説明

コンバイン

【課題】8条分の未刈り穀稈を刈り取り可能な前処理部を備えたコンバインをトラック等の運搬車両で搬送できるようにする。
【解決手段】走行機体2の前進方向に対して、前処理部3を支持する横伝動筒23の右端から立設した縦伝動筒63内の引起伝動軸64と、この縦伝動筒63の上端から横設した上筒68内の引起駆動軸69を介して各引起装置13へ動力を伝達し、また株元掻込装置27を駆動スターホイール31Dと従動スターホイール31Sの噛み合い伝動により駆動させ、且つ左端1条分の引起装置13側に従動スターホイール31Sを配置すると共に、左端の株元掻込装置27Dによる掻込穀稈を搬送する株元搬送体38Dを、駆動スターホイール31Dと同一軸芯上に支持したスプロケット33Dに巻回して設け、更に左から数えて2番目と3番目のスターホイール31D,31Sの間に刈取装置20の駆動部K1を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取条数が8条の前処理部を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体の前方に8条分の未刈り穀稈を刈り取ることができる前処理部を連結することによって、一行程あたりの未刈り穀稈の刈り取り量を増加させたコンバインが公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭55−81534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述の如く8条分の未刈り穀稈を刈り取ることができる前処理部を備えたコンバインをトラック等の運搬車両で搬送しようとすると、当該前処理部が運搬車両の荷台からはみ出してしまうといった不具合を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、走行機体の前方に延出させた縦伝動筒と、該縦伝動筒の先端にT字状に連結した横伝動筒に刈取条数が8条の前処理部を支持し、この前処理部に前記刈取条数に対応する複数の引起装置と株元掻込装置を設けたコンバインにおいて、走行機体の前進方向に対する左端1条分の引起装置と株元掻込装置とを着脱可能に構成したことを第1の特徴としている。
そして、前記横伝動筒の右端から立設した縦伝動筒内の引起伝動軸と、この縦伝動筒の上端から横設した上筒内の引起駆動軸を介して各引起装置へ動力を伝達することを第2の特徴としている。
また、前記複数の株元掻込装置を駆動スターホイールと従動スターホイールの噛み合い伝動により駆動させ、且つ左端1条分の引起装置側に従動スターホイールを配置すると共に、左端の株元掻込装置による掻込穀稈を搬送する株元搬送体を、駆動スターホイールと同一軸芯上に支持したスプロケットに巻回して設けたことを第3の特徴としている。
更に、走行機体の前進方向に対して左から数えて2番目と3番目のスターホイールの間に刈取装置の駆動部を設けたことを第4の特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、刈取条数が8条の前処理部を縦伝動筒と横伝動筒に支持し、この前処理部に前記刈取条数に対応する複数の引起装置と株元掻込装置を設けたコンバインにおいて、走行機体の前進方向に対する左端1条分の引起装置と株元掻込装置とを着脱可能に構成したことによって、前記左端1条分の引起装置と株元掻込装置とを取り外せば、残りの刈取条数7条分の前処理部を支持したコンバインは、トラック等の運搬車両の荷台からはみ出すことなく搭載できるようになり、当該前処理部全体を走行機体から取り外さなくてもトラック等の運搬車両による搬送が可能になる。
そして、請求項2の発明によれば、前記横伝動筒の右端から立設した縦伝動筒内の引起伝動軸と、この縦伝動筒の上端から横設した上筒内の引起駆動軸を介して各引起装置へ動力を伝達することによって、各引起装置へは、個別に動力を分岐させて伝達することができ、それにより前記左端1条分の引起装置における伝動部の着脱構造を簡潔に構成できると共に、取り外し可能部品全体の軽量化を図れる。
