説明

コンバイン

【課題】エンジンを小型で小排気量のものとして、燃料消費量の低減を図ることができるコンバインを提供する。
【解決手段】走行部10と、刈取部20と、脱穀部30と、選別部40と、穀粒処理部50と、排藁処理部60とを備えたコンバイン1において、第一エンジン70と、第二エンジン80と、発電機81と、バッテリ82と、モータ群83と、バッテリ82の充電残量を検出する充電残量検出手段91と、第二エンジン80のエンジン回転数を検出する第二エンジン回転数検出手段93と、第二エンジン80とモータ群83の各モータとを制御する制御手段90とを備え、制御手段90は、充電残量検出手段91により検出された検出値C0がバッテリ82への充電を開始するために設定した第一設定値C1を上回る場合に、第二エンジン80を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンまたはモータから刈取部、脱穀部等の各作業部に動力を供給可能とするコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと、このエンジンの動力によって作動することとされる発電機からの電力で作動する電動モータとを用いて、刈取部、脱穀部等の各作業部を作動させるコンバインは公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。また、二つのエンジンを備え、それぞれのエンジンの動力を異なる作業部に供給してこれらを作動させるコンバインが公知となっている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−242558号公報
【特許文献2】特開2008−161067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなコンバインにおいては、電動モータの電力源となる発電機をエンジンで作動させているため、コンバインの各作業部を作動するための作動力と、発電機を作動するための作動力とを加えた大きさの出力をエンジンに持たせる必要があり、エンジンの大型化、大排気量化につながっていた。また、高負荷作業が連続的に行われる場合には、バッテリに十分な充電ができないことがあり得る。
【0005】
特許文献2のようなコンバインにおいては、各エンジンを小型化することができ、単一の高出力の大型エンジンを搭載する場合に比較して安価に構成することができるが、常時作動することとされるので燃料消費量の低減にはつながらなかった。
【0006】
そこで本発明は、エンジンを小型で小排気量のものとして、燃料消費量の低減を図ることができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1においては、機体を走行させる走行部と、穀稈を刈り取る刈取部と、前記刈取部で刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部と、前記脱穀部で脱穀した穀粒を選別する選別部と、前記選別部で選別した穀粒を貯溜または排出する穀粒処理部と、前記脱穀部で脱穀した後の排藁を処理する排藁処理部とを備えたコンバインにおいて、前記走行部と前記刈取部とに動力を供給する第一エンジンと、前記脱穀部と前記選別部と前記穀粒処理部と前記排藁処理部とに動力を供給するモータ群と、前記モータ群の各モータに電力を供給するバッテリと、前記バッテリを充電する発電機と、前記発電機を作動する第二エンジンと、前記バッテリの充電残量を検出する充電残量検出手段と、前記第二エンジンのエンジン回転数を検出する第二エンジン回転数検出手段と、前記第二エンジンと前記モータ群の各モータとを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記充電残量検出手段により検出された検出値が前記バッテリへの充電を開始するために設定した第一設定値を上回る場合に、前記第二エンジンを停止させるものである。
【0009】
請求項2においては、脱穀作業状態であるか否かを検出する脱穀状態検出手段を備え、
前記制御手段は、前記充電残量検出手段により検出された検出値が前記第一設定値以下であって前記モータ群の各モータに電力を供給することができる第二設定値を上回る場合に、脱穀作業状態でなければ、前記第二エンジンを停止させるものである。
【0010】
請求項3においては、前記刈取部からの穀稈を前記脱穀部の搬送装置の搬送始端部とで挟持して当該搬送装置側へ案内する作用位置と、この作用位置から退避した非作用位置とに位置を切替可能とした供給ガイドと、前記供給ガイドの位置を検出する供給ガイド位置検出手段とを備え、前記制御手段は、前記充電残量検出手段により検出された検出値が前記第一設定値以下であって前記モータ群の各モータに電力を供給することができる第二設定値を上回る場合に、前記供給ガイドが非作用位置であれば、前記第二エンジンを停止させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、第一エンジンから走行部および刈取部に動力を供給して、これらの各作業部を作動させることが可能となるとともに、モータ群から脱穀部と選別部と穀粒処理部と排藁処理部とに動力を供給して、これらの各作業部を作動させることが可能となる。したがって、各エンジンを小型で小排気量のものとして、燃料消費量の低減を図ることができる。
【0013】
また、第二エンジンを作業状態に応じて効率よく作動制御する、即ち無駄に作動させることなく状況に応じて適切に停止させることが可能となる。したがって、第二エンジンを小型で小排気量のものとして、燃料消費量の低減を図ることができる。しかも、走行部および刈取部を除く作業部にはモータから動力を供給するため、これらの作業部を安定して作動させることができ、作業効率を向上させることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、刈取作業状態ではなく、脱穀作業状態でもない非収穫作業状態となる場合、モータ群の各モータを作動可能としながら、第二エンジンを必要以上には作動させないようにすることが可能となる。したがって、非収穫作業時に、第二エンジンを適切に停止させて、燃料消費量の低減を図ることができるとともに、振動や騒音の低減を図ることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、供給ガイドを非作用位置に移動させて手扱き作業を行う場合、モータ群の各モータを作動可能としながら、第二エンジンを必要以上には作動させないようにすることが可能となる。したがって、手扱き作業時に、第二エンジンを適切に停止させて、燃料消費量の低減を図ることができるとともに、振動や騒音の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの構成を示す左側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの動力伝達の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御構成を示すブロック図。
