説明

コンバイン

【課題】脱穀穀稈の層厚を適切なものに維持し、選別性能、及び脱穀能率の向上を図ると共に、飛散穀粒、及び藁屑発生の防止を図る。
【解決手段】脱穀フィードチェン(6)を備えた脱穀装置(5)を設け、該脱穀装置(5)で脱穀された後の排藁を脱穀フィードチェン(6)から引き継いで機外へ排出する排藁移送装置(9)を設け、該排藁移送装置(9)で移送される排藁の量を検出する排藁量検出センサ(10b)を設け、該排藁量検出センサ(10b)による排藁量の検出値が所定値よりも小さい場合には脱穀フィードチェン(6)を減速制御し、前記排藁量検出センサ(10b)による排藁量の検出値が所定値よりも大きい場合には脱穀フィードチェン(6)を増速制御する制御装置(12)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平11−127667号公報で示すように、穀稈を刈取りする刈取装置の伝動速を低速位置と、高速位置とに変速する刈取変速レバーと、該刈取変速レバーと操縦席側に案内させて高速位置とする高速位置ガイドと、操縦席と反対側に案内させて、低速位置とする低速位置ガイドとを配置のレバーガイドを設けた構成が知られている。
【特許文献1】特開平11−127667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
圃場内へ植付された穀稈は、前部の刈取装置で刈取りされ、後方上部へ該刈取装置で移送され、脱穀装置の脱穀フィードチェンで引継ぎ挟持され、該脱穀装置内を挟持移送中に脱穀される。脱穀済み排藁を機外へ排出する排藁移送装置は、該脱穀フィードチェンと同じように、所定の高速回転、又は低速回転で回転駆動され、該排藁移送装置で移送終端部まで移送され、移送終端部から圃場表面部へ排出される。
【0004】
前記排藁移送装置は、移送される排藁量に関係なく所定の高速回転、又は低速回転で移送されることにより、該脱穀フィードチェン、及び該排藁移送装置で移送中の穀稈、及び排藁の層厚が一定でなくなり、脱穀性能が安定しなくなることが発生したり、層厚が薄いと穀稈は、該脱穀装置内へ引き抜きされて、この脱穀装置内が過負荷になることが発生していたが、これらの問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述のような課題を解決するために、この発明は、次のような技術手段を講じる。
このために、この発明は、脱穀フィードチェン(6)を備えた脱穀装置(5)を設け、該脱穀装置(5)で脱穀された後の排藁を脱穀フィードチェン(6)から引き継いで機外へ排出する排藁移送装置(9)を設け、該排藁移送装置(9)で移送される排藁の量を検出する排藁量検出センサ(10b)を設け、該排藁量検出センサ(10b)による排藁量の検出値が所定値よりも小さい場合には脱穀フィードチェン(6)を減速制御し、前記排藁量検出センサ(10b)による排藁量の検出値が所定値よりも大きい場合には脱穀フィードチェン(6)を増速制御する制御装置(12)を設けたことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0006】
圃場の立毛穀稈は、コンバインの刈取装置順次刈取りされて、後方へ移送され、脱穀装置(5)の脱穀フィードチェン(6)に引継ぎされ、該脱穀フィードチェン(6)で挟持され脱穀装置(5)内を挟持移送中に脱穀されて風選別される。
【0007】
前記脱穀装置(5)で脱穀された後の排藁は、排藁移送装置(9)で引継ぎ移送されて、機外へと排出されるが、該排藁移送装置(9)で移送される排藁量は、排藁量検出センサ(10b)で検出される。該排藁量検出センサ(10b)で検出される排藁量の検出値が、所定値よりも小さい場合には、脱穀フィードチェン(6)が減速制御される。この検出値が所定値よりも大きい場合には、脱穀フィードチェン(6)が増速制御される。これらの制御は制御装置(12)によって行われる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によると、排藁量に応じて脱穀フィードチェン(6)の速度が可変されて、脱穀穀稈の層厚を適切なものに維持でき、選別性能、及び脱穀能率の向上を図ると共に、飛散穀粒、及び藁屑発生の防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
