説明

コンバイン

【課題】穀稈引起ケースと引起しギヤケースの組立と分解作業等を簡単にできるコンバインを提供する。
【解決手段】走行機体の前部の刈取前処理装置には穀稈引起装置を備え、前記穀稈引起装置は、前記走行機体の進行方向と交差する幅方向に適宜間隔で配置された複数の穀稈引起ケースと、前記穀稈引起ケースに駆動力を伝える引起し駆動パイプと、前記穀稈引起ケースと前記引起し駆動パイプとを連結する引起しギヤケースとを有するコンバインにおいて、前記引起しギヤケースには、前記引起し駆動パイプの引起し伝動軸にスプラインを介して被嵌させる主動ベベルギヤを配置する第1軸孔と、前記穀稈引起ケースの引起し入力軸にスプラインを介して被嵌させる従動ベベルギヤを配置する第2軸孔とが形成され、ベアリング軸受をそれぞれ被嵌した前記主動ベベルギヤと前記従動ベベルギヤが、前記第1軸孔と前記第2軸孔の各ベアリング受け部に着脱可能に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前部に設けられた刈取前処理装置に、圃場に植設された未刈穀稈を引き起こすための穀稈引起装置が備えられたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインの走行機体には、その前部に設けられた刈取前処理装置に、走行機体の進行方向と交差する幅方向(横幅方向)に沿って並列配置された複数個の横回し型穀稈引起ケースを有する穀稈引起装置が備えられている。そして、各穀稈引起ケースには、その作用側の下部から横一側上部にかけての外周側部を外向きの突出姿勢で回行する引起タインが備えられている。また、前記穀稈引起装置は、前記走行機体の進行方向と交差する幅方向に沿って適宜間隔で配置された複数の穀稈引起ケースと、前記穀稈引起ケースに駆動力を伝える引起し駆動パイプと、前記穀稈引起ケースと前記引起し駆動パイプとを連結するための引起しギヤケースとを有していた。
【特許文献1】特開2003−79220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記引起しギヤケースは、前記穀稈引起ケースの引起し入力軸と、前記引起し駆動パイプの引起し伝動軸を前記引起し入力軸に連結させる一対のベベルギヤとを内設し、前記引起し入力軸及びベベルギヤ等を前記引起しギヤケースの仕組んだ状態で、当該引起しギヤケースを前記引起し駆動パイプに組付けた後、前記穀稈引起ケースを前記引起しギヤケースに組付けていたから、前記引起しギヤケースと前記ベベルギヤだけを簡単にユニット構成できなかった。また、前記引起しギヤケースは、前記引起し駆動パイプ及び前記穀稈引起ケースに、これらの軸芯線と交叉する横方向からボルトを用いて締結していたから、前記穀稈引起ケース等の組付け時の位置決めが面倒であった。前記穀稈引起ケース及び前記引起しギヤケース等の組立作業または分解作業等を簡単にできない問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、上記の問題を解消し、前記穀稈引起ケース及び前記引起しギヤケース等の組立作業または分解作業等を簡単にできるようにしたコンバインを提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を達成するため、請求項1の発明は、走行機体の前部に設けられた刈取前処理装置には穀稈引起装置が備えられ、前記穀稈引起装置は、前記走行機体の進行方向と交差する幅方向に沿って適宜間隔で配置された複数の穀稈引起ケースと、前記穀稈引起ケースに駆動力を伝える引起し駆動パイプと、前記穀稈引起ケースと前記引起し駆動パイプとを連結するための引起しギヤケースとを有しているコンバインにおいて、前記引起しギヤケースには、前記引起し駆動パイプの引起し伝動軸にスプラインを介して被嵌させる主動ベベルギヤを配置する第1軸孔と、前記穀稈引起ケースの引起し入力軸にスプラインを介して被嵌させる従動ベベルギヤを配置する第2軸孔とが形成され、ベアリング軸受をそれぞれ被嵌した前記主動ベベルギヤ及び前記従動ベベルギヤが、前記第1軸孔及び前記第2軸孔の各ベアリング受け部に着脱可能にそれぞれ配置されているものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記引起しギヤケースには、前記穀稈引起ケースの引起し入力軸を挿入するための前記第2軸孔が貫通状態に形成され、前記従動ベベルギヤは、前記引起し入力軸を挿入する側と反対の前記第2軸孔の一端側の開口部を介して、前記第2軸孔のベアリング受け部に着脱可能に構成されているものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記第1軸孔及び前記第2軸孔の各ベアリング受け部には、前記主動ベベルギヤ及び前記従動ベベルギヤが、1つのベアリング軸受を介して片持ち状態にそれぞれ配置されているものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、走行機体の前部に設けられた刈取前処理装置には穀稈引起装置が備えられ、前記穀稈引起装置は、前記走行機体の進行方向と交差する幅方向に沿って適宜間隔で配置された複数の穀稈引起ケースと、前記穀稈引起ケースに駆動力を伝える引起し駆動パイプと、前記穀稈引起ケースと前記引起し駆動パイプとを連結するための引起しギヤケースとを有しているコンバインにおいて、前記引起しギヤケースには、前記引起し駆動パイプの引起し伝動軸にスプラインを介して被嵌させる主動ベベルギヤを配置する第1軸孔と、前記穀稈引起ケースの引起し入力軸にスプラインを介して被嵌させる従動ベベルギヤを配置する第2軸孔とが形成され、ベアリング軸受をそれぞれ被嵌した前記主動ベベルギヤ及び前記従動ベベルギヤが、前記第1軸孔及び前記第2軸孔の各ベアリング受け部に着脱可能にそれぞれ配置されているものであるから、前記引起しギヤケースと前記ベベルギヤだけを簡単にユニット構成でき、前記穀稈引起ケース及び前記引起しギヤケース等の組立作業または分解作業等を簡単にできるものである。
【0009】