【図4】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御方法を示すフローチャート図。
【図5】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御方法を示すフローチャート図。
【図6】本発明の他の実施形態に係るコンバインの動力伝達の構成を示すブロック図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るコンバインの制御構成を示すブロック図。
【図8】本発明の他の実施形態に係るコンバインの制御方法を示すフローチャート図。
【図9】本発明の他の実施形態に係るコンバインの制御方法を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0018】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体的な構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、コンバイン1には、その作業部として、走行部10、刈取部20、脱穀部30、選別部40、穀粒処理部50、排藁処理部60が備えられる。コンバイン1には、また、操縦部9が備えられる。
【0020】
走行部10は、機体フレーム2の下部に設けられる。走行部10は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置11等を有する。走行部10は、クローラ式走行装置11によりコンバイン1を前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0021】
刈取部20は、機体フレーム2の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部20は、分草具21や、引起装置22や、切断装置23や、搬送装置24等を有し、分草具21により圃場の穀稈を分草し、引起装置22により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置23により引起後の穀稈の株元を切断し、搬送装置24により切断後の穀稈を脱穀部30へ搬送することができるように構成される。
【0022】
脱穀部30は、機体フレーム2の左側前部に設けられ、刈取部20の後方に配置される。脱穀部30は、フィードチェーン31や、図示しない扱胴や処理胴や受網等を有し、フィードチェーン31により刈取部20から搬送されてくる穀稈を供給ガイド32を介して受け継いで排藁処理部60へ搬送し、前記扱胴および受網により搬送中の穀稈を脱穀し、その脱穀物を漏下させることができるように構成される。
【0023】
脱穀部30は、さらに供給ガイド32を有し、供給ガイド32により刈取部20の搬送装置24からの穀稈をフィードチェーン31側へ案内することができるように構成される。供給ガイド32は、フィードチェーン31の搬送始端部の上方に設けられ、刈取部20の搬送装置24の下流側に配置される。本実施形態において、供給ガイド32は弓形状のガイド杆とされ、その後部を回動支点として、フィードチェーン31に対して近接または離間する方向へ回動可能なものとされる。
【0024】
そして、供給ガイド32は、フィードチェーン31に近接するように回動されて、刈取部20の搬送装置24からの穀稈に上方から接してこれをフィードチェーン31側へ案内する刈取作業位置である作用位置p1と、フィードチェーン31から離間するように回動されて、作用位置p1から上方へ退避した手扱き作業位置である非作用位置p2とに移動可能とされる。供給ガイド32の位置の切替は、供給ガイド32の直接操作、または供給ガイド32に連動連結された操縦部9の操作手段の操作により行われる。
【0025】
選別部40は、機体フレーム2の左側部に設けられ、脱穀部30の下方に配置される。選別部40は、揺動選別装置や、風選別装置や、穀粒搬送装置や、藁屑排出装置等を有し、脱穀部30から落下する脱穀物を穀粒と藁屑や塵埃等とに揺動選別装置と風選別装置により選別する。前記穀粒搬送装置により選別後の穀粒を穀粒処理部50へ搬送する一方、前記藁屑排出装置により藁屑や塵埃等を外部へ排出することができるように構成される。
【0026】
穀粒処理部50は、機体フレーム2の右側後部に設けられ、脱穀部30および選別部40の右側方に配置される。穀粒処理部50は穀粒タンク51や、穀粒排出装置52等を有し、穀粒タンク51により選別部40から搬送されてくる穀粒を一時的に貯溜し、穀粒排出装置52により貯溜中の穀粒を穀粒タンク51から排出し、更に任意の方向に搬送してから外部へ排出することができるように構成される。
【0027】
排藁処理部60は、機体フレーム2の左側後部に設けられ、脱穀部30の後方に配置される。排藁処理部60は、排藁搬送装置や、排藁結束装置や、排藁切断装置等を有し、前記排藁搬送装置により脱穀部30から搬送されてくる脱穀済みの穀稈を受け継いでこれを排藁として外部へ排出する、もしくは前記排藁切断装置へ搬送し、該排藁切断装置により切断してから外部へ排出することができるように構成される。
【0028】
操縦部9は、機体フレーム2の右側前部に設けられ、刈取部20の後方かつ右側方に配置されるとともに、穀粒処理部50の前方に配置される。操縦部9は、操縦席3、前記各作業部の作動状態を変更する操作手段、ステップなどを有して、操縦席3にステップ上の操縦者を着座させ、前記操作手段を用いて操縦者が各作業部を操縦することができるように構成される。
【0029】
前記操作手段には、走行部10にて走行するコンバイン1を旋回させるステアリングハンドル4、その走行速度を変更する変速レバーが含まれる。前記操作手段には、また、脱穀部30と選別部40と排藁処理部60との作動状態を変更する作業操作スイッチ5(図3参照)、刈取部20の作動状態を変更する刈取クラッチスイッチ6(図3参照)、穀粒処理部50の作動状態を変更する穀粒排出スイッチが含まれる。ただし、作業操作スイッチ5を複数として、別々のスイッチにより脱穀部30と選別部40と排藁処理部60の作動状態を変更可能としてもよい。
【0030】
このようにして、コンバイン1は、操縦部9における操作手段の操作によって、後述のように動力を各作業部に適宜に供給し、走行部10を用いて走行しながら、刈取部20で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部30で刈り取った穀稈を脱穀し、選別部40で脱穀部30からの脱穀物を選別して、穀粒処理部50で穀粒を一時的に貯溜して外部へ排出することができるとともに、排藁処理部60で脱穀部30からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0031】
続いて、コンバイン1の動力伝達系統の構成について説明する。
【0032】
図2に示すように、コンバイン1には二つのエンジン、即ち第一エンジン70と第二エンジン80とが備えられる。そして、第二エンジン80に対して、発電機81と、バッテリ82と、複数の電動モータからなるモータ群83と、複数のインバータからなるインバータ群84とが備えられる。
【0033】