また、請求項3の発明によれば、前記複数の株元掻込装置を駆動スターホイールと従動スターホイールの噛み合い伝動により駆動させ、且つ左端1条分の引起装置側に従動スターホイールを配置すると共に、左端の株元掻込装置による掻込穀稈を搬送する株元搬送体を、駆動スターホイールと同一軸芯上に支持したスプロケットに巻回して設けたことによって、刈取穀稈の搬送性能を損なうことなく、前記左端1条分の引起装置に対応する株元掻込装置における着脱構造を簡潔に構成できると共に、取り外し可能部品全体の軽量化を図れる。
更に、請求項4の発明によれば、走行機体の前進方向に対して左から数えて2番目と3番目のスターホイールの間に刈取装置の駆動部を設けたことによって、走行機体の前進方向に対する左端1条分の刈取装置の着脱構造を容易化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は、本発明を適用した刈取条数が8条のコンバインの正面図、平面図、及び左側面図であって、このコンバインは、走行部である左右一対のクローラ走行装置1L,1Rに支持した走行機体2と、該走行機体2の前方に昇降自在に連結した前処理部3を備えている。
【0007】
前処理部3は、圃場において所定の間隔で植立する穀稈の8条分を一気に刈り取り可能な刈取条数が8条の刈取装置であり、走行機体2上に、その前進方向右側に立設されたキャビン4に搭乗したオペレータの運転操作によって、左右一対のクローラ走行装置1L,1Rを駆動して走行機体2を走行させながら圃場内に植立する穀稈を刈り取ることができる。
【0008】
前処理部3で刈り取られた穀稈は、詳細は後述する穀稈搬送部6を経由して走行機体2上の前部左側に搬送された後、その後方の脱穀部7の図示しない扱室に沿って穀稈を搬送する脱穀フィードチェン8に受継される。そして、脱穀フィードチェン8に受継された穀稈は、扱室を通過する過程で脱穀処理がなされ、脱穀処理された穀稈は、図示しない排藁搬送装置を介して走行機体2の後部まで搬送されるようになっており、走行機体2の後部まで搬送された穀稈は、排藁としてそのまま機体の後端部から機外に排出されるか、走行機体2の後端部に備える排藁処理部(カッター)9により切断処理された後に機体の後端部から機外に排出される。
【0009】
一方、扱室で扱ぎ降ろされた扱降物は、扱室下方の図示しない選別室に漏下し、選別室内で起風する後方斜め上方向に向く選別風によって藁屑と穀粒とに風選された後、藁屑は機体後部から機外に排出され、穀粒は走行機体2の後部右側に備える穀粒タンク11内に一時的に貯留され、この穀粒タンク11内に一時的に貯留された穀粒は、走行機体2の後端部右側に水平回動自在且つ上下揺動自在に支持した穀粒排出オーガ12によって機外に排出されるようになっている。
【0010】
また、前処理部3には、圃場において所定の間隔で植立する穀稈の2条分を引き起す引起装置13を4組設けている。各引起装置13は、互いが隣接するように左右方向に並べた状態で支持してあり、上下方向に延びる左右一対の板状の引起ケース14を備えている。各引起ケース14内には、複数の引起爪16を所定の間隔で起伏自在に装着した図示しない引起チェンを設けてあり、左側の引起ケースである左引起ケース14Lと、右側の引起ケースである右引起ケース14Rとの間には、穀稈を引起ケース14前方から後方に送るための掻込スペースSを形成している。
【0011】
そして、各引起爪16は、掻込スペースSを通過しながら上方移動する方向に引起ケース14の外周端周りを循環移動し、各引起爪16が上方移動する際は、掻込スペースS側に突出する突出姿勢となり、それによって掻込スペースSを通過する植立穀稈を梳き起して起立状態とする一方、それ以外の箇所を各引起爪16が移動する際は、各引起爪16は、引起ケース14内に倒伏収納された収納姿勢状態に切換えられるようになっている。
【0012】
また、前処理部3の下端部には、前方に向く合計9個の分草体17を設けている。この9個の分草体17は、各引起装置13の掻込スペースSの中央部前方に配置した計4個の分草体17,17,17,17と、正面視で隣接する引起装置13の間にそれぞれ配置した計3個の分草体17,17,17と、前処理部3の左右両端部に設けた分草体17,17とからなり、それぞれが分草体支持フレーム18に支持している。
【0013】