請求項2の発明によれば、前記引起しギヤケースには、前記穀稈引起ケースの引起し入力軸を挿入するための前記第2軸孔が貫通状態に形成され、前記従動ベベルギヤは、前記引起し入力軸を挿入する側と反対の前記第2軸孔の一端側の開口部を介して、前記第2軸孔のベアリング受け部に着脱可能に構成されているものであるから、前記引起し伝動軸の端部と前記引起し入力軸の端部とを付き合わせる構造に比べ、ユニット構成した前記引起しギヤケースの外形寸法を前記引起し入力軸の軸芯方向にコンパクトに形成できるものである。
【0010】
請求項3の発明によれば、前記第1軸孔及び前記第2軸孔の各ベアリング受け部には、前記主動ベベルギヤ及び前記従動ベベルギヤが、1つのベアリング軸受を介して片持ち状態にそれぞれ配置されているものであるから、前記主動ベベルギヤ及び前記従動ベベルギヤの軸芯方向の長さを短く形成でき、ユニット構成した前記引起しギヤケースをコンパクトに且つ軽量に形成できるものである。また、引起しギヤケースから突出する軸がないから、引起しギヤケースをコンパクトで取扱い易いユニット構造に構成できる。且つ、引起しギヤケースのユニット構造と、引起し駆動パイプのユニット構造と、穀稈引起ケースのユニット構造とが、それぞれ各別に仕組まれているから、組立作業または分解作業等を簡単に行うことができる。引起しギヤケースのユニット構造と、引起し駆動パイプのユニット構造と、穀稈引起ケースのユニット構造とをそれぞれ組み立てた後で、製造工場に搬入して組み立てることができ、製造工場における組立ラインを従来よりも短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図9)に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図、図3はコンバインの正面図、図4は刈取前処理装置の平面図、図5は刈取前処理装置の側面図、図6は刈取前処理装置の動力伝達系統を示すスケルトン図、図7は中央穀稈引起ケースの内部を示す概略正面図、図8は中央穀稈引起ケースと左穀稈引起ケースとを後方から見た概略斜視図、図9は中央穀稈引起ケースと左穀稈引起ケースとの概略平面図である。なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向と交差する方向を横方向と称する。
【0012】
はじめに、図1〜図3を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。
【0013】
本実施形態における3条刈り用のコンバインは、左右一対の走行クローラ2,2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取前処理装置3が単動式の油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェーン6付きの脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。穀粒タンク7は、走行機体1の後部に設けられた縦軸(実施形態では排出オーガ8の縦オーガ筒9、図1及び図2参照)回りに水平回動可能に構成されている。刈取前処理装置3と穀粒タンク7との間には、操向レバーや運転座席等を有する運転部10が設けられている。運転部10の下方には、動力源としてのエンジン11が配置されている。刈取前処理装置3にて刈り取りられた刈取穀稈はフィードチェーン6に受け継ぎ搬送され、脱穀装置5にて脱穀処理される。
【0014】
脱穀装置5における扱室の下方には、扱網やチャフシーブ等による搖動選別を行うための揺動選別機構(図示せず)と、唐箕ファンによる風選別を行うための風選別機構(図示せず)が配置されている。これら両選別機構にて選別されて一番受け樋(図示せず)に集められた穀粒は、一番コンベヤ及び揚穀コンベヤ(図示せず)を介して穀粒タンク7に集積される。穀粒タンク7内の一番物は排出オーガ8を介して機外に搬出される。
【0015】
なお、フィードチェーン6の後端から排稈チェーン18(図2参照)に受け継がれた排稈は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は排稈カッタ(図示せず)にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0016】
次に、図4及び図5を参照しながら、刈取前処理装置の構成について説明する。
【0017】
刈取前処理装置3は、脱穀装置5の前方に位置する刈取架台(図示せず)に対して回動可能に軸支された横長の刈取入力パイプ35(図1、図4及び図5参照)回りに上下回動可能に構成されている。刈取入力パイプ35の中途部には、前方斜め下向きに延びる縦伝動パイプ36が設けられている。該縦伝動パイプ36の中途部と走行機体1の前端部とが、単動式の油圧シリンダ4を介して連結されている。
【0018】
縦伝動パイプ36の先端部(下端部)には、横長の横伝動パイプ37が設けられている。該横伝動パイプ37には、前向きに突出する4本の刈取フレーム38が横伝動パイプ37の長手方向に沿って適宜間隔で並設されている。該刈取フレーム38群の下方には、バリカン式の刈刃装置12が設けられている。各刈取フレーム38の先端部には分草体15が突設されている。
【0019】
また、横伝動パイプ37には、刈り取り条数に合わせて3つの支持パイプとしての中及び左及び右の引起し駆動パイプ39a,39b,39cが前方斜め上向きに延びるように立設されている。当該中及び左及び右の引起し駆動パイプ39a,39b,39c群は、横伝動パイプ37の長手方向(走行機体1の横幅方向)に沿って適宜間隔で並んでいる。中及び左及び右の引起し駆動パイプ39a,39b,39cの各先端部には、圃場に植立した未刈穀稈を引き起こすための穀稈引起装置13が取り付けられている。本実施形態では、刈取前処理装置3の前部に3条分の穀稈引起装置13が備えられている。穀稈引起装置13とフィードチェーン6の前端部との間には、穀稈搬送装置14が配置されている。
【0020】
穀稈引起装置13は、分草体15を介して取り込んだ未刈穀稈を起立させる引起タイン21を有する横回し型穀稈引起ケース22と、これら各穀稈引起ケース22の後方下部に配置されたスターホイル23及び掻き込みベルト24により構成されている。スターホイル23及び掻き込みベルト24は、これらの組に対応する引起タイン21にて引き起こされた未刈穀稈の根元部を後方に掻き込むためのものである。これらスターホイル23及び掻き込みベルト24にて掻き込まれた未刈穀稈の根元部がバリカン式の刈刃装置12にて切断される。