ここでのモータ群83には、脱穀部用モータ83a、選別部用モータ83b、穀粒処理部用モータ83c、排藁処理部用モータ83dが含まれる。インバータ群84には、インバータ84a、インバータ84b、インバータ84c、インバータ84dが含まれる。
【0034】
第一エンジン70は、機体フレーム2の任意の部分に設けられる。第一エンジン70には、トランスミッションが連動連結されて、第一エンジン70から前記トランスミッションに動力が供給可能とされる。前記トランスミッションには走行部10が連動連結されて、このトランスミッションから走行部10に動力が供給可能とされる。こうして、走行部10は動力を第一エンジン70から前記トランスミッションを介して供給される構成とされる。
【0035】
前記トランスミッションには、また、刈取部20が動力伝達機構を介して連動連結されて、このトランスミッションから刈取部20に動力が供給可能とされる。こうして、刈取部20は動力を第一エンジン70から前記トランスミッションを介して供給される構成とされる。ただし、刈取部20は動力を第一エンジン70から前記トランスミッションを介さずに供給可能な構成ともされる。
【0036】
刈取部20と前記トランスミッションとの間の動力伝達経路には、刈取クラッチ25が設けられる。刈取クラッチ25は、アクチュエータを含み、刈取クラッチスイッチ6のON/OFF操作に基づいて前記アクチュエータにより「入」「切」され、「入」状態とされた場合には、第一エンジン70から前記トランスミッションを介して刈取部20へ動力を伝達させ、「切」状態とされた場合には、第一エンジン70から刈取部20へ動力を伝達させないように構成される。
【0037】
よって、コンバイン1においては、第一エンジン70から前記トランスミッションを介して走行部10に動力が供給されて、走行部10が作動することとされる。また、刈取クラッチ25が「入」状態であれば、第一エンジン70から前記トランスミッションを介して刈取部20に動力が供給されて、刈取部20が作動することとされる。刈取クラッチ25が「切」状態であれば、第一エンジン70から前記トランスミッションを介して刈取部20に動力が供給されず、刈取部20は停止することとされる。
【0038】
第二エンジン80は、機体フレーム2の任意の部分に設けられる。第二エンジン80には、発電機81が連動連結されて、第二エンジン80から発電機81に動力が供給可能とされる。発電機81は、さらにバッテリ82に電気的に接続されて、発電機81からバッテリ82に電力が供給可能とされる。
【0039】
バッテリ82には、モータ群83の各モータがこれと対応するインバータ群84のインバータを介して接続される。具体的には、バッテリ82に、脱穀部用モータ83aがインバータ84aを、選別部用モータ83bがインバータ84bを、穀粒処理部用モータ83cがインバータ84cを、排藁処理部用モータ83dがインバータ84dを介して接続される。こうして、バッテリ82からモータ群83の各モータに電力が供給可能とされる。
【0040】
モータ群83において、脱穀部用モータ83aの出力軸には、脱穀部30に備えられたフィードチェーン31、扱胴等の各装置の入力軸が動力伝動機構を介して連動連結されて、脱穀部用モータ83aから各装置に動力が供給可能とされる。こうして、脱穀部30は動力を脱穀部用モータ83aから供給される構成とされる。
【0041】
なお、本実施形態においては、脱穀部用モータ83aとして二つのモータが備えられ、一方のモータの出力軸に扱胴等の入力軸が動力伝動機構を介して連動連結され、他方のモータの出力軸にフィードチェーン31の入力軸が動力伝動機構を介して連動連結されて、別々のモータから扱胴等とフィードチェーン31とにそれぞれ動力が供給可能とされる。
【0042】
選別部用モータ83bの出力軸には、選別部40に備えられた揺動選別装置、風選別装置等の各装置の入力軸が動力伝動機構を介して連動連結されて、動力が選別部用モータ83bから各装置に供給可能とされる。こうして、選別部40は動力を第一エンジン70からではなく、選別部用モータ83bから供給される構成とされる。ただし、選別部用モータ83bを複数のモータとして、別々のモータから各装置にそれぞれ動力を供給可能としてもよい。
【0043】
穀粒処理部用モータ83cの出力軸には、穀粒処理部50に備えられた穀粒排出装置52の入力軸が動力伝達機構を介して連動連結されて、穀粒処理部用モータ83cから穀粒排出装置52に動力が供給可能とされる。こうして、穀粒処理部50は動力を穀粒処理部用モータ83cから供給される構成とされる。
【0044】
排藁処理部用モータ83dの出力軸には、排藁処理部60に備えられた排藁搬送装置、排藁切断装置等の各装置の入力軸が動力伝達機構を介して連動連結されて、排藁処理部用モータ83dから各装置に動力が供給可能とされる。こうして、排藁処理部60は動力を排藁処理部用モータ83dから供給される構成とされる。ただし、排藁処理部用モータ83dを複数のモータとして、別々のモータから各装置にそれぞれ動力を供給可能としてもよい。
【0045】
よって、コンバイン1においては、第二エンジン80から発電機81に動力が供給された場合、発電機81で発電が行われ、発電機81で発電された電力がバッテリ82に充電される。そして、バッテリ82に充電された電力がインバータ群84の各インバータで直流電力から交流電力に変換されて、モータ群83の各モータに供給されたとき、各モータが作動することとされる。このときモータ群83の各モータの回転数はインバータ群84の各インバータで制御される。
【0046】
このようにして、コンバイン1の動力伝達系統は、第一エンジン70から走行部10、刈取部20への動力伝達系統と、モータ群83の各モータから脱穀部30、選別部40、穀粒処理部50、排藁処理部60への動力伝達系統とに分けられる。そのため、コンバイン1においては、脱穀部30、選別部40、穀粒処理部50、排藁処理部60が互いに独立して作動するとともに、走行部10および刈取部20とも独立して作動することとされる。
【0047】
続いて、コンバイン1の各作業部への動力供給に係る制御の構成について説明する。
【0048】
図3に示すように、コンバイン1には、第一エンジンコントロールユニット(以下、第一ECUと記す)75、第二エンジンコントロールユニット(以下、第二ECUと記す)85が備えられる。第一ECU75により第一エンジン70が制御可能とされ、第二ECU85により第二エンジン80が制御可能とされる。
【0049】
さらに、回転センサ等からなる走行速度検出手段19が備えられる。走行速度検出手段19は車軸等に設けられる。そして、走行速度検出手段19によりコンバイン1の走行速度が検出可能とされる。
【0050】
電圧センサまたは電流センサ等からなる発電機出力検出手段89、電圧センサまたは電流センサ等からなる充電残量検出手段91が備えられる。発電機出力検出手段89により発電機81の出力電力が検出可能とされ、充電残量検出手段91によりバッテリ82の充電残量が検出可能とされる。
【0051】
回転センサ等からなる第一エンジン回転数検出手段92、回転センサ等からなる第二エンジン回転数検出手段93が備えられる。第一エンジン回転数検出手段92により第一エンジン70の回転数が検出可能とされ、第二エンジン回転数検出手段93により第二エンジン80の回転数が検出可能とされる。