そして、圃場に植立する穀稈は、走行機体2の前進走行に伴って、条毎に各分草体17及び分草体支持フレーム18間で分草された後、対応する引起ケース14の引起爪16まで案内され、次いで引起爪16によって梳き上げられて起立状態となった植立穀稈は、後述する株元掻込装置27(図4及び図5参照)により後方に送られ、刈取装置20を構成する左右の刈刃21L,21Rによって株元(根元)から刈り取られる。尚、これらの刈刃21L,21Rは、上下2つの刃の一方に対して他方を往復作動させることにより穀稈の株元を切断処理するレシプロ式の切断刃である。
【0014】
以上説明したように、隣接する分草体17間の距離が1条分の刈取幅となり、引起装置13の左右幅が2条分の刈取幅となる。即ち、走行機体2の前進方向に対して最も右側に配置した引起装置13である第1引起装置13Aには、右側から順に1条目及び2条目の刈取部C1,C2を形成し、第1引起装置13Aの左隣に配置した引起装置13である第2引起装置13Bには、右側から順に3条目及び4条目の刈取部C3,C4を形成し、第2引起装置13Bの左隣に配置した引起装置13である第3引起装置13Cには、右側から順に5条目及び6条目の刈取部C5,C6を形成し、最も左側に配置した引起装置13である第4引起装置13Dには、右側から順に7条目及び8条目の刈取部C7,C8を形成している。
【0015】
尚、最も左側の分草体17によって機体の左側方に分草された穀稈は、前処理部3左側の左ナローガイド19Lによって更に左方ヘガイドされ、刈刃21L,21Rによる切断処理がなされないようになっている。同様に、最も右側の分草体17によって右側方に分草された穀稈も、前処理部3右側の右ナローガイド19Rよって更に右方ヘガイドされ、刈刃21L,21Rによる切断処理がなされないようになっている。
【0016】
また、図4及び図5は、前処理部3の側面図と要部平面図であり、走行機体2の前部には、前方に向かって斜め下方に延出させた縦伝動筒22の基端部を上下回動自在に軸支している。そして、この縦伝動筒22を、走行機体2の前進方向に対して右端から4条目の刈取部C4と5条目の刈取部C5との境界位置、即ち前処理部3の左右略中間位置に配設すると共に、その先端部に横伝動筒23をT字状に連結することによって、当該前処理部3をバランスよく支持している。そして、縦伝動筒22及び横伝動筒23には、縦伝動軸24と横伝動軸26(図7参照)が回転自在に内装してあり、両伝動軸24,26を介して走行機体2側の動力を前理部3の各部に伝達している。尚、走行機体2と縦伝動筒22の間には、図示しない油圧シリンダを介装してあり、この油圧シリンダを伸縮作動させることによって走行機体2に対する前処理部3の高さ調節を可能にしている。
【0017】
上述の如く縦伝動筒22と、該縦伝動筒22の先端にT字状に連結した横伝動筒23に支持した前処理部3は、走行機体2の前進方向に対する左側部分が、左側クローラ走行装置1Lの左端に対して刈取幅略2条分だけ機体外方に突出した状態になる一方、走行機体2の前進方向に対する右側部分が、右側クローラ走行装置1Rの右端に対して刈取幅略半条分だけ機体外方に突出した状態になり、これによって、左側クローラ1Lと圃場の未刈地との間に2条分の踏み代が形成されると共に、右側クローラ1Rと圃場の未刈地との間に半条分の踏み代が形成されるようになっている。
【0018】
次に、前処理部3を構成する穀稈搬送部6を図4〜図7に基づいて説明する。図6(a),(b)は、前処理部3の動力伝達構造を示す要部平面図及び要部正面図であり、また図7は、前処理部3の伝動図であって、上述した各引起装置13の後方には、掻込スペースS付近まで案内されてきた2条分の植立穀稈の株元を後方の穀稈搬送部6に掻込搬送する株元掻込装置27を設置している。そして、各株元掻込装置27は、図4及び図5に示すように、対応する引起装置13の下部後方に上下2段に構成してあり、下段側に掻込搬送体28を、上段側に左右一対の掻込ベルト29,29をそれぞれ設けている。
【0019】
更に詳しくは、図5に示す前処理部3の要部平面図において、圃場に植立する穀稈の株元位置30に、各刈取部C1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8を位置させた後、走行機体2を前進走行させると、分草体17及び分草体支持フレーム18によって圃場に植立する穀稈が掻込スペースSまで案内され、上述の如く引起装置13によって引き起される。
【0020】