コンバイン1の走行車台2の下側には、走行装置3を設け、該走行車台2の前方部には、立毛穀稈を刈取りする刈取装置4を設けると共に、該走行車台2前方部の該刈取装置4で刈取り、後方上部へ移送する刈取り穀稈を、脱穀装置5の脱穀フィードチェン6と、挟持杆7とにより、引継ぎ挟持して、該脱穀装置5の右横側で、該走行車台2の上側面に載置した穀粒貯留タンク8内に、該脱穀装置5から移送供給されて、一時貯留される。
【0010】
又、前記脱穀装置5で脱穀された穀稈を排藁を、引継ぎ移送して機外へ排出する排藁移送装置9は、脱穀フィードチェン6から排藁を引継ぎして、移送すべく設けている。該排藁移送装置9で移送される排藁量を、検出する排藁量検出センサ10bを設け、該排藁量検出センサ10bで排出移送される排藁量の検出値が、所定値以下の検出に伴い、該脱穀フィードチェン6を減速制御する。又は、所定値以上の検出に伴い、該脱穀フィードチェン6を増速制御する。これらを制御する制御装置12を操作装置11に内装して設けた構成である。
【0011】
前記コンバイン1の走行車台2の下側には、図1で示すように、土壌面を走行する左右一対の走行クローラ3aを張設した走行装置3を配設し、該走行車台2の上側面には、刈取り穀稈を引継ぎ脱穀する脱穀装置5を載置している。該走行車台2の前方部の刈取装置4で立毛穀稈を刈取りして、後方上部に移送し、該脱穀装置5の脱穀フィードチェン6と、挟持杆7とで引継いで挟持移送しながら脱穀する。脱穀済みで選別済み穀粒は、該脱穀装置5の右横側へ配設した穀粒貯留タンク8内へ供給され、一時貯留される。
【0012】
前記走行車台2の前方部には、図1で示すように、立毛穀稈を分離するナローガイド13、及び各分草体14と、立毛穀稈を引起す各引起装置15と、引起された穀稈を掻込みする穀稈掻込移送装置16の各掻込装置17と、掻込された穀稈を刈取る刈刃装置18と、刈取りされた穀稈を挟持移送して脱穀装置5の脱穀フィードチェン6と、挟持杆7とへ受渡しする該穀稈掻込移送装置16の根元・穂先移送装置19・20等からなる刈取装置4を設けている。該刈取装置4は、油圧駆動による伸縮シリンダ21等により、土壌面に対して昇降する。
【0013】
前記刈取装置4の前方下部から後方上部へ傾斜する支持杆22の上端部に設ける支持パイプ杆23を、走行車台2の上側面に設けた支持装置24で回動自在に支持させている。該伸縮シリンダ21を作動させると支持杆22と共に、該刈取装置4が上下回動する。
【0014】
前記刈取装置4の穀稈掻込移送装置16によって形成される穀稈移送経路中には、刈取られて移送する穀稈に接触作用することにより、脱穀装置5への穀稈の供給の有無を検出する穀稈センサ10aを設けている。
【0015】
圃場内の立毛穀稈は、前記走行車台2左側前部に設けた、刈取装置4で刈取り、後方上部へ移送される刈取り穀稈を、該走行車台2上側に設けた脱穀装置5の脱穀フィードチェン6と、挟持杆7とで引継ぎされ、該脱穀装置5内を挟持移送中に脱穀され、脱穀処理物は、この脱穀装置5内で風選別され、選別済み穀粒は、この脱穀装置5より、穀粒貯留タンク8内へ供給されて、一時貯留される。
【0016】
前記穀粒貯留タンク8の底部の前後方向には、穀粒移送螺旋プレート8bを装着した穀粒移送螺旋軸8aを軸支して設け、該穀粒移送螺旋軸8aの移送終端側には、排出される穀粒を機外へ排出する排出用移送筒8cを設けて、該穀粒貯留タンク8の貯留穀粒を、機外へ移送排出する構成である。
【0017】
前記脱穀装置5内で脱穀されて、機外へ排出される排藁は、この脱穀装置5の脱穀フィードチェン6の移送終端部に接続すべく、排藁移送装置9の張設した排藁移送チェン9aで引継ぎ機外へ移送排出される。
【0018】
前記排藁移送装置9には、この排藁移送装置9で移送される排藁量は、図2で示すような、排藁量検出センサ10bを設け、該排藁量検出センサ10bで排出移送される排藁量の検出値が、所定値以下の検出、又は所定値以上の検出に伴い、該脱穀フィードチェン6の回転数制御すべく設けている。脱穀フィードチェン用モータ6aを増速制御、又は減速制御する制御装置12を操作装置11に内装して設けている。
【0019】
前記排藁量検出センサ10bで排出移送される、排藁量の検出値が所定値以下の検出巾に伴い、該脱穀フィードチェン6の回転制御する、該脱穀フィードチェン用モータ6aの回転数を、該制御装置12aで所定値を順次減速制御する構成である。又、該排藁量検出センサ10bで排出移送される、排藁量の検出値が所定値以上の検出巾に伴い、該脱穀フィードチェン6を回転制御する、該脱穀フィードチェン用モータ6aの回転数を、該制御装置12aで順次所定値を増速制御する構成である。排藁量の検出値の増減に比例して、該脱穀フィードチェン用モータ6aの回転数の増減も比例して、変更制御する構成である。
