説明

コンバイン

【課題】持上げ機構76等を簡単に構成できるものでありながら、上方に持上げ可能な排藁チェン34を安定よく支持できるようにしたコンバインを提供するものである。
【解決手段】刈刃装置22を有する刈取装置3と、脱穀装置5と、脱穀装置5の扱胴26に穀稈を供給するフィードチェン6と、フィードチェン6から排藁を受継いで機外に搬出する排藁チェン34と、この排藁チェン34の下面側に伸びる排藁挟持体78と、排藁挟持体78の上方に排藁チェン34を持上げる持上げ機構76とを備えてなるコンバインにおいて、脱穀装置5または排藁チェン34のうちいずれか一方に、他方に摺接して排藁チェン34の昇降をガイドするようにしたガイド体102を設けているものである

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取装置によって圃場の未刈り穀稈を刈取り、刈取った穀稈を脱穀装置によって脱穀して、穀粒を収集するコンバインに係り、より詳しくは、フィードチェンから排藁チェンに排藁を受継いで機外に搬出するコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、刈取装置によって穀稈を刈取り、前記刈取装置からの刈取り穀稈をフィードチェンによって前記脱穀装置に搬送し、前記脱穀装置によって脱穀して穀粒を収集する一方、フィードチェンから排藁チェンに排藁を受継いで機外に搬出するように構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、従来のコンバインにおいては、前記排藁チェンを上方に持上げる持上げ機構を備え、排藁搬送姿勢の前記排藁チェンを上方に持上げて、前記排藁チェンと、この下面側の排藁挟持体との間に詰まった排藁を取除くように構成していた。
【特許文献1】特開2005−87139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、前記排藁チェンの排藁送り始端側に、前記排藁チェンに排藁駆動ベルトを介して駆動力を伝えるための排藁駆動ケースを設けた構造では、前記排藁チェンの排藁送り始端側の重量がその排藁送り終端側の重量よりも重くなった。そのため、前記フィードチェンから排藁を受継ぐ前記排藁チェンの排藁送り始端側で排藁が多く詰ったが、前記持上げ機構によって前記排藁チェンの排藁送り始端側を昇降させて、前記排藁チェンの排藁送り始端側に詰まった排藁を除去する場合、前記排藁駆動ケースの重量、または前記排藁駆動ベルトの張力等が前記排藁チェンに作用して、前記排藁チェンが極めて不安定に支持され、前記持上げ機構等を簡単な構造で軽量且つ低コストに構成できない等の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、前記持上げ機構等を簡単に構成できるものでありながら、上方に持上げ可能な前記排藁チェンを安定よく支持できるようにしたコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、刈刃を有する刈取装置と、脱穀装置と、前記脱穀装置の扱胴に穀稈を供給するフィードチェンと、前記フィードチェンから排藁を受継いで機外に搬出する排藁チェンと、この排藁チェンの下面側に伸びる排藁挟持体と、前記排藁挟持体の上方に前記排藁チェンを持上げる持上げ機構とを備えてなるコンバインにおいて、前記脱穀装置または前記排藁チェンのうちいずれか一方に、他方に摺接して前記排藁チェンの昇降をガイドするようにしたガイド体を設けているものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記排藁チェンの一端側に、その一端側における駆動軸に動力伝達する排藁駆動ケースを備え、前記排藁駆動ケースに前記ガイド体を固着したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のコンバインにおいて、前記ガイド体を棒状部材にて形成し、前記排藁チェンの昇降方向に延長した平面体に前記ガイド体を摺接させるように構成したものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載のコンバインにおいて、前記排藁チェンの駆動力を伝える排藁駆動ベルトを備え、前記排藁駆動ケースの排藁駆動軸に排藁駆動プーリを介して前記排藁駆動ベルトを連結し、前記排藁駆動ケースにテンションアームを取付け、前記テンションアームに支持したテンションローラを介して、前記排藁駆動ベルトを緊張したものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3に記載のコンバインにおいて、前記ガイド体に前記テンションアームを回動可能に取付けたものである。