上述した左右一対の掻込ベルト29,29は、棒状の突出する搬送爪を所定ピッチで一体形成したゴムベルトであって、当該掻込ベルト29,29は、掻込スペースSで引き起された植立穀稈を掻き集めて引起装置13の後方中心に掻込搬送するハの字状の搬送路を形成している。また、掻込搬送体28は、略円盤状の周縁に多数の歯を配設したスターホイール31を左右一対に備えており、そのうち動力が入力される一方のスターホイール31が駆動スターホイール31Dとなり、もう一方のスターホイール31が前記駆動スターホイール31Dと噛み合い伝動する従動スターホイール31Sとなる。
【0021】
前記両スターホイール31D,31Sは、同数の歯を配設すると共に後方斜め上りに傾斜させた状態で配置してあり、両スターホイール31D,31Sの歯が噛み合いながら後方に回転移動する過程で、左右一対の掻込ベルト29,29によって引起装置13の後方中心まで搬送された穀稈の株元を後方斜め上方に向かって掻込搬送できるように構成している。そして、圃場に植立する穀稈は、掻込搬送体28によって掻込搬送される過程で、掻込搬送体28の下方に配置した刈刃21L,21Rによって刈り取られ、刈取穀稈として後方の穀稈搬送部6に送られる。
【0022】
また、駆動スターホイール31Dには、図7の第1株元掻込装置27Aに例示するように、当該駆動スターホイール31Dと一体回転する掻込伝動軸32によって動カが伝達される。この掻込伝動軸32は、該掻込伝動軸32と一体回転する掻込駆動スプロケット33に入力される動力によって回転駆動するようになっており、該掻込駆動スプロケット33には、チェン伝動により縦伝動軸24からの動力が伝達される。更に掻込伝動軸32には、該掻込伝動軸32と一体回転する駆動プーリ34が固定してあり、該駆動プーリ34によって左右一対の掻込ベルト29,29の一方を駆動させる。そして、もう一方の掻込ベルト29を駆動させる駆動プーリ36は、従動スターホイール31Sと一体回転する従動軸37に固定している。
【0023】
また、株元掻込装置27は、図5及び図6に示すように、4つの引起装置13に対応して該引起装置13の後方に設けている。即ち、第1引起装置13Aに対応して設ける株元掻込装置27が第1株元掻込装置27Aであり、この第1株元掻込装置27Aには、掻込駆動スプロケット33である第1掻込駆動スプロケット33Aを介して動力が入力される。そして、第2引起装置13Bに対応して設ける株元掻込装置27が第2株元掻込装置27Bであり、この第2株元掻込装置27Bには、掻込駆動スプロケット33である第2掻込駆動スプロケット33Bを介して動力が入力される。
【0024】
また、第3引起装置13Cに対応して設ける株元掻込装置27である第3株元掻込装置27Cへの動力の入力は、第2株元掻込装置27Bの駆動スターホイール31Dに歯合する第3株元掻込装置27Cの駆動スターホイール(換言すると従動スターホイール31Sとして作用する)31Dを経由した後、掻込駆動スプロケット33である第3掻込駆動スプロケット33Cを介してなされる。そして、第4引起装置13Dに対応して設ける株元掻込装置27が第4株元掻込装置27Dであり、この第4株元掻込装置27Dには、掻込駆動スプロケット33である第4掻込駆動スプロケット33Dを介して動力が入力される。
【0025】
尚、上述した各掻込駆動スプロケット33A,33B(33C),33Dには、各別に動力が入力されるので、4つの株元掻込装置27A,27B及び/または27C,27Dの何れかに穀稈等の詰りが生じた場合でも、図示しない安全装置を介して詰りが生じている株元掻込装置27(掻込駆動スプロケット33)への動力伝達を遮断すれば、他の株元掻込装置27に影響を及ぼすことなく詰まりからの復旧作業が行える。
【0026】
そして、穀稈搬送部6は、図4及び図5に示すように、図示しないガイド体に沿って刈取穀稈の株元を挟持搬送する株元搬送体として、第1株元掻込装置27Aによる掻込穀稈を搬送する第1株元搬送体38Aと、第4株元掻込装置27Dによる掻込穀稈を第1株元搬送体38Aとの合流部Mまで搬送する第4株元搬送体38Dと、第2株元掻込装置27Bによる掻込穀稈を第1株元搬送体38Aに搬送する第2株元搬送体38Bと、第3株元掻込装置27Cによる掻込穀稈を第4株元搬送体38Dに搬送する第3株元搬送体38Cと、これら株元搬送体38A,38B,38C,38Dによって搬送された穀稈を適正な扱ぎ深さに調節して後送する扱深搬送装置39と、この扱深搬送装置39よって搬送された穀稈を後方の脱穀フィードチェン8に受継する後方株元搬送体41を備えている。
