる。(図4参照)
扱室4において扱胴26で脱穀処理され扱受網27から漏下した脱穀物と、排塵処理室24において再処理された処理物は、選別室25の揺動選別棚34上に落下し、この揺動選別棚34による比重選別と唐箕38による風選別とによって選別された一番穀粒及び二番物は、一番螺旋39及び二番螺旋40によって横送りされ各々グレンタンク11及び排塵処理室24等へ搬送され、選別後の排塵及び排塵処理室24からの排塵は排塵ファン41によって機外へ排出される。
【0020】
このような脱穀作用を行うものにおいて、該扱受網27の機外への取り出しや揺動選別棚34の掃除等を行う必要が生じたときは、該選別室25の前側板33の開放空間Aを塞いでいる蓋板36と、この蓋板36と共にチェンフレーム31と一体構成の網押え板37及び脱穀前カバー2を、フィードチェン1を巻掛け装着した状態で回動支軸35を支点として機外横方向へ開扉させる。
【0021】
このフィードチェン1及び脱穀前カバー2の機外横方向への開扉により、該扱受網27を引き出す開放空間Aが邪魔のない開放状態となり、扱受網27を脱穀本体から離脱させて容易に手前側へ引き出すことができると共に、揺動選別棚34に引っ掛かったり溜ったりしている藁屑等も容易に取り除くことができる。
【0022】
同時に、該フィードチェン1と共にバルブカバー7も開扉できるから油圧バルブ6のメンテナンス等を容易に行うことができる。特に、メンテナンス等の頻度が高い複合形油圧バルブ6aを該カバー7に近接配置しているから一層容易に行うことができる。
【0023】
なお、複数個の油圧バルブ6をエンジン冷却風路Wの一側で且つ低い位置に直列状態で連接配設していることにより排風の抵抗とならないと共に、この排風により油圧バルブ6の冷却が可能となり油温の上昇等による不具合発生を防止することができる。
【0024】
また、前記走行装置10は、図6に示す如く、入力軸43から変速した動力を伝達する操向軸44の操向センタギヤ45と、この操向センタギヤ45と噛合接続して操向作用を行わせる左右の操向クラッチ46と、この操向クラッチ46の切りにより走行ブレーキ47を制動させる左右のシフタ48とを各々配置すると共に、左右の旋回クラッチ49の入りにより旋回作用を行わせる走行用ミッションケース50を前記車台8の前端側に装架して構成させる。
【0025】
該ミッションケース50において、左右のプッシュシリンダ51を作動させることにより、左右のシフタ48を作用させて各々操向クラッチ46の入・切及び走行ブレーキ47の制動と、前記刈取昇降シリンダ19の作動とを行わせる油圧回路Bを、図7に示す如く構成させる。
【0026】
該油圧回路Bは、油圧ポンプ52からの圧油をシーケンスバルブ53からチェックバルブ54を経て、リリーフバルブ55を介し4ポート・3位置切替による方向切替バルブ56により、6ポート・7位置切替による操向切替バルブ57への単独乃至は前記刈取昇降シリンダ19との分流を可能に切替え接続し、この操向切替バルブ57から左右のプッシュシリンダ51に各々接続すると共に、このプッシュシリンダ51からの圧油を油タンク58へ逃がす2ポート・2位置切替による圧油切替バルブ59を接続して構成させる。
【0027】
このような構成により、図8に示す如く、該シーケンスバルブ53とチェックバルブ54を組合せ一体形成した複合シーケンスバルブSにより、前記エンジン22の始動時には油圧ポンプ52からの圧油はa室に入り、その後スプール53aは押圧バネ53bに抗して左方側にスライドしb室に流れ、その後チェックバルブ54を押し上げ方向切替バルブ56へ流れる。
【0028】
次に、エンジン22の停止後には、a室の圧油は絞り53cを通りd室へ抜け油タンク58へ戻るため、スプール53aは押圧バネ53bによって右方側へ押し戻されc室の圧油は油タンク58へ戻る。このような動きによって、左右のプッシュシリンダ51により両走行ブレーキ47を制動状態としエンジン22を停止しても、該両ブレーキ47の圧油は即時油タンク58へ戻り制動解除の状態となる。
【0029】