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記テンションアームに、前記排藁駆動ベルトの緊張用のテンションバネを連結し、前記テンションバネの引張り方向が、前記持上げ機構の前記排藁チェンの持上げ方向と略同じ方向になるように構成したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、刈刃を有する刈取装置と、脱穀装置と、前記脱穀装置の扱胴に穀稈を供給するフィードチェンと、前記フィードチェンから排藁を受継いで機外に搬出する排藁チェンと、この排藁チェンの下面側に伸びる排藁挟持体と、前記排藁挟持体の上方に前記排藁チェンを持上げる持上げ機構とを備えてなるコンバインにおいて、前記脱穀装置または前記排藁チェンのうちいずれか一方に、他方に摺接して前記排藁チェンの昇降をガイドするようにしたガイド体を設けているものであるから、前記ガイド体によって、上方に持上げ可能な前記排藁チェンを安定よく支持でき、前記持上げ機構等を簡単に構成できるものである。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、前記排藁チェンの一端側に、その一端側における駆動軸に動力伝達する排藁駆動ケースを備え、前記排藁駆動ケースに前記ガイド体を固着したものであるから、重量物である前記排藁駆動ケース側の前記排藁チェンを前記ガイド体にて安定よく支持でき、例えば排藁が詰り易い前記排藁チェンの排藁送り始端側に前記排藁駆動ケースを配置する構造であっても、前記排藁チェンの排藁送り始端側を簡単に持ち上げて、前記排藁チェンの排藁送り始端側に詰まった排藁を簡単に除去できるものである。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、前記ガイド体を棒状部材にて形成し、前記排藁チェンの昇降方向に延長した平面体に前記ガイド体を摺接させるように構成したものであるから、前記排藁チェンが排藁を搬送していても、また前記排藁チェンが上方に持上げられていても、前記ガイド体と前記平面体とによって前記排藁チェンを安定よく支持できるものである。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、前記排藁チェンの駆動力を伝える排藁駆動ベルトを備え、前記排藁駆動ケースの排藁駆動軸に排藁駆動プーリを介して前記排藁駆動ベルトを連結し、前記排藁駆動ケースにテンションアームを取付け、前記テンションアームに支持したテンションローラを介して、前記排藁駆動ベルトを緊張したものであるから、前記排藁チェンを持上げる場合、前記排藁チェンの持上げ方向に前記テンションアームの支点軸を移動でき、前記排藁チェンを持上げることによって前記排藁駆動ベルトの張力が増大するのを防いで、前記排藁チェンの持上げ操作力を簡単に軽減できるものである。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、前記ガイド体に前記テンションアームを回動可能に取付けたものであるから、前記テンションアームの支点軸を前記ガイド体にて形成でき、前記テンションアームの支点軸を特別に設ける必要がなく、前記テンションアームの取付け構造を簡単に構成できるものである。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、前記テンションアームに、前記排藁駆動ベルトの緊張用のテンションバネを連結し、前記テンションバネの引張り方向が、前記持上げ機構の前記排藁チェンの持上げ方向と略同じ方向になるように構成したものであるから、前記排藁チェンを持上げる場合、前記排藁チェンの持上げ方向に前記テンションアームが移動することにより、前記テンションバネを縮小してこの引張り力を低下させることができ、前記排藁チェンを持上げることによって前記排藁駆動ベルトの張力を低減でき、前記排藁チェンの持上げ操作力を簡単に軽減できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図である。図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0019】
本実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取装置3が単動式の昇降用油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転部10が設けられている。
【0020】
運転部10には、オペレータが搭乗するステップ11と、ステップ11上のハンドルコラム12に設けた丸ハンドル形の操縦ハンドル13と、操縦ハンドル13の後方に設けた運転座席14と、運転座席14の左側方のレバーコラム15に設けた主変速レバー16、及び副変速レバー17、及び脱穀クラッチレバー18、及び刈取クラッチレバー19とを配置されている。運転座席14の下方には、動力源としてのエンジン20が配置されている。
【0021】