【0027】
また、穀稈搬送部6は、穀稈の穂先側を搬送する穂先搬送体として、第1株元搬送体38Aから扱深搬送装置39を介して後方株元搬送体41まで株元が搬送される穀稈の穂先側を搬送する第1穂先搬送体42Aと、第4株元搬送体38Dによって株元が搬送される穀稈の穂先側を第1穂先搬送体42Aとの合流部M´まで搬送する第4穂先搬送体42Dと、第2株元搬送体38Bによって株元が搬送される穀稈の穂先側を第1穂先搬送体42Aまで搬送する第2穂先搬送体42Bと、第3株元搬送体38Cによって株元が搬送される穀稈の穂先側を第4穂先搬送体42Dまで搬送する第3穂先搬送体42Cを備えると共に、これら4つの穂先搬送体42A,42B,42C,42Dによって搬送される穀稈の穂先上端部をそれぞれ搬送する計4つの上部穂先搬送体43,43,43,43を備えている。
【0028】
上述した第1株元搬送体38Aは、図4、図5及び図7に示すように、第1株元掻込装置27Aから平面視で斜め後方に向かつて縦伝動筒22に至る搬送路を形成し、上流側及び中流側に亘り穀稈の株元を搬送するチェンベルト44を備えている。このチェンベルト44は、第1株元搬送駆動スプロケット49と第1掻込駆動スプロケット33Aとに巻回してあり、当該チェンベルト44を介して第1掻込駆動スプロケット33Aに動力が伝達される。
【0029】
そして、第2株元搬送体38Bもチェンベルトからなり、第2株元掻込装置27Bから後方に向かって第1株元搬送体38Aのチェンベルト44の搬送下流側に至る搬送路を形成し、縦伝動軸24から動力が伝達される第2株元搬送駆動スプロケット47Bと第2掻込駆動スプロケット33Bとに巻回してある。
【0030】
また、第3株元搬送体38Cもチェンベルトからなり、第3株元掻込装置27Cから後方に向かって第4株元搬送体38Dの搬送下流側に至る搬送路を形成し、上述した第3株元掻込装置27Cの駆動スターホイール31Dの回転軸d2に固設した第3掻込駆動スプロケット33Cと、第3株元搬送駆動スプロケット47Cとに巻回してある。
【0031】
更に詳しくは、第4株元搬送体38Dは、2分割形成したチェンベルト38a,38bとからなり、チェンベルト38aは、第4株元掻込装置27Dから後方に向かってチェンベルト38bの搬送上流側に至る短い搬送路を形成すると共に、チェンベルト38bは、チェンベルト38aの搬送下流側から第1株元搬送体38Aのチェンベルト44の搬送下流側に至る比較的長い搬送路を形成しており、両チェンベルト38a,38bのうちチェンベルト38aは、横伝動軸26の左端側からベベルギヤ機構B1,B2を介して分岐せしめた第4株元搬送駆動スプロケット47aと第4掻込駆動スプロケット33Dとに巻回する一方、チェンベルト38bは、同じくベベルギヤ機構B1,B3を介して分岐せしめた第4株元搬送駆動スプロケット47bと、その従動側スプロケット47Dとに巻回してある。
【0032】
そして、第4株元搬送体38Dを構成するチェンベルト38bは、第3株元搬送体38Cの搬送路との合流部よりも搬送下流側に、第1株元搬送体38Aの搬送路に合流させるための合流路51を形成している。この合流路51は、該合流路51から上流側のチェンベルト44の搬送方向に向かって傾斜しており、第4株元搬送体38Dから第1株元搬送体38Aに受継される穀稈の搬送方向を緩やかに切り換えてスムーズな受け渡しを可能にしている。
【0033】
したがって、第1株元搬送体38Aと第4株元搬送体38Dとの合流部Mには、上述した各株元搬送体38A,38B,38C,38Dの構成により、第1株元搬送体38Aと第2株元搬送体38Bの合流した刈取穀稈と、第3株元搬送体38Cと第4株元搬送体38Dの合流した刈取穀稈、即ち前処理部3の刈取装置20で刈り取った8条分の刈取穀稈の全てが合流して集束される。
【0034】
また、扱深搬送装置39は、チェンベルトからなり、第1株元搬送体38Aと第4株元搬送体38Dとの合流部Mから後方株元搬送体41への搬送路を形成し、縦伝動軸24から動力が入力される扱深搬送駆動スプロケット52を介して駆動するようになっている。そして、後方株元搬送体41の搬送最上流側に対する扱深搬送装置39の搬送下流側の位置を変更し、後方株元搬送体41での穀稈の株元挟持位置を調整することによって、後方株元搬送体41から脱穀フィードチェン8に穀稈を受継する際、該脱穀フィードチェン8における穀稈の株元側の穀稈挟持位置を変更できるように構成している。これにより、脱穀部7の図示しない扱室への穀稈の挿入量を調整する扱深制御が実行される。尚、後方株元搬送体41は、チェンベルトからなり、縦伝動軸24から動力が入力される後方株元搬送駆動スプロケット53により駆動する。