【0021】
穀稈搬送装置14は、右2条分の刈取穀稈を左斜め後方に搬送する右下部搬送チェーン25と、左1条分の刈取穀稈を右斜め後方に搬送してその根元部を右下部搬送チェーン25送り終端位置近傍に合流させる左下部搬送チェーン27と、左上部搬送タイン28と、右下部搬送チェーン27の送り終端位置近傍にて合流した3条分の刈取穀稈の根元部をフィードチェーン6に受け継ぎ搬送するための縦搬送チェーン30と、左上部搬送タイン28の送り終端位置近傍にて合流した3条分の刈取穀稈の穂先部を脱穀装置5に搬送する縦搬送タイン31とにより構成されている。縦搬送チェーン30に送られた3条分の刈取穀稈の根元部は、その後フィードチェーン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この刈取穀稈の穂先部が脱穀装置5における扱室内の扱胴17にて脱穀される。
【0022】
次に、図6を参照しながら、コンバインの動力伝達系統について説明する。
【0023】
エンジン11から刈取前処理装置3に向けての動力は、扱胴入力軸や刈取変速機構(いずれも図示せず)及び刈取入力プーリ40等を介して、まず刈取入力パイプ35に内装された刈取入力軸41に伝達される。刈取入力軸41に伝達された動力は、縦伝動パイプ36内の縦伝動軸42を介して横伝動パイプ37内の横伝動軸43に伝達され、次いで、横伝動軸43から、中及び左及び右の引起し駆動パイプ39a,39b,39cに内装された中及び左及び右の引起し伝動軸44a,44b,44cと、刈刃駆動軸45とに動力伝達される。中及び左及び右の引起し伝動軸44a,44b,44cに伝達された動力は、中及び左及び右の引起し入力軸46a,46b,46c及びこれに連結された引起スプロケット47を介して、穀稈引起装置13の各引起タイン21を駆動させる。刈刃駆動軸45に伝達された動力は刈刃装置12を駆動させる。
【0024】
左及び右の引起し伝動軸44b,44cからは、隣接する中及び左及び右の引起し伝動軸44a,44b,44cの間に配置された左右の下部搬送駆動軸48にも動力が分岐して伝達される。左の下部搬送駆動軸48に伝達された動力は、これに連結された左駆動スプロケット49を介して、穀稈搬送装置14の左下部搬送チェーン27、穀稈引起装置13における左側のスターホイル23及び掻き込みベルト24を駆動させる。右下部搬送駆動軸48に伝達された動力は、これに連結された右駆動スプロケット49を介して、穀稈搬送装置14の右下部搬送チェーン25、穀稈引起装置13における右側と中央とのスターホイル23及び掻き込みベルト24を駆動させる。
【0025】
また、刈取入力軸41に伝達された動力は、縦軸50を経由して、穀稈搬送装置14の縦搬送チェーン30、縦搬送タイン31、及び右上部搬送タイン28にも分岐して伝達される。
【0026】
次に、図4〜図9を参照しながら、穀稈引起装置を構成する穀稈引起ケース群の配置等の概略について説明する。
【0027】
本実施形態における3条分の穀稈引起ケース22は、刈取前処理装置3の前部に対して走行機体1の横幅方向に沿って適宜間隔で、且つそれぞれが後方斜め上向きの傾斜状に配置されている。各穀稈引起ケース22には、その作用側の下部から横一側上部にかけての外周側部を外向きの突出姿勢で回行して未刈穀稈を起立させる引起タイン21が備えられている。すなわち、本実施形態の各穀稈引起ケース22はいわゆる横回し型のものである。なお、説明の便宜上、図4〜図9において各穀稈引起ケース22には、走行機体1の進行方向右側のものから順に符号a,b,cを添えている。
【0028】
走行機体1の進行方向右側に位置する右穀稈引起ケース22aと、中央に位置する中央穀稈引起ケース22bとは、それぞれの引起タイン21a,21bが突出する作用側の横一側部同士を相対向させている。一方、走行機体1の進行方向左側に位置する単独穀稈引起ケースとしての左穀稈引起ケース22cは、その作用側の右側部を中央穀稈引起ケース22bの非作用側である左側部に対向させている。
【0029】
換言すると、右穀稈引起ケース22aと中央穀稈引起ケース22bとの配置関係は、引起タイン21a,21bの突出する向きが左右対称状となるように設定されている。中央穀稈引起ケース22bを挟んで右穀稈引起ケース22aと反対側に位置する左穀稈引起ケース22cは、その引起タイン21cが中央穀稈引起ケース22bの引起タイン22bと同じ向きに突出するように配置されている。
【0030】
ここで、各穀稈引起ケース22の作用側とは、該穀稈引起ケース22の外周側部のうち引起タイン21が外向きの突出状態で回行する領域のことをいう。右穀稈引起ケース22aの作用側は、その下部寄りの右側端部から下底部を経て左側上部までの領域である。中央穀稈引起ケース22bの作用側は、その下部寄りの左側端部から下底部を経て右側上部までの領域である。また、左穀稈引起ケース22cの作用側は、中央穀稈引起ケース22bと同様に、その下部寄りの左側端部から下底部を経て右側上部までの領域である。従って、各穀稈引起ケース22の引起タイン21は、図3に二点鎖線で示すような移動軌跡を通ることになる。
【0031】
右穀稈引起ケース22aと中央穀稈引起ケース22bとは、走行機体1の横幅方向に沿って並列状に並べて配置されている。正面視において右穀稈引起ケース22aと中央穀稈引起ケース22bとの間は、互いの引起タイン21a,21bが干渉しない程度の間隔TD1が空いている。この間隔TD1は、圃場における未刈穀稈の条間隔(300mm程度)に対応して、穀稈引き起こしの際に右及び中央穀稈引起ケース22a,22bとが一対で機能し易い(右2条分の未刈穀稈を引き起こし易い)幅寸法になっている。
【0032】
一方、正面視において中央穀稈引起ケース22bと左穀稈引起ケース22cとの間は、左穀稈引起ケース22cの引起タイン21cが中央穀稈引起ケース22bにおける非作用側の左側部に接触しない程度の間隔TD2が空いている。
【0033】