刈取装置3の刈取フレーム21の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置22が設けられている。刈取フレーム21の前方には、圃場の未刈り穀稈を引起す3条分の穀稈引起装置23が配置されている。穀稈引起装置23とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置22によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置24が配置されている。なお、穀稈引起装置13の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する分草体25が突設されている。エンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取ることになる。
【0022】
脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴26と、扱胴26の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤27及び唐箕ファン28と、扱胴26の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴29と、揺動選別盤27の後部の排塵を排出する排塵ファン30とを備えている。なお、扱胴16の回転軸はフィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置24によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が扱室16内に搬入されて扱胴17にて脱穀されることになる。
【0023】
揺動選別盤27の下方側には、揺動選別盤27にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ31と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ32とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ31,32は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ31、二番コンベヤ32の順で、側面視において走行クローラ2,2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0024】
揺動選別盤27は、扱胴26の下方に張設された受網から漏下した脱穀物が、図示しないフィードパン及びチャフシーブ等によって搖動選別(比重選別)されるように構成している。なお、揺動選別盤27のグレンシーブ(図示省略)から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン27からの選別風によって除去され、一番コンベヤ31に落下することになる。
【0025】
一番コンベヤ31のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀筒33が連通接続されている。一番コンベヤ31から取出された穀粒は、揚穀筒33を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集されることになる。なお、二番コンベヤ32のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀筒33と交差して前後方向に延びる還元筒(図示省略)を介して、揺動選別盤27のフィードパンの上面側に連通接続され、二番物を揺動選別盤27のフィードパンの上面側に戻して再選別するように構成している。
【0026】
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン34が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン34に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ35にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出されることになる。
【0027】
次に、図5を参照しながら、本発明の第1実施形態のコンバインの動力伝達系統について説明する。
【0028】
エンジン20の動力は、該エンジン20に突設された出力軸41から、左右両走行クローラ2を駆動させる走行ミッション装置42、脱穀装置5及び刈取装置3、並びに排出オーガ8という3つの方向に分岐して伝達される。
【0029】