【0035】
また、上述した第1穂先搬送体42A、第2穂先搬送体42B、第3穂先搬送体42C及び第4穂先搬送体42Dは、図4に示すように、チェンベルト54と、このチェンベルト54に所定ピッチで突出・収納可能に取り付けた複数の搬送爪56とからなる。そして、各搬送爪56は、循環移動中の往路において突出姿勢に姿勢切換されて穀稈の穂先側を搬送する一方、復路において収納姿勢に姿勢切換されて搬送路上流側に戻るように構成している。
【0036】
そして、第1穂先搬送体42Aは,後方株元搬送駆動スプロケット53と一体回転する第1穂先搬送駆動スプロケット57Aによって駆動し、第2穂先搬送体42Bは第2株元搬送駆動スプロケット47Bと一体回転する第2穂先搬送駆動スプロケット57Bによって駆動し、第3穂先搬送体42Cは、第3株元搬送駆動スプロケット47Cと一体回転する第3穂先搬送駆動スプロケット57Cによって駆動する。
【0037】
また、第4穂先搬送体42Dは、上述した第4株元搬送体38Dに対応して2分割形成したチェンベルト42a,42bとからなり、チェンベルト42aは、第4株元搬送駆動スプロケット47aと一体回転する第4穂先搬送駆動スプロケット50aによって駆動する一方、チェンベルト42bは、第4株元搬送駆動スプロケット47bと一体回転する第4穂先搬送駆動スプロケット50bによって駆動するようになっている。
【0038】
そして、これら4つの穂先搬送体42A,42B,42C,42Dによって搬送される穀稈の穂先上端部をそれぞれ搬送する計4つの上部穂先搬送体43,43,43,43は、それぞれチェンベルトからなり、対応する穂先搬送体42A,42B,42C,42Dの動力が伝達される上部穂先搬送駆動スプロケット58によりそれぞれ駆動する。
【0039】
次に、前処理部3の動力伝達機構を図6及び図7に基づいて説明する。縦伝動筒22内の縦伝動軸24には、縦伝動筒22の基端側近くに配置した油圧式無段変速装置(搬送HST)59を介して図示しないエンジンの動力が入力される。そして、縦伝動軸24の動力は、縦伝動軸24の下端(最下流)部に設けたベベルギヤ機構61を介して横伝動筒23内の横伝動軸26に伝達される。次いで横伝動軸26に伝達された動力は、該横伝動軸26の右端部側に設けたベベルギヤ機構62を介して、横伝動筒23の右端部側から立設させた縦伝動筒63内に支承した引起伝動軸64に伝達される。更に引起伝動軸64に伝達された動力は、変速伝動機構66及びベベルギヤ機構67を介して、縦伝動筒63の上端部から機体内側方向(左方向)に延出させた上筒68内に支承した引起駆動軸69に伝達される。
【0040】
また、縦伝動軸24の上流部には、ベベルギヤ機構71が設けてあり、この該ベベルギヤ機構71を介して、縦伝動筒22の上端部(基端部)の左側に回転自在に支持した後方株元搬送駆動スプロケット53、及び第1穂先搬送駆動スプロケット57Aに縦伝動軸24の動力が伝達される。
【0041】
また、縦伝動軸24の中流部には、ベベルギヤ機構72が設けてあり、このベベルギヤ機構72を介して、縦伝動筒22の中途部の左側に回転自在に支持された第1株元搬送駆動スプロケット49に縦伝動軸24の動力が伝達される。一方、ベベルギヤ機構72に伝達された動力は、ベベルギヤ機構73を介して、前記第1株元搬送駆動スプロケット49の上方に回転自在に支持した扱深搬送駆動スプロケット52に伝達される。
【0042】
また、縦伝動軸24の下流部には、ベベルギヤ機構74が設けてあり、このベベルギヤ機構74に伝達された動力は、ベベルギヤ機構76,77を介して縦伝動筒22の先端部近傍に回転自在に支承した第2搬送体駆動軸79Bに伝達される。そして、第2搬送体駆動軸79Bには、第2株元搬送駆動スプロケット47B及び第2穂先搬送駆動スプロケット57Bが一体的に固定してあり、両スプロケット47B,57Bは、第2搬送体駆動軸79Bと一体回転する。
【0043】