すなわち、左穀稈引起ケース22cは、その引起タイン21cが正面視で中央穀稈引起ケース22bにおける非作用側の右側部に接触しない程度に、中央穀稈引起ケース22bに近接させて配置されている。従って、正面視において中央穀稈引起ケース22bと左穀稈引起ケース22cとの間の間隔TD2は、左穀稈引起ケース22cにおける引起タイン21cの突出長さより若干長い程度の寸法になっている。この間隔TD2も、圃場における未刈穀稈の条間隔に対応して、穀稈引き起こしの際に左穀稈引起ケース22cが単独で機能し易い(左1条分の未刈穀稈を引き起こし易い)幅寸法になっている。
【0034】
また、左穀稈引起ケース22cの配置位置は、その引起タイン21cと中央穀稈引起ケース22bにおける下部寄りの左側端部から現れる突出初期の引起タイン21bとが互いに干渉しない程度に、中央穀稈引起ケース22bよりも後方に間隔RDだけずらされている(図4、図5及び図9参照)。
【0035】
なお、中央穀稈引起ケース22bの左側部には、中央穀稈引起ケース22bの長手方向に沿って延びる長い引起ガイド板51が取り付けられている。この場合、引起ガイド板51は、中央穀稈引起ケース22bの左側部における非作用側の箇所と作用側の箇所とに跨って延びている。正面視においては、左穀稈引起ケース22cの左側部から中央穀稈引起ケース22bに向けて突出した引起タイン21cの先端部は、引起ガイド板51の後方に隠れることになる。
【0036】
右及び中央穀稈引起ケース22a,22bは一対で2条分の未刈穀稈を引き起こすように構成されているのに対して、左穀稈引起ケース22cは単独で1条分の未刈穀稈を引き起こすように構成されている。すなわち、条刈りに際しては、走行機体1の前方にある3条分の未刈穀稈のうち右2条分は、右及び中央穀稈引起ケース22a,22bにおける引起タイン21a,21bの対にて引き起こされ、右及び中央穀稈引起ケース22a,22bの間に取り込まれる。左1条分の未刈穀稈は、左穀稈引起ケース22cの引起タイン21cだけで引き起こされ、中央及び左穀稈引起ケース22b,22cの間に取り込まれることになる。
【0037】
以上の構成によると、左穀稈引起ケース22cの配置位置は、その引起タイン21cが正面視で中央穀稈引起ケース21bに接触しない程度に中央穀稈引起ケース22bに近接し、且つ前記引起タイン21cと中央穀稈引起ケース22bにおける下部寄りの左側端部から現れる突出初期の引起タイン21bとが互いに干渉しない程度に、中央穀稈引起ケース22bより後方にずれているので、3条分の穀稈引起ケース22全部が、圃場における未刈穀稈の条間隔に対応して穀稈引き起こしに最適な配置位置になる。これにより、条刈りに際しての穀稈引き起こしを3条分全ての穀稈引起ケース22の引起タイン21にて適切に行えるから、穀稈引起ケース22全体としての引き起こし性能を向上させることができるのである。
【0038】
次に、図7〜図9を参照しながら、各穀稈引起ケースの構成について説明する。各穀稈引起ケース22は、右穀稈引起ケース22aと中央穀稈引起ケース22bとは左右対称状であるとか、中央穀稈引起ケース22bだけに引起ガイド板51が設けられている等の細かな違いはあるものの、基本的に同じ構成である。そこで、中央穀稈引起ケース22bを例として、その詳細構造を以下に説明する。
【0039】
中央穀稈引起ケース22は、周囲に囲い壁62を一体形成してなる合成樹脂板製の前蓋61と、該前蓋61の裏面側に装着された金属板製の裏板63とにより、上下に長い中空状に形成されている。前蓋61の囲い壁62のうち下部寄りの左側端部から下底部を経て右側上部までの領域には、引起タイン21bを外向きに突出させるためのタイン溝穴64が開口している(図8に一部のみ示す)。この囲い壁62におけるタイン溝穴64の箇所が中央穀稈引起ケース22bの作用側を構成することになる。
【0040】
中央穀稈引起ケース22bの内部のうち上部側に設けられた引起スプロケット47及びテンションスプロケット65と、下部側に設けられた従動ローラ66とには、無端チェーン67が巻き掛けられている。無端チェーン67には、複数個の引起タイン21bが適宜間隔で起伏揺動可能に取り付けられている。中及び左及び右の引起し駆動パイプ39a,39b,39c内の中及び左及び右の引起し伝動軸44a,44b,44cから中及び左及び右の引起し入力軸46a,46b,46cに伝達された動力にて回転する引起スプロケット47により、無端チェーン67に取り付けられた複数個の引起タイン21bは、正面視で時計回りに回行するように構成されている。
【0041】
中央穀稈引起ケース22bの内部のうち従動スプロケットの上方箇所には、引起タイン21bが中央穀稈引起ケース22bにおける下部寄りの左側端部に到達したとき(非作用側から作用側に移行するとき)に、該引起タイン21bの回動基端部に当接する突出案内部材68が設けられている。中央穀稈引起ケース22bにおける下部寄りの左側端部に到達した引起タイン21bの回動基端部が突出案内部材68に当接することにより、該引起タイン21bは囲い壁62に形成されたタイン溝穴64の始端箇所から外向きに突出する姿勢に切り替わるように構成されている。
【0042】
中央穀稈引起ケース22bの内部のうち作用側寄りの箇所には、引起タイン21bを外向きの突出状態に保持するためのタインガイド69が、無端チェーン67の長手方向に沿って延びるように設けられている。従って、中央穀稈引起ケース22bにおける作用側の箇所(下部寄りの左側端部から下底部を経て右側上部までの領域)では、各引起タイン21bがタイン溝穴64に沿って外向きの突出状態で回行するように構成されている。
【0043】
また、中央穀稈引起ケース22bにおける非作用側の箇所(右側上部から上部を経て下部寄りの左側端部までの領域)では、引起タイン21bの先端部を囲い壁62の内壁等に当接させる等して、該引起タイン21bを引起ケース3内に倒れた姿勢(無端チェーン67に寄り添った姿勢)で収納するように構成されている。
【0044】
なお、テンションスプロケット65は、裏板63に対して、無端チェーン67が緊張・弛緩する方向に移動可能となるように設けられている。
【0045】
次に、中央穀稈引起ケースにのみ設けられた規制部材の構成について説明する。
【0046】
中央穀稈引起ケース22bにおける作用側の下部、すなわち中央穀稈引起ケース22bにおける下部寄りの左側端部には、断面く字状の規制部材70が溶接又はボルト止め等で固定されている。