【0052】
脱穀状態検出手段94が備えられる。この脱穀状態検出手段94により脱穀部30の作動状態が検出可能とされる。脱穀状態検出手段94は、本実施形態においては、前記操作手段に含まれる作業操作スイッチ5のON/OFF操作に基づいて脱穀部30の作動状態を検出する、即ち作業操作スイッチ5がON操作された場合には、脱穀部30が作動状態であることを検出し、OFF操作された場合には、脱穀部30が停止状態であることを検出するように構成される。
【0053】
刈取状態検出手段95が備えられる。この刈取状態検出手段95により刈取部20の作動状態が検出可能とされる。刈取状態検出手段95は、本実施形態においては、前記操作手段に含まれる刈取クラッチスイッチ6のON/OFF操作に基づいて刈取部20の作動状態を検出する、即ち刈取クラッチスイッチ6がON操作された場合には、刈取部20が作動状態であることを検出し、OFF操作された場合には、刈取部20が停止状態であることを検出するように構成される。
【0054】
ポテンショメータ等からなる供給ガイド位置検出手段96が備えられる。この供給ガイド位置検出手段96により脱穀部30に備えられた供給ガイド32の位置が検出可能、即ち供給ガイド32が刈取作業位置である作用位置p1と、手扱き作業位置である非作用位置P2とのいずれの位置にあるかが検出可能とされる。
【0055】
回転センサ等からなるモータ回転数検出手段97が備えられる。具体的には、モータ回転数検出手段97として、脱穀部用モータ回転数検出手段97a、選別部用モータ回転数検出手段97b、穀粒処理部用モータ回転数検出手段97c、排藁処理部用モータ回転数検出手段97dが備えられる。モータ回転数検出手段97によりそれぞれ対応するモータ群83のモータの回転数が検出可能とされる。
【0056】
制御手段90が備えられる。制御手段90は、各種演算処理を実行する中央処理装置(CPU)、制御プログラム等を記憶させた読み出し専用のメモリ(ROM)、各種プログラムやデータ等を一時的に記憶させる、随時読み書き可能なメモリ(RAM)等で構成される。
【0057】
制御手段90は、前記操作手段に含まれる作業操作スイッチ5や刈取クラッチスイッチ6、走行速度検出手段19、発電機出力検出手段89、バッテリ82の充電残量検出手段91、第一エンジン回転数検出手段92、第二エンジン回転数検出手段93、脱穀状態検出手段94、刈取状態検出手段95、供給ガイド位置検出手段96、モータ群83の各モータのモータ回転数検出手段97と接続される。
【0058】
制御手段90は、また、第一ECU75、第二ECU85、刈取クラッチ25のアクチュエータと接続される。しかも、制御手段90は、モータ群83の各モータとこれに対応するインバータ群84のインバータを介して接続される。具体的には、制御手段90は、脱穀部用モータ83aとはインバータ84aを、選別部用モータ83bとはインバータ84bを、穀粒処理部用モータ83cとはインバータ84cを、排藁処理部用モータ83dとはインバータ84dを介して接続される。
【0059】
そして、作業操作スイッチ5がON/OFF操作されたとき、その操作に基づいて脱穀部用モータ83a、選別部用モータ83b、排藁処理部用モータ83dが制御手段90により制御され、その作動状態が変更される。作業操作スイッチ5がON操作された場合には、脱穀部用モータ83a、選別部用モータ83b、排藁処理部用モータ83dがあらかじめ設定された設定回転数で作動することとされる。作業操作スイッチ5がOFF操作された場合には、これに応じて制御信号が制御手段90からインバータ84a・84b・84dに送られて、脱穀部用モータ83a、選別部用モータ83b、排藁処理部用モータ83dが停止することとされる。
【0060】
刈取クラッチスイッチ6がON/OFF操作されたとき、その操作に基づいて刈取クラッチ25のアクチュエータが制御手段90により制御され、刈取クラッチ25の「入」「切」状態が変更される。刈取クラッチスイッチ6がON操作された場合には、前記アクチュエータが作動することとされ、これにより刈取クラッチ25が「入」状態とされる。刈取クラッチスイッチ6がOFF操作された場合、前記アクチュエータが作動することとされ、これにより刈取クラッチ25が「切」状態とされる。
【0061】
モータ回転数検出手段97によりモータ群83の各モータの回転数が検出されて、これらの検出値に基づいて各モータが制御手段90により制御され、モータ群83の各モータの回転数が設定回転数となるように変更される。これにより、各作業部における装置の入力軸が所定の回転数で回転するものとされる。ただし、各モータ回転数を検出するのではなく、各作業部における装置の入力軸の回転数を検出し、その検出値に基づいて各モータを制御手段90により制御することも可能である。
【0062】
そのうえ、発電機出力検出手段89により発電機81の出力電力が検出され、充電残量検出手段91によりバッテリ82の充電残量が検出されて、これらの検出値に基づいて第二エンジン80が制御手段90と第二ECU85とにより制御され、第二エンジン80の回転数が変更される。具体的には、次のような流れで第二エンジン80の制御が行われ、その作動状態が変更される。
【0063】
即ち、図4に示すように、第一エンジン70および第二エンジン80が作動されている状態で、まず充電残量検出手段91によりバッテリ82の充電残量が検出され(S1)、その検出値C0が第一設定値C1を上回るか否かが制御手段90により判定される(S2)。第一設定値C1は、バッテリ82への充電の開始を決定する閾値としてあらかじめ設定される。
【0064】
この判定の結果、検出値C0が第一設定値C1を上回れば、制御手段90と第二ECU85とにより第二エンジン80が停止することとされる(S3)。この場合、バッテリ82が十分に充電されていて、モータ群83の各モータは作動可能であるため、第二エンジン80、ひいては発電機81が停止することとされる。
【0065】
検出値C0が第一設定値C1以下であれば、続いて制御Aが行われる(S4)。図5に示すように、制御Aでは、まず検出値C0が第二設定値C2を上回るか否かが制御手段90により判定される(S5)。第二設定値C2は、第一設定値C1より小さく、バッテリ82に一定容量の電力が蓄えられてモータ群83の各モータに電力を供給することができる値にあらかじめ設定される。
【0066】
この判定の結果、検出値C0が第二設定値C2以下であれば、第二エンジン80は作動することとされる(S6)。一方、検出値C0が第二設定値C2を上回れば、脱穀状態検出手段94の検出結果に基づいて、脱穀部30が作動している脱穀状態であるか否かが判定される(S7)。
【0067】
この判定の結果、脱穀状態でなければ、非収穫作業中と判断され、制御手段90と第二ECU85とにより第二エンジン80が停止することとされる(S8)。この場合、モータ群83の各モータは一定条件のもとで作動可能とされるため、第二エンジン80、ひいては発電機81が停止することとされる。
【0068】