更に、第2搬送体駆動軸79Bに伝達された動力は、第2株元搬送駆動スプロケット47Bと掻込駆動スプロケット33Bに巻回した第2株元搬送体38Bを介して、第2株元掻込装置27Bの駆動スターホイール31Dの回転軸d1に伝達すると共に、この第2株元掻込装置27Bの駆動スターホイール31Dに歯合する第3株元掻込装置27Cの駆動スターホイール31Dを介して、その回転軸d2に動力が伝達され、該回転軸d2に固設した第3掻込駆動スプロケット33Cと第3株元搬送駆動スプロケット47Cに巻回した第3株元搬送体38Cが駆動する。そして、第3株元搬送駆動スプロケット47Cの回転軸である第3搬送体伝動軸79Cの上端には、第3穂先搬送体42Cの第3穂先搬送駆動スプロケット57Cを一体的に固定してあり、当該第3搬送体伝動軸79Cを介して第3穂先搬送体42Cと上部穂先搬送体43が駆動するようになっている。
【0044】
また、横伝動軸26の動カは、この横伝動軸26の左端部寄りと右端部にそれぞれ設けたベベルギヤ機構81,82を介して、刈取装置20を構成する左右の刈刃21L,21Rに各別に伝動されるようになっている。更に詳しくは、これら左右の刈刃21L,21Rは、図示しない固定刃に重合して左右に往復摺動する可動刃であり、左側の刈刃21Lは、図5に示すように、走行機体2の前進方向に対して左から数えて2番目と3番目のスターホイール31D,31Sの間にクランク式の駆動部(駆動手段)K1を設ける一方、右側の刈刃21Rは、走行機体2の前進方向に対して最右端のスターホイール31Dの略外側位置にクランク式の駆動部(駆動手段)K2を設けている。
【0045】
また、引起駆動軸69の右端近傍には、ベベルギヤ機構84が設けてあり、このベベルギヤ機構84を介して第1引起装置13Aの右引起ケース14Rの引起爪16を駆動させる引起チェン86に引起駆動軸69の動力が伝達される。そして、ベベルギヤ機構84の左側には、ベベルギヤ機構87が設けてあり、このベベルギヤ機構87を介して第1引起装置13Aの左引起ケース14Lの引起爪16を駆動させる引起チェン88と、第2引起装置13Bの右引起ケース14Rの引起爪16を駆動させる引起チェン89とに、引起駆動軸69の動力が伝達されるようになっている。
【0046】
次いで、引起駆動軸69の中央部(ベベルギヤ機構87の左側)には、ベベルギヤ機構91が設けてあり、このベベルギヤ機構91を介して第2引起装置13Bの左引起ケース14Lの引起爪16を駆動させる引起チェン92と、第3引起装置13Cの右引起ケース14Rの引起爪16を駆動させる引起チェン93とに、引起駆動軸69の動力が伝達される。そして、ベベルギヤ機構91の左側には、ベベルギヤ機構94が設けてあり、このベベルギヤ機構94を介して第3引起装置13Cの左引起ケース14Lの引起爪16を駆動させる引起チェン96と、第4引起装置13Dの右引起ケース14Rの引起爪16を駆動させる引起チェン97とに、引起駆動軸69の動力が伝達されるようになっている。
【0047】
更に、引起駆動軸69の左側端部、即ちベベルギヤ機構94の左側には、ジョイントJを介して着脱自在な短い引起駆動軸69´を連結すると共に、この引起駆動軸69´の左端に設けたベベルギヤ機構98を介して、第4引起装置13Dの左引起ケース14Lの引起爪16を駆動させる引起チェン99に引起駆動軸69(69´)の動力を伝達できるように構成している。
【0048】
以上説明した刈取条数が8条の前処理部3の構造によれば、走行機体2の前進方向に対する左端1条分の引起装置である第4引起装置13Dの左引起ケース14Lと、この左引起ケース14Lに対応する第4株元掻込装置27Dの(左側の)従動スターホイール31Sと掻込ベルト29とを、図5にR矢印で例示するように着脱可能に構成することができるので、前記左端1条分の第4引起装置13Dの左引起ケース14Lと、この左引起ケース14Lに対応する第4株元掻込装置27Dの従動スターホイール31S及び掻込ベルト29と、それらに付随する部品とを取り外せば、残りの刈取条数7条分の前処理部3を支持したコンバインは、トラック等の運搬車両の荷台からはみ出すことなく搭載できるようになり、当該前処理部3全体を走行機体から取り外さなくてもトラック等の運搬車両による搬送が可能になる。尚、この時の横伝動筒23と上筒68の切り離し位置は、図6に示すT1とT2位置である。
【0049】