【0047】
この規制部材70は、中央穀稈引起ケース22bにおける下部寄りの左側端部に到達した引起タイン21bがタイン溝穴64の始端箇所から外向きに突出する姿勢に切り替わるときに、該引起タイン21bにおける基端部回りの立ち上がり回動を規制するためのものである。
【0048】
また、中央穀稈引起ケース22bに対する左穀稈引起ケース22cの配置関係上、引起ガイド板51の裏面と、左穀稈引起ケース22cの右側部から外向きに突出した引起タイン21cの先端部との間に、前後方向の隙間が空くことになる(図9参照)。この隙間を空けたままにしておくと、左1条分の未刈穀稈の根元部が当該隙間に入り込む可能性が懸念される。この点、規制部材70は、前記隙間をなくして、未刈穀稈の根元部の侵入を防止する役割も果たしている。
【0049】
本実施形態の規制部材70は、引起ガイド板51の裏面側に、タイン溝穴64の始端箇所を外側から囲うようにして取り付けられている。この規制部材70と引起ガイド板51とで囲われた空間は上下方向に貫通している。
【0050】
図7〜図9に示すように、引起タイン21bの突出初期の段階(引起タイン21bが中央穀稈引起ケース22bにおける下部寄りの左側端部に到達した段階)においては、外向きの突出姿勢に切り替わろうとする引起タイン21bの先端部が規制部材70の内壁面に突き当たって、該引起タイン21bは途中まで立ち上がり回動した姿勢に保持される。
【0051】
すなわち、引起タイン21bが規制部材70の箇所を通り過ぎるまでの突出初期の段階では、無端チェーン67に対する引起タイン21bの立ち上がり角度θが小さい状態に規制される。引起タイン21bが規制部材70の箇所を通り過ぎると、該引起タイン21bは完全に外向きの突出姿勢に切り替わり、タイン溝穴64に沿って回行するのである。
【0052】
以上のように、中央穀稈引起ケース22bにおける作用側の下部に、該中央穀稈引起ケース22bにおける下部寄りの突出初期の引起タイン21bの姿勢を規制するための規制部材70を設けるという構成を採用すると、中央穀稈引起ケース22bの引起タイン21bが突出初期の段階で左穀稈引起ケース22cにおける作用側の右側部に向けて突き出た姿勢になるのを確実に規制することができる。
【0053】
これにより、中央穀稈引起ケース22bにおける突出初期の引起タイン21bが左穀稈引起ケース22cに対応する左1条分の未刈穀稈を誤って掻き下げてしまう(倒伏させてしまう)おそれを著しく抑制することができる。
【0054】
従って、上記した構成によると、中央穀稈引起ケース22bの引起タイン21bにて邪魔されることなく、左1条分の未刈穀稈を、左穀稈引起ケース22cの引起タイン21c単独で確実に引き起こして、中央及び左穀稈引起ケース22b,22cの間に取り込むことができるのである。
【0055】
また、規制部材70の存在により、引起ガイド板51の裏面と左穀稈引起ケース22cにおける引起タイン21cの先端部との間における前後方向の隙間がなくなるので、左1条分の未刈穀稈の根元部が前記隙間に入り込むことに起因する稈詰まりを未然に防止することもできるのである。
【0056】
図8及び図9に詳細に示すように、規制部材70には、左穀稈引起ケース22cにおける引起タイン21cの先端部と対峙する外側面を、平面視で後方斜め右向きに傾斜した案内面70aに形成している。この規制部材70の案内面70aは、左穀稈引起ケース22cの引起タイン21cと協働して、左1条分の未刈穀稈の根元部を後方のスターホイル23等に向けて誘い込むためのものである。
【0057】
以上のように、規制部材70のうち、左穀稈引起ケース22cにおける引起タイン21cの先端部と対峙する箇所に、左1条分の未刈穀稈の根元部を後方に誘い込むための傾斜状の案内面70aを形成すると、規制部材70の案内面70aと左穀稈引起ケース22cの引起タイン21cとの協働により、左1条分の未刈穀稈の根元部が後方のスターホイル23等に向けてスムーズに案内(ガイド)されることになり、穀稈引き起こし時の稈こぼれや搬送乱れ等の発生を防止することができる。特に、いわゆる中割り作業時のように多量の未刈穀稈を穀稈引起ケース群にて引き起こす場合に、規制部材70における傾斜状の案内面70aは高いガイド機能を発揮する。
【0058】
図6ないし図18を参照して、本実施形態の穀稈引起装置13の3条分の各引起タイン21a,21b,21cの駆動構造を説明する。
【0059】
図9及び図10に示すように、横伝動パイプ37に立設させた中央及び左及び右の引起し駆動パイプ39a,39b,39cの上端側には、中央及び左及び右の引起しギヤケース71a,71b,71cを介して、中央及び左及び右の穀稈引起ケース22a,22b,22cの上端側(引起タイン21a,21b,21cの穀稈送り終端側)がそれぞれ連結されている。
【0060】
図11ないし図13を参照して、左及び右の引起し駆動パイプ39b,39cと、左及び右の引起しギヤケース71b,71cと、左及び右の穀稈引起ケース22b,22cとの連結構造を説明する。
【0061】
図11ないし図13に示すように、左及び右の引起しギヤケース71b,71cは、側面視略くの字形の円筒構造に鋳造加工にて形成されている。左及び右の引起し駆動パイプ39b,39cの一端側にはフランジ体72が熔接にて固設され、左及び右の引起しギヤケース71b,71cの一端側フランジ部74には、フランジ体72におけるフランジ側合せ面73に接合可能な平面状の第1合せ面75が形成されている。左及び右の引起しギヤケース71b,71cの平面状の第1合せ面75と、同じく平面状のフランジ側合せ面73とが、複数本のボルト76によって着脱可能に締結されている。なお、ボルト76のネジは、一端側フランジ部74に螺着している。
【0062】
また、左及び右の引起しギヤケース71b,71cの他端側フランジ部77には、左及び右の穀稈引起ケース22b,22cにおけるケース合せ面79に接合可能な平面状の第2合せ面78が形成され、左及び右の引起しギヤケース71b,71cの平面状の第2合せ面78と、同じく平面状のケース合せ面79とが、複数本のボルト80によって着脱可能に締結されている。なお、ボルト80のネジは、裏板63の前面側のナット81に螺着している。