該チェックバルブ54からリリーフバルブ55を介して方向切替バルブ56へ送られた圧油は、常時は操向切替バルブ57側へ送られるが、該方向切替バルブ56の左右側への切替により同時に刈取昇降シリンダ19を介して前記刈取装置18の昇降作用を行わせる。
【0030】
該操向切替バルブ57へ送られた圧油により、パワステレバー60の左右側への傾動操作を行い左旋回LTと右旋回RTを行わせるが、この旋回作用は左又は右の1段位置xでは、左又は右のプッシュシリンダ51のベースピストン51a(斜線記入部)のu部と外筒のv部とが一致する位置まで上昇し該操向クラッチ46が切りとなる。
【0031】
更に、該パワステレバー60の傾動操作による操向切替バルブ57の2段位置yでは、可変絞りによる昇圧によりベースピストン51aから内挿ピストン51bが上昇し徐々に該走行ブレーキ47の制動を行う。更に、3段位置zでは、内挿ピストン51bが外筒のw部まで上昇し完全に該ブレーキ47の制動を行う。
【0032】
このような作用を行う操向切替バルブ57のセンタ位置において、該圧油切替バルブ59を両ブレーキレバー61の操作により圧油の油タンク58への戻りをブロックすることにより、左右のプッシュシリンダ51へ同時に圧油が流れ前記の作用の如く、ベースピストン51aから内挿ピストン51bの順に上昇し完全に両走行ブレーキ47の制動を行う。
【0033】
以上の如き油圧作用において、例えば、坂道等で両走行ブレーキ47の制動を行っているとき前記エンジン22を停止させたときや、エンストを起こしたようなときに、従来であれば、該プッシュシリンダ51の残圧により操向クラッチ46が切りのままで走行ブレーキ47が非制動状態となり暴走する危険性かあったが、この暴走状態を、該シーケンスバルブ53と絞り53cの作用により直ちに左右の操向クラッチ46の圧力を逃がして入りとすることにより、該ミッションケース50の連動機構により防止することができる。
【0034】
なお、このため該エンジン22切りでの停車時には、油圧による左右の両走行ブレーキ47の制動作用を使用させないようにする。
【0035】
また、前記と異なり、進行方向の左右操向と旋回作用を行わせる油圧回路Cとして、図9(a)に示す如く、油圧ポンプ63からシーケンスバルブ64と減圧バルブ65へ各々接続させ、該シーケンスバルブ64により前記刈取装置18,脱穀装置3,走行装置10等の各作業部Hへ各々作用可能に通油すると共に、該減圧バルブ65により前記左右の操向クラッチ46と走行ブレーキ47の各作用部Gへ各々作用可能に通油を行い、該油圧ポンプ63からリリーフバルブ66を介して油タンク67へ返油可能に構成させる。
【0036】
このような構成に対し、従来の油圧回路Dとして、図9(b)に示す如く、該油圧ポンプ63から優先分流バルブ68へ接続させ、この優先分流バルブ68によって分流された制御流mを該各作業部Hへ各々作用可能に通油すると共に、この作用時以外は該分流バルブ68の切り替えにより制御流mを余剰流n側へ合流させ、該シーケンスバルブ64を介して該各作用部Gへ各々作用可能に通油を行い、該油圧ポンプ63からリリーフバルブ66を介して油タンク67へ返油可能に構成させる。
【0037】
このように、従来の優先分流バルブ68とシーケンスバルブ64による圧油供給方式に代えて、シーケンスバルブ64と減圧バルブ65による圧油供給方式とすることにより、コスト低減が可能になると共に、応答性を向上させることができる。
【0038】
また、前記と異なり、従来のパワステリリーフバルブ69に比例減圧バルブ70を組合わせた油圧回路Eを、図10に示す如く構成させる。
該油圧回路Eは、方向切替電磁バルブ71から該左右のプッシュシリンダ51を作動可能に接続し、このシリンダ51の2次側からの圧油をパワステリリーフバルブ69へ通油し、このリリーフバルブ69から該比例減圧バルブ70の一方のポートへ接続すると共に、他方のポートへは油圧ポンプ72から通油可能に接続を行い、この比例減圧バルブ70のパイロット70aを該リリーフバルブ69に接続して構成させる。
【0039】