そして、前処理部3を支持する横伝動筒23の右端から立設した縦伝動筒63内の引起伝動軸64と、この縦伝動筒63の上端から横設した上筒68内の引起駆動軸69を介して各引起装置13へ動力を伝達することによって、各引起装置13へは、個別に動力を分岐させて伝達することができ、それにより前記左端1条分の引起装置、即ち第4引起装置13Dの左引起ケース14Lにおける伝動部の着脱構造(J)を簡潔に構成できると共に、取り外し可能部品全体の軽量化を図れる。
【0050】
また、第4株元掻込装置27Dを駆動スターホイール31Dと従動スターホイール31Sの噛み合い伝動により駆動させ、且つ左端1条分の引起装置である第4引起装置13Dの左引起ケース14L側に従動スターホイール31Sを配置すると共に、左端の株元掻込装置27Dによる掻込穀稈を受継して搬送(後送)する第4株元搬送体(左側の株元搬送体)38Dを、駆動スターホイール31Dと同一軸芯上に支持したスプロケット33Dに巻回して設けたことによって、刈取穀稈の搬送性能を損なうことなく、前記左端1条分の引起装置(第4引起装置13Dの左引起ケース14L)13に対応する第4株元掻込装置27Dにおける着脱構造を簡潔に構成できると共に、取り外し可能部品全体の軽量化を図れる。
【0051】
更に、走行機体2の前進方向に対して左から数えて2番目と3番目のスターホイール31D,31Sの間に刈取装置20の駆動部K1を設けたことによって、走行機体2の前進方向に対する左端1条分の刈取装置の引起装置である第4引起装置13Dの着脱構造を容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】コンバインの正面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】コンバインの側面図。
【図4】前処理部の側面図。
【図5】前処理部の要部平面図。
【図6】(a),(b)前処理部の動力伝達構造を示す要部平面図と要部正面図。
【図7】前処理部の伝動系統図。
【符号の説明】
【0053】
2 走行機体
3 前処理部
13 引起装置
20 刈取装置
22 縦伝動筒
23 横伝動筒
27 株元掻込装置
27D 左端の株元掻込装置
31D 駆動スターホイール
31S 従動スターホイール
33D スプロケット(第4掻込駆動スプロケット)
38D 左側の株元搬送体(第4株元搬送体)
63 縦伝動筒
64 引起伝動軸
68 上筒
69 引起駆動軸
K1 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(2)の前方に延出させた縦伝動筒(22)と、該縦伝動筒(22)の先端にT字状に連結した横伝動筒(23)に刈取条数が8条の前処理部(3)を支持し、この前処理部(3)に前記刈取条数に対応する複数の引起装置(13)と株元掻込装置(27)を設けたコンバインにおいて、走行機体(2)の前進方向に対する左端1条分の引起装置(13)と株元掻込装置(27)とを着脱可能に構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記横伝動筒(23)の右端から立設した縦伝動筒(63)内の引起伝動軸(64)と、この縦伝動筒(63)の上端から横設した上筒(68)内の引起駆動軸(69)を介して各引起装置(13)へ動力を伝達することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記複数の株元掻込装置(27)を駆動スターホイール(31D)と従動スターホイール(31S)の噛み合い伝動により駆動させ、且つ左端1条分の引起装置(13)側に従動スターホイール(31S)を配置すると共に、左端の株元掻込装置(27D)による掻込穀稈を搬送する株元搬送体(38D)を、駆動スターホイール(31D)と同一軸芯上に支持したスプロケット(33D)に巻回して設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
走行機体(2)の前進方向に対して左から数えて2番目と3番目のスターホイール(31D,31S)の間に刈取装置(20)の駆動部(K1)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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