【0063】
一方、左及び右の引起しギヤケース71b,71cには、左及び右の引起し駆動パイプ39b,39cの左及び右の引起し伝動軸44b,44cに被嵌させる主動ベベルギヤ82と、前記左及び右の穀稈引起ケース22b,22cの引起し入力軸46b,46cに被嵌させる従動ベベルギヤ83とを有するギヤ機構84が内設されている。主動ベベルギヤ82のボス部85にはベアリング軸受86が被嵌され、当該ベアリング軸受86が、スナップリング形の止め輪87を介してボス部85に着脱可能に係止されている。また、左及び右の引起しギヤケース71b,71cには、前記ベアリング軸受86が、スナップリング形の止め輪88を介しててボス部85に着脱可能に係止されている。左及び右の引起しギヤケース71b,71cに、ベアリング軸受86を介して、主動ベベルギヤ82が片持ち状態に内設されている。
【0064】
他方、主動ベベルギヤ82に常時噛み合う従動ベベルギヤ83のボス部89にはベアリング軸受90が被嵌され、当該ベアリング軸受90が、スナップリング形の止め輪91を介してボス部89に着脱可能に係止されている。また、左及び右の引起しギヤケース71b,71cには、前記ベアリング軸受90が、スナップリング形の止め輪92を介してボス部89に着脱可能に係止されている。左及び右の引起しギヤケース71b,71cに、ベアリング軸受90を介して、従動ベベルギヤ83が片持ち状態に内設されている。
【0065】
さらに、左及び右の引起しギヤケース71b,71cには、左及び右の引起し駆動パイプ39b,39cの引起し伝動軸44b,44cにスプラインを介して被嵌させる主動ベベルギヤ82を配置する第1軸孔93と、左及び右の穀稈引起ケース22b,22cの引起し入力軸46b,46cにスプラインを介して被嵌させる従動ベベルギヤ83を配置する第2軸孔94とが形成され、ベアリング軸受86,90をそれぞれ被嵌した主動ベベルギヤ82及び従動ベベルギヤ83が、第1軸孔93及び第2軸孔94の各ベアリング受け部95,96に着脱可能にそれぞれ配置されている。左及び右の引起しギヤケース71b,71cは、主動ベベルギヤ82及び従動ベベルギヤ83がそれぞれ内設されたギヤケースユニット構造に構成されている。なお、左及び右の引起し駆動パイプ39b,39cに左及び右の引起し伝動軸44b,44cが配置された引起し駆動ユニット構造と、左及び右の穀稈引起ケース22b,22cに左及び右の引起し入力軸46b,46cが配置された引起しケースユニット構造とが構成されている。
【0066】
したがって、左及び右の引起しギヤケース71b,71cから突出する軸がないから、左及び右の引起しギヤケース71b,71cをコンパクトで取扱い易いユニット構造に構成できる。また、引起しギヤケース71b,71cのユニット構造と、引起し駆動パイプ39b,39cのユニット構造と、穀稈引起ケース22b,22cのユニット構造とが、それぞれ各別に仕組まれているから、組立作業または分解作業等を簡単に行うことができる。
【0067】
次に、図14ないし図16を参照して、中央の引起し駆動パイプ39a、中央の引起しギヤケース71a、及び中央の穀稈引起ケース22bの連結構造を説明する。
【0068】
図14ないし図16に示すように、中央の引起しギヤケース71aは、略円筒構造に鋳造加工にて形成されている。中央の引起し駆動パイプ39aの一端側にはフランジ体102が熔接にて固設され、中央の引起しギヤケース71aの一端側フランジ部104には、フランジ体102におけるフランジ側合せ面103に接合可能な第1合せ面105が形成されている。中央の引起しギヤケース71aの第1合せ面105と、フランジ側合せ面103とが、複数本のボルト106によって着脱可能に締結されている。なお、ボルト106のネジは、一端側フランジ部104に螺着している。
【0069】
また、中央の引起しギヤケース71aの他端側フランジ部107には、中央の穀稈引起ケース22aにおけるケース合せ面109に接合可能な第2合せ面108が形成され、中央の引起しギヤケース71aの第2合せ面108と、ケース合せ面109とが、複数本のボルト110によって着脱可能に締結されている。なお、ボルト110のネジは、裏板63の前面側のナット111に螺着している。
【0070】
一方、中央の引起しギヤケース71aには、中央の引起し駆動パイプ39aの引起し伝動軸44aに被嵌させる主動ベベルギヤ112と、前記中央の穀稈引起ケース22bの引起し入力軸46bに被嵌させる従動ベベルギヤ113とを有するギヤ機構114が内設されている。主動ベベルギヤ112のボス部115にはベアリング軸受116が被嵌され、当該ベアリング軸受116が、スナップリング形の止め輪117を介してボス部115に着脱可能に係止されている。また、中央の引起しギヤケース71aには、前記ベアリング軸受116が、スナップリング形の止め輪118を介しててボス部115に着脱可能に係止されている。中央の引起しギヤケース71aに、ベアリング軸受116を介して、主動ベベルギヤ112が片持ち状態に内設されている。
【0071】
他方、主動ベベルギヤ112に常時噛み合う従動ベベルギヤ113のボス部119にはベアリング軸受120が被嵌され、当該ベアリング軸受120が、スナップリング形の止め輪121を介してボス部119に着脱可能に係止されている。また、中央の引起しギヤケース71aには、前記ベアリング軸受120が、スナップリング形の止め輪122を介してボス部119に着脱可能に係止されている。中央の引起しギヤケース71aに、ベアリング軸受120を介して、従動ベベルギヤ113が片持ち状態に内設されている。
【0072】
さらに、中央の引起しギヤケース71aには、中央の引起し駆動パイプ39aの引起し伝動軸44aにスプラインを介して被嵌させる主動ベベルギヤ112を配置する第1軸孔123と、中央の穀稈引起ケース22bの引起し入力軸46bにスプラインを介して被嵌させる従動ベベルギヤ113を配置する第2軸孔124とが形成され、ベアリング軸受116,120をそれぞれ被嵌した主動ベベルギヤ112及び従動ベベルギヤ113が、第1軸孔123及び第2軸孔124の各ベアリング受け部125,126に着脱可能にそれぞれ配置されている。中央の引起しギヤケース71aは、主動ベベルギヤ112及び従動ベベルギヤ113がそれぞれ内設されたギヤケースユニット構造に構成されている。なお、中央の引起し駆動パイプ39aに中央の引起し伝動軸44aが配置された引起し駆動ユニット構造と、中央の穀稈引起ケース22bに中央の引起し入力軸46bが配置された引起しケースユニット構造とが構成されている。