走行ミッション装置42は、油圧ポンプ及び油圧モータからなる走行用HST式油圧無段変速機(図示せず)と、同じく油圧ポンプ及び油圧モータからなる旋回用HST式油圧無段変速機(図示せず)とを備えている。エンジン11の出力軸41から走行ミッション装置42に向かう分岐動力は、走行用HST式油圧無段変速機の走行用ポンプの入力側に伝達され、この走行用ポンプの入力側から旋回用HST式油圧無段変速機の旋回用ポンプの入力側に動力伝達される。
【0030】
そして、運転部10に設けられた操縦ハンドル13の操作量に応じて油圧ポンプにおける回転斜板の傾斜角度を調節することにより、油圧モータ(図示せず)への圧油の吐出方向及び吐出量が変更され、走行用又は旋回用油圧モータの出力側の回転方向及び回転数(左右の走行クローラ2の駆動速度及び駆動方向)が任意に調節される。
【0031】
エンジン11の出力軸41から排出オーガ8への分岐動力は、タンク入力軸43を介して、穀粒タンク7内の底コンベヤ44及び排出オーガ8における縦コンベヤ45に動力伝達され、次いで、受け継ぎスクリューを介して、排出オーガ8における横オーガ筒内の排出コンベヤ46に動力伝達される。各コンベヤ44,45,46によって穀粒タンク7内の穀粒がトラックの荷台またはコンテナ等に搬出されることになる。
【0032】
エンジン11の出力軸41から脱穀装置5及び刈取前処理装置3に向かう分岐動力は、脱穀クラッチ47を介して唐箕ファン28の唐箕軸48に伝達され、この唐箕軸48から2つの方向に分岐して動力伝達される。唐箕軸48からの動力の一方は、一番コンベヤ31、及び二番コンベヤ32、及び排塵ファン30、並びに排藁カッタ35に動力伝達される。唐箕軸48からの他の動力は、脱穀入力軸49を介して刈取装置3、扱胴26、及び処理胴29という更に3つの方向に分岐して伝達される。
【0033】
脱穀入力軸49から刈取装置3への分岐動力は、刈取変速機構50に伝達され、その一部が揺動駆動軸51及びフィードチェン駆動スプロケット52を経て、フィードチェン6の前端に動力伝達される。残りの分岐動力は揺動駆動軸51から刈取クラッチ53を介して刈取入力1軸54に伝達され、刈取入力1軸54から刈取装置3の各部に動力伝達される。なお、揺動駆動軸51には揺動選別盤27の前端側を連結し、揺動駆動軸51によって揺動選別盤27を前後方向に揺動して、扱胴26にて脱粒された穀粒を比重選別する。
【0034】
本実施形態では、刈取入力1軸54に伝達された動力は、縦伝動用の刈取入力2軸55を介して横伝動用の刈取入力3軸56に伝達され、刈刃装置22と穀稈引起装置23とが刈取入力3軸56によって駆動されることになる。また、刈取入力1軸54に伝達された動力は、縦搬送支点軸57を経由して、穀稈搬送装置24の縦搬送チェン、及び上部搬送タイン、及び穂先搬送タイン(共に図示せず)に伝達される。
【0035】
一方、脱穀入力軸49から扱胴17に向かう分岐動力は、扱胴26を軸支した扱胴軸58に伝達される。扱胴軸58の後端側の動力は、排藁駆動軸59を介して排藁チェン37に伝達される。脱穀入力軸49からの動力によって扱胴26及び排藁チェン37が駆動されることになる。
【0036】
なお、図3に示されるように、揺動駆動軸51の一側端部(左側端部)に減速ギヤ61,62を介して減速軸63を連結し、減速軸63にフィードチェンクラッチ64を介してクラッチ軸65を連結し、クラッチ軸65に継ぎ手軸66を介してフィードチェン駆動スプロケット52を連結している。
【0037】
次に、図3乃至図8を参照しながら、本発明の実施形態の排藁チェン34の取付け構造について説明する。図4乃至図7に示されるように、排藁チェン34の前端側(送り始端側)に排藁駆動ケース73を配置し、排藁チェン34の後端側(送り終端側)に伝動ケース74を配置している。排藁駆動ケース73は、脱穀装置5の四番樋の上方に設けた四番上面フレーム75に、持上げ機構76を介して連結し、四番上面フレーム75に排藁駆動ケース73を昇降可能に吊下げ支持している。また、伝動ケース74は、排藁カッタ35の上方に設けた脱穀装置5のカッタ上面フレーム77に回動可能に連結している。
【0038】
即ち、伝動ケース74を支点にして、排藁チェン34の前端側及び排藁駆動ケース73が上下方向に移動可能に構成している。したがって、持上げ機構76の操作により、排藁チェン34の下面側に伸びる排藁挟持体78(排藁挟扼杆)に対して、排藁チェン34の前端側及び排藁駆動ケース73が上方に移動することになる。なお、排藁挟持体78は排藁挟持バネ79によって排藁チェン34の下面側に弾圧され、排藁チェン34の下面側と排藁挟持体78との間に、フィードチェン6から排藁を受継いで挟持搬送する。
【0039】
また、伝動ケース74は、排藁チェン34の送り終端側のチェンテンションローラ34aより前方に配置し、チェンテンションローラ34aより前方の排藁チェン34から後述する補助搬送タイン108に伝動ケース74を介して駆動力を伝えるように構成している。したがって、チェンテンションローラ34aを簡単に組付けることができる。なお、カッタ上面フレーム77に排藁チェン34の送り終端側を支持する構造として、排藁チェン34の送り終端側の適宜箇所に支持ブラケットを設け、その支持ブラケットを介してカッタ上面フレーム77に排藁チェン34を回動可能に連結することも行える。