脱穀状態であれば、刈取部20が作動している刈取状態であるか否かが判定される(S9)。この判定の結果、刈取状態であれば、収穫作業中と判断され、第二エンジン80は作動することとされる(S6)。この場合、発電機出力検出手段89の検出値が所定値を上回るか否かが判定され、その検出値が所定値以下であれば、制御手段90および第二ECU85により第二エンジン80がその回転数を増加させるように作動することとされる。
【0069】
刈取状態でなければ、供給ガイド位置検出手段96により検出された検出値に基づいて、供給ガイド32が刈取作業位置である作用位置p1と、手扱き作業位置である非作用位置p2のいずれにあるかが判定される(S10)。この判定の結果、供給ガイド32が作用位置p1にあれば、第二エンジン80は作動することとされる(S6)。
【0070】
一方、供給ガイド32が非作用位置p2にあれば、手扱き作業中と判断され、制御手段90と第二ECU85とにより第二エンジン80が停止することとされる(S8)。この場合、脱穀部用モータ83aを含む各モータは一定条件のもとで作動可能とされるため、第二エンジン80、ひいては発電機81が停止することとされる。
【0071】
また、前述のような制御の結果、第二エンジン80が停止されている場合でも、充電残量検出手段91により検出される検出値C0が第三設定値を上回るか否かが随時判定される。そして、検出値C0が第三設定値以下となれば、第二エンジン80は強制的に作動することとされる。第三設定値は第二設定値C2より小さく、モータ群83の各モータを作動させるための必要最低限の値またはそれよりも若干大きな値に設定される。
【0072】
なお、手扱き作業は、走行部10が作動されない、即ちコンバイン1の走行が停止され、刈取部20が作動されない状態で行われる。このことから、供給ガイド32が非作用位置p2とされた場合、前述のように手扱き作業中と判断させ、制御手段90と第一ECU75とにより第一エンジン70を停止させるようにすることも可能である。この場合、手扱き作業時に、第一エンジン70を適切に停止させて、燃料消費量の低減を図ることができるとともに、振動や騒音の低減を図ることができる。
【0073】
以上のように、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、機体を走行させる走行部10と、穀稈を刈り取る刈取部20と、刈取部20で刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部30と、脱穀部30で脱穀した穀粒を選別する選別部40と、選別部40で選別した穀粒を貯溜または排出する穀粒処理部50と、脱穀部30で脱穀した後の排藁を処理する排藁処理部60とを備えたものであって、走行部10と刈取部20とに動力を供給する第一エンジン70と、脱穀部30と選別部40と穀粒処理部50と排藁処理部60とに動力を供給するモータ群83、即ち脱穀部用モータ83aと選別部用モータ83bと穀粒処理部用モータ83cと排藁処理部用モータ83dと、モータ群83の各モータに電力を供給するバッテリ82と、バッテリ82を充電する発電機81と、発電機81を作動する第二エンジン80と、バッテリ82の充電残量を検出する充電残量検出手段91と、第二エンジン80のエンジン回転数を検出する第二エンジン回転数検出手段93と、第二エンジン80とモータ群83の各モータとを制御する制御手段90とを備え、制御手段90は、充電残量検出手段91により検出された検出値C0に基づいて第二エンジン80のエンジン回転数を制御し、充電残量検出手段91により検出された検出値C0がバッテリ82への充電を開始するために設定した第一設定値C1を上回る場合に、第二エンジン80を停止させるものとされる。
【0074】
これより、第一エンジン70から走行部10および刈取部20に動力を供給して、これらの各作業部を作動させることが可能となるとともに、モータ群83から脱穀部30と選別部40と穀粒処理部50と排藁処理部60とに動力を供給して、これらの各作業部を作動させることが可能となる。したがって、第一エンジン70および第二エンジン80を小型で小排気量のものとして、燃料消費量の低減を図ることができる。
【0075】
また、第二エンジン80を作業状態に応じて効率よく作動制御する、即ち無駄に作動させることなく状況に応じて適切に停止させることが可能となる。したがって、第二エンジン80を小型で小排気量のものとして、燃料消費量の低減を図ることができる。しかも、走行部10および刈取部20を除く作業部にはモータ群83から動力を供給するため、これらの作業部を安定して作動させることができ、作業効率を向上させることができる。
【0076】
本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、また、脱穀作業状態であるか否かを検出する脱穀状態検出手段94を備え、制御手段90は、充電残量検出手段91により検出された検出値C0が第一設定値C1以下であってモータ群83の各モータに電力を供給することができる第二設定値C2を上回る場合に、脱穀作業状態でなければ、第二エンジン80を停止させるものとされる。
【0077】
これにより、刈取作業状態ではなく、脱穀作業状態でもない非収穫作業状態となる場合、モータ群83の各モータを作動可能としながら、第二エンジン80を必要以上には作動させないようにすることが可能となる。したがって、非収穫作業時に、第二エンジン80を適切に停止させて、燃料消費量の低減を図ることができるとともに、振動や騒音の低減を図ることができる。
【0078】
本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、また、刈取部20からの穀稈を脱穀部30の搬送装置としてのフィードチェーン31の搬送始端部とで挟持してフィードチェーン31側へ案内する作用位置p1と、作用位置p1から退避した非作用位置p2とに位置を切替可能とした供給ガイド32と、供給ガイド32の位置を検出する供給ガイド位置検出手段96とを備え、制御手段90は、充電残量検出手段91により検出された検出値C0が第一設定値C1以下であってモータ群83の各モータに電力を供給することができる第二設定値C2を上回る場合に、供給ガイド32が非作用位置p2であれば、第二エンジン80を停止させるものとされる。
【0079】
これにより、供給ガイド32を非作用位置p2に移動させて手扱き作業を行う場合、モータ群83の各モータを作動可能としながら、第二エンジン80を必要以上には作動させないようにすることが可能となる。したがって、手扱き作業時に、第二エンジン80を適切に停止させて、燃料消費量の低減を図ることができるとともに、振動や騒音の低減を図ることができる。
【0080】
また、コンバイン1には、前述のように第一エンジン70から走行部10および刈取部20に動力を供給する構成を適用する代わりに、モータ群から走行部10および刈取部20に動力を供給する構成を適用することも可能であり、続いてこの構成について説明する。
【0081】
まず、コンバイン1の動力伝達系統の構成について説明する。
【0082】