【0020】
前記脱穀装置5で脱穀された排藁は、排藁移送装置9の排藁移送チェン9aで引継ぎ移送されて、機外へと排出されるが、該排藁移送装置9で移送される排藁量は、排藁量検出センサ10bで検出される。
【0021】
排藁の検知制御は、図3で示すブロック図、及び図4で示すフローチャート図の如く行われる構成である。又、前記脱穀フィードチェン6の回転速度制御は、図4で示すフローチャート図の如く制御する構成である。
【0022】
この排出移送の排藁量の検出値が、所定値以下の検出に伴い、該脱穀フィードチェン6の回転速度が減速制御される。又は、所定値以上の検出に伴い、該脱穀フィードチェン6の回転速度が増速制御される。これらの制御は、制御装置12を設けて制御させることにより、移送穀稈の層厚に応じて、該脱穀フィードチェン6の速度が可変されて、適切な層厚を保持させるように制御されることにより、選別性能、及び脱穀能率の向上を図ると共に、飛散穀粒、及び藁屑発生の防止を図ることができる。
【0023】
前記脱穀装置5には、発生する起風を変更可能な唐箕装置5aを設けている。この唐箕装置5aの起風で脱穀処理物を穀粒と藁屑等とに風選別する構成において、排藁量検出センサ10bの検出値により、該唐箕装置5aから発生する起風量を、図5で示すブロック図の如く行う構成であると共に、図6で示すフローチャート図の如く制御する構成である。
【0024】
これにより、移送される穀稈の層厚により、処理される穀粒量の多い、又は少ないを判断して、選別に適正な唐箕風を自動設定することができる。
前記コンバイン1には、該排藁量検出センサ10bを有し、シーブの開閉状態を可変させる機構を設けている。この機構を自動制御出力可能な構成として、該排藁量検出センサ10bの検出値に応じて、該シーブを所定の状態とすべく制御出力する構成である。
【0025】
これにより、移送穀稈の層厚により、処理される穀粒量の多少を判断して、選別に適正な該シーブに開閉させることにより、選別性能等の向上を図ることができる。
前記穀粒貯留タンク8側の前部には、図1で示すように、コンバイン1を始動、停止、及び各部を調節等の操作を行う操作装置11と、操縦席12とを設け、この操縦席12の下側にエンジン2aを載置している。
【0026】
前記走行車台2の前端部に装架した走行用ミッションケース3b内の伝動機構3cの伝動経路中には、その出力に基づいて、走行車速を検出するポテンションメータ方式の車速センサ3cを設けている。
【0027】
前記穀粒貯留タンク8内へ貯留した穀粒を機外へ排出するこの穀粒貯留タンク8の後側には、図1で示すように、縦移送螺旋25aを内装した排出支持筒25を略垂直姿勢で旋回自在に装着して設け、この排出支持筒25の上端部には、その全長がコンバイン1の前後長に亘る機外へ穀粒を排出する排出螺旋26aを伸縮自在に内装した排出オーガ26を伸縮自在、上下回動自在、及び左右旋回自在に前後方向に配設している。
【0028】
前記コンバイン1の走行車台2上に載置したエンジン2aは、操作装置11の制御装置12aにより、穀稈の条件、及び作業速度等により、適宜に図7で示すブロック図、及び図8で示すフローチャート図の如く制御される構成であると共に、図9で示す如く該操作装置11に設けた1つのダイヤル11aで2つの機能を同時に設定可能な構成である。
【0029】
これにより、前記コンバイン1を運転操作する作業者の感覚を考慮して、わかりやすくすると共に、1つのダイヤルで2つの機能を同時に設定可能にした。
前記エンジン2aの回転数を自動、又は手動操作を選択切換する図9で示すように、ダイヤルスイッチ11aを設け、自動選択時に当ダイヤルの設定位置に応じて、該エンジン2aの回転数を最低回転(ローアイドル)から最高回転(ハイアイドル)まで図7で示す如く設定可能としたコンバイン1の該エンジン2aの回転数設定ダイヤルとしたものである。
【0030】
これにより、ダイヤルにてアクセルレバーを代用するものであり、このアクセルレバーを廃止することができる。
前記エンジン2aの回転制御について、ダイヤル11aが、図7〜図9で示すように、中間位置にあるとき、定格回転となるよう制御出力を行い、中間から低電圧方向操作で最低回転まで設定可能、又、高電圧方向操作で最高回転まで設定可能にした構成である。