このような油圧構成において、図11に示す如く、該パワステリリーフバルブ69と比例減圧バルブ70をパイロット70aを介して一体的に組合せた複合リリーフバルブRとして形成することにより、パワステリリーフバルブ69のマニュアルレバー69aによる手動操作に、該減圧バルブ70のパイロット圧による遠隔操作を追加し、両操作による該左右のプッシュシリンダ51の作動を容易に可能とすることができる。
【0040】
また、図12に示す如く、前記刈取装置18を昇降させる刈取昇降シリンダ19と刈取昇降切替電磁バルブ73との間にリターンバルブ74を接続し、このリターンバルブ74の外筒74aに内挿したロータリスプール74bに固定するスプール回動軸74cと、刈取装置18の昇降回動軸とを連結することにより、刈取装置18の高さに応じ、該スプール74bの回動によって外筒74aと連通する通油孔eの孔径を絞り下降速度を低速側に可変調節可能に構成させる。
【0041】
このため、従来の如く、刈取装置18の下降に際し通油を固定絞りとしていることにより下降速度が一定となり、特に、刈高さ制御時に1パルスの下げ量が大きなることから一定高さの制御ができ難いということがなく、微少調節による的確な刈高さ制御を行わせることができる。なお、刈取装置18の上昇についてはチェックバルブ74dの押し上げにより通油を絞られることがないから、上昇速度が変化することはない。
【0042】
また、進行方向の左右操向制御を行わせる刈取作業において、図13に示す如く、前記操作席21の後部上方側に、刈取装置18の上端部越しに刈取圃場面を撮像可能なCCDカメラ等による画像入力装置75を装着して設け、この画像入力装置75からの情報に基づいて穀稈の倒伏度合の判定を行う。
【0043】
この倒伏度合の判定は、図14のフローチャートに示す如く、刈取作業時に画像入力装置75により前方の圃場面における未刈穀稈の画像P(図15に示す)を入力し、この入力画像Pにおける分析領域fを適宜に設定し、この分析領域fの輝度の変化を計測して周波数分析を行い、この周波数分析によりパワースペクトル分布g(図16に示す)を得ることができる。
【0044】
このパワースペクトル分布gは中心の小円から斜めに長く分布しており、この分布状態からコントローラ等による演算処理の結果、機体23の進行方向に対し斜め方向に大きく倒伏している状態を示しており、穀稈倒伏における方向と強度の領域を連続的に検出処理することができる。
【0045】
この検出処理の結果、倒伏状態が大きいと評価判定されたときは、この倒伏穀稈の株元は非常に乱れているため、進行方向の左右操向を行う方向制御における感度や修正量等を通常状態より鈍感に設定させることにより、従来の如く、通常状態の感度で方向制御を行うときのように刈取条から脱線する等の不具合を生じることがなく、安定した刈取作業を行うことができる。
【0046】
なお、このような倒伏状態の検出処理については、画像Pによる処理以外に超音波による検出やその他の検出等による処理方法を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】脱穀装置の全体構成と油圧バルブ及びバルブカバーの配置状態を示す正面図。
【図2】脱穀装置の全体構成における扱室,排塵処理室,選別室の状態を示す側面図。
【図3】脱穀装置の全体構成とフィードチェン及びカバー類の開扉状態を示す斜視図。
【図4】コンバインの全体構成と脱穀前カバー及びバルブカバーの配置を示す側面図。
【図5】コンバインの全体構成とフィードチェン及びカバーの開扉状態を示す平面図。
【図6】走行用ミッションケースの伝動構成によるギヤ配列状態を示す正面展開線図。
【図7】プッシュシリンダと刈取昇降シリンダを制御する油圧回路を示すブロック図。
【図8】シーケンスバルブ及びチェックバルブを一体的に形成した状態を示す平面図。
【図9】(a)シーケンスバルブと減圧バルブを組合せた油圧回路を示すブロック図。(b)分流バルブとシーケンスバルブを組合せた油圧回路を示すブロック図。
【図10】パワステリリーフの手動と遠隔操作を切り替える油圧回路を示すブロック図。
【図11】リリーフバルブと比例減圧バルブを一体的に形成した作用状態を示す側面図。
【図12】刈取装置の下降速度を減速調節するリターンバルブの作用状態を示す側面図。
【図13】画像入力装置の装着と作用状態を示すコンバインの側面図。