図6に示すように、コンバイン1には二つのエンジン、即ち第一エンジン170と第二エンジン180とが備えられる。そして、第一エンジン170に対して、第一発電機171と、第一バッテリ172と、複数の電動モータからなる第一モータ群173と、複数のインバータからなる第一インバータ群174とが備えられる。第二エンジン180に対して、第二発電機181と、第二バッテリ182と、複数の電動モータからなる第二モータ群183と、複数のインバータからなる第二インバータ群184とが備えられる。
【0083】
ここでの第一モータ群173には、走行部用モータ173a、刈取部用モータ173bが含まれる。第一インバータ群174には、インバータ174a、インバータ174bが含まれる。第二モータ群183には、脱穀部用モータ183a、選別部用モータ183b、穀粒処理部用モータ183c、排藁処理部用モータ183dが含まれる。第二インバータ群184には、インバータ184a、インバータ184b、インバータ184c、インバータ184dが含まれる。
【0084】
そして、第一モータ群173の各モータからそれぞれ走行部10、刈取部20に動力が供給可能とされ、第二モータ群183の各モータから脱穀部30、選別部40、穀粒処理部50、排藁処理部60にそれぞれ動力が供給されるように構成されるが、第二モータ群183に係る構成は前述のモータ群83等に係る構成と同様のため、以下では第一モータ群173等に係る構成を中心に説明する。
【0085】
第一エンジン170は、機体フレーム2の任意の部分に設けられる。第一エンジン170には第一発電機171が連動連結されて、第一エンジン170から第一発電機171に動力が供給可能とされる。第一発電機171は、さらに第一バッテリ172に電気的に接続されて、この第一発電機171から第一バッテリ172に電力が供給可能とされる。
【0086】
第一バッテリ172には、第一モータ群173の各モータがこれと対応する第一インバータ群174のインバータを介して接続される。具体的には、第一バッテリ172に、走行部用モータ173aがインバータ174aを、刈取部用モータ173bがインバータ174bを介して接続される。こうして、第一バッテリ172から第一モータ群173の各モータに電力が供給可能とされる。
【0087】
第一モータ群173において、走行部用モータ173aの出力軸には、走行部10に備えられた駆動輪(車軸)が連動連結されて、走行部用モータ173aから走行部10のクローラ式走行装置11に動力が供給可能とされる。こうして、走行部10は動力を走行部用モータ173aから供給される構成とされる。ただし、走行部用モータ173aを複数のモータとして、別々のモータからクローラ式走行装置11の左側または右側にそれぞれ動力を供給可能としてもよい。
【0088】
刈取部用モータ173bの出力軸には、刈取部20に備えられた切断装置23等の各装置の入力軸が連動連結されて、刈取部用モータ173bから刈取部20の各装置に動力が供給可能とされる。こうして、刈取部20は動力を刈取部用モータ173bから供給される構成とされる。ただし、刈取部用モータ173bを複数のモータとして、別々のモータから刈取部20の各装置にそれぞれ動力を供給可能としてもよい。
【0089】
よって、コンバイン1においては、第一エンジン170から第一発電機171に動力が供給された場合、第一発電機171で発電が行われ、第一発電機171で発電された電力が第一バッテリ172に充電される。そして、第一バッテリ172に充電された電力が第一インバータ群174の各インバータで直流電力から交流電力に変換されて、第一モータ群173の各モータに供給されたとき、各モータが作動することとされる。このとき、第一モータ群173の各モータの回転数は第一インバータ群174の各インバータで制御される。
【0090】
このようにして、コンバイン1の動力伝達系統は、第一モータ群173の各モータから走行部10、刈取部20への動力伝達系統と、第二モータ群183の各モータから脱穀部30、選別部40、穀粒処理部50、排藁処理部60への動力伝達系統とに分けられる。そのため、コンバイン1においては、走行部10、刈取部20が互いに独立して作動され、脱穀部30、選別部40、穀粒処理部50、排藁処理部60が互いに独立して作動することとされる。つまり各作業部が互いに独立して作動することとされる。
【0091】
続いて、コンバイン1の走行部10、刈取部20への動力供給に係る制御の構成について説明する。走行部10、刈取部20を除く各作業部への動力供給に係る制御の構成については、前記同様である。
【0092】
図7に示すように、コンバイン1には、第一エンジンコントロールユニット(以下、第一ECUと記す)175が備えられる。第一ECU175により第一エンジン170が制御可能とされる。
【0093】
さらに、ポテンショメータ等からなる設定走行速度検出手段109が備えられる。設定走行速度検出手段109は、変速レバーに取り付けられる。そして、この設定走行速度検出手段109により前記変速レバーの操作に基づいて設定走行速度が検出可能とされる。
【0094】
電圧センサまたは電流センサ等からなる第一発電機出力検出手段179、電圧センサまたは電流センサ等からなる第一充電残量検出手段191が備えられる。第一発電機出力検出手段179により第一発電機171の出力電力が検出可能とされ、第一充電残量検出手段191により第一バッテリ172の充電残量が検出可能とされる。
【0095】
回転センサ等からなる第一エンジン回転数検出手段192が備えられる。この第一エンジン回転数検出手段192により第一エンジン170の回転数が検出可能とされる。
【0096】
ポテンショメータ等からなる供給ガイド位置検出手段193が備えられる。この供給ガイド位置検出手段193により脱穀部30に備えられた供給ガイド32の位置が検出可能、即ち供給ガイド32が刈取作業位置である作用位置p1と手扱き作業位置である非作用位置P2とのいずれの位置にあるかが検出可能とされる。
【0097】
回転センサ等からなるモータ回転数検出手段194が備えられる。具体的には、モータ回転数検出手段194として、走行部用モータ回転数検出手段194a、刈取部用モータ回転数検出手段194bが備えられる。モータ回転数検出手段194によりそれぞれ対応する第一モータ群173のモータの回転数が検出可能とされる。この検出値から走行速度および刈取速度等が検出可能とされる。
【0098】
制御手段190が備えられる。制御手段190は、各種演算処理を実行する中央処理装置(CPU)、制御プログラム等を記憶させた読み出し専用のメモリ(ROM)、各種プログラムやデータ等を一時的に記憶させる、随時読み書き可能なメモリ(RAM)等で構成される。
【0099】
制御手段190は、前記操作手段に含まれる作業操作スイッチ5と刈取スイッチ102、走行スイッチ103、設定走行速度検出手段109、第一発電機出力検出手段179、第一充電残量検出手段191、第一エンジン回転数検出手段192、供給ガイド位置検出手段193、第一モータ群173の各モータのモータ回転数検出手段194と接続される。
【0100】
制御手段190は、また、第一ECU175と接続される。しかも、制御手段190は、第一モータ群173の各モータとこれに対応する第一インバータ群174のインバータを介して接続される。具体的には、制御手段190は、走行部用モータ173aとはインバータ174aを、刈取部用モータ173bとはインバータ174bを介して接続される。