【0073】
したがって、中央の引起しギヤケース71aから突出する軸がないから、中央の引起しギヤケース71aをコンパクトで取扱い易いユニット構造に構成できる。また、引起しギヤケース71b,71cのユニット構造と、引起し駆動パイプ39b,39cのユニット構造と、穀稈引起ケース22aのユニット構造とが、それぞれ各別に仕組まれているから、組立作業または分解作業等を簡単に行うことができる。
【0074】
図15及び図16に示すように、中央の引起しギヤケース71aには、中央の穀稈引起ケース22bの引起し入力軸46bを挿入するための第2軸孔124が貫通状態に形成され、従動ベベルギヤ113は、引起し入力軸46bを挿入する側と反対の第2軸孔124の一端側の開口部128を介して、第2軸孔124のベアリング受け部126に着脱可能に構成されている。開口部128は、着脱可能な蓋体129によって開閉可能に閉塞されている。
【0075】
したがって、従動ベベルギヤ113は、開口部128からベアリング受け部126に装着されたり、開口部128を介してベアリング受け部126から取出されることになる。左右の引起し伝動軸44b,44cの端部と左右の引起し入力軸46a,46cの端部とを付き合わせた図13に示す構造に比べ、中央の引起しギヤケース71aの外形寸法を中央の引起し入力軸46bの軸芯方向にコンパクトに形成できる。即ち、主動ベベルギヤ115及び前記従動ベベルギヤ113は、引起し伝動軸44aの端部を引起し入力軸46bの中間部に臨ませた略並列状に連結でき、中央の引起しギヤケース71aの外形寸法を、引起し入力軸46bの軸芯線の方向に、コンパクトに形成できる。
【0076】
図10に示すように、上述した中央の引起し駆動パイプ39aの下端側は、横伝動パイプ37から機体前方(進行方向)に突出した分岐パイプ130の先端部に着脱自在に連結されている。中央の引起し駆動パイプ39a内の引起し伝動軸44aは、分岐パイプ130に内装した分岐軸131及び二組のベベルギヤ機構などを介して、横伝動軸43に連結されている。
【0077】
一方、図10、図17、図18に示すように、上述した左及び右の引起し駆動パイプ39b,39cの下端側は、横伝動パイプ37にボルト132によって着脱自在に締結されている。左及び右の引起し駆動パイプ39b,39c内の引起し入力軸44b、44cは、一組のベベルギヤ機構133などを介して、横伝動軸43に連結されている。
【0078】
上記の記載及び図12、図13、図15、図16から明らかなように、走行機体1の前部に設けられた刈取前処理装置3には穀稈引起装置13が備えられ、前記穀稈引起装置13は、前記走行機体1の進行方向と交差する幅方向に沿って適宜間隔で配置された複数の穀稈引起ケース22a,22b,22cと、前記穀稈引起ケース22a,22b,22cに駆動力を伝える引起し駆動パイプ39a,39b,39cと、前記穀稈引起ケース22a,22b,22cと前記引起し駆動パイプ39a,39b,39cとを連結するための引起しギヤケース71a,71b,71cとを有しているコンバインにおいて、前記引起し駆動パイプ39a,39b,39cの一端側にはフランジ体72,102が固設され、前記引起しギヤケース71a,71b,71cには、フランジ体72,102におけるフランジ側合せ面73,103に接合可能な第1合せ面75,105が形成され、前記引起しギヤケース71a,71b,71cの第1合せ面75,105と、前記フランジ側合せ面73,103とが着脱可能に締結されているものであるから、前記引起し駆動パイプ39a,39b,39cと前記引起しギヤケース71a,71b,71cとを簡単な位置決め操作で高精度に連結でき、前記穀稈引起ケース22a,22b,22c及び前記引起しギヤケース71a,71b,71c等の組立作業または分解作業等を簡単にできるものである。
【0079】
上記の記載及び図11、図13、図14、図16から明らかなように、前記引起しギヤケース71a,71b,71cには、前記穀稈引起ケース22a,22b,22cにおけるケース合せ面79,109に接合可能な第2合せ面78,108が形成され、前記引起しギヤケース71a,71b,71cの第2合せ面78,108と、前記ケース合せ面79,109とが着脱可能に締結されているものであるから、前記引起しギヤケース71a,71b,71cと前記穀稈引起ケース22a,22b,22cとを簡単な位置決め操作で高精度に連結でき、前記穀稈引起ケース22a,22b,22c及び前記引起しギヤケース71a,71b,71c等の組立作業または分解作業等を簡単にできるものである。
【0080】
上記の記載及び図13、図16から明らかなように、前記引起しギヤケース71a,71b,71cには、前記引起し駆動パイプ39a,39b,39cの引起し伝動軸44a,44b,44cに被嵌させる主動ベベルギヤ82,112と、前記穀稈引起ケース22a,22b,22cの引起し入力軸46a,46b,46cに被嵌させる従動ベベルギヤ83,113とを有するギヤ機構84,114が内設されているものであるから、前記引起しギヤケース71a,71b,71cと前記主動ベベルギヤ82,112及び従動ベベルギヤ83,113だけを簡単にユニット構成でき、前記引起しギヤケース71a,71b,71cをコンパクトに形成して取扱い性を向上できるものである。
【0081】