【0031】
これにより、手動操作でも、容易に定格回転に合わせやすくした。
図8と、図9と、図10で示すように、前記操作装置11の制御装置12aからの制御出力に応じて、前記エンジン2aの回転数を制御する機能を有する前記コンバイン1において、自動、又は手動操作を選択切換えするスイッチ11b(IQアクセルスイッチ)を有し、自動選択時、刈取り作業時の該エンジン2aの回転数を可変する入力具(アナログダイヤル)を有する構成において、排出オーガ26で穀粒排出作業中に排出クラッチ入検出時は、ダイヤル11aにて設定可能な、該エンジン2aの回転数の範囲を、排出作業に適した回転数として設定可能な構成としている。
【0032】
これにより、作業状態に応じて、前記ダイヤル11a機能を可変させることができる。
図8、及び図10で示すように、前記操作装置11の制御装置12aからの制御出力に応じて、エンジン2aの回転数を制御する機能を有するコンバイン1において、自動、又は手動操作の選択切換するスイッチ11b(IQアクセルスイッチ)を有し、自動選択時、刈取り作業時(例えば、刈脱モノレバー「入」の該エンジン2aの回転数を可変しうる入力具(アナログダイヤル)を有する構成において、排出クラッチ「切」、刈脱モノレバー、又は刈脱クラッチ「切」で停車検出時、ダイヤル11aによる該エンジン2aの回転数設定範囲をアイドリング時に適した範囲とし、停車中の該エンジン2aの回転数を設定可能に構成した。
【0033】
これにより、作業状態に応じて、該ダイヤル11aの機能を可変させることができる。
図8、及び図10で示すように、前記コンバイン1のエンジン2aの回転数制御、又は、自動、及び手動操作に選択切換するスイッチ11b(IQアクセルスイッチ)において、それぞれの条件成立直前の設定該エンジン2aの回転数を記憶させ、前記条件より、再び刈取作業条件に復帰時は、ダイヤル11aの操作位置にかかわらず、記憶した設定の該エンジン2aの回転数とすべく制御出力を行う構成である。
【0034】
これにより、刈取作業復帰時、再び該ダイヤル11aの設定をし直す手間を省くことができる。
図8、及び図10で示すように、前記コンバイン1のエンジン2aの回転制御において、刈取作業条件復帰後、該ダイヤル11aの操作検出時は、記憶した該エンジン2aの回転数による制御を停止と、該ダイヤル11aに応じた、設定の該エンジン2aの回転数とすべく制御出力を行う構成である。
【0035】
これにより、記憶設定の解除ができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】コンバインの左側全体側面図
【図2】排出量検出センサの拡大側面図
【図3】ブロック図
【図4】フローチャート図
【図5】他の実施例のブロック図
【図6】他の実施例のフローチャート図
【図7】他の実施例のフローチャート図
【図8】他の実施例のブロック図
【図9】他の実施例のダイヤルの平面図
【図10】他の実施例のフローチャート図
【符号の説明】
【0037】
4 刈取装置
5 脱穀装置
6 脱穀フィードチェン
9 排藁移送装置
10b 排藁量検出センサ
12a 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀フィードチェン(6)を備えた脱穀装置(5)を設け、該脱穀装置(5)で脱穀された後の排藁を脱穀フィードチェン(6)から引き継いで機外へ排出する排藁移送装置(9)を設け、該排藁移送装置(9)で移送される排藁の量を検出する排藁量検出センサ(10b)を設け、該排藁量検出センサ(10b)による排藁量の検出値が所定値よりも小さい場合には脱穀フィードチェン(6)を減速制御し、前記排藁量検出センサ(10b)による排藁量の検出値が所定値よりも大きい場合には脱穀フィードチェン(6)を増速制御する制御装置(12)を設けたことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−261347(P2009−261347A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116488(P2008−116488)
【出願日】平成20年4月26日(2008.4.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】