【0101】
そして、前記変速レバーが操作されたとき、その操作に基づいて設定走行速度検出手段109により設定走行速度が検出されて、検出値に基づいて走行部用モータ173aが制御手段190により制御され、その作動状態が変更される。つまり、前記変速レバーの増速または減速方向への操作が行われた場合、走行部用モータ173aが前記変速レバーの操作に応じてあらかじめ設定された設定回転数となるように作動することとされる。ただし、変速操作を行う手段として、レバーの代わりに、スイッチ等を用いることも可能である。
【0102】
刈取スイッチ102がON/OFF操作されたとき、その操作に基づいて刈取部用モータ173bが制御手段190により制御され、その作動状態が変更される。刈取スイッチ102がON操作された場合、刈取部用モータ173bがあらかじめ設定された設定回転数となるように作動することとされる。この設定回転数は刈取速度が走行速度と同期するように設定される。刈取スイッチ102がOFF操作された場合、刈取部用モータ173bが停止することとされる。ただし、刈取操作を行う手段として、スイッチの代わりに、レバー等を用いることも可能である。刈取スイッチ102は前記操作手段に含まれて操縦部9に設けられ、この構成では前述の刈取クラッチスイッチ6および刈取クラッチ25は省かれる。
【0103】
走行スイッチ103が押圧操作されたとき、その操作に基づいて走行部用モータ173aが制御手段190により制御され、その作動状態が変更される。つまり、走行スイッチ103が押圧操作された場合、走行部用モータ173aが一定量の回転を行うように作動することとされる。これにより、コンバイン1は走行スイッチ103が押圧操作されたとき、低速で所定距離だけ前進走行することとされる。走行スイッチ103は、脱穀部30における脱穀カバー等に供給ガイド32近傍に位置するように設けられ、手扱き作業を行う作業者により操作可能とされる。
【0104】
モータ回転数検出手段194により第一モータ群173の各モータの回転数が検出されて、これらの検出値に基づいて第一モータ群173の各モータが制御手段190により制御され、各モータの回転数が設定回転数となるように変更される。これにより、各作業部における装置の入力軸が所定の回転数で回転するものとされる。ただし、各モータ回転数を検出するのではなく、各作業部における装置の入力軸の回転数を検出し、その検出値に基づいて各モータを制御手段190により制御することも可能である。
【0105】
そのうえ、第一発電機出力検出手段179により第一発電機171の出力電力が検出され、第一充電残量検出手段191により第一バッテリ172の充電残量が検出されて、これらの検出値に基づいて第一エンジン170が制御手段190と第一ECU175とにより制御され、第一エンジン170の回転数が変更される。具体的には、次のような流れで第一エンジン170の制御が行われ、その作動状態が変更される。
【0106】
即ち、図8に示すように、第一エンジン170および第二エンジン180が作動されている状態で、まず第一充電残量検出手段191により第一バッテリ172の充電残量が検出され(S21)、その検出値C0が第一設定値C1を上回るか否かが制御手段190により判定される(S22)。第一設定値C1は、第一バッテリ172への充電の開始を決定する閾値としてあらかじめ設定される。
【0107】
この判定の結果、検出値C0が第一設定値C1を上回れば、制御手段190と第一ECU175との通信が行われ、第一エンジン170が第一ECU175により停止することとされる(S23)。この場合、第一バッテリ172が十分に充電されていて、第一モータ群173の各モータは作動可能であるため、第一エンジン170、ひいては第一発電機171が停止することとされる。
【0108】
検出値C0が第一設定値C1以下であれば、続いて制御Bが行われる(S24)。図9に示すように、制御Bでは、まず検出値C0が第二設定値C2を上回るか否かが制御手段190により判定される(S25)。第二設定値C2は第一設定値C1より小さく、第一バッテリ172に一定容量の電力が蓄えられて第一モータ群173の各モータに電力を供給することができる値にあらかじめ設定される。
【0109】
この判定の結果、検出値C0が第二設定値C2以下であれば、第一エンジン170は作動することとされる(S26)。一方、検出値C0が第二設定値C2を上回れば、供給ガイド位置検出手段193により検出された検出値に基づいて、供給ガイド32が刈取作業位置である作用位置p1と、手扱き作業位置である非作用位置p2のいずれにあるかが判定される(S27)。
【0110】
この判定の結果、供給ガイド32が作用位置p1にあれば、第一エンジン170は作動することとされる(S26)。一方、供給ガイド32が非作用位置p2にあれば、手扱き作業中と判断され、制御手段190と第一ECU175とにより第一エンジン170が停止することとされる(S28)。この場合、走行部用モータ173aは一定条件のもとで作動可能とされるため、第一エンジン170、ひいては第一発電機171が停止することとされる。
【0111】
なお、このように供給ガイド32が非作用位置p2とされる手扱き作業中に、走行スイッチ103が押圧操作されると、走行部用モータ173aが一定量の回転を行うように作動し、コンバイン1が低速で所定距離だけ前進走行することとされる。これにより、コンバイン1の停止位置が変更可能とされる。
【0112】
また、前述のような制御の結果、第一エンジン170が停止されている場合でも、第一充電残量検出手段191により検出される検出値C0が第三設定値を上回るか否かが随時判定される。そして、検出値C0が第三設定値以下となったときには、第一エンジン170は強制的に作動することとされる。第三設定値は第二設定値以下であって、第一モータ群173の各モータを作動させるための必要最低限の値またはそれよりも若干大きな値に設定される。
【0113】
以上のように、コンバイン1において、走行部10と刈取部20とに動力を供給する第一モータ群173、即ち走行部用モータ173a、刈取部用モータ173bと、第一モータ群173の各モータに電力を供給する第一バッテリ172と、第一バッテリ172を充電する第一発電機171と、第一発電機171を作動する第一エンジン170と、第一バッテリ172の充電残量を検出する第一充電残量検出手段191と、第一エンジン170のエンジン回転数を検出する第一エンジン回転数検出手段192と、脱穀部30と選別部40と穀粒処理部50と排藁処理部60とに動力を供給する第二モータ群183、即ち脱穀部用モータ183aと選別部用モータ183bと穀粒処理部用モータ183cと排藁処理部用モータ183dと、第二モータ群183の各モータに電力を供給する第二バッテリ182と、第二バッテリ182を充電する第二発電機181と、第二発電機181を作動する第二エンジン180と、第二バッテリ182の充電残量を検出する第二充電残量検出手段と、第二エンジン180のエンジン回転数を検出する第二エンジン回転数検出手段と、第一エンジン170と第二エンジン180と第一モータ群173および第二モータ群183の各モータとを制御する制御手段190とを備え、制御手段190は、第一充電残量検出手段191により検出された検出値C0に基づいて第一エンジン170のエンジン回転数を制御し、第一充電残量検出手段191により検出された検出値C0が第一バッテリ172への充電を開始するために設定した第一設定値C1を上回る場合に、第一エンジン170を停止させるとともに、前記第二充電残量検出手段により検出された検出値に基づいて第二エンジン180のエンジン回転数を制御し、前記第二充電残量検出手段により検出された検出値が第二バッテリ182への充電を開始するために設定した第一設定値を上回る場合に、第二エンジン180を停止させるようにすることも可能である。