【0040】
図3乃至図7に示されるように、扱胴26を内臓した扱室83の後側の出口側板84から後方に扱胴軸58の後端側を突出し、扱胴軸58の後端側に扱胴出力プーリ85を固着する。また、排藁駆動ケース73に軸支した排藁駆動軸59に排藁駆動プーリ86を固着する。扱胴出力プーリ85と排藁駆動プーリ86との間に、テンションローラ87及びアイドルローラ88を介して排藁駆動ベルト89を張設している。扱胴26と連動して排藁駆動ベルト89を介して排藁チェン34を駆動することになる。
【0041】
なお、テンションローラ87は、扱胴軸58に回動可能に被嵌したテンションアーム90の一端側に軸支されている。脱穀装置5の固定部にテンションアーム90の他端側をテンションバネ91によって連結し、排藁駆動ベルト89に緊張力を付与している。また、脱穀装置5の出口側板84に支持ブラケット92を締結し、支持ブラケット92にアイドルローラ88を回転自在に軸支している。
【0042】
図7及び図8に示されるように、上述した持上げ機構76は、作業者が排藁チェン34を手動で持ち上げ操作する持上げレバー93と、持上げレバー93に固着した持上げカム94とを有する。排藁駆動ケース73のケース取付け座95に軸ブラケット96を介して昇降軸97を立設し、昇降軸97の上端側に持上げレバー93の基端部を回動可能に軸支する。昇降軸97に昇降ガイドボス98を上下動(スライド)可能に被嵌し、昇降ガイドボス98の上端面にカムフロア板体99を固着する。カムフロア板体99の平坦な上面に持上げカム94を上方から当接している。
【0043】
また、昇降ガイドボス98及びカムフロア板体99は、四番上面フレーム75に設けた支持アーム100にボルト101にて締結している。したがって、図8の仮想線位置から実線位置に持上げレバー93を回動操作した場合、持上げカム94が図8の仮想線位置から実線位置に回動し、昇降ガイドボス98の案内によって昇降軸97が上方に引き上げられ、ケース取付け座95を上方に移動する。即ち、ケース取付け座95及び排藁駆動ケース73と共に、排藁チェン34の前端側が排藁挟持体78に対して上方に移動することになる。
【0044】
図5、図7及び図8に示されるように、ケース取付け座95に一端側を熔接にて一体的に固着した丸棒状部材製の昇降ガイド体102と、脱穀装置5の出口側板84に締結した支持ブラケット92に熔接にて一体的に固着した板金製の平面体形の受圧ブラケット体103とを備えている。受圧ブラケット体103には、昇降ガイド体102の他端側を当接する水平面部103aと垂直面部103bとを形成している。
【0045】
即ち、受圧ブラケット体103の水平面部103aに昇降ガイド体102が当接している場合、排藁挟持体78は排藁挟持バネ79によって排藁チェン34の下面側に弾圧され、排藁チェン34の下面側と排藁挟持体78との間に、フィードチェン6から排藁を受継いで挟持搬送することになる。
【0046】
一方、受圧ブラケット体103の垂直面部103bに昇降ガイド体102が当接し、排藁駆動ベルト89の張力に抗して排藁チェン34が所定姿勢で支持されることになる。例えば、排藁駆動ベルト89の張力によって昇降軸97が軸芯線と交叉する方向に引張られた場合、昇降ガイドボス98と昇降軸97との間にこじれが発生し、昇降ガイドボス98に対して上下動させる昇降軸97のスライド抵抗が増大し、持上げレバー93の回動操作負荷が大きくなる不具合がある。これに対して、本実施形態では、垂直面部103bと昇降ガイド体102との当接によって、排藁駆動ベルト89の張力によって昇降軸97が軸芯線と交叉する方向に引張られることがないから、排藁駆動ベルト89の張力によって発生する昇降軸97のこじれを防止し、昇降ガイドボス98に対して上下動する昇降軸97のスライド抵抗を低減し、排藁挟持体78に対して排藁チェン34の前端側を上方に持上げるための持上げレバー93の回動操作力を軽減できる。
【0047】
上記の構成により、収穫作業中または収穫作業後、排藁チェン34と排藁挟持体78との間に排藁が詰ったり挟まった場合、作業者が持上げレバー93を回動操作して、排藁チェン34の後端側の伝動ケース74を支点にして、排藁チェン34の前端側を上方に移動させ、排藁挟持体78に対して排藁チェン34の前端側を上方に持上げることにより、排藁チェン34と排藁挟持体78との間に詰ったり挟まっている排藁を除去できる。
【0048】