【図14】画像の倒伏検出処理による方向制御感度の調節手順を示すフローチャート図。
【図15】画像入力装置で撮像した前方の未刈穀稈の状態とその分析領域を示す画像図。
【図16】入力画像の分析領域の周波数分析によるパワースペクトル分布を示す画像図。
【符号の説明】
【0048】
1 フィードチェン
2 脱穀前カバー(第1カバー)
3 脱穀装置
4 扱室
5 穀稈入口漏斗(入口漏斗)
6 油圧バルブ
7 バルブカバー(第2カバー)
8 車台
9 走行クローラ
10 走行装置
18 刈取装置
21 操作席
22 エンジン
24 排塵処理室
25 選別室
31 チェンフレーム
32 伝動継手
35 回動支軸
37 網押え板
F 機体外側面
W エンジン冷却風路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台(8)の下部側に左右一対の走行クローラ(9)を有する走行装置(10)を設け、前記車台(8)上に扱室(4)と排塵処理室(24)と選別室(25)とを有する脱穀装置(3)を設け、該脱穀装置(3)の前方に刈取装置(18)を昇降自在に設け、該刈取装置(18)の一側に操作席(21)を設け、該操作席(21)の下方にエンジン(22)を搭載し、該エンジン(22)からの冷却風を機外へ排風するエンジン冷却風路(W)を扱室(4)の入口漏斗(5)の下側の空間に形成し、該エンジン冷却風路(W)に油圧バルブ(6)を配置し、前記脱穀装置(3)に設けるフィードチェン(1)を脱穀本体側から駆動する伝動継手(32)を設け、該フィードチェン(1)の外側に配置した第1カバー(2)と前記油圧バルブ(6)周辺の機体外側面(F)を覆う第2カバー(7)とをチェンフレーム(31)に一体的に取り付け、前記伝動継手(32)を離脱させてチェンフレーム(31)と一体の第1カバー(2)と第2カバー(7)とを回動支軸(35)を支点としてフィードチェン(1)と共に外側方向へ開放可能な構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項1】
車台(8)の下部側に左右一対の走行クローラ(9)を有する走行装置(10)を設け、前記車台(8)上に扱室(4)と排塵処理室(24)と選別室(25)とを有する脱穀装置(3)を設け、該脱穀装置(3)の前方に刈取装置(18)を昇降自在に設け、該刈取装置(18)の一側に操作席(21)を設け、該操作席(21)の下方にエンジン(22)を搭載し、該エンジン(22)からの冷却風を機外へ排風するエンジン冷却風路(W)を扱室(4)の入口漏斗(5)の下側の空間に形成し、該エンジン冷却風路(W)に油圧バルブ(6)を配置し、前記脱穀装置(3)に設けるフィードチェン(1)を脱穀本体側から駆動する伝動継手(32)を設け、該フィードチェン(1)の外側に配置した第1カバー(2)と前記油圧バルブ(6)周辺の機体外側面(F)を覆う第2カバー(7)とをチェンフレーム(31)に一体的に取り付け、前記伝動継手(32)を離脱させてチェンフレーム(31)と一体の第1カバー(2)と第2カバー(7)とを回動支軸(35)を支点としてフィードチェン(1)と共に外側方向へ開放可能な構成としたことを特徴とするコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−222178(P2007−222178A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117143(P2007−117143)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【分割の表示】特願2001−254478(P2001−254478)の分割
【原出願日】平成13年8月24日(2001.8.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【分割の表示】特願2001−254478(P2001−254478)の分割
【原出願日】平成13年8月24日(2001.8.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]