【0114】
これより、第一モータ群173から走行部10、刈取部20に動力を供給して、これらの各作業部を作動させることが可能となるとともに、第二モータ群183から脱穀部30と選別部40と穀粒処理部50と排藁処理部60とに動力を供給して、これらの各作業部を作動させることが可能となる。したがって、第一エンジン170および第二エンジン180を小型で小排気量のものとして、燃料消費量の低減を図ることができる。
【0115】
また、第一エンジン170および第二エンジン180を作業状態に応じて効率よく作動制御する、即ち無駄に作動させることなく状況に応じて適切に停止させることが可能となる。したがって、第一エンジン170および第二エンジン180を小型で小排気量のものとして、燃料消費量の低減を図ることができる。しかも、各作業部にはモータから動力を供給するため、動力をエンジンから供給する場合に比べて、エンジン負荷の影響を受けることがなく、各作業部を安定して作動させることができ、作業効率を向上させることができる。
【0116】
また、コンバイン1においては、刈取部20からの穀稈を脱穀部30の搬送装置としてのフィードチェーン31の搬送始端部とで挟持してフィードチェーン31側へ案内する作用位置p1と、作用位置p1から退避した非作用位置p2とに位置を切替可能とした供給ガイド32と、供給ガイド32の位置を検出する供給ガイド位置検出手段193とを備え、制御手段190は、第一充電残量検出手段191により検出された検出値C0が第一設定値C1以下であって第一モータ群173の各モータに電力を供給することができる第二設定値C2を上回る場合に、供給ガイド32が非作用位置p2であれば、第一エンジン170を停止させるようにすることも可能である。
【0117】
これにより、供給ガイド32を非作用位置p2に移動させて、手扱き作業を行う場合、第一モータ群173の走行部用モータ173aを作動可能としながら、即ちコンバイン1を走行可能としながら、第一エンジン170を必要以上には作動させないようにすることが可能となる。したがって、手扱き作業時に、第一エンジン170を適切に停止させて、燃料消費量の低減を図ることができるとともに、振動や騒音の低減を図ることができる。
【0118】
また、コンバイン1においては、第一モータ群173の走行部用モータ173aを作動させる操作手段としての走行スイッチ103を、供給ガイド32近傍に設けるようにすることも可能である。
【0119】
これにより、手扱き作業を行う作業者が走行スイッチ103を操作することによって、供給ガイド32付近、即ち脱穀部30における穀稈供給口付近から走行部用モータ173aを作動させて、コンバイン1を走行させることが可能となる。したがって、作業者はその場で走行スイッチ103を操作してコンバイン1を容易に走行させることができ、たとえば作業者のそばから刈取後の穀稈がなくなった場合に、刈取後の穀稈のある場所までコンバイン1を移動させることができる。また、排藁処理部60による処理後の排藁を圃場に排出させる場合に、排出した排藁を拡散させることができ、一箇所に溜まるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 コンバイン
10 走行部
20 刈取部
30 脱穀部
40 選別部
50 穀粒処理部
60 排藁処理部
70 第一エンジン
80 第二エンジン
81 発電機
82 バッテリ
83 モータ群
90 制御手段
91 充電残量検出手段
92 第一エンジン回転数検出手段
93 第二エンジン回転数検出手段
94 脱穀状態検出手段
95 刈取状態検出手段
96 供給ガイド位置検出手段
97 モータ回転数検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を走行させる走行部と、
穀稈を刈り取る刈取部と、
前記刈取部で刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部と、
前記脱穀部で脱穀した穀粒を選別する選別部と、
前記選別部で選別した穀粒を貯溜または排出する穀粒処理部と、
前記脱穀部で脱穀した後の排藁を処理する排藁処理部とを備えたコンバインにおいて、
前記走行部と前記刈取部とに動力を供給する第一エンジンと、
前記脱穀部と前記選別部と前記穀粒処理部と前記排藁処理部とに動力を供給するモータ群と、
前記モータ群の各モータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリを充電する発電機と、
前記発電機を作動する第二エンジンと、
前記バッテリの充電残量を検出する充電残量検出手段と、
前記第二エンジンのエンジン回転数を検出する第二エンジン回転数検出手段と、
前記第二エンジンと前記モータ群の各モータとを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記充電残量検出手段により検出された検出値が前記バッテリへの充電を開始するために設定した第一設定値を上回る場合に、前記第二エンジンを停止させることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
脱穀作業状態であるか否かを検出する脱穀状態検出手段を備え、
前記制御手段は、前記充電残量検出手段により検出された検出値が前記第一設定値以下であって前記モータ群の各モータに電力を供給することができる第二設定値を上回る場合に、脱穀作業状態でなければ、前記第二エンジンを停止させることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記刈取部からの穀稈を前記脱穀部の搬送装置の搬送始端部とで挟持して当該搬送装置側へ案内する作用位置と、この作用位置から退避した非作用位置とに位置を切替可能とした供給ガイドと、
前記供給ガイドの位置を検出する供給ガイド位置検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記充電残量検出手段により検出された検出値が前記第一設定値以下であって前記モータ群の各モータに電力を供給することができる第二設定値を上回る場合に、前記供給ガイドが非作用位置であれば、前記第二エンジンを停止させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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