上記の記載及び図7、図8から明らかなように、刈刃装置22を有する刈取装置3と、脱穀装置5と、脱穀装置5の扱胴26に穀稈を供給するフィードチェン6と、フィードチェン6から排藁を受継いで機外に搬出する排藁チェン34と、この排藁チェン34の下面側に伸びる排藁挟持体78と、排藁挟持体78の上方に排藁チェン34を持上げる持上げ機構76とを備えてなるコンバインにおいて、脱穀装置5または排藁チェン34のうちいずれか一方に、他方に摺接して排藁チェン34の昇降をガイドするようにしたガイド体102を設けているものであるから、ガイド体102によって、上方に持上げ可能な排藁チェン34を安定よく支持でき、持上げ機構76等を簡単に構成できる。
【0049】
上記の記載及び図7、図8から明らかなように、排藁チェン34の一端側に、その一端側における駆動軸59に動力伝達する排藁駆動ケース73を備え、排藁駆動ケース73にケース取付け座95を介してガイド体102を固着したものであるから、重量物である排藁駆動ケース73側の排藁チェン34をガイド体102にて安定よく支持でき、例えば排藁が詰り易い排藁チェン34の排藁送り始端側に排藁駆動ケース73を配置する構造であっても、排藁チェン34の排藁送り始端側を簡単に持ち上げて、排藁チェン34の排藁送り始端側に詰まった排藁を簡単に除去できる。
【0050】
上記の記載及び図7、図8から明らかなように、ガイド体102を棒状部材にて形成し、排藁チェン34の昇降方向に延長した平面体としての受圧ブラケット体103にガイド体102を摺接させるように構成したものであるから、排藁チェン34が排藁を搬送していても、また排藁チェン34が上方に持上げられていても、排藁駆動ベルト89の張力等に抗して、ガイド体102と受圧ブラケット体103とによって排藁チェン34を安定よく支持できる。
【0051】
図4及び図6に示されるように、伝動ケース74に補助搬送タイン108を配置し、排藁チェン34の穂先側で排藁チェン34に略平行に補助搬送タイン108を設け、排藁チェン34と補助搬送タイン108とによって排藁を搬送する。一方、脱穀装置5の左側面側に、横移動支点(縦軸)104を介して、フィードチェン6の後端側(送り終端側)を回動可能に軸支し、フィードチェン6の前端側を横移動支点104回りに横方向に移動する構造において、横移動支点104回りに回動するフィードチェンフレーム105に脱穀装置5の左側面板106を固着し、フィードチェン6と一体的に左側面板106を横方向に移動して脱穀装置5の左側面側を開放するように構成する。
【0052】
また、脱穀装置5の四番樋109に排藁補助搬送ガイド棒110の後端側を固着し、補助搬送タイン108の下面側に排藁補助搬送ガイド棒110を配置する。補助搬送タイン108の下面側と排藁補助搬送ガイド棒110の間に排藁の穂先側を取り込んで搬送することになる。一方、左側面板106の貫通孔にグロメット等のスリット付ゴムキャップ107を嵌着する。左側面板106にゴムキャップ107を介して排藁補助搬送ガイド棒110の前端側を貫通させ、フィードチェン6から送られてくる排藁の穂先側が排藁補助搬送ガイド棒110の下側に入り込むのを防止している。
【0053】
したがって、排藁の穂先側が排藁補助搬送ガイド棒110の下側に入り込んで、補助搬送タイン108の下面側と排藁補助搬送ガイド棒110の間で搬送する排藁の搬送姿勢が乱れるのを防止できる。また、フィードチェン6と共に左側面板106を横移動して脱穀装置5の左側面側を大きく開放でき、揺動選別盤27等のメンテナンスを簡単に実行できる。しかも、排藁補助搬送ガイド棒110の前端側を貫通させる左側面板106の貫通孔をゴムキャップ107によって閉塞したから、その左側面板106の貫通孔から塵等が吹き出るのを防止できる。且つ、排藁補助搬送ガイド棒110の前端側を締結する構成に比べて、排藁補助搬送ガイド棒110の前端側を締結する部品を削減できる。
【0054】
次に、図9を参照しながら、本発明の実施形態のテンションローラ87の取付け構造について説明する。上述した排藁駆動軸59と丸棒状の昇降ガイド体102とを略平行に延設する。昇降ガイド体102にテンションアーム111を回動可能に軸支する。テンションアーム111の一端側にテンションローラ87を回動可能に軸支する。支持ブラケット92に設けたバネ座112と、テンションアーム111の他端側とに、テンションバネ113を連結する。受圧ブラケット体103の案内によって昇降ガイド体102が昇降する方向、即ち、排藁駆動軸59及び排藁駆動ケース73が上下に移動する方向と、テンションバネ113の引張り方向とが、略同一方向になるように形成する。
【0055】
したがって、テンションアーム111の支点軸として昇降ガイド体102を利用でき、テンションアーム111の取付け構造を簡単に構成できる。また、排藁チェン34及び排藁駆動ケース73を持上げる方向に、テンションアーム111の支点軸としての昇降ガイド体102を移動でき、排藁駆動ベルト89の張力を殆ど増大させることなく、排藁チェン34の前端側を持上げることができる。一方、排藁チェン34及び排藁駆動ケース73を持上げる方向にテンションバネ113が縮小することになる。テンションバネ113のバネ力が排藁チェン34の前端側を持上げる力として作用する。
【0056】