上記の記載及び図13、図16から明らかなように、走行機体1の前部に設けられた刈取前処理装置3には穀稈引起装置13が備えられ、前記穀稈引起装置13は、前記走行機体1の進行方向と交差する幅方向に沿って適宜間隔で配置された複数の穀稈引起ケース22a,22b,22cと、前記穀稈引起ケース22a,22b,22cに駆動力を伝える引起し駆動パイプ39a,39b,39cと、前記穀稈引起ケース22a,22b,22cと前記引起し駆動パイプ39a,39b,39cとを連結するための引起しギヤケース71a,71b,71cとを有しているコンバインにおいて、前記引起しギヤケース71a,71b,71cには、前記引起し駆動パイプ39a,39b,39cの引起し伝動軸44a,44b,44cにスプラインを介して被嵌させる主動ベベルギヤ82,112を配置する第1軸孔93,123と、前記穀稈引起ケース22a,22b,22cの引起し入力軸46a,46b,46cにスプラインを介して被嵌させる従動ベベルギヤ83,113を配置する第2軸孔94,124とが形成され、ベアリング軸受86,90,116,120をそれぞれ被嵌した前記主動ベベルギヤ82,112及び前記従動ベベルギヤ83,113が、前記第1軸孔93,123及び前記第2軸孔94,124の各ベアリング受け部95,96,125,126に着脱可能にそれぞれ配置されているものであるから、前記引起しギヤケース71a,71b,71cと前記前記主動ベベルギヤ82,112及び前記従動ベベルギヤ83,113だけを簡単にユニット構成でき、前記穀稈引起ケース22a,22b,22c及び前記引起しギヤケース71a,71b,71c等の組立作業または分解作業等を簡単にできるものである。
【0082】
上記の記載及び図16から明らかなように、前記引起しギヤケース71a,71b,71cには、前記穀稈引起ケース22a,22b,22cの引起し入力軸46a,46b,46cを挿入するための前記第2軸孔94,124が貫通状態に形成され、前記従動ベベルギヤ83,113は、前記引起し入力軸46a,46b,46cを挿入する側と反対の前記第2軸孔94,124の一端側の開口部128を介して、前記第2軸孔94,124のベアリング受け部96,126に着脱可能に構成されているものであるから、前記引起し伝動軸44a,44b,44cの端部と前記引起し入力軸46a,46b,46cの端部とを付き合わせる構造に比べ、ユニット構成した前記引起しギヤケース71a,71b,71cの外形寸法を前記引起し入力軸46a,46b,46cの軸芯方向にコンパクトに形成できるものである。
【0083】
上記の記載及び図13、図16から明らかなように、前記第1軸孔93,123及び前記第2軸孔94,124の各ベアリング受け部95,96,125,126には、前記主動ベベルギヤ82,112及び前記従動ベベルギヤ83,113が、1つのベアリング軸受86,90,116,120を介して片持ち状態にそれぞれ配置されているものであるから、前記主動ベベルギヤ82,112及び前記従動ベベルギヤ83,113の軸芯方向の長さを短く形成でき、ユニット構成した前記引起しギヤケース71a,71b,71cをコンパクトに且つ軽量に形成できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】刈取前処理装置の平面図である。
【図5】刈取前処理装置の側面図である。
【図6】刈取前処理装置の動力伝達系統を示すスケルトン図である。
【図7】中央穀稈引起ケースの内部を示す概略正面図である。
【図8】中央穀稈引起ケースと左穀稈引起ケースとを後方から見た概略斜視図である。
【図9】中央穀稈引起ケースと左穀稈引起ケースとの概略平面図である。
【図10】引起し駆動パイプ等の概略斜視図である。
【図11】左及び右の引起しギヤケースの前面側の概略斜視図である。
【図12】左及び右の引起しギヤケースの後面側の概略斜視図である。
【図13】左及び右の引起しギヤケースの断面側面図である。
【図14】中央の引起しギヤケースの前面側の概略斜視図である。
【図15】中央の引起しギヤケースの後面側の概略斜視図である。
【図16】中央の引起しギヤケースの断面側面図である。
【図17】引起し駆動パイプの下端側の概略斜視図である。
【図18】引起し駆動パイプの下端部の断面側面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 走行機体
3 刈取前処理装置
13 穀稈引起装置
14 穀稈搬送装置
22a,22b,22c 穀稈引起ケース
39a,39b,39c 引起し駆動パイプ
44a,44b,44c 引起し伝動軸
46a,46b,46c 引起し入力軸
71a,71b,71c 引起しギヤケース
86,90,116,120 ベアリング軸受
93,123 第1軸孔
94,124 第2軸孔
95,96,125,126 ベアリング受け部
128 開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部に設けられた刈取前処理装置には穀稈引起装置が備えられ、前記穀稈引起装置は、前記走行機体の進行方向と交差する幅方向に沿って適宜間隔で配置された複数の穀稈引起ケースと、前記穀稈引起ケースに駆動力を伝える引起し駆動パイプと、前記穀稈引起ケースと前記引起し駆動パイプとを連結するための引起しギヤケースとを有しているコンバインにおいて、
前記引起しギヤケースには、前記引起し駆動パイプの引起し伝動軸にスプラインを介して被嵌させる主動ベベルギヤを配置する第1軸孔と、前記穀稈引起ケースの引起し入力軸にスプラインを介して被嵌させる従動ベベルギヤを配置する第2軸孔とが形成され、
ベアリング軸受をそれぞれ被嵌した前記主動ベベルギヤ及び前記従動ベベルギヤが、前記第1軸孔及び前記第2軸孔の各ベアリング受け部に着脱可能にそれぞれ配置されていることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記引起しギヤケースには、前記穀稈引起ケースの引起し入力軸を挿入するための前記第2軸孔が貫通状態に形成され、
前記従動ベベルギヤは、前記引起し入力軸を挿入する側と反対の前記第2軸孔の一端側の開口部を介して、前記第2軸孔のベアリング受け部に着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1軸孔及び前記第2軸孔の各ベアリング受け部には、前記主動ベベルギヤ及び前記従動ベベルギヤが、1つのベアリング軸受を介して片持ち状態にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−75028(P2007−75028A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268245(P2005−268245)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】