上記の記載及び図9から明らかなように、排藁チェン34の駆動力を伝える排藁駆動ベルト89を備え、排藁駆動ケース73の排藁駆動軸59に排藁駆動プーリ86を介して排藁駆動ベルト89を連結し、排藁駆動ケース73にテンションアーム111を取付け、テンションアーム111に支持したテンションローラ87を介して、排藁駆動ベルト89を緊張したものであるから、排藁チェン34を持上げる場合、排藁チェン34の持上げ方向にテンションアーム111の支点軸としてのガイド体102を移動でき、排藁チェン34を持上げることによって排藁駆動ベルト89の張力が増大するのを防いで、排藁チェン34の持上げ操作力を簡単に軽減できる。
【0057】
上記の記載及び図9から明らかなように、ガイド体102にテンションアーム111を回動可能に取付けたものであるから、テンションアーム111の支点軸をガイド体102にて形成でき、テンションアーム111の支点軸を特別に設ける必要がなく、テンションアーム111の取付け構造を簡単に構成できる。
【0058】
上記の記載及び図9から明らかなように、前記テンションアーム111に、前記排藁駆動ベルト89の緊張用のテンションバネ113を連結し、前記テンションバネ113の引張り方向が、前記持上げ機構76の前記排藁チェン34の持上げ方向と略同じ方向になるように構成したものであるから、前記排藁チェン34を持上げる場合、前記排藁チェン34の持上げ方向に前記テンションアーム111が移動することにより、前記テンションバネ113を縮小してこの引張り力を低下させることができ、前記排藁チェン34を持上げることによって前記排藁駆動ベルト89の張力を低減でき、前記排藁チェン34の持上げ操作力を簡単に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】本発明の実施形態のコンバインの動力伝達系統図である。
【図4】排藁チェンの取付け構造を示す平面図である。
【図5】排藁チェンの側面図である。
【図6】排藁チェンの正面図である。
【図7】後方斜め上方からの排藁チェンの斜視図である。
【図8】持上げ機構の正面図である。
【図9】本発明の実施形態のテンションアームの背面図である。
【符号の説明】
【0060】
3 刈取装置
5 脱穀装置
6 フィードチェン
22 刈刃装置
26 扱胴
34 排藁チェン
59 排藁駆動軸
73 排藁駆動ケース
76 持上げ機構
78 排藁挟持体
86 排藁駆動プーリ
87 テンションローラ
89 排藁駆動ベルト
102 昇降ガイド体
103 受圧ブラケット体(平面体)
111 テンションアーム
113 テンションバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈刃を有する刈取装置と、脱穀装置と、前記脱穀装置の扱胴に穀稈を供給するフィードチェンと、前記フィードチェンから排藁を受継いで機外に搬出する排藁チェンと、この排藁チェンの下面側に伸びる排藁挟持体と、前記排藁挟持体の上方に前記排藁チェンを持上げる持上げ機構とを備えてなるコンバインにおいて、
前記脱穀装置または前記排藁チェンのうちいずれか一方に、他方に摺接して前記排藁チェンの昇降をガイドするようにしたガイド体を設けていることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記排藁チェンの一端側に、その一端側における駆動軸に動力伝達する排藁駆動ケースを備え、前記排藁駆動ケースに前記ガイド体を固着したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ガイド体を棒状部材にて形成し、前記排藁チェンの昇降方向に延長した平面体に前記ガイド体を摺接させるように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記排藁チェンの駆動力を伝える排藁駆動ベルトを備え、前記排藁駆動ケースの排藁駆動軸に排藁駆動プーリを介して前記排藁駆動ベルトを連結し、前記排藁駆動ケースにテンションアームを取付け、前記テンションアームに支持したテンションローラを介して、前記排藁駆動ベルトを緊張したことを特徴とする請求項1〜3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記ガイド体に前記テンションアームを回動可能に取付けたことを特徴とする請求項1〜3に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記テンションアームに、前記排藁駆動ベルトの緊張用のテンションバネを連結し、前記テンションバネの引張り方向が、前記持上げ機構の前記排藁チェンの持上げ方向と略同じ方向になるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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